(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】電気化学セル用材料並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20220823BHJP
C08F 230/02 20060101ALI20220823BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20220823BHJP
C08L 43/02 20060101ALI20220823BHJP
C08L 43/04 20060101ALI20220823BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20220823BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220823BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220823BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220823BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
H01M4/13
C08F230/02
C08L33/02
C08L43/02
C08L43/04
H01M4/133
H01M4/36 C
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2019563608
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 US2018032501
(87)【国際公開番号】W WO2018213160
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ティアンユ
(72)【発明者】
【氏名】ペレリート, マーク ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】エバーマン, ケヴィン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】マー, シアオホア
(72)【発明者】
【氏名】リウ, リー
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-090845(JP,A)
【文献】特開2010-129363(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163302(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/073589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/36
H01M 4/58
H01M 4/133
C08F 230/02
C08L 33/02
C08L 43/02
C08L 43/04
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の形態のケイ素含有材料;及び
ケイ素含有材料
の粒子の少なくとも一部を取り囲む架橋ポリマー含有コーティング
を含む負極組成物であって、
架橋ポリマー含有コーティングが、カルボキシル基又はカルボキシレート基を含む1つ以上のビニルモノマーの重合から誘導された(コ)ポリマーを含む
負極組成物。
【請求項2】
ビニルモノマーが架橋性ビニルモノマーを含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項3】
ビニルモノマーが、アクリル酸、アクリル酸リチウム、アクリロニトリル、アクリル酸アルキル、又はビニルホスホン酸を含む、請求項2に記載の負極組成物。
【請求項4】
架橋性ビニルモノマー由来の単位が、(コ)ポリマーの総重量に基づいて、5重量パーセントを上回る量で(コ)ポリマー中に存在する、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項5】
ビニルモノマーが、1つ以上の単官能ビニルモノマーを含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項6】
単官能ビニルモノマー由来の単位が、(コ)ポリマーの総重量に基づいて、75重量パーセントを上回る量で(コ)ポリマー中に存在する、請求項4に記載の負極組成物。
【請求項7】
ビニルモノマーが、1つ以上の非イオン性単官能ビニルモノマーを含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項8】
非イオン性単官能ビニルモノマー由来の単位が、(コ)ポリマーの総重量に基づいて、30重量パーセント未満の量で(コ)ポリマー中に存在する、請求項6に記載の負極組成物。
【請求項9】
架橋(コ)ポリマーが、化学構造(I):
CH
2=CH-R
1-Si(X)
xR
2
3-x (I)
[式中、R
1は、1つ以上のヘテロ原子又はヘテロ原子含有部分で置換されてもよいアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、及びアラルキレンから選択される共有結合又は二価の連結基であり;Xは、C
1-C
4アルコキシから選択される加水分解性基であり;xは、0、1、2、又は3であり;R
2は、C
1-C
4アルキル基である]
で表される1つ以上のシラン官能性モノマーの重合から誘導される、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項10】
架橋ポリマー含有コーティングが、負極組成物中に、ケイ素含有材料及び架橋ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて、0.1から10重量%の間の量で存在する、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項11】
負極組成物の総重量に基づいて、5重量%未満の液体を含む乾燥組成物として存在する、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項12】
ケイ素含有材料の少なくとも一部を取り囲む第2のコーティングをさらに含み、第2のコーティングが導電性材料を含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項13】
第2のコーティングがカーボンブラックを含む、請求項12に記載の負極組成物。
【請求項14】
ケイ素含有材料及び架橋ポリマー含有コーティングを含有する粒子を含んでおり、該粒子が0.7μm超のD10及び15μm未満のD90を有する、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項15】
ケイ素含有材料及び架橋ポリマー含有コーティングを含む凝集粒子を含んでおり、凝集粒子が2.5μm超のD10及び50μm未満のD90を有する、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項16】
ケイ素含有材料が、式:Si
xM
yC
z[式中、x、y、及びzは原子%値を表し、(a)x+y+z=100%であり;(b)x>2y+zであり;(c)x及びyは0より大きく;zは0以上であり;かつ、(d)Mは、鉄及び任意選択的にマンガン、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、及びイットリウムから選択される1つ以上の金属である]を有する粒子を含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項17】
65%≦x≦85%、5%≦y≦20%、及び5%≦z≦15%である、請求項16に記載の負極組成物。
【請求項18】
粒子が0.1から10μmの間の平均サイズを有する、請求項16又は17に記載の負極組成物。
【請求項19】
負極組成物の総重量に基づいて、1から80重量%の間の量のグラファイトをさらに含む、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項20】
結合剤をさらに含み、架橋ポリマー含有コーティングのポリマーが、結合剤の総重量に基づいて、50重量%未満の量で結合剤中に存在する、請求項1に記載の負極組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の負極組成物;及び
集電体
を含む負極。
【請求項22】
請求項
21に記載の負極;
リチウムを含有する正極組成物を含む正極;及び
リチウムを含有する電解質
を含む電気化学セル。
【請求項23】
請求項20に記載の電気化学セルを含む電子デバイス。
【請求項24】
請求項1に記載の負極組成物;
グラファイト;
結合剤;及び
水
を含む水性分散体。
【請求項25】
電気化学セルの製造方法であって、
リチウムを含有する正極組成物を含む正極を提供すること;
請求項
21に記載の負極を提供すること;
リチウムを含有する電解質を提供すること;及び
正極、負極、及び電解質を電気化学セルに組み込むこと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セル(例えば、リチウムイオン電池)のための負極に有用な組成物、並びにその調製及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の負極に使用するために、さまざまな成分が導入されている。このような成分は、例えば、米国特許出願公開第2008/0187838号、米国特許出願公開第2009/0087748号、米国特許出願公開第2012/0270103号、米国特許第8,669,008号、米国特許出願公開第2014/0242461号、米国特許出願公開第2016/0093879号、米国特許出願公開第2015/0064552号、米国特許出願公開第2017/0040599号、Angew. Chem. Int. Ed., 51: 8762-8767、韓国特許出願公開第20150060513号、及び特開2015-103449号に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
幾つかの実施態様では、負極が提供される。負極は、ケイ素含有材料;及び、ケイ素含有材料の少なくとも一部を取り囲む架橋ポリマー含有コーティングを含む。架橋ポリマー含有コーティングは、カルボキシル基又はカルボキシレート基を含む1つ以上のビニルモノマーの重合から誘導された(コ)ポリマーを含む。
【0004】
本開示の上記概要は、本開示の各実施態様を説明することを意図したものではない。本開示の1つ以上の実施態様の詳細は、以下の説明にも記載されている。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、その説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0005】
本開示は、添付の図面に関連して本開示のさまざまな実施態様の以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施態様を使用して調製されたリチウムハーフセルのための電気化学サイクルの結果のグラフ
【
図2】本開示の実施態様を使用して調製されたリチウムハーフセルのための電気化学サイクルの結果のグラフ
【
図3】本開示の実施態様を使用して調製されたリチウムハーフセルのための電気化学サイクルの結果のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0007】
電気化学エネルギー貯蔵は、グリッド貯蔵、電気自動車、及びポータブル電子機器を含む、さまざまなアプリケーションにとって重要な技術となっている。リチウムイオン電池(LIB)は、比較的高いエネルギー密度と優れた速度能力の理由から、実行可能な電気化学エネルギー貯蔵システムである。電気自動車などの産業関連のバッテリ用途を大規模に商業的に実行可能にするためには、リチウムイオン電池ケミストリのコストを下げることが望ましい。
【0008】
ケイ素をベースにした高エネルギー密度のアノード材料は、電気自動車及びハンドヘルド電子機器などの用途のためのリチウムイオン電池のコストを削減し、エネルギー密度を向上させる手段として特定されている。ある特定のケイ素合金材料は、良好な粒子形態(最適化された粒子サイズ、低い表面積)と高い初回サイクル効率を提供し、より高エネルギーのセル(体積(Wh/L)及び重量(Wh/kg)の両方のエネルギー密度に基づく)をもたらす。最大Wh/L値を達成するためには、アノード中のケイ素合金の重量パーセントを最大化する必要がある。
【0009】
例えば、容量が1100mAh/グラムを超え、密度が約3.4g/ccである、ある特定のケイ素合金は、充放電サイクル中に大幅な体積変化(最大約140%以上)を被る。グラファイトアノードとともに一般的に使用される結合剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン及びスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロースナトリウム(SBR/Na-CMC)などの結合剤の選択だけでは、約15重量%を超えるケイ素合金を含むアノードの体積変化の問題に適切に対処することが証明されていない。
【0010】
ケイ素をベースとした高エネルギー密度のアノード材料を使用するという課題に対処するために、さまざまな試みがなされてきた。例えば、ある特定のポリマーをケイ素材料と併せて結合剤として使用することが説明されている。しかしながら、これらの試みのそれぞれによって、これまで技術が商用バッテリのケイ素をベースとした高エネルギー密度アノード材料の使用を完全に可能にすることを妨げていたさらなる課題が明らかになった。例えば、一部のポリマーでは、脆弱すぎる、親水性が高すぎる、又は不十分な接着性を示すことが観察されている。あるいは、例えば、一部のポリマーは、高い不可逆容量、容量の低減、又は電力容量の低減に寄与した。さらには、これらの材料の多くは、アノード材料を集電体上にコーティングするために用いるスラリーに混合されると、又は電池が循環されると、ケイ素ベースのアノード材料と接触したままで保持されないことが観察されている。
【0011】
活性材料の表面にポリマーコーティング層を適用することを通じて、ケイ素をベースとした高エネルギー密度のアノード材料を使用するという上記課題に対処するために、他のさまざまな試みが行われてきた。しかしながら、これらの試みのそれぞれは、これまで技術が商用バッテリでのケイ素をベースとした高エネルギー密度のアノード材料の使用を完全に可能にすることを妨げていた課題も、もたらすこととなった。例えば、ポリマーは、アノード配合物で一般的に使用されるスラリー成分中で不安定であるか、又はスラリー成分に可溶性であることが観察されている。あるいは、例えば、それらは、高い不可逆容量、容量の低減、又は電力容量の低減にも寄与する。概して、本開示は、これらの多くの課題を克服することに向けられている。
【0012】
本明細書で用いられる場合、
「(コ)ポリマー」という用語は、ホモポリマー及びコポリマーを指す;
「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸又はメタクリル酸を指す;
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート又はメタクリレートを指す;
「(メタ)アクリルアミド」という用語は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを指す;
「リチウム化する」及び「リチウム化」という用語は、リチウムを電極材料又は電気化学的に活性な相に加えるプロセスを指す;
「脱リチウム化する」及び「脱リチウム化」という用語は、電極材料又は電気化学的に活性な相からリチウムを除去するプロセスを指す;
「充電」及び「充電する」という用語は、電気化学エネルギーをセルに供給するプロセスを指す;
「放電」及び「放電する」という用語は、例えば、セルを使用して所望の作業を実行するときに、セルから電気化学エネルギーを取り出すプロセスを指す;
「充放電サイクル」という語句は、電気化学セルが完全に充電されるサイクル、すなわち、セルがその上部カットオフ電圧に達し、アノードが約100%の充電状態にあり、その後放電されて下部カットオフ電圧に達し、アノードが約100%の放電深度にある、サイクルを指す;
「正極」という語句は、フルセルの放電プロセス中に電気化学的還元及びリチウム化が発生する電極(しばしばカソードと呼ばれる)を指す;
「負極」という語句は、フルセルの放電プロセス中に電気化学的な酸化及び脱リチウム化が発生する電極(しばしばアノードと呼ばれる)を指す;
「電気化学的活性材料」という語句は、リチウムイオン電池での充放電中に発生する可能性のある条件下(例えば、0Vから2Vの電圧対リチウム金属)で、リチウムと電気化学的に反応又は合金化できる単相又は複数の相を含むことができる材料を指す;
「合金」という用語は、金属、メタロイドのいずれか又はすべてのうち、2つ以上を含む材料を指す、又は;
「鎖状連結したヘテロ原子」という語句は、炭素-ヘテロ原子-炭素鎖を形成するように炭素鎖内の炭素原子に結合している炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の実施態様で用いられる場合、「又は」という用語は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、「及び/又は」を含むその意味内で一般に使用される。
【0013】
本明細書で用いられる場合、端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0014】
別途指示がない限り、本明細書及び実施態様で使用される量又は成分、特性の測定値などを表すすべての数値は、すべての場合において、「約」という用語によって修正されるものと理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び実施態様に添付のリストに記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化しうる。少なくとも、特許請求された実施態様の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、かつ、通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0015】
幾つかの実施態様では、本開示は、二次電気化学セル(例えば、リチウムイオン電池)での使用に適した電極組成物に関する。概して、電極組成物(例えば、負極組成物)は、(i)ケイ素含有材料と、(ii)合金材料の表面(例えば、ケイ素含有材料の粒子の外表面)に配置された架橋ポリマー含有コーティングとを含む電気化学的活性材料を含みうる。
【0016】
幾つかの実施態様では、電気化学的活性材料には、ケイ素含有材料が含まれうる。ケイ素含有材料には、元素ケイ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、又はケイ素含有合金が含まれうる。幾つかの実施態様では、ケイ素含有材料は、1000mAh/ml超、1500mAh/ml超、2000mAh/ml超、又は2500mAh/ml超の容積容量;あるいは、1000から5500mAh/ml、1500から5500mAh/ml、又は2000から5000mAh/mlの範囲の容量を含みうる。本開示の目的では、容積容量は、ピクノメータで測定された真の密度に、C/40のレートでリチウムに対して5mVまでの最初のリチウム化比容量を乗算して決定される。この最初のリチウム化比容量は、90重量%の活性材料と10%のリチウムポリアクリレート結合剤とを有する、1から4mAh/cm2の電極を形成し、アノードとしてのリチウム金属と従来の電解質(例えば、1.0MのLiPF6でEC:EMC比3:7)とでセルを構築し、リチウムに対して5mVまで約C/10のレートでアノードをリチウム化し、C/40のレートまで5mVを保持することによって、測定することができる。
【0017】
ケイ素含有材料がケイ素含有合金を含む実施態様では、ケイ素含有合金は式:SixMyCzを有してよく、ここで、x、y、及びzは原子%値を表し、(a)x+y+z=100%であり;(b)x>2y+zであり;(c)x及びyは0より大きく;zは0以上であり;(d)Mは、鉄及び任意選択的にマンガン、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、又はそれらの組合せから選択される1つ以上の他の金属である。幾つかの実施態様では、65%≦x≦85%、70%≦x≦80%、72%≦x≦74%、又は75%≦x≦77%であり;5%≦y≦20%、14%≦y≦17%、又は13%≦y≦14%;及び5%≦z≦15%、5%≦z≦8%、又は9%≦z≦12%である。幾つかの実施態様では、x、y、及びzは0より大きい。
【0018】
幾つかの実施態様では、ケイ素含有材料は粒子の形態を取ることができる。粒子は、60μm以下、40μm以下、20μm以下、又は10μm以下、若しくはそれより小さい平均粒子サイズ;少なくとも0.5μm、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも5μm、又は少なくとも10μm、若しくはそれより大きい平均粒子サイズ;あるいは、0.5から10μm、1から10μm、2から10μm、40から60μm、1から40μm、2から40μm、10から40μm、5から20μm、10から20μm、1から30μm、1から20μm、1から10μm、0.5から30μm、0.5から20μm、又は0.5から10μmの平均粒子サイズを有しうる。本明細書で用いられる場合、「平均粒子サイズ」とは、レーザー回折により測定される粒子の平均直径(又は最長寸法の平均長さ)を指す。一般に、ケイ素含有活性材料の粒子サイズ分布は、D10、D50、D90の量によって特徴付けられる多分散性を示しうることが観察されている。これらの値は、粒子の総体積のそれぞれ10、50、及び90%がそのサイズを超えて存在する、粒子サイズを表す。幾つかの実施態様では、D10は、少なくとも0.5μm、少なくとも1.0μm、少なくとも1.5μm、少なくとも2μm、少なくとも2.5μm、少なくとも3.0μm、又は少なくとも5.0μmであり;D50は、20μm以下、10μm以下、7μm以下、5μm以下、又は3μm以下であり;D90は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、又は10μm以下である。本明細書で用いられる場合、粒子サイズ分布D10、D50、D90は、本開示の実施例のセクションに記載される方法を用いて、Horiba LA-960機器を用いて水中のレーザー回折によって測定される。
【0019】
幾つかの実施態様では、ケイ素含有材料は、低表面積を有する粒子の形態を取ることができる。粒子は、20m2/g未満、12m2/g未満、10m2/g未満、5m2/g未満、4m2/g未満、又はさらに2m2/g未満の表面積を有しうる。
【0020】
ケイ素含有材料がケイ素含有合金を含む実施態様では、ケイ素含有合金の各相(すなわち、合金材料の活性相、不活性相、又は他の任意の相)は、1つ以上の粒子を含むことができる、若しくは1つ以上の粒子の形態でありうる。幾つかの実施態様では、ケイ素含有合金の各相のシェラー粒度は、50ナノメートル以下、20ナノメートル以下、15ナノメートル以下、10ナノメートル以下、又は5ナノメートル以下である。本明細書で用いられる場合、合金材料の相のシェラー粒度は、当業者によって容易に理解されるように、X線回折及びシェラー方程式によって決定される。
【0021】
幾つかの実施態様では、電気化学的活性材料は、ケイ素含有材料上に配置され、それを少なくとも部分的に取り囲む(かつ、最大で完全に取り囲む)、1つ以上のコーティングをさらに含むことができる。本明細書で用いられる場合、ケイ素含有材料に関して、「コーティング」とは、材料(例えば、酸化物又は合金粒子)の外表面上又は上方に配置された一又は複数の材料の単層又は多層を指す。「コーティング」という用語は、材料の外表面に排他的に配置された層と、材料の外表面にある程度浸透する層の両方を指す場合がある。「コーティング」は、材料と直接接触していてもよく(すなわち、材料とコーティングとの間に中間層が存在しなくてもよい)、あるいは、材料上に配置された1つ以上の中間層又はコーティングの上に配置されてもよい。
【0022】
幾つかの実施態様では、電気化学的活性材料は、導電性の層又はコーティングを含むコーティングを含みうる。例えば、幾つかの実施態様では、導電性コーティングは、カーボンブラックなどの炭素質材料を含みうる。導電性コーティングは、ケイ素含有材料と導電性コーティングの総重量に基づいて、0.01から20重量%、0.1から10重量%、又は0.5から5重量%の量で存在しうる。
【0023】
幾つかの実施態様では、導電性コーティングに加えて、又はその代替として、電気化学的活性材料は、架橋ポリマー含有コーティングを含みうる。例えば、架橋ポリマー含有コーティングは、中間層(例えば、導電性コーティング)の上に配置することができる。本明細書で用いられる場合、「架橋ポリマー」とは、溶媒安定性のポリマーネットワークをもたらす、直鎖又は分岐ポリマー鎖間に共有結合を有するポリマーネットワークを指す場合がある。これらの共有結合は、例えば、化学架橋剤、熱、紫外線、電子ビーム、放射線、又はそれらの組合せを使用する方法によって生成することができる。幾つかの実施態様では、架橋ポリマー含有コーティングは、1つ以上の架橋ポリマーからなるか、又は本質的にそれからなりうる。
【0024】
幾つかの実施態様では、架橋ポリマーは、1つ以上のビニルモノマーの重合から誘導された1つ以上の架橋(コ)ポリマーを含みうる。本開示の目的では、「ビニルモノマー」という用語は、付加又は連鎖成長重合プロセスを被ることができる分子構造中に置換又は非置換のビニル基を有するモノマーを指す。このような重合反応は、当技術分野でよく知られている開始剤を使用して、カチオン的、アニオン的、又はラジカル的に開始することができる。
【0025】
幾つかの実施態様では、ビニルモノマーは、1つ以上の架橋性ビニルモノマーを含みうる。概して、架橋性ビニルモノマーは、例えば、ビニル基、プロパルギル基、アジド基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、N-メチロールアミド基、又はアルコキシシリル基などの反応性官能基を含むビニルモノマーを指しうる。本明細書で用いられる「架橋性」という用語は、モノマーの説明に用いられる場合、一次鎖成長重合とは無関係に、二次架橋反応に関与できるモノマーを指す。対応する反応性官能基は、重合プロセス中、若しくは化学架橋剤又は放射線エネルギーの非存在下で安定である。架橋反応の前に、反応性官能基を保護してよいことが理解されるべきである。保護/脱保護反応は、例えば、水酸化アンモニウムによる酸官能性の可逆的中和、無水物の形成及び加水分解、可逆性ディールス・アルダー反応などを含みうる。
【0026】
幾つかの実施態様では、架橋性ビニルモノマーは、1つ以上のカルボキシル基又はカルボキシレート基を含みうる。幾つかの実施態様では、架橋性ビニルモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸などのビニルカルボン酸を含みうる。他のビニルカルボン酸の例には、例えばマレイン酸又はその無水物、フマル酸、及びイタコン酸など、ジカルボン酸又は誘導体が含まれうる。さまざまな実施態様では、これらのジカルボン酸の半エステルが用いられうる。
【0027】
幾つかの実施態様では、追加の又は代替的な架橋性ビニルモノマーには、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、及び3-トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートが含まれうる。
【0028】
幾つかの実施態様では、上述の架橋性ビニルモノマーに加えて、ビニルモノマーには、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属(例えば、リチウム)塩、アルキル基内に1から18個の炭素原子を含む(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類又はアミド類(例えば、メチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はステアリル(メタ)アクリレート又はジメチルアクリルアミド)、若しくは置換された(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類又はアミド類(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート又はテトラヒドロフルフリルアクリレート又はグリシジルメタクリレート又はメトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート)など、単官能ビニルモノマーが含まれうる。本明細書で使用する用語「単官能」とは、ビニルモノマーを説明するために使用する場合には、化学反応性官能基を1つだけ有するモノマーを指し、この反応性官能基は重合反応に適したビニル基である。追加の単官能ビニルモノマーには、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン化合物;N-ビニルイミダゾール;4-ビニルピリジン;アクリロニトリルなどの有機ニトリル;N-ビニルカプロラクタム、又はN-ビニルピロリドン;ビニルホスホン酸;又は、フッ素含有ビニルモノマーも含まれうる。架橋(コ)ポリマー。
【0029】
幾つかの実施態様では、本開示の架橋(コ)ポリマーは、架橋(コ)ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%の量の単官能ビニルモノマー由来の単位を含みうる。幾つかの実施態様では、ビニルモノマーの総重量に基づいて、非架橋性単官能モノマーの30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下で、非イオン性ビニルモノマーを含みうる。幾つかの実施態様では、本開示の架橋(コ)ポリマーは、少なくとも2つの単官能ビニルモノマーから誘導されうる。
【0030】
幾つかの実施態様では、上述のビニルモノマーに加えて又はその代替として、架橋(コ)ポリマーは、化学構造(I):
CH2=CH-R1-Si(X)xR2
3-x
[式中、R1は、1つ以上のヘテロ原子又はヘテロ原子含有部分で置換されてもよいアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、及びアラルキレンから選択される共有結合又は二価の連結基であり;Xは、C1-C4アルコキシから選択される加水分解性基であり;xは、0、1、2、又は3であり;R2は、C1-C4アルキル基である] で表される1つ以上のシラン官能性モノマーの重合から誘導することができる。本開示のある特定のケイ素含有粒子の表面上に-SiO-(したがって、シラノール又は-SiOH)官能性が存在しうることが見出された。これに関して、-SiOH表面基とシラン官能性との反応によってこのような合金への接着性を改善できる材料が望ましい場合がある。例えば、このような接着の改善は、集電体への負極の接着能力に寄与し、リチウム化-脱リチウム化サイクルで生じる体積変化に耐えることができる。シラノール官能性は、コーティング内で縮合自己反応を被り、水及び-Si-O-Si-結合を形成することができ、それによって架橋及びその後の水不溶性を生じうる。加えて、シラン官能性コモノマーをシラン官能性(コ)ポリマーに組み込むレベルが重要でありうることが見出された。例えば、シラン含有量が高すぎると、材料が不安定になり、早すぎる架橋が生じてゲルを形成し、水性及び溶液ベースの処理が不可能になってしまう可能性がある。分子量制御もまた、重合混合物に添加される連鎖移動剤の使用によって、重要になりうる。これに関して、幾つかの実施態様では、シラン官能性モノマー単位は、架橋性(コ)ポリマーの総重量に基づいて、5、4、又は3重量%未満;若しくは1から5重量%の間の量で架橋性(コ)ポリマー中に存在しうる。
【0031】
幾つかの実施態様では、架橋(コ)ポリマーは、95重量%のアクリル酸と、5重量%の3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートとの混合物、及びメルカプトプロピルトリメトキシシラン、四臭化炭素、及びメルカプトエタノールなどの連鎖移動剤から調製することができ、非中和ポリカルボン酸の形態、並びに、(コ)ポリマーを水酸化リチウムで中和することにより生成されるポリリチウム塩の形態の両方で、水溶性をもたらす。水溶液中では、メトキシシラン基は加水分解されてシラントリオール官能性を生じ、(コ)ポリマーはコーティングされ乾燥されて水が除去されるまでは、溶液中で安定である。この時点で、シラントリオール基は凝縮して、架橋固体を与えうるが、これは、水に戻したときに膨潤する可能性があるが室温で少なくとも24時間以内には溶解しない。対照的に、シラン官能性を有しないポリアクリル酸又はポリアクリル酸リチウム対照は、水に再曝露すると数分以内に再溶解する。
【0032】
幾つかの実施態様では、架橋性ビニルモノマー由来の単位は、架橋(コ)ポリマーの総重量に基づいて、0.1から100重量%、0.5から60重量%、1から50重量%、2から40重量%、又は3から30重量%の量で架橋(コ)ポリマー中に存在しうる。
【0033】
架橋ポリマー含有コーティング材料が1つ以上の架橋性ビニルモノマー単位の重合から誘導される架橋(コ)ポリマーを含む実施態様に加えて、架橋(コ)ポリマーは、他の方法では架橋官能性を含まないポリマーに1つ以上の化学架橋試薬を添加することによって生成される架橋結合を含むことができる。適切な化学架橋試薬には、1つ以上(2つ以上の任意の組合せを含む)のオリゴマー又はポリマーの多官能性のアルコール、アジリジン、ビスアミド、グリシジルエーテル、オキサゾリン、トリアジン、シラン、カルボジイミド、又はイソシアネートが含まれる。幾つかの実施態様では、架橋反応は、高温で、カルボン酸基とアジリジン基の間、カルボン酸基とビスアミド基の間、又はヒドロキシル基とイソシアネート基の間で起こりうる。
【0034】
さまざまな実施態様では、架橋ポリマー含有コーティングは、ケイ素含有材料及び架橋ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて、0.01から10重量%、0.1から10重量%、0.5から10重量%、又は1から10重量%、0.5から5重量%、又は1から5重量%の間の量で存在しうる。
【0035】
幾つかの実施態様では、本開示の電気化学的活性材料(材料を含有する任意の導電性ポリマー又は架橋ポリマーを含む)は、乾燥形態で(例えば、乾燥粉末として)存在しうる。これに関して、コーティングされる材料は、組成物の総重量に基づいて、20重量%未満、2重量%未満、又は0.2重量%未満の液体(例えば、水性又は有機液体溶媒、若しくは液体分散剤)を含む組成物中に存在しうる。
【0036】
概して、本開示の架橋ポリマー含有コーティングは、Li+及び電子が活性材料に到達することを可能にしつつ、活性材料の表面を保護するように機能しうる。それらは、電気化学的に活性な比表面積をさらに減少させる可能性がある。それらは、さらに、固体-電解質界面(SEI)などの不動態化層と同様に、表面近くの電解質の有害な副反応を減少させるか、あるいは停止するように作用しうる。架橋はポリマーコーティングを強化し、活性材料との接着性を高め、活性材料との接触を維持する能力を高め、また複数の活性材料粒子を含む凝集体をまとめて保持する能力を高めると考えられている。ポリマーコーティングされた活性材料粒子又は凝集体は、集電体上での乾燥アノードの圧縮中、及び電池のサイクル中に、集電体上へのアノード材料のコーティングの準備において形成されるスラリーの高剪断混合中に、厳しい応力及び疲労にさらされることから、この追加の強度は重要であると考えられる。架橋はまた、得られる材料の親水性を低下させることもでき、したがって、高いサイクル寿命を達成するためには重要でありうる、非常に低い含水量の電池の構築を容易にすると考えられる。ケイ素をベースとした高エネルギー密度のアノード材料を有する電池におけるサイクル寿命の改善のためにポリマー材料を使用する以前の試みには、水に可溶なポリマーが含まれており、したがって水ベースのスラリー中の活性材料から完全に解離する可能性がある。本開示の架橋ポリマー含有コーティングは、この課題を克服するものである。さらなる従来の試みは、ケイ素をベースとした材料の表面の利点を実証する一方で、負極又は集電体表面の他の活性材料に対して有害であることを同時に証明している。ケイ素をベースとした材料の表面に、コーティングとしてポリマー材料を施し、架橋によってコーティング材料をそこに局在化させることにより、これらの追加の課題も克服される。
【0037】
幾つかの実施態様では、以下でさらに詳細に論じるように、ケイ素含有材料上への架橋ポリマー含有コーティングの堆積の結果として、電気化学的活性材料(例えば、ケイ素含有材料及び任意の導電性ポリマー又は架橋ポリマー含有コーティング)の水性溶媒安定凝集が生じうる。これに関して、幾つかの実施態様では、電気化学的活性材料は、0.5から20、0.5から10、又は1から10ミクロンの間の平均粒子サイズを有する凝集粒子の乾燥組成物の形態でありうる。
幾つかの実施態様では、凝集粒子の乾燥組成物は粒子サイズ分布を有しうる。概して、アノード活性材料の粒子サイズ分布は、負極材料の性能(例えば、サイクル寿命、カレンダー寿命、及び膨張)に大きい影響を与える可能性がある。分布に含まれる小さすぎる粒子が多すぎると、比表面積は大きくなりすぎる。これは、表面での電解質の有害な副反応の反応速度を増加させる傾向があり、これにより、セル内の抵抗がより急速に増加し、カソード電位がより高くなり、溶媒及び又は塩分子を消費し、最終的に不十分なサイクル寿命、不十分なカレンダー寿命、及び膨張の増大につながる。分布に含まれる大きすぎる粒子が多すぎると、電力容量が低下し、電極が曲がる傾向があり、セパレータを横切る短絡のリスクが高まる。したがって、架橋ポリマーでコーティングされた活性材料は、ポリマーでコーティングされた表面上の対象電解質の反応性に基づいて決定された粒子サイズ分布を有する必要がある。その反応性がゼロに近い場合、理想的なサイズ分布は小さくなる。その反応性がより適度に低下する場合には、理想的なサイズ分布は従来のアノード活性材料のものに近くなる。従来のアノード活性材料は、粒子の10%が1~5ミクロン未満であり、50%が8~20ミクロン未満であり、90%が15~30ミクロン未満である分布を有しうる。
【0038】
幾つかの実施態様では、本開示の負極組成物は、上述の電気化学的活性材料に加えて、追加の電気化学的活性材料(例えば、グラファイト)、結合剤、導電性希釈剤、フィラー、接着促進剤、分散粘度調整のための増粘剤、又は当業者に知られている他の添加剤をさらに含むことができる。幾つかの実施態様では、上述の電気化学的活性材料(例えば、合金材料、並びに非金属、水不溶性、又は電解質耐性コーティング)は、負極組成物の総重量に基づいて、10から99重量%、20から98重量%、40から98重量%、60から98重量%、75から95重量%、又は85から95重量%の間の量で負極組成物中に存在しうる。
【0039】
幾つかの実施態様では、負極組成物は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Christensenらによる米国特許出願公開第2008/0206641号に記載されるように、とりわけカレンダーコーティングにおける、密度及びサイクル性能を改善するためにグラファイトをさらに含むことができる。グラファイトは、負極組成物の総重量に基づいて、10重量%超、20重量%超、50重量%超、70重量%超、又はそれより多い量で;あるいは、電極組成物の総重量に基づいて、20重量%から90重量%、30重量%から80重量%、40重量%から60重量%、45重量%から55量%、80重量%から90重量%、又は85重量%から90重量%の間の量で、負極組成物中に存在しうる。
【0040】
幾つかの実施態様では、負極組成物は結合剤も含みうる。適切な結合剤は、スチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロースナトリウム、アクリル酸(コ)ポリマー、及びそれらのアルカリ金属塩、フルオロポリマー/アクリル(コ)ポリマーのブレンドを含みうる。幾つかの実施態様では、結合剤は、負極組成物の総重量に基づいて、0.1から2、1から10、又は3から10の間の量で電極組成物中に存在しうる。幾つかの実施態様では、架橋ポリマー含有コーティング中に存在する架橋ポリマーは、結合剤中には存在しない。さまざまな実施態様では、架橋ポリマー含有コーティング中に存在する架橋ポリマーは、結合剤の総重量に基づいて、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、又は0.1重量%未満の量で結合剤中に存在する。本明細書で用いられる場合、電極組成物の文脈において、「結合剤」という用語は、電極を形成する緩くアセンブリされた物質の凝集、若しくは金属集電体(例えば銅箔)へのそれらの物質の接着を生成又は促進するように機能する材料を指す。
【0041】
例示的な実施態様では、負極組成物は、組成物から集電体への電子移動を促進するために導電性希釈剤も含むことができる。導電性希釈剤には、例えば、炭素、導電性ポリマー、粉末金属、金属窒化物、金属炭化物、金属シリサイド、及び金属ホウ化物、又はそれらの組合せが含まれる。代表的な導電性カーボン希釈剤には、Super P及びSuper Sカーボンブラック(いずれもスイス国Timcal社製)などのカーボンブラック、Shawinigan Black(Chevron Chemical Co.、米国テキサス州ヒューストン所在)、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、グラファイト、カーボンファイバー、及びそれらの組合せが含まれる。幾つかの実施態様では、導電性カーボン希釈剤は、カーボンナノチューブを含みうる。幾つかの実施態様では、電極組成物中の導電性希釈剤(例えば、カーボンナノチューブ)の量は、電極コーティングの総重量に基づいて、少なくとも2重量%、少なくとも6重量%、又は少なくとも8重量%、又は少なくとも20重量%であってよく;あるいは、負極組成物の総重量に基づいて、0.2重量%から80重量%、0.5重量%から50重量%、0.5重量%から20重量%、又は1重量%から10重量%の間でありうる。
【0042】
幾つかの実施態様では、本開示の負極組成物を集電体上に堆積させる(負極を形成する)前に、負極組成物は水性分散体中に存在してもよい。これに関して、本開示はさらに、負極組成物を含む水性分散体を対象とする。幾つかの実施態様では、水性分散体は、水性分散体の総重量に基づく1から90重量%又は5から30重量%の間の量の上述の電気化学的活性材料(例えば、ケイ素含有材料と任意の導電性又は架橋ポリマー含有コーティングとを含む凝集粒子);水性分散体の総重量に基づく10から90重量%又は20から70重量%の間の量のグラファイト;水性分散体の総重量に基づく0.2から10又は.5から5重量%の間の量の結合剤(例えば、スチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロースナトリウム);及び、水性分散体の総重量に基づく0.01から10又は0.5から20の間の量のアクリル酸(コ)ポリマー及びそれらのアルカリ金属塩を含みうる。幾つかの実施態様では、水性分散体の成分は、分散剤(例えば水)内に均一に分布していてもよい。
【0043】
幾つかの実施態様では、上述のように、本開示の電気化学的活性材料を含む負極組成物が形成され、ここで、電気化学的活性材料が他の材料とブレンドされて、集電体(例えば銅箔)上に堆積されるスラリーが形成され、該スラリーが乾燥及び圧縮される。このような負極は、例えば、グラファイトなどの他の活性材料、カーボンブラック、グラフェン、若しくはカーボンナノチューブ又はカーボンファイバーなどの導電性添加剤を含んでよく、これらはすべてまとめて保持され、PVDF、カルボキシルメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、又はそれらの組合せなどの1つ以上の結合剤材料によって集電体に接着される。このような実施態様では、一部には、本開示のコーティングの利益はケイ素含有材料の表面の改質及び保護にあるため、本開示の架橋ポリマー含有コーティングは、結合剤として使用する場合のように電極のすべての成分の上及び間に位置するのではなく、個別の粒子コーティングとして存在する(すなわち、主にケイ素含有材料の表面に位置する)ことが、本開示の利点である。本開示の架橋ポリマー含有コーティングは、理論的には、すべての電極成分をまとめて保持し、それらを集電体に接着するための結合剤材料として使用することもできるが、それらは、この業界で商業的に使用されている他の結合剤ほどその目的に適していない。さらには、このような架橋ポリマー含有コーティングを電極のすべての成分のための結合剤材料として使用することの幾つかの欠点は、それらが同様に接着しない可能性があり、より脆弱になる傾向があり、より親水性になる傾向があることである。電極のすべての成分の結合剤としてではなく、ケイ素含材料の個別のコーティングとしてこのような架橋ポリマーを使用することにより、この電気化学的に不活性で潜在的に親水性の材料の総含有量を最小限に抑えることができる。
【0044】
幾つかの実施態様では、本開示はさらに、リチウムイオン電気化学セルに使用するための負極を対象とする。負極は、その上に上述の負極組成物が配置された集電体を含みうる。集電体は、金属(例えば、銅、アルミニウム、ニッケル)、又は炭素複合材料などの導電性材料で形成されていてもよい。
【0045】
幾つかの実施態様では、本開示はさらにリチウムイオン電気化学セルに関する。上述の負極に加えて、電気化学セルは、正極、電解質、及びセパレータを含みうる。セルでは、電解質は正極と負極の両方に接触していてもよく、正極と負極は互いに物理的に接触していない。典型的には、それらは電極間に挟まれた高分子セパレータフィルムによって分離される。
【0046】
幾つかの実施態様では、正極は、集電体の上に配置された正極組成物を含みうる。正極組成物は、リチウム金属酸化物を含む活性材料を含みうる。例示的な実施態様では、活性材料には、LiCoO2、LiCo0.2Ni0.8O2、LiMn2O4、LiFePO4、LiNiO2などのリチウム遷移金属酸化物層間化合物、若しくは、有効な割合でのマンガン、ニッケル、及びコバルトのリチウム混合金属酸化物、あるいは有効な割合でのニッケル、コバルト、及びアルミニウムのリチウム混合金属酸化物が含まれうる。これらの材料のブレンドは、正極組成物にも使用できる。他の例示的なカソード材料は、米国特許第6,680,145号(Obrovacら)に開示されており、リチウム含有粒子と組み合わせて遷移金属粒子を含む。適切な遷移金属粒子には、例えば、約50ナノメートル以下の粒子サイズを有する、鉄、コバルト、クロム、ニッケル、バナジウム、マンガン、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、又はそれらの組合せが含まれる。適切なリチウム含有粒子は、酸化リチウム、硫化リチウム、ハロゲン化リチウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又はフッ化物)、若しくはそれらの組合せから選択されうる。正極組成物は、結合剤(ポリマー結合剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン))、導電性希釈剤(例えば、カーボン、カーボンブラック、フレークグラファイト、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー)、フィラー、接着促進剤、カルボキシメチルセルロースなどのコーティング粘度調整用の増粘剤、又は当業者に知られている他の添加剤などの添加剤をさらに含みうる。
【0047】
さまざまな実施態様では、電気化学セル用の有用な電解質組成物は、液体、固体、又はゲルの形態でありうる。電解質組成物は、塩及び溶媒(又は電荷輸送媒体)を含みうる。液体電解質溶媒の例には、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、フルオロエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、及びそれらの組合せが含まれる。幾つかの実施態様では、電解質溶媒は、モノグリム、ジグリム、及びテトラグリムなどのより高次のグリムを含めたグリムを含みうる。適切なリチウム電解質塩の例には、LiPF6、LiBF4、LiClO4、リチウムビス(オキサラト)ボレート、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiC(CF3SO2)3、及びそれらの組合せが含まれる。
【0048】
幾つかの実施態様では、リチウムイオン電気化学セルは、米国ノースカロライナ州シャーロット所在のCelgard LLCから入手可能な微孔質材料などの微孔質セパレータをさらに含みうる。セパレータをセルに組み込み、負極が正極と直接接触するのを防ぐために使用することができる。
【0049】
開示されたリチウムイオン電気化学セルは、ポータブルコンピュータ、タブレットディスプレイ、携帯情報端末、携帯電話、電動デバイス(例えば、パーソナル又は家庭用電化製品、電動工具、及び車両)、機器、照明装置(例えば、懐中電灯)、及び加熱装置を含むがこれらに限定されない、さまざまなデバイスで使用することができる。本開示の複数のリチウムイオン電気化学セルを組み合わせて、バッテリパックを提供することができる。
【0050】
本開示はさらに、上述の電気化学的活性材料の製造方法に関する。ケイ素含有材料がケイ素含有合金を含む実施態様では、合金材料は、冷間圧延、アーク溶解、抵抗加熱、ボールミル、スパッタリング、化学蒸着、熱蒸発、霧化、誘導加熱、又は溶融紡糸を含む金属又は合金のフィルム、リボン、又は粒子を製造するための既知の方法で製造することができる。幾つかの実施態様では、合金材料は、それぞれそれらの全体が参照することによりにより本明細書に組み込まれる、米国特許第7,871,727号、米国特許第7,906,238号、米国特許第8,071,238号、又は米国特許第8,753,545号の方法に従って製造することができる。ケイ素含有材料が酸化ケイ素を含む実施態様では、材料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、特開2001-185127号に従って製造することができる。
【0051】
コーティングは、ミリング、溶液堆積、気相プロセス、又は当業者に知られている他のプロセスによって、ケイ素含有材料に適用することができる。幾つかの実施態様では、溶液堆積が用いられうる。
【0052】
電気化学的活性材料が導電層を含む実施態様では、このようなコーティングは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,664,004号の方法に従って適用されうる。
【0053】
本開示はさらに、上述の負極組成物を含む負極の製造方法に関する。幾つかの実施態様では、本方法は、水又はN-メチルピロリジノンなどの適切なコーティング溶媒中に、グラファイト、結合剤、導電性希釈剤、フィラー、接着促進剤、増粘剤などの添加剤とともに、上記の電気化学的活性材料を混合して、コーティング分散体又はコーティング混合物を形成することを含みうる。幾つかの実施態様では、混合物に添加される結合剤は、スチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースのいずれか又は両方を含みうる。幾つかの実施態様では、本開示の架橋ポリマー含有コーティングの結果として、電気化学的活性材料は、安定した粒子サイズを示しうる。特に、架橋ポリマーでコーティングした電気化学的活性材料は、水性溶媒及び有機溶媒の両方(例えば、水、NMPなど)で、その粒子サイズ及びサイズ分布を保持することができる。これは、電気化学的活性材料が、典型的には他の活性材料、導電剤、及び結合剤とともに、水性媒体又は有機媒体中へと高剪断下で分散されてスラリーを形成することができ、それが次に集電体上にコーティングされることを所与とすると、特に有利でありうる。
【0054】
幾つかの実施態様では、分散体は、完全に混合されてよく、その後、ナイフコーティング、ノッチ付きバーコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、エレクトロスプレーコーティング、又はグラビアコーティングなどの任意の適切なコーティング技術によって箔集電体に施すことができる。集電体は、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、又はニッケル箔などの導電性金属の薄い箔でありうる。コーティング混合物を集電箔上にコーティングすることができ、その後、空気又は減圧下で乾燥させて、任意選択的に、通常、約80°から約300℃で約1時間、加熱オーブン内で乾燥させて溶媒を除去することができる。
【0055】
本開示はさらに、リチウムイオン電気化学セルの製造方法に関する。さまざまな実施態様では、本方法は、上記のような負極を提供すること、リチウムを含む正極を提供すること、並びに負極及び正極を、リチウム含有電解質を含む電気化学セルに組み込むことを含みうる。
【0056】
実施態様のリスト
1.ケイ素含有材料;及び
ケイ素含有材料の少なくとも一部を取り囲む架橋ポリマー含有コーティング
を含む負極組成物であって、
架橋ポリマー含有コーティングが、カルボキシル基又はカルボキシレート基を含む1つ以上のビニルモノマーの重合から誘導された(コ)ポリマーを含む
負極組成物。
【0057】
2.ビニルモノマーが架橋性ビニルモノマーを含む、実施態様1に記載の負極組成物。
【0058】
3.ビニルモノマーが、アクリル酸、アクリル酸リチウム、アクリロニトリル、アクリル酸アルキル、又はビニルホスホン酸を含む、実施態様1又は2に記載の負極組成物。
【0059】
3.架橋性ビニルモノマー由来の単位が、(コ)ポリマーの総重量に基づいて、5重量パーセントを上回る量で(コ)ポリマー中に存在する、実施態様1又は2に記載の負極組成物。
【0060】
4.ビニルモノマーが、1つ以上の単官能ビニルモノマーを含む、実施態様1から3のいずれかに記載の負極組成物。
【0061】
5.単官能ビニルモノマー由来の単位が、(コ)ポリマーの総重量に基づいて、75重量パーセントを上回る量で(コ)ポリマー中に存在する、実施態様1から4のいずれかに記載の負極組成物。
【0062】
6.ビニルモノマーが、1つ以上の非イオン性単官能ビニルモノマーを含む、実施態様1から5のいずれかに記載の負極組成物。
【0063】
7.非イオン性単官能ビニルモノマー由来の単位が、(コ)ポリマーの総重量に基づいて、30重量パーセント未満の量で(コ)ポリマー中に存在する、実施態様6に記載の負極組成物。
【0064】
8.架橋(コ)ポリマーが、化学構造(I):
CH2=CH-R1-Si(X)xR2
3-x (I)
[式中、R1は、1つ以上のヘテロ原子又はヘテロ原子含有部分で置換されてもよいアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、及びアラルキレンから選択される共有結合又は二価の連結基であり;Xは、C1-C4アルコキシから選択される加水分解性基であり;xは、0、1、2、又は3であり;R2は、C1-C4アルキル基である、
で表される1つ以上のシラン官能性モノマーの重合から誘導される]
で表される1つ以上のシラン官能性モノマーの重合から誘導される、実施態様1から7のいずれかに記載の負極組成物。
【0065】
9.架橋ポリマー含有コーティングが、負極組成物中に、ケイ素含有材料及び架橋ポリマー含有コーティングの総重量に基づいて、0.1から10重量%の間の量で存在する、実施態様1から8のいずれかに記載の負極組成物。
【0066】
10.負極組成物が、負極組成物の総重量に基づいて、5重量%未満の液体を含む乾燥組成物として存在する、実施態様1から9のいずれかに記載の負極組成物。
【0067】
11.ケイ素含有材料の少なくとも一部を取り囲む第2のコーティングをさらに含み、第2のコーティングが導電性材料を含む、実施態様1から10のいずれかに記載の負極組成物。
【0068】
12.第2のコーティングがカーボンブラックを含む、実施態様6に記載の負極組成物。
【0069】
13.ケイ素含有材料及び架橋ポリマー含有コーティングを含有する粒子を含み、該粒子が0.7μm超のD10及び15μm未満のD90を有する、実施態様1から12のいずれかに記載の負極組成物。
【0070】
14.ケイ素含有材料及び架橋ポリマー含有コーティングを含む凝集粒子を含み、凝集粒子が、2.5μm超のD10及び50μm未満のD90を有する、実施態様1から13のいずれかに記載の負極。
【0071】
15.ケイ素含有材料が、式:SixMyCzを有する粒子を含み、ここで、x、y、及びzは原子%値を表し、(a)x+y+z=100%であり;(b)x>2y+zであり;(c)x及びyは0より大きく;zは0以上であり;かつ、(d)Mは、鉄及び任意選択的にマンガン、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、及びイットリウムから選択される1つ以上の金属である、実施態様1から14のいずれかに記載の負極組成物。
【0072】
16.65%≦x≦85%、5%≦y≦20%、及び5%≦z≦15%である、実施態様13に記載の負極組成物。
【0073】
17.粒子が0.1から10μmの間の平均サイズを有する、実施態様13又は14に記載の負極組成物。
【0074】
18.負極組成物の総重量に基づいて、1から80重量%の間の量のグラファイトをさらに含む、実施態様1から17のいずれかに記載の負極組成物。
【0075】
19.結合剤をさらに含み、架橋ポリマー含有コーティングのポリマーが、結合剤の総重量に基づいて、50重量%未満の量で結合剤中に存在する、実施態様1から18のいずれかに記載の負極組成物。
【0076】
20.実施態様1から17のいずれかに記載の負極組成物;及び
集電体
を含む負極。
【0077】
21.実施態様18に記載の負極;
リチウムを含有する正極組成物を含む正極;及び
リチウムを含有する電解質
を含む電気化学セル。
【0078】
22.実施態様19に記載の電気化学セルを含む電子デバイス。
【0079】
23.実施態様1から18のいずれかに記載の負極組成物;
グラファイト;
結合剤;及び
水
を含む水性分散体。
【0080】
24.リチウムを含有する正極組成物を含む正極を提供すること;
実施態様18に記載の負極を提供すること;
リチウムを含有する電解質を提供すること;及び
正極、負極、及び電解質を電気化学セルに組み込むこと
を含む、電気化学セルの製造方法。
【0081】
本開示の動作は、以下の詳細な例に関してさらに説明される。これらの例は、さまざまな特定の実施態様及び技法をさらに説明するために提供される。しかしながら、本開示の範囲内にとどまりつつ、多くの変形及び修正を行うことができることが理解されるべきである。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本開示の理解を助けるために提供されるのであって、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。別途指示がない限り、すべての部及びパーセントは、重量基準で提供される。すべての材料は、米国のSigma-Aldrich Corporationから入手し、別途指示がない限り、受け取ったままの状態で使用した。
【0083】
架橋剤の調製
多官能性PEG-アジリジン架橋剤PZ-502の合成--三官能性アジリジン架橋剤PZ-502は、SR-502と2-メチルアジリジンとのマイケル付加によって調製した。2-メチルアジリジン(9.1グラム、0.1385モル)を室温でSR-502(30グラム、0.0434モル)に滴下して加え、得られた混合物を室温で1時間攪拌し、60℃で24時間還流した。過剰のメチルアジリジンを減圧下で除去し、最終的にわずかに黄色の液体生成物を得て、PZ-502と名付けた。5.8から6.4への二重結合の消失により、アクリレート基とメチルアジリジンのNHとの反応が正常に完了したことを確認する。
【0084】
ポリ(ビニルアルコール)架橋剤の調製--PVA溶液は、R-235ペレットを熱水に溶解して所望の%固形分(例えば、6.75重量%)にすることによって調製した。
【0085】
アクリルコポリマーの調製
調製例1--ポリアクリル酸(PAA)溶液の合成--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに、50部のアクリル酸(AA)、250部の脱イオン(DI)水、及び0.125部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60℃の回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。重量分析は、完全なモノマー変換を示した。
【0086】
調製例3--ポリ(アクリル酸-co-アクリロニトリル90/10)(ポリ(AA/AN 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、4.5部のAA、0.5部のアクリロニトリル(AN)、40.5部のDI水、4.5部のジメチルホルムアミド、連鎖移動剤として0.5部のイソプロパノール、及び0.025部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60℃の回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0087】
調製例4--ポリ(アクリル酸-co-アクリロニトリル80/20)(ポリ(AA/AN 80/20))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、4.0部のAA、1.0部のアクリロニトリル(AN)、36部のDI水、9部のジメチルホルムアミド、連鎖移動剤として0.5部のイソプロパノール、及び0.025部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60℃の回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0088】
調製例5--ポリ(アクリル酸-co-アクリロニトリル70/30)(ポリ(AA/AN 70/30))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、3.5部のAA、1.5部のアクリロニトリル(AN)、31.5部のDI水、13.5部のジメチルホルムアミド、連鎖移動剤として0.5部のイソプロパノール、及び0.025部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60℃の回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0089】
調製例6--ポリ(アクリル酸-co-アクリロニトリル60/40)(ポリ(AA/AN 60/40))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、3.0部のAA、2.0部のアクリロニトリル(AN)、27部のDI水、18部のジメチルホルムアミド、連鎖移動剤として0.5部のイソプロパノール、及び0.025部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60℃の回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0090】
調製例7--ポリ(アクリル酸-co-アクリロニトリル50/50)(ポリ(AA/AN 50/50))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、2.5部のAA、2.5部のアクリロニトリル(AN)、22.5部のDI水、22.5部のジメチルホルムアミド、連鎖移動剤として0.5部のイソプロパノール、及び0.025部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60℃の回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0091】
調製例8--ポリ(アクリル酸-co-アクリル酸メチル90/10)(ポリ(AA/MA 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、5.4部のAA、0.6部のアクリル酸メチル(MA)、18部のテトラヒドロフラン溶媒、及び0.015部のVazo52開始剤を充填した。モノマー溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを52°Cの回転式水浴内に60時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。粗ポリマー生成物を150部の酢酸エチルに沈殿させ、濾過し、減圧下、65℃で18時間乾燥させた。2.5部の減圧乾燥したポリ(AA/MA 90/10)を7.5部のDI水に再溶解して、ポリ(AA/MA 90/10)水溶液を作製した。
【0092】
調製例9--ポリ(アクリル酸-co-N-ビニルカプロラクタム90/10)(ポリ(AA/NVC 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、5.4部のAA、0.6部のN-ビニルカプロラクタム(NVC)、18部のテトラヒドロフラン溶媒、及び0.015部のVazo52開始剤を充填した。モノマー溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを52°Cの回転式水浴内に60時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。粗ポリマー生成物を150部の酢酸エチルに沈殿させ、濾過し、減圧下、65℃で18時間乾燥させた。2.5部の減圧乾燥したポリ(AA/NVC 90/10)を7.5部のDI水に再溶解して、ポリ(AA/NVC 90/10)水溶液を作製した。
【0093】
調製例10--ポリ(アクリル酸-co-2-ヒドロキシエチルアクリレート90/10)(ポリ(AA/HEA 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、5.4部のAA、0.6部の2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、18部のテトラヒドロフラン溶媒、及び0.015部のVazo52開始剤を充填した。モノマー溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを52°Cの回転式水浴内に60時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。粗ポリマー生成物を150部の酢酸エチルに沈殿させ、濾過し、減圧下、65℃で18時間乾燥させた。2.5部の減圧乾燥したポリ(AA/HEA 90/10)を7.5部のDI水に再溶解して、ポリ(AA/HEA 90/10)水溶液を作製した。
【0094】
調製例11--ポリ(アクリル酸-co-テトラヒドロフルフリルアクリレート90/10)(ポリ(AA/THF-A 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、5.4部のAA、0.6部のテトラヒドロフルフリルアクリレート(THF-A)、18部のテトラヒドロフラン溶媒、及び0.015部のVazo52開始剤を充填した。モノマー溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを52°Cの回転式水浴内に60時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。粗ポリマー生成物を150部の酢酸エチルに沈殿させ、濾過し、減圧下、65℃で18時間乾燥させた。2.5部の減圧乾燥したポリ(AA/THF-A 90/10)を7.5部のDI水に再溶解して、ポリ(AA/THF-A 90/10)水溶液を作製した。
【0095】
調製例12--ポリ(アクリル酸-co-アクリルアミド90/10)(ポリ(AA/Am 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、4.5部のAA、0.5部のアクリルアミド(Am)、45部のDI水、及び0.015部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。モノマー溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60℃の回転式水浴内に72時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0096】
調製例13--ポリ(アクリル酸-co-ビニルホスホン酸90/10)(ポリ(AA/VPA 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、4.5部のAA、0.5部のビニルホスホン酸(VPA)、45部のDI水、2.5部のイソプロパノール、及び0.015部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。モノマー溶液を窒素で5分間パージし、密封した。ボトルを55°Cの回転式水浴内に24時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0097】
調製例14--ポリ(アクリロニトリル-co-2-ヒドロキシエチルアクリレート90/10)(ポリ(AN/HEA 90/10))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、4.5部のアクリロニトリル、0.5部のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、22.5部のジメチルホルムアミド、2.5部の酢酸エチル、0.5部のイソプロパノール、及び0.025部のVazo67を充填した。モノマー溶液を窒素で5分間パージし、密封した。ボトルを65°Cの回転式水浴内に24時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0098】
調製例15--ポリ(アクリロニトリル-co-2-ヒドロキシエチルアクリレート 80/20)(ポリ(AN/HEA 80/20))溶液の合成--8オンス(250mL)のスクリュートップ反応ボトルに、4部のアクリロニトリル、1部のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、20部のジメチルホルムアミド、5部の酢酸エチル、0.5部のイソプロパノール、及び0.025部のVazo67を充填した。モノマー溶液を窒素で5分間パージし、密封した。ボトルを65°Cの回転式水浴内に24時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。
【0099】
調製例16--アクリル酸/A-174コポリマーのリチウム塩の合成-表1に示されるように、アクリル酸(AA)、A-174(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、2-メルカプトエタノール(2-MCE)、四臭化炭素、及びV-50開始剤の混合物をガラス製のスクリュートップボトル内で調製した。指定された量の脱イオン水とイソプロピルアルコール(IPA)を加えて、固体を溶解した。当初は無色透明の溶液を入れたボトルを密封し、50℃の回転水浴に21時間入れた。加熱処理後、試料16-1、16-3、及び16-4はゲル化したように見え、これらの混合物は廃棄した。残りの試料の重量パーセント固体は、120℃で30分間加熱した後、重量分析によって決定した。試料16-2は無色透明の単相溶液だったが、試料16-5及び16-6はわずかにヘイズを有していた。
【0100】
反応混合物16-5及び16-6の秤量部分をスクリュートップのガラスジャーに入れ、水酸化リチウム一水和物を少しずつ加えることにより、pH7に中和した(pH指示薬ストリップを使用して測定)。中和の完了後、120℃の強制空気オーブン内で30~60分間加熱した試料の重量分析によって固形分を測定し、さらに脱イオン水を加えて10重量%に調整した。得られた透明な溶液を、以下に説明するようにアノードコーティングの調製に使用した。これらの透明な溶液の小アリコートのドライダウン時に残った固体残留物に脱イオン水を再添加し、溶解性について試験した。溶液16-5由来の残留物は可溶性であったが、溶液16-6由来の残留物は可溶性ではなかった。
【0101】
反応混合物16-2の秤量部分をスクリュートップのガラスジャーに入れ、水酸化リチウム一水和物を少しずつ加えて溶解することにより、pH7に中和した(pH指示薬ストリップを使用して測定)。これにより、透明な上層と濁った粘性の下層の2つの液相へと相分離した。混合物を室温で数日間放置して相分離を完了させ、上相をデカントし、粘性の下層を分離した。重量分析の後、脱イオン水をさらに添加することにより、材料を10重量%固形分へと調整した。これにより、透明で無色の溶液が得られ、これを以下に説明するようにアノードコーティングの調製に使用した。この溶液の小アリコートの乾燥時に残った固体残留物は、脱イオン水の再添加に対し不溶性であることがわかった。
【0102】
調製例17--アクリル酸/A-174コポリマーのリチウム塩の合成-表2に示されるように、アクリル酸(AA)、A-174(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、2-メルカプトエタノール(2-MCE)、及びV-50開始剤の混合物をガラス製のスクリュートップボトル内で調製した。指定された量の脱イオン水とイソプロピルアルコール(IPA)を加えて、固体を溶解した。当初は無色透明の溶液を入れたボトルを密封し、50℃の回転水浴に21時間入れた。加熱処理後、試料17-10はゲル化したように見え、この混合物は廃棄した。残りの試料(すべて無色透明の溶液)の重量パーセント固体は、120℃で30分間加熱した後、重量分析によって決定した。
【0103】
調製例18-DI水への水酸化リチウム一水和物の溶解--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに30部の水酸化リチウム一水和物と170部のDI水とを充填した。ボトルを周囲条件で48時間、ローラー上に置いた。透明な8.56重量%の水酸化リチウム水溶液が得られた。
【0104】
部分的に中和したアクリル酸含有コポリマーの調製
ポリマー溶液1Aの調製--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに、調製例1に由来する100部のポリ(アクリル酸)水溶液(16.7重量%)、調製例18に由来する55部の水酸化リチウム水溶液(8.56重量%)、及び21.4部のDI水を充填した。ボトルをローラー上に置き、周囲条件で48時間、平衡化した。透明な10.13重量%の部分的に中和したポリ(アクリル酸)リチウム塩水溶液(pH7)を得た。
【0105】
ポリマー溶液1Bの調製--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに、調製例1に由来する100部のポリ(アクリル酸)水溶液(16.7重量%)、調製例18に由来する45.4部の水酸化リチウム水溶液(8.56重量%)、及び10.9部のDI水を充填した。ボトルをローラー上に置き、周囲条件で48時間、平衡化した。透明な11.30重量%の部分的に中和したポリ(アクリル酸)リチウム塩水溶液(pH6)を得た。
【0106】
ポリマー溶液1Cの調製--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに、調製例1に由来する100部のポリ(アクリル酸)水溶液(16.7重量%)、8部の水酸化リチウム一水和物、及び67部のDI水を充填した。ボトルをローラー上に置き、周囲条件で48時間、平衡化した。透明な8.6重量%の部分的に中和したポリ(アクリル酸)リチウム塩水溶液(pH6.5)を得た。
【0107】
ポリマー溶液3-13の調製-調製例3-13に由来するアクリル酸(コ)ポリマーの水溶液を、ポリマー溶液1Bの調製と同様に水酸化リチウム水溶液で部分的に中和した(コポリマー中のアクリル酸含有量の70重量%が中和の目標であった)。得られたポリマー溶液3-13の固体の重量%と溶液のpHが表3にまとめられている。
【0108】
ポリマー溶液14の調製--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに、調製例1に由来する100部のポリ(アクリル酸)水溶液(16.7重量%)、及び17部の水酸化アンモニウム溶液を充填した。ボトルをローラー上に置き、周囲条件で48時間、平衡化した。透明な18.9重量%の部分的に中和したポリ(アクリル酸)アンモニウム塩水溶液(pH8)を得た。
【0109】
架橋ポリマーでコーティングしたSi活性材料の調製
比較例CE1:式Si76Fe14C11を有するケイ素合金複合粒子を、米国特許第8,071,238号及び米国特許第7,906,238号に開示された手順を使用して調製し、その後、合金粒子を炭素でコーティングした。
【0110】
比較例CE2:式Si76Fe14C11を有するケイ素合金複合粒子を、米国特許第8,071,238号及び米国特許第7,906,238号に開示された手順を使用して調製し、その後、合金粒子を炭素でコーティングし、グラファイトと機械的に混合した。
【0111】
実施例1:典型的なスラリー製造プロセスでは、CE1に由来するケイ素合金複合粒子(38.6g)、SuperP(0.2g)、ポリマー溶液1B(10.61g)及び希釈DI水(7.58g)をまず150mLのTHINKY混合容器に入れ、ポリマーのケイ素合金に対する比が3重量%になることを目標にした。組成物を2000rpmで3分間、ミキサーで混合した。その後、架橋剤EPOCROS WS-500(0.21g、日本触媒株式会社、21.1重量%)をよく混合したスラリーに加え、架橋剤の架橋性ポリマーに対する比が4重量%になることを目標にした。スラリー組成物を2000rpmで1分間、もう一度混合した後、Hiranoコーター(株式会社ヒラノテクシード製のモデルTM-MC)を使用して、100μmのコーティングギャップ、1.0m/分のコーティング速度、及び110℃の乾燥温度で剥離ライナー上にコーティングした。その後、ウェブで調製した「架橋ポリマーコーティングSi活性材料」を剥離ライナーから剥離し、4オンスのジャー内で1/4インチのステンレス鋼メディアを使用して、150gのメディアに対し固形分10gの負荷でローラーミルした。ミリング容器を52%の臨界速度で4時間、回転させた。
【0112】
実施例2~40は、以下の修正を加えて、実施例1と同じ手順を使用して調製された。代替の架橋剤と任意選択的に変化する架橋剤負荷が使用されており、それらが表4に示されている。KS6は、実施例10及び11でケイ素活性材料の負荷の低減を犠牲にして、代替添加剤として添加された。実施例23~26及び31の希釈剤として、DI水/ジメチルホルムアミド混合物を選択した。実施例34~36の希釈剤としてN-メチルピロリドンを選択した。実施例1~40はすべて、4時間粉砕した;実施例21の追加の再現実験では、0.5時間、1時間、及び2時間粉砕した。
【0113】
実施例41:典型的なスラリー製造プロセスでは、ポリマー溶液1C(233部)、ポリマー溶液14(26.5部)、及びポリ(ビニルアルコール)溶液(R-235、74部)を、エアミキサー及び4インチ(10cm)のCowlesブレードによって30分間、機械的に攪拌しつつ、最初に4Lのプラスチックボトル内のDI水(690.5部)に溶解した。次に、CE1由来のケイ素合金複合粒子(835部)、添加剤KS6(130部)、及びSuperP(5部)を容器にゆっくりと加え、1時間混合して、固形分50%のスラリーを作製した。水性スラリーは、後続の処理の前にローラー上で保存された。
【0114】
スラリーを、Spray Drying Systems,Inc.(米国メリーランド州エルダーズバーグ所在)製造のカスタマイズされたMODEL48混流噴霧乾燥機で乾燥した。噴霧乾燥機は直径4フィート、側面は8フィートであった。噴霧乾燥機を、窒素下、閉ループモードで動作させた。チャンバ入口のバルク乾燥ガスの温度は約100℃であり、出口では60℃であった。水性スラリーを、蠕動ポンプを介して30g/分の供給速度で供給した。外部混合された二流体圧力スプレー噴霧ノズル(「FLUID CAP 60100」及び「AIR CAP 170」の商品名の下、米国イリノイ州ウィートン所在のSpraying Systems Co.から入手可能)を利用して、スラリーを垂直上方に噴霧した。噴霧用ガスは60psi(414kPa)の窒素であった。コーティングの組成を表5に示す。
【0115】
噴霧乾燥した架橋ポリマーでコーティングしたSi合金粒子を、アルゴン下、250℃で3時間、管状炉内の石英ボートで最終的にアニールした。コーティング用ポリマーは下に示す一般式を有し、ここで、xは最終組成物中のLi-pAAの質量比に等しく;yは最終組成物中のNH4-pAAの質量比に等しく;zは最終組成物中のPVAの質量比に等しい。x、y、及びzの合計は、最終組成物におけるポリマー負荷の合計である。
xLiPAA+yNH4PAA+zPVA
【0116】
実施例42~44は、実施例41と同じ手順を使用して調製されたが、x、y、及びzの比率を変化させた。実施例41~44の詳細な組成及び対応する処理条件が表5にまとめられている。
【0117】
粒子サイズ分布測定
架橋ポリマーでコーティングしたSi活性材料の実施例1~44及び比較例CE1及びCE2の粒子サイズ分布は、各データ収集の前に、循環速度4、攪拌速度4、及び出力4で3分間の超音波処理を行ったDI水又は有機溶媒中でのLA-960レーザー粒子サイズ分析器(株式会社堀場製作所、京都府所在)を使用したレーザー光回折により測定した。0.2gの試料を、最初に、20mLのシンチレーションバイアル内で10gのDI水又はイソプロパノールで分散させた。次に、各測定を行う前に、分散した試料を90~80%Tになるように機器に加えた。
【0118】
理論に拘束されるものではないが、DI水又は有機溶媒中の安定した粒子サイズは、本明細書では、ポリマーコーティングの効果的な架橋の証拠として解釈される。表6では、DI水中及びイソプロパノール中のCE1及び実施例1~11の粒子サイズ分布(PSD)を比較している。ポリマーコーティングしたケイ素活性材料のPSDを維持するための架橋ポリマーコーティングの有効性は、両方の分散剤において、D10が1μmを超えるSi合金凝集体の存在によって証明された。驚くべきことに、同等の条件下では、より低い約6のpHのLi-PAAは、より高い約7のpHのLi-PAAよりも架橋に対して効果的であった。さらに驚くべきことに、多官能性アジリジン架橋剤は、オキサゾリンベース又はカルボジイミドベースの架橋剤よりも、LiPAAコーティングの架橋に対して効果的であった。
【0119】
表7は、架橋ポリマーでコーティングしたSi活性材料の調製に対するポリマー選択及び架橋剤の組合せの効果を比較したものである。アクリル酸ベースのコポリマーでは、コポリマーの選択に関係なく、酸(コ)ポリマー(水溶液中10重量%でpH6)を多官能性アジリジン架橋剤と組み合わせたときに、安定したSi活性材料凝集体が得られた。
【0120】
表8は、架橋ポリマーでコーティングしたケイ素活性材料を無酸ポリマーと比較したものである。実施例34及び35は、ポリマー中のヒドロキシル官能基及び多官能性イソシアネート架橋剤(例えば、BAYHYDUR302)を使用して架橋した。実施例39は、水素結合を介して物理的架橋を形成するポリビニルアルコールを含む。
【0121】
表9は、架橋ポリマーでコーティングしたケイ素活性材料を[(Li
1-xNH
4x)PAA]
1-yPVA
yコーティングと比較している。水中での実施例43及び実施例44のはるかに大きいD90値は、水性媒体中でのポリ(アクリル酸)ベースのコーティングの膨潤から生じた可能性が高い。それにもかかわらず、CE1に対して、実施例41~実施例44では、効果的なポリマー架橋の指標である、より高いD10値が達成された。
【0122】
アノードコーティング及びコイン形ハーフセルの調製
電解質
ハーフセルの調製に用いた電解質は、90重量%の、3:7(w/w)炭酸エチレン:炭酸エチルメチル中、1MのLiPF6溶液(SELECTILYTE LP 57、米国BASF社から入手可能)と、10重量%のモノフルオロエチレンカーボネート(これもBASF社から入手可能)との混合物であった。
【0123】
電極合金スラリーの調製
実施例1~39の架橋ポリマーでコーティングしたSi合金を、CMC/SBR結合剤を有する複合電極の調製のためのケイ素活性材料として使用した。通常のスラリー製造プロセスでは、3つのジルコニウムビーズ(直径16.5mm)を最初に150mLのTHINKY混合容器に入れた。次に、スラリー成分ケイ素合金複合粒子(1.5グラム)、グラファイト(3.2g)、導電性カーボンSuperP(0.1g)、及び1-プロパノール水溶液(3.85g、10重量%)を混合容器に加えた。組成物を2000rpmで1分間、混合した。その後、カルボキシメチルセルロース水溶液(5.88g、Na-CMC、Daicel2200、ダイセルファインケム株式会社、日本所在)を混合容器に加え、スラリーを2000rpmで1分間、もう一度混合した。スチレン-ブタジエンゴムエマルション(0.25g、固形分39.23%、SBR、日本ゼオン株式会社、日本所在)を最後に加えた後、2000rpmでさらに1分間、別の混合サイクルを行った。得られたスラリーは、コーティングの準備ができていた。
【0124】
電極のコーティング
次に、以下の手順を使用して、電極スラリーを銅箔にコーティングして作用電極を調製した。最初に、きれいなガラス板に一滴のアセトンを施し、アセトンで洗浄した15ミクロンの銅箔のシート(日本所在の古河電工から入手可能)で覆った。3ミル(0.076mm)、4ミル(0.10mm)、又は5ミル(0.13mm)のコーティングバーとスチールバーガイドを使用して、スラリーをコーティングバーに施し、安定した動きで下方に引き込んた。次に、複合アノードコーティングを周囲条件下で1時間乾燥させ、その後、露点が-40℃未満の乾燥室に移した。次に、コーティングされた箔を真空オーブン内で、120℃で2時間、乾燥させた。
【0125】
コイン形セルの調製
ハーフコイン形セルを準備するために、16mmのダイを使用し、白い紙を下に敷き、コーティングされた銅箔面を下にして作用電極を打ち抜いた後、紙を取り除いた。一致する3つの銅箔片を打ち抜き(むき出しの集電体)、平均メッシュ重量を決定した。CELGARD2325セパレータ材料のフィルム(25ミクロンの微孔性3層PP/PE/PP膜、Celgard社、米国所在)を色紙のシートの間に配置し、20mmのダイを使用して打ち抜き、その後、紙を取り除いた。各セルについて、少なくとも2つのセパレータをカットした。リチウム箔のシートを巻いてその両面をブラッシングし、プラスチックフィルムのシートの間に配置し、18mmのダイを使用して対電極を打ち抜き、その後プラスチックフィルムを取り除いた。各電極の重量を個別に量り、総重量を記録した。
【0126】
次に、電気化学的2325コイン形セルを、次の順序でアセンブリした:2325コイン形セル底部、30ミルの銅スペーサ、リチウム対電極、33.3マイクロリットルの電解質、セパレータ、33.3マイクロリットルの電解質、セパレータ、グロメット、33.3マイクロリットルの電解質、作用電極(面を下に向け、リチウム対電極と位置合わせした)、30ミルの銅スペーサ、2325コイン形セルのトップ。セルを圧着し、ラベリングした。
【0127】
電気化学的性能の特性評価
次に、以下のプロトコルに従ってSERIES4000自動化試験システム(米国所在のMaccor Incから入手可能)を使用してコイン形セルをサイクルに供した。
【0128】
サイクル1:C/10で0.005Vまで放電し、C/40までトリクル放電した後、15分間休止。C/10で1.5Vに充電した後、15分間休止。
【0129】
サイクル2~100:C/4で0.005Vまで放電し、C/20までトリクル放電した後、15分間休止。C/4で0.9Vに充電した後、15分間休止。
【0130】
100回の試験サイクルにわたる放電容量維持率を記録し、プロットした。
【0131】
ハーフセルの電気化学サイクルの結果
図1は、30/64/2/2/2の重量比のSi活性材料/グラファイト/SuperP/CMC/SBRを含む複合アノードにおける、架橋ポリマーでコーティングしたSi活性材料の実施例23、24、25、26及び31を使用して前のように調製したリチウムハーフセルのサイクル数の関数としての正規化された放電容量を示している。架橋したLi-p(AA/AN 70/30)コーティングを有する実施例25は、異なるAA/AN比の架橋したLi-p(AA/AN)コーティングを有する他の実施例よりも優れた正規化容量維持率を示した。
【0132】
図2は、30/64/2/2/2の重量比のSi活性材料/グラファイト/SuperP/CMC/SBRを含む複合アノードにおける、架橋ポリマーでコーティングしたSi活性材料の実施例19、23及び32のを使用して前述したように調製したリチウムハーフセルのサイクル数の関数としての正規化された放電容量を示している。これらの実施例の架橋ポリマーコーティングはすべて、90重量%のアクリル酸とアクリル酸リチウムの合計含有量と、10重量%の変動するコモノマーとを含んでいる。このコモノマー負荷で、架橋したLi-p(AA/VPA 90/10)コーティングを有する実施例19は、架橋したLi-p(AA/AN 90/10)コーティングを有する実施例23よりわずかに良好な正規化容量維持率を示した。
【0133】
図3は、30/64/2/2/2の重量比のSi活性材料/グラファイト/SuperP/CMC/SBRから作られた複合アノードにおける、架橋ポリマーでコーティングしたSi活性材料の実施例41、42及び44を使用して前述したように調製されたリチウムハーフセルのサイクル数の関数としての正規化された放電容量を、CE1と比較している。架橋ポリマーでコーティングしたSi活性材料はすべて、むき出しのSi活性材料である比較例CE1よりも優れた正規化された容量維持率を示した。実施例44のより高い12%のポリマー負荷合計量が、いずれも3%のポリマー負荷を含む実施例41及び42と比較して、実施例44のより良好なサイクル性能に寄与した可能性がある。
【0134】
幾つかの実施態様を説明する目的で、特定の実施態様を本明細書で例示及び説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、示され説明された特定の実施態様を、多種多様な代替及び/又は等価の実施で代用できることが、当業者に認識されよう。