(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】選択可能な迎え角を有する発射物
(51)【国際特許分類】
F42B 10/66 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
F42B10/66
(21)【出願番号】P 2019558673
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 SE2018050440
(87)【国際公開番号】W WO2018199843
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-01
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518357852
【氏名又は名称】ベーアーエー・システムズ・ボフォース・アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS BOFORS AB
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・トゥーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ペッテション
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・ラーション
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05123612(US,A)
【文献】英国特許出願公開第02002885(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0256038(US,A1)
【文献】特開2015-124938(JP,A)
【文献】特開2010-203661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 10/66
F42B 10/06
F42B 12/20
F42B 12/32
F41G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射物(100)であって、前鼻部(N)とケーシング部(M)とを備え、前記ケーシング部(M)が前記
前鼻部(N)と尾部との間に設けられた作用部分(1)を備え、前記尾部がフィン部(9)を備え、
前記発射物(100)は、センサ(4)と、第1起爆装置(6)と、前記発射物(100)を傾斜させるために前記センサ(4)によって起爆される、関連する少なくとも1つのインパルスモータ(3)と、ノズル(7)と、制御コンピュータ(8)と、前記ケーシング部(M)に設けられた前記作用部分(1)を起爆させるために当該作用部分(1)に隣接する第2起爆装置(2)とをさらに備え、
目標の上方で前記第2起爆装置(2)および前記作用部分(1)を起爆させるための少なくとも1つ
のジャイロ(5)をさらに備える、発射物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのインパルスモータ(3)は装薬によって駆動される、請求項1に記載の発射物。
【請求項3】
前記センサ(4)は高度センサである、請求項1または2に記載の発射物。
【請求項4】
前記インパルスモータ(3)は火工式である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発射物。
【請求項5】
前記作用
部分(1)はボールを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の発射物。
【請求項6】
前記作用
部分(1)は、前記発射物の前記ケーシング部(M)の一方の側に設けられており、好ましくは、前記少なくとも1つのノズル(7)が前記
前鼻部(N)に配置された場合において前記発射物の同じ側に設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の発射物。
【請求項7】
前記作用
部分(1)は発射を形成する指向性爆発作用のように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の発射物。
【請求項8】
前記作用
部分(1)は重金属または鋼によって作られ、事前にボール、キューブ、ヘキサゴンまたはディスクに個片化されたものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の発射物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の発射物(100)が目標に対する迎え角を選択するための方法であって、
前記目標まで所定距離のところにおいてジャイロ(5)の第1角度信号を0°に設定し、第2角度信号を前記目標に対する角度の所望変更に設定することと、
高度センサ(4)を用いて前記目標までの距離を測定することと、
所定高度において選択されたインパルスモータ(3)を起動させ、前記発射物(100)をその経路に対して水平に回転させることと、
前記ジャイロ(5)が前記所定の第2角度を信号で知らせるとき、前記作用部分(1)を起爆させることと、を備える方法。
【請求項10】
前記第1角度に対する前記第2角度は選択可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ジャイロ(5)が前記第1角度に対して約90°の第2角度を信号で知らせるとき、前記作用部分(1)が起爆される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標(target)への影響の増加のために、選択可能な迎え角(angle of attack)を有する発射物に関する。
【背景技術】
【0002】
迫撃砲は、通常、射撃位置から見えない目標に対して間接的に射撃されるために利用される。同様に、目標は何らかの形で側面から保護/遮断される場合、または様々な原因で側面から突破できないが上から近づきやすい場合、迫撃砲は適切な選択である。例えば、構内/壁内の目標、沈下した目標などが考えられる。
【0003】
多種類の設計の迫撃砲および異なる口径を有する迫撃砲が存在しており、最も一般的な迫撃砲は8cmまたは12cmの口径を有し、乗組員によって手動的に処理される。迫撃砲はスタンドまたは車両に装着され得る。例えば砲弾作用の砲弾(迫撃砲弾)などの迫撃砲から射出される発射物は、目標に対して実質的に垂直その先端をもって上からその目標に命中する。大半の迫撃砲弾は自然に個片化して全方位の攻撃能力を有し、すなわち、爆発の時、破片は主に横方向に出され、例えば車両のルーフや隠れたまたは横になった目標に強い効果を生じない。
【0004】
迫撃砲の強みはその単純な構造、低価および軽量にある。弱み面は主には短い射撃範囲および一発につき効果が低いことにある。
【0005】
上述した問題点をある程度で解決するために設計された現在の発射物は、技術上に著しく改善され、著しく高価となり、一般的には難しいタイプの場面および目標のために利用される。
【0006】
例えば、発射物は前向きのボール面を有し、当該ボール面から砲弾の進行方向に、すなわち、地面への下向き方向にボール/発射物を放出する。
【0007】
更なる例は安定翼砲弾である。この砲弾は制御曲面とフィンとを有し、その精確性を非常に高めるGPS技術によって誘導される。
【0008】
砲弾は、一般的には榴弾砲とともに排出され相当に高く飛んで、最大約15000メートルまで飛んで、この高さにおいて、翼が展開して砲弾が目標に向かって誘導される。最後のわずかの段階において、砲弾は効果を最適化するようにほぼ垂直に落ちる。しかしながら、射撃距離が長い場合、操作性(駆動能力)が限られ、それは、爆発時の砲弾の角度が最適でないことを意味する。
【0009】
要するに、効果を増加するために、発射物の迎え角の選択および制御を可能にする方法に対してニーズがある。全方位の攻撃能力を有するボール/破片に対して近づきにくい目標に対してよりよい影響をもたらしながら、コストがより低い発射物、例えば迫撃砲弾に対してもニーズがある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的の1つは、現有の発射物と比べると、半硬目標(semi-hard target)に対して増加された影響を有する発射物を提供することである。
【0011】
この目的は、その長手軸が請求項1に規定された経路接線に垂直する向きを通過する発射物を提供することによって達成される。
【0012】
本発射物は、鼻部と、ケーシング部とフィン部とを備える。発射物は、作用装薬(active charge)と、第1起爆装置と、センサと、少なくとも1つのノズルと、制御コンピュータと、少なくとも1つのインパルスモータと、第2起爆装置とをさらに備える。
【0013】
第1起爆装置は少なくとも1つのインパルスモータを起爆させる。第2起爆装置は作用装薬を起爆させる。
【0014】
更なる実施例において、発射物は距離センサの形式であるセンサを備える。距離センサは発射物と目標との距離を測定することに利用される。距離センサは、例えば、高度センサであってもよい。
【0015】
側面作用(side-acting)のインパルスモータは発射物を1つの位置から他の位置へ傾斜させる。例えば、発射物が実質的な垂直位置から実質的な水平位置へ傾斜し、当該実質的な垂直位置において発射物の前面が目標に向かっており、当該実質的な水平位置において外表面が目標に向かっている。
【0016】
1つの実施例において、第1起爆装置は距離センサによって起爆可能である。
【0017】
更なる実施例において、発射物の少なくとも1つの側面作用のインパルスモータは発射物の一方の側で発射物の前面に隣接したところに設けられている。
【0018】
他の実施例において、少なくとも1つの側面作用のインパルスモータは、例えば、装薬(powder charge)によって駆動される。
【0019】
発射物の更なる実施例において、インパルスモータは火工式(pyrotechnical)である。
【0020】
1つの実施例において、発射物は少なくとも1つのジャイロも備える。
【0021】
他の実施例において、発射物は単軸ジャイロを備える。単軸ジャイロは発射物の回転角度の判断に利用される。
【0022】
他の実施例において、ジャイロは多軸ジャイロである。
【0023】
1つの実施例において、作用装薬は事前にボールに個片化されたものである。他の実施例において、作用装薬は事前にキューブ、ヘキサゴンまたはディスクに個片化されたものである。
【0024】
個片化された作用装薬は発射物の外表面の一方の側に設けられてもよく、好ましくは上述した少なくとも1つのノズルと同じ側に設けられている。
【0025】
他の実施例において、第2起爆装置は、例えば、単軸ジャイロを介して起爆可能である。他の実施例において、第2起爆装置は多軸ジャイロによって起爆される。
【0026】
発射物の他の実施例において、ジャイロが第1角度に対して約90°の第2角度を信号で知らせるとき、第2起爆装置の作用部分が起爆される。発射物の他の実施例において、
ジャイロが第1角度に対して約60°~120°の範囲内の第2角度を信号で知らせるとき、作用部分が起爆される。
【0027】
他の実施例において、作用装薬は発射を形成する指向性爆発作用のように構成され得る。
【0028】
他の実施例において、発射物の作用装薬は重金属または鋼によって作られ、事前にボール、キューブ、ヘキサゴンまたはディスクに個片化されたものである。
【0029】
他の実施例において、発射物はGPSユニットを備える。
【0030】
更なる実施例において、第1起爆装置はGPSユニットを介して起爆される。
【0031】
安定翼発射物において、発射物を垂直線/水平面に向かわせるように、多軸ジャイロは複数のインパルスモータとともに利用されてもよい。そのため、効果面から見ると、発射物は爆発時に有利な位置を得る。発射物の降下角(angle of descent)が浅い場合、発射物の一方の側にあるインパルスモータが起爆され、よって、発射物はより垂直な位置に仮定される。したがって、安定翼発射物の1つの実施例において、安定翼発射物は複数のインパルスモータを備える。
【0032】
他の実施例は、平射射撃(direct fire)のための、中口径または大口径の安定翼発射物である。1つ以上のインパルスモータは爆発前に発射物を任意の選択角度に回転させるように利用され得る。
【0033】
更なる実施例において、砲弾の前面の裏側に設けられた比較的に小さい作用装薬を介して、および/または砲弾の外表面の裏側に設けられた比較的に大きい作用装薬を介して、2つの作用モードに基づいて作用するように、発射物は、2つの選択可能な作用装薬を備える。
【0034】
本発明の更なる目的の1つは、目標に関連して、上述した発射物の迎え角を傾斜させるまたは選択する方法を提供することである。
【0035】
上述した発射物が目標に対する迎え角を選択するための方法は、例えば、
高度センサを用いて目標までの距離を測定することと、
選択されたインパルスモータを起動させ、発射物をその経路に対して回転させることと、
作用部分を起爆させることと、を備える。
【0036】
他のセンサまたは手段は第1インパルスモータの起爆に利用され得る。
【0037】
他の実施例において、方法は、
目標まで所定距離のところにおいてジャイロ(5)の第1角度信号を0°に設定し、第2角度信号を目標に対する角度の所望変更に設定することと、
高度センサ(4)を用いて目標までの距離を測定することと、
所定高度において選択されたインパルスモータ(3)を起動させ、発射物をその経路に対して回転させることと、
ジャイロが所定の第2角度を信号で知らせるとき、作用部分(1)を起爆させることと、を備える。
【0038】
所定の第2角度は発射物の種類による。
【0039】
更なる実施例において、所望目標に対する迎え角を選択するための方法は、
目標まで所定距離のところにおいてジャイロの第1角度信号を0°に設定し、第2角度信号を目標に対する角度の所望変更に設定することと、
高度センサを用いて目標までの距離を測定することと、
インパルスモータを起動させ、第1力の方向によって発射物がその弾道に対して回転することと、
ジャイロが所定の第2角度を信号で知らせるとき、作用部分を起爆させ、この位置において発射物の外表面が目標にさらされることと、を備える。
【0040】
作用装薬は、例えばジャイロが第1角度に対して約90°の第2角度を信号で知らせるときに、起爆される。
【0041】
第1角度に対する所定の第2角度は他の実施例において任意に選択され得る。
【0042】
所定の第2角度は第1角度に対して1°~120°の範囲内で変化する。
【0043】
所定の第2角度は第1角度に対して1°~60°の範囲内で変化する。
【0044】
所定の第2角度は第1角度に対して60°~120°の範囲内で変化する。
【0045】
120mm口径の迫撃砲弾を十分に遠くまで回転させ、上述したようにその外表面を目標にさらすために、20ニュートン秒(Ns)~150ニュートン秒の範囲内の力積が求められる。
【0046】
横方向により少ない回転のために、より小さい力積が求められる。
【0047】
他の実施例において、発射物の鼻部は目標にさらされる。
【0048】
本発明の更なる利点および効果は発明についての詳細説明から明らかになる。
【0049】
以下に例えば添付図面を参照する方式で本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図2】発射物の最終段階にわたって発射物の傾斜の一連の概略図
【
図3a】従来技術(A)と比べて、発射物(B)がどのように様々な目標状況に関連するかについての異なる例示
【
図3b】従来技術(A)と比べて、発射物(B)がどのように様々な目標状況に関連するかについての異なる例示
【
図3c】従来技術(A)と比べて、発射物(B)がどのように様々な目標状況に関連するかについての異なる例示
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明を詳細に開示および説明する前に、理解すべきことに、本発明はここで説明する具体的な内容または構成に制限されず、これらの内容または構成は変化可能である。理解すべきことに、ここに適用される専門用語は、具体的な実施例を説明するためのみに利用され、本発明を制限しようとせず、本発明の範囲は特許請求の範囲のみによって制限される。
【0052】
本明細書において、発射物という用語は武器から発射されるまたは武器から射出される物体に関連する。砲弾は爆発装薬(explosive charge)または他の種類の作用部分を含む発射物である。
【0053】
本明細書において、発射物という用語は、上から目標に命中することを目的とする発射物を示すのに利用される。その角度は傾け可能である。
【0054】
目標は半硬目標のように説明されているが、本方法は他の目標にも適用可能である。
【0055】
中口径弾薬に対する目標は、タンク前面から分離したあらゆる種類の装甲目標、すなわち、訳10mmから200mmの装甲鋼と同等の装甲保護を有する目標として説明される。これらの発射物は、縮射式かつ翼安定式であり、重金属または劣化ウランによって作られた浸徹体(penetrator)を有し、1200m/s~1600m/sの速度で発射される。この種類の発射物はAPFSDS(「Armor Piercing, Fin Stabilised, Discarding Sabot」、装弾筒付翼安定徹甲弾)と表記されている。大口径発射物は主にタンク前面に対して打撃を与えようとするものである。
【0056】
図1は発射物の縦断面の概略を示している。発射物100は、関連する起爆装置2を有する作用装薬1と、関連する起爆装置6を有する少なくとも1つのインパルスモータ3とを備える。発射物100の少なくとも1つのインパルスモータ3は、発射物において発射物の前面に隣接する側に設けられている。
【0057】
少なくとも1つの側面作用のインパルスモータ3は、例えば、装薬によって駆動される。
【0058】
発射物は少なくとも1つのジャイロ装置5と高度センサ4とを備える。
【0059】
発射物は少なくとも1つのインパルスモータ3を起爆させるための第1起爆装置6備える。
【0060】
インパルスモータ3および第1起爆装置6は高度センサ4を介して起爆され得る。
【0061】
1つの実施例において、インパルスモータ3はGPSユニットを介して起爆され得る。
【0062】
インパルスモータ3は火工式であってもよい。
【0063】
1つの実施例において、第1起爆装置6はGPSユニットを介して遠隔制御される。
【0064】
1つの実施例において、第2起爆装置6はGPSユニットを介して遠隔制御される。
【0065】
作用装薬1は、発射物が経路接線に対してすでに90°回転すると最適の破片放出可能角度を達成することを目的として、円形でない断面を有するように構成され得る。作用装薬1は発射を形成する指向性爆発作用のように構成され得る。
【0066】
また、作用装薬1は、比較的小さくて反対方向で外表面の裏側に設けられた2つの作用装薬を備えてもよい。
【0067】
作用装薬1は重金属または鋼によって作られ、事前にボール、キューブ、ヘキサゴンまたはディスクに個片化されたものであってもよい。
【0068】
所望目標に対して、例えば地面に対して発射物100を傾斜させるための方法は
図2に示されている。当該方法は、目標まで所定距離のところにおいてジャイロ5の第1角度信号を0°に設定し、第2角度信号を目標に対する角度の所望変更に設定することを備える。目標までの距離は、例えば高度センサ4によって測定される。予定高度において、インパルスモータ3が起動され、砲弾がその経路に対して回転される。ジャイロ5が所定の第2角度を信号で知らせるとき、作用装薬1は起爆され、そこで、発射物の外表面がターゲットにさらされる。
【0069】
第1作用モードにおいて、発射物は、例えばその弾道に対して約90°傾斜され、好ましくは、1つ以上の側面作用のインパルスモータの助力によって傾斜され、当該インパルスモータは発射物において発射物の鼻部に隣接する側に設けられている。現在の発射物の最も単純な実施例は、コスト増加を伴う、目標を識別/分析するための装備を有しない。他の実施例において、センサは、目標物体の識別および/または距離測定のために最終段階にわたって利用され得る。好ましくは、高度センサは砲弾と目標との間の距離を測定することに利用される。目標から適した距離のところにおいて、少なくとも1つの側面作用のインパルスモータが起爆される。インパルスモータが選択され、好ましくは、発射物をその弾道に対して約90°回転させるのに十分な力を生成する固体推進薬モータが選択される。120mm迫撃砲弾に対して、20Ns~150Nsの範囲内の力積が要る。
【0070】
固体推進薬の例示はニトロセルロースベース(1つ、2つ、3つまたは複数ベース)または複合粉末である。傾斜の実行後、発射物内の作用装薬は作用装置および起爆装置を介して起爆される。好ましくは、起爆装置は火工式で現有の種類であって、続きではさらに詳細に説明しない。
【0071】
好ましくは、発射物/砲弾の回転の角度にある不確定要素を補償するために、例えば、インパルスモータの加熱または冷却を起因にする不確定要素を補償するために、1つ以上のジャイロ装置が利用される。ジャイロの機能は、インパルスモータの起動後に砲弾の角度の変化を測定することである。インパルスモータの起動前、ジャイロの角度信号は0°と設定されている。インパルスモータが起動され、ジャイロが90°と報告してきたとき、作用装薬の起爆が行われる。しかしながら、角度が変化し、60°~120°の間の角度が達成される可能性が相当に高い。70°~110°または80°~100°の角度はさらに有利であり、約90°は理想的な状況。砲弾のボールおよび破片が飛散するとき、角度が90°から多少外れても効果は損なわれない。
【0072】
本体に固定された軸を中心にして発射物の回転が発生することが知られているため、上述した発射物について単軸のジャイロは十分である。発射物の基本設計において、インパルスモータのノズルが傾斜中の向く方向が未知であるが、90°の操作を行えれば大した問題ではない。
【0073】
発射物において、ターゲットに向かう側と、インパルスモータに含まれるノズルが設けられた側とは同じ側である。それは、ボールをケーシング部の一方の側に、すなわち、ノズルが設けられた側と同じ側に設けるだけで十分であることを意味する。この技術は、部隊(detachment)と戦おうとし、砲弾を全く傾斜させたくない代わりに、発射物のなぎ倒し動作(scything action)を行う第2作用モードに難点があるかもしれない。
【0074】
1つの実施例において、曲線状のボールカップは、(さらされる)一方の側に設けられてボールの飛散を最適化するために利用され得る。
【0075】
また、部隊に対する戦いにおいて、自然な個片化をさせることができる場合があり、すなわち、ボールは砲弾の一方の側のみにあることが大した問題ではない。
【0076】
更なる動作設計(二重目的)において、小さいボールが一方の側に配置されて大きいボールがもう一方の側に配置される。
【0077】
要するに、本発明によれば、ボールが上方に放出されないため、目標に対して影響が増加してリスクエリアが減少する。
【0078】
発射物または砲弾を傾斜させるという提案原則は、航空目標に対する、または陸地上と海上の表面目標に対する飛行爆弾または翼安定砲弾にも適用可能である。これらに対して、発射物を目標と関連する正確な方向に調整するように発射物の正確な側におけるインパルスを起爆させることを可能にするために、一般的には複数のインパルスモータが求められる。多軸ジャイロが発射物の位置の軌跡を追跡するため、インパルスは選択可能な角度を調整するように正確な側で起爆される。
【0079】
1つの例示は誘導翼安定砲弾(guided, fin-stabilized artillery shell)である。誘導翼安定砲弾は、表面とフィン部を制御し、その精確性を非常に高めるGPS技術によって誘導される。砲弾は、一般的には榴弾砲とともに排出され相当に高く飛んで、最大約15000メートルまで飛んで、この高さにおいて、翼が展開して砲弾が目標に向かって誘導される。最後のわずかの段階において、砲弾は特定種類の目標への影響を最適化するようにほぼ垂直に落ちる。当該特定種類の目標はなぎ倒し破片動作に弱く、当該砲弾は、説明したバージョンの、下向きの破片に弱い目標への影響を最適化するために回転される迫撃砲弾と異なる。
【0080】
経路の最後における垂直な爆発位置に到達するのに誘導砲弾の操作性が十分でない場合において、砲弾が、自己修正能力、または目標に対して任意の選択角度に設定可能な能力を有すれば、影響を改善することができる。砲弾を垂直させるために求められる角度調整が比較的に小さいため、この角度調整は迫撃砲弾に対して求められる角度調整より少ない。
【0081】
高精度と低操作性を有する砲弾は、本発明に基づいて、インパルスモータを用いて所望の爆発位置に到達することによって著しくよい影響を得る。
【0082】
図3a~
図3cは、側面保護を有する目標との戦いにおいて現有の発射物Aの破片影響不十分の問題点を、発明Bがどのように、最終段階にわたって砲弾を傾斜させ、破片をすぐ下へ目標に向かわせる(砲弾Bからの矢印の方向を参照)ことによって解決するかを表す、異なる可能な方法を示している。
【0083】
図3aは、例えば、部隊が側壁によって保護されている状況を示している。
図3bは同様な状況を示しているが、
図3bにおいて、目標は掩蔽壕などのくぼ地に位置している。
図3cは、傾斜した砲弾Bがどのように有効にその動作を上から車両に向かわせるかを示している。多くの場合、ルーフ121は車両の側面の材料より薄い材料によって構成されているため、適切な目標となる。これらの図は、異なる状況において、砲弾Aと砲弾Bとは破片パターンがどのように異なるかを示している。砲弾Bは垂直方向に目標へ影響を与える一方、砲弾Aは水平方向に目標へ影響を与える。破片パターンはそれぞれの砲弾からの矢印によって示されている。
【0084】
車輌のルーフ、または、砂袋、壁、掩蔽壕など(
図3a~
図3cを参照)によって側面が保護された前哨兵などの傷つきやすい目標への破片影響を増加するために、目標の上方で発射物を傾斜させる方法は、他の目標に対して利用される他の発射物、飛行爆弾、または翼安定砲弾にも適用可能である。