(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】多管式貫流ボイラー
(51)【国際特許分類】
F23C 1/00 20060101AFI20220823BHJP
F22B 15/00 20060101ALI20220823BHJP
F22B 37/10 20060101ALI20220823BHJP
F22B 37/48 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
F23C1/00 301
F22B15/00
F22B37/10 M
F22B37/48 D
(21)【出願番号】P 2021506793
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010813
(87)【国際公開番号】W WO2020188625
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517230644
【氏名又は名称】猪野 貴行
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】猪野 忠行
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3217062(JP,U)
【文献】特開2009-109067(JP,A)
【文献】特開昭57-134615(JP,A)
【文献】特開2014-205130(JP,A)
【文献】特開2010-95410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 15/00,21/00-21/40,37/00-37/78
F23C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の各水管の両端側をそれぞれ連通し、各水管にボイラー水を供給する一方、各水管の内側に燃焼室を形成し、該燃焼室からの燃焼ガスを複数の水管の外側に供給して水管内のボイラー水を加熱蒸発させ、消費蒸気を取り出すようにした多管式貫流ボイラーにおいて、
前記燃焼室は水平方向に延設された円筒形状とし、
前記各水管は前記燃焼室の左右側にそれぞれ配置された円弧形状とし、
前記燃焼室の左側に配置された水管列に対して、上端に設けた直線状の左側上部管寄せ及び下端に設けた直線状の左側下部管寄せでそれぞれ連結し、
前記燃焼室の右側に配置された水管列に対して、上端に設けた直線状の右側上部管寄せ及び下端に設けた直線状の右側下部管寄せでそれぞれ連結するとともに、
前記燃焼室を臨む一端側に扉を形成し、前記扉の外側面に設置されて前記燃焼室に燃焼ガスを供給するバーナーを備え、
前記バーナーに対して、少なくとも使用済エンジンオイルを含む再生油を供給する再生油供給部と、副生油を廃溶剤として供給する廃溶剤供給部と、
前記再生油及び廃溶剤を前記バーナー内で噴霧させるための噴射空気をそれぞれ圧力制御部を介して調整された適正圧力で供給する噴射空気供給部と、
前記再生油及び廃溶剤を前記バーナー内で燃焼させるための燃焼空気を供給する燃焼空気供給部と、
前記再生油・廃溶剤・噴射空気・燃焼空気の供給を制御する制御部と、を備え、
前記再生油及び廃溶剤の両方を燃料に利用して稼働することを特徴とする多管式貫流ボイラー。
【請求項2】
前記水管列は、内側水管列と外側水管列とから構成され、外側水管列の各水管は、内側水管列の各水管の間に配置された請求項1に記載の多管式貫流ボイラー。
【請求項3】
左側上部管寄せ及び右側上部管寄せの前記扉側の各前面と、左側下部管寄せ及び右側下部管寄せの前記扉側の各前面に、開閉可能な孔部を形成した請求項1に記載の多管式貫流ボイラー。
【請求項4】
内側水管列及び外側水管列から構成される水管列群は、前記燃焼室の奥側に対して前記扉側が低い位置となるように配置する請求項
2に記載の多管式貫流ボイラー。
【請求項5】
前記副生油は地溝油である請求項1に記載の多管式貫流ボイラー。
【請求項6】
前記副生油は廃インクである請求項1に記載の多管式貫流ボイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の水管を加熱することで蒸気を発生させる多管式貫流ボイラーに関し、特に、再生油を燃料として使用可能とした多管式貫流ボイラーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多管式貫流ボイラーは、例えば特許文献1に開示された
図10及び
図11に示されるように、上下有底の円筒状の燃焼筒内に複数の水管が鉛直方向に配列され、環状の上部管寄せ1と下部管寄せ2の間が内側水管列3と外側水管列4の2列の各水管で連結され、隣接する内側水管列3
の水管並びに隣接する外側水管列4
の水管の間が閉塞(閉
塞用フィン8)されている。
また、内側水管列3における水管間の一部を開口(内側通煙口5)させることで、内側水管列3と外側水管列4の間に燃焼ガス通路7が形成され、下部管寄せ2から各水管にボイラー水を供給するように構成されている。
【0003】
上記構造において、燃焼筒内に設置したバーナー10に燃料を供給して燃焼させることで、燃焼室9に燃焼ガスを発生させ、その燃焼ガスを燃焼ガス通路7から複数の水管外側に供給して水管内のボイラー水を加熱蒸発させ、上部管寄せ1から消費蒸気を取り出す構造となっている。
また、燃焼ガスは、燃焼ガス通路7及び外側通煙口6を通って、温度が低下した燃焼排ガスとして煙道12から排出される。
上部管寄せ1及び下部管寄せ2の周囲部分は耐火材13で覆われ、燃焼筒全体は断熱材14で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した多管式貫流ボイラーによれば、燃焼室9が密封されて燃焼筒内の清掃などが困難な構造であるため、燃焼させる燃焼ガスが限定され、残灰が発生し易い廃油などを使用することができないという問題点があった。
また、水管内部に付着する水に含まれる不純物に対しては、洗浄のための薬品等を使用することで清掃が行われるが、十分な洗浄効果を得ることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、消費蒸気を発生させための燃焼ガスとして廃油を使用可能とするとともに、水管の清掃を容易に行うことができる多管式貫流ボイラーを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため本発明(請求項1)は、複数の各水管の両端側をそれぞれ連通し、各水管にボイラー水を供給する一方、各水管の内側に燃焼室を形成し、該燃焼室からの燃焼ガスを複数の水管の外側に供給して水管内のボイラー水を加熱蒸発させ、消費蒸気を取り出すようにした多管式貫流ボイラーにおいて、
前記燃焼室(9)は水平方向に延設された円筒形状とし、
前記各水管は前記燃焼室(9)の左右側にそれぞれ配置された円弧形状とし、
前記燃焼室(9)の左側に配置された水管列に対して、上端に設けた直線状の左側上部管寄せ(1L)及び下端に設けた直線状の左側下部管寄せ(2L)でそれぞれ連結し、
前記燃焼室(9)の右側に配置された水管列に対して、上端に設けた直線状の右側上部管寄せ(1R)及び下端に設けた直線状の右側下部管寄せ(1R)でそれぞれ連結するとともに、
前記燃焼室(9)を臨む一端側に扉(蓋体22)を形成し、前記扉の外側面に設置されて前記燃焼室(9)に燃焼ガスを供給するバーナー(10)を備え、
前記バーナー(10)に対して、少なくとも使用済エンジンオイルを含む再生油を供給する再生油供給部(100)と、副生油を廃溶剤として供給する廃溶剤供給部(200)と、
前記再生油及び廃溶剤を前記バーナー内で噴霧させるための噴射空気をそれぞれ圧力制御部(301,301)を介して調整された適正圧力で供給する噴射空気供給部(300)と、
前記再生油及び廃溶剤を前記バーナー内で燃焼させるための燃焼空気を供給する燃焼空気供給部(400)と、
前記再生油・廃溶剤・噴射空気・燃焼空気の供給を制御する制御部と、を備え、
前記再生油及び廃溶剤の両方を燃料に利用して稼働することを特徴としている。
【0008】
請求項2は、請求項1の多管式貫流ボイラーにおいて、
前記水管列は、内側水管列(3)と外側水管列(4)とから構成され、外側水管列(4)の各水管は、内側水管列(3)の各水管の間に配置されたことを特徴としている。
【0009】
請求項3は、請求項1の多管式貫流ボイラーにおいて、
左側上部管寄せ(1L)及び右側上部管寄せ(1R)の前記扉(蓋体22)側の各前面と、左側下部管寄せ(2L)及び右側下部管寄せ(2R)の前記扉(蓋体22)側の各前面に、開閉可能な孔部を形成したことを特徴としている。
【0010】
請求項4は、請求項2の多管式貫流ボイラーにおいて、
内側水管列(3)及び外側水管列(4)から構成される水管列群は、前記燃焼室(9)の奥側に対して前記扉(蓋体22)側が低い位置となるように配置することを特徴としている。
請求項5は、請求項1の多管式貫流ボイラーにおいて、前記副生油は地溝油であることを特徴としている。
請求項6は、請求項1の多管式貫流ボイラーにおいて、前記副生油は廃インクであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1によれば、燃焼室(9)は水平方向に延設された円筒形状とし、前記燃焼室(9)を臨む一端側に扉(蓋体22)を形成したことで、扉(蓋体22)の開閉動作で内部を臨ませることができ、燃焼室(9)を容易に清掃可能とすることで、廃油を燃焼燃料として使用することが可能となる。
【0012】
また、再生油及び廃溶剤を噴射部(102)及び噴射部(202)を利用し、噴射量を調整してバーナー(10)内で混合させることで、効率良く燃焼させることができる。
その結果、廃剤である再生油や廃溶剤を燃料として利用することができ、燃料費のコスト削減を図ることができる。
【0013】
請求項2によれば、外側水管列(4)の各水管を内側水管列(3)の各水管の間に配置させることで、多数の水管をコンパクトに収納することができる。
【0014】
請求項3によれば、上部管寄せ(1)及び下部管寄せ(2)に開閉可能な孔部(ネジ蓋25)を設けることで、液体を用いた各水管内の洗浄を容易に行うことができる。
【0015】
請求項4によれば、内側水管列(3)及び外側水管列(4)から構成される水管列群に角度を付けることで流体が流れ易くし、洗浄時に各水管内に液体が残るのを防止することができる。
請求項5によれば、地溝油をバーナー(10)の燃料として利用することができる。
請求項6によれば、廃インクをバーナー(10)の燃料として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多管式貫流ボイラーを示す正面説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る多管式貫流ボイラーを示す右側面説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る多管式貫流ボイラーを示す左側面説明図である。
【
図4】多管式貫流ボイラーにおけるバーナー周辺部分の構成説明図である。
【
図5】多管式貫流ボイラーの内側水管列及び外側水管列の正面説明図である。
【
図6】多管式貫流ボイラーの上部管寄せと内側水管及び外側水管との連結構造を示す一部断面説明図である。
【
図7】多管式貫流ボイラーの内側水管列及び外側水管
列を示す側面説明図である。
【
図8】多管式貫流ボイラーの本体内における燃焼ガスの流通路の一例を示す平面説明図である。
【
図9】多管式貫流ボイラーの本体内における燃焼ガスの流通路の他の例を示す平面説明図である。
【
図10】従来の多管式貫流ボイラーの概略構造を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の多管式貫流ボイラーの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1~
図3は多管式貫流ボイラーの外観を示すもので、横向きに配置された円筒状の本体20に装着されたヒンジ部21に対して、本体20の前面側を開閉する扉となる蓋体22が回動可能に装着されている。蓋体22の外側面には、バーナー10が設置され、バーナー10に燃料を供給して燃焼させることで、本体20内部の燃焼室9に燃焼ガスを発生させるようになっている。
本体20の燃焼室9に発生した燃焼ガスは、本体20の内部に設置された複数の水管を外側から加熱することで、水管内のボイラー水を加熱蒸発して蒸気(消費蒸気)を発生させるとともに、本体20の上方に設けた煙道12から燃焼排ガスとして搬出される。
【0018】
次に、本発明の特徴的な構成となるバーナー10の周辺構造について、
図4及び
図3を参照しながら説明する。
バーナー10に対しては、再生油を供給する再生油供給部100と、廃溶剤を供給する廃溶剤供給部200と、再生油及び廃溶剤をバーナー10内で噴霧させるための噴射空気を供給する噴射空気供給部300と、再生油及び廃溶剤をバーナー10内で燃焼させるための燃焼空気を供給する燃焼空気供給部400とが設けられている。
【0019】
再生油としては、使用済エンジンオイル等が利用される。再生油供給部100から供給される再生油は、1時間の蒸気発生量が2トン用の場合、25~90L/Hの流量で供給され、更に燃料制御ポンプ101を介することで供給量が調整されて噴射部102に導かれる。
【0020】
廃溶剤としては、副生油が利用され、その中には地溝油(再生食用油)、廃インク等が含まれる。副生油として利用可能な廃溶剤には、従来廃棄処分とされていた溶剤の産業廃棄物が全て含まれる。また、廃インクとは、例えば輪転機で印刷の色を変更するような場合に、輪転機に付着しているインクを洗浄する際に生じる廃棄処分となるインク等である。
廃溶剤供給部200から供給される廃溶剤は、1時間の蒸気発生量が2トン用の場合、20~50L/Hの流量で供給され、燃料制御ポンプ201を介することで更に廃溶剤の種類に応じて供給量が調整されて噴射部202に導かれる。
【0021】
噴射空気供給部300から供給される高圧空気(0.6~0.7MPa)は2系統に分岐され、それぞれ圧力制御部301で圧力が調整されて噴射部(コンプレッサー)102及び噴射部(コンプレッサー)202に導かれる。
【0022】
噴射部102では、所定供給量(本例の場合、25~90L/H)の再生油と所定圧力(2~3kgf/cm2)の空気が混合されることで、再生油が霧状に噴霧されてバーナー10内に導かれる。供給量は、再生油の種類によって調整されている。
噴射部202では、所定供給量(本例の場合、20~50L/H)の廃溶剤と所定圧力(2~3kgf/cm2)の空気が混合されることで、廃溶剤が霧状に噴霧されてバーナー10内に導かれる。供給量は、廃溶剤の種類によって調整されている。
バーナー10内では、霧状に噴射される再生油と廃溶剤と、燃焼空気供給部(ブロワー)400から流量制御部401を介して供給される燃焼空気により、再生油及び廃溶剤を本体20内に導いて燃焼させる。
【0023】
また、バーナー10には点火部500が設けられ、バーナー10内に供給された再生油と廃溶剤と燃焼空気に対してLPGガスで点火した後、燃焼が維持されるように構成されている。
【0024】
上記構成により、再生油及び廃溶剤の供給量を調整し噴射部102及び噴射部202を利用して噴霧状態で混合させることで、本体20内において効率良く燃焼させることができる。
再生油や廃溶剤をボイラー燃料として利用することができるので、燃料費のコスト削減をはかることができる。
また、再生油として利用する使用済エンジンオイルは、二酸化炭素排出量がゼロ換算(エンジンオイルとしての使用時に既に換算されている)であるので、ボイラー燃料として利用しても二酸化炭素排出量が増加するような計算がなされないので、燃料として有効利用を図ることができる。
【0025】
続いて、多管式貫流ボイラーの本体20の内部構造について、
図5~
図8を参照しながら説明する。
本体20の中央には、水平方向に延設された円筒形状の燃焼室9が形成され、燃焼室9の周囲を囲むように複数の円弧状水管が配設されている。
複数の円弧状水管の内、燃焼室9の左内側に配置された水管群を内側水管列3Lとし、各上端を直線状の左側上部管寄せ1Lで連結するとともに、各下端を直線状の左側下部管寄せ2Lで連結する。同様に、燃焼室9の右内側に配置された水管群を内側水管列3Rとし、各上端を直線状の右側上部管寄せ1Rで連結するとともに、各下端を直線状の右側下部管寄せ2Rで連結する。また、左右の内側水管列3L,3Rを構成する各水管の間を閉塞用フィン8で連結する。
また、多管式貫流ボイラーの本体20全体は断熱材14で覆われている。
【0026】
また、本体20の内部における燃焼ガスの噴射先の内側水管列3の端部付近には、厚さを有する耐火材で構成された衝突壁30が設置された燃焼室9が形成され、内側水管列3と衝突壁30との間に内側環状区画壁15を設けることで、バーナー10から噴射される燃焼ガスは、衝突壁30に衝突した後に全て逆流するように構成されている。
【0027】
内側水管列3の外側には、内側水管列3の各水管の間に配置された水管が配置され、これらの水管群で外側水管列4を構成している。外側水管列4は、左右の内側水管列3の外側にそれぞれ配置され、左右の内側水管列3と同様に、左側の水管群の各上端が左側上部管寄せ1Lに連結し、各下端が左側下部管寄せ2Lに連結し、右側の水管群の各上端が右側上部管寄せ1Rに連結し、各下端が右側下部管寄せ2Rに連結している。また、左右の外側水管列4を構成する各水管の間は、内側水管列3と同様に、閉塞用フィン8で連結されている。
【0028】
燃焼ガス供給側(蓋体22側)においては、蓋体22の内側壁と端部水管との間に内側通煙口5が形成されるとともに、内側水管列3の水管を連結する閉鎖用フィン8に切欠部(内側通煙口5A)を形成している。すなわち、図
7に示すように、蓋体22側から3つ分の閉鎖用フィン8について、それぞれ切欠部(斜線部)を形成している。
この切欠部は、その切欠面積が蓋体22側で一位置の切欠部を大きくすることで(
図7参照)、衝突壁30に衝突して逆流した燃焼ガスが蓋番広くなる3段階の開口により形成する。これは、バーナー10の燃焼ガスの噴出口に近い体22側付近まで戻り易いようにしている。
また、蓋体22の内側面に当接可能な外側環状区画壁16を
外側水管列4の端部に設けることで、蓋体22側に逆流した燃焼ガスが内側水管列3と外側水管列4との間に導かれ、環状区画壁15の外側の衝突壁30側へ流れるように構成されている。
【0029】
左側下部管寄せ2L及び右側下部管寄せ2Rの下面には給水口23がそれぞれ設けられ、左側上部管寄せ1L及び右側上部管寄せ1Rの上面には蒸気排出口24がそれぞれ設けられている。
また、内側水管列3(左側内側水管列3L及び右側内側水管列3R)、外側水管列4(左側外側水管列4L及び右側外側水管列4R)から構成される水管列群は、奥側に対して蓋体(扉)22側が低い位置となるように本体20内に傾斜して配置されている。傾斜角度は、例えば5度程度が好ましい。
【0030】
上部管寄せ1L,1R及び下部管寄せ2L,2Rの蓋体(扉)22側には、ネジ蓋25がそれぞれ装着されている。このネジ蓋25を外すことで上部管寄せ及び下部管寄せに孔部を開口させることができる。
そして、上部管寄せ1L,1R側の孔部から洗浄用の水を供給し、下部管寄せ2L,2R側の孔部から排出させることで、各水管の内部を洗浄することが可能となる。この際、蓋体(扉)22側が奥側に対して低い位置に配置されているので、水管内部を洗浄する水が下部管寄せ2L,2R側の孔部から排出され易くすることができる。
【0031】
上述した構造により、左側下部管寄せ2L及び右側下部管寄せ2Rの各給水口23から水を供給すると、円弧状に配設された複数の各水管にボイラー水が供給されるとともに、バーナー10から燃焼ガスが燃焼室9に供給されると、燃焼室9からの燃焼ガスが内側水管列3の各水管の内側面(燃焼室9側の面)に接触し水管内のボイラー水を加熱させる。
燃焼ガスは、燃焼室9の端部に設置された衝突壁30で跳ね返り蓋体22側に戻されるが、
図8に示すように、内側通煙口5及び切欠部(内側通煙口5A)から内側水管列3と外側水管列4の間の燃焼ガス通路7Aに導かれ、内側水管列3の内側面及び外側水管列4の内側面に接触し水管内のボイラー水を加熱させる。
内側水管列3及び外側水管列4の水管内のボイラー水が加熱されて蒸気となり、左側上部管寄せ1L及び右側上部管寄せ1Rに設けた蒸気排出口24から消費蒸気として取り出し、所望の供給場所で消費される。
燃焼ガスは水管内のボイラー水を加熱させることで温度が低下し、煙道12から外部に排出される。
【0032】
上述した構造の多管式貫流ボイラーの構造によれば、バーナー10の燃焼燃料として廃油を使用することが可能となる。
すなわち、燃焼室9を水平方向に延設された円筒形状とすることで、燃焼室9を臨む一端側に蓋体(扉)22を形成することができるため、蓋体(扉)22の開閉動作で燃焼室9の内部を開口させることができるようになる。
そのため、廃油を燃焼ガスの燃料として使用することで燃焼室9が不純物で汚染された場合においても、開口させることで側方から容易に内部を清掃して不純物の除去を行うことができる。
【0033】
また、再生油を噴射部102から噴射させるとともに、廃溶剤を噴射部202から噴射させ、噴射量を調整してバーナー10内で混合させることで、効率良く燃焼させることができる。
その結果、廃剤である再生油や廃溶剤を燃料として利用することができ、燃料費のコスト削減を図ることができる。
【0034】
図9は、多管式貫流ボイラーの他の実施形態を示すもので、内側通煙口となる切欠部の形成位置が
図8と異なる例である。すなわち、
図9の多管式貫流ボイラーにおいては、内側水管列3及び外側水管列4の各水管を閉鎖用フィン8で連結しているが、外側水管列4の燃焼ガス供給側(蓋体22側)の両側3か所の閉鎖用フィン8において、切欠部(内側通煙口5B)をそれぞれ形成している。他の構成は
図5~
図8の多管式貫流ボイラーと同じである。
【0035】
この構成により、バーナー10から燃焼室9に噴射し端部の衝突壁30で跳ね返り蓋体22側に戻された燃焼ガスは、
図9に示すように、内側通煙口5から内側水管列と外側水管列の間の燃焼ガス通路7Aに導かれるとともに、切欠部(内側通煙口5B)から外側水管列4と本体20の外壁(ボイラー外壁)の間の燃焼ガス通路7Bにも導かれ、外側水管列4の各水管の両側の外側面に接触し水管内のボイラー水を加熱させる。したがって、外側水管列の各水管に対して、燃焼ガスにより加熱する接触面積が大きくなるように作用するので、外側水管列4の各水管を効率良く加熱させることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…上部管寄せ
2…下部管寄せ
3,3L,3R…内側水管列
4,4L,4R…外側水管列
5,5A,5B…内側通煙口
6…外側通煙口
7,7A,7B…燃焼ガス通路
8…閉鎖用フィン
9…燃焼室
10…バーナー
12…煙道
13…耐火材
14…断熱材
15…内側環状区画壁
16…外側環状区画壁
20…本体
21…ヒンジ部
22…蓋体(扉)
23…給水口
24…蒸気排出口
25…ネジ蓋(孔部)
30…衝突壁
100…再生油供給部
101…燃料制御ポンプ
102…噴射部(コンプレッサー)
200…廃溶剤供給部
201…燃料制御ポンプ
202…噴射部(コンプレッサー)
300…噴射空気供給部
301…圧力制御部
400…燃焼空気供給部
401…流量制御部
500…点火部