(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】走行経路設定装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220823BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G05D1/02 N
A01B69/00 ZYW
G05D1/02 H
A01B69/00 303F
(21)【出願番号】P 2021109875
(22)【出願日】2021-07-01
(62)【分割の表示】P 2017235218の分割
【原出願日】2017-12-07
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02- 1/12
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、
前記走行経路設定部は、前記走行領域内での前記作業車両の走行による走行軌跡に基づく初期経路を生成する初期経路生成部と、
初期経路に基づいて、初期経路に対してその走行方向に延び且つ当該走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を生成する作業経路生成部とを備え、
前記走行経路設定部は、複数の作業経路を含む目標走行経路を設定しており、
前記作業経路生成部は、初期経路を前記走行領域内に設定された作業領域内で延長させて延長経路を生成し、その延長経路に対して前記並設方向に並ぶ複数の作業経路を生成している走行経路設定装置。
【請求項2】
初期経路及び複数の作業経路のうち、前記作業領域外に位置する経路を、目標走行経路から除外する経路除外部を備えている請求項1に記載の走行経路設定装置。
【請求項3】
作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、
前記走行経路設定部は、前記走行領域内での前記作業車両の走行による走行軌跡に基づく初期経路を生成する初期経路生成部と、
初期経路に基づいて、初期経路に対してその走行方向に延び且つ当該走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を生成する作業経路生成部とを備え、
前記走行経路設定部は、初期経路及び複数の作業経路を含む目標走行経路を設定しており、
初期経路及び複数の作業経路のうち、前記走行領域内に設定された作業領域外に位置する経路を、目標走行経路から除外する経路除外部を備えている走行経路設定装置。
【請求項4】
作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、
前記走行経路設定部は、走行方向に延び且つ走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を含む目標走行経路を設定し、
複数の作業経路の一部を基準経路として選択する基準経路選択部を備え、
前記走行領域内で前記作業車両を走行させたときの走行軌跡を取得する走行軌跡取得部と、
基準経路が走行軌跡に合致するように、目標走行経路を変更する走行経路変更部とが備えられている走行経路設定装置。
【請求項5】
前記走行軌跡取得部にて取得した走行軌跡の長さが基準経路よりも短い場合には、前記走行経路変更部が、基準経路及び複数の作業経路の長さを短縮する請求項4に記載の走行経路設定装置。
【請求項6】
前記走行軌跡取得部にて取得した走行軌跡の形状と基準経路の形状とが異なる場合には、前記走行経路変更部が、基準経路の形状及び複数の作業経路の形状が走行軌跡の形状に一致するように形状変更を行う状態で基準経路が走行軌跡に一致するように目標走行経路を移動させる請求項4又は5に記載の走行経路設定装置。
【請求項7】
作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、
前記走行経路設定部は、走行方向に延び且つ走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を含む目標走行経路を設定し、
複数の作業経路の一部を基準経路として選択する基準経路選択部を備え、
前記走行領域内での前記作業車両の停止位置を取得する走行停止位置取得部と、
基準経路の始端又は終端が停止位置に合致するように、目標走行経路を変更する走行経路変更部とが備えられている走行経路設定装置。
【請求項8】
前記走行経路変更部により目標走行経路が変更された場合に、変更後の目標走行経路のうち、前記走行領域外に位置する経路を削除し、その削除した経路を、変更後の目標走行経路に対して前記走行領域内で追加する走行経路調整部が備えられている請求項4~7の何れか1項に記載の走行経路設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させるための目標走行経路を設定する走行経路設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の走行経路設定装置は、衛星測位システムを用いて作業車両の現在位置を取得し、走行経路設定装置にて設定された目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行システムに用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1に記載の装置では、パーソナルコンピュータ等の遠隔操作装置に対して、作業車両の種類や作業車両に装着する作業機の種類や幅等の各種の情報を入力することで、圃場等の走行領域内に複数の候補用目標走行経路を生成し、生成した候補用目標走行経路をタッチパネル等の表示部に表示可能としている。候補用目標走行経路は、例えば、平行に並ぶ複数の直線経路と、隣接する直線経路同士を連結する複数の湾曲経路とを備えている。
【0004】
目標走行経路を設定する場合には、遠隔操作装置の表示部に表示された候補用目標走行経路でよければ、ユーザが決定ボタンを操作することで、表示部に表示された候補用目標走行経路を目標走行経路として設定している。また、ユーザが異なる候補用目標走行経路にしたい場合には、再設定ボタンを操作して、複数の候補用目標走行経路から選択することで、その選択された候補用目標走行経路を目標走行経路として設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置では、遠隔操作装置にて生成された候補用目標走行経路のいずれかを目標走行経路として設定しているが、候補用目標走行経路は、作業車両の種類や作業車両に装着する作業機の種類や幅等の各種の情報に基づいて生成されており、ユーザの要望が反映されているものではない。よって、ユーザが実際に作業したい経路に対して目標走行経路の位置や角度等がずれている場合があり、ユーザの要望に応じた目標走行経路を設定できない場合がある。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ユーザの要望に応じた目標走行経路を設定することができる走行経路設定装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る走行経路設定装置は、作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、前記走行経路設定部は、前記走行領域内での前記作業車両の走行による走行軌跡に基づく初期経路を生成する初期経路生成部と、初期経路に基づいて、初期経路に対してその走行方向に延び且つ当該走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を生成する作業経路生成部とを備え、前記走行経路設定部は、複数の作業経路を含む目標走行経路を設定しており、前記作業経路生成部は、初期経路を前記走行領域内に設定された作業領域内で延長させて延長経路を生成し、その延長経路に対して前記並設方向に並ぶ複数の作業経路を生成している。
【0009】
本発明の一態様に係る走行経路設定装置は、作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、前記走行経路設定部は、前記走行領域内での前記作業車両の走行による走行軌跡に基づく初期経路を生成する初期経路生成部と、初期経路に基づいて、初期経路に対してその走行方向に延び且つ当該走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を生成する作業経路生成部とを備え、前記走行経路設定部は、初期経路及び複数の作業経路を含む目標走行経路を設定しており、初期経路及び複数の作業経路のうち、前記走行領域内に設定された作業領域外に位置する経路を、目標走行経路から除外する経路除外部を備えている。
【0010】
本発明の一態様に係る走行経路設定装置は、作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、前記走行経路設定部は、走行方向に延び且つ走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を含む目標走行経路を設定し、複数の作業経路の一部を基準経路として選択する基準経路選択部を備え、前記走行領域内で前記作業車両を走行させたときの走行軌跡を取得する走行軌跡取得部と、基準経路が走行軌跡に合致するように、目標走行経路を変更する走行経路変更部とが備えられている。
【0011】
本発明の一態様に係る走行経路設定装置は、作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、前記走行経路設定部は、走行方向に延び且つ走行方向に直交する並設方向に並ぶ複数の作業経路を含む目標走行経路を設定し、複数の作業経路の一部を基準経路として選択する基準経路選択部を備え、前記走行領域内での前記作業車両の停止位置を取得する走行停止位置取得部と、基準経路の始端又は終端が停止位置に合致するように、目標走行経路を変更する走行経路変更部とが備えられている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
【
図3】目標走行経路を設定する過程における走行領域を示す図
【
図4】目標走行経路を設定する過程における走行領域を示す図
【
図5】目標走行経路を設定した状態における走行領域を示す図
【
図6】目標走行経路を設定した状態における走行領域を示す図
【
図7】目標走行経路を設定した状態における走行領域を示す図
【
図8】目標走行経路を設定した状態における走行領域を示す図
【
図10】目標走行経路を設定した状態における走行領域を示す図
【
図11】目標走行経路を変更する過程における走行領域を示す図
【
図12】目標走行経路を変更した状態における走行領域を示す図
【
図17】変更後の目標走行経路の調整の仕方を示す概略図
【
図18】目標走行経路の変更におけるフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る走行経路設定装置を用いた自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この自動走行システムは、
図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両に適用することができる。
【0014】
この自動走行システムは、
図1及び
図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能な液晶パネル4等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
【0015】
図1に示すように、トラクタ1は、その後部に3点リンク機構5を介して、作業装置の一例であるロータリ耕耘装置6が昇降可能かつローリング可能に連結されることにより、ロータリ耕耘仕様に構成されている。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置6に代えて、プラウ、播種装置、散布装置、等の作業装置を連結することができる。
【0016】
図1に示すように、トラクタ1には、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪7、駆動可能な左右の後輪8、搭乗式の運転部を形成するキャビン9、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)10が備えられている。また、トラクタ1には、
図2に示すように、エンジン10からの動力を変速する電子制御式の変速装置11、左右の前輪7を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構12、左右の後輪8を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構13、ロータリ耕耘装置6への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構14、ロータリ耕耘装置6を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構15、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット16、トラクタ1の車速を検出する車速センサ17、前輪7の操舵角を検出する舵角センサ18、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット19等が備えられている。
【0017】
なお、エンジン10には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置11には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、または、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構12には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構12等を採用してもよい。
【0018】
図1に示すように、キャビン9の内部には、パワーステアリング機構12を介した左右の前輪7の手動操舵を可能にするステアリングホイール20、及び、ユーザ用の座席21が備えられている。また、図示は省略するが、変速装置11の手動操作を可能にする変速レバー、左右のサイドブレーキの人為操作を可能にする左右のブレーキペダル、及び、ロータリ耕耘装置6の手動昇降操作を可能にする昇降レバー等が備えられている。
【0019】
図2に示すように、車載電子制御ユニット16は、変速装置11の作動を制御する変速制御部16a、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部16b、ロータリ耕耘装置6の作動を制御する作業装置制御部16c、予め設定された自動走行用の目標走行経路P(例えば、
図5参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部16d、及び、自動走行時に左右の前輪7の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構12に出力する操舵角設定部16e、等を有している。
【0020】
図1及び
図2に示すように、測位ユニット19には、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23、等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局24が設置されている。
【0021】
トラクタ1と基準局24とのそれぞれには、GPS衛星25から送信された電波を受信するGPSアンテナ26,27、及び、トラクタ1と基準局24との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール28,29、等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側のGPSアンテナ26がGPS衛星25からの電波を受信して得た測位データと、基地局側のGPSアンテナ27がGPS衛星25からの電波を受信して得た測位データとに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット19は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0022】
図2に示すように、携帯通信端末3には、液晶パネル4等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット30、及び、トラクタ側の通信モジュール28との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール31、等が備えられている。端末電子制御ユニット30は、トラクタ1を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路P(例えば、
図5参照)を設定する走行経路設定部32、及び、ユーザが入力した各種の入力データや走行経路設定部32が設定した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部33、等を有している。
【0023】
走行経路設定部32は、走行領域S内に目標走行経路P(例えば、
図5参照)を設定しており、目標走行経路Pの設定の仕方について後述する。走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pは、液晶パネル4に表示可能であり、車体データ及び圃場データ等と関連付けた経路データとして端末記憶部33に記憶されている。経路データには、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標エンジン回転数や目標車速、等が含まれている。
【0024】
このようにして、走行経路設定部32が目標走行経路Pを設定すると、端末電子制御ユニット30が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路データを転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット16が、経路データを取得することができる。車載電子制御ユニット16は、取得した経路データに基づいて、測位ユニット19にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
【0025】
経路データの転送に関しては、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、経路データの全体を端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に一挙に転送することができる。また、例えば、目標走行経路Pを含む経路データを、データ量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階においては、経路データの初期経路部分のみが端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に転送され、自動走行の開始後は、トラクタ1がデータ量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路データが端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に転送するようにしてもよい。
【0026】
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザがスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが液晶パネル4を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット16が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット19にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0027】
自動走行制御には、変速装置11の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構13の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪7を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置6の作動を自動制御する作業用自動制御、等が含まれている。
【0028】
自動変速制御においては、変速制御部16aが、目標車速を含む目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力と車速センサ17の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標車速がトラクタ1の車速として得られるように変速装置11の作動を自動制御する。
【0029】
自動制動制御においては、制動制御部16bが、目標走行経路Pと測位ユニット19の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路データに含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪8を適正に制動するようにブレーキ操作機構13の作動を自動制御する。
【0030】
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部16eが、目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力とに基づいて左右の前輪7の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構12に出力する。パワーステアリング機構12が、目標操舵角と舵角センサ18の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪7の操舵角として得られるように左右の前輪7を自動操舵する。
【0031】
作業用自動制御においては、作業装置制御部16cが、目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P3(例えば、
図5参照)の始端等の作業開始地点に達するのに伴ってロータリ耕耘装置6による耕耘が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P3(例えば、
図5参照)の終端等の作業終了地点に達するのに伴ってロータリ耕耘装置6による耕耘が停止されるように、クラッチ操作機構14及び昇降駆動機構15の作動を自動制御する。
【0032】
このようにして、トラクタ1においては、変速装置11、パワーステアリング機構12、ブレーキ操作機構13、クラッチ操作機構14、昇降駆動機構15、車載電子制御ユニット16、車速センサ17、舵角センサ18、測位ユニット19、及び、通信モジュール28、等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0033】
この実施形態では、キャビン9にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン9にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン9にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット16による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン9にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット16による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
【0034】
キャビン9にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット16にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転操作に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることもできる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることもできる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、座席21の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の液晶パネル4に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット16による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール20を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0035】
以下、走行経路設定部32による目標走行経路Pの設定について説明する。
走行経路設定部32が目標走行経路Pを設定するに当たり、携帯通信端末3の液晶パネル4に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、ユーザが作業車両や作業装置の種類や機種等の車体データを入力しており、入力された車体データが端末記憶部33に記憶されている。目標走行経路Pの設定対象となる走行領域Sを圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット30は、圃場の形状や位置を含む圃場データを取得して端末記憶部33に記憶している。
【0036】
圃場データの取得について説明すると、ユーザ等が運転操作してトラクタ1を実際に走行させることで、端末電子制御ユニット30は、測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット30は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置を含む圃場データを取得している。
【0037】
図3に示すように、例えば、トラクタ1が圃場の外周部を周回走行するように、ユーザ等がトラクタ1を運転操作して、圃場の角部に相当する地点等にトラクタ1を位置させる。これにより、端末電子制御ユニット30は、圃場の角部に相当する地点等を特定地点Cとし、測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置から特定地点Cの位置情報を取得して、複数の特定地点Cのそれぞれを直線等にて結ぶことで、圃場の形状を特定し、その特定した圃場を走行領域Sとして設定している。圃場の位置については、例えば、圃場の出入口等にトラクタ1を位置させたときに、端末電子制御ユニット30が、測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置から圃場の位置を特定している。
【0038】
特定された圃場の形状や位置等を含む圃場データが端末記憶部33に記憶されると、走行経路設定部32は、端末記憶部33に記憶されている圃場データや車体データを用いて、目標走行経路Pを設定する。目標走行経路Pを設定するために、
図2に示すように、端末電子制御ユニット30は、走行領域S内にトラクタ1が所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行うための作業領域Rを設定する作業領域設定部34、初期経路P1を生成する初期経路生成部32a、複数の作業経路P3を生成する作業経路生成部32b、複数の連結経路P4を生成する連結経路生成部32c、及び、走行領域S内でトラクタ1を走行させたときの走行軌跡を取得する走行軌跡取得部37、等を有している。初期経路生成部32a、作業経路生成部32b、及び、連結経路生成部32cは、走行経路設定部32に含まれている。
【0039】
以下、目標走行経路Pの設定におけるフローチャートを示す
図9を参照しながら説明する。
圃場データや車体データ等を取得した上で、まず、作業領域設定部34が作業領域Rを設定している(
図9において、ステップ#1)。作業領域設定部34にて設定する作業領域R(
図4及び
図5中、点線で示す領域)は、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行う領域となっている。作業領域設定部34は、例えば、車体データに含まれる旋回半径やトラクタ1の前後幅及び左右幅等から、トラクタ1を旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペースや、トラクタ1が走行領域S外に飛び出す等の障害がないように確保すべき安全用のスペース等を求めている。作業領域設定部34は、
図4に示すように、走行領域Sの外周部の内側に求めたスペース分を確保する状態で、走行領域Sの内側に作業領域Rを設定している。
【0040】
作業領域設定部34にて作業領域Rを設定した上で、ユーザ等が運転操作して走行領域S内でトラクタ1を実際に走行させることによって、
図4に示すように、初期経路生成部32aが初期経路P1を生成する(
図9において、ステップ#2、ステップ#3)。ユーザ等が地点Aから地点Bまでトラクタ1を走行させると、走行軌跡取得部37が測位ユニット19の出力に基づいて地点Aから地点Bまでの走行軌跡を取得するので、初期経路生成部32aは、その走行軌跡に相当する経路を初期経路P1として生成する。初期経路P1の走行方向は、ユーザ等がトラクタ1を走行させたときの走行方向と同一となるようにしており、地点Aから地点Bに向かう方向を走行方向としている。
図4に示すものでは、地点Aから地点Bまでの走行軌跡として直線状の走行軌跡を取得した場合を例示している。
【0041】
ここで、走行軌跡取得部37が走行軌跡を取得するに当たり、例えば、地点Aにて走行軌跡の始端を設定し、地点Bにて走行軌跡の終端を設定することができる。この場合には、走行軌跡取得部37が、トラクタ1が地点Aに位置するときに測位ユニット19の出力から取得する位置情報と、トラクタ1が地点Bに位置するときに測位ユニット19の出力から取得する位置情報とを結ぶことで、地点Aから地点Bまでの直線状の走行軌跡を取得することができる。また、地点Aから地点Bまでトラクタ1の走行中における各走行位置を測位ユニット19の出力から連続的に取得し、その連続的な走行位置からトラクタ1が実際に走行した走行軌跡を取得することもできる。そこで、ユーザ等が液晶パネル4等を操作することで、走行軌跡の始端と終端とを設定して走行軌跡を取得する場合と、各走行位置を連続的に取得して走行軌跡を取得する場合とに切替可能としている。
【0042】
初期経路生成部32aが初期経路P1を生成すると、
図5に示すように、作業経路生成部32bが、初期経路P1を作業領域R内で延長させて延長経路P2を生成する(
図9において、ステップ#4)。これにより、延長経路P2は、初期経路P1を含むものとなる。延長経路P2を生成すると、作業経路生成部32bは、延長経路P2に対してその延設方向X1(延長経路P2が延びる方向)に直交する並設方向X2に平行状態で並ぶ複数の作業経路P3を生成する(
図9において、ステップ#5)。作業経路生成部32bは、延長経路P2の延設方向X1に直交する方向を並設方向X2とし、まず、並設方向X2において車体データに含まれる作業幅等に対応する距離だけ延長経路P2から離れた位置に、延長経路P2に対して平行な作業経路P3を生成する。次に、作業経路生成部32bは、並設方向X2において車体データに含まれる作業幅等に対応する距離だけ生成済みの作業経路P3から離れた位置に、生成済みの作業経路P3に対して平行な作業経路P3を生成しており、生成済みの作業経路P3に対して平行な作業経路P3を生成する動作を繰り返し行っている。これにより、作業経路生成部32bは、並設方向X2で隣接する延長経路P2及び作業経路P3の間や作業経路P3同士の間の距離を一定距離とし、作業領域Rの全体に亘って平行状態で並ぶように複数の作業経路P3を生成している。
【0043】
作業経路生成部32bが複数の作業経路P3を生成すると、
図5に示すように、連結経路生成部32cが、延長経路P2及び複数の作業経路P3のうち、並設方向X2に隣接する経路を作業領域Rの一端側又は他端側にて連結する複数の連結経路P4を生成する(
図9において、ステップ#6)。連結経路生成部32cは、並設方向X2に隣接する延長経路P2又は作業経路P3の終端と次の作業経路P3の始端とを連結する連結経路P4を、走行領域S内で作業領域Rの外側に生成している。
【0044】
初期経路P1を含む延長経路P2、複数の作業経路P3、及び、複数の連結経路P4が生成されると、初期経路P1、延長経路P2及び複数の作業経路P3のうち、作業領域R外に位置する経路がなければ、走行経路設定部32は、初期経路P1を含む延長経路P2、複数の作業経路P3、及び、複数の連結経路P4を含む目標走行経路Pを設定している(
図9において、ステップ#7のNoの場合、ステップ#9)。延長経路P2及び複数の作業経路P3は、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業を行うための経路であり、
図5に示すものでは、トラクタ1を前進させる直線状の経路が例示されている。連結経路P4は、トラクタ1の走行方向を転換させるための経路であり、延長経路P2又は作業経路P3の終端と次の作業経路P3の始端とを連結している。
図5に示すものでは、連結経路P4が、トラクタ1の走行方向を180度転換させるために、トラクタ1を旋回走行させるUターン経路が例示されている。このようにして、並設方向X2で隣接する延長経路P2と作業経路P3及び作業経路P3同士は、走行方向がお互いに反対側となるように生成されており、トラクタ1が、延長経路P2及び複数の作業経路P3を往復走行しながら、所定の作業を行う目標走行経路Pが設定されている。
【0045】
図5に示すものでは、初期経路P1及び延長経路P2を直線状の経路とした場合を例示しているが、初期経路P1及び延長経路P2の形状については、例えば、円弧状や直線状の経路途中部分から湾曲する形状等の各種の形状を適用することができる。つまり、初期経路P1及び延長経路P2の形状は、ユーザ等がトラクタ1を走行させたときの走行軌跡に応じた形状となる。作業経路生成部32bは、初期経路P1及び延長経路P2の形状に応じた作業経路P3を生成するので、初期経路P1及び延長経路P2だけでなく、作業経路P3も、ユーザ等がトラクタ1を走行させたときの走行軌跡に応じた形状となる。よって、
図5に示す目標走行経路Pはあくまで一例であり、ユーザ等がトラクタ1をどのように走行させるかによって、目標走行経路Pの形状が変更されることになる。
【0046】
このようにして、ユーザ等がトラクタ1を走行させると、そのときのトラクタ1の走行軌跡の位置や角度に応じた目標走行経路Pを設定することができる。よって、ユーザ等は、走行領域S内において、所定の作業を行いたい箇所をトラクタ1にて走行するだけで、ユーザ等の要望に応じた目標走行経路Pを設定することができる。
【0047】
トラクタ1を走行させるに当たり、ユーザ等は走行領域S内のどこを走行させるかを自由に決めることができるので、例えば、
図6に示すように、トラクタ1を走行させたときの走行軌跡に基づく初期経路P1が作業領域R(
図6中、点線で示す領域)外に位置することがある。このような場合に、初期経路P1を目標走行経路Pに含めると、作業領域R外でトラクタ1が所定の作業を行うことになり、好ましくない。そこで、
図2に示すように、端末電子制御ユニット30は、初期経路P1、延長経路P2及び複数の作業経路P3のうち、作業領域R外に位置する経路を、目標走行経路Pから除外する経路除外部35を有している。
【0048】
経路除外部35は、延長経路P2及び複数の作業経路P3のうち、作業領域R外に位置する経路があれば、その経路を目標走行経路Pから除外しており、走行経路設定部32は、延長経路P2及び複数の作業経路P3のうち、作業領域R外に位置する経路を除外する状態で、目標走行経路Pを設定している(
図9において、ステップ#7のYesの場合、ステップ#8、ステップ#9)。
【0049】
経路除外部35は、作業領域R外に位置する経路(初期経路P1、延長経路P2及び作業経路P3)を目標走行経路Pから除外するので、目標走行経路Pには、作業領域R外に位置する経路が含まれておらず、作業領域R内に位置する経路のみが目標走行経路Pに含まれることになる。よって、トラクタ1が所定の作業を行うのは、作業領域R内に限られることになり、作業領域R外でトラクタ1が所定の作業を行うことを防止することができる。
【0050】
経路除外部35にて経路を目標走行経路Pから除外する例について説明を加える。
図6は、初期経路P1が作業領域R外に位置する場合を例示している。この場合には、経路除外部35が、初期経路P1を目標走行経路Pから除外している。これにより、
図6に示すものでは、走行経路設定部32が、初期経路P1を除き、複数の作業経路P3、及び、複数の連結経路P4を含めて目標走行経路Pを設定している。
【0051】
また、
図7では、初期経路P1の一部だけが作業領域R外に位置する場合を例示している。この場合には、経路除外部35が、作業領域R内に位置する初期経路P1の一部分の長さが所定長さ以下であると、初期経路P1を目標走行経路Pから除外している。このように、一部分が作業領域R外に位置する経路がある場合には、経路除外部35が、作業領域R内に位置する一部分の長さが所定長さ以下であると、その経路を目標走行経路Pから除外している。よって、
図7に示すものでは、走行経路設定部32が、初期経路P1を除き、複数の作業経路P3、及び、複数の連結経路P4を含めて目標走行経路Pを設定している。ここで、所定長さは、例えば、ロータリ耕耘装置6を下降させて耕耘等の作業を開始するための必要距離と、ロータリ耕耘装置6を上昇させて耕耘等の作業を終了するための必要距離とを加えた距離以上に設定することができ、トラクタ1が所定の作業を有効に行うために必要となる最小距離に相当するものとなる。
【0052】
図5に示すものでは、作業経路生成部32bにて作業経路P3を生成するだけでなく、連結経路生成部32cにて連結経路P4を生成しているが、例えば、
図8に示すように、連結経路生成部32cにて連結経路P4を生成することなく、走行経路設定部32が目標走行経路Pを設定することもできる。
【0053】
図8に示すものでは、連結経路P4を生成しないので、旋回走行用のスペースが不必要となる。そこで、作業領域設定部34は、旋回走行用のスペースも考慮した作業領域Rよりも外側に広がる作業領域R1を設定している。これにより、初期経路生成部32aは、作業領域R1内に延長経路P2を生成し、作業経路生成部32bも、作業領域R1内に複数の作業経路P3を生成している。よって、走行経路設定部32は、延長経路P2、及び、複数の作業経路P3を含む目標走行経路Pを設定している。
【0054】
図8に示すように、目標走行経路Pを設定した場合には、例えば、キャビン9にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させて、所定の作業を行うことができる。上述の如く、車載電子制御ユニット16にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転操作に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切替可能である。そこで、自動走行状態に切り替えて延長経路P2や作業経路P3に沿ってトラクタ1を自動走行させている途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えると、ユーザ等の運転操作に基づいてトラクタ1の走行が可能となる。よって、走行領域Sの端部付近にトラクタ1が到達すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えて、ユーザ等の運転操作によりトラクタ1を旋回走行させることができる。トラクタ1を旋回走行させることで、トラクタ1が次の作業経路P3に接近するので、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることで、次の作業経路P3に沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。このように、手動走行状態に切り替えてユーザ等の運転操作により旋回走行を行いながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。
【0055】
目標走行経路Pとして、連結経路P4を生成するか否かはユーザ等により選択可能となっている。ユーザ等が液晶パネル4等を操作することで、
図5等に示す連結経路P4を生成する状態と
図8に示す連結経路P4を生成しない状態とに切り替えることができる。
【0056】
以上の如く、走行経路設定部32にて目標走行経路Pを設定するが、作業条件やその他の条件が変更される等によって、ユーザ等が走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pを変更したい場合もある。そこで、この実施形態における自動走行システムでは、ユーザ等の要望に応じて、走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pを変更可能としている。
【0057】
以下、走行経路設定部32が
図10に示す目標走行経路Pを設定している状態において、目標走行経路Pを変更する場合について説明する。ちなみに、
図10に示すものでは、矩形状の走行領域Sに対して矩形状の作業領域Rが設定されており、複数の作業経路P3及び複数の連結経路P4を含めて目標走行経路Pが設定されている。また、上述の延長経路P2は、作業経路P3と同様の経路であるので、作業経路P3として設定されているものとする。
【0058】
図2に示すように、端末電子制御ユニット30は、複数の作業経路P3の一部を基準経路P5として選択可能な基準経路選択部36と、走行領域S内でトラクタ1を走行させたときの走行軌跡Fを取得する走行軌跡取得部37と、基準経路P5が走行軌跡Fに合致するように目標走行経路Pを変更する走行経路変更部38と、走行領域S内でのトラクタ1の停止位置を取得する走行停止位置取得部39と、走行経路変更部38にて変更された変更後の目標走行経路Tを調整する走行経路調整部40とを有している。
【0059】
以下、目標走行経路Pの変更におけるフローチャートを示す
図18を参照しながら説明する。
走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pを変更する場合も、走行経路設定部32にて目標走行経路Pを設定する場合と同様に、ユーザ等が運転操作して走行領域S内でトラクタ1を実際に走行させることによって(
図18において、ステップ#11)、走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pを変更している。
【0060】
図11に示すように、ユーザ等が地点Dから地点Eまでトラクタ1を走行させると、走行軌跡取得部37が地点Dから地点Eまでの走行軌跡F(
図11中、点線にて示す)を取得する。このとき、携帯通信端末3の液晶パネル4には、目標走行経路Pが表示されており、目標走行経路Pに含まれる複数の作業経路P3のうち、1つの作業経路P3をユーザ等が選択可能となっている。基準経路選択部36は、ユーザ等により1つの作業経路P3が選択されると、その選択された作業経路P3を基準経路P5として選択している(
図18において、ステップ#12)。ちなみに、基準経路P5は、他の作業経路P3と識別可能とするために、他の作業経路P3の色とは異なる所定の色(例えば、赤色)等で表示される。
図11及び
図12に示すものでは、基準経路選択部36が、一番左側に位置する作業経路P3を基準経路P5として選択している状態を例示している。
【0061】
ユーザ等の運転操作にてトラクタ1を走行させることで、走行軌跡取得部37が地点Dから地点Eまでの走行軌跡Fを取得し、基準経路選択部36にて基準経路P5が選択されると、走行経路変更部38は、基準経路P5が走行軌跡Fに合致するように目標走行経路Pを移動させることで、目標走行経路Pを変更している(
図18において、ステップ#13)。ちなみに、
図18において、トラクタ1の走行と基準経路P5の選択との順序については、先に基準経路P5を選択し、その後にトラクタ1を走行させることもできる。
【0062】
トラクタ1を走行させる際に、トラクタ1の走行距離をどのような距離とするかはユーザ等の判断に委ねられているので、その走行距離は適宜変更されるが、トラクタ1の走行距離と基準経路P5の長さとが同一となる場合もある。そこで、
図11では、仮に、走行軌跡取得部37にて取得した走行軌跡Fの長さと基準経路P5の長さとが同一となった場合を示している。この場合には、
図12に示すように、走行経路変更部38が、基準経路P5が走行軌跡Fに一致するように基準経路P5及び複数の作業経路P3の長さを維持して目標走行経路P(
図12中点線で示す)を平行移動させて、変更後の目標走行経路T(
図12中実線で示す)を取得している。よって、走行経路変更部38は、変更前の目標走行経路Pに代えて、変更後の目標走行経路T(
図12中実線で示す)を設定している。
【0063】
また、走行軌跡取得部37にて取得した走行軌跡Fの長さと基準経路P5の長さとが異なる場合に、走行経路変更部38が、目標走行経路Pをどのように変更させるかについては、
図13や
図14等を用いて後述する。
【0064】
図11及び
図12に示すものでは、走行軌跡Fの位置と基準経路P5の位置とが、作業経路P3の延設方向X1で同一位置であり且つ作業経路P3の並設方向X2で異なっている。これにより、走行経路変更部38は、基準経路P5が走行軌跡Fに一致するように基準経路P5及び複数の作業経路P3の長さを維持して、目標走行経路P(
図12中点線で示す)を作業経路P3の並設方向X2に平行移動するだけで、変更後の目標走行経路T(
図12中実線で示す)を取得することができる。
【0065】
図示は省略するが、走行軌跡Fの位置と基準経路P5の位置とが、作業経路P3の並設方向X2だけでなく、作業経路P3の延設方向X1も異なっていることもある。この場合には、走行経路変更部38が、目標走行経路Pを、作業経路P3の並設方向X2だけでなく、基準経路P5の延設方向X1にも平行移動させることで、基準経路P5が走行軌跡Fに一致する変更後の目標走行経路Tを取得することができる。
【0066】
また、走行軌跡Fにおける走行方向と基準経路P5における走行方向とがずれていることもある。この場合には、走行経路変更部38が、例えば、基準経路P5における走行方向が走行軌跡Fにおける走行方向に一致するように、基準経路P5及び複数の作業経路P3を始端又は終端等を中心として回転移動させた上で、目標走行経路Pを平行移動させることで、基準経路P5が走行軌跡Fに一致する変更後の目標走行経路Tを取得することができる。
【0067】
このようにして、ユーザ等がトラクタ1を走行させると、そのときのトラクタ1の走行軌跡の位置や角度に応じた目標走行経路Tに変更することができる。よって、ユーザ等は、走行領域S内において、所定の作業を行いたい箇所をトラクタ1にて走行するだけで、ユーザ等の要望に応じた目標走行経路Tに変更することができる。
【0068】
ユーザ等がトラクタ1を走行させる場合に、その走行位置が走行領域Sの外周部から所定距離の範囲内にあると、安全用のスペースが確保できない可能性がある。そこで、トラクタ1の走行位置が走行領域Sの外周部から所定距離の範囲内にあることを液晶パネル4等に表示させて、ユーザ等に報知している。
【0069】
走行経路変更部38による目標走行経路Pの変更の仕方については各種の方法があるので、以下、
図13~
図16に基づいて、その方法について説明する。
図13~
図16では、どのように目標走行経路が変更されているかを表すために、変更前の目標走行経路Pと変更後の目標走行経路Tを主に示しており、走行経路変更部38による変更前の目標走行経路Pを左側に示し、走行経路変更部38による変更後の目標走行経路Tを右側に示している。また、
図13~
図16では、走行軌跡Fを太い点線にて示しており、変更前の目標走行経路P及び変更後の目標走行経路Tを細い点線にて示している。
【0070】
例えば、ユーザ等がトラクタ1を走行させる際に、その走行距離が短いと、
図13に示すように、走行軌跡取得部37にて取得した走行軌跡Fの長さが基準経路P5の長さよりも短くなる場合がある。この場合でも、走行軌跡取得部37にて取得した走行軌跡Fの長さと基準経路P5の長さとが同一である場合と同様に、走行経路変更部38が、基準経路P5が走行軌跡Fに一致するように基準経路P5及び複数の作業経路P3の長さを維持して目標走行経路Pを平行移動させる。この変更により、走行経路変更部38は、基準経路P5が走行軌跡Fに一致する変更後の目標走行経路Tを取得することができる。よって、ユーザ等がトラクタ1を走行させる際に、基準経路P5と同じ距離だけトラクタ1を走行させる必要がなく、目標走行経路Tを変更させる作業の簡素化を図ることができる。
【0071】
ユーザ等が所定の作業を行う経路の長さを基準経路P5や作業経路P3よりも短くしたい場合がある。このような場合には、ユーザ等がトラクタ1を走行させる走行距離を短くすることで、
図14に示すように、走行軌跡取得部37にて取得した走行軌跡Fの長さが基準経路P5の長さよりも短くなる。このとき、走行経路変更部38が、基準経路P5の始終端G,Hが走行軌跡Fの始終端D,Eに一致するように基準経路P5及び複数の作業経路P3の長さを短縮して目標走行経路Pを平行移動させることができる。この変更により、走行経路変更部38は、走行軌跡Fの長さに合わせて基準経路P5及び作業経路P3を短くした変更後の目標走行経路Tを取得することができ、ユーザ等の要望に応じた長さの作業経路P3を有する目標走行経路Tに変更することができる。
【0072】
図11及び
図12に示すものでは、直線状の作業経路P3を有する目標走行経路Tに変更した場合を例示しているが、
図15に示すように、ユーザ等が直線状ではない作業経路P3を有する目標走行経路Tに変更したい場合がある。この場合には、ユーザ等が所定の作業を行いたい形状の経路に沿ってトラクタ1を走行することで、走行軌跡取得部37にて取得した走行軌跡Fの形状と基準経路P5の形状とが異なることになる。このとき、走行経路変更部38は、基準経路P5の形状及び複数の作業経路P3の形状が走行軌跡Fの形状に一致するように形状変更を行う状態で基準経路P5が走行軌跡Fに一致するように目標走行経路Pを移動させる。走行経路変更部38は、走行軌跡Fの形状に合わせて基準経路P5及び作業経路P3の形状を変更した変更後の目標走行経路Tを取得することができ、ユーザ等の要望に応じた形状の作業経路P3を有する目標走行経路Tに変更することができる。ちなみに、
図15に示す走行軌跡Fを走行軌跡取得部37が取得する場合には、走行軌跡取得部37が、地点Dから地点Eまでトラクタ1の走行中における各走行位置を測位ユニット19の出力から連続的に取得し、その連続的な走行位置からトラクタ1が実際に走行した走行軌跡Fを取得している。
【0073】
図15に示すものでは、ユーザ等がトラクタ1を、右斜め前方に走行させ後、左斜め前方に走行させ、再度、右斜め前方に走行させるように蛇行させた場合を例示している。例えば、ユーザ等が右斜め前方又は左斜め前方等に湾曲するカーブ状にトラクタ1を走行させることもでき、ユーザ等がどのようにトラクタ1を走行させるかは自由に選択することができる。このように、ユーザ等が所定の作業を行いたい経路の形状が基準経路P5の形状と異なる場合でも、所定の作業を行いたい経路の形状に合わせてトラクタ1を走行させることで、そのときの走行軌跡Fの形状に合わせて目標走行経路Tに変更することができる。
【0074】
図11及び
図12に示すものでは、走行経路変更部38が、走行軌跡取得部37にて取得した走行軌跡Fを用いて、目標走行経路Pを変更しているが、
図16に示すように、トラクタ1の停止位置Jを用いて、目標走行経路Pを変更することもできる。そのために、
図2に示すように、端末電子制御ユニット30は、走行領域S内でのトラクタ1の停止位置Jを取得する走行停止位置取得部39を有している。走行経路変更部38は、基準経路P5の終端Hが走行停止位置取得部39にて取得した停止位置Jに合致するように、目標走行経路Pを移動させる。
図16に示すものでは、走行経路変更部38が、基準経路P5の終端Hが停止位置Jに合致するように、目標走行経路Pを延設方向X1及び並設方向X2に平行移動させることで、変更後の目標走行経路Tを取得している。これにより、ユーザ等は、所定の作業を終了させたい箇所にトラクタ1を停止させるだけで、走行経路変更部38は、その停止位置Jに基準経路P5の終端Hを合わせた変更後の目標走行経路Tを取得することができる。
【0075】
図16に示すものでは、走行経路変更部38は、基準経路P5の終端Hが停止位置Jに合致するように、目標走行経路Pを移動させているが、走行経路変更部38は、基準経路P5の始端が停止位置Jに合致するように、目標走行経路Pを移動させることもできる。停止位置Jに対して、基準経路P5の終端Hを合致させるか、又は、基準経路P5の始端を合致させるかは、液晶パネル4等を操作することで、ユーザ等により選択可能となっている。
【0076】
このように、走行経路変更部38は、
図12~
図16に示すように、各種の方法によって、走行経路設定部32にて設定された目標走行経路Pを目標走行経路Tに変更可能としている。そこで、走行経路変更部38がどの方法によって目標走行経路Pを変更させるかは、液晶パネル4等を操作することで、ユーザ等により選択可能となっている。
【0077】
上述の如く、走行経路変更部38は、各種の方法によって、変更後の目標走行経路Tに変更可能としているが、
図17に示すように、変更後の目標走行経路Tの一部が走行領域S外に位置している場合があるので、変更後の目標走行経路Tの一部が走行領域S外に位置するか否かの判別を行っている。変更後の目標走行経路Tの一部が走行領域S外に位置しなければ、走行経路設定部32は、目標走行経路Pを変更後の目標走行経路Tに変更設定している(
図18において、ステップ#14のNoの場合、ステップ#16)。また、変更後の目標走行経路Tの一部が走行領域S外に位置すると、変更後の目標走行経路Tの調整を行い、走行経路設定部32は、目標走行経路Pを、調整した変更後の目標走行経路Tに変更設定している(
図18において、ステップ#14のYesの場合、ステップ#15、ステップ#16)。
【0078】
変更後の目標走行経路Tの調整を行うために、
図2に示すように、端末電子制御ユニット30は、走行経路変更部38により目標走行経路Pが変更された場合に、変更後の目標走行経路Tのうち、走行領域S外に位置する経路を削除し、その削除した経路を、変更後の目標走行経路Tに対して走行領域S内で追加する走行経路調整部40を有している。
【0079】
図17の左側に示すように、変更後の目標走行経路Tの一部が走行領域S外に位置している場合に、
図17の右側に示すように、走行経路調整部40は、走行領域S外に位置する経路を特定し、その特定した経路を削除用経路(図中、一点鎖線にて囲む経路)として削除している。
図17の左側に示すものでは、一番左側に位置する作業経路P3とその作業経路P3に連結された1つの連結経路P4が削除用経路となっている。走行経路調整部40は、削除用経路を削除するだけでなく、
図17の右側に示すように、走行領域S内の並設方向X2において削除用経路を削除した側と反対側に、変更後の目標走行経路Tに連続する状態で削除用経路(図中、一点鎖線にて囲む経路)を追加している。
図17の右側に示すものでは、変更後の目標走行経路Tにおける一番右側に位置する作業経路P3に連結する連結経路P4とその連結経路P4にて連結される作業経路P3とを追加している。
【0080】
このように、走行経路調整部40は、走行領域S外に位置する経路を削除することで、トラクタ1が走行領域S外を走行することを防止することができる。しかも、変更後の目標走行経路Tの一部が走行領域S外に位置している場合には、走行領域Sにおいて経路が走行領域S外に位置する側に変更後の目標走行経路Tが偏って位置しており、走行領域Sにおいて経路が走行領域S外に位置する側とは反対側に目標走行経路Tが生成されていないスペースが生じている。そこで、走行経路調整部40は、走行領域Sにおいて経路が走行領域S外に位置する側とは反対側に、削除した経路を追加することで、走行領域Sの全体に亘って目標走行経路Tを生成することができる。よって、走行経路変更部38にて変更後の目標走行経路Tに変更した場合でも、走行領域Sの全体に亘って目標走行経路Tを設定することができる。
【0081】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0082】
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン10と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン10に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪8に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪8が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【0083】
(2)上記実施形態では、走行経路設定部32が、初期経路生成部32a、作業経路生成部32b、及び、連結経路生成部32cを有しているが、これら初期経路生成部32a、作業経路生成部32b、及び、連結経路生成部32cを省略することもできる。この場合には、例えば、走行経路設定部32が、端末記憶部33に記憶されている車体データ及び圃場データを用いて、走行領域内に複数の作業経路及び複数の連結経路を自動的に生成して設定することができる。そして、走行経路変更部38が走行経路設定部32にて設定された目標走行経路を変更することで、ユーザ等の要望に応じた目標走行経路に変更することができる。
【0084】
つまり、走行経路変更部38が走行経路設定部32にて設定された目標走行経路を変更可能であれば、走行経路設定部32にて目標走行経路をどのように設定するかは適宜変更が可能であり、初期経路生成部32a、作業経路生成部32b、及び、連結経路生成部32c等を有するものに限らない。
【0085】
(3)上記実施形態では、走行経路変更部38が走行経路設定部32にて設定された目標走行経路を変更可能としているが、走行経路変更部38を省略することもできる。つまり、初期経路生成部32a、作業経路生成部32b、及び、連結経路生成部32c等を有する走行経路設定部32にて目標走行経路を設定する構成を採用すれば、走行経路変更部38にて目標走行経路を変更するための構成を備えなくてもよい。
【0086】
(4)上記実施形態では、走行経路設定部32や作業領域設定部34等を端末電子制御ユニット30に備え、本発明に係る走行経路設定装置を携帯通信端末3に備えた場合を例示しているが、走行経路設定装置をどのような機器や装置に備えるかは適宜変更が可能である。例えば、走行経路設定部32や作業領域設定部34等を車載電子制御ユニット16に備え、走行経路設定装置をトラクタ1に備えることもできる。また、走行経路設定部32や作業領域設定部34等を含む走行経路設定装置を、各種の情報を携帯通信端末3やトラクタ1と通信自在な外部の管理サーバ等に備えることもできる。
【0087】
(発明の付記)
本発明の第1特徴構成は、走行領域内に作業車両が所定の作業を行うための作業領域を設定する作業領域設定部と、
前記作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を前記走行領域内に設定する走行経路設定部とを備え、
前記走行経路設定部は、前記走行領域内での前記作業車両の走行による走行軌跡に基づく初期経路を生成する初期経路生成部と、
初期経路に基づいて、初期経路に対してその走行方向に直交する並設方向に平行状態で並ぶ複数の作業経路を生成する作業経路生成部と、
初期経路及び複数の作業経路のうち、並設方向に隣接する経路を前記作業領域の一端側又は他端側にて連結する複数の連結経路を生成する連結経路生成部とを備え、
初期経路、複数の作業経路、及び、複数の連結経路を含む目標走行経路を設定している点にある。
【0088】
本構成によれば、走行領域内において所定の作業を行いたい箇所に対して、ユーザ等の運転操作により作業車両を走行させると、初期経路生成部は、その作業車両の走行による走行軌跡に基づく初期経路を生成する。初期経路生成部が初期経路を生成すると、作業経路生成部が、初期経路に基づいて複数の作業経路を生成し、連結経路生成部が、初期経路及び複数の作業経路に基づいて複数の連結経路を生成するので、走行経路設定部は、初期経路、複数の作業経路、及び、複数の連結経路を含む目標走行経路を設定することができる。このように、ユーザ等が所定の作業を行いたい箇所に応じて初期経路を生成することで、初期経路だけでなく、複数の作業経路もユーザ等の要望に応じた経路となるので、ユーザの要望に応じた目標走行経路を設定することができる。
【0089】
本発明の第2特徴構成は、前記作業経路生成部は、初期経路を前記作業領域内で延長させて延長経路を生成し、その延長経路に対して前記並設方向に平行状態で並ぶ複数の作業経路を生成している点にある。
【0090】
本構成によれば、作業経路生成部は、初期経路を作業領域内で延長させて延長経路を生成し、その延長経路に応じた複数の作業経路を生成するので、ユーザ等が作業車両を走行させる場合に、作業領域内の一部だけ走行させる等、走行距離を短くなっても、作業領域の全体に亘る延長経路及び複数の作業経路を生成することができる。これにより、ユーザ等による作業車両を走行させる作業の簡素化を図ることができながら、作業領域の全体に亘って所定の作業を行うことができる目標走行経路を設定することができる。
【0091】
本発明の第3特徴構成は、初期経路及び複数の作業経路のうち、前記作業領域外に位置する経路を、目標走行経路から除外する経路除外部を備えている点にある。
【0092】
本構成によれば、経路除外部は、初期経路及び複数の作業経路のうち、作業領域外に位置する経路を、目標走行経路から除外するので、作業領域外に初期経路又は作業経路が存在するのを防止できる。よって、作業車両にて所定の作業を行うのは、作業領域内とすることができ、所定の作業を適切に行うことができる目標走行経路を設定することができる。
【0093】
本発明の第4特徴構成は、作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、
前記走行経路設定部は、走行方向に延び且つ走行方向に直交する並設方向に平行状態で並ぶ複数の作業経路と、複数の作業経路のうち、並設方向に隣接する作業経路の終端と始端とを連結する複数の連結経路とを含む目標走行経路を設定し、
複数の作業経路の一部を基準経路として選択する基準経路選択部を備え、
前記走行領域内で前記作業車両を走行させたときの走行軌跡を取得する走行軌跡取得部と、
基準経路が走行軌跡に合致するように、目標走行経路を変更する走行経路変更部とが備えられている点にある。
【0094】
走行経路設定部にて目標走行経路を設定している状態において、作業条件やその他の条件が変更される等によって、ユーザ等が走行経路設定部にて設定された目標走行経路を変更したい場合もある。そこで、本構成によれば、基準経路選択部、走行軌跡取得部、及び、走行経路変更部を備えることで、目標走行経路を変更している。
【0095】
目標走行経路を変更する場合には、走行領域内のユーザ等が所定の作業を行いたい箇所に対して、ユーザ等の運転操作により作業車両を走行させると、走行軌跡取得部が、そのときの走行軌跡を取得する。基準経路選択部は、走行経路設定部にて設定された目標走行経路において、複数の作業経路の一部を基準経路として選択するので、ユーザ等の選択に基づいて、基準経路選択部が基準経路を選択することができる。走行軌跡取得部が走行軌跡を取得し、基準経路選択部が基準経路を選択すると、走行経路変更部が、基準経路が走行軌跡に合致するように目標走行経路を変更する。
【0096】
走行軌跡は、走行領域内のユーザ等が所定の作業を行いたい箇所を走行したときの走行軌跡であり、走行経路変更部が、その走行軌跡に合わせて目標走行経路を変更することで、変更後の目標走行経路は、基準経路がユーザ等の要望に応じた経路となるだけでなく、他の作業経路もユーザ等の要望に応じた経路となる。よって、基準経路の変更対象となる走行軌跡を取得するだけ、目標走行経路の全体をユーザ等の要望に合わせて変更することができ、目標走行経路を変更するための構成の簡素化を図りながら、ユーザ等の要望に応じた目標走行経路に変更することができる。
【0097】
本発明の第5特徴構成は、前記走行軌跡取得部にて取得した走行軌跡の長さが基準経路よりも短い場合には、前記走行経路変更部が、基準経路の始終端が走行軌跡の始終端に一致するように基準経路及び複数の並設経路の長さを短縮して目標走行経路を移動させる点にある。
【0098】
走行軌跡取得部にて取得した走行軌跡の長さが、ユーザ等が所定の作業を行いたい経路の長さと考えられる。そこで、本構成によれば、走行軌跡の長さが基準経路よりも短い場合には、走行経路変更部が、基準線の始終端が走行軌跡の始終端に一致するように基準経路及び複数の並設経路の長さを短縮して目標走行経路を移動させている。これにより、ユーザ等が所定の作業を行いたい経路の長さに合わせて目標走行経路を変更することができるので、ユーザ等の要望に的確に応えることができる。
【0099】
本発明の第6特徴構成は、前記走行軌跡取得部にて取得した走行軌跡の形状と基準経路の形状とが異なる場合には、前記走行経路変更部が、基準経路の形状及び複数の作業経路の形状が走行軌跡の形状に一致するように形状変更を行う状態で基準経路が走行軌跡に一致するように目標走行経路を移動させる点にある。
【0100】
例えば、走行経路設定部にて設定された目標走行経路における作業経路の形状と、ユーザ等が所定の作業を行いたい経路の形状とが異なることで、走行軌跡の形状と基準経路の形状とが異なる場合がある。このような場合でも、走行経路変更部が、基準経路の形状及び複数の作業経路の形状が走行軌跡の形状に一致するように形状変更を行う状態で基準経路が走行軌跡に一致するように目標走行経路を移動させる。これにより、ユーザ等が所定の作業を行いたい経路の形状に合わせて、基準経路、及び、他の作業経路を形状変更しながら、目標走行経路を変更することができるので、ユーザ等の要望に的確に応えることができる。
【0101】
本発明の第7特徴構成は、作業車両を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路を走行領域内に設定する走行経路設定部を備え、
前記走行経路設定部は、走行方向に延び且つ走行方向に直交する並設方向に平行状態で並ぶ複数の作業経路と、複数の作業経路のうち、並設方向に隣接する作業経路の終端と始端とを連結する複数の連結経路とを含む目標走行経路を設定し、
複数の作業経路の一部を基準経路として選択する基準経路選択部を備え、
前記走行領域内での前記作業車両の停止位置を取得する走行停止位置取得部と、
基準経路の始端又は終端が停止位置に合致するように、目標走行経路を変更する走行経路変更部とが備えられている点にある。
【0102】
本構成によれば、走行領域内のユーザ等が所定の作業を開始又は終了したい箇所に対して、ユーザ等が作業車両を走行停止させると、走行停止位置取得部が、そのときの作業車両の停止位置を取得する。基準経路選択部は、走行経路設定部にて設定された目標走行経路において、複数の作業経路の一部を基準経路として選択するので、ユーザ等の選択に基づいて、基準経路選択部が基準経路を選択することができる。走行停止位置取得部が停止位置を取得し、基準経路選択部が基準経路を選択すると、走行経路変更部が、基準経路の始端又は終端が停止位置に合致するように目標走行経路を変更する。
【0103】
作業車両の停止位置は、走行領域内のユーザ等が所定の作業を開始又は終了したい箇所であり、走行経路変更部が、その停止位置に合わせて目標走行経路を変更することで、変更後の目標走行経路は、ユーザ等の要望に応じた始端又は終端を有する経路となる。よって、走行経路設定部にて目標走行経路を設定している状態においても、ユーザ等が所定の作業を開始又は終了したい箇所に作業車両を走行停止させるだけで、ユーザ等の要望に応じた目標走行経路に変更することができる。
【0104】
本発明の第8特徴構成は、前記走行経路変更部により目標走行経路が変更された場合に、変更後の目標走行経路のうち、前記走行領域外に位置する経路を削除し、その削除した経路を、変更後の目標走行経路に対して前記走行領域内で追加する走行経路調整部が備えられている点にある。
【0105】
ユーザ等が所定の作業を行いたい箇所等に対して、作業車両を走行させることで、走行経路変更部にて目標走行経路を変更している。そのため、走行経路変更部による目標走行経路の変更の仕方によっては、変更後の目標走行経路のうち、走行領域外に位置する経路が存在する場合がある。そこで、本構成によれば、走行経路調整部を備えることで、走行経路調整部が、変更後の目標走行経路のうち、走行領域外に位置する経路を削除するので、作業車両が走行領域外を走行するのを防止することができる。しかも、走行経路調整部は、走行領域外に位置する経路を削除するだけでなく、その経路を変更後の目標走行経路に対して走行領域内で追加しているので、走行領域の全体に亘って目標走行経路を設定することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 トラクタ(作業車両)
32 走行経路設定部
32a 初期経路生成部
32b 作業経路生成部
32c 連結経路生成部
34 作業領域設定部
35 経路除外部
36 基準経路選択部
37 走行軌跡取得部
38 走行経路変更部
39 走行停止位置取得部
40 走行経路調整部