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特許7128246抗炎症活性を有するペプチド、及びそれを含む組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】抗炎症活性を有するペプチド、及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/10 20060101AFI20220823BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220823BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220823BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220823BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220823BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20220823BHJP
【FI】
A61K38/10 ZNA
A61P29/00
A61P17/00
A61K8/64
A61Q19/00
A23L33/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020181780
(22)【出願日】2020-10-29
(62)【分割の表示】P 2019075635の分割
【原出願日】2013-03-15
(65)【公開番号】P2021011502
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2012-0079096
(32)【優先日】2012-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0089161
(32)【優先日】2012-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0089162
(32)【優先日】2012-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0089167
(32)【優先日】2012-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0104144
(32)【優先日】2012-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0104207
(32)【優先日】2012-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514286826
【氏名又は名称】ジェムバックス アンド カエル カンパニー,リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】514286848
【氏名又は名称】キム サン チェ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】キム サン チェ
(72)【発明者】
【氏名】キム キョン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】リ キュ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】コ ソン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ポム チュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョン-ヘ
(72)【発明者】
【氏名】フ ソン チン
(72)【発明者】
【氏名】リ ウ チン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ファイン
(72)【発明者】
【氏名】ハ チョン スン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/025871(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/101173(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61P 29/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号101又は158のアミノ酸配列から成るペプチドを活性成分として含む、抗炎症組成物。
【請求項2】
皮膚炎症の改善用または予防用の化粧品組成物である、請求項1に記載の抗炎症組成物。
【請求項3】
炎症性疾患の治療または予防のための医薬組成物である、請求項1に記載の抗炎症組成物。
【請求項4】
炎症の治療または予防のための食品組成物である、請求項1に記載の抗炎症組成物。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の組成物;及び
前記組成物の投与量、投与経路、投与回数及び適応症の少なくとも1つを含む指示書
を含む、炎症性疾患の治療用または予防用のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症活性を有するペプチド、及びそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、外部の物理的刺激、各種アレルギー誘発物質の接触を例として挙げることができる化学的刺激、あるいはバクテリア、かびまたはウイルスのような微生物の侵入などによって、生体組織が損傷されることを防ぐための生体の防御反応のうち一つである。
【0003】
炎症信号は、シクロオキシゲナーゼ(COX)経路またはリポキシゲナーゼ(LOX)経路を介して作られ、プロスタグランジン、トロンボキサンなどを生成する。炎症信号が伝達されれば、生体内では、さまざまな変化が起こるが、そのうちの一つとして、炎症が、必要な部位の血管を拡張させ、血液供給を旺盛にし、好中球など炎症反応に必要な血液細胞が集中供給される現象を挙げることができる。しかし、そのような生体の防御反応が非正常的に過度に起これば、さまざまな炎症性疾患が発病することになるので、それを防止するために、炎症信号経路の酵素(例えば、COX-1、COX-2、5-LOX、12-LOXなど)を抑制して炎症信号経路を遮断することにより、過度の炎症反応を抑制することができる薬物が開発されている。
【0004】
炎症は、反応期間により、急性炎症(acute inflammation;即刻反応、非特異的反応、数日~数週間)、慢性炎症(chronic inflammation;遅延された反応、特異性反応、数週間以上)、亜急性炎症(subacute inflammation;急性炎症と慢性炎症との中間段階、多核球と単核球との混合型産出物の特徴)に分けられる。
【0005】
また、炎症を誘発する因子には、ペプチド性因子以外に、プロスタグランジン、ロイコトリエン、血小板活性因子のような脂質性因子、炎症因子合成酵素、NO(nitric oxide)のような自由ラジカル、さまざまな種類の細胞接着分子、免疫系、凝固因子などが関与する。
【0006】
現在まで知られた炎症のメカニズムは、外部の生物学的な原因(細菌、ウイルス、寄生虫)、物理学的な原因(機械的な刺激、熱、放射線、電気)、化学的原因などによる細胞損傷により、ヒスタミン及びキニンなどが放出され、血管拡張、毛細管透過性増大、及び炎症部位への大食細胞の集結が起おり、それによって、感染部位の血流量増加、浮腫、兔疫細胞及び抗体の移動、痛症、発熱などの現象が起こる。
【0007】
現在使用されている炎症の治療剤には、イブプロフェンのような合成医薬品、抗ヒスタミン剤、ステロイド、コティソン、免疫抑制剤、免疫亢進制などが使用されているが、治療効果が一時的であったり、単純症状緩和であったり、あるいは過敏反応、免疫体系悪化などの副作用が多くあったりして、炎症の根本的な治療が困難である。従って、最近、効果的な炎症緩和のために、前記炎症関連タンパク質の発現を抑制することができる物質に係わる研究が進められている。しかし、そのような研究によって開発された抗炎物質の場合、いくつかの副作用が問題になっている。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とステロイド性抗炎症薬(SAID)とを始めとした、多様なメカニズムの炎症抑制用薬物が開発されているが、それらは、少なくない副作用を示すだけではなく、炎症反応を根本的に抑制するものではないために、さらに効果的であって安全であり、経済性の高い薬物に対する要求が依然として存在する。一例として、急性関節炎またはリュウマチ性関節炎のような慢性炎症疾患の治療に使用される非ステロイド性消炎薬物は、COX-2酵素を抑制するだけではなく、COX-1酵素も抑制することにより、胃腸管障害のような副作用を示すと知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】KR2012-013996A
【文献】KR2012-0133661A
【文献】KR2011-0060940A
【文献】US2011-0150873A1
【非特許文献】
【0009】
【文献】Bonaldi T et al., EMBOJ, (22)5551-60, 2003
【文献】Yankner BA et al., Science (New York, N. Y.)[1990, 250(4978): 279-282]
【文献】Dahlgren KN et al., J. Biol. Chem. 277: 32046-32053, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、テロメラーゼ由来のペプチドが抗炎活性を有するということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明の目的は、新規ペプチドを提供するところにある。
【0012】
本発明の他の目的は、新規ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供するところにある。
【0013】
本発明の他の目的は、抗炎症活性を有するペプチドを提供するところにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、抗炎症活性を有するペプチドを活性成分として使用する抗炎症組成物を提供するところにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、抗炎症活性を有するペプチドを活性成分として使用する化粧品組成物を提供するところにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、抗炎症活性を有するペプチドを活性成分として使用する医薬組成物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面によれば、抗炎症活性を有するペプチドであって、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含む(comprising)ペプチド、前記アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するペプチド、または前記ペプチドの断片であるペプチドが提供される。
【0018】
本発明の他の側面によれば、前記断片は、3個以上のアミノ酸からなる断片でもある。例えば、前記断片は、4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25または26個のアミノ酸からなる断片でもある。
【0019】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、30個以下のアミノ酸からなる。例えば、前記断片は、29,28,27,26,25,24,23,22,21,20,19,18,17,16,15,14,13,12,11,10,9または8個のアミノ酸からなる断片でもよい。
【0020】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、配列番号1~161のうちいずれか1つのアミノ酸配列からなる。
【0021】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、配列番号1~配列番号6、配列番号9、配列番号11、配列番号14~21、配列番号23~配列番号37、配列番号39~配列番号44、配列番号47~配列番号53、配列番号55~配列番号61、配列番号63~配列番号82、配列番号84~配列番号94、配列番号96、配列番号99~配列番号104、配列番号107~配列番号109、配列番号115、配列番号116、配列番号120~配列番号122、配列番号124、配列番号129~配列番号133、配列番号142~配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号149及び配列番号155~配列番号159からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0022】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、配列番号15~配列番号18、配列番号23~配列番号27、配列番号29、配列番号31~配列番号34、配列番号39~配列番号41、配列番号47、配列番号48、配列番号51~配列番号53、配列番号55~配列番号58、配列番号61、配列番号65~配列番号68、配列番号70、配列番号73~配列番号79、配列番号81、配列番号82、配列番号84~配列番号87、配列番号89~配列番号94、配列番号96、配列番号99、配列番号101~配列番号104、配列番号107~配列番号109、配列番号120、配列番号121、配列番号129~配列番号132、配列番号142~配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、及び配列番号157~配列番号159からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0023】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、配列番号1~配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17~配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号32~配列番号53、配列番号55~配列番号60、配列番号67、配列番号68、配列番号70、配列番号72~配列番号82、配列番号84~配列番号92、配列番号94、配列番号99~配列番号112、配列番号114、配列番号127~配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、配列番号151及び配列番号153~配列番号161からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0024】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、配列番号1~配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17~配列番号23、配列番号25~配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号33~配列番号43、配列番号156、配列番号157及び配列番号159からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0025】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号52、配列番号57、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号64、配列番号65、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号91、配列番号99、配列番号100、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号111、配列番号112、配列番号115、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号135、配列番号146、配列番号151、配列番号154及び配列番号156からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0026】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、ヒトテロメラーゼに由来したものでもある。
【0027】
本発明の一側面によれば、抗炎症活性を有するペプチドであって、配列番号1~161のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチド、または前記アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するペプチド、または前記ペプチドの断片であるペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0028】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、30個以下のアミノ酸をコードするポリヌクレオチドでもある。例えば、前記断片は、29,28,27,26,25,24,23,22,21,20,19,18,17,16,15,14,13,12,11,10、9または8個のアミノ酸から構成された断片でもある。
【0029】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、配列番号1~161のうちいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドをコードするポリヌクレオチドでもある。
【0030】
本発明の他の側面によれば、前記ペプチドは、ヒトテロメラーゼに由来したペプチドをコードするポリヌクレオチドでもある。
【0031】
本発明の一側面によれば、配列番号1~161のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを有効成分として含む抗炎症組成物が提供される。
【0032】
本発明の他の側面による組成物は、前記ペプチドは、30個以下のアミノ酸からなる(前記参照)。
【0033】
本発明の他の側面による組成物は、前記ペプチドが配列番号1~161のうちいずれか1つのアミノ酸配列からなってもよい。
【0034】
本発明の他の側面による組成物は、前記ペプチドがヒトテロメラーゼに由来したものでもある。
【0035】
本発明の他の側面による組成物は、炎症性疾患の治療用または予防用でもある。
【0036】
本発明の他の側面による組成物は、皮膚炎症の改善用または予防用の化粧品組成物でもある。
【0037】
本発明の他の側面による組成物は、炎症性疾患の治療または予防のための医薬組成物でもある。
【0038】
本発明の他の側面による組成物は、炎症の改善または予防のための食品組成物でもある。
【0039】
本発明の他の側面による組成物で前記炎症性疾患は、(1)全身または局所の炎症疾患(例えば、アレルギー;免疫複合体疾患;枯草熱;過敏性ショック;耐毒素ショック;悪液質(cachexia)、異常高熱;肉芽腫症;または類肉腫症);(2)胃腸管系疾患(例えば、虫垂炎;胃潰瘍;十二指腸潰瘍;腹膜炎;膵腸炎;潰瘍性、急性または虚血性の大腸炎;胆管炎;胆嚢炎、脂肪便症、肝炎、クローン病;またはウィップル病);(3)皮膚関連疾患(例えば、乾癬;火傷;日焼け火傷;皮膚炎;蕁麻疹性のいぼまたは膨疹);(4)心血管系疾患(例えば、血管炎;脈管炎;心内膜炎;動脈炎;粥状動脈硬化症;血栓静脈炎;心膜炎;鬱血性心不全;心筋炎;心筋虚血症;結節性動脈周囲炎;再発性狭窄症;バーガー氏病;またはリューマチ熱);(5)呼吸器系疾患(例えば、喘息;喉頭蓋炎;気管支炎;肺気腫(emphysema);鼻炎;嚢胞性纎維症;癲癇性肺炎;慢性閉鎖性疾患(COPD);成人呼吸障害症侯群;塵肺症;肺胞炎;細気管支炎;咽頭炎;肋膜炎;または副鼻腔炎);(6)骨、関節、筋肉及び結合組織関連疾患(例えば、読み上げ算性肉芽種;関節炎;関節痛;骨髄炎;皮膚筋炎;筋膜炎;パジェット病;通風;歯周疾患;リューマチ性関節炎;重症筋無力症;強直性脊椎炎;または潤滑膜炎);(7)泌尿生殖系疾患(例えば、副睾丸炎;膣炎;前立腺炎;または尿道炎);(8)中枢または末梢神経系関連疾患(例えば、アルツハイマー病;髄膜炎;脳炎;多発性硬化症;脳梗塞;脳塞栓症;キラン・バレー症侯群(Guillain-Barre syndrome);神経炎;神経痛;骨髄外傷;麻痺;またはぶどう膜炎);(9)ウイルス(例えば、インフルエンザ;呼吸器細胞融合ウイルス;HIV;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルスまたはヘルペスウイルス)感染疾患(例えば、デング熱;または敗血症(septicemia))、真菌感染疾患(例えば、カンジダ症)、またはバクテリア、寄生虫のようなその他微生物感染疾患(例えば、散在性菌血症;マラリア;糸状虫症;またはアメーバ症);(10)その他自己免疫性疾患(例えば、甲状腺炎;ループス;グッドパスチャー症侯群;同種移植拒否反応;移植片対宿主病;または糖尿病);及び(11)癌または腫瘍性疾患(例えば、ホジキン病)からなる群から選択されるものでもある。
【0040】
本発明の一側面によれば、前記言及された抗炎症組成物を投与することを特徴とする炎症性疾患を予防または治療する方法が提供される。
【0041】
本発明の一側面によれば、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチド、あるいはそれを含む組成物、及びペプチドまたはそれを含む組成物の投与量、投与経路、投与回数及び適応症のうち一つ以上を開示した指示書を含む炎症性疾患の予防用または治療用のキットが提供される。
【発明の効果】
【0042】
本発明による配列番号1~161のうちいずれか1つの配列を有するペプチド、あるいは前記配列と80%の相同性を有する配列を有するペプチド、または断片であるペプチドは、優秀な炎症の予防効果または抑制効果を有する。従って、本発明のペプチドを含む組成物は、抗炎症効果のための医薬組成物または化粧品組成物として使用され、多様な炎症性疾患の治療及び予防に広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図2】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図3】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図4】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図5】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図6】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図7】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図8】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図9】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図10】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図11】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図12】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図13】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図14】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図15】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図16】モノサイトに対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図17】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図18】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図19】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図20】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図21】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図22】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図23】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図24】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図25】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図26】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図27】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図28】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図29】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図30】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図31】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図32】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図33】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図34】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図35】細胞株THP-1に対するTNF-α阻害効果についてスクリーニングした結果である。
図36】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット(western blot)分析結果である。
図37】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図38】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図39】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図40】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図41】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図42】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図43】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図44】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図45】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図46】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図47】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図48】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図49】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図50】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図51】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図52】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図53】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図54】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
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図60】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図61】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
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図70】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図71】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
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図74】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図75】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
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図77】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図78】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図79】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図80】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
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図90】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図91】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
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図93】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図94】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図95】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図96】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図97】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図98】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図99】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図100】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図101】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図102】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図103】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図104】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図105】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図106】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図107】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
図108】細胞内HMGB1の蓄積を示す選択されたペプチドのウェスタンブロット分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有するが、以下、本発明についてさらに具体的に説明する。しかし、それは、本発明を特定の実施形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むものであると理解されなければならない。本発明について説明するにあたり、関連公知技術に係わる具体的な説明が、本発明の要旨を不明確にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0045】
テロメア(telomere)は、染色体の末端に反復して存在する遺伝物質であり、当該染色体の損傷や、他の染色体との結合を防止すると知られている。細胞が分裂するたびに、テロメアの長さは少しずつ短くなるが、一定回数以上の細胞分裂があるば、テロメアは非常に短くなり、その細胞は、分裂を止めて死亡する。一方、テロメアを長くすれば、細胞の寿命が延長すると知られており、その例として、癌細胞では、テロメラーゼ(telomerase)という酵素が分泌し、テロメアが短くなることを防ぐために、癌細胞が死亡せず、続けて増殖可能であると知られている。本発明者らは、テロメラーゼ由来の数多くのペプチドが、抗炎活性を有するということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0046】
本発明の一側面は、抗炎症活性を有するペプチドであって、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを提供する。
【0047】
配列番号1~配列番号161に記載されたペプチドは、下記表1の通りである。配列番号162は、ヒトテロメラーゼ全長タンパク質の配列である。配列番号163は、テロメラーゼ由来16個アミノ酸から構成されたペプチドを示す。
【0048】
下記表1の「名称」は、ペプチドを区別するために命名したものである。本発明の他の一側面で、配列番号1~配列番号161に記載されたペプチドのうち一つ以上のペプチドは、テロメラーゼに含まれたペプチドのうち、当該位置のペプチドを選別して合成した「合成ペプチド」を含む。本明細書で「pep」というのは、配列番号1~配列番号161のうちいずれか1つの配列を有するペプチド、またはその配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、または前記配列の断片を総称する用語である。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
本発明の一側面は、抗炎症活性を有するペプチドであって、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドを利用して、ペプチドを量産することができる。例えば、ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞に入れて培養することにより、ペプチドを量産することができる。
【0056】
本明細書に開示されたペプチドは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列相同性を有するペプチドを含む。また、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1を含むペプチドまたはその断片と、1個以上のアミノ酸、2個以上のアミノ酸、3個以上のアミノ酸、4個以上のアミノ酸、5個以上のアミノ酸、6個以上のアミノ酸または7個以上のアミノ酸が変化しペプチドと、を含んでもよい。
【0057】
本明細書で「相同性(homology)」及び「配列同一性(sequence identity)」というのは、相互変換可能に使用され、それは、2個のアミノ酸(または、関連したものとして核酸)間での配列オーバーラップ程度を示す。
本明細書において、ペプチドや核酸に対して「配列同一性」の用語使用にあたって特に使用していないとしても、配列の同一性は、(nref-ndif)*100/nrefを使用して計算され、前記計算式で、2つの配列を整列して最も多くの一致数が出てきたとき、ndifは、2つの配列間での非一致残基の総数を、nrefは、2つの配列において、短い配列の残基の総数を意味する。例えば、DNA配列agtcagtcは、aatcaatcの配列との配列同一性を前記式で求めれば、75%である(nref=8、ndif=2)。
【0058】
本明細書の一側面で、配列の同一性は、従来公知の下記の方法で決定された:Smith and Waterman, 1981, Adv. Appl. Math. 2:482, by the search for similarity method of Pearson & Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, using the CLUSTAL W algorithm of Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Res 22:467380, by computerized implementations of these algorithms (GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group). The BLAST algorithm (Altschul et al., 1990, Mol. Biol. 215:403-10) for which software may be obtained through the National Center for Biotechnology Information (www.ncbi.nlm.nih.gov/) may also be used. When using any of the aforementioned algorithms, the default parameters for "Window" length, gap penaltyなど。
【0059】
本発明の一側面で、アミノ酸変化は、ペプチドの物理化学的特性を変更させる性質に属する。例えば、ペプチドの熱安定性を向上させ、基質特異性を変更させ、最適のpHを変化させるようなアミノ酸変化が行われる。
【0060】
本発明の一側面で、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドは、30個以下のアミノ酸から構成されてもよい。
【0061】
本発明の一側面で、配列番号1~161の配列を有するペプチド、配列番号1~161配列の断片であるペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドは、テロメラーゼ、具体的には、ヒト(Homo sapiens)テロメラーゼに由来したペプチドを含む。
【0062】
本明細書において「アミノ酸」とは、自然にペプチドに統合される22個の標準アミノ酸だけではなく、D-アイソマー及び変形されたアミノ酸を含む。それによって、本発明の一側面においてペプチドは、D-アミノ酸を含むペプチドでもある。一方、本発明の他の側面においてペプチドは、翻訳後変形(post-translational modification)された非標準アミノ酸などを含んでもよい。翻訳後変形の例は、リン酸化(phosphorylation)、糖化(glycosylation)、アシル化(acylation)(例えば、アセチル化(acetylation)、ミリストイル化(myristoylation)及びパルミトイル化(palmitoylation)を含む)、アルキル化(alkylation)、カルボキシル化(carboxylation)、ヒドロキシル化(hydroxylation)、糖化反応(glycation)、ビオチニル化(biotinylation)、ユビキチニル化(ubiquitinylation)、化学的性質の変化(例えば、ベータ除去タルイミド化、脱アミド化)及び構造的変化(例えば、二硫化物ブリッジの形成)を含む。また、ペプチドコンジュゲートを形成するための架橋剤(cross linker)との結合過程で起こる化学反応によって生ずるアミノ酸の変化、例えば、アミノ基、カルボン酸基または側鎖での変化のようなアミノ酸の変化を含む。
【0063】
本明細書に開示されたペプチドは、自然そのままの供給源から同定及び分離された野生型ペプチドでもある。一方、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1の断片であるペプチドと比較し、一つ以上のアミノ酸が置換、欠失及び/または挿入されたアミノ酸配列を含む、人工変異体でもある。人工変異体でだけではなく、野生型ポリペプチドでのアミノ酸変化は、タンパク質のフォールディング(folding)及び/または活性に、有意の影響を及ぼさない保存性アミノ酸置換を含む。保存性置換の例としては、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン及びメチオニン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)及び小アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン及びトレオニン)の群の範囲内にある。一般的に、特異的活性を変更させないアミノ酸置換が本分野に公知されている。最も一般的に発生する交換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu及びAsp/Gly、並びにそれらと反対であるものである。保存的置換の他の例は、下記表2の通りである。
【0064】
【表7】
【0065】
ペプチドの生物学的特性における実在的な変形は、(a)置換領域内のポリペプチド骨格の構造、例えば、シートまたは螺旋立体構造の維持におけるそれらの効果、(b)標的部位での前記分子の電荷または疎水性の維持におけるそれらの効果、または(c)側鎖のバルク維持におけるそれらの効果が、相当に異なる置換部を選択することによって行われる。天然残基は、一般的な側鎖特性に基づいて、次のグループに区分される:
【0066】
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0067】
非保存的置換は、それら部類のうち1つの構成員を、他の部類で交換することによって行われる。ペプチドの適当な立体構造の維持と関連がないいかなるシステイン残基も、一般的にセリンで置換され、前記分子の酸化的安定性を向上させ、異常な架橋結合を防止することができる。逆に言えば、システイン結合を、前記ペプチドに加え、その安定性を向上させることができる。
【0068】
ペプチドの他の類型のアミノ酸変異体は、抗体のグリコシル化パターンが変化したもである。変化という意味は、ペプチドで発見された一つ以上の炭水化物残基の欠失、及び(または)ペプチド内に存在しない一つ以上のグリコシル化部位の付加を示す。
【0069】
ペプチドのグリコシル化は、典型的に、N-連結されたり、あるいはO-連結されたものである。N-連結されたということは、炭水化物残基がアスパラギン残基の側鎖に付着したということをいう。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリンを除いた任意のアミノ酸である)は、炭水化物残基をアスパラギン側鎖に酵素的に付着させるための認識配列である。従って、それらトリペプチド配列のうち一つがポリペプチドに存在することにより、潜在的なグリコシル化部位が生成される。O-連結されたグリコシル化は、糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち一つを、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的には、セリンまたはトレオニンに付着させることを意味するが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンを使用することもできる。
【0070】
ペプチドへのグリコシル化部位の付加は、一つ以上の前述のトリペプチド配列を含むように、アミノ酸配列を変化させることによって便利に行われる(N-連結されたグリコシル化部位の場合)。そのような変化は、一つ以上のセリン残基またはトレオニン残基を、最初の抗体の配列に付加するか、あるいはそれら残基で置換することによってもななれる(O-連結されたグリコシル化部位の場合)。
【0071】
本発明の一側面で、ポリヌクレオチドは、核酸分子であり、自然発生的または人工的なDNA分子またはRNA分子であり、一本鎖または二本鎖でもある。核酸分子は、一つ以上でもあるが、同一類型の(例えば、同一ヌクレオシド配列を有する)核酸分子でもあり、他の類型としての核酸分子でもある。DNA、cDNA、decoy DNA、RNA、siRNA、miRNA、shRNA、stRNA、snoRNA、snRNA、PNA、アンチセンスオリゴマー(antisense oligomer)、プラスミド(plasmid)、及びそれ以外の変形された核酸のうち一つ以上を含むが、それらに制限されるものではない。
【0072】
HMGB1タンパク質は、外部刺激によって核内に存在するHMGB1タンパク質がアセチル化されて細胞質に移動していて、その後細胞外部に分泌されることによって、炎症誘発サイトカイン(cytokine)の役割を行うと知られている。そのように炎症がある場合、HMGB1タンパク質が細胞外部に分泌されるので、炎症性疾患であるチャーグ・ストラウス症侯群、リューマチ関節炎及びシェーグレン症候群の患者の血清は、正常人よりはるかく多くの量のHMGB1タンパク質を有する。従って、炎症が誘発されるいかなる刺激が与えられても、細胞核内のHMGB1タンパク質量が多ければ、それは、HMGB1タンパク質が細胞外部に分泌されていないということを意味するので、炎症が抑制されていると見られる。
【0073】
本発明の一側面による配列番号1~161の配列を有するペプチド、配列番号1~161の配列の断片であるペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドで細胞を処理すれば、細胞核内HMGB1タンパク質量が増加する。それは、配列番号1~161の配列を有するペプチド、配列番号1~161の配列の断片であるペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドが優秀な炎症の予防効果または抑制効果を有するということを意味する。
【0074】
また、本発明の一側面による配列番号1~161の配列を有するペプチド、配列番号1~161の配列の断片であるペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドは、細胞内毒性が低く、生体内安定性が高いという長所を有する。
【0075】
本明細書において「炎症性疾患」は、炎症を主な原因にする疾患、または疾患によって炎症が発生する疾患など炎症と係わる疾患をいずれも含む広範囲な概念である。具体的には、炎症性疾患は、(1)全身または局所の炎症疾患(例えば、アレルギー;免疫複合体疾患;枯草熱;過敏性ショック;耐毒素ショック;悪液質(cachexia)、異常高熱;肉芽腫症;または類肉腫症);(2)胃腸管系疾患(例えば、虫垂炎;胃潰瘍;十二指腸潰瘍;腹膜炎;膵腸炎;潰瘍性、急性または虚血性の大腸炎;胆管炎;胆嚢炎、脂肪便症、肝炎、クローン病;またはウィップル病);(3)皮膚関連疾患(例えば、乾癬;火傷;日焼け火傷;皮膚炎;蕁麻疹性のいぼまたは膨疹);(4)心血管系疾患(例えば、血管炎;脈管炎;心内膜炎;動脈炎;粥状動脈硬化症;血栓静脈炎;心膜炎;鬱血性心不全;心筋炎;心筋虚血症;結節性動脈周囲炎;再発性狭窄症;バーガー氏病;またはリューマチ熱);(5)呼吸器系疾患(例えば、喘息;喉頭蓋炎;気管支炎;肺気腫(emphysema);鼻炎;嚢胞性纎維症;癲癇性肺炎;慢性閉鎖性疾患(COPD);成人呼吸障害症侯群;塵肺症;肺胞炎;細気管支炎;咽頭炎;肋膜炎;または副鼻腔炎);(6)骨、関節、筋肉及び結合組織関連疾患(例えば、好酸性肉芽種;関節炎;関節痛;骨髄炎;皮膚筋炎;筋膜炎;パジェット病;通風;歯周疾患;リューマチ性関節炎;重症筋無力症;強直性脊椎炎;または潤滑膜炎);(7)泌尿生殖系疾患(例えば、副睾丸炎;膣炎;前立腺炎;または尿道炎);(8)中枢または末梢神経系関連疾患(例えば、アルツハイマー病;髄膜炎;脳炎;多発性硬化症;脳梗塞;脳塞栓症;キラン・バレー症侯群(Guillain-Barre syndrome);神経炎;神経痛;骨髄外傷;麻痺;またはぶどう膜炎);(9)ウイルス(例えば、インフルエンザ;呼吸器細胞融合ウイルス;HIV;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルスまたはヘルペスウイルス)、感染疾患(例えば、デング熱;または敗血症(septicemia))、真菌感染疾患(例えば、カンジダ症);またはバクテリア、寄生虫、および類似の微生物感染疾患(例えば、散在性菌血症;マラリア;糸状虫症;またはアメーバ症);(10)自己免疫性疾患(例えば、甲状腺炎;ループス;グッドパスチャー症侯群;同種移植拒否反応;移植片対宿主病;または糖尿病);または(11)癌または腫瘍性疾患(例えば、ホジキン病)を含むが、それらに制限されるものではない。
【0076】
そのような疾病の炎症性要素の治療は、数十年間、全世界製薬業界の最も重要な目標であり、数多くの有用な治療法が開発されてきた。その例としては、コルチコステロイド(プレドニソロン、メチルプレドニソロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾンなどを含み、コルチゾールの効果を模倣するように考案された多様な範囲の天然、半合成及び合成の製剤)、シクロオキシゲナーゼ抑制剤(インドメタシン、スルファサラジン及びアスピリンのように、非選択性またはcox-1選択性、及びさらに最近のセレコキシブのように、cox-2選択性)、(モンテルカストのような)ロイコトリエン遮断製、及び(サリドマイドのような低分子TNF-α合成抑制剤だけではなく、インフリキシマブ(RemicadeTM)及びアダリムマブ(HumiraTm)を含む改良モノクローナル中和抗体、エタネルセプト(EnbrelTM)のようなTNF受容体融合タンパク質のような)抗TNFを含む。
【0077】
本発明の一側面では、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを有効成分として含む抗炎組成物を提供する。
【0078】
本発明の一側面による抗炎組成物は、一側面では、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを0.1μg/mg~1mg/mg、具体的には1μg/mg~0.5mg/mg、さらに具体的には10μg/mg~0.1mg/mgの含量で含んでもよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図した効果を示すのに適切なだけではなく、組成物の安定性及び安全性をいずれも満足することができ、コスト対比効果の側面で、も前記範囲で含むことが適切である。
【0079】
本発明の一側面による組成物は、ヒト、犬、ニワトリ、豚、牛、羊、ギニアピッグまたは猿を含む全ての動物に適用されてもよい。
【0080】
本発明の一側面において、該組成物は、配列番号1~161からなる群から選択される配列を有するペプチド、配列番号1の配列の断片であるペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドを有効成分として含む炎症性疾患の治療用または予防用の医薬組成物を提供する。本発明の一側面による医薬組成物は、経口、直腸、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、骨髄内、硬膜内または皮下などに投与されてもよい。
【0081】
経口投与のための剤形は、錠剤、丸剤、軟質または硬質のカプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤または乳濁剤でもあるが、それらに制限されるものではない。非経口投与のための剤形は、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁液剤、乳剤、坐剤、パッチまたは噴霧剤でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0082】
本発明の一側面による医薬組成物は、必要によっては、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、分散剤、界面活性剤、着色剤、香料または甘味剤などの添加剤を含んでもよい。本発明の一側面による医薬組成物は、当業界の一般的な方法によって製造されてもよい。
【0083】
本発明の一側面による医薬組成物の有効成分は、投与される対象の年齢、性別、体重、病理状態及びその深刻度、投与経路、または処方者の判断によって異なる。そのような因子に基づいた適用量決定は、当業者のレベル内にあり、その1日投与用量は、例えば、0.1μg/kg/日~1g/kg/日、具体的には1μg/kg/日~10mg/kg/日、さらに具体的には10μg/kg/日~1mg/kg/日、一層具体的には50μg/kg/日~100μg/kg/日になるが、それらに制限されるものではない。本発明の一側面による医薬組成物は、1日1回~3回投与されるが、それに制限されるものではない。
【0084】
本発明の一側面では、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを有効成分として含む皮膚炎症の改善用または予防用の皮膚外用剤組成物を提供する。
【0085】
本発明の他の一側面では、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドを有効成分として含む皮膚炎症の改善用または予防用の化粧品組成物を提供する。
【0086】
本発明の一側面による皮膚外用剤組成物または化粧品組成物は、局所適用に適する全ての剤形に提供されてもよい。例えば、溶液、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、油相に水相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、固体、ゲル、粉末、ペースト、泡沫(foam)またはエアロゾールの剤形で提供されてもよい。そのような剤形は、当該分野の一般的な方法によって製造されてもよい。
【0087】
本発明の一側面による化粧品組成物は、主効果を損傷させない範囲内で、望ましくは、主効果に相乗効果を与えることができる他の成分を含んでもよい。また、本発明の一側面による化粧品組成物は、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機または無機の顔料、香料、冷感剤または制汗剤をさらに含んでもよい。前記成分の配合量は、本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内で、当業者が容易に選定可能であり、その配合量は、化粧品組成物全体重量を基準に、0.01~5重量%、具体的には0.01~3重量%でもある。
【0088】
本発明の一側面において該組成物は、配列番号1~161からなる群から選択される配列を有するペプチド、配列番号1~161の配列の断片であるペプチド、または前記ペプチド配列と80%以上の配列相同性を有するペプチドを有効成分として含む炎症予防用または抑制用の食品組成物を提供する。
本発明の一側面による食品組成物の剤形は、特別に限定されるものではないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤、固形製剤などで剤形化にもなる。各剤形は、有効成分以外に、当該分野で一般的に使用される成分を剤形または使用目的によって、当業者が困難なしに、適宜選定して配合することができ、他の原料と同時に適用する場合、相乗効果が起こるのである。
【0089】
前記有効成分の投与量決定は、当業者のレベル内にあり、その1日投与用量は、例えば、具体的には1μg/kg/日~10mg/kg/日、さらに具体的には10μg/kg/日~1mg/kg/日、一層具体的には50μg/kg/日~100μg/kg/日にもなるが、それらに制限されるものではなく、投与する対象の年齢、健康状態、合併症など多様な要因によって異なる。
【0090】
本発明の一側面においては、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドの炎症性疾患の予防用途または治療用途を提供する。
【0091】
本発明の一側面によれば、ペプチドを前記患者に提供することにより、炎症性疾患を予防または治療する方法が提供される。
【0092】
本発明の一側面において、配列番号1~161のうちいずれか一つ以上のアミノ酸配列を含むペプチド、前記アミノ酸配列と80%以上の配列相同性を有するペプチド、またはその断片であるペプチドまたはそれを含む組成物;及びペプチドまたはそれを含む組成物の投与量、投与経路、投与回数及び適応症のうち一つ以上を開示した指示書;を含む炎症性疾患の予防用または治療用のキットを提供する。
【0093】
本明細書で使用された用語は、特定具体例について説明するための目的のみに意図されたものであり、本発明を限定する意図ではない。名詞の前に個数が省略された用語は、数量を制限するものではなく、言及された名詞物品が一つ以上存在するということを示すものである。用語「含む」、「有する」及び「なる」は、開かれた用語と解釈される(すなわち、「含むが、それに限定されるものではない」という意味)。
【0094】
数値の範囲を言及したのは、ただその範囲内に属するそれぞれの別個の数値を個別的に言及することの代わりとする容易な方法だからであり、そうではないということが明示されていない限り、各別個の数値は、まさに個別的に明細書に言及されているように本明細書に統合される。全ての範囲の終値は、その範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。
【0095】
本明細書に言及された全ての方法は、異なって明示されているか、あるいは文脈によって明白に矛盾しない限り、適切な手順で遂行されてもよい。ある一実施例及び全ての実施例、または例示的言語(例えば、「~のような」)を使用するのは、特許請求の範囲に含まれていない限り、単に本発明をさらに良好に記述するためであり、本発明の範囲を制限するものではない。明細書のいかなる言語も、いかなる非請求の構成要素を、本発明の実施に必須なものであると解釈されてはならない。取り立てての定義がない限り、本明細書に使用される技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野で当業者によって、通常理解されるような意味を有する。
【0096】
本発明の望ましい具体例は、本発明を遂行するために、発明者に知られた最適のモードを含む。望ましい具体例の変動は、先行記載を読めば、当業者に明白になるであろう。本発明者らは、当業者がかような変動を適切に利用することを期待し、本明細書に記載されたところと異なる方式で本発明が実施されることを期待する。従って、本発明は、特許法によって許容されるように、添付された特許請求の範囲で言及された発明の要旨の均等物及び全ての変形を含む。さらに、全ての可能な変動内で、前述の構成要素のいかなる組み合わせでも、ここで反対に明示するか、あるいは文脈上明白に矛盾しない限り、本発明に含まれるものである。本発明は、例示的な具体例を参照し、具体的に示されて記述されたが、当業者であるならば、特許請求の範囲によって定義される発明の精神及び範囲を外れずとも、形態及びディテールにおいて、多様な変化が行われるということを十分に理解するであろう。
【0097】
腫瘍懐死因子(TNF)、特にTNF-αは、炎症性細胞から放出され、多彩な細胞毒性反応、免疫反応及び炎症反応を起こすと知られている。TNF-αは、多くの炎症疾患及び自己免疫疾患の発症や遷延化に関与し、また血液中に放出されて全身に作用すれば、重症の敗血症及び敗血症性ショックを起こということが知られている。そのようにTNF-αは、生体の免疫系に広範囲に関連する因子であるために、TNF-αを抑制する薬剤の開発が活発に実施されている。TNF-αは、不活性型に生合成され、プロテアーゼによって切断されて活性型になるが、その活性化に関与する酵素は、腫瘍懐死因子変換酵素(TACE)と呼ばれている。従って、そのTACEを阻害する物質は、TNF-αから起因する疾患、病態、異常状態、状態が不良、不良な自覚症状などを治療、改善、予防することができる。
【0098】
HMGB1(high-mobility group box 1)タンパク質は、胸腺、リンパ節、睾丸、胎児の肝臓などで高い濃度で存在し、肝細胞と脳細胞とを除けば、ほとんどの細胞では、主に核内に存在する。そのような前記HMGB1タンパク質は、A-box、B-box、C-terminalから構成された3個のドメイン(domain)を有している。
【0099】
HMGB1タンパク質が炎症を誘発するサイトカインの役割を行うということは、1999年、Traceyらによって報告され、前記HMGB1の炎症誘発メカニズムは、外部刺激によって、核内に存在するHMGB1がアセチル化された後に細胞質に移動する。その後、細胞外に分泌されるか、あるいは懐死に陥った細胞から外部に分泌されると知られている(Bonaldi T et al., EMBO J, (22)5551-60, 2003)。
【0100】
以下、実施例及び実験例を挙げ、本発明の構成及び効果についてさらに具体的に説明する。しかし、下記実施例及び実験例は、本発明の理解の一助とするために、例示の目的にのみ提供されたものであり、本発明の範疇及び範囲がそれらによって制限されるものではない。
【実施例
【0101】
実施例1:PEP 1(配列番号163)の合成及び抗炎活性測定
実験例1:PEP 1(配列番号163)の合成
ヒトテロメラーゼから選別された下記配列SEQ ID:1(PEP 1)を有する下記化学構造1を有する16個のアミノ酸から構成されたペプチドを合成した。
【0102】
【化1】
【0103】
配列番号1のペプチドPEP 1は、従来公知の固相ペプチド合成法によって製造することができた。具体的には、ペプチドは、ASP48S(Peptron、Inc.,大韓民国大田所在)を利用して、Fmoc固相合成法(SPPS:solid phase peptide synthesis)を介して、C-末端からアミノ酸を一つずつカップリングすることによって合成した。次のように、ペプチドのC-末端の最初のアミノ酸が樹脂に付着したものを使用した。例えば、次の通りである:
【0104】
NH2-Lys(Boc)-2-chloro-Trityl Resin
NH2-Ala-2-chloro-Trityl Resin
NH2-Arg(Pbf)-2-chloro-Trityl Resin
【0105】
ペプチド合成に使用した全てのアミノ酸原料は、N-termがFmocによって保護され、残基は、いずれも酸で除去されるTrt、Boc、t-Bu(t-butylester)、Pbf(2,2,4,6,7-pentamethyl dihydro-benzofuran-5-sulfonyl)などによって保護されたものを使用した。例えば、次の通りである:
【0106】
Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Ahx-OH、Trt-Mercaptoaceticacid
【0107】
カップリング試薬(coupling reagent)としては、HBTU[2-(1H-Benzotriazole-1-yl)-1,1,3,3-tetamethylaminium hexafluorophosphate]/HOBt[N-Hydroxxybenzotriazole]/NMM[4-Methylmorpholine]を使用した。Fmoc除去は、20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を利用した。合成されたペプチドをResinから分離し、残基の保護基を除去するためには、切断カクテル(cleavage cocktail)[TFA(trifluoroacetic acid)/TIS(triisopropylsilane)/EDT(ethanedithiol)/H2O=92.5/2.5/2.5/2.5]を使用した。
【0108】
アミノ酸保護基が結合された出発アミノ酸が固相支持体に結合されている状態を利用して、ここに当該アミノ酸をそれぞれ反応させ、溶媒で洗浄した後、脱保護する過程を反復することにより、各ペプチドを合成した。合成されたペプチドを樹脂から切り取った後、HPLでに精製し、合成いかんをMSで確認して凍結乾燥させた。
【0109】
PEP 1の具体的な合成過程について説明すれば、次の通りである。
1)カップリング
NH2-Lys(Boc)-2-chloro-Trityl Resinに保護されたアミノ酸(8当量)と、カップリング試薬HBTU(8当量)/HOBt(8当量)/NMM(16当量)とをDMFに溶解させて添加した後、常温で2時間反応させ、DMF、MeOH、DMFの順に洗浄した。
【0110】
2)Fmoc脱保護
20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を加え、常温で5分間2回反応させ、DMF、MeOH、DMFの順に洗浄した。
【0111】
3)1及び2の反応を反復して行い、ペプチド基本骨格NH2-E(OtBu)-A-R(Pbf)-P-A-L-L-T(tBu)-S(tBu)-R(Pbf)L-R(Pbf)-F-I-P-K(Boc)-2-chloro-Trityl Resin)を作った。
【0112】
4)切断(cleavage):合成が完了したペプチドResinに、切断カクテル(cleavage cocktail)を加え、ペプチドをレジンから分離した。
【0113】
5)得られた混合物(mixture)に、cooling diethyl etherを加えた後、遠心分離して得られたペプチドを沈澱させる。
【0114】
6)Prep-HPLCで精製した後、LC/MSで分子量を確認して凍結させ、パウダーに製造した。
【0115】
実験例2:PEP 1の抗炎症活性測定
細胞株培養
韓国細胞株銀行から分譲されたRaw 264.7macrophage cell(KCBL、40071)は、10%feta lbovine serum(FBS;Gibco Laboratories)と、100unit/mLのstreptomycin及びpenicillin(Gibco Laboratories)が添加されたDulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM;PAA,Austria)培地を使用して、1×106細胞/mlに調節した後、96ウェルプレートに接種し、37゜C、5% CO2の条件で前培養した。
【0116】
翌日、培地を除去し、新たな培地に代替し、実験例1を介して得られたペプチド試料を5μg/mL細胞に加えた。30分間CO2インキュベータで培養した後、50μlのLPS(最終濃度1μg/ml)を含んだ培地を処理し、インキュベータ(5%CO2、37°C)で24時間培養した。炎症反応モデルは、各ウェル当たり1μg/mLリポ多糖(LPS:lipopolysaccharide;Sigma,USA)を処理し、対照群は、フォスフェリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.2)処理を行った。LPS処理モデル及び対照群から得たそれぞれの細胞培養液は、追加分析のために、エペンドルフチューブ(eppendorf tube)に入れて保管した。
【0117】
実験2-1.酸化窒素(NO)分析
酸化窒素の定量は、Raw 264.7細胞(1×106細胞/ml)を利用して、グリース反応液システム(Griess reagent system;Promega,USA)を使用して測定する方法を使用した。96-ウェルプレートに培養液50μlを入れ、グリース反応液I(ナフチルエチレンジアミド(NED)溶液)及びグリース反応液II(スルファニルアミド溶液)を同量で混合して入れ、10分間の反応後、30分以内に、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,USA)を利用して、光学密度540nmで測定した。酸化窒素(NO)の濃度は、亜硝酸ナトリウムの標準曲線(0~100μM)を利用して計算した。
【0118】
下記表3に示されているように、LPSは、NOの生成を増加させたが、LPSとペプチドPEP 1とを同時に処理した場合、NO生成量が減少するということを確認することができた。特に、PEP 1を処理した場合には、炎症の誘発時に生成されるNOの生成量が65%減少したと推し量るとき、炎症誘発が抑制されたということが分かった。
【0119】
【表8】
【0120】
実験2-2.サイトカイン生成抑制効果の分析
PEP 1の炎症性サイトカイン生成抑制効果を調査するために、RAW 264.7cellを、ヒトテロメラーゼ由来PEP 15μg/mL濃度でまず処理した後、LPS 1μg/mL濃度で処理し、24時間さらに培養した。細胞培養液(culture medium)を含む上澄み液サンプルを採集し、ELISAキット(eBioscience,San Diego)を使用して、サイトカインレベルを分析した。
【0121】
96-ウェルプレートは、100μlのキャプチャ抗体(capture antibodies;製造社のプロトコルによる推薦濃度によってなるコーティングバッファに溶解されたもの)でコーティングされ、4°Cで一晩反応させた。そして、プレートを5回洗浄した後、200μlのアッセイ希釈液(diluents)を各ウェルに添加し、ブロッキングの間、室温で1時間反応させた。各ウェルをウォッシュバッファで5回洗浄した後、細胞培養液サンプル、または各サイトカイン標準タンパク質サンプルは希釈され、100μlずつ各ウェルに添加された。サンプルを含んだプレートは、4°Cで一晩反応させた。その後、プレートをウォッシュバッファで5回洗浄した後、100μlの二次抗体と、アビジン(avidin)の接合体(conjugate)とを添加し、室温で1時間反応させた。
【0122】
二次抗体と共に反応させた後、プレートを5回洗浄し、100μlのアビジン-HRP(BD Bioscience)と共に、30分間室温で反応させた。プレートを7回洗浄した後、100μlのTMB溶液(Pierce)を添加し、15分間室温で反応させた。反応は、各ウェルに、50μlの2N硫酸(H2SO4)を添加することによって終了した。450nmで、光学密度が、マイクロプレートリーダー(reader)を使用して測定された。統計学的分析は、SPSSプログラムのANOVAプロシージャを使用して、変量分析で実施され、分析間の有意点は、Duncan’s multiple range testを使用して検証された。
【0123】
実験2-3:IL-6分泌測定
下記表4に示されているように、LPSは、サイトカインIL-6(interleukin-6)の分泌を増加させたが、LPS及びPEP 1を同時に処理した場合、炎症関連サイトカインIL-6の分泌量が減少するということを確認するということができた。特に、PEP 1を処理した場合には、炎症誘発関連サイトカインの分泌量を70%以上減少させ、すぐれた抗炎活性を示した。
【0124】
【表9】
【0125】
実験2-4:HMGB1、TNF-α、COX-2の発現抑制能測定
タンパク質発現の分析は、ウェスタンブロット分析(Western blot analysis)によって行ったが、ヒトテロメラーゼ由来ペプチドが処理された培地で育った細胞をPBSで洗浄し、0.05%トリプシン-EDTAを処理した後、遠心分離を行って細胞を集めた。そのように集められた細胞に、適量のリシスバッファで溶解させた後、細胞内残渣物を分離させ、同量のタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した。分離されたタンパク質を、ニトロセルロース膜(nitrocellulose membrane;Schleicherand Schuell,Keene,NH,USA)に転移させた後、特定タンパク質に対する抗体と、それに対する二次抗体との反応を実施した後、ECL(enhanced chemiluminoesence)溶液(Amersham Life Science Corp.,Arlington Heights,IL,USA)を適用させた後、X線フィルムに感光させ、タンパク質の発現程度を分析した。
【0126】
NO生成抑制メカニズムであるTNF-αと、COX-2タンパク質との関連性を確認するために、ウェスタンブロットを介して、発現量を測定した結果、下記表5に示されているように、LPSは、サイトカインHMGB1、TNF-α、COXの発現を増加させたが、LPS及びPEP 1を同時に処理した場合、炎症関連タンパク質の発現量が減少するということを確認することができた。特に、本発明のPEP 1を処理した場合には、炎症誘発関連サイトカインタンパク質の発現量を70%以上減少させ、すぐれた抗炎活性を示した。
【0127】
【表10】
【0128】
実施例2:PEPRIAシリーズ(配列番号1~配列番号161)ペプチドのTNF-α阻害活性測定
前記実施例1において、配列番号1のペプチド(PEP 1)に対するTNF-α阻害活性を確認し、それを基にして、配列番号1~配列番号161のペプチドに対するTNF-α阻害活性を確認する実験を実施した。配列番号1~配列番号161のペプチドを合成する方法は、実施例1に記述された配列番号1のペプチドを合成する方法のような方法を使用するが、付着されるアミノ酸を異にした。
【0129】
実験1:細胞培養
健常者から血液を採血(50ml)した後、Biocoll Separating Solution(Biochrom AG,Berlin,Germany)を使用して、PBMC(peripheral blood mononuclear cells)層を回収した。回収されたPBMCは、ヒト血清(20%)が添加されたRPMI 1640培地で富化し、30分ほどヒト血清をコーティングした100mmポリスチレン細胞培養プレートに移し、2時間ほど37°C、5% CO2インキュベータで2時間培養した。その後、底に付いたモノサイト(monocytes)を冷たいPBSで引き離した後、96ウェルプレートに、ウェル当たり1×105セルになるように、RPMI 1640培地(supplemented with penicillin-streptomycin;100mg/ml、human serum;20%)で富化させ、実験する前日に培養させておいた。
【0130】
実験2:TNF-α阻害活性分析
PEP RIAシリーズのペプチドが、TNF-αに対していかなる影響を及ぼすかということを調べるために、ELISA実験を行った。PBMCに由来したモノサイト(monocytes)を、96ウェルプレートに、ウェル当たり1×105セルになるように、実験前日に培養した後、LPS(lipopolysaccharide;10ng/ml、Sigma)を2時間処理し、PBSで3回洗浄した。PBSで3回洗浄したモノサイトは、OPTI-MEM培地を加え、1時間飢餓状態(starvation)に置いておいた後、4μMペプチド処理を行い、2時間培養した。3個の陰性対照群を使用した。最初のグループは、細胞に何も処理していない。2番目のグループは細胞に、エストロゲン(estrogenの一種であり、estradiolを使用)で処理した。3番目のグループは、LPS(10ng/ml)で処理するか、あるいはLPS(10ng/ml)と共に、エストロゲン(20nM)で共に処理した。TNF-α阻害効能が確認されたPEP 1は、陽性対照群として、TNF-α阻害能を測定するのに使用された。培養が終了した後、細胞培養液を集め、ELISA(R&D,Minneapolis,MN,USA)キットマニュアルによって、TNF-αを定量した。具体的な定量方法は、実施例1の実験2-2に記載されている通りである。
【0131】
前記のような実験を介して、TNF-αのレベルに影響を及ぼすペプチドをスクリーニングした。PBMC由来モノサイトを、エンドトキシン(endotoxin)であるLPS(10ng/ml)で2時間刺激させ、1時間OPTI-MEMで飢餓状態(starvation)においた後、161個のペプチドを4μMの濃度で2時間反応させた。反応後、細胞培養液のTNF-αレベルをELISAで測定し、陰性及び陽性の対照群に比べ、TNF-αのレベルを低下させるペプチドをスクリーニングした(図1図16)。
LPSのみを処理した比較群に比べ、TNF-α阻害効果を示すペプチドとして、配列番号1~6、配列番号9、配列番号11、配列番号14~21、配列番号23~37、配列番号39~44、配列番号47~53、配列番号55~61、配列番号63~82、配列番号84~94、配列番号96、配列番号99~104、配列番号107~109、配列番号115、配列番号116、配列番号120~122、配列番号124、配列番号129~133、配列番号142~144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、及び配列番号155~159が選別された。
【0132】
また、LPS+エストロゲンに比べ、TNF-α阻害効果を示すペプチドとして、配列番号15~18、配列番号23~27、配列番号29、配列番号31~34、配列番号39~41、配列番号47、配列番号48、配列番号51~53、配列番号55~58、配列番号61、配列番号65~68、配列番号70、配列番号73~79、配列番号81、配列番号82、配列番号84~87、配列番号89~94、配列番号96、配列番号99、配列番号101~104、配列番号107~109、配列番号120、配列番号121、配列番号129~132、配列番号142~144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、及び配列番号156~159が選別された。
【0133】
実験3:THP1細胞株でのTNF-αレベルに影響を及ぼすペプチド分析
ヒト急性単核球性白血病(Human acute monocytic leukemia)細胞株であるTHP-1細胞(American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VA,USA)を使用して実験を進めた。
【0134】
THP-1を96ウェルプレートに、ウェル当たり1×105セルになるように、RPMI 1640培地で富化させて、4時間培養させた。そのとき、THP-1細胞の大食細胞(macrophage)への分化のために、100nM PMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)処理を行った。THP-1細胞株のPMAへの分化後、LPSで2時間処理して洗浄した。その後、1時間飢餓状態(starvation)処理後、1時間PEP 1処理を行った。
【0135】
PMAによって分化させたTHP-1細胞株をエンドトキシン(endotoxin)であるLPS(10ng/ml、Sigma)で2時間刺激させ、2回PBSで洗浄した後、1時間OPTI-MEMで飢餓状態処理し、161個のペプチドを、1μMの濃度で、1時間反応させる。反応後、細胞培養液のTNF-αレベルをELISAで測定し、比較群に比べ、TNF-αのレベルを低下させるペプチドをスクリーニングした(図17図35)。
【0136】
その結果、ペプチド配列番号1~5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17~27、配列番号29、配列番号30、配列番号32~53、配列番号55~60、配列番号67、配列番号68、配列番号70、配列番号72~82、配列番号84~92、配列番号94、配列番号99~112、配列番号114、配列番号127~144、配列番号146、配列番号148、配列番号149、配列番号151、及び配列番号153~161が、対照群であるLPSのみを処理したグループに比べ、TNF-αを減少させるようであった。
また、配列番号1~5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17~23、配列番号25~27、配列番号29、配列番号30、配列番号33~43、配列番号156、配列番号157及び配列番号159が、LPS及びエストロゲンで処理したグループに比べ、TNF-αの発現レベルを減少させるペプチドであると選別された。
【0137】
実施例3:ベータアミルロイドによって誘導された炎症反応分析
HMGB1タンパク質は、外部刺激によって核内に存在するHMGB1タンパク質がアセチル化されて細胞質に移動していて、その後細胞外部に分泌されることにより、炎症誘発サイトカイン(cytokine)の役割を行うと知られている。そのように、炎症がある場合、HMGB1タンパク質が細胞外部に分泌されるので、炎症性疾患であるチャーグ・ストラウス症侯群、リューマチ関節炎及びシェーグレン症候群患者の血清は、正常人よりはるかに多くの量のHMGB1タンパク質を有する。従って、炎症が誘発されるいかなる刺激が与えられても、細胞核内のHMGB1タンパク質量が多ければ、それは、HMGB1タンパク質が細胞外部に分泌されていないということを意味するので、炎症が抑制されていると見られるのである。
【0138】
実験1.細胞培養
未分化のPC12細胞(ATCC,Rockville,MD,USA)は、10%熱非活性化ウマ血清(heat-inactivated horse serum)、5%熱非活性化ウシ胎児血清(heat-inactivated fetal bovine serum)、100units/ml penicillin、及び100g/ml streptomycinを含むRPMI 1640培養液に、すでにコーティングされた100mm dishes(Corning,PA,USA)であるpoly-l-lysine(Sigma,Saint Louis,MO,USA)を利用して、ogarithmic-phase growthに維持した。培養液は、37oC、5% CO2の条件で培養し、50% confluence条件で育ち、1mM EDTAを含むfree Hank’s balanced salt溶液であるCa2+/Mg2+から抽出し、細胞は、100mm dish当たり1x106になるように分周した後、一日培養した。神経分化のために、PC12細胞は、12時間血清飢餓処理(ウマ血清またはウシ胎児血清を除き、100units/ml penicillinと、100g/ml streptomycinと含むRPMI 1640培地)を行い、従って、PC12細胞を無血清培地条件で維持した。二日後、以前の培地は、新たな培地で交換され、3日目、NGF(50ng/ml、Sigma、Saint Louis,MO,USA)を培地に加えた後、さらに3日間無血清培地条件を維持した。細胞分化後、nPC細胞は、多様な濃度のpeptides及び20μMベータアミルロイドタンパク質と48時間培養した。
【0139】
実験例2.ウェスタンブロット分析
ウェスタンブロットを利用してHMGB1のレベルが分析した。5x106細胞は、冷たいPBSで2回洗浄し、溶解緩衝剤[50mM Tris(pH8.0)、150mM NaCl、0.02%アジ化ナトリウム(sodium azide)、0、2%SDS、10μg/mlフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)、50 μm/mlアプロチニン(aprotinin)、1% Igep 630、100mM NaF、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.5mM EDTA、0.1mM EGTA]氷で10分間培養した。10分間2,000xgで損傷されていない細胞及び核は遠心分離し、10,000xgで溶解物(lysates)は除去したた。Anti-HMGB1(1:1000;Cell Signaling,Beverly,MA,USA)抗体と、anti-β-tubulin(1:1000;Cell Signaling,Beverly,MA,USA)抗体とを使用した。細胞膜は、0.05% Tween-20(TBST)を含むTris-buffered salineで洗浄し、ECL(Amersham Pharmacia Biotech)検出後、HRP結合されたanti-rabbit抗体(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ,USA)を利用して処理し、blotsは、イメージアナライザ(GE Healthcare、Image Quant LAS 4000)を利用して定量した。
【0140】
図36図108は、ウェスタンブロット分析の結果を基に、細胞内HMGB1蓄積を示す選択されたペプチドを示す。前記図面に示されたチューブリン(tubulins)を利用して、タンパク質発現量を確認し、選択されたペブチドの配列は、次の通りである:
配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号52、配列番号44、配列番号45、配列番号52、配列番号57、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号64、配列番号65、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号91、配列番号99、配列番号100、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号111、配列番号112、配列番号115、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号135、配列番号146、配列番号151、配列番号154及び配列番号156。
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