(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/61 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
C07D213/61
(21)【出願番号】P 2019533644
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017082442
(87)【国際公開番号】W WO2018114484
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ワーヘド・アハメド・モラディ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・シュナッテラー
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー・ビーレフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ゲルツマン
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ハーフェコスト
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-524307(JP,A)
【文献】特表2015-501326(JP,A)
【文献】特表2005-535714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のN-[2-(2-ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体またはその塩
【化1】
(式中、
pは1、2または3に等しい整数であり;
Xは同じであるまたは異なり、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
8-アルキル、1~5個のハロゲン原子を有するC
1~C
8-ハロゲノアルキルであり;
Hal
1はハロゲン原子を表し;
R
1は水素原子、C
1~C
8-アルキル、1~5個のハロゲン原子を有するC
1~C
8-ハロゲノアルキルまたはC
1~C
8-アルコキシカルボニルであり;
R
2は水素原子またはシクロプロピル基であり;
その2-ピリジンのN-オキシドに関して、
Aは、場合により、互いに独立に、ハロゲン原子、C
1~C
8-アルキル、1~5個のハロゲン原子を有するC
1~C
8-ハロゲノアルキルとして選択される1個または複数の置換基によって置換されているフェニル基を表す)
を調製する方法であって、
(A)塩基および極性溶媒の存在下で、式(II)のハロゲノピリジル誘導体を式(III)のマロン酸ジアルキルエステルと反応させて、式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体を得ることを含む、
反応スキーム1による第1のステップ:
【化2】
(式中、
AおよびR
2は上に定義される通りであり;
Xおよびpは上に定義される通りであり;
Hal
1またはHal
2は、互いに独立に、ハロゲン原子を表し;
R
3およびR
4は、互いに独立に、C
1~C
6-アルキルを表す);
(B)溶媒中で、式(V)のN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体を式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体またはその塩と反応させて、式(VI)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を得ることを含む、
反応スキーム2による第2のステップ:
【化3】
(式中、
X、R
1、R
2、R
3、R
4、Hal
1、pおよびAは上に定義される通りであり;
Acはアセチル基を表し;
カチオン
+はLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+を表す);
(C)スキーム2によるステップBで得られた式(VI)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を塩基の存在下で一般式(VII)の化合物に鹸化することを含む、
スキーム3による第3のステップ:
【化4】
(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
4、Hal
1、A、X、pは上に定義される通りであり;
カチオン
+はLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+を表す);
(D)スキーム4によるステップCで得られた一般式(VII)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を一般式(I)の化合物に脱炭酸することを含む、
スキーム4による第4のステップ
【化5】
(式中、
R
1、R
2、Hal
1、A、X、pは上に定義される通りであり;
カチオン
+はLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+を表す)
を含む方法。
【請求項2】
pが1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが、他と独立に、塩素またはCF
3として選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
2-ピリジル部分が、5位でXによって置換されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R
1が水素原子、メチル基、CF
3、CHF
2、CClF
2またはCCl
3であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
R
2が水素原子であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Aがフェニル基であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Aが1個または2個の置換基によって置換されており、Aの前記置換基が、互いに独立に、塩素またはCF
3として選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記Aがオルト位で置換されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の化合物が:
N-{2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル]エチル}-2-トリフルオロメチルベンズアミド
であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップAが有機溶媒またはその混合物の存在下で行われることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップAが減圧下で行われることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップCが溶媒の非存在下、二相系で行われることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップCが一相系で行われることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップCが、溶融状態で溶媒の非存在下で行われることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲノベンゾイル誘導体から出発してN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体を調製し、次いで、これを2-ピリジルアセテート誘導体とカップリングさせる、殺有害生物剤化合物として有用なN-[2-(2-ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体を調製する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許出願、国際公開第2004/016088号は、2-ハロゲノピリジン誘導体から出発して2-エチルアミノピリジン誘導体を調製し、次いで、これらの2-エチルアミノピリジン誘導体をハロゲノベンゾイル誘導体とカップリングさせる、N-[2-(2-ピリジニル)エチル]ベンズアミド誘導体の調製を開示している。
【0003】
特許出願、国際公開第2006/067103号は、ハロゲノベンゾイル誘導体から出発してN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体を調製し、次いで、これを2-ピリジルアセテート誘導体とカップリングさせる、N-[2-(2-ピリジニル)エチル]ベンズアミド誘導体の調製を開示している。ハロゲノ-ピリジル誘導体からのマロン酸エステル誘導体の調製は極めて極性の溶媒を必要とする。反応で生じる水は、ヒドロキシ-ピリジル誘導体、アルコキシ-ピリジル誘導体またはN-ジメチルアミノピリジル誘導体などのいくつかの副成分の形成をもたらし、それによって反応の選択性および全体収率に影響を及ぼし得る。さらに、工業規模の製造方法では、生じる水を除去する必要がある。これは、水を除去するために製造における追加の工程または追加の努力を必要とし、それによってさらにコストを増加させ、収率に影響を及ぼすことになり得る。
【0004】
次に、鹸化は、水酸化物の水溶液の存在下でエステルを加水分解する方法を指す。水酸化物の水溶液は、場合により溶媒の存在下で、非水溶性エステルと共に二相系を形成するので、エステルが水に可溶性ではない、またはごく少量しか可溶性でない場合、これは、エステルの低い転換率をもたらすだろう。したがって、水酸化物水溶液と非水溶性エステルのより迅速でより効率的な反応を可能にする他の選択肢を探す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2004/016088号
【文献】国際公開第2006/067103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らはここで、これらの課題を克服し、工業規模の運転に適用可能であるN-[2-(2-ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体を調製する代替方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、一般式(I)のN-[2-(2-ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体またはその塩
【化1】
(式中、
pは1、2または3に等しい整数であり;
Xは同じであるまたは異なり、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
8-アルキル、1~5個のハロゲン原子を有するC
1~C
8-ハロゲノアルキルであり;
R
1は水素原子、C
1~C
8-アルキル、1~5個のハロゲン原子を有するC
1~C
8-ハロゲノアルキルまたはC
1~C
8-アルコキシカルボニルであり;
R
2は水素原子またはシクロプロピル基であり;
Hal
1はハロゲン原子を表し;
その2-ピリジンのN-オキシドに関して、
Aは、場合により、互いに独立に、ハロゲン原子、C
1~C
8-アルキル、1~5個のハロゲン原子を有するC
1~C
8-ハロゲノアルキルとして選択される1個または複数の置換基によって置換されているフェニル基を表す)
を調製する方法であって、
(A)塩基および極性溶媒の存在下で、式(II)のハロゲノピリジル誘導体を式(III)のマロン酸ジアルキルエステルと反応させて、式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体を得ることを含む、
反応スキーム1による第1のステップ:
【化2】
(式中、
AおよびR
2は上に定義される通りであり;
Xおよびpは上に定義される通りであり;
Hal
1またはHal
2は、互いに独立に、ハロゲン原子を表し;
R
3およびR
4は、互いに独立に、C
1~C
6-アルキルを表す);
(B)溶媒中で、式(V)のN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体を式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体またはその塩と反応させて、式(VI)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を得ることを含む、
反応スキーム2による第2のステップ:
【化3】
(式中、
X、R
1、R
2、R
3、R
4、Hal
1、X、pおよびAは上に定義される通りであり;
Acはアセチル基を表し;
カチオン
+はLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+を表す);
(C)スキーム2によるステップBで得られた式(VI)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を塩基の存在下で一般式(VII)の化合物に鹸化することを含む、
スキーム3による第3のステップ:
【化4】
(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
4、Hal
1、A、X、pは上に定義される通りであり;
カチオン
+はLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+を表す);
(D)スキーム4によるステップCで得られた一般式(VII)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を一般式(I)の化合物に脱炭酸することを含む、
スキーム4による第4のステップ
【化5】
(式中、
R
1、R
2、Hal
1、A、X、pは上に定義される通りであり;
カチオン
+はLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+を表す)
を含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的のために:
ハロゲン原子は臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子またはフッ素原子であり得る。好ましくは、ハロゲン原子は塩素原子またはフッ素原子を意味し;
カルボキシは-C(=O)OHを意味し;
カルボニルは-C(=O)-を意味し;
カルバモイルは-C(=O)NH2を意味し;
N-ヒドロキシカルバモイルは-C(=O)NHOHを意味し;
アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基、ならびにこれらの用語を含む部分は直鎖または分岐であり得;
「触媒量」で使用される化合物は、化合物が、それぞれの試薬または中間体化合物の0.01~0.2モル当量、好ましくは0.01~0.1モル当量の量で使用されることを意味する。
【0009】
本発明によると、2-ピリジル部分は(X)p(式中、Xおよびpは上に定義される通りである)によって任意の位置で置換されていてもよい。好ましくは、本発明は、異なる特性が、以下であるものとして単独でまたは組み合わせて選択され得る、一般式(I)のN-[2-(2-ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体の調製に関する:
pに関しては、pは1、2または3である。好ましくは、pは1である。
Xに関して、Xは、他と独立に、ハロゲン原子、C1~C4-アルキルまたは1~5個のハロゲン原子を有するC1~C4-ハロゲノアルキルとして選択される。より好ましくは、Xは、他と独立に、塩素またはCF3として選択される。
2-ピリジル部分がXによって置換されている位置に関して、2-ピリジル部分は、4位および/または5位でXによって置換されている。好ましくは、2-ピリジル部分が、5位でXによって置換されている。
Hal1は臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子またはフッ素原子であり得る。好ましくは、Hal1は塩素原子またはフッ素原子を意味する。
【0010】
Hal2は臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子またはフッ素原子であり得る。好ましくは、Hal2は塩素原子またはフッ素原子を意味する。
【0011】
式(I)の化合物の「エチルアミド」部分はR1およびR2によって置換されており、R1およびR2は上に定義される通りである。好ましくは、本発明は、異なる特性が、以下であるものとして単独でまたは組み合わせて選択され得る、一般式(I)のN-[2-(2-ピリジニル)エチル]ベンズアミド誘導体の調製に関する:
R1に関して、R1は水素原子、メチル基、CF3、CHF2、CClF2またはCCl3である。より好ましくは、R1は水素原子である;
R2に関して、R2は水素原子である。
【0012】
好ましくは、本発明は、Aがフェニル基であり、異なる特性が、以下であるものとして単独でまたは組み合わせて選択され得る、一般式(I)のN-[2-(2-ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体の調製に関する:
Aは1個または2個の置換基によって置換されている。より好ましくは、Aは1個の置換基によって置換されている。
各置換基は、他と独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1~C4-アルキルまたは1~5個のハロゲン原子を有するC1~C4-ハロゲノアルキルとして選択される。より好ましくは、各置換基は、他と独立に、塩素またはCF3として選択される;
フェニル部分はオルト位で置換されている。
【0013】
本発明の方法は、N-{2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エチル}-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミドという名称の式(I-a)による化合物
【化6】
の調製に特に適している。
【0014】
式(II)および(III)の化合物は市販されている。
【0015】
式(V)による化合物の調製は、国際公開第2006/067103号に記載されている。
【0016】
本発明による方法の第1のステップ(ステップA)は、塩基および極性溶媒の存在下で、式(II)のハロゲノピリジル誘導体を式(III)のマロン酸ジアルキルエステルと反応させて、式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体を得ることを含む。
【0017】
好ましくは、ステップAは、単独のまたは組み合わせた以下の条件で行われ得る:
式(II)のハロゲノピリジル誘導体と式(III)のマロン酸ジアルキルエステルの比は、1:10、好ましくは1:5、より好ましくは1:2、最も好ましくは1:1~1:1.2であり得る。
マロン酸ジアルキルエステル誘導体は塩として存在してもよい。
溶媒は、水と有機溶媒との混合物として選択される。適切な有機溶媒としては、DMAC、NMPもしくはトルエン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
塩基は、アルカリ土類金属塩基、水酸化物塩基、アルコラート塩基、酢酸塩塩基、炭酸塩塩基、炭酸水素塩塩基または有機塩基として選択される。好ましくは、塩基は、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アンモニウムメタノラート、アンモニウムエタノラート、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、マグネシウムメタノラート、マグネシウムエタノラート、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、カルシウムメタノラート、カルシウムエタノラート、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、重炭酸アルミニウム、アルミニウムメタノラート、アルミニウムエタノラート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムとして選択される。
【0019】
より好ましくは、塩基は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、マグネシウムメタノラート、マグネシウムエタノラート、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、カルシウムメタノラート、カルシウムエタノラート、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、重炭酸アルミニウム、アルミニウムメタノラート、アルミニウムエタノラート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウムとして選択される。
【0020】
より好ましくは、塩基は、炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、マグネシウムメタノラート、マグネシウムエタノラート、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カルシウムメタノラート、カルシウムエタノラート、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸アルミニウム、アルミニウムメタノラート、アルミニウムエタノラート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウムとして選択される。
【0021】
さらにより好ましくは、塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムまたは炭酸カリウムとして選択される。
【0022】
一実施形態では、異なる塩基、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムを互いに組み合わせて使用することができる。
【0023】
ステップAの温度は、0℃~200℃、好ましくは0℃~150℃、最も好ましくは0℃~100℃から選択される。20℃~90℃の温度が好ましい。
【0024】
好ましくは、ステップ(A)の反応は減圧下で行われる。
【0025】
本発明による方法の第2のステップ(ステップB)は、溶媒中で、式(V)のN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体を式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体またはその塩と反応させて、式(VI)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を得ることを含む。
【0026】
好ましくは、ステップBは、単独のまたは組み合わせた以下の条件で行われ得る:
式(V)のN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体は、その場でまたは溶液で反応溶液に添加することができる。あるいは、溶媒中の式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体またはその塩を式(V)のN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体に添加してもよい。
ステップBの溶媒は、ステップAの溶媒と同じであっても異なっていてもよい。
酸がステップBに存在してもよい。
式(V)のN-アセトキシメチルカルボキサミド誘導体と式(IV)のマロン酸ジアルキルエステルピリジル誘導体の比は、10:1、好ましくは5:1、より好ましくは2:1、最も好ましくは1:1であり得る。
酸は酢酸またはギ酸として選択され得る。
【0027】
溶媒は脂肪族溶媒、脂環式溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒または尿素溶媒として選択される。より好ましくは、有機溶媒は、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチル-シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、クロロベンゼン、ジクロロ-ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジ-クロロエタン、トリ-クロロ-エタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチル-エーテル、メチルtert-アミル-エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジ-メトキシエタン、1,2-ジ-エトキシ-エタン、アニソール、N,N-ジメチル-ホルムアミド、N-メチル-ホルムアニリド、N-メチル-ピロリドン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)、ヘキサメチル-リン酸-トリアミドまたは1,3-ジメチル-2-2-イミダゾリノンまたはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)として選択される。
【0028】
N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-ピロリドン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)を含む群から選択される有機溶媒が好ましい。
【0029】
より好ましくは、N-メチルピロリドンまたはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)を含む群の有機溶媒である。
【0030】
一実施形態では、ステップ(B)の溶媒を、他の溶媒、例えばトルエンと混合して使用することができる。
【0031】
ステップBの温度は、0℃~200℃、好ましくは0℃~175℃、最も好ましくは0℃~150℃から選択される。20℃~130℃の温度が好ましい。
【0032】
ステップBの反応は減圧下で行われ得る。
【0033】
本発明による方法の第3のステップ(ステップC)は、ステップBで得られた式(VI)の2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を鹸化して式(VII)の化合物を得ることを含む。
【0034】
好ましくは、ステップCは、単独のまたは組み合わせた以下の条件で行われ得る:
式(VI)による2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体と塩基の比、モル比は1:20、好ましくは1:10、より好ましくは1:5、最も好ましくは1:2である。
【0035】
鹸化は、a)二相系、b)一相系、またはc)溶媒の非存在下で行われ得る。
【0036】
二相系は、塩基の水溶液および無極性溶媒中の式(VI)による化合物を含むことができ、水溶液と無極性溶液がそれぞれ一相として存在する。
【0037】
一相系は、塩基と式(VI)による化合物とを一相内に含むことができる。
【0038】
一実施形態では、ステップCの反応が、触媒または乳化剤(emulgator)として式(VII)による化合物の塩を使用し得る。
【0039】
別の実施形態では、ステップCの反応が、溶融状態で式(VI)による化合物を式(VII)の化合物に変換し得る。
【0040】
溶融状態は、式(VI)による化合物の融点より高い温度での、溶媒の非存在下での式(VI)による化合物を指す。
【0041】
ステップCの温度は、変法a)は0℃~100℃、好ましくは10℃~100℃、最も好ましくは10℃~50℃から選択される。
【0042】
ステップCの温度は、変形b)は0℃~100℃、好ましくは10℃~100℃、最も好ましくは10℃~50℃から選択される。
【0043】
ステップCの温度は、変形c)は20℃~150℃、好ましくは20℃~100℃、最も好ましくは20℃~80℃から選択される。一実施形態では、温度が40~100℃で選択される。
【0044】
塩基は、アルカリ土類金属塩基、水酸化物塩基、アルコラート塩基、酢酸塩塩基、炭酸塩塩基、炭酸水素塩塩基または有機塩基として選択される。好ましくは、塩基は、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アンモニウムメタノラート、アンモニウムエタノラート、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、マグネシウムメタノラート、マグネシウムエタノラート、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、カルシウムメタノラート、カルシウムエタノラート、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、重炭酸アルミニウム、アルミニウムメタノラート、アルミニウムエタノラート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムとして選択される。
【0045】
より好ましくは、塩基は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、マグネシウムメタノラート、マグネシウムエタノラート、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、カルシウムメタノラート、カルシウムエタノラート、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、重炭酸アルミニウム、アルミニウムメタノラート、アルミニウムエタノラート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウムとして選択される。
【0046】
より好ましくは、塩基は、炭酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、マグネシウムメタノラート、マグネシウムエタノラート、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カルシウムメタノラート、カルシウムエタノラート、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸アルミニウム、アルミニウムメタノラート、アルミニウムエタノラート、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウムとして選択される。
【0047】
さらにより好ましくは、塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムとして選択される。
【0048】
一実施形態では、塩基の混合物が使用され得る。
【0049】
一実施形態では、異なる塩基、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムを互いに組み合わせて使用することができる。
【0050】
有機溶媒は脂肪族溶媒、脂環式溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、アルコール、水または尿素溶媒として選択される。
【0051】
より好ましくは、有機溶媒は、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチル-シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、クロロベンゼン、ジクロロ-ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジ-クロロエタン(di-chlorethane)、トリ-クロロ-エタン(tri-chlor-ethane)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチル-エーテル、メチルtert-アミル-エーテル、シクロペンチル-メチル-エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,2-ジ-メトキシエタン、1,2-ジ-エトキシ-エタン、アニソール、N,N-ジメチル-ホルムアミド、N,N-ジメチル-アセトアミド、N-メチル-ホルムアニリド、アセトニトリル、ブチロニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、2-メトキシエタノール、tert.ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、シクロヘキサノール、エタンジオール、エチレングリコール、N-メチル-ピロリドン、ヘキサメチル-リン酸-トリアミドまたは1,3-ジメチル-2-2-イミダゾリノンまたはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)として選択される。
【0052】
さらにより好ましくは、有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)またはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)として選択される。
【0053】
本発明による方法の第4のステップ(ステップD)は、ステップCで得られた2-ピリジルエチルカルボキサミド誘導体を上に定義される一般式(I)の化合物に脱炭酸することを含む。 このような脱炭酸反応は、公知の方法によって行われ得る。このような脱炭酸反応は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、A.P.Synthesis、1982、805、893に記載されるKrapcho反応によって行われ得る。
【0054】
本発明による一般式(I)の化合物は、上記の方法に従って調製することができる。それでも、一般的な知識および利用可能な刊行物に基づいて、当業者が、合成することが望まれる化合物の各々の詳細に従ってこの方法を適合させることができることが理解されるだろう。
【実施例】
【0055】
本発明をここで以下の実施例を参照して例示する。
【0056】
N-{2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル]エチル}-2-トリフルオロメチル-ベンズアミドの調製
ステップA:
ジメチル[3‐クロロ‐5‐(トリフルオロメチル)ピリジン‐2‐イル]マロネートの合成
水酸化カリウムを溶媒ジメチルアセトアミドと室温で混合し、62℃で加熱した。
【0057】
1:1モル比のジメチルマロネートおよび式(II-a)の2,3-ジクロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン
【化7】
を、式(IV-a)の生成物ジメチル[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]マロネート
【化8】
の沈殿が形成されるまで、ジメチルアセトアミド/KOH混合物に添加した。
【0058】
HPLCを使用して、式(IV-a)による生成物の変換および形成を分析した。
【0059】
ステップB:ジメチル[2-(ベンゾイルアミノ)エチル][3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]マロネートの合成
酢酸を、ステップ(A)の式(IV-a)のジメチル[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]マロネートの懸濁液に60℃の温度で添加した。
【0060】
式(V-a)の{[2-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}メチルアセテート
【化9】
を懸濁液に添加し、さらにインキュベートし、温度を80℃に上げた。 溶媒DMACを蒸留によって除去した。式(VI-a)のジメチル[2-(ベンゾイルアミノ)エチル][3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]マロネート
【化10】
および無機塩から主になる残渣を、水およびメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)に溶解した。相分離後、無機塩を含む水相を排出し、生成物を含有するMTBE相をステップ(C)に使用する。
【0061】
ステップ(C):式(VI-a)のジメチル[2-(ベンゾイルアミノ)エチル][3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]マロネートの鹸化
必要であれば、追加の水をMTBE相、式(VI-a)のジメチル[2-(ベンゾイルアミノ)エチル][3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]マロネートに添加した。鹸化を行うために、式(VI-a)のジメチル[2-(ベンゾイルアミノ)エチル][3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]マロネートに対して3.5対1の比で水酸化ナトリウムをMTBE相に添加し、数時間撹拌し、それによって生成物を生成した。
【0062】
式(VII-a)によるナトリウム2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル] -3-{[2(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}プロパノエート
【化11】
の形成速度を監視した。
【0063】
ここでは、ナトリウム塩としての2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル] -3-{[2(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}プロパノエートを、鹸化工程の触媒として使用することができる。
【0064】
追加の水酸化ナトリウムおよび水と共に、MTBE溶液としての追加量のステップ(B)の生成物を、35℃で式(VII-a)による化合物を含む反応混合物に添加する。水を添加して化合物(VII-a)のナトリウム塩を溶解させ、MTBEを減圧下での蒸留によって除去する。
【0065】
ステップD:式(I-a)のN-{2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エチル}-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミドの合成
メタノールをステップ(C)の反応混合物に添加し、引き続いて3未満のpHが達成されるまで塩酸を添加する。 式(I-a)による生成物N-{2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エチル}-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【化12】
を沈殿させた。温度を20度未満に下げ、連続的に撹拌した。沈殿をメタノールと水の混合物で数回洗浄し、最後に乾燥させた。HPLCを使用して生成物を分析した。純度98.4%が達成された;全体収率は86.56%であった。