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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】エコノマイザー
(51)【国際特許分類】
   F22D 1/24 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
F22D1/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021515768
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2019020532
(87)【国際公開番号】W WO2020217545
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019081003
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517230644
【氏名又は名称】猪野 貴行
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】猪野 忠行
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3222032(JP,U)
【文献】実開昭60-66904(JP,U)
【文献】特開平2-71003(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0818414(KR,B1)
【文献】西独国特許出願公開第1576794(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラーで発生した燃焼排ガスにより水を加温するエコノマイザーにおいて、
流入口及び流出口を側面に形成して前記水が通過する円筒状の水管と、
前記水管の下端位置に区画壁を介して連結する燃焼排ガス導入管と、
前記水管の上端位置に区画壁を介して連結する燃焼排ガス排出管とを備え、
前記燃焼排ガス導入管内はガス導入口に臨む燃焼排ガス導入室と下部燃焼排ガス通過室とに区画され、前記燃焼排ガス排出管内は、ガス排気口に臨む燃焼排ガス排出室と上部燃焼排ガス通過室とに区画され、
前記燃焼排ガス導入室と前記上部燃焼排ガス通過室とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第1のガス管と、
前記上部燃焼排ガス通過室と前記下部燃焼排ガス通過室とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第2のガス管と、
前記下部燃焼排ガス通過室と前記燃焼排ガス排出室とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第3のガス管と、を備え、
前記燃焼排ガス導入室は水平面において前記燃焼排ガス導入管を三等分に分割する面積で、前記燃焼排ガス排出室は水平面において前記燃焼排ガス排出管を三等分に分割する面積でそれぞれ形成することで、前記第1のガス管、前記第2のガス管、前記第3のガス管が立設される各通路の面積が同じになる一方、
前記燃焼排ガス導入管の下面側に設けた前記ガス導入口を除いた位置に着脱可能に装着した底面蓋と、前記燃焼排ガス排出管の上面側に設けた前記ガス排気口を除いた位置に着脱可能に装着した上面蓋とを備え、
前記底面蓋及び前記上面蓋を外した状態において、前記第1のガス管の上端、前記第2のガス管の両端、及び前記第3のガス管の下端が臨めるようにしたことを特徴とするエコノマイザー。
【請求項2】
ボイラーで発生した燃焼排ガスにより水を加温するエコノマイザーにおいて、
流入口及び流出口を側面に形成して前記水が通過する円筒状の水管と、
前記水管の下端位置に区画壁を介して連結する燃焼排ガス導入管と、
前記水管の上端位置に区画壁を介して連結する燃焼排ガス排出管とを備え、
前記燃焼排ガス導入管内はガス導入口に臨む燃焼排ガス導入室と下部燃焼排ガス通過室とに区画され、前記燃焼排ガス排出管内は、ガス排気口に臨む燃焼排ガス排出室と上部燃焼排ガス通過室とに区画され、
前記燃焼排ガス導入室と前記上部燃焼排ガス通過室とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第1のガス管と、
前記上部燃焼排ガス通過室と前記下部燃焼排ガス通過室とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第2のガス管と、
前記下部燃焼排ガス通過室と前記燃焼排ガス排出室とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第3のガス管と、を備え、
前記燃焼排ガス導入室は水平面において前記燃焼排ガス導入管を三等分に分割する面積で、前記燃焼排ガス排出室は水平面において前記燃焼排ガス排出管を三等分に分割する面積でそれぞれ形成することで、前記第1のガス管、前記第2のガス管、前記第3のガス管が立設される各通路の面積が同じになる一方、
前記燃焼排ガス排出管の側面側に前記ガス排気口を設け、前記燃焼排ガス排出管の上面を天板の開閉動作で開口可能にすることで、前記天板開口時に、前記第1のガス管、第2のガス管及び第3のガス管の上端が臨めるようにしたことを特徴とするエコノマイザー。
【請求項3】
前記下部燃焼排ガス通過室の下面に清掃用配管を連結した請求項1又は請求項2に記載のエコノマイザー。
【請求項4】
前記燃焼排ガス導入室及び燃焼排ガス排出室は水平面において扇形状である請求項1又は請求項2に記載のエコノマイザー。
【請求項5】
前記第1のガス管の断面積の合計と、前記第2のガス管の断面積の合計と、前記第3のガス管の断面積の合計とがそれぞれ等しい請求項1又は請求項2に記載のエコノマイザー。
【請求項6】
前記第1のガス管の本数と、前記第2のガス管の本数と、前記第3のガス管の本数とがそれぞれ等しい請求項5に記載のエコノマイザー。
【請求項7】
前記流入口は水管側面下方位置に、前記流出口は水管側面上方位置にそれぞれ形成する請求項1又は請求項2に記載のエコノマイザー。
【請求項8】
前記水管を圧力水容器で構成する請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のエコノマイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラーへ給水される水をボイラーの燃焼排ガスで予熱するエコノマイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラーへ給水される水を、ボイラーから廃棄される燃焼排ガスの熱で予熱を行うエコノマイザーは、熱を有効に利用可能なことから広く一般的に利用されている。
例えば、特許文献1に記載されたエコノマイザー(図17)は、ボイラー1で発生した燃焼排ガスが流通する煙道2内に、多数の水管を配設し、各水管内を流れる水が熱交換により加熱される構成となっている。また、煙道外側のU字管4及び煙道外側に鏡板5を設けることで、水管の経路を折り返し、再び逆方向に向けて煙道2を貫通させることを繰り返すことによって経路を長くするとともに、煙道2内の水管には熱吸収を良くするために多数のフィン管3が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載のエコノマイザーによれば、ボイラー1に連結する煙道2内において、給水経路を煙道上部および下部で折り返すことで煙道内に縦方向の水管を多数配置し、少なくとも下部の折り返し部(U字管4)が煙道内部に設けられている。そして、ボイラー1からブロー配管6を介してブロー水を噴射する噴霧ノズル7を煙道内の水管に向けて配置することで、水管に向けてブロー水を噴霧させ、折り返し部が水に浸かるように煙道下部の水槽(水部9)にブロー水が溜められ、水槽からオーバーフローした水が排水管8から排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3587895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエコノマイザーの構造によれば、煙道2内に配置された給水経路(水管)により、水管内の水を加温するものであるので、水管内を流れる水に対する熱吸収効率が悪く、期待通りの加温を行うことができないという課題があった。また、水管の体積が小さいため、加温された水の保有水量(例えば10~20リットル)に限界があり、時間当たりの給水量が多くなると十分な加温が維持できなくなるという構造上の問題があった。
また、水管の外側に設けた突起物であるフィン管3に燃焼排ガスが接触するので、汚れが付着し易くこれを除去することが困難であるという課題があった。
【0006】
そこで本発明者は、効率よく水を加温させることができる構造として、図14図16に示すエコノマイザー(特願2019-054551)を提案した。
このエコノマイザーは、流入口12及び流出口13を側面に形成して水が通過する円筒状の水管11内の下端位置に燃焼排ガス導入口15に臨む燃焼排ガス導入室20と、燃焼排ガス導入室20に対して区画された下部連結室30を設け、水管内の上端位置に燃焼排ガス排気口19に臨む燃焼排ガス排出室40と、燃焼排ガス排出室40に対して区画されて燃焼排ガス排出室40を囲む上部環状連結室50を設けている。
【0007】
そして、水管11内に燃焼排ガスを流通させるため、燃焼排ガス導入室20と上部環状連結室50とを連結するように水管11の内壁周囲に沿って下部区画壁14及び上部区画壁17を貫通して立設された複数の第1のガス管61と、上部環状連結室50と下部連結室30とを連結するように第1のガス管の内側位置に下部区画壁14及び上部区画壁17を貫通して立設された複数の第2のガス管62と、下部連結室30と燃焼排ガス排出室40とを連結するように第2のガス管の内側位置に下部区画壁14及び上部区画壁17を貫通して立設された複数の第3のガス管63とを備えることで、ボイラーで発生した燃焼排ガスを利用して水を加温する。
【0008】
水が通過する円筒状の水管11内の下方位置には円板状の下部区画壁14が装着され、水管11の下端位置に形成された燃焼排ガス導入口15に臨む燃焼排ガス導入室20が形成されている。
また、下部区画壁14の下面側を円錐蓋部16で塞ぐことで、燃焼排ガス導入室20に対して区画された下部連結室30が形成されている。下部連結室30は、円錐蓋部16で塞がれているため、燃焼排ガス導入室側に凸となる円錐空間で構成されている。
【0009】
水管11内の上方位置には円板状の上部区画壁17が装着され、上部区画壁17と水管11の天板裏面との間に環状区画壁18が装着されることで、水管11の上端位置に形成された燃焼排ガス排気口19に臨む燃焼排ガス排出室40と、燃焼排ガス排出室40を囲む上部環状連結室50が形成されている。
【0010】
上記構造によれば、複数のガス管61,62,63において、水管11底面側から導入された燃焼排ガスが水管11上部で折り返して下方に流れ、更に水管11下部で折り返して上方に流れて水管11上面側から流出される際の熱交換で水管11内の水を加温する。
複数の第1のガス管61と複数の第2のガス管62は、本数及び断面積の総和を等しくして水管11内に環状に一列に配置しているので、配置できるガス管の本数が制限されることがある。例えば、上述の例において、第3のガス管63を環状区画壁18の内側に溶接により配置できる本数は、溶接作業を確保するために制限されるので、それにともなって第1のガス管61及び第2のガス管62の本数が決まる。第1のガス管61も一列に配列されるので、第2のガス管62に比較して配置密度が低くなる。そのため、配置本数を最大限多くして効果的な加温を行うことに支障を来すという課題が存在した。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて提案されたものであり、同じ面積におけるガス管の本数を最大限設置して効率よく水を加温させることができるとともに、点検及び清掃が容易な構造のエコノマイザーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明(請求項1)は、ボイラーで発生した燃焼排ガスにより水を加温するエコノマイザーにおいて、
流入口(12)及び流出口(13)を側面に形成して前記水が通過する円筒状の水管(11)と、
前記水管(11)の下端位置に区画壁(下部区画壁14)を介して連結する燃焼排ガス導入管(20)と、
前記水管(11)の上端位置に区画壁(上部区画壁17)を介して連結する燃焼排ガス排出管(40)と、を備え、
前記燃焼排ガス導入管内は、ガス導入口(燃焼ガス導入口15)に臨む燃焼排ガス導入室(A)と下部燃焼排ガス通過室(B)とに区画され、前記燃焼排ガス排出管内は、ガス排口(燃焼ガス排口19)に臨む燃焼排ガス排出室(C)と上部燃焼排ガス通過室(D)とに区画され、
前記燃焼排ガス導入室(A)と前記上部燃焼排ガス通過室(D)とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第1のガス管(61)と、
前記上部燃焼排ガス通過室(D)と前記下部燃焼排ガス通過室(B)とを連通するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第2のガス管(62)と
前記下部燃焼排ガス通過室(B)と前記燃焼排ガス排出室(C)とを連するように前記区画壁を貫通して前記水管内に立設された複数の第3のガス管(63)と、
を備えたことを特徴としている。
【0013】
そして、前記燃焼排ガス導入室(A)は水平面において前記燃焼排ガス導入管(20)を三分割する面積で、前記燃焼排ガス排出室(C)は水平面において前記燃焼排ガス排出管(40)を三分割する面積でそれぞれ形成することで、前記第1のガス管(61)、前記第2のガス管(62)、前記第3のガス管(63)が立設される各通路の面積が同じになる。
【0014】
一方、前記燃焼排ガス導入管(20)の下面側に設けた前記燃焼排ガス導入口(15)を除いた位置に着脱可能に装着した底面蓋(脱着部21b)と、前記燃焼排ガス排出管(40)の上面側に設けた前記燃焼排ガス排気口(19)を除いた位置に着脱可能に装着した上面蓋(脱着部41b)とを備える。
【0015】
その結果、前記底面蓋(脱着部21b)及び前記上面蓋(脱着部41b)を外した状態において、第1のガス管(61)の上端、第2のガス管(62)の両端、及び第3のガス管(63)の下端が臨めるようになる。
【0016】
請求項2は、請求項1のエコノイザーにおける底面蓋(脱着部21b)と上面蓋(脱着部41b)に代えて、前記燃焼排ガス排出管(20)の側面側に前記燃焼排ガス排気口(19)を設け、前記燃焼排ガス排出管(20)の上面を天板(41)の開閉動作で開口可能にすることで、前記天板開口時に、前記第1のガス管(61)、第2のガス管(62)及び第3のガス管(63)の上端が臨めるようにしたことを特徴としている。
【0017】
請求項3は、請求項1又は請求項2に記載のエコノマイザーにおいて、
前記下部燃焼排ガス通過室(B)の下面に清掃用配管(85)を連結したことを特徴としている。
【0018】
請求項4は、請求項1又は請求項2のエコノマイザーにおいて、
前記燃焼排ガス導入室(A)及び燃焼排ガス排出室(C)は水平面において扇形状であることを特徴としている。
【0019】
請求項5は、請求項1又は請求項2のエコノマイザーにおいて、
前記第1のガス管(61)の断面積の合計と、前記第2のガス管(62)の断面積の合計と、前記第3のガス管(63)の断面積の合計とがそれぞれ等しいことを特徴としている。
【0020】
請求項6は、請求項5のエコノマイザーにおいて、
前記第1のガス管(61)の本数と、前記第2のガス管(62)の本数と、前記第3のガス管(63)の本数とがそれぞれ等しいことを特徴としている。
【0021】
請求項7は、請求項1又は請求項2のエコノマイザーにおいて、
前記流入口(12)は水管側面下方位置に、前記流出口(13)は水管側面上方位置にそれぞれ形成することを特徴としている。
【0022】
請求項8は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のエコノマイザーにおいて、
前記水管(11)を圧力水容器で構成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1のエコノマイザーによれば、燃焼排ガスを流通させるために立設された複数のガス管(61,62,63)を水管(11)内に配設することで、水管内に供給される水がガス管の周囲で効率良く加温される。
【0024】
また、水平面において水管(11)を三分割する領域(扇形状部分)に第1のガス管(61)、第2のガス管(62)、第3のガス管(63)を他のガス管の配置位置を考慮することなく配設できるので、扇形状部分において各ガス管の本数を多く設置することが可能となる。
【0025】
そして、上面蓋(脱着部41b)及び底面蓋(脱着部21b)だけを外して、第1のガス管(61)及び第2のガス管(62)の上端側の各開口、第2のガス管(62)及び第3のガス管(63)の下端側の各開口が臨めるようにすることで、各ガス管の内部の点検や清掃を容易に行うことが可能となる。
【0026】
請求項2によれば、燃焼排ガス排出管(20)の側面側に燃焼排ガス排気口(19)を設けることで、燃焼排ガス排出管(20)の上面全体が開口可能な天板(41)を設けることができ、天板(41)の開口時に、第1のガス管(61)、第2のガス管(62)及び第3のガス管(63)の上端が臨めるようにすることができる。
【0027】
請求項3によれば、下部燃焼排ガス通過室(B)の下面に清掃用配管(85)を連結することで、清掃時に第2のガス管(62)及び第3のガス管(63)の上端から水を注入した場合に、下部燃焼排ガス通過室(B)を介して清掃用配管(85)から回収して排出することができる。
【0028】
請求項4によれば、水平面において水管(11)を三分割する領域を扇形状とすることができる。
【0029】
請求項5によれば、第1のガス管(61)、第2のガス管(62)、第3のガス管(63)の各断面積の合計の総数を等しくすることで、ガス管からガス管へ燃焼排ガスが流れるに際して、抵抗の発生を抑えて流れ易くすることができる。
【0030】
請求項6によれば、第1のガス管(61)、第2のガス管(62)、第3のガス管(63)の各管の本数を等しくすることで、第1のガス管、第2のガス管、第3のガス管について同一の大きさにすることできる。
【0031】
請求項7によれば、流入口(12)を下方位置に、流出口(13)を上方位置に形成することで、加温された水を流出し易くすることができる。
【0032】
請求項8によれば、水管(11)を圧力水容器で構成することで加温された水を100℃以上の温度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のエコノマイザーの正面説明図である。
図2】本発明のエコノマイザーの側面説明図である。
図3】本発明のエコノマイザーの平面説明図である。
図4】本発明のエコノマイザーの底面説明図である。
図5】水管内に設置した複数のガス管内を流れる燃焼排気ガスの流れ方向を説明するためのモデル図である。
図6A】エコノマイザーの燃焼排ガス排出管の断面説明図である。
図6B】エコノマイザーの水管の断面説明図である。
図6C】エコノマイザーの燃焼排ガス導入管の断面説明図である。
図7】底板及び天板の一部を開口可能にしたエコノマイザーを示すモデル図である。
図8】エコノマイザーの別の実施例を示す平面説明図である。
図9図8のエコノマイザーの正面説明図である。
図10図8のエコノマイザーの側面説明図である。
図11図8のエコノマイザーのモデル図である。
図12図8のエコノマイザー(天板開口時)のモデル図である。
図13】エコノマイザーのボイラーへの接続例を示す側面図である。
図14】本発明者が提案したエコノマイザーの縦断面説明図である。
図15図8のII-II線断面説明図である。
図16図8のIII-III線断面説明図である。
図17】従来のエコノマイザーの構造を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係るエコノマイザーの実施形態の一例について、図1図6を参照しながら説明する。図1図6において、図14図16と同一の構成を採る部分については、同一符号を付している。
エコノマイザーは、ボイラーで発生した燃焼排ガスにより水を加温するものであり、図1に示すように、円筒状の水管(水容器)11に対して、流入口12及び流出口13を側面に3個ずつ形成している。流入口12は水管側面における下方位置に120度間隔で形成され、流出口13は水管側面の上方位置に120度間隔で形成され、三か所の流入口12から供給された水(給水)が水管内部で温められて上昇し三か所の流出口13から流出(排水)するように構成されている。
【0035】
水が通過する円筒状の水管11内の下端位置には円板状の下部区画壁14が装着され、この下部区画壁14を覆うように、水管11と同径の燃焼排ガス導入管20がフランジ部同士(フランジ部11aとフランジ部20a)を対向して連結固定している。燃焼排ガス導入管20は底板21で塞がれ、底板21には燃焼ガス導入口15が形成されている(図1図2図4)。底板21には、燃焼ガス導入口15に連結する導入ガス管81が鉛直方向に立設されている。
水管11と燃焼排ガス導入管20との連結は、水管11に形成されたフランジ部11aと、燃焼排ガス導入管20に形成されたフランジ部20aとを対向させ、複数のボルト71とナット72で脱着可能に連結固定されている。
【0036】
燃焼排ガス導入管20内は、垂直下部区画壁22により燃焼ガス導入口15に臨む燃焼排ガス導入室Aと、下部燃焼排ガス通過室Bとに区画されている(図5)。垂直下部区画壁22は、中央で120度の角度で折り曲げられた折曲片で形成することで、燃焼排ガス導入室Aが燃焼排ガス導入管20に対して水平面において1/3の面積に区画されている。
【0037】
水管11内の上端位置には円板状の上部区画壁17が装着され、この上部区画壁17を覆うように、水管11と同径の燃焼排ガス排出管40がフランジ部同士(フランジ部11bとフランジ部40a)を対向して連結固定している。燃焼排ガス排出管40は天板41で塞がれ、天板41には燃焼ガス排口19が形成されている(図1図3)。
水管11と燃焼排ガス排出管40との連結は、水管11に形成されたフランジ部11bと、燃焼排ガス排出管40に形成されたフランジ部40aとを対向させ、複数のボルト71とナット72で脱着可能に連結固定されている。天板41には、燃焼ガス排口19に連結する排気ガス管82が鉛直方向に立設されている。
【0038】
燃焼排ガス排出管40内は、垂直上部区画壁42により燃焼ガス排口19に臨む燃焼排ガス排出室Cと、上部燃焼排ガス通過室Dとに区画されている(図5)。垂直上部区画壁42は、中央で120度の角度で折り曲げられた折曲片で形成することで、燃焼排ガス排出室Cが燃焼排ガス排出管40に対して水平面において1/3の面積に区画されている。
【0039】
水管11内には、燃焼排ガスを流通させるため、複数のガス管が配設されている。
ガス管は、図6A,6B,6Cに示すように、下部区画壁14及び上部区画壁17を貫通して燃焼排ガス導入室Aと上部燃焼排ガス通過室Dとを連結するように水管11における水平面の1/3面積部分(扇形状)に立設された複数の第1のガス管61と、下部区画壁14及び上部区画壁17を貫通して上部燃焼排ガス通過室Dと下部燃焼排ガス通過室Bとを連結するように水管11における水平面の1/3面積部分(扇形状)に立設された複数の第2のガス管62と、下部区画壁14及び上部区画壁17を貫通して下部燃焼排ガス通過室Bと燃焼排ガス排出室Cとを連結するように水管11における水平面の1/3面積部分(扇形状)に立設された複数の第3のガス管63とから構成されている。すなわち、図6A,6B,6Cの例では、水管11を水平面で断面した各扇形状部分(図6Bの点線で区画された各領域)にそれぞれ31本のガス管が配置されている。
【0040】
すなわち、第1のガス管61は、水管11の扇形状柱部分に31本が配置され、燃焼排ガス導入室Aと上部燃焼排ガス通過室Dとを連通するように構成され、燃焼排ガス導入口15から燃焼排ガス導入室Aに導かれた燃焼排ガスが複数の第1のガス管61を通って上方に移動し(図5の通路Oから通路P)、一旦上部燃焼排ガス通過室Dに導かれる。
第2のガス管62は、水管11の扇形状柱部分に31本が配置され、上部燃焼排ガス通過室Dと下部燃焼排ガス通過室Bとを連通するように構成されることで、上部燃焼排ガス通過室Dからの燃焼排ガスが複数の第2のガス管62を通って下方に移動し(図5の通路Qから通路R)、一旦下部燃焼排ガス通過室Bに導かれる。
第3のガス管63は、水管11の扇形状柱部分に31本が配置され、下部燃焼排ガス通過室Bと燃焼排ガス排出室Cとを連通するように構成されることで、下部燃焼排ガス通過室Bからの燃焼排ガスが複数の第3のガス管63を通って上方に移動し(図5の通路Sから通路T)、燃焼排ガス排出室Cを介して燃焼排ガス排気口19から排出される。
【0041】
上述した構成によれば、水平面で扇形状部分に配置される各ガス管群は、他のガス管の配置位置による制限を受けることなく自由に配置できるので、扇形状の面積部分にできるだけ多くの本数のガス管を設置することが可能となる。
その結果、ガス管を多く配置することで、ガス管の断面積を小さくして(ガス流路を絞って)ガスの流通速度を上げるとともに、本数を増やすことで伝熱面積を減らすことなく水管内における燃焼排ガスと水との間接加熱を行うことが可能となり、水内の水を効率良く加温することができる。
【0042】
また、第1のガス管61及び第2のガス管62及び第3のガス管63は、それぞれ同じ数(31本)だけ設けられ、各ガス管の直径も同じにして流通路となる総断面積が同じになるように形成されている。これは、燃焼排ガスが第1のガス管61から第2のガス管62へ、第2のガス管62から第3のガス管63へ移動するに際して生じる抵抗が少なくなるようにするためである。
【0043】
また、水管11の上端及び下端はフランジ部同士で連結する構成であり、水管11に対して燃焼排ガス導入管(燃焼排ガス導入室)20及び燃焼排ガス排出管(燃焼排ガス排出室)40がフランジ部で容易に脱着可能となることで、第1のガス管61、第2のガス管62及び第3のガス管63の両端の各開口が上方及び下方から臨めるようなっている。
第1のガス管61、第2のガス管62及び第3のガス管63の両端の各開口が臨めるようにすることで、ガス管内の点検を容易するとともに、この部分から高圧洗浄水を使用してガス管の内部の清掃を容易に行うことが可能となる。
【0044】
また、水管11に対して燃焼排ガス導入管(燃焼排ガス導入室)20及び燃焼排ガス排出管(燃焼排ガス排出室)40がフランジ部で脱着可能な構成に代えて、図7に示すように、燃焼排ガス導入管20の底板21の一部、燃焼排ガス排出管40の天板41の一部をそれぞれ着脱可能に形成してもよい。
すなわち、底板21を固定部21aと脱着部(底面蓋)21bとから構成し、固定部21aに形成された燃焼排ガス導入口15に配管が連結された状態で脱着部21bが外れるように構成している。脱着部21bは、下部燃焼排ガス通過室Bに対して密封状態となるシール構造で構成されている。
また同様に、天板41を固定部41aと脱着部(上面蓋)41bとから構成し、固定部41aに形成された燃焼排ガス排口19に配管が連結された状態で脱着部41bが外れるように構成している。脱着部41bは、上部燃焼排ガス通過室Dに対して密封状態となるシール構造で構成されている。
底板21の脱着部(底面蓋)21b、及び、天板41の脱着部(上面蓋)41bは、円板の各蓋体(底板21,天板41)から内角120度となる扇型の固定部(21a,41a)が除去された形状となっている。燃焼排ガス導入管(燃焼排ガス導入室)20及び燃焼排ガス排出管(燃焼排ガス排出室)40に対して各脱着部21b,41bが着脱可能な構造は、ボルトとナットによる連結や蝶番により実現することができる。
【0045】
上記構造により、燃焼排ガス導入管(燃焼排ガス導入室)20から脱着部21bを外した場合、第2のガス管62及び第3のガス管63の下端を臨めるようにすることができる。また、燃焼排ガス排出管(燃焼排ガス排出室)40から脱着部41bを外した場合、第1のガス管61及び第2のガス管62の上端を臨めるようにすることができる。
その結果、各ガス管の内部の点検を容易するとともに、この部分から高圧洗浄水を使用してガス管の内部の清掃を容易に行うことが可能となる。
また、燃焼排ガス導入管(燃焼排ガス導入室)20及び燃焼排ガス排出管(燃焼排ガス排出室)40に配管が連結された状態で、軽量な脱着部21b及び脱着部41bだけを外す軽作業で、ガス管の内部の清掃を容易に行うことができる。
【0046】
図8乃至図12は、エコノマイザーの実施形態の他の例を示したもので、図1図7に示したエコノマイザーと同一の構成を採る部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略するとともに、異なる構成について以下に説明する。
すなわち、図1図7のエコノマイザーでは上面側に設けていた燃焼排ガス排気口19を、燃焼排ガス排出管40の側面側に設け、燃焼排ガス排出管40の上面の天板41が開閉動作で開口可能に形成する。天板41は、燃焼排ガス排出室C及び上部燃焼排ガス通過室Dに対してそれぞれ密封状態となるシール構造で構成されている。
【0047】
上記構造によれば、天板41を開口させることで、燃焼排ガス排気口19に燃焼排ガス排出管(燃焼排ガス排出室)40が連結された状態で、燃焼排ガス排出管40の上面側全てを開口させることができ、第1のガス管61、第2のガス管62及び第3のガス管63の全ての上端が臨めるようになっている。
【0048】
また、下部燃焼排ガス通過室の下面に清掃用配管85を連結することで、天板41開口時に、第2のガス管62及び第3のガス管63の上端から清掃するための水を供給した場合、下部燃焼排ガス通過室に流れた水を回収して廃棄することができる。
【0049】
上述した各エコノマイザーの構造によれば、導入ガス管81から燃焼排ガス導入口15を介して導入された高温の燃焼排ガスは、燃焼排ガス導入室Aからガス管61を通過して上方へ流れて上部燃焼排ガス通過室Dに流れる。
続いて、燃焼排ガスは上部燃焼排ガス通過室Dで跳ね返り第2のガス管62を通過して下方へ移動し、下部燃焼排ガス通過室Bに流れる。
燃焼排気ガスは衝突で跳ね返り、第3のガス管63を通過して上方へ移動して燃焼排ガス排出室Cに流れ、燃焼排ガス排気口19を介して排気ガス管82から排出される。
また、水管11の流入口12から供給された水は、ガス管61,62,63の周囲に接して加温しながら水管11内を下から上へ移動し、流出口13から流出される。
【0050】
上述したエコノマイザーによれば、燃焼排ガスを流通させるために立設された複数のガス管(第1のガス管61、第2のガス管62、第3のガス管63)を水管11内に配設することで、水管11内に供給される水がガス管の周囲で効率良く加温される。
すなわち、水管11内にガス管が配設されるため、水管11の体積を十分に大きくすることができるので保有水量(例えば200~400リットル、好ましくは300リットル以上)を多くでき、時間当たりの給水量が増加してもそれによる水の温度低下を抑えることができ、十分な加温(100℃程度まで可能)を維持できるという効果がある。
【0051】
また、燃焼排ガスは水管11内に直接導かれることが無く、各ガス管内を流通するだけなので、水管11内に燃焼排ガスによる汚れが付着することがない。
また、図1図6に示したエコノマイザーの例によれば、水管11の上端及び下端にそれぞれフランジ部を介して燃焼排ガス導入管20及び燃焼排ガス排出管40を連結しているので、ボルト71及びナット72を外すことでフランジ部分において両者を容易に脱着させることができ、第1のガス管61、第2のガス管62及び第3のガス管63の各両端を臨めるようにしてガス管内部の清掃を容易に行うことができる。
【0052】
また、図7に示したエコノマイザーの例によれば、下面蓋21b及び上面蓋41bを外すことで、第1のガス管61、第2のガス管62及び第3のガス管63の各両端を臨めるようにしてガス管内部の清掃を容易に行うことができる。
【0053】
また、図8図12に示したエコノマイザーの例によれば、燃焼排ガス排出管40の側面側に燃焼排ガス排気口19を設けることで、燃焼排ガス排出管40の上面側全てを天板41の開閉で開口させることが可能となり、第1のガス管61、第2のガス管62及び第3のガス管63の全ての上端が臨めるようにすることができる。
また、第2のガス管62及び第3のガス管63の上端から清掃するための水を供給した場合、下部燃焼排ガス通過室に流れた水を清掃用配管85から回収して廃棄する(図11及び図12の通路U)ことができる。
【0054】
上述したエコノマイザーの水管11は、保有水の水面に大気圧がかかり、水管内部で温められた水が流出口13から流出(排水)する水容器で構成したが、ホンプ圧力による給水と、電磁弁制御による水位保持により、大気圧と異なる一定の圧力で水が貯留する圧力水容器で構成してもよい。水管11を圧力水容器とした場合、加温された水を100℃以上の150℃程度まで上昇させることができる。
【0055】
続いて、上述したエコノマイザーをボイラーに接続する使用例について、図13を参照して説明する。
ボイラー102は、エコノマイザー101からの供給水に対してブロア103から燃焼ガスを送り込むことで、蒸気を排出するとともに、燃焼排ガスをエコノマイザー101の燃焼排ガス導入管20から送り込み、上述した構造のエコノマイザー101に供給される水を加温する。
エコノマイザー101では、給水平均温度15度の水がポンプ(図示せず)を介して加圧されて(例えば、0.98MPa,1.57MPa,2.94MPa)圧力容器(水槽)11内に供給される。供給水は加圧されているために、水槽11内で120度程度にまで加温され、流出口13から排出される。
加温水は、ボイラー102側に供給されることで、ボイラー内では120度の加温水から蒸気を発生させることになる。120度の加温水から蒸気を発生させるので、ブロワ103から供給される燃焼ガスを効率良く利用することができ、省エネ効果を実現することができる。
【符号の説明】
【0056】
11…水管(圧力水容器)
11a、11b…フランジ部
12…流入口
13…流出口
14…下部区画壁
15…燃焼排ガス導入口
17…上部区画壁
19…燃焼排ガス排気口
20…燃焼排ガス導入管(燃焼排ガス導入室)
20a…フランジ部
21…底板
21a…固定部
21b…脱着部(底面蓋)
40…燃焼排ガス排出管(燃焼排ガス排出室)
40a…フランジ部
41…天板
41a…固定部
41b…脱着部(上面蓋)
61…第1のガス管
62…第2のガス管
63…第3のガス管
81…導入ガス管
82…排気ガス管
85…清掃用配管
A…燃焼排ガス導入室
B…下部燃焼排ガス通過室
C…燃焼排ガス排出室
D…上部燃焼排ガス通過室
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17