(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】モニタリング装置、モニタリング方法、モニタリングプログラム、および契約管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20220823BHJP
G06Q 10/06 20120101ALI20220823BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/06 326
(21)【出願番号】P 2021160768
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2021-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592048110
【氏名又は名称】損害保険ジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】321009443
【氏名又は名称】株式会社エコノミクスデザイン
(73)【特許権者】
【識別番号】321009753
【氏名又は名称】株式会社WAND
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】金崎 寛
(72)【発明者】
【氏名】坂井 豊貴
(72)【発明者】
【氏名】岡本 実哲
(72)【発明者】
【氏名】大竹 康弘
(72)【発明者】
【氏名】丹下 靖英
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/153791(WO,A1)
【文献】特開2021-128756(JP,A)
【文献】特開2021-096726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0282295(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0181894(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0148229(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0224927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/06-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する生育情報取得部と、
前記生産者から、前記先物契約を履行できない旨の情報を受信した場合に、他の生産者の前記農作物の生産に関する情報を格納しているデータベースを参照し、前記先物契約の代替案を選択もしくは購入条件として登録し、前記購入者の端末に送信する代替案送信部と、を備えることを特徴とするモニタリング装置。
【請求項2】
前記特定部は、取得した前記契約情報に基づいて、前記計測装置による計測日時を特定し、
前記生育情報取得部は、前記計測地および前記計測日時において前記計測装置が計測した前記生育状況を取得することを特徴とする請求項1に記載のモニタリング装置。
【請求項3】
前記生育情報取得部が取得した前記生育状況の計測結果に応じて、前記先物契約の不履行リスクの判定を行う判定部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモニタリング装置。
【請求項4】
前記判定部による判定結果を、前記生産者の端末に送信する結果送信部を備えることを特徴とする請求項3に記載のモニタリング装置。
【請求項5】
前記代替案送信部は、前記代替案の支払い料金が前記先物契約の支払い料金よりも高くなる場合には、前記先物契約の支払い料金の支払いについての情報を前記購入者の端末および運営事業者端末に送信することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモニタリング装置。
【請求項6】
前記計測装置は、上空から前記農作物を撮影する撮影装置であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のモニタリング装置。
【請求項7】
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、
取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定し、
特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得し、
前記生産者から、前記先物契約を履行できない旨の情報を受信した場合に、他の生産者の前記農作物の生産に関する情報を格納しているデータベースを参照し、前記先物契約の代替案を選択もしくは購入条件として登録し、前記購入者の端末に送信する、処理をコンピュータが実行することを特徴とするモニタリング方法。
【請求項8】
コンピュータに、
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得する処理と、
取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定する処理と、
特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する処理と、
前記生産者から、前記先物契約を履行できない旨の情報を受信した場合に、他の生産者の前記農作物の生産に関する情報を格納しているデータベースを参照し、前記先物契約の代替案を選択もしくは購入条件として登録し、前記購入者の端末に送信する処理と、を実行させることを特徴とするモニタリングプログラム。
【請求項9】
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置と、
前記計測装置が計測した前記生育状況を取得する生育情報取得部と、
前記生産者から、前記先物契約を履行できない旨の情報を受信した場合に、他の生産者の前記農作物の生産に関する情報を格納しているデータベースを参照し、前記先物契約の代替案を選択もしくは購入条件として登録し、前記購入者の端末に送信する代替案送信部と、を備えることを特徴とする契約管理システム。
【請求項10】
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する生育情報取得部と、を備え、
前記計測装置は、上空から前記農作物を撮影する撮影装置であることを特徴とするモニタリング装置。
【請求項11】
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、
取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定し、
特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する、処理をコンピュータが実行し、
前記計測装置は、上空から前記農作物を撮影する撮影装置であることを特徴とするモニタリング方法。
【請求項12】
コンピュータに、
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得する処理と、
取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定する処理と、
特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する処理と、を実行させ、
前記計測装置は、上空から前記農作物を撮影する撮影装置であることを特徴とするモニタリングプログラム。
【請求項13】
農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に関連付けられている計測地に基づいて、前記農作物の計測地を特定する特定部と、
前記特定部が特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置と、
前記計測装置が計測した前記生育状況を取得する生育情報取得部と、を備え、
前記計測装置は、上空から前記農作物を撮影する撮影装置であることを特徴とする契約管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタリング装置、モニタリング方法、モニタリングプログラム、および契約管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
販売者と購入者との間の契約の不履行について管理する技術が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-109256号公報
【文献】特開2001-256354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商品を農作物とする先物契約においては、契約の不履行が気象条件などに依存する。しかしながら、先物契約の不履行の可能性について、客観的に判定することが困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、先物契約の不履行の可能性を客観的に判定することができるモニタリング装置、モニタリング方法、モニタリングプログラム、および契約管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るモニタリング装置は、農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に基づいて、前記農作物の計測地を特定する特定部と、前記特定部が特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する生育情報取得部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記モニタリング装置において、前記特定部は、取得した前記契約情報に基づいて、前記計測装置による計測日時を特定し、前記生育情報取得部は、前記計測地および前記計測日時において前記計測装置が計測した前記生育状況を取得してもよい。
【0008】
上記モニタリング装置において、前記生育情報取得部が取得した前記生育状況の計測結果に応じて、前記先物契約の不履行リスクの判定を行う判定部を備えていてもよい。
【0009】
上記モニタリング装置において、前記判定部による判定結果を、前記生産者の端末に送信する結果送信部を備えていてもよい。
【0010】
上記モニタリング装置において、前記生産者から、前記先物契約を履行できない旨の情報を受信した場合に、他の生産者の前記農作物の生産に関する情報を格納しているデータベースを参照し、前記先物契約の代替案を選択もしくは購入条件として登録し、前記購入者の端末に送信する代替案送信部を備えていてもよい。
【0011】
上記モニタリング装置において、前記代替案送信部は、前記代替案の支払い料金が前記先物契約の支払い料金よりも高くなる場合には、前記先物契約の支払い料金の支払いについての情報を前記購入者の端末および運営事業者端末に送信してもよい。
【0012】
上記モニタリング装置において、前記計測装置は、上空から前記農作物を撮影する撮影装置であってもよい。
【0013】
本発明に係るモニタリング方法は、農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に基づいて、前記農作物の計測地を特定し、特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する、処理をコンピュータが実行することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るモニタリングプログラムは、コンピュータに、農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得する処理と、取得した前記契約情報に基づいて、前記農作物の計測地を特定する処理と、特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する処理と、を実行させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る契約管理システムは、農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に基づいて、前記農作物の計測地を特定する特定部と、前記特定部が特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置と、前記計測装置が計測した前記生育状況を取得する生育情報取得部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、先物契約の履行の可能性を客観的に判定することができるモニタリング装置、モニタリング方法、モニタリングプログラム、および契約管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る契約管理システムのブロック図である。
【
図2】(a)~(c)は計測装置による計測について説明するための図である。
【
図3】(a)はモニタリング装置、購入者端末、および生産者端末のブロック図であり、(b)はモニタリング装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図4】契約情報格納部が記憶している契約情報データベースを例示する図である。
【
図5】販売条件格納部が記憶している販売条件データベースを例示する図である。
【
図7】契約管理システムの動作の一例を表すシーケンス図である。
【
図8】モニタリング装置の動作の詳細を表すフローチャートを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係る契約管理システム100のブロック図である。
図1で例示するように、契約管理システム100は、モニタリング装置10が、インターネットなどの電気通信回線50を介して、1以上の購入者端末20、1以上の生産者端末30、1以上の計測装置40、および運営事業者端末60と接続された構成を有する。購入者端末20は、電気通信回線50を介して、モニタリング装置10との間で情報を送受信する。生産者端末30は、電気通信回線50を介して、モニタリング装置10との間で情報を送受信する。計測装置40は、電気通信回線50を介して、モニタリング装置10との間で情報を送受信する。購入者端末20および生産者端末30は、デスクトップPC、ノートPCなどの端末であってもよく、スマートフォンなどの携帯端末であってもよい。モニタリング装置10は、サーバなどである。電気通信回線50は、有線と無線とが混在した構成を有していてもよい。
【0020】
図2(a)~
図2(c)は、計測装置40による計測について説明するための図である。計測装置40は、所定の計測地における農作物の生育状況を計測する装置である。計測装置40は、例えば、農作物の栽培地(畑や水田)を上空から撮像する装置である。計測装置40として、衛星画像を取得する地球観測衛星、上空からの画像を取得する無人航空機(ドローン)、上空からの画像を取得する有人航空機などを用いることができる。
【0021】
図2(a)~
図2(c)で例示するように、農作物の栽培地に、緯度範囲および経度範囲が定められた複数の計測地A~Fが定められている。
図2(a)は、農作物の生育状況が所定の段階にある場合の栽培地の様子を例示する図である。
図2(b)は、
図2(a)よりも農作物が育った(生育状況が進んだ)場合の栽培地の様子を例示する図である。
図2(c)は、
図2(b)よりも農作物がさらに育った(生育状況が進んだ)場合の栽培地の様子を例示する図である。
【0022】
図2(a)~
図2(c)で例示するように、農作物の生育状況が進むにつれて、栽培地の様子に変化が現れる。例えば、農作物が育って大きくなると、栽培地に占める農作物の面積が大きくなり、茶色や黒色の土の面積よりも、緑色の農作物の面積が徐々に大きくなる。または、農作物が育って色が変化すると、栽培地の色が徐々に変化する。したがって、計測装置40から栽培地のカラー画像を取得することによって、当該栽培地における農作物の生育状況を把握することができる。生育状況を把握することができれば、収穫に適した農作物を納入日に納入できるか否かを予測することができるようになる。例えば、納入予定日の1週間前、2週間前などについての過去の基準画像を予め蓄積しておき、当該基準画像と、指定された計測地の画像とを比較することで、当該指定された計測地の農作物を納入日に納入できるか否かを判定することができるようになる。
【0023】
図3(a)は、モニタリング装置10、購入者端末20、および生産者端末30のブロック図である。
図3(a)で例示するように、モニタリング装置10は、契約情報格納部11、販売条件格納部12、変更履歴格納部13、特定部14、生育状況取得部15、判定部16、結果送信部17、および代替案送信部18を備える。購入者端末20は、入力装置21、表示装置22などを備えている。生産者端末30は、入力装置31、表示装置32などを備えている。入力装置21,31は、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。表示装置32は、液晶ディスプレイなどである。
【0024】
図3(b)は、モニタリング装置10のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図3(b)で例示するように、モニタリング装置10は、CPU101、RAM102、記憶装置103、通信装置104、入力機器105などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。記憶装置103に記憶されているモニタリングプログラムをCPU101が実行することによって、モニタリング装置10の各部の機能が実現される。なお、モニタリング装置10の各部の機能は、それぞれ専用の回路等によって構成されていてもよい。通信装置104は、電気通信回線50に対するインタフェースである。入力機器105は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置である。
【0025】
図4は、契約情報格納部11が記憶している契約情報データベースを例示する図である。
図4で例示するように、契約情報データベースには、契約IDに関連付けて、生産者ID、購入者ID、計測地、計測日時、(a)品目大分類、(b)品目小分類、(c)産地、(d)納入日、(e)出荷先、(f)単位重量当たりの単価、(g)納入量、などの契約情報が関連付けられている。この契約情報は、先物契約に係る情報である。したがって、納入日は、先の(将来の)日付を表している。なお、ここでの先物契約とは、先物取引に係る契約であって、口頭での約束、契約書類に印鑑を押印もしくはサインした場合の契約、契約情報をPDFなど電子ファイル化した場合の契約(印鑑、サインの有無を問わない)、契約対象の販売者の販売者端末20と、当該契約対象の購入者の購入者端末30とに、契約が完了した旨の通知を行なう場合の契約、などを含む。通知には入札された販売条件を記載する場合、入札された販売条件が記載されたウェブページへのリンクが記載される場合がある。計測地は、契約された農作物が栽培されている栽培地のことである。計測日時は、当該計測地に対して指定された計測日時である。
【0026】
図5は、販売条件格納部12が記憶している販売条件データベースを例示する図である。
図5で例示するように、販売条件データベースには、販売条件IDに関連付けて、生産者ID、(a)品目大分類、(b)品目小分類、(c)産地、(d)納入日、(e)出荷先、(f)単位重量当たりの単価、(g)納入量、(h)栽培予定地などの販売条件が関連付けられている。販売条件は、各生産者が自身の生産者端末30の入力装置31を用いて入力した情報である。生産者IDは、生産者がログインする際に入力したIDなどであり、または各生産者端末30に割り振られているIDなどであってもよい。(h)栽培予定地は生産者IDを発行する際に予め登録された情報であってもよい。 各各生産者が販売条件を入力することによって、販売条件データベースには各販売条件が蓄積されることになる。
【0027】
(a)品目大分類は、商品の種類などであり、商品をおおまかに分類するための項目である。(a)品目大分類は、例えば、作目のことである。作目の例としては、例えば、イチゴ、リンゴ、ホウレン草、レタスなどが挙げられる。(b)品目小分類は、商品をさらに詳細に分類するための項目である。(b)品目小分類は、例えば、各商品のブランド名や品種名のことである。ブランド名の例としては、例えば、イチゴのあまおう(登録商標)などが挙げられる。(c)産地は、商品が栽培されている場所のことであり、例えば、各県、各市などのことである。(d)納入日は、商品の希望納入日のことである。(d)納入日は、1日単位の日付であってもよく、数日分単位の期間を有していてもよい。(e)出荷先は、商品が出荷される場所のことであり、例えば、各県、各市などのことであり、購入者の指定する倉庫などの特定の場所であってもよい。
【0028】
特定部14は、契約情報格納部11が記憶している契約情報データベースから、所定の先物契約の契約IDについての契約情報を取得する。次に、特定部14は、契約情報データベースから取得した契約情報から、当該契約情報の計測地および計測日時を特定する。
【0029】
次に、生育状況取得部15は、特定部14が特定した計測地および計測日時の農作物の生育状況を、計測装置40から取得する。例えば、生育状況取得部15は、特定部14が特定した計測地および計測日時の画像を計測装置40から取得する。計測日時は、納入日よりも前の日付が指定されている。例えば、計測日時として、納入日の3日前、1週間前、2週間前などの日付が指定されている。納入日と計測日時との差分は、各農作物で共通としてもよく、農作物の種類ごとに個別に定めてあってもよい。
【0030】
次に、判定部16は、生育状況取得部15が取得した生育状況に応じて、当該先物契約の契約不履行リスクの判定を行なう。例えば、判定部16は、当該先物契約に係る農作物が、納入日に適切な生育状況で納入できない可能性を数値化する。例えば、判定部16は、当該可能性を1%~100%の数値に変換する。例えば、指定された計測日時の画像における、栽培地(土の部分と農作物の部分の合計)に占める農作物の面積の比率が適切範囲に入っていれば当該数値を低くし、適切範囲から外れていれば当該数値を高くする。または、指定された計測日時の画像における農作物の色が適切範囲に入っていれば当該数値を低くし、適切範囲から外れていれば当該数値を高くする。または、過去の同計測地の基準画像との類似度が高いほど当該数値を低くし、基準画像との類似度が低いほど当該数値を高くする。
【0031】
結果送信部17は、判定部16の判定結果(数値化された不履行リスク)を当該先物契約の契約情報に含まれる生産者IDの生産者端末30に送信する。例えば、結果送信部17は、電子メールなどを用いて、判定結果を生産者端末30に送信する。
【0032】
結果送信部17が送信した判定結果は、生産者端末30の表示装置32に表示される。生産者は、表示装置32に表示された判定結果に基づいて、契約した先物契約を履行できるか否かを判断する。生産者は、先物契約を履行できると判断した場合には、入力装置31などを用いて、先物契約を履行できる旨の情報をモニタリング装置10に送信する。生産者は、先物契約を履行できないと判断した場合には、入力装置31などを用いて、先物契約を履行できない旨の情報をモニタリング装置10に送信する。この場合、生産者は、全納入量の契約を履行できない旨の情報を送信してもよく、一部の納入量を指定して契約を履行できない旨の情報を送信してもよい。
【0033】
変更履歴格納部13は、生産者端末30から受信した情報を、変更履歴データベースに格納する。
図6は、変更履歴データベースを例示する図である。
図6で例示するように、変更履歴データベースは、契約IDに関連付けて、不履行納入量および販売条件IDが格納される。変更履歴格納部13は、まずは生産者端末30から受信した情報から契約IDおよび不履行納入量を特定し、変更履歴データベースに格納する。
【0034】
代替案送信部18は、変更履歴格納部13が記憶している変更履歴データベースを参照し、契約IDに係る不履行納入量を特定する。次に、代替案送信部18は、販売条件格納部12が格納する販売条件データベースを参照し、先物契約の代替案を選択する。代替案は、1つであってもよく、複数であってもよい。代替案送信部18は、選択した代替案を購入者端末20に送信する。この場合において、代替案送信部18は、支払い料金を再計算して購入者端末20に送信する。代替案の支払い料金が先物契約の支払い料金よりも高くなる場合には、代替案送信部18は、当初案と代替案の差額を差し引いて当該先物契約の支払い料金の支払いについての情報を購入者端末20、当初案と代替案の差額を運営事業者端末60に送信する。したがって、購入者は、先物契約の支払い料金で、代替案に係る農作物の入荷を受け入れることができる。
【0035】
例えば、当初の先物契約の納入量が、100円/kgの単価で100kgであったものとし、生育不良により80kgに変更になったものとする。一方、代替案によって、120円/kgの単価で20kgの納入量が他の生産者から納入されたとする。この場合の差額の20円/kg×20kgについては、購入者の負担となるのではなく、他者(例えば、契約管理システム100の運営事業者など)が負担となる。
【0036】
変更履歴格納部13は、購入者端末20からいずれかの代替案について受諾の旨の情報を受信した場合に、変更履歴データベースに、上記契約IDに関連付けて、受諾された代替案の販売条件IDを格納する。それにより、契約処理を行なう契約処理サーバなどが、契約IDに係る購入者と、当該販売条件IDに係る生産者との間の契約処理を行なう。契約処理を行なう契約処理サーバなどの機能は、モニタリング装置100が備えていてもよい。
【0037】
ここで、代替案の選択手法の例について説明する。例えば、代替案送信部18は、販売条件格納部12が記憶している販売条件データベースを参照し、生産者によって入力された販売条件と一致するか、もしくは類似する販売条件を代替案として選択し、優先順位を付した一覧表を作成する。代替案送信部18は、販売条件データベースに格納されている全ての販売条件を抽出し、優先順位を付してもよい。また、代替案送信部18は、変更履歴格納部13が記憶している変更履歴データベースを参照し契約IDに係る不履行納入量を特定し、不履行納入量以外の契約条件を契約情報格納部11が記憶している契約情報データベースの契約情報を契約IDから紐付けた上で、購入条件としてウェブページに公開もしくは生産者端末30に通知してもよい。以下、販売条件の一覧表の作成工程1~3について詳細に説明する。
【0038】
先物契約に係るiを契約IDとし、契約情報x(i)を、(a(i),b(i),c(i),d(i))と定義する。a(i)は、契約情報iの品目大分類であり、一例として、イチゴ(生食用)などである。b(i)は、契約情報iの品目小分類b(i)であり、一例として、あまおう(登録商標)などである。c(i)は、契約情報iの産地であり、一例として、福岡県などである。d(i)は、契約情報iの納入時期であり、一例として2021年8月3日である。
【0039】
契約情報x(i)が入力されると、販売条件格納部12が記憶している販売条件データベース内の各販売条件p(j)=(a(j),b(j),c(j),d(j))に順位が付けられる。「j」は、販売条件IDに相当する。
【0040】
(作成工程1)
まず、代替案送信部18は、a(i)=a(j)であるp(j)の集合を特定する。すなわち、品目大分類が「イチゴ(生食用)」であるグループGが特定される。
【0041】
(作成工程2)
代替案送信部18は、一つの週を「月曜日から日曜日までの7日間」と定義する。なお、納入時期d(i)は、8月3日から8月5日のような区間であり得るが、異なる週にはまたがらない。つまり、代替案送信部18は、どの納入時期d(i)についても、属する週をただ一つに定める。代替案送信部18は、d(i)が属する週を、w(d(i))と表す。このw(d(i))は、サービス開始日から数えてd(i)日目は第w(d(i))週目に属することを意味する。
【0042】
代替案送信部18は、二つの納入時期d(i)とd(j)との距離を、「属する週の差」によって定める。具体的には、代替案送信部18は、距離dist(d(i),d(j))を、|w(d(i))-w(d(j))|として算出する。例えば、d(i)=8月3日がサービス開始のw(d(i))=10週目に属し、またd(j)=8月17日がサービス開始のw(d(j))=12週目に属するとすれば、距離dist(d(i),d(j))=|10-12|=2である。
【0043】
(作成工程3)
代替案送信部18は、グループGを複数のグループ(一例として、17グループ)に分け、各グループ内で価格と輸送費について購入者にとって有利な順に順位を付ける。例えば、代替案送信部18は、x(i)=(a(i),b(i),c(i),d(i))=(イチゴ(生食用),あまおう(登録商標),福岡県,2021年8月3日)に対するp(j)のグループ分けとして、以下のグループとする。
第1グループG1:あまおう(登録商標),同じ週、福岡県
第2グループG2:あまおう(登録商標),同じ週、非福岡県
第3グループG3:あまおう(登録商標),1週違う、福岡県
第4グループG4:あまおう(登録商標),1週違う、非福岡県
第5グループG5:あまおう(登録商標),2週違う、福岡県
第6グループG6:あまおう(登録商標),2週違う、非福岡県
第7グループG7:あまおう(登録商標),3週違う、福岡県
第8グループG8:あまおう(登録商標),3週違う、非福岡県
第9グループG9:イチゴ(生食用),同じ週、福岡県
第10グループG10:イチゴ(生食用),同じ週、非福岡県
第11グループG11:イチゴ(生食用),1週違う、福岡県
第12グループG12:イチゴ(生食用),1週違う、非福岡県
第13グループG13:イチゴ(生食用),2週違う、福岡県
第14グループG14:イチゴ(生食用),2週違う、非福岡県
第15グループG15:イチゴ(生食用),3週違う、福岡県
第16グループG16:イチゴ(生食用),3週違う、福岡県
第17グループG17:4週以上違う
【0044】
グループ番号の小さい上位グループの方が、p(j)の順位が高くなる。また、それぞれのグループGm内では、価格や輸送費について購入者にとって有利な順に(x(j),p(j))が順位付けられる。
【0045】
代替案の一覧表の作成工程は、上記に限られない。例えば、契約情報x(i)=(a(i),b(i),c(i),d(i))のa(i)、b(i)、c(i)、およびd(i)を数値化し、各販売条件p(j)=(a(j),b(j),c(j),d(j))のa(j)、b(j)、c(j)、およびd(j)を数値化し、契約情報x(i)と各販売条件p(j)との間の距離を算出し、当該距離の短い順に各販売条件を並び替えてもよい。
【0046】
次に、各部間での情報のやりとりについて説明する。
図7は、契約管理システム100の動作の一例を表すシーケンス図である。
図7で例示するように、特定部14は、契約情報格納部11が記憶している契約情報データベースから、特定の契約IDの契約情報を取得する。生育状況取得部15は、特定部14が特定した計測地および計測日時の農作物の生育状況を、計測装置40から取得し、判定部16に渡す。判定部16は、計測装置40から取得した生育状況に応じて行なった契約不履行リスクの判定結果を、当該契約情報に含まれる生産者IDの生産者端末30に送信する。変更履歴格納部13は、生産者端末30から契約不履行の情報を受信した場合に、変更履歴データベースに不履行納入量および販売条件IDを格納する。代替案送信部18は、販売条件格納部12が記憶する販売条件データベースの販売条件と、変更履歴格納部13が記憶するデータベースの不履行納入量とを参照し、先物契約の代替案を選択もしくは購入条件として登録し、購入者端末20に送信する。変更履歴格納部13は、購入者端末20からいずれかの代替案について受諾の旨の情報を受信した場合に、受諾された代替案の販売条件IDを変更履歴データベースに格納する。
【0047】
図8は、モニタリング装置10の動作の詳細を表すフローチャートを例示する図である。
図8で例示するように、特定部14は、契約情報格納部11が記憶している契約情報データベースから、特定の契約IDの契約情報を取得する(ステップS1)。例えば、特定部14は、契約情報格納部11が記憶している契約情報データベースから、未取得の契約IDを取得する。
【0048】
次に、特定部14は、契約情報データベースから取得した契約情報から、当該契約情報の計測地および計測日時を特定する(ステップS2)。
【0049】
次に、生育状況取得部15は、特定部14が特定した計測地および計測日時の農作物の生育状況を、計測装置40から取得する(ステップS3)。
【0050】
次に、判定部16は、計測装置40から取得した生育状況に応じて、当該先物契約の契約不履行リスクの判定を行なう(ステップS4)。
【0051】
結果送信部17は、判定部16の判定結果を当該契約情報に含まれる生産者IDの生産者端末30に送信する(ステップS5)。
【0052】
次に、変更履歴格納部13は、ステップS5で判定結果を送信した生産者端末30から先物契約を履行できる旨の情報を受信したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6で「Yes」と判定された場合、フローチャートの実行が終了する。
【0053】
ステップS6で「No」と判定された場合、変更履歴格納部13は、先物契約を履行できない旨の情報を受信したか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7で「No」と判定された場合、ステップS6から再度実行される。ステップS6およびステップS7の繰り返しによって、生産者端末30からの先物契約の履行・不履行に係る情報を受信するまで待機することができる。
【0054】
ステップS7で「Yes」と判定された場合、変更履歴格納部13は、生産者端末30から受信した情報から契約IDおよび不履行納入量を特定し、変更履歴データベースに格納する(ステップS8)。
【0055】
次に、代替案送信部18は、変更履歴格納部13が記憶している変更履歴データベースおよび販売条件格納部12が記憶している販売条件データベースを参照し、先物契約の代替案を選択し、支払い料金を再計算し、代替案と支払い料金を購入者端末20に送信する(ステップS9)。
【0056】
次に、変更履歴格納部13は、購入者端末20から、いずれかの代替案についての受諾の旨の情報を受信したか否かを判定する(ステップS10)。
【0057】
ステップS10で「Yes」と判定された場合、変更履歴格納部13は、変更履歴データベースに、上記契約IDに関連付けて、受諾された代替案の販売条件IDを格納する(ステップS11)。その後、フローチャートの実行が終了する。
【0058】
ステップS10で「No」と判定された場合、変更履歴格納部13は、購入者端末20から受諾しない旨の情報を受信したか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12で「No」と判定された場合、ステップS10から再度実行される。ステップS12で「Yes」と判定された場合、フローチャートの実行が終了する。
【0059】
本実施形態によれば、農作物の生産者と購入者との間に成立した先物契約の契約情報で指定されている計測地について、当該農作物の生育状況が計測装置40から取得される。この構成によれば、生産者の主観に基づく判断ミスが生じにくいため、生育状況を客観的に判断することができる。それにより、先物契約の不履行の可能性を客観的に判定することができる。また、生育状況の確認のための作業工数を削減することができるため、効率良く不履行の可能性を判定することができるようになる。
【0060】
計測地に加えて計測日時を指定することによって、先物契約の不履行の可能性をより客観的に判定することができるようになる。
【0061】
取得した生育状況の計測結果に応じて判定部16が先物契約の不履行リスクの可能性を判定することにより、納入日に適切な生育状況で納入できない可能性をより客観的に判定することができるようになる。
【0062】
先物契約が履行できない場合に代替案送信部18が代替案を購入者端末20に送信することにより、購入者は契約不履行を心配せずに安全に取引を行なうことができる。
【0063】
代替案の支払い料金が先物契約の支払い料金よりも高くなる場合に、先物契約の支払い料金の支払いについての情報が購入者端末20に送信されることで、購入者に経済的損失が生じない。それにより、購入者にとって安全な取引を提供することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 モニタリング装置
11 契約情報格納部
12 販売条件格納部
13 変更履歴格納部
14 特定部
15 生育状況取得部
16 判定部
17 結果送信部
18 代替案送信部
20 購入者端末
21,31 入力装置
22,32 表示装置
30 生産者端末
40 計測装置
50 電気通信回線
60 運営事業者端末
100 契約管理システム
【要約】
【課題】 先物契約の履行の可能性を客観的に判定することができるモニタリング装置、モニタリング方法、モニタリングプログラム、および契約管理システムを提供する。
【解決手段】 モニタリング装置は、農作物の生産者と前記農作物の購入者との間に成立した先物契約の契約情報を取得し、取得した前記契約情報に基づいて、前記農作物の計測地を特定する特定部と、前記特定部が特定した前記計測地における前記農作物の生育状況を計測する計測装置から、計測した前記生育状況を取得する生育情報取得部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1