(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】面取り工具
(51)【国際特許分類】
B23C 3/12 20060101AFI20220823BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20220823BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20220823BHJP
B23C 5/16 20060101ALI20220823BHJP
B23C 5/02 20060101ALI20220823BHJP
B23C 5/18 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B23C3/12 C
B23C5/10 Z
B23B27/20
B23C5/16
B23C5/02
B23C5/18
(21)【出願番号】P 2021502776
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2019071898
(87)【国際公開番号】W WO2020035551
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】102018119927.9
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503128054
【氏名又は名称】ハルトメタル-ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミダ, ペーター パウル
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイガー, マンフレート ヨーゼフ
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-187989(JP,A)
【文献】米国特許第04988241(US,A)
【文献】独国特許発明第102017206144(DE,B3)
【文献】独国特許出願公開第102008023266(DE,A1)
【文献】米国特許第05685671(US,A)
【文献】特開平06-170629(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104084648(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107538083(CN,A)
【文献】中国実用新案第204135426(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0094692(KR,A)
【文献】中国実用新案第204997121(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 3/12、16
B23C 5/02、10、16、18
B23B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース上に面取り部を生成するための面取り工具(10)であって、
-超硬合金からなり、中心軸(14)に沿って延在する工具ホルダ(12)であって、工具ホルダ(12)の周囲に分散配置される複数のスロット状の切削インサート受け部(18a-18e)を備え、該複数のスロット状の切削インサート受け部(18a-18e)の各々は、2つの対向する側方突き当て面(24、28)と、該2つの側方突き当て面(24、28)の間に配置され、側方突き当て面(24、28)に対して横方向に延在するベース突き当て面(32)とを有し、複数のスロット状の切削インサート受け部(18a-18e)の各々のベース突き当て面(32)は、各切削インサート受け部(18a-18e)のベースを形成する、工具ホルダ(12)と、
-CVD厚膜ダイヤモンドからなる複数の切削インサート(20a-20e)であって、該複数の切削インサート(20a-20e)の各々は、前記切削インサート受け部(18a-18e)の1つに
溶接又は半田付けされ、複数の切削インサート(20a-20e)の各々は、各切削インサート(20a-20e)が固定される複数の切削インサート受け部(18a-18e)の1つの2つの側方突き当て面(24、28)に
溶接又は半田付けされる2つの対向する側面(22、26)と、前記2つの側面(22、26)の間に配置され、側面(22、26)に対して横方向に延びる低面(30)とを有し、複数の切削インサート(20a-20e)の各々の前記低面(30)が、各切削インサート(20a-20e)が固定される前記複数の切削インサート受け部(18a-18e)の1つの前記ベース突き当て面(32)に突き当たるか、又は
溶接又は半田付けされる、複数の切削インサート(20a-20e)とを備え、
前記複数の切削インサート(20a-20e)の各々は、前記複数の切削インサート受け部(18a-18e)の1つから工具ホルダ(12)の中心軸(14)に平行な軸方向、及び軸方向に直交する方向の両方に突出し、
且つ工具ホルダ(12)の中心軸(14)に第1の鋭角(γ)で配向される第1の主切り刃(36)を含む、面取り工具(10)。
【請求項2】
前記複数の切削インサート(20a-20e)の各々の2つの対向する側面(22、26)は、各切削インサート(20a-20e)が固定される前記複数の切削インサート受け部(18a-18e)の1つの2つの側方突き当て面(24、28)に半田付けされ、
複数の切削インサート(20a-20e)の各々の低面(30)は、各切削インサート(20a-20e)が固定される複数の切削インサート受け部(18a-18e)の1つの前記ベース突き当て面(32)に半田付けされる、請求項1に記載の面取り工具(10)。
【請求項3】
複数の切削インサート受け部(18a-18e)の各々の前記2つの側方突き当て面(24、28)は、互いに平行に配向されている、請求項1又は2に記載の面取り工具(10)。
【請求項4】
複数の切削インサート受け部(18a-18e)の各々の前記2つの側方突き当て面(24、28)間の距離は、複数の切削インサート(20a-20e)の各々の前記2つの側面(22、26)間の距離よりも大きい、請求項1乃至3の何れかに記載の面取り工具(10)。
【請求項5】
複数の切削インサート受け部(18a-18e)の各々の2つの側方突き当て面(24、28)が、半径方向(34)に平行に、又は半径方向(34)に対して5°未満の角度(α)で配向され、半径方向は工具ホルダ(12)の中心軸(14)に直交する、請求項1乃至4の何れかに記載の面取り工具(10)。
【請求項6】
複数の切削インサート受け部(18a-18e)の各々の2つの側方突き当て面(24、28)は、工具ホルダ(12)の中心軸(14)に平行に、又は工具ホルダ(12)の中心軸(14)に対して5°未満の角度(β)で配向される、請求項1乃至5の何れかに記載の面取り工具(10)。
【請求項7】
複数の切削インサート(20a-20e)の各々は、前記工具ホルダ(12)の前端を越えて突出し、前記工具ホルダ(12)は、前端の領域にて、複数のスロット状の切削インサート受け部(18a-18e)に割り込まれる円錐状のセグメント面(50)を備える、請求項1乃至6の何れかに記載の面取り工具(10)。
【請求項8】
前記円錐状のセグメント表面(50)の開口角度の半分は、前記第1の鋭角(γ)に等しい、請求項7に記載の面取り工具(10)。
【請求項9】
前記第1の鋭角(γ)が30°-60°の大きさを有する、請求項1乃至8の何れかに記載の面取り工具(10)。
【請求項10】
複数の切削インサート(20a-20e)の各々は、前記工具ホルダ(12)の中心軸(14)に平行に、又は前記工具ホルダ(12)の中心軸(14)に対して5°未満の角度で配向された第1の二次切り刃(38)を備える、請求項1乃至9の何れかに記載の面取り工具(10)。
【請求項11】
複数の切削インサート(20a-20e)の各々は、前記工具ホルダ(12)の中心軸(14)に対して85°-90°の角度で配向される第2の二次切り刃(40)を備える、請求項
10に記載の面取り工具(10)。
【請求項12】
前記第1の二次切り刃(38)は、前記工具ホルダ(12)の中心軸(14)から前記第1の主切り刃(36)までの距離よりも、大きな距離だけ中心軸(14)から離間しており、前記第1の主切り刃(36)は、前記工具ホルダ(12)の中心軸(14)から前記第2の二次切り刃(40)までの距離よりも、大きな距離だけ中心軸(14)から離間している、請求項
11に記載の面取り工具(10)。
【請求項13】
複数の第1の主切り刃(36)の各々の第1の端部(46)は、第1の半径(42)によって複数の第1の二次切り刃(38)の1つに連結され、複数の第1の主切り刃(36)の各々の第2の端部(48)は、第2の半径(44)によって複数の第2の二次切り刃(40) の1つに連結されている、請求項12に記載の面取り工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピース上に面取り部を形成するための面取り工具に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る面取り工具で作製される面取り部は、特に、ワークピースのエッジ上の斜面と呼ばれる。しばしば、本発明に係る面取り工具で作製される面取り部は、回転対称の面取り部であり、円錐状のセグメント面の形状を有する。
【0003】
面取り部を形成するプロセスは、典型的には「面取り」と呼ばれる。典型的には、バリを除去し、傷害のリスクを低減し、及び/又はさらなる組立を簡素化するために、ワークピースに面取りが適用される。雌ねじ及び雄ねじの場合、通常、ボアに45°の面取り又は60°の面取りが用いられる。これにより、最初のねじ山が出ないように強いられ、雌ねじ及び雄ねじをワークピースに切削する切削ツールを用い易くなる。2つ目のワークピースが挿入されたワークピースも面取りされる。このような場合、面取り部は挿入補助部として機能する。-
【0004】
本発明に係る面取り工具は、特に焼結超硬合金やセラミックスからなるワークピースの加工に好適である。しかしながら、本発明による面取り工具の使用は、そのような材料で作られたワークピースの機械加工に限定されないが、それにもかかわらず、これは好ましい用途である。
【0005】
焼結超硬合金は硬度が非常に高い。焼結超硬合金は、切削材としての用途の他に、ポンチ、ハンマあるいは摩耗部品として成形技術にも多用されている。このような焼結超硬合金からなる部品の面取りは、従来、研削加工を中心に行われており、場合によっては浸食によっても行われている。また、切り刃にダイヤモンド層を被覆した固体超硬合金の面取り工具も知られている。しかしながら、ダイヤモンド被覆した切り刃を有するこのような固体超硬合金の面取り工具の耐用年数は非常に短いため、このような面取り工具の使用はコストが集約的であることが証明されている。さらに、切り刃は非常に精密に研削されなければならず、そのため、切り刃の製造が複雑になり、従ってコストも高くなる。研削による切り刃の機械加工のために、切り刃も比較的大きくなければならず、又は少なくとも工具ホルダ上の切刃のための受け部は、切り刃を研削工具にアクセス可能にするために比較的大きくなければならない。従って、比較的少ない切り刃又は切削インサートしか、より小さな工具ホルダに取り付けることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上述の問題を克服し、焼結超硬合金又はセラミックスを機械加工するのに特に適した面取り工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、以下の構成要素を含む、請求項1に記載の面取り工具によって解決される。
-超硬合金からなり、中心軸に沿って延在する工具ホルダであって、スロット状の第1の切削インサート受け部を備え、該第1の切削インサート受け部は、2つの対向する側方突き当て面と、該2つの側方突き当て面の間に配置され、側方突き当て面に対して横方向に延在するベース突き当て面とを有し、該ベース突き当て面は、スロット状の第1の切削インサート受け部のベースを形成する、工具ホルダと、
-CVD厚膜ダイヤモンドからなる第1の切削インサートであって、第1の切削インサート受け部に強固に結合されるように固定され、第1の切削インサート受け部の2つの側方突き当て面に強固に結合されるように固定される2つの対向する側面と、2つの側面の間に配置され、側面に対して横方向に延びる低面とを有し、前記低面が、前記第1の切削インサート受け部の前記ベース突き当て面に突き当たるか、又は強固に結合される、第1の切削インサートとを備え、
前記第1の切削インサートは、前記第1の切削インサート受け部から工具ホルダの中心軸に平行な軸方向、及び軸方向に直交する方向の両方に突出し、
且つ工具ホルダの中心軸に第1の鋭角(γ)で配向される第1の主切り刃を含む。
【0008】
本発明の面取り工具は、超硬合金製の工具ホルダの構成と、CVD厚膜ダイヤモンド製の第1の切削インサートの構成とにより、一方、第1の切削インサートが工具ホルダに取り付けられることを特徴とする。超硬合金製の工具ホルダの構成は、面取り工具の極めて安定した基本構造の基礎をなす。CVD厚膜ダイヤモンドで作られた第1の切削インサートの構成は、優れた摩擦特性と高い硬度を有する極めて精密な切り刃の製造を可能にする。スロット形状又は溝形状の切削インサート受け部(本明細書では「第1の切削インサート受け部」と呼ぶ)における第1の切削インサートの強固に接合された接続は、第1の切削インサートと工具ホルダとの間に極めて安定した接続を生成し、これにより非常に高いトルクを伝達することができる。
【0009】
また、第1の切削インサート受け部のスロット形状又は溝形状の構成は、工具ホルダへの第1の切削インサートの極めて省スペースな取付けを可能にする。従って、本発明による面取り工具は、原則として、複数のそのような切削インサートで構成することができ、本明細書では第1の切削インサートと呼ばれる一般に1つの切削インサートが、面取り工具の機能には十分である。
【0010】
このようにして、上述した特徴により、先行技術から公知の面取り工具に比べて極めて安定した高精度の面取り工具を実現することができ、CVD厚膜ダイヤモンド製の切削インサートのコストがいくぶん高いにもかかわらず、長寿命を可能にし、比較的安価に製造することができる。第1の切削インサート及び工具ホルダ、並びに切削インサートと工具ホルダの接続の膨大な安定性故に、本発明による面取り工具により、高硬度材料を効率的かつ低応力で機械加工することが可能である。
【0011】
ワークピースの機械加工、すなわち面取り加工は、主に、第1の切削インサートの主切り刃によって行われ、これを本明細書では第1の主切り刃と呼ぶ。この第1の主切り刃は、工具ホルダの中心軸に対して鋭角に配向され、該鋭角の大きさは、30°-60°の範囲であるのが好ましい。45°の面取り角度を有する面取り部を生成するために、主切り刃が中心軸と45°の角度を成す切削インサートが使用されるのが好ましい。面取り角度60°の面取りを作製するためには、主切り刃が中心軸と30°の角度を囲む切削インサートが好ましく使用される。面取り角度30°の面取りを作製するためには、主切り刃が中心軸と60°の角度を成す切削インサートが使用されるのが好ましい。もちろん、その間の角度も同様に可能である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、第1の切削インサートの対向する2つの側面は、第1の切削インサート受け部の2つの側方突き当て面に半田付けされる。従って、2つの側方のうちの第1の面は、2つの側方突き当て面のうちの第1の面に半田付けされ、2つの側方突き当て面のうちの第2の面は、2つの側方突き当て面のうちの第2の面に半田付けされる。同様に、第1の切削インサートの下面は、第1の切削インサート受け部のベース突き当て面に半田付けされる。
【0013】
本実施形態による第1の切削インサートは、このようにして3つの側面で工具ホルダに半田付けされる。これにより、第1の切削インサートと第1の切削インサート受け部の間に極めて安定した持続可能な接続が生まれ、高いトルクの伝達が可能になる。第1の切削インサート受け部に第1の切削インサートを半田付けすることは、切削インサートと切削インサート受け部との間の界面が、ワークピースの加工中に比較的均一な負荷を受けるという利点もある。一方、第1の切削インサートが作製されるCVD厚膜ダイヤモンドは、高い硬度を有するが、同時に比較的脆いので、第1の切削インサートがねじによって締結された場合に生じるような点荷重は、切削インサートの破壊につながる可能性がある。第1の切削インサートのこのような破壊の脅威は、第1の切削インサートを3つの側面にはんだ付けすることによって効果的に回避することができる。
【0014】
或いは、第1の切削インサートを第1の切削インサート受け部に溶接することもできる。しかしながら、第1の切削インサートを工具ホルダに半田付けすることは、より簡単であり、従って、より費用対効果が高い。
【0015】
一実施形態によれば、第1の切削インサート受け部の2つの側方突き当て面は、互いに平行に配向されるのが好ましい。
【0016】
一方で、これは、第1の切削インサート受け部への第1の切削インサートの比較的単純な挿入を可能にし、従って、第1の切削インサート受け部における第1の切削インサートの締結を単純にする。一方、これにより、工具ホルダと第1の切削インサートとの間の力伝達が最適化される。
【0017】
更なる実施形態によれば、第1の切削インサート受け部の2つの側方突き当て面の間の距離は、第1の切削インサートの2つの側面の間の距離よりも大きい。
【0018】
換言すれば、第1の切削インサート受け部は第1の切削インサートよりも幅が広くなっている。これにより、工具ホルダへの第1の切削インサートの装着が簡単になり、また、面取り工具の製造中に、切削インサートを工具ホルダに半田付けする場合に、第1の切削インサートと第1の切削インサート受け部との間の空間に半田(半田付け材料)を持ち込むことが可能になる。したがって、第1の切削インサートは第1の切削インサート受け部に圧入されず、単にその中に挿入され、続いて半田付けされるのが好ましい。これにより、工具ホルダ及び切削インサート内の内部応力が低減される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、第1の切削インサート受け部の2つの側方突き当て面は、半径方向に平行に、又は半径方向に対して5°未満の角度で配向され、半径方向は、工具ホルダの中心軸に直交する。
【0020】
2つの側方突き当て面を、5°未満の角度で横方向に(即ち、平行ではなく)配向することが、すくい角を生成するので特に好ましい。
【0021】
更なる実施形態によれば、第1の切削インサート受け部の2つの側方突き当て面は、工具ホルダの中心軸に平行に、又は工具ホルダの中心軸に対して5°未満の角度で配向される。
【0022】
ここでも、2つの側方突き当て面が、工具ホルダの中心軸に対して5°未満の角度で配向されることが、第1の主切り刃への負荷を減少させる設定角度を作り出すので、好ましい。
【0023】
さらなる実施形態によれば、第1の切削インサートは、工具ホルダの前端部を越えて突出し、工具ホルダは、前端部の領域において、第1のスロット状の切削インサート受け部に割り込まれる円錐状のセグメント面を備える。この円錐状のセグメント面の開口角度の半分は、第1の主切り刃と工具ホルダの中心軸との間で測定される第1の鋭角に等しいのが好ましい。
【0024】
従って、第1の主切り刃は、前述の円錐状のセグメント面に対して平行に延びるのが好ましい。一方で、これにより、ワークピースと工具ホルダとの間の衝突を防止する。他方で、これにより、チップ除去のために使用することができる比較的大きなチップスペースを作り出す。
【0025】
更なる実施形態によれば、第1の切削インサートは、工具ホルダの中心軸に対して平行に、又は工具ホルダの中心軸に対して5°未満の角度で配向された第1の二次切り刃を備える。
【0026】
第1の二次切り刃は、工具ホルダの中心軸に平行に配向されるのが好ましい。第1の二次切り刃は、側方の支持を提供する役割を果たすか、又は(第1の主切り刃及び第1の二次切り刃によって生成される)二重面取りを形成するために使用されることができる。第1の主切り刃及び第1の二次切り刃は、互いに鈍角(90°を超える)に配向していることが好ましい。
【0027】
更なる実施形態によれば、第1の切り刃は、工具ホルダの中心軸に対して85°-90°の角度で配向された第2の二次切り刃を含む。
【0028】
この第2の二次切り刃は、工具ホルダの半径方向(中心軸に直交する)に延びるか、又は工具ホルダに対して僅かに傾斜しているのが好ましい。第2の二次切り刃は、第1の切削インサートの端面を形成するのが好ましい。第1の切削インサートは工具ホルダを越えて軸方向に突出するので、第2の二次切り刃も面取り工具全体の前端を形成するのが好ましい。第2の二次切り刃は、第1の主切り刃と鈍角(90°を超える)を成すのが好ましい。
【0029】
第1の二次切り刃は、第1の主切り刃よりも工具ホルダの中心軸から遠い距離にあることが好ましい。一方、第1の主切り刃は、第2の二次切り刃よりも工具ホルダの中心軸から遠い距離にあることが好ましい。このように、第1の二次切り刃は、中心軸からの半径方向の距離が最も大きい第1の切削インサートの部分を形成する。
【0030】
更なる実施形態によれば、第1の主切り刃の第1の端部は、第1の半径によって第1の二次切り刃に接続される。第1の主切り刃の第1の端部の反対側の第2の端部は、第2の半径によって第2の二次切り刃に接続される。
【0031】
2つの半径は、10分の幾つかの半径であるのが好ましい。これらは、第1の切削インサートの丸い角を形成し、これにより、第1の切削インサートの角の衝突やブレイクアウトさえ防止される。
【0032】
冒頭で既に述べたように、本発明による面取り工具は、2つ以上の切削インサート、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの切削インサートを備えることもできる。従って、切削インサートは、好ましくは、全て同じ形状及びサイズを有する。これらは、対応する切削インサート受け部内に配置されており、これらの受け部は、上述の第1の切削インサート受け部と類似している。即ち、これらの受け部も、スロット形状又は溝形状の切削インサート受け部として構成されている。幾つかの切削インサート又は幾つかの切削インサート受け部の場合、切削インサート及び切削インサート受け部は、夫々工具ホルダの円周の周りに均等に分配されることが好ましい。
【0033】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述した特徴及び説明すべき特徴を、各場合に示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独で使用することができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の実施形態は、図面に示され、以下の説明においてより詳細に説明される。
【
図1】本発明の一実施形態による面取り工具の斜視図を示す。
【
図2】
図1の面取り工具の機械加工ヘッドの詳細を示す斜視図である。
【
図4】
図2の機械加工ヘッドを正面から見た図である。
【
図5】
図2の機械加工ヘッドを切削インサートを挿入せずに正面から見た図である。
【
図6】切削インサートを挿入しない
図2の機械加工ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明に係る面取り工具の一実施形態の斜視図を示す。面取り工具は、その全体が符号10で示されている。
【0036】
面取り工具10は、中心軸14に沿って延在する工具ホルダ12を備える。面取り工具10は、中心軸14に対して回転対称であるのが好ましいが、必然ではない。面取り工具10の前端の領域では、面取り工具10は、機械加工されるべきワークピースを機械加工する機械加工ヘッド16を備える。
【0037】
本明細書に示す実施形態では、工具ホルダ12は、機械加工ヘッド16の領域に5つの切削インサート受け部18a-18eを備え、これらの切削インサート受け部は、区別をより良好にするために、夫々第1、第2、第3、第4及び第5の切削インサート受け部18a-18eと呼ばれる(
図5参照)。切削インサート受け部18a-18eは夫々、本明細書では第1、第2、第3、第4及び第5の切削インサート20a-20eと呼ばれる切削インサート20a-20eを受け入れる役割を果たす。
【0038】
切削インサート受け部18a-18e及び切削インサート20a-20eは、工具ホルダ12の円周の周囲及び面取り工具10の円周の周囲に夫々均等に分配されるのが好ましい。工具ホルダ12は、超硬合金からなることが好ましい。切削インサート20a-20eは、CVD厚膜ダイヤモンドからなるのが好ましい。
【0039】
本明細書に示す実施形態においては、面取り工具10には、5つの切削インサート20a-20eが設けられているが、この点では、例えば第1の切削インサート20aのような1つの切削インサートだけでも、面取り工具10の機能に十分であることに留意されたい。同様に、面取り工具には、本発明の範囲を逸脱することなく、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の切削インサートを設けることもできる。
【0040】
幾つかの切削インサートの使用は、面取り工具10の耐用年数と同様に安定性を増加させる。しかしながら、面取り工具10の機能には1つの切削インサートのみの使用で十分であるため、切削インサート20a-20eを切削インサート受け部18a-18e内に取り付ける方法は、簡単のために、第1の切削インサート20a及び第1の切削インサート受け部18aのみを夫々参照して、以下に詳細に説明する。幾つかの切削インサート又は切削インサート受け部が使用される場合、残りの切削インサート20b-20e及び残りの切削インサート受け部18b-18eは夫々同一又は同等の形状に構成されることが好ましい。
【0041】
第1の切削インサート受け部18aは、スロット形状又は溝形状の受け部ポケットとして構成されており、この受け部ポケットは、機械加工ヘッド16の領域で工具ホルダ12に形成され、軸方向、即ち中心軸14に平行な方向、及び円周方向の両方で外側からアクセス可能である。第1の切削インサート20aは、工具ホルダ12の前端部を越えて軸方向にも、工具ホルダ12の円周を越えて円周方向にも突出するように、第1の切削インサート受け部18aに挿入される。
【0042】
第1の切削インサート20aは、第1の切削インサート受け部18aに挿入されるだけでなく、しっかりと結合された方法で第1の切削インサート受け部18aに接続される。第1の切削インサート20aは、第1の切削インサート受け部18a内の工具ホルダ12に半田付けされるのが好ましい。特に、切削インサート20aは、切削インサート受け部18aの3つの側面に半田付けされるのが好ましい。第1の切削インサート20aの第1の側面22は、第1の切削インサート受け部18aの第1の側方突き当て面24に半田付けされる。第1の切削インサート20aの対向する第2の側面26は、第1の切削インサート受け部18aの第2の側方突き当て面28に半田付けされる。第1の切削インサート20aの低面30は、第1の切削インサート受け部18aのベース突き当て面32に半田付けされる。
【0043】
第1の切削インサート20aは、上述した3つの側面22、26、30全てにおいて第1の切削インサート受け部18aに半田付けされることが好ましいが、一般に、第1の切削インサート20aを、これらの側面22、26、30のうちの1つ又は2つだけで第1の切削インサート受け部18aに半田付けすることが考えられる。しかしながら、3つの指定された側面22、26、30の全てにおいて第1の切削インサート20aを半田付けすることは、第1の切削インサート20aと工具ホルダ12との間の接続の安定性を高める。
【0044】
2つの対向する側方突き当て面24、28は、溝形又はスロット形の第1の切削インサート受け部18aの側面を形成する。それらは、互いに平行に延びるのが好ましい。2つの側方突き当て面24、28の間に延在するベース突き当て面32は、溝形状又はスロット形状の第1の切削インサート受け部18aのベース又は溝ベースを形成する。このベース突き合て面32は、2つの側方突き当て面24、28に対して横方向(即ち、平行でない)に延びている。ベース突き当て面32は、2つの側方突き当て面24、28に対して直交して配向されるのが好ましい。
【0045】
同様の条件は、第1の切削インサート20aの側面22、26及び低面30にも当てはまる。2つの側面22、26は、互いに平行に、且つ低面30に対して横方向に(即ち、平行でない)延びているのが好ましい。低面30は、2つの側面22、26に直交して配向されるのが好ましい。
【0046】
第1の切削インサート受け部18aへの第1の切削インサート20aの挿入を容易にし、且つ切削インサート20aと第1の切削インサート受け部18aの側方突き当て面24、28との間の位置に半田を導入できるようにするために、第1の切削インサート受け部18aは、第1の切削インサート20aよりも幅広であることが好ましい。従って、2つの側方突き当て面24、28が互いに有する距離は、2つの側面22、26が互いに有する距離よりも大きいことが好ましい。
【0047】
第1の切削インサート20aは、一般に、工具ホルダ12に正確に半径方向に挿入することができるが、第1の切削インサート受け部18a、従って第1の切削インサート20aも、図示の実施形態では、工具ホルダ12の半径方向に対して幾分傾斜している。第1の側方突き当て面24並びに第2の側方突き当て面28は夫々、半径方向に対して角度αを成し、これは、
図5に破線で示され、符号34が付されており、この角度は、0°-5°の範囲であるのが好ましい。第1の切削インサート20aの対応する傾斜によって、第1の切削インサート20aの主切り刃36におけるすくい角が生じる。
【0048】
更に、第1の切削インサート受け部18aの2つの側方突き当て面24、28も、工具ホルダ12の中心軸14に対して僅かに傾斜していることが好ましい。対応する傾斜角βは、第5の切削インサート受け部18eにて
図3に描かれる。傾斜角βは、第1の切削インサート20aの主切り刃36に設定角度をもたらす。傾斜角βは0°-5°の範囲の大きさを有するのが好ましい。
【0049】
第1の切削インサート20aの第1の主切り刃36は、工具ホルダ12の中心軸14に対して鋭角に延びることが好ましい。この鋭角は、
図3において角度γとして描かれている。ワークピースの面取りは、第1の切削インサート20aの主切り刃36によって行われる。これにより、主切り刃36の設定角度γは、ワークピース上に作製される面取り角度に応じて選択される。従って、望ましい面取り角度に応じて、設定角度γ(鋭角)は、通常、30°-60°の範囲で選択される。
【0050】
第1の主切り刃36に加えて、本明細書に示す実施形態における第1の切削インサート20aは、第1の二次切り刃38及び第2の二次切り刃40を備える。第1の二次切り刃38は、中心軸14に平行に延びるか、又はそれに対して例えば5°未満の角度だけわずかに傾斜しているのが好ましい。第2の二次切り刃40は、中心軸14に対して直角に延びているか、又は半径方向34に対して5°未満の角度で傾斜している。2つの二次切り刃38、40は、本質的に、機械加工されるワークピース上の機械加工ヘッド16を支持する役割を果たす。しかしながら、原理的には、二次切り刃38、40で機械加工を行うこともできる。例えば、第1の二次切り刃38及び第1の主切り刃36によって二重の面取り部をワークピース上に作製することができる。
【0051】
第1の二次切り刃38は、第1の半径42によって第1の主切り刃36の第1の端部46に接続されている。第2の二次切り刃40は、第2の半径44によって第1の主切り刃36の第2の端部48に接続されている。2つの半径42、44は、比較的小さく、10分の幾つかの範囲であるように選択されることが好ましい。
【0052】
工具ホルダ12は、機械加工ヘッド16の領域にある切削インサート20a-20eに形状が適合されている。この目的のために、工具ホルダ12は、例えば、スロット形状の切削インサート受け部18a-18eに割り込まれる円錐形のセグメント面50を備える。この円錐形のセグメント面50は、切削インサート20a-20eの主切り刃36に平行に延びているのが好ましい。換言すれば、円錐状のセグメント面50の開口角度の半分は、切削インサート20a-20eの主切り刃36の傾斜角γに等しい。
【0053】
工具ホルダ12の前端は、中心軸14と直交するように配向されることが好ましい端面の終端面52を備える(
図6参照)。工具ホルダ12の前側において、切削インサート受け部18a-18eは、円錐形のセグメント面50内に、並びに端面の終端面52内に開口している。反対側の後端では、切削インサート受け部18a-18eは、夫々後部に向かって平らになっている。
【0054】
図3及び
図6では、円周方向に延びる溝54も示される。この溝54は、位置決めデバイス、例えば位置決めリングを取り付けるために使用され、それによって、切削インサート20a-20eは、工具ホルダ12への取り付け中に互いに軸方向に整列されることができる。位置決めデバイス(ここには示されていない)は、切削インサート20a-20eが切削インサート受け部18a-18e内に固定されるとすぐに再び取り外すことができる。