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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/52 301A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020128587
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025642
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青島 建吾
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/149187(WO,A1)
【文献】特開平9-232028(JP,A)
【文献】国際公開第2005/094974(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方部材の取付け穴に嵌挿される嵌挿部の外周面にパッキン取付け面を有するハウジングと、
前記嵌挿部の嵌挿方向後端側における前記パッキン取付け面に装着される第1パッキンと、
前記嵌挿部の嵌挿方向前端側における前記パッキン取付け面に装着される第2パッキンと、
前記第1パッキンと前記第2パッキンとの間に配置されて前記嵌挿部の外周面に設けられた係止部に係止されるリテーナと、
を備えることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
前記第2パッキンが装着される前記パッキン取付け面の嵌挿方向前端側に設けられた凹部と、
前記第2パッキンの嵌挿方向前端側に設けられて前記凹部に係合される係合片と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の防水コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングの前端部には、前記第2パッキンを保持するフロントホルダが設けられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防水コネクタ。
【請求項4】
前記フロントホルダの嵌挿方向後端側が、前記第2パッキンの嵌挿方向前端側における外周部の少なくとも一部を覆う
ことを特徴とする請求項3に記載の防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
防水性を向上させたコネクタ(防水コネクタ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このコネクタは、ハウジングの外周面に設けた2つのOリング(パッキン)によって、ハウジングが嵌挿されるモジュール(相手方部材)の取付穴とハウジングとの間を水密にシールする。これら2つのOリングは、ハウジングの外周面に沿って形成された一対の円環状の溝(パッキン収容溝)にそれぞれ支持され、ハウジングの嵌挿方向に沿って並設される。
そこで、ハウジングの嵌挿方向に沿って外周面に並設された2つのOリングは、Oリングが1つの場合よりも確実に取付穴とハウジングとの間を水密にシールすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-79800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハウジングの嵌挿方向に沿って並設された一対のパッキン収容溝に2つのパッキンをそれぞれ装着する場合、奥側のパッキンは、一対のパッキン収容溝の間に形成された壁を乗り越えるために拡げて装着する必要があり装着作業性がよくない。そして、装着時にパッキンが捩れたり、パッキンのシール部に傷が付いたりしてシール性能の低下を招く可能性がある。更に、パッキン及びパッキン収容溝が円環状でない場合には、装着時にパッキンが位置ずれを生じてシール性能の低下を招く可能性がある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、パッキンの装着作業が容易で、高い防水性を備えた防水コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 相手方部材の取付け穴に嵌挿される嵌挿部の外周面にパッキン取付け面を有するハウジングと、前記嵌挿部の嵌挿方向後端側における前記パッキン取付け面に装着される第1パッキンと、前記嵌挿部の嵌挿方向前端側における前記パッキン取付け面に装着される第2パッキンと、前記第1パッキンと前記第2パッキンとの間に配置されて前記嵌挿部の外周面に設けられた係止部に係止されるリテーナと、を備えることを特徴とする防水コネクタ。
【0007】
上記(1)の構成の防水コネクタによれば、ハウジングの嵌挿部におけるパッキン取付け面に装着された第1パッキンが、嵌挿部の外周面に設けられた係止部に係止されたリテーナによって、ハウジングに対して位置決め保持される。そして、ハウジングの嵌挿方向に沿って嵌挿部の外周面に並設された第1パッキン及び第2パッキンは、確実に取付穴とハウジングとの間を水密にシールすることができる。
従って、嵌挿部の外周面には、第1パッキン及び第2パッキンを位置決め保持するためのパッキン収容溝が必要ない。そこで、従来の防水コネクタのように一対のパッキン収容溝の間に形成された壁を乗り越えるために奥側の第1パッキンを拡げて装着する必要がなく、装着作業が容易となると共に、装着時に第1パッキンが捩れたり、第1パッキンのシール部に傷が付いたりしてシール性能が低下することもない。
【0008】
(2) 前記第2パッキンが装着される前記パッキン取付け面の嵌挿方向前端側に設けられた凹部と、前記第2パッキンの嵌挿方向前端側に設けられて前記凹部に係合される係合片と、を備えることを特徴とする上記(1)に記載の防水コネクタ。
【0009】
上記(2)の構成の防水コネクタによれば、第2パッキンが装着されるパッキン取付け面に設けられた凹部に、第2パッキンの係合片が係合されることよって、第2パッキンはハウジング後端側への位置ずれが防止される。
【0010】
(3) 前記ハウジングの前端部には、前記第2パッキンを保持するフロントホルダが設けられることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の防水コネクタ。
【0011】
上記(3)の構成の防水コネクタによれば、フロントホルダによって、第2パッキンはハウジングに対して嵌挿方向前端側への位置ずれが容易に防止される。
【0012】
(4) 前記フロントホルダの嵌挿方向後端側が、前記第2パッキンの嵌挿方向前端側における外周部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする上記(3)に記載の防水コネクタ。
【0013】
上記(4)の構成の防水コネクタによれば、第2パッキンの嵌挿方向前端側における外周部の少なくとも一部(例えば、第2パッキンの係合片)が、フロントホルダの嵌挿方向後端側によって覆われる。
そこで、ハウジングの嵌挿部が相手方部材の取付け穴に嵌挿される際、第2パッキンの嵌挿方向前端側がめくれることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る防水コネクタによれば、パッキンの装着作業が容易で、高い防水性を備えた防水コネクタを提供することにある。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る防水コネクタを相手方部材の取付け穴に嵌挿する前の状態を示す斜視図である。
図2図1に示した防水コネクタの分解斜視図である。
図3】(a),(b)は図2に示したハウジングの拡大斜視図及び平面図である。
図4図2に示した第1パッキン、リテーナ及び第2パッキンの拡大斜視図である。
図5】(a),(b)は図2に示したフロントホルダを前方から見た斜視図及び後方から見た斜視図である。
図6】(a),(b)は図2に示した第1パッキンの装着作業を説明する斜視図である。
図7】(a),(b)は図2に示した第2パッキンの装着作業を説明する斜視図である。
図8図1に示した防水コネクタの平面図である。
図9図8におけるIX-IX断面矢視図である。
図10図8におけるX-X断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る防水コネクタ11を相手方部材である筐体100の取付け穴101に嵌挿する前の状態を示す斜視図である。図2は、図1に示した防水コネクタ11の分解斜視図である。
【0018】
本実施形態に係る防水コネクタ11は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車の車両搭載電気機器(以下、単に「機器」と言う。)であるインバータやモーター等の間を電気接続する場合の機器直付け用として使用される防水コネクタである。ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されるモーターは、高い駆動トルクを発揮できるようにインバータ等から大電流が供給される。通常、このようなインバータとモーターとを接続する電線1には、伝達ロスを少なくするため、導体径が太く、且つ、その導体の周囲が絶縁性能の高い絶縁被覆で覆われた太径の電線(太物電線)が使用される。防水コネクタ11は、このような太径の電線1が機器の筐体100に設けられた取付け穴101に直付けされる構造に用いて好適となる。
なお、本実施形態において、取付け穴101に対する防水コネクタ11の嵌挿方向Aをコネクタの前方、抜脱方向をコネクタの後方とする。
【0019】
本実施形態に係る防水コネクタ11は、図1及び図2に示すように、ハウジング20と、第1パッキン40と、リテーナ50と、第2パッキン60と、フロントホルダ70と、を主要な構成として有する。この他、防水コネクタ11は、電線1の端部に接続された端子3と、シールドシェル80と、ゴム栓85と、上下一対のリアホルダ90と、防水ブーツ95と、を有する。
【0020】
筐体100は、例えば、電気自動車やハイブリット車などに搭載されるインバータの筐体(金属ケースなど)とすることができる。筐体100は、略直交するコネクタ取付面103と、ボルト固定面105とを有する導電性金属からなる相手方部材としての筐体である。なお、本発明における相手方部材としては、筐体に限らず、防水コネクタが嵌合される相手コネクタ等の種々の相手方部材に適用することができる。
【0021】
図3の(a),(b)は、図2に示したハウジング20の拡大斜視図及び拡大平面図である。
ハウジング20は、電気絶縁性の合成樹脂からなり、長円筒形状に形成される。ハウジング20は、図3の(a),(b)に示すように、嵌挿方向Aにおける略中間部の外周面21に突設されたフランジ部22と、フランジ部22より前方に設けられて筐体100の取付け穴101に嵌挿される嵌挿部23と、フランジ部22より後方に設けられてシールドシェル80が装着される装着部24と、を有する。
【0022】
フランジ部22は、嵌挿方向Aと直交する前方側面22aが筐体100のコネクタ取付面103に当接することで、嵌挿部23が筐体100の取付け穴101に嵌挿されたハウジング20の挿入位置を規制する。
嵌挿部23の外周面には、パッキン取付け面25が設けられている。パッキン取付け面25は、嵌挿部23の嵌挿方向後端側における第1パッキン40の為のパッキン取付け面である第1パッキン取付け面26と、嵌挿部23の嵌挿方向前端側における第2パッキン60の為のパッキン取付け面である第2パッキン取付け面27と、第1パッキン取付け面26と第2パッキン取付け面27との間における嵌挿部23の外周面であるリテーナ取付け部28と、を有する。
【0023】
第1パッキン40が装着される第1パッキン取付け面26は、嵌挿部23の外周面21よりハウジング内方側に位置しており、嵌挿部23の外周面21と第1パッキン取付け面26との間には、段差部29が形成されている。
リテーナ50が取り付けられる環状のリテーナ取付け部28は、第1パッキン取付け面26に連続して設けられている。リテーナ取付け部28の上下面(図3の(a)中、上下方向面)には、リテーナ50を係止するための係止部33がそれぞれ形成されている。係止部33は、リテーナ取付け部28に突設されて周方向に延びる突条により構成されている。
【0024】
第2パッキン60が装着される第2パッキン取付け面27は、第1パッキン40が装着される第1パッキン取付け面26よりもハウジング内方側に位置している。そこで、第2パッキン60が装着される第2パッキン取付け面27と第1パッキン40が装着される第1パッキン取付け面27との間には、段差部34が形成される。
【0025】
第2パッキン取付け面27の嵌挿方向前端側には、周方向に沿う帯状の外形形状を有する凹部30が設けられている。凹部30は、第2パッキン取付け面27の上下面(図3の(a)中、上下方向面)にそれぞれ設けられている。第2パッキン取付け面27と凹部30との間には、段差部31が形成される。凹部30の嵌挿方向前端縁には、周方向に沿って複数の係止部32が突設されている。
【0026】
装着部24の外周面の上下面(図3の(a)中、上下方向面)には、シールドシェル80の内周面に突設された係止突起84を係止してシールドシェル80を保持する係止アーム37と、リアホルダ90の係止アーム91を係止してリアホルダ90を保持する係止突起36とがそれぞれ設けられている。
【0027】
ハウジング20の内方には複数(本実施形態では2つ)の端子収容室38が形成される。端子収容室38には、電線1の端部に接続された端子3がそれぞれ装着される。端子3は、ハウジング20の後方から端子収容室38に挿入され、ハウジング20の前方に突出する。ハウジング20の後方からは、電線1が導出される。端子収容室38に挿入された端子3は、端子収容室38内に設けられた可撓係止アーム39(図9参照)により係止孔4が係止され、端子収容室38から抜け止めされる。
ハウジング20の前方開口部における内周面には、後述するフロントホルダ70の係止アーム77を係止してフロントホルダ70を保持する係止突起35が突設されている。
【0028】
シールドシェル80は、導電性金属からなる。シールドシェル80は、図2に示すように、筒状のシェル本体81によって、ハウジング20における装着部24の外周面を一体に覆う。シールドシェル80は、内周面に突設された係止突起84が装着部24に設けられた係止アーム37に係止されることによってハウジング20に固定される。このシールドシェル80には、筐体100のボルト固定面105に固定される一対のボルト固定部83が形成される。本実施形態において、ボルト固定部83は、シェル本体から延出させたL字形状の折り曲げ片に、ボルト挿通穴が穿設されて形成されている。
【0029】
シールドシェル80は、2本の電線1を覆う図示しない編組線がシールドリング等によってシェル本体81の編組固定部82に接続されて、筐体100ヘボルト締結される。これにより、シールドシェル80は、シールド回路を形成し、ノイズを遮蔽する構造としている。ハウジング20は、シールドシェル80を介して筐体100にボルト締結される。
筐体100のボルト固定面105には、ボルト固定部83がボルト締結される一対のボルト穴105a(図1参照)が形成されている。
【0030】
ゴム栓85は、ゴム等の弾性材料によって環状に形成される。ゴム栓85は、図2に示すように、内方に電線1が挿通される。ゴム栓85の外周は、ハウジング20における端子収容室38の後端開口38a(図6参照)の内壁面に密着する。これにより、ゴム栓85は、ハウジング20と電線1との間を防水シールする。
【0031】
リアホルダ90は、ハウジング20の後端開口38aに取り付けられる。リアホルダ90は、係止アーム91が装着部24の係止突起36に係止されてハウジング20に取り付けられることで、電線1の屈曲を抑制する。また、リアホルダ90は、ハウジング20内におけるゴム栓85の抜けや、倒れを抑制する。
【0032】
防水ブーツ95は、シリコン、ゴム、軟質樹脂等の弾性材料からなる。防水ブーツ95は、前端開口部96がシールドシェル80のシェル本体81に装着され、シールドシェル80と編組の端末との固定部を覆って防水する。防水ブーツ95に挿通された電線1は、防水ブーツ95の後端開口97から導出される。
【0033】
図4は、図2に示した第1パッキン40、リテーナ50及び第2パッキン60の拡大斜視図である。
第1パッキン40は、ゴム等の弾性材料によって長円環形状に形成される。第1パッキン40は、ハウジング20の嵌挿部23における第1パッキン取付け面26に取り付けられ、ハウジング20の嵌挿部23と筐体100の取付け穴101との間を防水シールする。
【0034】
第1パッキン40の外周面には、取付け穴101の内周面に密着する外側リップ41が設けられ、第1パッキン40の内周面には、嵌挿部23の第1パッキン取付け面26に密着する内側リップ43が設けられている。
第1パッキン40の嵌挿方向前端側には、嵌合方向Aに向かって突出する一対の係合突片45が設けられている。係合突片45は、それぞれ左右の短手方向(上下方向)に沿って略C字状に延びている。
【0035】
リテーナ50は、電気絶縁性の合成樹脂からなり、長円環形状に形成される。リテーナ50は、ハウジング20の嵌挿部23におけるリテーナ取付け部28に取り付けられる。
リテーナ50の内周面には、嵌挿部23の外周面に設けられた係止部33に係止される係止突起53と、リテーナ取付け部28の外周面に当接するように周方向に沿って延びる複数の支持リブ51とが設けられている。
【0036】
支持リブ51は、リテーナ50の嵌挿方向Aにおける略中間部の内周面に突設されている。そこで、リテーナ50がリテーナ取付け部28に取り付けられた際には、支持リブ51を挟んで嵌挿方向Aの前後における内周面とリテーナ取付け部28の外周面との間には、間隙が画成される。
支持リブ51の後ろ側の間隙には、第1パッキン40の係合突片45が挿入され、支持リブ51の後ろ側の間隙には、後述する第2パッキン60の係合突片65が挿入される。
【0037】
第2パッキン60は、ゴム等の弾性材料によって長円環形状に形成される。第2パッキン60は、ハウジング20の嵌挿部23における第2パッキン取付け面27に取り付けられ、ハウジング20の嵌挿部23と筐体100の取付け穴101との間を防水シールする。
【0038】
第2パッキン60の外周面には、取付け穴101の内周面に密着する外側リップ61が設けられ、第2パッキン60の内周面には、嵌挿部23の第2パッキン取付け面27に密着する内側リップ63が設けられている。
第2パッキン60の嵌挿方向後端側には、嵌合方向Aと反対の抜脱方向に向かって突出する一対の係合突片65が設けられている。係合突片65は、それぞれ左右の短手方向(上下方向)に沿って略C字状に延びている。
【0039】
第2パッキン60の嵌挿方向前端側には、嵌合方向Aに向かって突出する一対の係合片67が設けられている。係合片67は、それぞれ上下の長手方向(左右方向)に沿って略C字状に延びている。第2パッキン60の係合片67は、第2パッキン取付け面27に形成された凹部30の帯状の外形形状に対応した外形形状を有し、凹部30に補完的に係合することができる。
【0040】
更に、第2パッキン60の係合片67は、第2パッキン60の嵌挿方向前端側における外周部の少なくとも一部として、後述するフロントホルダ70の嵌挿方向後端側によって覆われる。
【0041】
図5の(a),(b)は、図2に示したフロントホルダ70を前方から見た斜視図及び後方から見た斜視図である。
フロントホルダ70は、電気絶縁性の合成樹脂からなり、ハウジング20の前端部に取り付けられる。フロントホルダ70は、図5の(a)に示すように、円環形状の環状部71と、長円板形状の前壁部73とを有する。
【0042】
前壁部73には、端子3が挿通される端子挿通口75が形成されている。前壁部73の嵌挿方向前端側には、図5の(b)に示すように、ハウジング20の係止突起35に係止される複数(本実施形態では4つ)の係止アーム77と、端子3の係止孔4に係合して端子3を二重係止する一対の係合突起78と、端子3に弾性接触して端子3のガタツキを抑える複数(本実施形態では4つ)の可撓片79とが設けられている。
【0043】
フロントホルダ70は、ハウジング20の前端部に取り付けられることで、第2パッキン60の離脱を規制する。更に、フロントホルダ70における環状部71の嵌挿方向後端側は、第2パッキン60の係合片67を覆うことができる。
また、フロントホルダ70は、端子挿通口75に挿入された端子3の位置決めを行なうことができる。
【0044】
次に、ハウジング20の嵌挿部23に対する第1パッキン40及び第2パッキン60の装着手順を説明する。
図6の(a),(b)は、図2に示した第1パッキン40の装着作業を説明する斜視図である。図7の(a),(b)は図2に示した第2パッキン60の装着作業を説明する斜視図である。
【0045】
先ず、図6の(a),(b)に示すように、ハウジング20の嵌挿部23における第1パッキン取付け面26に、第1パッキン40が装着される。ハウジング20の嵌挿部23に嵌挿された第1パッキン40は、嵌挿部23の外周面21と第1パッキン取付け面26との間に形成された段差部29に嵌挿方向後端40aが当接するまで移動される。
【0046】
次に、ハウジング20の嵌挿部23におけるリテーナ取付け部28に、リテーナ50が装着される。ハウジング20の嵌挿部23に嵌挿されたリテーナ50は、係止突起53がリテーナ取付け部28の係止部33に係止されるまで移動される。リテーナ取付け部28に装着されたリテーナ50は、係止突起53が係止部33に係止されることでリテーナ取付け部28に保持される。
【0047】
第1パッキン40の係合突片45は、リテーナ取付け部28の外周面とリテーナ50の内周面との間に画成された間隙に挿入され、外周面がリテーナ50により覆われる。そこで、第1パッキン40は、リテーナ50により嵌挿方向Aへの移動が規制されると共に嵌挿方向前端側のめくれが防止される。
【0048】
次に、ハウジング20の嵌挿部23における第2パッキン取付け面27に、第2パッキン60が装着される。ハウジング20の嵌挿部23に嵌挿された第2パッキン60は、段差部34に嵌挿方向後端60aが当接するまで、或いは、段差部31に係合片67の嵌挿方向後端67aが当接するまで移動される。第2パッキン取付け面27に装着された第2パッキン60は、係合片67が凹部30に補完的に係合すると共に係止部32に係止されることで第2パッキン取付け面27に保持される。
【0049】
第2パッキン60の係合突片65は、第2パッキン取付け面27とリテーナ50の内周面との間に画成された間隙に挿入され、外周面がリテーナ50により覆われる。そこで、第2パッキン60は、リテーナ50により嵌挿方向後端側のめくれが防止される。
【0050】
最後に、ハウジング20の前端部にフロントホルダ70が取り付けられる。ハウジング20の前端部に取り付けられたフロントホルダ70は、係止アーム77がハウジング20の係止突起35に係止されるまで移動される。ハウジング20の前端部に取り付けられたフロントホルダ70は、係止アーム77が係止突起35に係止されることでハウジング20の前端部に保持される。
【0051】
第2パッキン60の係合片67は、外周面がフロントホルダ70の嵌挿方向後端側によって覆われる。そこで、第2パッキン60は、フロントホルダ70により嵌挿方向前端側のめくれが防止される。
【0052】
次に、上記した構成の防水コネクタ11の作用を説明する。
8は、図1に示した防水コネクタ11の平面図である。図9は、図8におけるIX-IX断面矢視図である。図10は、図8におけるX-X断面矢視図である。
本実施形態に係る防水コネクタ11によれば、図9及び図10に示すように、ハウジング20の嵌挿部23における第1パッキン取付け面26に装着された第1パッキン40が、嵌挿部23の外周面21に設けられた係止部33に係止されたリテーナ50によって、ハウジング20に対して位置決め保持される。そして、ハウジング20の嵌挿方向Aに沿って嵌挿部23の外周面21に並設された第1パッキン40及び第2パッキン60は、確実に筐体100の取付け穴101とハウジング20との間を水密にシールすることができる。
【0053】
従って、嵌挿部23の外周面21には、第1パッキン40及び第2パッキン60を位置決め保持するためのパッキン収容溝が必要ない。そこで、従来の防水コネクタのように一対のパッキン収容溝の間に形成された壁を乗り越えるために奥側の第1パッキン40を拡げて装着する必要がなく、装着作業が容易となると共に、装着時に第1パッキン40が捩れたり、第1パッキン40のシール部である内側リップ43に傷が付いたりしてシール性能が低下することもない。
【0054】
また、本実施形態に係る防水コネクタ11では、第2パッキン60が装着される第2パッキン取付け面27に設けられた凹部30に、第2パッキン60の係合片67が係合されることよって、第2パッキン60はハウジング後端側への位置ずれが防止される。
【0055】
また、本実施形態に係る防水コネクタ11では、フロントホルダ70によって、第2パッキン60はハウジング20に対して嵌挿方向前端側への位置ずれが容易に防止される。
【0056】
また、本実施形態に係る防水コネクタ11では、第2パッキン60の係合片67が、フロントホルダ70における環状部71の嵌挿方向後端側によって覆われる。
そこで、ハウジング20の嵌挿部23が筐体100の取付け穴101に嵌挿される際、第2パッキン60の嵌挿方向前端側がめくれることを防止できる。
【0057】
従って、本実施形態に係る防水コネクタ11によれば、パッキンの装着作業が容易で、高い防水性を備えた防水コネクタを提供できる。
【0058】
ここで、上述した本発明に係るシールドコネクタの固定構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 相手方部材(筐体100)の取付け穴(101)に嵌挿される嵌挿部(23)の外周面(21)にパッキン取付け面(第1パッキン取付け面26及び第2パッキン取付け面27)を有するハウジング(20)と、
前記嵌挿部(23)の嵌挿方向後端側における前記パッキン取付け面(第1パッキン取付け面26)に装着される第1パッキン(40)と、
前記嵌挿部(23)の嵌挿方向前端側における前記パッキン取付け面(第2パッキン取付け面27)に装着される第2パッキン(60)と、
前記第1パッキン(40)と前記第2パッキン(60)との間に配置されて前記嵌挿部(23)の外周面(21)に設けられた係止部(33)に係止されるリテーナ(50)と、
を備えることを特徴とする防水コネクタ(11)。
[2] 前記第2パッキン(60)が装着される前記パッキン取付け面(第2パッキン取付け面27)の嵌挿方向前端側に設けられた凹部(30)と、
前記第2パッキン(60)の嵌挿方向前端側に設けられて前記凹部(30)に係合される係合片(67)と、
を備えることを特徴とする上記[1]に記載の防水コネクタ(11)。
[3] 前記ハウジング(20)の前端部には、前記第2パッキン(60)を保持するフロントホルダ(70)が設けられる
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の防水コネクタ(11)。
[4] 前記フロントホルダ(70)の嵌挿方向後端側が、前記第2パッキン(60)の嵌挿方向前端側における外周部の少なくとも一部(係合片67)を覆う
ことを特徴とする上記[3]に記載の防水コネクタ(11)。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態に係る防水コネクタ11では、第1パッキン40の嵌挿方向後端側への位置決めを、外周面21と第1パッキン取付け面26との間に形成された段差部29でした。しかしながら、本発明の防水コネクタはこれに限定されるものではなく、第1パッキンの内周面に突起を設けて嵌挿部の外周面に設けた係止凹部に係止させたり、第1パッキンの内周面に設けた係止アームを嵌挿部の外周面に設けた凹部に係合させたりして、第1パッキン40の嵌挿方向後端側への位置決めをすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
11…防水コネクタ
20…ハウジング
21…外周面
23…嵌挿部
26…第1パッキン取付け面(嵌挿方向後端側におけるパッキン取付け面)
27…第2パッキン取付け面(嵌挿方向前端側におけるパッキン取付け面)
33…係止部
40…第1パッキン
50…リテーナ
60…第2パッキン
70…フロントホルダ
100…筐体(相手方部材)
101…取付け穴
図1
図2
図3
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図10