(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法
(51)【国際特許分類】
G11B 7/0065 20060101AFI20220823BHJP
G11B 7/135 20120101ALI20220823BHJP
G03H 1/04 20060101ALI20220823BHJP
G03H 1/22 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G11B7/0065
G11B7/135
G03H1/04
G03H1/22
(21)【出願番号】P 2020218622
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】201911422780.8
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521001294
【氏名又は名称】アメシスタム ストレージ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Amethystum Storage Technology Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ム
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ティエウェィ
(72)【発明者】
【氏名】ティエン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】フ ドォジァオ
(72)【発明者】
【氏名】リォウ イチョン
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137030(JP,A)
【文献】特開2016-219087(JP,A)
【文献】特開2018-137031(JP,A)
【文献】特開2015-149106(JP,A)
【文献】特開2007-286621(JP,A)
【文献】特開2006-277873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/0065
G11B 7/135
G03H 1/04
G03H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスシフト多重化記録/再生方法であるディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法であって、
S1.基準光ビームと入力情報を含む信号光ビームとが、信号情報を記録するために、ホログラフィックフィールドを記録媒体の記録位置で形成するステップと、
S2.線形シフト多重化方法を用いてステップS1のプロセスを繰り返し、記憶媒体全体でシフト多重化記録を行うステップと、
S3.記憶媒体の中心と光ヘッドとの相対位置を変えて、ステップS1、S2を繰り返することで、記憶媒体の同じ位置で格子ベクトル方向が異なるホログラムを記録することができるステップと、
S4.記憶媒体の円周方向の回転により多重化記録を行う場合、記憶媒体の表面の円心に対して対称な2つの位置で多重化記録を行うことで、格子ベクトル方向が全く異なるホログラムを取得することができるステップと、
S5.同じ基準光ビームを用いて、対応する記録位置で入力された信号情報を読み取るステップと、を含むことを特徴とするディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法。
【請求項2】
基準光は球面波であることを特徴とする請求項1に記載のシフト多重化方法。
【請求項3】
基準光および信号光は、軸外型構造であることを特徴とする請求項1に記載のシフト多重化方法。
【請求項4】
記憶媒体の表面にマーク位置を設け、マーク位置をホログラムの記録/再生の開始点として、線形シフト多重化および円周方向回転多重化記録/再生を行うことを特徴とする請求項1-3のいずれか一項に記載の多重化方法。
【請求項5】
記憶媒体の基板にガイドスロットを設け、マーク位置をガイドスロット内に設け、ガイドスロットによって光ヘッドの位置決め制御のためのサーボエラー信号を取得し、光ヘッドをガイドスロットに追従させ、ガイドスロット内のマーク位置を検出することを特徴とする請求項4に記載の多重化方法。
【請求項6】
ディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法であって、多重化記録プロセスでは、前記方法は、
S1.基準光ビームと信号光ビームとが、信号情報を記録するために、ホログラフィックフィールドを記録媒体の記録位置で形成するステップと、
S2.線形シフト多重化方法を用いてステップS1のプロセスを繰り返し、記憶媒体全体でシフト多重化記録を行うステップと、
S3.記憶媒体の中心と光ヘッドとの相対位置を変えて、ステップS1、S2を繰り返し、格子ベクトル方向が異なるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録するステップと、
S4.記憶媒体の円周方向の回転により、円周方向のシフト多重化記録を行い、記憶媒体の表面の円心に対して対称な2つの位置で多重化記録を行い、格子ベクトル方向が全く異なるホログラムを取得するステップと、を含むことを特徴とするディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法。
【請求項7】
ステップS2に記載の線形シフト多重化方法は、記憶媒体を内側から外側に平行移動させるか、または外側から内側に平行移動させて、複数の平行移動ユニットを形成し、各平行移動ユニットが同じ距離を隔てて配置された複数の格子ベクトルで構成され、かつ各平行移動ユニットの格子ベクトルの方向が同じであることと、
記憶媒体を反時計回りまたは時計回りに1回転以内回転させ、順次生成された2つの平行移動ユニットによってなされる角度が等しく、かつ角度の合計が360°であることと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の多重化方法。
【請求項8】
ステップS3では記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置は、光ヘッドの位置を固定して、記憶媒体を移動させることにより実現され、その結果、格子ベクトル方向は、交差角αと呼ばれる固定角度で変化し、記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置が変化する回数はn=[360°/α]-1であり、
光ヘッドの位置と光ヘッドの初期位置は角度θを成し、θがαの整数倍であり、角度θが180°異なる場合に、記憶媒体の同じ位置で記録された、格子ベクトル方向が反対方向であるホログラムを取得することを特徴とする請求項6に記載の多重化方法。
【請求項9】
前記交差角αは45°以上であることを特徴とする請求項8に記載の多重化方法。
【請求項10】
前記交差角αは360で割り切れることを特徴とする請求項9に記載の多重化方法。
【請求項11】
前記交差角αは60°であることを特徴とする請求項10に記載の多重化方法。
【請求項12】
記憶媒体に信号を記録/再生するためのディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置であって、
記憶媒体で干渉してホログラムを生成する信号光と基準光を発生させるための記録機構と、
記憶媒体を内側から外側に、または外側から内側に平行移動させるための平行移動機構と、
記憶媒体を前記記憶媒体の中心の周りに回転運動させるための回転機構と、を含み、
記憶媒体の平行移動と回転運動により、記録機構は、記憶媒体で線形シフト多重化および円周方向シフト多重化を行い、これにより、格子ベクトル方向が異なるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録することが実現される、ことを特徴とするディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置。
【請求項13】
光ヘッドの位置を位置決めするための光ヘッド位置決め機構をさらに含むことを特徴とする請求項
12に記載のディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置。
【請求項14】
記憶媒体にはマーク位置が設けられ、マーク位置をホログラムの記録/再生の開始点とし、記憶媒体の基板にはガイドスロットが設けられ、ガイドスロットによって光ヘッドの位置決め制御のためのサーボエラー信号を取得し、光ヘッドをガイドスロットに追従させ、ガイドスロット内のマーク位置を検出することを特徴とする請求項
13に記載のディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置。
【請求項15】
平行移動機構は、記憶媒体を移動させて記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置を変化させ、ホログラムの格子ベクトルの方向を
交差角α変化させ、光ヘッドの位置と光ヘッドの初期位置が角度θを成し、θがαの整数倍であり、角度θが180°異なる場合に、記録機構は、格子ベクトル方向が反対方向であるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録し、
回転機構が
交差角αで回転できる回数はn=[360°/α]-1であり、
αは45°以上である、ことを特徴とする請求項
12-14のいずれか一項に記載のディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ホログラフィック記憶技術分野に関し、より具体的には、ディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ホログラフィック記憶技術は、入力情報を2次元デジタルビットマップに変換して信号光にロードし、変調された信号光と基準光が光重合体記憶媒体で干渉してホログラムを形成し、記憶媒体の屈折率変化の形で保存し、それを再生することにより、入力情報を読み取ることができるようにするものである。記憶容量が大きく且つ記憶期間が長いなどの利点で、それは、一般的な情報記録及び再生方式となる。
【0003】
現在、記録と再生の多重化方法には、主に、(1)角度多重化記録、(2)同一直線上多重化記録、および(3)球面基準光シフト多重化記録が含まれる。
【0004】
方法(1)では、基準光の入射角を変化させてホログラムの多重化記録を行う。この方法では、非常に狭い角度範囲でのみブラッグ回折条件が満たされる。例えば、基準光の入射角が約0.1°変化するごとに1枚のホログラムが記録されるので、同じ位置に数百枚のホログラムを記録することができる。この方法では、前のホログラムと重ならない別の位置に一連の新しいホログラムが記録されることを確保するように媒体を移動させる必要があるため、記憶容量が制限される。
【0005】
方法(2)では、信号光は基準光と同軸であり、基準光は位相または振幅がスペックル変調される。ホログラムの記録プロセスでは、各記録位置のホログラムが他の位置のホログラムと重ならないことを確保する必要がなく、記録された各ホログラムを前のホログラムに対してわずかな距離、例えば2次元平面内で2μmまたは3μmだけ移動させてもよい。しかし、この方法では角度多重化記録を使用することができず、記憶容量はまだ制限されている。
【0006】
方法(3)では、球面波を基準光として、媒体を一定距離移動させることにより、1枚の新たなホログラムを記録することができる。
図1に示すように、ブラッグ条件によれば、信号光波ベクトルk
s、基準光波ベクトルk
r、およびホログラフィック格子ベクトルk
gは1つのベクトル三角形を構成し、ホログラムを記録した後、媒体を少し動かすと、3つのベクトルは三角形を構成しなくなり、ブラッグ条件も成り立たなく、元の記録されたホログラムが再生できなくなるため、次のホログラムを記録することができる。
【0007】
球面基準光シフト多重化記録を使用する理由は以下のとおりである。(1)角度多重化記録では、異なるホログラムが同じ位置に重ねて記録され、現在のホログラムの信号光または基準光が先に記録されたホログラムによって散乱され、同時に、インターリーブ書き込み方法でも雑音が発生して信号対雑音比を低下させることになる。(2)同軸ホログラフィ方法では、信号光と基準光が近接しているため、クロストークが大きくなり、信号対雑音比が低下して信号品質が劣化する。これら2つの理由から、これらの雑音の影響を回避し、回折効率を向上させ、さらにホログラフィック記録の多重化数を増やすために、球面基準光を使用する。この方法では、ブラッグ条件によってシフト多重化の移動方向と移動距離が決定されるため、2~5μmだけ移動させて1枚の新たなホログラムを記録することができる。しかし、動きに垂直な方向では、ブラッグ条件によって制御されず、通常300~600μmの変位量が必要である。したがって、シフト多重化記録だけでは、記憶容量を大幅に増やすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の少なくとも1つの欠陥(欠点)を克服し、記憶能力を向上させるようにディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって採用される技術的解決手段は、クロスシフト多重化記録/再生方法であるディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法である。前記方法は、以下の各ステップを含む。
S1.基準光ビームと入力情報を含む信号光ビームとは、信号情報を記録するために、記録媒体の記録位置でホログラフィックフィールドを形成する。
S2.線形シフト多重化方法を用いてステップS1のプロセスを繰り返し、記憶媒体全体でシフト多重化記録を行う。
S3.光ディスクの中心と光ヘッドとの相対位置を変えて、ステップS1、S2を繰り返すことで、光ディスクの同じ位置で格子ベクトル方向が異なるホログラムを記録することができる。
S4.光ディスクの円周方向の回転により多重化記録を行う場合、光ディスクの表面の円心に対して対称な2つの位置で多重化記録を行うことで、格子ベクトル方向が全く異なるホログラムを取得することができる。
S5.同じ基準光ビームを用いて、対応する記録位置で入力された信号情報を読み取るステップと、を含む。
【0010】
前記ステップのうちのS1-S4は多重化記録プロセスであり、S5は再生プロセスである。前記多重化方法も多重化記録方法のみを含んでもよい。
【0011】
本発明で記載される方法によれば、格子ベクトル方向が異なるホログラムは記憶媒体の同じ位置で記録され、即ちホログラムは互いに重ね合って、格子ベクトル方向が異なるため、クロストークが発生しない。記憶容量が増えるだけでなく、信号対雑音も高くなる。
【0012】
具体的には、ステップS2では記載される線形シフト多重化方法は、記憶媒体を内側から外側に平行移動させるか、または外側から内側に平行移動させて、複数の平行移動ユニットを形成し、各平行移動ユニットが同じ距離を隔てて配置された複数の格子ベクトルで構成され、かつ各平行移動ユニットの格子ベクトルの方向が同じであることと、記憶媒体を反時計回りまたは時計回りに1回転以内回転させ、順次生成された2つの平行移動ユニットによってなされる角度が等しく、且つ角度の合計が360°であることと、を含む。すなわち、光ヘッドの位置を変えないよう維持し、記憶媒体の平行移動と回転により、記憶媒体全体のクロスシフト多重化を実現する。
【0013】
ステップS3では、記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置は、光ヘッドの位置を固定して、記憶媒体を移動させることにより実現され、その結果、格子ベクトル方向は、交差角αと呼ばれる固定角度で変化し、記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置が変化する回数はn=[360°/α]-1であり、光ヘッドの位置と光ヘッドの初期位置は角度θを成し、θがαの整数倍であり、角度θが180°異なる場合に、記憶媒体の同じ位置で記録された、格子ベクトル方向が反対であるホログラムを取得する。ここで、[360°/α]は360°/αの四捨五入を示す。すなわち、光ヘッドの位置と記録媒体のシフト方向を変えないように維持し、記憶媒体と光ヘッドの初期相対位置を変化させることにより、各位置での格子ベクトル方向が異なり、同じ位置でも格子ベクトルが異なるように、記録されたホログラフィック格子のベクトル方向を変化させる。
【0014】
交差角αは45°以上である。記憶媒体の回転を容易にするために、交差角αは、360で割り切れることが好ましい。交差角αは好ましくは60°であり、この場合、ステップS3では、記憶媒体を60°で順次5回回転させ、光ヘッドと記憶媒体の中心の相対位置を5回変化させ、θを60°、120°、180°、240°、300°とする。
【0015】
本発明に記載される方法のステップS4では、記憶媒体を水平方向に直線的に移動させないが、円周方向に回転させる。得られたホログラム格子ベクトルは、円周方向の法線に沿い、円心に対して対称な2つの位置上の格子ベクトルは反対方向である。互いに重ね合わせてもクロストークが発生しないので、さらに記憶容量を増やす。
【0016】
記憶媒体は好ましくは光ディスクであり、ホログラフィックシステムは好ましくは軸外型であり、球面波は好ましくは基準光である。
【0017】
情報の記録及び読み取り速度を上げるために、記録媒体の表面にマーク位置を設定し、このマーク位置をホログラムの記録/再生の開始点として、線形シフト多重化および円周方向回転多重化記録/再生を行う。
【0018】
マーク位置を迅速に見つけるために、記録媒体の基板にガイドスロットを設け、マーク位置をガイドスロット内に設け、ガイドスロットによって光ヘッドの位置決め制御のためのサーボエラー信号を取得し、光ヘッドをガイドスロットに追従させ、ガイドスロット内のマーク位置を検出する。
【0019】
本発明はさらにディスク記憶媒体を提供する。前記ディスク記憶媒体は、複数の平行移動ユニットを含み、各平行移動ユニットが同じ距離を隔てる複数の格子ベクトルで構成され、各平行移動ユニットの格子ベクトルの方向が同じであり、各平行移動ユニットは、記憶媒体の表面に形成された投影において、同じ位置で格子ベクトル方向が異なるホログラムを有する。
【0020】
記録および読み取りを容易にするために、記憶媒体の表面にはマーク位置が設けられ、記憶媒体の表面への2次元ホログラムアレイの各層の投影は、同じマーク位置での格子ベクトル方向が外側から内側に、または内側から外側に配向され、同じマーク位置での格子ベクトル同士が固定角度αを成し、αが45°である。αは360で割り切れることが好ましく、且つ好ましくは60°である。
【0021】
本発明は、さらに記録された信号を記憶媒体に記録/再生するためのディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置を提供する。前記ディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置は、記録媒体で干渉してホログラムを生成する信号光及び基準光を発生させるための記録機構と、記憶媒体を内側から外側に、または外側から内側に平行移動させるための平行移動機構と、記憶媒体を前記記憶媒体の中心の周りに回転運動させるための回転機構と、を含み、記憶媒体の平行移動と回転運動により、記録機構は、記憶媒体で線形シフト多重化および円周方向シフト多重化を行い、これにより、格子ベクトル方向が異なるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録することが実現される。
【0022】
光ヘッドの位置を迅速に位置決めするための光ヘッド位置決め機構をさらに含み、これにより、記録および読み取りの速度が向上する。
【0023】
同時に、記憶媒体にはマーク位置が設けられ、マーク位置をホログラムの記録/再生の開始点とし、記憶媒体の基板にはガイドスロットが設けられ、ガイドスロットによって光ヘッドの位置決め制御のためのサーボエラー信号を取得し、光ヘッドをガイドスロットに追従させ、ガイドスロット内のマーク位置を検出する。
【0024】
平行移動機構は、記憶媒体を移動させて記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置を変化させ、ホログラムの格子ベクトルの方向を固定角度α変化させ、光ヘッドの位置と光ヘッドの初期位置が角度θを成し、θがαの整数倍であり、角度θが180°異なる場合に、記録機構は、格子ベクトル方向が反対方向であるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録する。回転機構が固定角αで回転できる回数はn=[360°/α]-1であり、ここで、[360°/α]が360°/αの四捨五入を示し、αは45°以上である。αは360で割り切れることが好ましく、好ましくは60°である。
【発明の効果】
【0025】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、本発明に記載される多重化方法により、記憶容量を増やしながら信号対雑音比を維持することができることである。格子ベクトル方向が異なるホログラムを記憶媒体上の同じ位置で記録し、ホログラムが互いに重ね合っても、格子ベクトル方向が反対方向であるので、クロストークが発生しない。さらに、記憶媒体にマーク位置を設け、記憶媒体の基板にガイドスロットを設け、ガイドスロットによって光ヘッドの位置決め制御のためのサーボエラー信号を取得し、光ヘッドをガイドスロットに追従させ、ガイドスロット内のマーク位置を検出する。これにより、記録と読み取りの速度をさらに向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】シフト多重化記録方法の原理を説明する図である。
【
図2】光ディスク媒体でのクロスシフト多重化方法の概略図(θ=0°、180°)である。
【
図3】光ディスク媒体でのクロスシフト多重化方法の概略図(θ=60°、240°)である。
【
図4】光ディスク媒体でのクロスシフト多重化方法の概略図(θ=120°、300°)である。
【
図5】線形平行移動と光ディスク回転の両方を同時に有するクロスシフト多重化法の概略図である。
【
図6】光ディスク媒体を円周方向に回転させるための多重化方法の概略図である。
【
図7】ディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の図面は、例示的な説明のみに用いられるが、本発明を限定するものとして理解されない。以下の実施例をよりよく説明するために、図面のいくつかの構成要素は、省略、拡大または縮小されてもよく、実際の製品のサイズを表すものではない。図面におけるいくつかの周知の構造およびその説明が省略されてもよいことは、当業者であれば理解できる。
【0028】
実施例1
本実施例は、ディスクホログラフィック記憶媒体の記憶容量を増やすための多重化方法を提供する。前記記憶媒体は光ディスクであり、ホログラフィックシステムは好ましくは軸外型であり、球面波は好ましくは基準光である。前記方法は、以下のステップを含む。
S1.基準光ビームと信号光ビームは、信号情報を記録するために、ホログラフィックフィールドを記録媒体の記録位置で形成する。
S2.線形シフト多重化方法を用いてステップS1のプロセスを繰り返し、記憶媒体全体でシフト多重化記録を行う。
S3.記憶媒体の中心と光ヘッドとの相対位置を変えてステップS1、S2を繰り返し、格子ベクトル方向が異なるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録する。
【0029】
ステップS2で記載される線形シフト多重化方法は、記憶媒体を内側から外側に平行移動させるか、または外側から内側に平行移動させて、複数の平行移動ユニットを形成し、各平行移動ユニットが同じ距離を隔てて配置された複数の格子ベクトルで構成され、かつ各平行移動ユニットの格子ベクトルの方向が同じであることと、記憶媒体を反時計回りまたは時計回りに1回転以内回転させ、順次生成された2つの平行移動ユニットによってなされる角度が等しく、且つ角度の合計が360°であることと、を含む。すなわち、光ヘッドの位置を変えないように維持し、記憶媒体の水平移動と回転により、クロスシフト多重化を実現する。
【0030】
ステップS3では記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置は、光ヘッドの位置を固定して、記憶媒体を移動させることにより実現され、その結果、格子ベクトル方向は、交差角αと呼ばれる固定角度で変化し、記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置が変化する回数はn=[360°/α]-1であり、光ヘッドの位置と光ヘッドの初期位置は角度θをなし、θがαの整数倍であり、角度θが180°異なる場合に、記憶媒体の同じ位置で記録された、格子ベクトル方向が反対方向であるホログラムを取得する。ここで、[360°/α]は360°/αの四捨五入を示す。すなわち、光ヘッドの位置と記憶媒体のシフト方向を変えないように維持し、光ディスクと光ヘッドの初期相対位置を変化させることにより、各位置での格子ベクトル方向が異なり、同じ位置でも格子ベクトルが異なるように、記録されたホログラフィック格子のベクトル方向を変化させる。
【0031】
交差角αは45°以上である。記憶媒体の回転を容易にするために、交差角αは、360で割り切れることが好ましい。本実施例では、交差角αは60°であり、ステップS3では、記憶媒体を60°で順次5回回転させ、光ヘッドと記憶媒体の中心の相対位置を5回変化させ、θを60°、120°、180°、240°、300°とし、光ディスク内で最大6回まで再利用できる。
【0032】
図2-
図4は、本実施に記載の多重化方法を具体的に示している。
図2は、A(初期位置、θ=0)およびB(θ=180°)でのシフト多重化方法を示し、光ディスクの同じ位置で反対の格子ベクトル方向が反対方向であるホログラムがあり、重なり合ってもクロストークが発生しないことがわかる。Aを例として多重化方法について次のように説明する。記憶媒体1を移動させて点Aを光ヘッドに位置合わせ、水平方向に直線的に移動させてシフト多重化記録を行い、次に光ディスクを回転させて再記録し、このように繰り返すと、信号を含むホログラムを媒体全体に保存させることができ、かつ全てのホログラムの格子ベクトル方向が光ディスクに沿って半径方向に外向きになる。それに対して、Bでシフト多重化を行う場合、得られたホログラムの格子ベクトル方向は、光ディスクに沿って半径方向に外向きになる。
図2に示すように、AとBで記録されたホログラムは、格子ベクトルの方向が逆になっているため、同じ位置で記録されたホログラムが互いに重なり合ってもクロストークが発生しない。
【0033】
シフト多重化方法がさらに拡張されると、
図3および
図4に示すように、
図4の位置C(θ=60°)および位置D(θ=240°)にシフト多重化記録を行い、
図5の位置E(θ=120°)および位置F(θ=300°)にシフト多重化記録を行い、シフト多重化記録方式が
図2と同じである。このように、異なる方向へのシフト多重化の相互重ね合わせを実現できる記憶方法はクロスシフト多重化方法と呼ばれ、この方法により上記のA-Fの合計6つの位置でシフト多重化を行って得られる結果は
図5に示される。
図5に示す結果からわかるように、ホログラムは、異なる位置での格子ベクトルの方向が異なり、同じ位置であっても、格子ベクトルの方向も異なる。
【0034】
本実施例に記載される方法はさらに、ステップS4を含む。ステップS4では、記憶媒体の円周方向の回転により円周方向のシフト多重化記録を行い、記憶媒体の表面の円心に対して対称な2つの位置で多重化記録を行い、格子ベクトル方向が全く異なるホログラムを取得する。すなわち、記憶媒体を水平方向に直線的に移動させないが、円周方向に回転させる。得られたホログラム格子ベクトルは、円周方向の法線に沿い、円心に対して対称な2つの位置での格子ベクトルの方向は逆である。互いに重なり合ってもクロストークが発生しないので、さらに記憶容量を増やす。
【0035】
図6は、G(θ=90°)およびH(θ=270°)の2つの位置で円周方向の回転シフト多重化方法を実行することを示す概略図である。光ヘッドの位置を固定し、光ディスクの線形移動を円周方向の移動に変更し、円周方向の回転シフト多重化記録をそれぞれ2回実行した。
図6の位置Gおよび位置Hに円周方向の回転シフト多重化記録を2回実行し、得られたホログラムの格子ベクトルは円周方向の法線方向に沿い、2つの方向は反対方向であり、線形シフト多重化によって得られるホログラムの格子ベクトルの方向とは異なるため、多重化記録されたホログラムが互いに重なり合ってもクロストークが発生しない。
【0036】
線形シフト多重化方法と円周方向シフト多重化方法を組み合わせることで、1枚の光ディスクで合計8回の多重化が可能となり、ホログラムの総多重化数は10,000回以上に増やすことができる。
【0037】
本実施例では、シフト多重化の開始位置は、光ディスク上のマークポイントによって決定され、これは、光ディスクに一般的に使用されるガイドスロットおよびマーク位置によって実現され得る。光ディスクの基板に光ディスクのガイドスロットを設け、マーク位置をガイドスロット内に設ける。ガイドスロットによって光ヘッドの位置決め制御のためのサーボエラー信号を取得し、光ヘッドをガイドスロットに追従させ、ガイドスロットで提供されるマークを検出する。マーク位置をホログラムの記録および再生の開始点として、線形シフト多重化記録および円周方向回転の記録および再生を行う。
【0038】
記憶情報を読み取る時に、基準光ビームを用いて、対応する記録位置で入力された信号情報を読み取ることができる。
【0039】
実施例2
本実施例は、光ディスクであるディスク記憶媒体を提供し、複数の平行移動ユニットを含み、各平行移動ユニットは、同じ距離を隔てる複数の格子ベクトルで構成され、各平行移動ユニットの格子ベクトルは同じ方向を有し、各平行移動ユニットは、記憶媒体の表面に形成された投影において、同じ位置で格子ベクトル方向が異なるホログラムを有する。
【0040】
記憶媒体の表面にはマーク位置が設けられ、記憶媒体の表面における2次元ホログラムアレイの各層の投影は、同じマーク位置での格子ベクトル方向が外側から内側に、または内側から外側に配向され、同じマーク位置での格子ベクトル同士は固定角度αを成し、αが45°以上である。本実施例では、αは60°である。
【0041】
本実施例に記載されるディスク記憶媒体は、実施例1に記載される方法によって実現され得る。
【0042】
実施例3
本実施例は、記憶媒体に信号を記録/再生するためのディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置を提供する。前記ディスクホログラフィック記憶媒体記録/再生装置は、
図7に示すように、記録媒体で干渉してホログラムを生成する信号光と基準光を発生させるための記録機構と、記憶媒体を内側から外側に、または外側から内側に平行移動させるための平行移動機構と、記憶媒体を前記記憶媒体の中心の周りに回転運動させるための回転機構と、を含み、記憶媒体の平行移動と回転運動により、記録機構は、記憶媒体で線形シフト多重化および円周方向シフト多重化を行い、これにより、格子ベクトル方向が異なるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録することが実現される。
【0043】
光ヘッドの位置を位置決めするための光ヘッド位置決め機構をさらに含む。
【0044】
それに対応して、記憶媒体にはマーク位置が設けられ、マーク位置をホログラムの記録/再生の開始点とし、記憶媒体の基板にはガイドスロットが設けられ、ガイドスロットによって光ヘッドの位置決め制御のためのサーボエラー信号を取得し、光ヘッドをガイドスロットに追従させ、ガイドスロット内のマーク位置を検出する。
【0045】
平行移動機構は、記憶媒体を移動させて記憶媒体の中心と光ヘッドの相対位置を変化させ、ホログラムの格子ベクトルの方向を固定角度α変化させ、光ヘッドの位置と光ヘッドの初期位置が角度θを成し、θがαの整数倍であり、角度θが180°異なる場合に、記録機構は、格子ベクトル方向が反対方向であるホログラムを記憶媒体の同じ位置で記録し、回転機構が固定角αで回転できる回数はn=[360°/α]-1であり、αが45°以上である。ここで、[360°/α]は360°/αの四捨五入を示す。αは360で割り切れることが好ましく、本実施例では好ましくは60°である。
【0046】
本実施例に記載される装置は、実施例1に記載される方法を実現し、かつ記録した後、実施例2に記載される記憶媒体を生成することができる。
【0047】
本発明の上記実施例は、主に上記方法または構造を改良したものであり、記載されていない他の機能、構成要素および構造は、必要に応じて、従来技術において対応する機能を果たすことが可能な構成要素および構造を用いて実装することができることが説明すべきである。
【0048】
明らかに、本発明の上記実施例は、本発明の技術的解決手段を明確に説明するための例に過ぎず、本発明の具体的な実施形態を限定するためのものではない。本発明の特許請求の範囲の精神および原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等の代替、改良などは、本発明の特許請求の範囲の保護の範囲に含まれるべきである。