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特許7128282酸化グラファイトおよび還元酸化グラフェンを生成するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】酸化グラファイトおよび還元酸化グラフェンを生成するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/23 20170101AFI20220823BHJP
   C01B 32/225 20170101ALI20220823BHJP
   C01B 32/15 20170101ALI20220823BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20220823BHJP
【FI】
C01B32/23
C01B32/225
C01B32/15
C01B32/198
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020540239
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018053319
(87)【国際公開番号】W WO2019070514
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-06-01
(31)【優先権主張番号】62/566,685
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】グロス ロン
(72)【発明者】
【氏名】キルリディス アガサジェロス
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元酸化グラファイトウォーム粒子を作る方法であって、
酸化グラファイト粒子およびキャリア流体の混合物を、500℃超の温度のチャンバに導入するステップ、ここで、前記酸化グラファイト粒子が合計の酸:グラファイトの質量比1:0.024~1:0.047でグラファイトを酸化して生成したものであり、前記キャリア流体は水であり、かつ、900℃以上の温度の乾燥ガスが前記チャンバに注入される、ならびに
酸化グラファイト粒子の酸素含有量を50質量%超減少させて、還元酸化グラファイトウォーム粒子を生成するステップを含む、方法。
【請求項2】
チャンバの温度が、700℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
導入するステップが、酸化グラファイト粒子およびキャリア流体の混合物のスラリーをチャンバにスプレーするステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
酸化グラファイト粒子およびキャリア流体を、冷却されたノズルを経由して導入するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
減少させるステップが、酸化グラファイト粒子から共有結合した酸素を除去するステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
互いに平行平面ではない複数のグラフェンプレートレットを含むように、酸化グラファイト粒子を膨張させるステップを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酸化グラファイト粒子の密度が、還元酸化グラファイトウォーム粒子の密度の少なくとも2倍である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
還元酸化グラファイトウォーム粒子が、酸化グラファイト粒子の分解エネルギーより少なくとも20%低い分解エネルギーを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
チャンバが、熱ガス流により、および放射エネルギーにより加熱される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
還元酸化グラファイトウォーム粒子を、10秒未満で、乾燥および還元させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物をチャンバに導入した後で、前記混合物の流体成分を1秒未満で蒸発させる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
酸化グラファイト粒子およびキャリア流体の混合物が、5質量%超の酸化グラファイト粒子を含有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月2日に出願された米国仮出願第62/566,685号の利益を請求し、参照により本明細書によって組み込まれる。
本開示は、酸化グラフェン、特に、還元酸化グラフェン粒子の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素ベースの六角形平面構造であり、一緒に積層された場合は、グラファイトを形成する。グラフェンは、グラファイトからグラフェンの個々の層を物理的に除去することにより、または、グラファイト粒子を膨張させて、隣接したグラフェン層を分離させることにより形成できる。グラファイト粒子は、酸化させて酸化グラファイトの粒子を生成でき、また、炭素格子に共有結合した酸素原子を含むことができる。酸化グラファイトは、グラファイトと同じく、グラフェンシートを一緒に保持する力を超えることにより膨張させることができる。生じた、酸化した平面の炭素構造が酸化グラフェンと呼ばれる。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、還元酸化グラファイトウォーム(rGOW)粒子であって、400m2/g超のBET表面積、<30%の結晶化度、<100J/gの分解エネルギー、<10g/Lの密度を有し、XRDスペクトルで25°~30°の認識可能なグラファイトピークがないrGOW粒子が提供される。
別の態様では、還元酸化グラファイトウォーム粒子であって、1000質量ppm未満の金属含有量を有するrGOW粒子が提供される。粒子は、100質量ppm未満の多価金属含有量を有し得、多価金属それぞれを50質量ppm未満含み得る。これらは、400m2/g超のBET表面積、10g/L未満の密度、<30%の結晶化度および<100J/gの分解エネルギーを有し得、25°~30°のXRDピークを呈し、該ピークが、25°~30°の同等のグラファイトピークの高さの10%未満または1%未満である。還元酸化グラファイトウォーム粒子は、検出可能な25°~30°のXRDピークを呈し得ない。
【0004】
別の態様では、グラファイトを酸化させて、酸化グラファイトを生成する方法であって、グラファイト、硝酸および硫酸を組み合わせて、グラファイト混合物を形成するステップ、クロレート溶液をグラファイト混合物に供給するステップ、クロレート溶液をグラファイト混合物に供給しながら、グラファイト混合物をスパージするステップ、添加されたクロレートの全量が、グラファイト1グラム当たりクロレート2.5~6.0gの範囲に達したら、クロレートの供給を中止し、合計の水対酸の比が、0.43:1未満、0.40:1未満、0.35:1未満、0.30:1未満または0.26:1以下であるステップを含む方法が開示される。添加された水の全量対添加された無水酸の全量の質量比は、.33:1未満、.30:1未満または0.27:1未満であり得る。クロレート溶液は、1:1~2:1のクロレート対水の質量比を有し得る。この方法は、クロレートの供給を中止した後に、ガスまたはガス混合物を、グラファイト混合物にスパージするステップを含み得る。硝酸対硫酸の質量比は、無水を基準として、0.25:1~0.35:1の範囲であり得る。混合物は、クロレート溶液の供給中に、パージガスを混合物にスパージすることにより、かき混ぜることができる。反応混合物は、30℃超の温度にて維持され得る。硫酸および硝酸の混合物は、グラファイトに添加され得、スパージするステップは、グラファイト混合物中の二酸化塩素の濃度が、1000ppm、100ppm、10ppm、1ppmまたは0.1ppm未満に下落するまで続けられ得る。グラファイトは、気泡塔反応器において、機械的アジテーターなしで酸化され得る。添加されたクロレートの95%、98%または99%超は、10時間未満で反応できる。グラファイト混合物上のヘッドスペースにおける二酸化塩素の濃度は、12時間未満、10時間未満または8時間未満で、500ppm未満または100ppm未満に低下し得る。この方法は、酸化されたグラファイトを部分的に還元させて、400m2/g超のBET表面積、<30%の結晶化度、>1.0のラマンD/Gバンド比を有し、かつ/またはXRDスペクトルで25°~30°の認識可能なグラファイトピークがないrGOW粒子を得るステップを含み得る。合計の酸対グラファイトの質量比は、15:1未満、20:1未満、25:1未満、30:1未満または40:1未満であり得る。グラファイト混合物における合計の水対グラファイトの質量比は、クロレートの供給を中止した後に、11:1未満、10:1未満、9:1未満、8:1未満、7:1未満または6:1未満であり得る。
【0005】
別の態様では、酸化グラファイトスラリーを処理する方法であって、流体および酸化グラファイト粒子を含む酸化グラファイトスラリーを、3m/秒以下の接線流速で、接線流濾過膜を横切って流れさせるステップ、低pHキャリア流体を、より高いpHのキャリア流体と交換して、1超のpHを有する酸化グラファイトスラリーを生成するステップ、ならびにスラリー中の酸化グラファイト粒子を、5質量%超の濃度に濃縮するステップを含む方法が開示される。この方法は、5~15psi、6~12psiまたは6~10psiの膜間圧で実行され得る。酸化グラファイトスラリーは、閉ループを通って循環させることができ、閉ループにおける任意の圧力の下落は、10psi未満である。膜を通した透過流速は、膜1平方メートルにつき1時間当たり150、200または250リットル超であり得る。この方法は、保持液リザーバーを5psi超に加圧するステップを含み得る。スラリーの流体含有量を減少させて、酸化グラファイト粒子の濃度を、初期濃度から初期濃度の5倍超に上昇させることができる。
【0006】
別の態様では、酸化グラファイト粒子のスラリーを処理するための装置であって、接線流膜、接線流膜と流体連通した、加圧された保持液リザーバー、接線流膜および保持液リザーバーと流体連通した再循環ポンプを含み、加圧された保持液リザーバーと接線流膜の高圧側との間の圧力差が、10、8、6または5psi未満である装置が提供される。接線流膜は、1~2μmの粒子排除孔径を有する管状セラミック膜であり得る。この装置は、再循環流路を含み得、流路は、45°超の角度を含まない。
【0007】
別の態様では、還元酸化グラファイトウォーム粒子を作る方法であって、酸化グラファイト粒子およびキャリア流体の混合物を、300℃超の温度のチャンバに導入するステップ、ならびに、グラファイト粒子の酸素含有量を50質量%超減少させて、還元酸化グラファイトウォーム粒子を生成するステップを含む方法が記載されている。混合物は、水中の酸化グラファイト粒子のスラリーを含み得る。チャンバの温度は、500℃超または700℃超であり得る。この方法は、酸化グラファイトおよび水のスラリーをチャンバにスプレーするステップを含み得、スプレーするステップは、酸化グラファイト粒子を含む第1の流れ、および、噴霧ガスを含む第2の流れを供給するステップを含み得る。この方法は、900℃超の温度の乾燥ガスを、チャンバに注入するステップを含み得る。共有結合した酸素を酸化グラファイト粒子から除去し、粒子は、10秒未満、5秒未満、2秒未満または1秒未満のチャンバ内での滞留時間を有し得る。この方法は、平行平面ではない複数のグラフェンプレートレットを含むように、酸化グラファイト粒子を膨張させることができる。酸化グラファイト粒子は、還元酸化グラファイト粒子の密度の少なくとも2倍の密度を有し得る。生じた還元酸化グラファイト粒子は、酸化グラファイト粒子の分解エネルギーより少なくとも20%、30%、40%または50%低い分解エネルギーを有し得る。チャンバは、熱ガス流により、または、放射エネルギーにより加熱され得、粒子は、10秒未満、5秒未満または1秒未満で乾燥および還元させることができる。混合物は、5質量%超の酸化グラファイト粒子を含有し得る。混合物の流体成分は、混合物をチャンバに導入した後で、1秒未満で蒸発できる。生じた還元酸化グラファイトウォームは、600m2/g超のBET表面積を有し得る。
【0008】
別の態様では、高温スプレー乾燥装置であって、反応容器と流体連通したオリフィスを含むスプレーノズルを含み、スプレーノズルオリフィスが、スラリーを反応容器中にスプレーするように構成された装置が開示されている。スプレーノズルは、二流体ノズルであってよく、冷却してよい。スプレー乾燥装置は、反応容器および反応容器中心線の下流と流体連通した冷却ガス注入口を含み得る。
【0009】
少なくとも1つの例の様々な態様が、添付の図に関して以下で論じられており、これは、正確な比率で描かれることを意図していない。図は、例示を示し、様々な態様および例の理解をさらに深めるように含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成しているが、本開示の範囲を限定することは意図していない。図面は、本明細書の残りと一緒に記載され、請求されている態様および例の原理および操作を説明する役割を果たす。図では、様々な図で例証されている同一の、またはほぼ同一の要素それぞれは、同じ数字により表される。簡明化のため、すべての要素がすべての図で標識されているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】グラファイト粒子の概略図である。
図1b】還元酸化グラフェンウォーム粒子の概略図である。
図2】還元オキシドウォーム粒子の走査電子顕微鏡法(SEM)写真である。
図3A-3C】グラファイト酸化系の3つの異なる実施形態を例証する図である。
図4】精製および濃縮系の一実施形態の設計図である。
図5】酸化グラファイトの示差走査熱量測定(DSC)スキャンである。
図6】酸化グラファイトの加速熱量測定(ARC)スキャンである。
図7】高温スプレー乾燥機の一実施形態の断面図である。
図8】4つの異なる反応実施形態について、経時的な酸化速度を示すグラフである。
図9図8の4つの異なる反応実施形態について、パージフェーズ中における酸化速度を示すグラフである
図10】2つの異なる実施形態について、酸化フェーズ中における二酸化塩素の生成を例証するグラフである。
図11図10で示されている反応の、パージフェーズ中におけるガス状二酸化塩素レベルを例証するグラフである。
図12】異なる温度にて実行された2つの反応における二酸化塩素の生成を比較するグラフである。
図13図12の例のパージフェーズ中における、ヘッドスペースでの二酸化塩素レベルを示すグラフである。
図14】rGOW粒子を生成する方法の一実施形態のプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
酸化グラファイトは、グラファイト粒子と硫酸および硝酸の混合物を組み合わせ、続いて、強力な酸化剤、例えばクロレートイオンを添加すること(Staudenmaier反応)により、グラファイトから生成できる。酸化プロセスにより、共有結合した酸素を、例えば、水酸基、エポキシド基およびカルボン酸基の形態で含むグラファイトが形成される。これは、ゲスト原子または分子が、グラフェン層の間において非共有結合で保たれているインターカレートグラファイトと対照的である。酸化グラファイトは、塩水溶液として用意され得るクロレートイオンが、グラファイトおよび強酸の混合物にゆっくり添加されるバッチプロセスで生成できる。クロレートのグラファイト混合物への添加を遅くすると、グラファイトの酸化、ならびに、二酸化塩素(ClO2)の生成が引き起こされる。生成される二酸化塩素の量は、発生する酸化の量を指し示し得る。クロレートの添加が完了した後で、反応を実行して完了させることができ、二酸化塩素は、系から除去される。反応は、次いで、例えば、混合物を脱イオン(DI)水に添加することによりクエンチできる。酸化された酸化グラファイト生成物は、次いで、乾燥させることができ、または、いくつかのケースでは、酸化グラファイト粒子の水性スラリーとして留めることができる。
【0012】
酸化グラファイトは、例えば、懸濁液を超音波処理することにより、個々の酸化グラフェンプレートレットに剥離できる。酸化グラファイト粒子は、膨張させ、化学的に還元させて、酸化グラフェン粒子を生成することもでき、酸化グラフェン粒子は、それらが由来する酸化グラファイト粒子より大きい表面積、および、それより少ない酸素含有量を有する。膨張および還元のための一技術は、熱処理である。例えば、乾燥させた酸化グラファイト粒子は、不活性雰囲気下で500℃を上回る温度に曝露させて、500m2/g超のBET表面積を有する膨張した酸化グラファイトを生成することができる。
【0013】
一態様では、公知の技術と比較した場合、より少量の試薬を使用しつつ、短時間にわたってグラファイトを効率的に酸化する酸化グラファイト(GO)を生成する方法が、本明細書で開示されている。グラファイト粒子は、最初に、硝酸および硫酸の混合物と組み合わせる。強力な酸化剤、例えばクロレートイオンが、混合物に経時的に供給されて、グラファイトを含むグラフェン層上で、共有結合した酸素基を形成する。現在利用できる技術と比較した場合、より少ない酸が、同一レベルの酸化で、同一量の酸化グラファイトを生成するのに必要とされることがある。関連した実施形態では、合計の水対無水酸の比は、0.30:1未満の質量比にキープできる。本明細書における酸化方法は、酸化グラファイト粒子を生成するために使用でき、この粒子は、還元させて、少なくとも600m2/gのBET表面積を有するrGOW粒子を生成できる。酸化グラファイトの生成は、2つの段階を含み得、第1は、反応(酸化)段階であり、第2は、パージフェーズである。反応フェーズでは、クロレートイオンを、反応媒体に付与し、グラファイトを酸化させて、酸化グラファイトを生成する。パージフェーズでは、残留二酸化塩素を、生じる酸化グラファイトを安全に取り扱うことができるように、反応媒体からパージする。いくつかの実施形態では、反応フェーズおよびパージフェーズの両方を完了するための合計時間は、12時間未満、10時間未満または8時間未満になり得る。例えば、反応フェーズは、8時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満または3時間未満で完了でき、パージフェーズは、3時間未満または2時間未満で完了できる。これは、開始から仕上がりまで24時間超を必要とすることがある他の技術と対照的である。酸化グラファイト粒子における酸素レベルは、20%、30%または40%超になり得る。クロレートの少なくとも95%が反応し、二酸化塩素は、100ppm未満である。
【0014】
ある一連の実施形態では、グラファイト、硝酸および硫酸の反応混合物は、機械的な撹拌を使用せずに、ガスの流れを使用してかき混ぜることができる。ガスは、例えばスパージャーを使用して、反応媒体全体に流れさせることができ、いくつかの実施形態では、反応容器は、気泡塔反応器を含み得る。反応媒体のかき混ぜに加えて、ガス流は、クロレートの添加フェーズ中、パージフェーズ中、または両方のフェーズ中、二酸化塩素を除去する際に有効であることが見出されている。スパージは、反応の規模を増大させる場合に、特に有用になり得、その理由は、大きい反応容器は、ガス/液体界面の表面積対液体体積の比が小さいためである。グラファイト酸化反応が、二酸化塩素を除去するヘッドスペースのスイープに依存する場合、液体媒体からヘッドスペースへの二酸化塩素のいかなる移動も、ガス/液体界面の大きさに左右される。反応容器の体積が増加するにつれて、ガス/液体界面の面積対反応媒体の体積の比は低下し、その結果、反応容器は大きくなり、撹拌による二酸化塩素の除去は有効にならなくなる。反応媒体全体へのガスを流れさせると、ガス/液体界面の大きさに関係なく二酸化塩素の除去が加速される。二酸化塩素は、毒性でもあり反応性でもあるため、ガス流速は、ヘッドスペースにおける二酸化塩素の濃度を危険なレベル未満でキープする速度にて、二酸化塩素を除去するように選択され得る。ヘッドスペース領域から流出した後に、二酸化塩素は、捕捉し、安全に処分することができる。いくつかのケースでは、反応媒体全体のガス流は、撹拌を伴うこともある。
【0015】
別の態様では、酸化グラファイト粒子は、接線濾過を使用して、精製および/または濃縮できる。酸化グラファイト粒子の水性スラリーは、複数のサイクルにわたり接線流膜を通り過ぎる一方で、グラファイト粒子を濃縮し、スラリー中の残ったある酸または他の不純物を水と交換する。様々な実施形態では、接線流膜は、5μm未満、2μm未満、1.5μm未満、1.0μm未満、0.5μm未満、0.25μm未満、0.5μm超、1.0μm超または2.0μm超の孔径を有し得る。膜を横切る接線流速度は、10m/秒未満、5m/秒未満、3m/秒未満、2m/秒未満、1m/秒超または2m/秒超であり得る。この接線流濾過技術を使用すると、スラリーの酸化グラファイト含有量は、約1質量%の開始濃度から、5質量%超、7質量%超、9質量%超または12質量%超のスラリーにおける最終濃度に増加させてよい。濃縮した水性スラリーのpHは、スラリーのpHを2超、4超、5超または6超に上昇させることができる塩基、例えば、水酸化アンモニウムを添加することにより中和できる。
【0016】
本明細書で開示されている還元酸化グラファイトウォーム粒子は、高純度であり得、炭素および酸素以外の元素の3質量%未満、2質量%未満または1質量%未満からなり得る。様々な実施形態では、窒素および硫黄の量は、それぞれ、1質量%未満であり得る。粒子は、1質量%未満、1000質量ppm未満または100質量ppm未満の金属を含有し得る。例えば、rGOW粒子は、1000ppm未満のアルカリ金属を含み得、100ppm未満、50ppm未満または30ppm未満の、遷移金属および/またはアルカリ土類金属を含む多価金属を含み得る。個々の金属は、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満または5ppm未満で存在し得る。例えば、rGOW粒子は、30ppm未満の鉄、20ppm未満のチタン、1000ppm未満のナトリウムおよび20ppm未満のカリウムを含み得る。同粒子は、それぞれ5pm未満の他の金属を含み得る。粒子の金属含有量は、キャリア流体中の粒子の懸濁液を形成し、この懸濁液を噴霧することにより、誘導結合プラズマ分光法(ICP)を使用して分析できる。結果は、rGOW粒子の質量に基づいた質量ppmベースで報告されている。
【0017】
別の態様では、酸化グラファイトは、単一のプロセスで、乾燥および化学的に還元させることができる。例えば、水中の酸化グラファイトの水性スラリーは、300℃超の温度の反応チャンバ中に注入できる。粒子は、同時に乾燥および化学的に還元させて、エネルギーがより低く、表面積がより高い、還元酸化グラフェンウォーム(rGOW)粒子を得る。
【0018】
詳細な説明
還元酸化グラフェンウォームの構造
本明細書に記載されているプロセスは、還元酸化グラフェンウォーム(rGOW)構造または粒子を生成するために使用できる。rGOW粒子は、任意の数の還元した酸化グラフェンプレートレットを含み得、プレートレットの少なくとも一部は、隣接したプレートレットの平面に対して平行ではない平面である。図1bにおける概略図を参照されたい。rGOWプレートレットは、平面と呼ばれるが、これらは、典型的には、例えばグラフェンシートほど平面ではなく、むしろ、粒子が処理されたことによる酸化/還元プロセスに起因するしわおよび変形を含む。結果として、rGOWプレートレットは、グラフェンシートより厚いが、これらは、一般的に、プレートレットの厚さよりも数倍大きい直径を有する平面形状を依然保つ。図2のSE顕微鏡写真で見られるように、これらのプレートレットは、互いに角度が異なる複数のサブセクションを含む。この不均一性は、粒子の表面積の高さ、バルク密度の低さに寄与する。
【0019】
隣接したプレートレットは、所定のプレートレットのいずれかの主側面で、所定のプレートレットと直接つながっているプレートレットと定義される。プレートレットは、所定のプレートレットに、第3のプレートレットのみを経由してつながっている場合、隣接していない。プレートレットは、一側面における第1の隣接したプレートレットに対する角度をなし得、反対の側面における第2の隣接したプレートレットに対して平行な構造を保ち得る。rGOW構造におけるプレートレットの多くは、互いに平行なグラファイトの配置で留まり得、ファンデルワールス力により一緒に結合したままになり得る。例えば、図1bにおける積層s1およびs2を参照されたい。rGOWの粒子は、典型的には、広範なグラファイト構造を有さず、rGOW構造の様々な実施形態は、15枚より少ない、12枚より少ない、または11枚より少ない隣接した平行なプレートレットを含有する平行なプレートレット複合構造に限定され得る。還元酸化グラファイトウォーム粒子は、粒子の寸法のいずれか、例えば長さまたは直径は、粒子を構成するグラフェンプレートレットすべての厚さの合計を超える構造を呈する。例えば、単一のグラフェンプレートレットの厚さが約1nmである場合、プレートレット1,000枚を含むrGOW粒子は、長さおよび直径の両方で1μm超になる。これらの立体粒子は、粒子における少なくとも1つの起点を通して測定して、x、yおよびz軸それぞれに沿って、少なくとも50nmの寸法も有する。rGOW粒子は、平面構造ではなく、グラファイト(グラフェンプレートレットの積層)および個々のグラフェンシートのいずれとも分別される形態を有する。しかし、rGOW粒子が、単一のプレートレット、もしくはプレートレットの積層に剥離できること、また、これらのプレートレットが、5nm未満、10nm未満、50nm未満または100nm未満の少なくとも1つの寸法を有し得ることは注目すべきである。rGOW粒子を剥離した後で生じた単一のプレートレットまたは平行なプレートレットの積層は、もはやrGOW粒子ではない。
【0020】
本明細書に記載されているrGOW粒子は、複数のグラフェンプレートレットを含み得、様々な実施形態では、10枚超、100枚超または1000枚超のグラフェンプレートレットを含み得る。様々な実施形態では、粒子は、直線状であり得、または蛇行し得、略球形を取り得、いくつかのケースでは、円筒形であり得る。rGOW粒子の構造は、プレートレットのつながったままである縁が変化するため、粒子が縦に膨張する方式であることから、蛇腹状と記載されていることがある。例えば、図1bで示されているように、隣接したグラフェン平面の少なくとも一部は、平行ではなく、互いに、例えば約25°の角度をなす(例えば、図1bにおける角度α)。様々な実施形態は、例えば10°、25°、35°、45°、60°または90°の角度でつながっている、隣接したグラフェンプレートレットの1つまたは複数の対を含み得る。グラフェンプレートレットの様々な隣り合った対は、異なる縁または点でつながったままであり得、したがって、グラフェンプレートレットは、必ずしも同一の方向に傾いていない。隣接したグラフェンプレートレットが、膨張後、プレートレットの縁で互いにランダムに付いたままである場合、粒子は、実質的に縦方向に拡大する。これらの細長い、膨張したウォーム状構造は、1:1超、2:1超、3:1超、5:1超または10:1超になり得るアスペクト比を有し得る。rGOW粒子のより長い軸すなわち長さは、粒子の縦方向の中心コアを一端からもう一端へと貫通する最長のラインである。図2を参照されたい。このラインは、曲線であっても直線であってもよく、または、特定の粒子に応じて、曲線もしくは直線の部分を有していてもよい。ラインは、ラインに沿ったある特定の部分において、プレートレットの平均c面(average c-plane)へと実質的に垂直に通る。粒子のより短い軸すなわち幅は、粒子の周囲に、中間点で適合し得る最小円の直径とみなされる。図2を参照されたい。様々な実施形態では、rGOW粒子の長さは、1.0μm超、2.0μm超、5.0μm超、10μm超または100μm超であり得る。同一の、および他の実施形態では、幅(図2で示されている円の直径)は、例えば、100μm未満、50μm未満、20μm未満、10μm未満、5μm未満または2未満μmであり得る。特定の直径の範囲は、50nm超、100nm超、1μm超、10μm超、100μm超、100nm~100μm、500nm~100μm、500nm~50μm、2.0μm~30μm、2.0μm~20μm、2.0μm~15μm、2.0μm~10μm、1.0μm~5μm、100nm~5μm、100nm~2μm、100nm~1μm、200μm未満、100μm未満または10μm未満を含む。rGOW粒子の長さに沿った幅は、一定である必要はなく、2X超、3X超または4X超の倍率で変動させてよい。
【0021】
rGOW粒子は、炭素、酸素および水素を含有し得、他の元素は本質的に含み得ない。粒子は、ある元素が存在しない、または不純物としてしか存在しない場合、その元素を本質的に含まない。特定の実施形態では、rGOW粒子は、80質量%超、90質量%超、95質量%超または99質量%超の炭素を含み得る。一部の粒子は、酸素、特に共有結合した酸素を、0.1質量%超、0.5質量%超、1.0質量%超、5.0質量%超、10.0質量%超、14.0質量%超、25質量%未満、15質量%未満、10質量%未満、5.0質量%未満、3質量%未満、2質量%未満または1.0質量%未満の濃度で含み得る。水素含有量は、0.1質量%超または1質量%超であり得る。同一の、および他の実施形態では、水素含有量は、1質量%未満、0.1質量%未満または0.01質量%未満であり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子、例えば窒素または硫黄は、0.01質量%超または0.1質量%超で存在し得る。
【0022】
還元酸化グラファイトウォーム粒子は、低密度を呈し得る。例えば、様々な実施形態では、粒子は、ASTM D7481-09を使用して測定した場合、100g/L未満、50g/L未満、30g/L未満、20g/L未満、10g/L未満、5g/L未満、5g/L超、10g/L超または15g/L超のバルク密度を有し得る。これらの粒子は、高い表面積も呈し得、いくつかの実施形態では、200m2/g超、300m2/g超、400m2/g超、500m2/g超、600m2/g超、700m2/g超、900m2/g超または超1000m2/gのBET(Brunauer、EmmettおよびTeller、ASTM D6556-04)表面積を有し得る。rGOW粒子は、高等な構造も呈し得、吸油価(OAN)を使用して測定した場合、500mL/100g超、1000mL/100g超、100g当たり1500mL超または100g当たり2000mL超の構造を呈し得る。
【0023】
還元酸化グラフェン粒子における酸素含有量の一指標は、粒子の揮発性物質含有量である。様々な実施形態では、rGOW粒子は、不活性ガス下における125℃~1000℃の熱重量分析(TGA)によれば、1%超、1.5%超、2.0%超、2.5%超、5%超、10%超、15%超または20%超の揮発性物質含有量を有し得る。同一の、および他の実施形態では、揮発性物質含有量は、同技術によれば、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満または2%未満であり得る。
rGOW粒子の酸素含有量は、親酸化グラファイトと比較した場合、25%超、50%超または75%超減少し得る。同様に、熱分解の際における粒子のエネルギー含有量(DSCにより測定した)は、例えば、25%超、50%超または75%超減少し得る。rGOW粒子の分解エネルギーは、例えば、150J/g未満、100J/g未満、50J/g未満または20J/g未満であり得る。
【0024】
rGOW粒子のグラファイト構造は、ラマン分光法により調査できる。純粋グラファイトは、強いGバンド(1580cm-1)のラマンスペクトルを有し、Dバンド(1350cm-1)は存在しない。酸化グラファイトは、強いDバンドならびに強いGバンドを呈する。還元酸化グラファイトおよびrGOW粒子は、強いDバンドを有し、Dバンドは、多くのケースにおいて、Gバンド(FWHM)より強い。いくつかの実施形態では、Dバンド対Gバンドの比は、1.0超、1.1超または1.2超であり得る。
【0025】
rGOWの粒子は、多くの場合、結晶化度における差のため、グラファイトおよび同様の材料から区別できる。rGOW粒子の結晶化度は、ラマン分光法により判定でき、様々な実施形態では、rGOW粒子は、40%未満、30%未満または20%未満の結晶化度値を呈し得る。X線回折は、グラファイトと材料、例えば酸化グラファイトと、グラファイトのものと異なる層間間隔を呈するrGOW粒子の区別にも役立ち得る。グラファイトは、25°~30°の強いXRDピークを有するが、rGOW粒子は、典型的には、この範囲で認識可能なピークを有さない。例えば、25°~30°のrGOW粒子は、検出不可能なピーク、または、グラファイト粒子のものの10%未満もしくは5%未満のピークを有し得る。
【0026】
酸化グラファイトの生成
上で概説されているように、本開示の一態様は、グラファイトからの酸化グラファイトの生成を対象とする。一連の実施形態は、グラファイト粒子と、鉱酸、例えば硝酸および硫酸の混合物を組み合わせることを含む。この混合物は、次いで、強力な酸化剤、例えば、クロレート塩水溶液により得られるクロレートイオンと反応させる。クロレートは、一定速度で反応容器に添加され得る。予め判定された量のクロレートを添加した後で、系を長期間パージして、酸化反応を完了させ、生じた二酸化塩素を反応混合物からベントさせる。生じた酸化グラファイトスラリーは、次いで、例えば、本明細書に記載されている方法を使用することにより、中和および/または濃縮できる。
【0027】
出発材料のグラファイト粒子は、任意の形態、例えば粉末、顆粒またはフレークであってよい。好適なグラファイトは、任意の利用できる供給源から得られ、いくつかのケースでは、Superior Graphiteの天然グラファイトにより、許容できる結果が得られることを見出した。他のグラファイト供給業者は、Alfa AesarおよびAsbury Carbonsを含む。いくつかの実施形態では、グラファイト粒子は、100μm未満のD90を有し得る。
グラファイトと組み合わせる酸溶液は、鉱酸、例えば硝酸および硫酸の混合物であり得る。グラファイト、硝酸および硫酸は、あらゆる順番で組み合わせることができるが、多くの実施形態では、グラファイトは、硝酸が硫酸と混合された後に添加される。別の濃度を使用してよいが、特に指定のない限り、本明細書に記載されている実施形態は、68~70%の硝酸、および96~98%の硫酸を使用する。様々な実施形態では、硝酸(水含有量に起因する質量を含まない無水基準で)対硫酸の質量比は、例えば、0.2~0.4、0.25~0.35、または0.26~0.32であり得る。
【0028】
水は、グラファイトの酸化プロセスを阻害できること、および、酸含有量と比較して水含有量を減少させると、反応動態を改善できることを見出した。これにより、固定した量の酸でより多量のグラファイトを酸化することが可能となり、または、より少ない酸で同一量のグラファイトを酸化することが可能となる。様々な実施形態では、合計の酸対グラファイトの質量比は、15:1未満、20:1未満、30:1未満または40:1未満であり得る。特定の範囲は、10:1~20:1、10:1~30:1、および15:1~25:1を含む。同一の、および他の実施形態では、合計の水対グラファイトの質量比は、10.0:1未満、9.0:1未満、8.0:1未満、7.0:1未満または6.0:1未満であり得る。酸対グラファイトのより低い比を得る一方式は、合計の水対酸の比を低下させることである。本明細書で使用されている、「合計の水」は、クロレート水溶液からの水、および、硝酸からの水を含む、反応容器に入れる水供給源すべての合計である。水対酸の比は、無水基準での添加される酸の全量と比較した合計の水である。これは、クロレート水溶液のすべてが添加され、プロセスが酸化フェーズからパージフェーズに移行する時間に計算される。様々な実施形態では、合計の水対酸の比は、0.43:1未満、0.40:1未満、0.35:1未満、0.30:1未満または0.26:1以下である。
【0029】
硝酸、硫酸およびグラファイトを、反応容器に入れた後で、クロレートの添加を開始する。クロレートイオン(ClO3 -)は、クロレート塩の水溶液として、または、乾燥粉末として送達できる。クロレート塩は、アンモニウムまたはアルカリ金属カチオンを含むもの、例えば塩素酸カリウムまたは塩素酸ナトリウムから選択され得る。様々な実施形態では、水溶液中のクロレート塩の濃度(カチオンを含む)は、40質量%以上、50質量%以上、55質量%超または60質量%超であり得る。クロレート対水の質量比は、クロレート溶液の様々な実施形態では、0.8:1~2:1、1:1~2:1または1:1~1.5:1の範囲であり得る。使用されるクロレートの全量は、酸化されたグラファイトの量に比例し、クロレート対グラファイトの質量比は、例えば、2:1~10:1、2:1~8:1または3:1~6:1の範囲であり得る。特定の実施形態では、クロレート水溶液の供給におけるクロレート対水の質量比は、1:1超であり、クロレート対グラファイトの比は、3:1超である。クロレートは、反応の経過中に、一定速度または可変速度で、反応混合物に付与され得る。いくつかの実施形態では、これは、グラファイト1グラムにつき1時間当たりクロレート1~3グラム、または1.5~2.5グラムの一定速度で付与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、例えばスパージャーからのガスの流れは、反応混合物をかき混ぜるため、および/または、系から二酸化塩素(ClO2)の除去を補助するために使用できる。適切なガスおよびガス混合物は、窒素および空気を含む。二酸化塩素は、毒性および反応性の両方である。反応混合物、および上のヘッドスペースにおける二酸化塩素の濃度を安全なレベルで保つのを助けるために、ガス、例えば窒素または空気の一定の流れは、二酸化塩素を安全ではないレベル未満でキープする希釈剤としての役割を果たし得る。スパージャーガス流は、二酸化塩素の安全な廃棄または処分のために、二酸化塩素ガスをトラップに運ぶ機能を有し得る。いくつかの実施形態では、反応媒体全体へのガスの流れは、媒体からの二酸化塩素の除去を加速でき、反応生成物を除去し、ひいては酸化プロセスを加速する。いくつかのケースでは、例えば、気泡塔反応器におけるガス流は、他のいかなるかき混ぜ、例えば撹拌または振とうもなしで使用できる。
【0031】
いくつかの実施形態では、例えばスパージャーからのガスの流れは、反応混合物をかき混ぜるため、および/または、系からの二酸化塩素の除去を補助するため使用できる。適切なガスおよびガス混合物は、窒素および空気を含む。二酸化塩素は、毒性および反応性の両方である。反応媒体における二酸化塩素のレベルが飽和に達する場合、爆発で分解する可能性がある純粋二酸化塩素の気泡が発生し得る。反応混合物、および上のヘッドスペースにおける二酸化塩素の濃度を安全なレベルで保つのを助けるために、ガス、例えば窒素または空気の一定の流れは、二酸化塩素を安全ではないレベル未満でキープする希釈剤としての役割を果たし得る。ヘッドスペース領域から流出した後に、二酸化塩素は、捕捉し、安全に処分することができる。いくつかのケースでは、ガス流は、撹拌を伴うこともある。
【0032】
反応媒体が、例えば、撹拌することによりかき混ぜられる例では、二酸化塩素は、反応容器のヘッドスペースをスイープすることにより除去され得る。二酸化塩素の爆発下限(LEL)は、10体積%であるので、ヘッドスペースにおける二酸化塩素レベルに対する目標制限値は、典型的には、このレベル未満である。レベルは、スイープガスを、二酸化塩素生成量の約10倍で補給することにより10%未満に維持され得る。反応速度がより速い場合、ガスの体積は、比例的に増加させるべきである。液体媒体からヘッドスペースへの二酸化塩素の移動は、ガス/液体界面の大きさに左右される。反応容器の体積が増加するにつれて、ガス/液体界面の面積対反応媒体の体積の比は、L2/L3に従って低下し、式中、Lは、反応容器の特徴的な長さのスケールである。結果として、反応容器の大きさが増加するにつれて、反応時間およびパージ時間は、二酸化塩素をヘッドスペースに移動させるために、増加させる必要がある。これにより、生成規模の作業では支持できない生成時間の延長が生じる。
【0033】
反応媒体全体へのガス流は、クロレート添加反応フェーズ中、パージフェーズ中のクロレート添加の完了後、または両方のフェーズ中、二酸化塩素を除去する際に有効になり得ることを見出した。ガス流、例えばスパージは、より大きい生成規模の系に対して、表面積およびヘッドスペース界面の大きさに左右されないため、特に有効である。酸化系210の一例は、図3Aで概略的に示されている。系210は、反応媒体220をかき混ぜるための機械的インペラー212を使用する。反応媒体220からヘッドスペースに入れる二酸化塩素ガスは、矢印214により表される。スイープガス、例えば窒素は、ガス注入口216を介して付与される。二酸化塩素を含むスイープガスは、処分または再利用のためのトラップまたはベントに誘導するガス出口218を経由して除去される。
【0034】
図3Bは、ハイブリッド反応系230の実施形態を概略的に表す。系230は、図3Aの実施形態のように、機械的インペラー212を含む。しかし、系230は、反応容器の底部に位置し、スパージガス供給源234により供給されるスパージャー232も含む。例証されている実施形態では、スパージャーは、インペラー212下でガス気泡を導くようにドリルで空けた12~16個の穴を表面に有する環である。スピンするインペラーは、ガス気泡を壊し、分散させて、大きいガス/液体界面を生み出す。この大きい表面積のガス/液体界面により、液体からガス相へと二酸化塩素が効率的に移動される。スパージガスは、次いで、二酸化塩素を反応媒体220からヘッドスペース中へと運ぶ。スパージガスは、ヘッドスペースに存在する二酸化塩素を希釈することもできる。ガス出口218は、スパージガス、水および二酸化塩素の混合物が、反応容器から出るための経路を備える。機械的なかき混ぜに依存せず、かき混ぜおよび物質移動のために反応媒体全体へのガス流を使用する系の1タイプは、気泡塔反応器である。気泡塔反応器は、スパージャーを含み得るが、機械的アジテーターを使用しない。
【0035】
図3Cは、かき混ぜおよび二酸化塩素除去に関して、もっぱらスパージガスに依存した気泡塔系250を概略的に描写する。気泡塔の系250は、高さ対直径の比が大きく、境界表面積対体積の比が小さいことに留意されたい。様々な実施形態では、気泡塔反応器は、5:1超、10:1超または20:1超の高さ対直径の比を有し得る。これらは、低pHに耐性であり、ガラスまたはPTFEライニングスチールを含む任意の材料から作られ得る。図3Cからわかるように、ガス気泡の滞留時間は、反応媒体のカラムの高さゆえに延長される。特定の一実施形態は、直径6インチおよび高さ40インチを有する円筒形反応容器を含む。この実施形態では、この反応容器に、グラファイトおよび酸を25インチレベルまで入れることができ、ヘッドスペースおよび塩素酸ナトリウム溶液添加のために約15インチを空ける。気泡塔反応器のヘッドスペースは、気泡体積が液体反応媒体に寄与した結果として発生する液相膨張のために、さらなる体積を備えている。撹拌装置がないと、容器における空間を自由にでき、スターラーまたは他のかき混ぜデバイスを含む反応器の設計では含むことが困難になり得るアクセサリー、例えば圧導入口、ガス出口ベント、プローブおよび圧力緩和系を付けることが可能となる。
【0036】
スパージガスを気泡塔または代替反応容器に付与するのに使用されるスパージャーは、望ましい量の液体/ガス界面を得ることが可能な小さい気泡を、十分補給できる任意の設計であってよい。スパージャーは、ガス、例えば窒素または空気の補給と流体連通している。スパージャーは、グラファイト酸化反応媒体の低pH条件に耐性である材料から作ることができる。例えば、スパージャーは、ニッケル合金、ポリマー、例えばPTFEまたはガラスから作ることができる。スパージャーの形状は、容器の断面領域にわたって気泡の分散を最大化するように選択できる。様々な実施形態では、スパージャーは、環、ディスク、プレート、球、円筒形状をとること、または、複数の穿孔したアームが中心軸から伸展するスポーク付きの設計とすることができる。スパージャーは、上面、下面またはその両方に複数の穴を含み得る。他の実施形態では、スパージャーは、容易に画定される穴または穿孔を含まない多孔材料、例えば焼結ガラスから作ることができる。いくつかのケースでは、複数のスパージャーを使用でき、各スパージャーは、気泡のパターンを整えることを可能にするように、独立してコントロールできる。
【0037】
ある一連の実施形態では、グラファイト酸化プロセスは、反応容器において硝酸および硫酸を組み合わせることにより開始する。グラファイトは、次いで、混合物に添加し、かき混ぜは、混合物を窒素でスパージすることにより開始する。塩素酸ナトリウム溶液は、グラファイト1グラム当たりクロレート約2g/時の一定速度で、反応混合物に供給する。目標量のクロレート、例えば、グラファイト1グラム当たり5gが添加された後で、添加プロセスは中止し、パージフェーズを開始する。スパージを続け、反応混合物における二酸化塩素濃度をモニターする。二酸化塩素レベルが、閾値、例えば1000、100、10、1または0.1質量ppm未満に下落する場合、反応は完了したとみなされ、酸化グラファイトの生成は、以下に記載されている濃縮および精製段階に移すことができる。
【0038】
他の実施形態では、反応媒体からヘッドスペースへと二酸化塩素を移動させる別の技術を使用できる。例えば、真空源、例えば真空ポンプを使用して、ヘッドスペースにおいて蒸気圧を低下できる。反応容器における圧力が低いと、反応媒体において二酸化塩素の気泡が形成される。二酸化塩素の気泡は液体を通ってヘッドスペースへと上向きに上昇する。トラップまたは他の二酸化塩素除去デバイスは、反応容器と真空源との間に位置していてよい。いくつかのケースでは、反応媒体におけるガス気泡形成によっても、媒体がかき混ぜられ、流体に懸濁した酸化グラファイト粒子がキープされ得る。
【0039】
濃縮および精製
上で示されているように生成された酸化グラファイトは、濾過および遠心分離を含む技術を使用して、精製し、濃縮することができる。例えばブフナー漏斗でのデッドエンド濾過は、酸化グラファイトを精製および濃縮する際に、妥当な洗浄速度を得るには生じた濾過ケーキの不浸透性が高くなりすぎるため、無効なことを見出した。デッドエンド濾過の代替として、様々な接線流濾過技術を試みた。接線流濾過は、管状膜を通したスラリーまたは懸濁液の通過、および、管状膜の壁を貫通する細孔を通る透過液の収集を伴う。接線流膜は、セラミック管状膜、ならびに中空繊維ポリマー膜、例えばポリスルホンまたは二フッ化ポリビニリデン(PVDF)から作られたものを含み得る。セラミック膜は、典型的には、直径3~6mmの流れチャネルを有するが、中空繊維ポリマー膜は、直径約0.7~1.4mmの流れチャネルを有する。セラミック膜に対する接線流速は、通常約5~10m/秒であるが、典型的には、ポリマー膜ではより低く、例えば、約1または2m/秒であり得る。酸化グラファイトスラリーは、腐食性のpHを有するので、セラミック膜は、ポリマー膜よりも好ましいことがあるが、いくつかの実施形態ではポリマー膜が適切なこともある。セラミック膜を使用した様々な実施形態では、直線流速は、7m/秒未満、5m/秒未満、4m/秒未満、3m/秒未満または2m/秒以下であり得る。これらのおよび他の実施形態では、直線流速は、1m/秒超、2m/秒超、4m/秒超または6m/秒超であり得る。いくつかのケースでは、膜を横切る圧力勾配を駆動する背圧バルブを再循環ループで使用することに起因して、望ましくないせん断が実現した。このため、圧力は大きく下落したままとなり、下落により、背圧バルブにおけるせん断形成が引き起こされた。このせん断が招く問題は、背圧バルブを取り除くこと、ならびに、保持液リザーバー上のヘッドスペースを含む保持液再循環系の全体を密閉および加圧することにより解決した。このようにして、再循環ループにおいて背圧バルブを使用せずに、濾過膜を横切る圧力勾配を維持できる。密閉系は、例えば、15psi、10psiまたは5psi以下の圧力差に限定され得る。いくつかの実施形態では、せん断状態は、流体流路を90°未満、例えば45°以下の湾曲部および屈曲部に限定することにより、さらに低下し得る。
【0040】
接線流系300の一実施形態は、図4で概略的に例証される。接線流膜310は、酸性水性懸濁液を濾過することが可能な接線流膜であり得る。ある一連の実施形態では、Pall Corporationからのセラミック膜を使用できる。例えば、有用な膜は、0.1、0.2、0.65、0.8および1.4μmの排除孔径を有し得、0.1m2超、0.2m2超または0.5m2超の膜面積を有し得る。フィルター膜に接触させる前に、本明細書に記載されているように生成した7.5リットルの酸化グラファイトスラリーを、15~60リットルのDI水でクエンチする。クエンチしたスラリーを、次いで、移動ポンプ340を使用して、クエンチタンクから保持液リザーバー320に送り出した。保持液リザーバー320は、例えば、2psi超、5psi超、8psi超に加圧してよい。これにより、従来、膜310の出口と保持液リザーバー320との間に置かれていた背圧バルブを取り除くことが可能となる。クエンチしたスラリーは、接線流膜310を含む再循環ループ330中に流れさせる。酸化グラファイトスラリーは、9psiの膜間圧で、体積が約5リットルに減少するまで透析濾過した。この分量は、次いで、透析濾過を続け、DI水導管350を経由して、水を保持液リザーバー320に、透過液が透過液ドレイン360を通してなくなるのと同一の速度にて添加することにより、20~30リットルのDI水で洗浄した。圧力は、タンク内のヘッドスペースを加圧ガス源370で加圧することにより、保持液タンク320において維持される。透析濾過プロセスは、不純物、例えばスルフェート、ニトレートおよびクロレートが許容できるレベル、例えば、スルフェート<1000ppm、またはニトレート<300ppmに減少するまで続ける。これらのレベルは、例えばイオンクロマトグラフィーを使用して確認できる、または、電気伝導度検出器を使用したラインでモニターできる。不純物が許容できるレベルに減少しない場合、追加の水を、保持液リザーバー320に添加してよく、透析濾過を、望ましいレベルに到達するまで続けてよい。これらのレベルに達したら、水を補充せずに、酸化グラファイト粒子が水中において7.5~15質量%に濃縮されるまで、濾過プロセスを続ける。この濃縮したスラリーを、次いで排出し、以下に記載するように、高温スプレー乾燥および還元の準備をする。生じたrGOW粒子は、BET表面積600m2/g超の良好な形態を呈した。粒子を、ICPにより金属含有量について分析し、平均で<30質量ppmのFe、<20質量ppmのK、<1000質量ppmのNa、20質量ppm未満のSi、20質量ppm未満のTiおよび5質量pm未満(検出限界未満)のAg、Al、As、B、Ba、Ca、Co、Cr、Cu、Mg、Mn、Mo、Ni、Pb、Pt、Sb、Te、Tl、V、W、ZnおよびZrのそれぞれを含有することを見出した。
【0041】
高温スプレー乾燥および化学的還元
酸化グラファイトは、結合した酸素基のいくつか、またはすべてを酸化グラファイトから除去することにより還元できる。このプロセスは、グラフェンプレートレット間に高い圧力を生じることもでき、これにより、酸化グラファイトが膨張し、rGOW粒子が生成される。これは、公知の還元プロセスのいくつかとは異なり、それによって、個々の酸化グラフェンシートが、酸化グラファイト粒子から剥離され、続いて、別のステップにおいて還元される。例えば、ある公知のプロセスでは、酸化グラファイトは、希釈溶液において剥離でき、次いで、例えば、スプレー還元プロセスを使用して、化学的に還元できる、または熱的に還元できる。
【0042】
乾燥させた酸化グラファイト粒子を、炉において500~1000℃にて衝撃加熱することにより、酸化グラファイト粒子から還元酸化グラファイトを生成することが公知である。これは、酸化グラファイト粒子を最初に乾燥させ、次いで別途熱的に還元させる、2ステッププロセスである。以下で説明されているように、この2ステッププロセスは、安全に関する重大な危険性を引き起こすおそれのある手順を含む。本明細書に記載されているワンステッププロセスは、安全に関する危険性を低下させ、または取り除き、また、酸化グラファイト粒子を還元させるために必要とされる手順の全体数も減少させる。
【0043】
従来の2ステッププロセスは、酸化グラファイトおよび水のスラリーから水を除去することにより、酸化グラファイト粒子を乾燥させることから始める。酸化グラファイト粒子は、従来のスプレー乾燥機を温度100℃超にて使用して、乾燥させることができる。これらの乾燥させた酸化グラファイト粒子は、次いで熱的または化学的に還元できる。例えば、試料の酸素含有量は、温度500~1000℃への加熱により減少できる。しかし、図5の示差走査熱量測定(DSC)スキャンで示されているように、約144℃にて発生する著しい発熱分解事象が開始する。同一の事象は、図6において、加速熱量測定(ARC)スキャンにより示されており、これは、予めプログラムされたトリップ値1000°K/分を上回るため、機器が強制的にオートシャットダウンしたことを指し示す。この発熱分解は、急激で著しく、約1700J/gの分解エネルギーを放出する。きわめて少量の場合でさえ、このエネルギー量のこうした急な放出は、爆発するおそれがある。この発熱事象は、不均化反応であり、酸化反応ではないので、不活性雰囲気の使用では防止できない。この発熱反応は、乾燥プロセス中、熱還元プロセス中、またはその両方で発生し得ることは注目すべきである。
【0044】
別のタイプの還元プロセスでは、スラリー化した酸化グラファイト粒子を最初に剥離して、酸化グラフェンの個々のプレートレットの懸濁液を形成する。これは、例えば、超音波または化学技術を使用して、溶液中で行うことができる。生じた酸化グラフェンスラリーは、続いてスプレー乾燥できるが、高い濃度では粘度および流れ能力を許容できないため、スプレー乾燥プロセスは、約1質量%の濃度に限定され得る。
【0045】
本明細書に記載されているように、酸化グラファイト粒子をrGOW粒子に乾燥、および熱的に還元させることを同時に可能にする、高温スプレー乾燥および還元プロセスが開発された。個々の還元酸化グラフェンシートと対照的に、rGOW粒子は、一緒につながっている複数の還元酸化グラフェンシートを含むが、還元酸化グラフェンシートの少なくともいくつかは、非平行面で位置する。高濃度の酸化グラファイトスラリーを高温環境、例えば300℃超にスプレーすることにより、粒子を、乾燥させ、例えば1秒未満の一定期間で還元させることができる。ある実施形態では、高温域における滞留時間は、0.5~5秒になり得る。粒子は、加速分解温度の閾値を超える温度に瞬間的に曝露させる。分解反応により系内に放出された追加のあるエネルギーは、系内で保つことができ、温度を維持するため、および酸化グラファイト粒子から水分画を蒸発させるための追加のエネルギーを付与する。コントロールされ、連続したスラリーの高温環境への供給によって、安全に関する危険性を伴う乾燥させた酸化グラファイトのバッチ加熱と対照的に、発熱をコントロールし、かつ活用することが可能になる。高温乾燥、分解および還元のための装置は、rGOW粒子を調製する装置を使用する方法の実施形態と共に、以下に記載されている。
【0046】
高温スプレー乾燥および熱還元系400の一実施形態は、図7において断面で示されている。高温チャンバ410は、スプレーノズル420および電気ガスヒーター440と流体連通している。高温チャンバ410は、例えばチャンバの周囲の適所で、クリップ450にて保持される抵抗コイルにより、電気的に加熱できる。乾燥させた還元酸化グラファイト粒子は、流出口460で収集できる。還元した粒子は、冷却ガス注入口470を経由して受ける冷却ガスを使用して冷却できる。
高温チャンバ410は、円筒形状でよく、望ましい生成速度に基づく大きさである。スプレーノズル420を構築し、配列して、グラファイトを高温チャンバ410の内部に用意する。ノズル420は、液冷式でよく、酸化グラファイトスラリーをチャンバ410に噴霧スプレーすることができる。スラリーは、水中の酸化グラファイト粒子の懸濁液を含み得、酸化グラファイト粒子は、例えば、平均5~50μmの大きさを有し得、100μm未満、50μm未満、35μm未満または10μm未満のD90を有する大きさの範囲に該当し得る。スプレーノズル420は、7.5質量%~15質量%酸化グラファイトを含有するスラリーの噴霧した流れを1時間当たり約300~1000mL付与できる。追加のノズルを配置することで、より大きい系では流速を増加させることができ、複数のノズルを単一の高温チャンバに使用してよい。
図7の装置に対して一連の実施形態を作用させる条件は、以下の表1で示されている。
【0047】
【表1】

上で詳述されているように、rGOW粒子は、有用な性質、例えば高い表面積および低い密度を呈し得る。rGOW粒子の生成に関与する複数のステップ、例えば酸化、精製、濃縮、乾燥および還元は、いずれも最終rGOW粒子の性質に影響を与え得る。以下の実験は、特定の性質を有する安定したrGOW粒子を生成する際に最も重要なパラメーターを判定するために実行した。
【実施例
【0048】
水対酸の比
コストおよび反応時間を最小化するためには、できるだけ高いグラファイト対酸の比で酸化反応を実行しつつ、高いBET表面積、例えば600m2/g超を有するrGOW粒子をさらに得ることが望ましい。水を少なく使用することにより、特に水対酸の比がより低いことにより、最小限の試薬の量で反応時間が効率的になる一方、良好なrGOW粒子構造が保たれることを見出した。本明細書で詳細に記載されているグラファイト酸化プロセス中、反応における主要な水供給源は、硝酸およびクロレート水溶液である。したがって、反応における水濃度のいかなる低下も、使用されるこれらの試薬量の減少、または、試薬それぞれの濃度の上昇に関与する。発煙硝酸は、高価かつ危険であり、68~70%硝酸は、酸化反応で実用的な硝酸の最も濃縮された形態であり、これにより、反応に添加される硝酸70グラムごとに約30グラムの水が添加される。この水供給源が、実際には避けられないことを考慮すると、使用される水の全量を減少させる3つの経路が利用できる。これらは、使用される硝酸の量を減少させること、使用されるクロレート溶液の量を減少させること、または、クロレート水溶液を供給する際にクロレートの濃度を上昇させることである。
【0049】
表2および図8は、グラファイトを酸化させ、精製し、スプレー乾燥させ/還元させた還元酸化グラファイトウォーム(rGOW)粒子を作った実験1からのデータを示す。表2で詳述されているように、試薬の量および濃度を変動させて、反応動態およびパージプロセスの長さに対するこれらの変化の効果を判定した。反応を実行して完了させ、rGOW粒子のBETが600m2/g超であった場合に、反応により、許容できるrGOW粒子が得られるとみなした。特に指定のない限り、手順は、上に記載したように実行した。グラファイト出発材料は、Superior Graphiteからのグラファイト粉末であった。クロレートは、一定の速度で6時間にわたり添加した。反応容器の温度は、22℃にて維持した。反応容器は、250rpmの速度で撹拌し、10slpmの速度でスパージした。同スパージ速度を、プロセスのパージフェーズを通して続けた。
【0050】
表2の1番目のカラムは、反応ナンバーの識別を示す。2番目のカラムは、使用されるグラファイトの量を示す。3番目のカラムは、無水基準の使用される硝酸の量を示す。カラム4は、使用される硫酸の量を示す。カラム5は、塩素酸ナトリウム対グラファイトの質量比を示す。カラム6は、塩素酸ナトリウムの供給溶液中の塩素酸ナトリウム濃度を示す。カラム7は、反応に添加される塩素酸ナトリウムの全量を示す。カラム8は、グラファイト対酸の質量比を示す。カラム9は、硝酸による反応に寄与した水の量を示す。カラム10は、塩素酸ナトリウム溶液による反応に寄与した水の量を示す。カラム11は、反応に添加された水の全量を示し、カラム12は、反応における合計の水対酸の質量比を示す。反応を実行して完了させ、パージフェーズの終わりに、ガス相ClO2の濃度を100ppm未満に下落させた。rGOW粒子は、上記の接線濾過技術を使用して、酸化グラファイト粒子を精製および濃縮することにより生成した。酸化グラファイトスラリーを、次いで、上で表1において示されている特定の条件で、上記のスプレー乾燥/還元方法を使用して、同時にスプレー乾燥および還元させた。生じたrGOW粒子は、600m2/g超のBET表面積を有する良好な形態を呈した。
【0051】
【表2】
【0052】
経時的な反応速度(二酸化塩素の生成)を示す結果は、図8で示されている。結果から、水/酸の比が低いと、酸化およびパージフェーズの両方を含めて、プロセスは速くなることが指し示される。試料1Cおよび1Dは、酸化フェーズ中に、反応動態における激しい減退を示す。この反応動態における減退が発生する一方、クロレートの添加は、一定速度で続くが、これは、溶液中に未反応のクロレートが、反応の終わりまで蓄積していることを意味する。反応の終わりにクロレートが蓄積し、反応動態が遅くなることから、パージフェーズは長くなるが、その理由は、反応が完了に向かう場合、この残留クロレートは、パージフェーズ中に反応させなければならないためである。この減退は、いずれも0.26の水対酸の比を有する試料1Aおよび1Bでは見られず、この比は、試料1Cおよび1Dの水対酸の比より著しく低い。図8は、動態は、水対酸の比(試料1Aおよび1Bのいずれも0.26)が低くキープされる限り、グラファイト対酸の比(1Aでは1Bより33%高い)が上昇した場合でも本質的に維持されることも示す。試料1Cおよび1Dは、より高いグラファイト対酸の比を含んでいたが、水対酸の比が高いため、さほど効率的に酸化されなかった。
【0053】
これらの試料についての結果から、パージフェーズは、より低い(0.26)水対酸の比を有する試料では有意に短縮されることも示される。図9は、反応のパージフェーズでの、ヘッドスペースにおけるガス状二酸化塩素の経時的な濃度をプロットする。パージフェーズは、塩素酸ナトリウムすべてが添加された後で始め、ヘッドスペースにおける二酸化塩素の濃度が、二酸化塩素約100ppm未満に下落する場合に終わる。水対酸の比がより低い反応(1Aおよび1B)に対するプロットラインは、二酸化塩素パージ速度の上昇を示す一方、水対酸の比がより高い反応(反応1Cおよび1D)は、二酸化塩素パージ速度の低下を示す。図9は、4000ppmに下落した測定しか含まないこと、ならびに、二酸化塩素の濃度が、例えば、100ppmのエンドポイントに低下するような、例証されている傾向が(異なる測定技術を使用して)続き、酸試料に対して少ない水(1Aおよび1B)と、酸試料に対して多い水(1Cおよび1D)との間で、パージ時間における差が大幅に拡大することに留意されたい。例えば、1Aおよび1Bでは、100ppmのエンドポイントは、4時間未満で達成された一方、反応1Cおよび1Dは、同一のレベルに達するのに12時間超を必要とした。パージの軌跡は、試料1Aおよび1Bで同様であるが、これにより、グラファイトの量が多い(1A)は、水対酸の比が低レベル、例えば、0.26以下で維持されている限り、同様の反応条件下で効率的に酸化され得ることが指し示される。試料1Cおよび1Dで延長したパージ時間から、酸化されたグラファイトの量の増加は、水対酸の比が低レベルで維持されていなければ効果がないことが示される。
【0054】
気泡塔反応器
一連の実験を実行して、気泡塔反応器が、i)6時間の反応時間および3時間のパージ時間を可能にする速度で二酸化塩素を除去できるか、ならびに、ii)均質、均一に酸化された粒子を生成するのに十分なほど安定した方法で、グラファイト粒子のかき混ぜおよび懸濁をできるかどうかを判定した。
【0055】
別の実験では、気泡塔系を、反応およびパージプロセスの両方で、機械的にかき混ぜた系と比較した。各プロセスは、各手順により生成されるrGOW粒子の特性に基づいて、成功したとみなした。具体的には、rGOW粒子は、BET表面積およびTGAによる質量損失に基づいて評価した。各プロセスは、同一のグラファイト出発材料を使用した。プロセス1およびプロセス2のいずれも、反応フェーズおよびパージフェーズでスパージガスを使用した。各プロセスに使用される容器は、10リットルのガラス容器であった。他の構築材料は、例えば、PTFEライニングスチール、ポリ(フッ化ビニリデン)PFDF、CPVCおよびチタンを含み得る。2つのプロセスの間における差は、プロセス1が、反応およびパージフェーズの期間に、250rpmで動作する機械的インペラーも使用したことであった。プロセス2は、かき混ぜおよび二酸化塩素の除去に関して、もっぱらスパージャーに依存していた。反応物のタイプおよび量は、表2で試料1Bについて記載されているものと同一であった。プロセス1および2のそれぞれでは、窒素は、スパージャーを介して、反応およびパージフェーズを通して10slpmの速度で供給された。プロセス2は、該プロセスが、反応フェーズならびにパージフェーズに適用されたことを除いて、上の実験1における系2で記載されているスパージプロセスにもっぱら依存している。すべてのケースにおいて、反応およびパージフェーズ(残留ClO2<100ppm)は、10時間未満で完了した。各プロセスから生成された酸化グラファイトは、図4の接線濾過装置を使用して洗浄し、濃縮した。続いて、各プロセスから濃縮した酸化グラファイトスラリーを、表1で示されている条件を使用してスプレー乾燥および還元させた。仕上げたrGOW粒子の性質は、以下の表3で示されている。各プロセスを複数回実行し、示されている値は、プロセス1では14回、プロセス2では11回の実行の平均である。結果から、各方法により生成されたrGOW粒子の表面積および酸素含有量は、表面積および酸素含有量がわずかに高い粒子を生成するプロセス2(気泡塔のスパージのみ)と同様であることが指し示される。
【0056】
【表3】
【0057】
気泡塔(スパージ)プロセスの全体の反応効率を、機械的かき混ぜプロセスと比較して、評価するために、プロセス1およびプロセス2を繰り返し、二酸化塩素レベルを、反応およびパージフェーズ中の両方でモニターした。反応容器は、10リットルの体積を有していた。上に記載したように、反応フェーズ中、二酸化塩素の生成は、グラファイト粒子に施された酸化の量を示す。図10のグラフは、塩素酸ナトリウムが一定速度で添加された6時間にわたる二酸化塩素のレベル(反応フェーズまたは酸化フェーズ)を示す。図10のプロットの詳細な追跡から、酸化は、プロセスがもっぱらスパージに依存する場合、またはプロセスが機械的インペラーによるかき混ぜを含む場合、同様の速度で起きることが指し示される。図9は、各プロセスでのパージフェーズに対する類似したプロットを示す。図に例証したように、プロセス1のかき混ぜ機の働きで、二酸化塩素のレベルは、約60分で50ppmに低下する一方、プロセス2の気泡塔は、同一のレベルに達するのに約90分かかる。
【0058】
上に記載したようにプロセス2を実行する一方で、反応およびパージフェーズ中に、グラファイトまたは酸化グラファイト粒子の沈降、凝集または分離がないことを観察した。このレベルの混合は、プロセス中にグラファイト粒子の同等の酸化を確実にするのに重要である。粒子の安定した混合および懸濁も、異なるバッチ内およびバッチ間で等しいレベルのグラファイトの酸化を指し示す表3におけるデータにより立証される。
【0059】
他の一連の実験では、反応媒体の温度を変動させ、酸化速度をモニターした。具体的には、上に記載した酸化およびパージプロセスは、30℃および35℃にて実行した。反応3Aおよび3Bのそれぞれでのグラファイト対酸の比は、0.046であった。反応条件は、表4で以下に示されている試薬量である。図12は、反応3Aおよび3Bのそれぞれに対する酸化フェーズ中における、二酸化塩素の生成に対するプロットを示す。35℃の温度での反応3Bは、30℃での反応3Aと比較した場合、改善した反応動態を示す。この差は、図13でより容易に明らかになり、該図は、二酸化塩素を、反応3Bでは約32分、また、反応3Aでは約57分で4000ppmに下落させたパージを例証する。反応3Aおよび3Bに対するグラファイト対酸の比は、上の反応1Cおよび1Dに対するものと同様であること、しかし、3Aおよび3Bでの反応動態は、いずれも反応1Cおよび1Dのものよりも高いことに留意されたい。これは、実施例1Cおよび1Dにおいて使用されたものより高い反応温度、ならびに、わずかに低い水対酸の比によると考えられている。
【0060】
【表4】
【0061】
スプレー乾燥流速および温度
一連の実験では、酸化グラファイトは、異なる温度にて同時に乾燥および還元させて、生じた還元酸化グラファイト粒子の性質を評価した。図7の高温チャンバは、360℃、550℃および720℃の温度にて動作させた。生じた還元酸化グラファイト粒子を、表面積、エネルギー含有量、および、105℃~500℃の温度範囲にわたるTGAによる質量損失について評価した。酸化グラファイトスラリーは、300mL/時の速度で、ノズルを通して送り出し、乾燥ガスを、100slpmで、また、噴霧ガスを12slpmで補給した。温度条件および測定した粒子の性質は、表5で示されており、これにより、高温は、表面積を高くし、酸素含有量を減少させることが指し示される。
【0062】
【表5】
【0063】
プロセスフロー
グラファイトからrGOW粒子を生成する一実施形態を例証するフローチャートは、図14で示されている。グラファイト粒子を、硝酸および硫酸の混合物に入れ、スパージを開始する。クロレートの補給をグラファイト反応混合物に行って、グラファイトを酸化グラファイト(GO)に酸化させる。反応を実行して、スパージを続けて、二酸化塩素ガスを除去するパージフェーズ中に完了させる。生じたGOスラリーを、きわめて低いpH(.5未満)とし、続いてDI水でクエンチする。クエンチしたスラリーを接線濾過系に送り出し、ここでスラリーを精製し、濃縮する。濃縮したスラリーは、塩基を添加することによりさらに中和する。中和したスラリーを、次いで、高温スプレー乾燥機に供給し、ここでスラリーを同時に乾燥および化学的に還元させて、rGOW粒子を生成する。
【0064】
本発明の実施形態の先述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。これは、網羅的であること、または、本発明を、開示されているそのままの形態に限定することを意図するものではない。本開示を踏まえ、多くの改変および変形が考えられる。本発明の範囲は、この詳細な記述ではなく、むしろ本明細書に添付される特許請求の範囲によって限定されることを意図している。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕1000質量ppm未満の金属含有量を有する還元酸化グラファイトウォーム粒子。
〔2〕100質量ppm未満の多価金属含有量を有する、前記〔1〕に記載の還元酸化グラファイトウォーム粒子。
〔3〕多価金属のそれぞれを50質量ppm未満含む、前記〔2〕に記載の還元酸化グラファイトウォーム粒子。
〔4〕400m 2 /g超のBET表面積、10g/L未満の密度、<30%の結晶化度および<100J/gの分解エネルギーを有する、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の還元酸化グラファイトウォーム粒子。
〔5〕25°~30°のXRDピークを呈し、該ピークが、25°~30°の同等のグラファイトピークの高さの10%未満または1%未満である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の還元酸化グラファイトウォーム粒子。
〔6〕25°~30°の検出可能なXRDピークが存在しない、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の、還元酸化グラファイトウォーム粒子。
〔7〕還元酸化グラファイトウォーム粒子を作る方法であって、
酸化グラファイト粒子およびキャリア流体の混合物を、300℃超の温度のチャンバに導入するステップ、ならびに
グラファイト粒子の酸素含有量を50質量%超減少させて、還元酸化グラファイトウォーム粒子を生成するステップを含む、方法。
〔8〕混合物が、水中の酸化グラファイト粒子のスラリーを含む、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕チャンバの温度が、500℃超または700℃超である、前記〔7〕または〔8〕に記載の方法。
〔10〕導入するステップが、酸化グラファイトおよび水のスラリーをチャンバにスプレーするステップを含む、前記〔7〕~〔9〕のいずれか1項に記載の方法。
〔11〕スプレーするステップが、スプレーノズルに、酸化グラファイト粒子を含む第1の流れ、および噴霧ガスを含む第2の流れを供給するステップを含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕酸化グラファイトおよびキャリア流体を、冷却されたノズルを経由して導入するステップを含む、前記〔7〕~〔11〕のいずれか1項に記載の方法。
〔13〕900℃超の温度の乾燥ガスを、チャンバに注入するステップを含む、前記〔7〕~〔12〕のいずれか1項に記載の方法。
〔14〕減少させるステップが、酸化グラファイト粒子から共有結合した酸素を除去するステップを含む、前記〔7〕~〔13〕のいずれか1項に記載の方法。
〔15〕粒子が、10秒未満、5秒未満、2秒未満または1秒未満のチャンバ内での滞留時間を有する、前記〔7〕~〔14〕のいずれか1項に記載の方法。
〔16〕互いに平行平面ではない複数のグラフェンプレートレットを含むように、酸化グラファイト粒子を膨張させるステップを含む、前記〔7〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法。
〔17〕酸化グラファイト粒子の密度が、還元酸化グラファイト粒子の密度の少なくとも2倍である、前記〔7〕~〔16〕のいずれか1項に記載の方法。
〔18〕還元酸化グラファイト粒子が、酸化グラファイト粒子の分解エネルギーより少なくとも20%、30%、40%または50%低い分解エネルギーを有する、前記〔7〕~〔17〕のいずれか1項に記載の方法。
〔19〕チャンバが、熱ガス流により、および放射エネルギーにより加熱される、前記〔7〕~〔18〕のいずれか1項に記載の方法。
〔20〕粒子を、10秒未満、5秒未満または1秒未満で、乾燥および還元させる、前記〔7〕~〔19〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21〕混合物をチャンバに導入した後で、混合物の流体成分を1秒未満で蒸発させる、前記〔7〕~〔20〕のいずれか1項に記載の方法。
〔22〕還元酸化グラファイトウォームが、600m 2 /g超のBET表面積を有する、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕酸化グラファイト粒子、およびキャリア流体の混合物が、5質量%超の酸化グラファイト粒子を含有する、前記〔7〕~〔22〕のいずれか1項に記載の方法。
〔24〕反応容器と流体連通したオリフィスを含むスプレーノズルであって、スプレーノズルオリフィスが、スラリーを反応容器中にスプレーするように構成されている、スプレーノズル、および
スプレーノズルの少なくとも一部を取り巻く冷却ジャケット
を含む、高温スプレー乾燥装置。
〔25〕スプレーノズルが、二流体ノズルを含む、前記〔24〕に記載の装置。
〔26〕反応容器および反応容器中心線の下流と流体連通した冷却ガス注入口を含む、前記〔24〕または〔25〕に記載の高温スプレー乾燥装置。
〔27〕熱ガス源および放射熱源の両方を含む、前記〔24〕~〔26〕のいずれか1項に記載の装置。
〔28〕グラファイトを酸化させて、酸化グラファイトを生成する方法であって、
グラファイト、硝酸および硫酸を組み合わせて、グラファイト混合物を形成するステップ、
クロレート溶液をグラファイト混合物に供給するステップ、
クロレート溶液をグラファイト混合物に供給しながら、グラファイト混合物をスパージするステップ、ならびに、
添加されたクロレートの全量が、グラファイト1グラム当たりクロレート2.5~6.0gの範囲に達したら、クロレートの供給を中止するステップ
を含み、合計の水対酸の比が、0.43:1未満、0.40:1未満、0.35:1未満、0.30:1未満または0.26:1以下である、方法。
〔29〕クロレートの供給を中止した後に、および、グラファイト混合物上のヘッドスペースにおける二酸化塩素レベルが1000、500または100ppm未満に下落するまで、スパージするステップが続けられる、前記〔28〕に記載の方法。
〔30〕添加された水の全量対添加された無水酸の全量の質量比が、0.33:1未満、0.30:1未満または未満0.27:1である、前記〔28〕または〔29〕に記載の方法。
〔31〕クロレート溶液が、1:1~2:1のクロレート対水の質量比を有する、前記〔28〕~〔30〕のいずれか1項に記載の方法。
〔32〕クロレートの供給を中止した後に、ガスまたはガス混合物を、グラファイト混合物にスパージするステップをさらに含む、前記〔28〕~〔31〕のいずれか1項に記載の方法。
〔33〕硝酸対硫酸の質量比が、無水を基準として、0.25:1~0.35:1の範囲である、前記〔28〕~〔32〕のいずれか1項に記載の方法。
〔34〕混合物が、クロレート溶液の供給中に、パージガスを混合物にスパージすることによりかき混ぜられる、前記〔28〕~〔33〕のいずれか1項に記載の方法。
〔35〕混合物が、30℃超の温度である、前記〔28〕~〔34〕のいずれか1項に記載の方法。
〔36〕硫酸および硝酸の混合物が、グラファイトに添加される、前記〔28〕~〔35〕のいずれか1項に記載の方法。
〔37〕スパージするステップが、グラファイト混合物中の二酸化塩素の濃度が、1000ppm、100ppm、10ppm、1ppmまたは0.1ppm未満に下落するまで続く、前記〔28〕~〔36〕のいずれか1項に記載の方法。
〔38〕グラファイトが、気泡塔反応器において酸化される、前記〔28〕~〔37〕のいずれか1項に記載の方法。
〔39〕グラファイトが、機械的アジテーターなしで酸化される、前記〔28〕~〔38〕のいずれか1項に記載の方法。
〔40〕添加されたクロレートの95%、98%または99%超を、10時間未満で反応させるステップを含む、前記〔28〕~〔39〕のいずれか1項に記載の方法。
〔41〕グラファイト混合物上のヘッドスペースにおける二酸化塩素の濃度が、12時間未満、10時間未満または8時間未満で500ppm未満または100ppm未満に低下する、前記〔28〕~〔40〕のいずれか1項に記載の方法。
〔42〕酸化されたグラファイトを部分的に還元させて、600m 2 /g超のBET表面積、<30%の結晶化度、>1.0のラマンD/Gバンド比を有し、かつ/またはXRDスペクトルで25°~30°の認識可能なグラファイトピークがないrGOW粒子を得るステップをさらに含む、前記〔28〕~〔41〕のいずれか1項に記載の方法。
〔43〕クロレート溶液が、クロレートアニオンおよびカチオンを含むクロレート塩を含み、rGOW粒子が、1000質量ppm未満のカチオンを含む、前記〔42〕に記載の方法。
〔44〕合計の酸対グラファイトの質量比が、15:1未満、20:1未満、25:1未満、30:1未満または40:1未満である、前記〔28〕~〔43〕のいずれか1項に記載の方法。
〔45〕グラファイト混合物における合計の水対グラファイトの質量比が、クロレートの供給を中止した後に、11:1未満、10:1未満、9:1未満、8:1未満、7:1未満または6:1未満である、前記〔28〕~〔44〕のいずれか1項に記載の方法。
〔46〕酸化グラファイトスラリーを処理する方法であって、
流体および酸化グラファイト粒子を含む酸化グラファイトスラリーを、接線流濾過膜を横切って、3m/秒以下の接線流速度で、流れさせるステップ、
低pHキャリア流体を、より高いpHのキャリア流体と交換して、1超のpHを有する酸化グラファイトスラリーを生成するステップ、ならびに、
スラリー中の酸化グラファイト粒子を、5質量%超の濃度に濃縮するステップを含む、方法。
〔47〕膜間圧が、5~15psi、6~12psiまたは6~10psiである、前記〔46〕に記載の方法。
〔48〕酸化グラファイトスラリーが、閉ループを通って循環し、閉ループにおける任意の圧力の下落が、10psi未満である、前記〔46〕または〔47〕に記載の方法。
〔49〕膜を通る透過流速が、膜1平方メートルにつき1時間当たり150、200または250リットル超である、前記〔46〕~〔48〕のいずれか1項に記載の方法。
〔50〕保持液リザーバーを5psi超に加圧するステップを含む、前記〔46〕~〔49〕のいずれか1項に記載の方法。
〔51〕スラリーの流体含有量を減少させて、酸化グラファイト粒子の濃度を、初期濃度から初期濃度の5倍超に上昇させるステップを含む、前記〔46〕~〔50〕のいずれか1項に記載の方法。
〔52〕酸化グラファイト粒子のスラリーを処理するための装置であって、
接線流膜、
接線流膜と流体連通した、加圧された保持液リザーバー、ならびに、
接線流膜および保持液リザーバーと流体連通した再循環ポンプ
を含み、加圧された保持液リザーバーと接線流膜の高圧側との間の圧力差が、10、8、6または5psi未満である、装置。
〔53〕接線流膜が、1~2μmの粒子排除孔径を有する管状セラミック膜である、前記〔52〕に記載の装置。
〔54〕装置が、再循環流路を含み、流路が、45°超の角度を含まない、前記〔52〕~〔53〕のいずれか1項に記載の装置。
図1a
図1b
図2
図3A
図3B
図3C
図4
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図7
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