(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】鼻内用の油性外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20220823BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20220823BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220823BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220823BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220823BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K31/05
A61K9/06
A61P11/02
A61P37/08
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022008127
(22)【出願日】2022-01-21
(62)【分割の表示】P 2021214228の分割
【原出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 智史
(72)【発明者】
【氏名】吉村 昌徳
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509250(JP,A)
【文献】特開2006-008674(JP,A)
【文献】耳咽頭頸,2013年,85巻9号,702-707
【文献】日鼻誌,2010年,49(3),444ページ 174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 31/00
A61K 47/00
A61K 9/00
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、及び、
(B)イソプロピルメチルフェノールを含有し、
前記(A)成分
の含有量1質量部に対する、前記(B)成分
の含有量が、0.0005~10質量部であ
り、
前記(A)成分の含有量が、0.1~0.2質量%である、
鼻内用の
軟膏剤。
【請求項2】
鼻内の、アレルギー性疾患、又は、炎症性疾患の予防又は治療のために用いられる、請求項1に記載の
軟膏剤。
【請求項3】
鼻内の、掻痒感、乾燥感、または摩擦感の改善のために用いられる、請求項1又は2に記載の
軟膏剤。
【請求項4】
前記鼻内が、鼻前庭、外鼻孔、又は、鼻限を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の
軟膏剤。
【請求項5】
更に、(C)油性成分を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の
軟膏剤。
【請求項6】
(A)
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、及び、
(B)イソプロピルメチルフェノールを含有させることを含み、
前記(A)成分
の含有量1質量部に対する、前記(B)成分
の含有量が、0.0005~10質量部であ
り、
前記(A)成分の含有量が、0.1~0.2質量%である、
鼻内用の
軟膏剤の製造方法。
【請求項7】
鼻内用の
軟膏剤に、(A)
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、及び、
(B)イソプロピルメチルフェノールを含有させることを含み、
前記(A)成分
の含有量1質量部に対する、前記(B)成分
の含有量が、0.0005~10質量部であ
り、
前記(A)成分の含有量が、0.1~0.2質量%である、
該鼻内用の
軟膏剤に、鼻内の掻痒感、乾燥感、または摩擦感の改善作用を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻内用の油性外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻は、呼吸によって、常に様々な外界からの刺激に曝されており、周囲環境の温度・湿度の変化、花粉・ハウスダスト・浮遊粒子状物質等の各種のアレルゲン等からのバリア機能を果たしている。鼻からアレルゲン等が侵入し、鼻粘膜に付着すると、マスト細胞からのヒスタミン等の化学伝達物質の放出を誘発し、鼻水やくしゃみ等のアレルギー反応を引き起こす。また、例えば、花粉やハウスダストによるアレルギー症状などで鼻の痒みや鼻水が生じた場合は、鼻を繰り返し擦ることや、繰り返し鼻紙を使って鼻をかむこと等で、鼻周辺のトラブルに繋がりやすい。
【0003】
アレルギー症状に対して、薬物等による治療のほか、例えば鼻粘膜に対する、アレルギーの原因物質(アレルゲン)の接着を防ぐ方法として、マスクの着用等のほか、飽和炭化水素の少なくとも1つの混合物が、DIN51 562法による6mm2/秒(100℃)以上の粘度を有することを特徴とする、飽和炭化水素を含む、吸入アレルギー性反応の予防のための鼻用軟膏を塗布する方法などが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外用組成物の多様化に対応することが可能な、更なるアレルギーの予防、軽減等の技術が求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、鼻内に塗布することで、花粉やハウスダストなどのアレルゲンを吸着することが出来る鼻内用の薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、(A)成分として、ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種を含有させ、更に、(B)成分として、抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン類、及び、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有させることにより、鼻内に塗布することによって有用な効果を発現する油性外用組成物を調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる鼻内用の油性外用組成物を提供する。
項1.
(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種、並びに、
(B)抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン類、及び、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、鼻内用の油性外用組成物。
項2.
鼻内の、アレルギー性疾患、又は、炎症性疾患の予防又は治療のために用いられる、項1に記載の油性外用組成物。
項3.
鼻内の、掻痒感、乾燥感、又は摩擦感の改善のために用いられる、項1に記載の油性外用組成物。
項4.
前記鼻内が、鼻前庭、外鼻孔、又は、鼻限を含む、項1~3のいずれか1項に記載の油性外用組成物。
項5.
更に、(C)油性成分を含有する、項1~4のいずれか1項に記載の油性外用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アレルゲン吸着力が高く、使用感にも優れる、鼻内に適した油性外用組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.鼻内用の油性外用組成物]
本発明の鼻内用の油性外用組成物は、
(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種、並びに、
(B)抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン類、及び、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである。
【0011】
[(A)成分]
(ステロイド系抗炎症成分)
(A)成分のうち、ステロイド系抗炎症成分としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の物質を用いることができ、特に制限されない。ステロイド系抗炎症成分は、ステロイド核を有するステロイドホルモン又はそれに由来する構造を有する成分であって、抗炎症作用等を有するものである。ステロイドホルモンは、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、性ホルモン等に分類されるが、抗炎症成分としては、主に糖質コルチコイドが用いられている。また、本明細書において、ステロイド系抗炎症成分には、その誘導体やこれらの薬学的に許容される塩も含まれる。ステロイド系抗炎成分は、公知の方法により合成して使用しても、市販の薬剤を入手して使用してもよい。
【0012】
本発明において、ステロイド系抗炎症成分の誘導体とは、本発明の効果を損なわない範囲において、ステロイド系抗炎症成分の有する官能基の一部を化学修飾したもの、官能基の一部に保護基を付加したもの等をいい、異性体を含むものである。限定はされないが、例えば、ステロイド系抗炎症成分におけるステロイド核の一つ又はそれ以上の水素原子が、ヒドロキシル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、フルオロ基、トリフルオロ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアセチル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシル基、炭素数1~6のアルキルアミノ基等に置換されたものや、有機酸(例えば、吉草酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、フランカルボン酸等)でエステル化されたもの、保護基が外れることによりステロイド系抗炎症成分としての活性を有するように修飾された前駆体等が挙げられる。より高い本発明の効果が期待できるという観点から、好ましくは、有機酸でエステル化された誘導体であり、より好ましくは、吉草酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸及び/又はフランカルボン酸でエステル化された誘導体であり、更に好ましくは吉草酸、酢酸、酪酸及び/又はプロピオン酸でエステル化された誘導体である。エステル化誘導体はモノエステル、ジエステル、トリエステル等の任意のエステル化誘導体であってよく、例えば、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(吉草酸酢酸プレドニゾロンともいう)等のように、2種以上の有機酸でエステル化された誘導体であってもよい。
【0013】
本発明において、ステロイド系抗炎症成分又はその誘導体の「薬学的に許容される塩」としては、限定はされないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩基等との塩が例示され、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、ジエタノールアミン、又はエチレンジアミン等との塩が挙げられる。さらには、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、L-グルカミン等のアミンの塩;又はリジン、δ-ヒドロキシリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩などが挙げられる。また、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、吉草酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩なども挙げられる。「薬学的に許容される塩」には、塩の溶媒和物又は水和物を含んでいてもよい。
【0014】
本発明に用いられるステロイド系抗炎症成分としては、医薬品又は医薬部外品において用いられるものであれば、特に限定はされないが、具体的には、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ジフルプレドナード、モメタゾン、ジフルコルトロン、フルオニシド、ベクロムタゾン、デプロドン、クロベタゾン、アルクロメタゾン、フルメタゾン及びこれらの誘導体、並びにこれらの塩等が挙げられ、これらの中でも、アレルゲンの吸着効果を向上させる観点から、好ましくは、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン及びこれらの誘導体、並びにこれらの塩であり、より好ましくはプレドニゾロン、その誘導体、及びそれらの塩である。本発明において、ステロイド系抗炎症成分は、単独でも、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0015】
現在、ステロイド系抗炎症成分は、ステロイドの強さによって5段階(強い薬物から順に、ストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィーク)に分類されており、本発明にはそのいずれもが用いられ得るが、好ましくは、人体への作用は比較的緩和でありながら、アレルゲンの吸着効果を顕著に発揮することが期待できるストロング、ミディアム、ウィークに分類されるステロイド系抗炎症成分が用いられる。具体的に、ステロイド系抗炎症成分としては、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ハロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルコルトロン吉草酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、アムシノニド、デキサメタゾンプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、フルオニシド、ヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、プレドニゾロン、ベクロメタゾンジプロピオネート、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、デキサメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、クロベタゾン酢酸エステル、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン酢酸エステル、コルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル等が挙げられる。ステロイド系抗炎症成分としては、アレルゲン吸着効果を高める観点から、好ましくは、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、プレドニゾロン、デキサメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、デキサメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、コルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル等が挙げられ、さらに好ましくは、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステルが挙げられる。
【0016】
ステロイド系抗炎症成分としては、限定はされないが、塗布した患部で薬理活性を示し、体内で低活性な物質に代謝される、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル等のアンテドラッグステロイドが好適に用いられ、なかでもプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル等のアンテドラッグステロイドが好適である。これらの成分から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0017】
(抗ヒスタミン成分)
(A)成分のうち、抗ヒスタミン成分としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の物質を用いることができ、特に制限されない。抗ヒスタミン成分としては、例えば、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナートなどのエタノールアミン系化合物、マレイン酸クロルフェニラミンなどのプロピルアミン系化合物、塩酸プロメタジン、塩酸イソチペンジルなどのフェノチアジン系化合物、ヒドロキシジンなどのピペラジン系化合物、塩酸シプロヘプタジンなどのピペリジン系化合物の他、エピナスチン塩酸塩、ロラタジン、塩酸フェキソフェナジン、ケトチフェン、ベポタスチン、ジフェニルピラリン、イプロヘプチン、エメダスチン、クレマスチン、アゼラスチン、レボカバスチン、メキタジン、セチリジン、オキサトミド、テルフェナジン、アステミゾール、エバスチン、及びこれらの塩が挙げられる。上記化合物の塩としては、薬理学的に又は生理学的に許容されることを限度として、特に制限されなく、例えば、上記で例示したような有機酸塩、無機酸塩、金属塩等の各種の塩が挙げられる。
【0018】
これらの抗ヒスタミン成分のうち、限定はされないが、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、エタノールアミン系化合物、又は、プロピルアミン系化合物が好ましく、ジフェンヒドラミン及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩がより好ましく、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミンがさらに好ましい。これらの成分から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0019】
(A)成分の総含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.0125質量%以上である。(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.0125~2質量%である。
【0020】
本発明において、ステロイド系抗炎症成分の含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物の全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.0125質量%以上である。ステロイド系抗炎症成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.15質量%以下である。ステロイド系抗炎症成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.001~1質量%、好ましくは0.005~0.5質量%、より好ましくは0.01~0.2質量%、さらに好ましくは0.0125~0.15質量%である。
【0021】
さらに、例えば、ステロイド系抗炎症成分がプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルである場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルの含有量は、好ましくは0.01~0.5質量%であり、より好ましくは0.1~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.15質量%である。
【0022】
本発明において、抗ヒスタミン成分の含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物の全量に対して通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。抗ヒスタミン成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。抗ヒスタミン成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.01~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%である。
【0023】
さらに、例えば、抗ヒスタミン成分がジフェンヒドラミン及びその塩である場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、ジフェンヒドラミンの含有量は、好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%であり、さらに好ましくは0.2~2質量%である。
【0024】
さらに、例えば、抗ヒスタミン成分がクロルフェニラミン及びその塩である場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、クロルフェニラミン及びその塩の含有量は、好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%であり、さらに好ましくは0.1~1質量%である。
【0025】
[(B)成分]
本実施形態に係る油性外用組成物においては、上記(A)成分とともに、抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン類、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種(B)を含有する。
【0026】
(抗菌成分)
(B)成分のうち、抗菌成分としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の物質を用いることができ、特に制限されない。抗菌成分としては、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム塩、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、サリチル酸、安息香酸、アモロルフィン、クロルヘキシジン、アクリノール、エタノール、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノグリシン等及びそれらの塩が挙げられる。
【0027】
これらの抗菌成分のうち、限定はされないが、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、イソプロピルメチルフェノール、第四級アンモニウム塩が好ましく、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムがより好ましい。これらの成分から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0028】
(局所麻酔成分)
(B)成分のうち、局所麻酔成分としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の物質を用いることができ、特に制限されない。局所麻酔成分としては、例えば、リドカイン、ジブカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、及びこれらの薬学的に許容される塩のようなアミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔成分、プロカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、及びその薬学的に許容される塩のようなアミン及びエステル構造を有するエステル型局所麻酔成分、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエトキシドデカン等が挙げられる。
【0029】
これらの局所麻酔成分のうち、限定はされないが、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、アミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔成分が好ましく、リドカイン、ジブカイン、及びそれらの薬学的に許容される塩、並びにアミノ安息香酸エチルがより好ましく、リドカイン、ジブカイン及びそれらの薬学的に許容される塩がさらに好ましく、リドカイン又はその薬学的に許容される塩がさらにより好ましい。これらの成分から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0030】
(ビタミン類)
(B)成分のうち、ビタミン類としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の物質を用いることができ、特に制限されない。ビタミン類としては、例えば、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;ニコチン酸、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、ニコチン酸1-(4-メチルフェニル)エチル、ニコチン酸アミド等のニコチン酸類;アスコルビゲン-A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビル等のビタミンC類;メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類;γ-オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’-リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パンテノール(パントテニルアルコール)、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;ビオチン、ビオシチン等のビオチン類;カルニチン、フェルラ酸、α-リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子等が挙げられる。
【0031】
これらのビタミン類のうち、限定はされないが、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、ビタミンE類、パントテン酸類が好ましく、酢酸トコフェロール、パンテノールがより好ましい。これらの成分から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0032】
(テルペノイド)
(B)成分のうち、テルペノイドとしては、本発明の効果を奏する範囲で公知の物質を用いることができ、特に制限されない。テルペノイドとしては、例えば、メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等のテルペノイドが挙げられる。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0033】
テルペノイドは精油の形態で含有されていてもよい。このような精油としては、例えば、ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等が挙げられる。
【0034】
これらのテルペノイドのうち、限定はされないが、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、メントール及びカンフルが好ましく、メントールがより好ましい。ここで、メントールとしては、それを含む精油を用いてもよい。メントールを含む精油としては、クールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油等を挙げることができる。テルペノイド(及び精油)は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0035】
(B)成分の総含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物全量に対して、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、さらにより好ましくは0.03質量%以上である。(B)成分の総含有量は、組成物全量に対して、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。(B)成分の総含有量は、組成物全量に対して、通常0.001~20質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~8質量%、さらに好ましくは0.03~5質量%である。
【0036】
本発明において、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、(A)成分に対する(B)成分の比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する(B)成分の総含有量が、0.0005~500質量部が好ましく、0.001~200質量部がより好ましく、0.005~100質量部がより好ましく、0.01~50質量部がさらに好ましく、0.02~35質量部がさらにより好ましい。
【0037】
本発明において、抗菌成分の含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物の全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。抗菌成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。抗菌成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0038】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対する抗菌成分の比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する抗菌成分の総含有量が、0.0005~10質量部が好ましく、0.001~5質量部がより好ましく、0.01~3.5質量部がさらに好ましい
【0039】
さらに、例えば、抗菌成分がイソプロピルメチルフェノールである場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、イソプロピルメチルフェノールの含有量は、好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0040】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対するイソプロピルメチルフェノールの比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、イソプロピルメチルフェノールの総含有量が、0.001~10質量部が好ましく、0.01~5質量部がより好ましく、0.03~3.5質量部がさらに好ましく、0.3~3.5質量部がさらにより好ましい。
【0041】
さらに、例えば、抗菌成分が第四級アンモニウム塩である場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、第四級アンモニウム塩の含有量は、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.005~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.3質量%であり、さらにより好ましくは0.03~0.3質量%である。
【0042】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対する第四級アンモニウム塩の比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、第四級アンモニウム塩の総含有量が、0.001~10質量部が好ましく、0.005~5質量部がより好ましく、0.01~2質量部がさらに好ましく、0.2~2質量部がさらにより好ましい。
【0043】
本発明において、局所麻酔成分の含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物の全量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上である。局所麻酔成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。局所麻酔成分の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.2~2質量%である。
【0044】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対する局所麻酔成分の比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、局所麻酔成分の総含有量が、0.01~20質量部が好ましく、0.05~15質量部がより好ましく、0.1~15質量部がさらに好ましく、1~15質量部がさらにより好ましい。
【0045】
本発明において、ビタミン類の含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物の全量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。ビタミン類の含有量は、組成物の全量に対して、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。ビタミン類の含有量は、組成物の全量に対して、通常0.01~10質量%、好ましくは0.1~8質量%、より好ましくは0.2~5質量%である。
【0046】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対するビタミン類の比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、ビタミン類の総含有量が、0.01~100質量部が好ましく、0.05~50質量部がより好ましく、0.1~35質量部がさらに好ましく、1~35質量部がさらにより好ましい。
【0047】
さらに、例えば、ビタミン類が酢酸トコフェロールである場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、酢酸トコフェロールの含有量は、好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%であり、さらに好ましくは0.2~2質量%である。
【0048】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対する酢酸トコフェロールの比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、酢酸トコフェロールの総含有量が、0.001~50質量部が好ましく、0.01~20質量部がより好ましく、0.1~15質量部がさらに好ましく、1~15質量部がさらにより好ましい。
【0049】
例えば、ビタミン類がパンテノールである場合、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、パンテノールの含有量は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~8質量%であり、さらに好ましくは1~5質量%である。
【0050】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対するパンテノールの比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、パンテノールの総含有量が、0.01~100質量部が好ましく、0.1~50質量部がより好ましく、0.5~35質量部がさらに好ましく、6~35質量部がさらにより好ましい。
【0051】
本発明において、テルペノイドの含有量は、アレルゲンの吸着効果を高める観点から、組成物の全量に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。テルペノイドの含有量は、組成物の全量に対して、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。テルペノイドの含有量は、組成物の全量に対して、通常0.1~10質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
【0052】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対するテルペノイドの比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、テルペノイドの総含有量が、0.01~100質量部が好ましく、0.1~50質量部がより好ましく、0.5~35質量部がさらに好ましく、6~35質量部がさらにより好ましい。
【0053】
なお、(B)成分としてテルペノイドを含有する精油を使用する場合は、当該精油に含有されるテルペノイドが上述した含有量及び比率を満たすように配合させることが好ましい。
【0054】
((C)油性成分)
限定はされないが、本実施形態に係る油性外用組成物は、(C)油性成分を含むものであってよい。油性成分は、医薬品、医薬部外品又は化粧品分野で許容されるものであれば、特に制限されない。
【0055】
油性成分としては、例えば、油脂、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。
【0056】
油脂としては、例えば、脂肪酸とグリセリンとのエステルが挙げられ、天然由来の油脂であっても、合成油脂であってもよい。油脂の具体例としては、例えば、アボガド油、アマニ油、アーモンド油(アルモンド油)、オリーブ油、カカオ油、牛脂、キリ油、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、豚脂、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン、卵黄油、ローズヒップ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0057】
炭化水素油としては、例えば、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素等が挙げられる。パラフィン系炭化水素の具体例としては、パラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、スクワレン、植物性スクワラン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、プリスタンが挙げられる。オレフィン系炭化水素の具体例としては、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセンなどの直鎖オレフィン化合物、ジイソブチレン、トリイソブチレンなどの分岐鎖オレフィン化合物、及びシクロヘキセン、ジシクロペンテンなどの環状オレフィン化合物が挙げられる。また、その他の炭化水素油としては、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含むアルキン)、二重結合及び/又は三重結合を2つ以上含む炭化水素、並びに芳香族炭化水素、脂環式炭化水素等の環状炭化水素などが挙げられる。
【0058】
エステル油としては、合成エステル油、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル油が挙げられる。エステル油の具体例としては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸ヘキサデシル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット等が挙げられる。
【0059】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
【0060】
高級アルコールとしては、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0061】
高級脂肪酸としては、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖の炭素数12~22の脂肪酸が挙げられる。高級脂肪酸の具体例としては、例えば、イソステアリン酸、オキシステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラノリン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。
【0062】
油性成分は、市販のものを用いることもできる。油性成分は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
油性成分としては炭化水素油、エステル油が好ましく、炭化水素油がより好ましく、ワセリンがさらに好ましく、白色ワセリンが更により好ましい。
【0064】
本実施形態に係る油性外用組成物における油性成分の含有量は特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、油性外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。油性外用組成物の含有量としては、例えば、油性外用組成物全量に対して、(C)油性成分の総含有量が、50質量%以上であってよく、60質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよい。油性成分の含有量の上限に特に制限はないが、例えば、99質量%以下であってよい。
【0065】
(その他の成分)
本発明の油性外用組成物は、使用感の向上、安定性等の観点から、本発明の効果を妨げない限り、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の他に、基剤、担体、又は添加物等を含んでいてもよい。
【0066】
基剤、担体、又は添加物等としては、例えば、界面活性剤、保湿成分、多価アルコール、増粘剤、酸化防止剤、(B)成分以外の保存剤又は防腐剤、pH調整剤、キレート剤等が挙げられる。なお、これらの成分は1種単独で、又は2種以上を任意に配合することができる。
【0067】
界面活性剤は、成分の安定化に寄与し得る。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のいずれでもよい。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、・BR>\ルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80等);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等);グリセリン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル、グリセリンアルキルエーテル);ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル等);シリコーン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等);アルキルグルコシド;等が挙げられる。
【0069】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム等);アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム等);リン酸エステル塩(POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等);スルホコハク酸塩(例えば、アルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);アミノ酸系界面活性剤(例えば、ココイルグルタミン酸ナトリウム、N-アシルグルタミン酸塩等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、ラウロイルグルタミン酸カリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);エーテルカルボン酸塩(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等);α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0070】
保湿成分としては、例えば、ヒアルロン酸(加水分解ヒアルロン酸、低分子ヒアルロン酸等を含む);ヒアルロン酸の塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸亜鉛、低分子ヒアルロン酸亜鉛等);ヒアルロン酸誘導体(アセチル化ヒアルロン酸又はその塩(例えば、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸亜鉛等)、架橋型ヒアルロン酸誘導体(ヒアルロン酸クロスポリマーNa等)、カルボキシメチルヒアルロン酸Na、不飽和ヒアルロン酸又はその塩、加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12-13)グリセリル、カチオン化ヒアルロン酸誘導体(ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム等)、ヒアルロン酸ジメチルシラノール等);コンドロイチン硫酸又はその塩(コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸カリウム、デルマタン硫酸ナトリウム、デルマタン硫酸カリウム等);ヘパリン類似物質、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルコサミン、テアニン、アルギニンなどのアミノ酸及びその誘導体;多価アルコール;PPG-17ブテス-17、PPG-25ソルビトール、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、ポリオキシアルキレンジグリセリルなどのアルキレンオキシド;グリコシルトレハロース、トレハロース;セラミド、グルコシルセラミド、コレステロール、フィトステロール、コレステロール誘導体、フィトステロール誘導体、;2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等の2-メタクロイルオキシホスホリルコリン含有重合体;乳酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素などのNMF由来成分;コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサン等とそれらの加水分解物;ヒドロキシエチルウレア;植物(たとえば、アロエ、海藻、カッコン、クロレラ、レモングラス、カミツレ、ハマメリス、チャ、シソ、グレープフルーツ、アマチャヅルなど)に由来する成分、等が挙げられる。
【0071】
多価アルコールとしては、ヒドロキシ基を2個以上有する低分子が挙げられ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、1、3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトールが挙げられる。
【0072】
増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー等のビニル系増粘剤、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系増粘剤、グァーガム、スクレロチウムガム、タマリンドガム、キサンタンガム、デキストラン、ペクチン、プルラン、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、寒天、ビオサッカリドガム、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、塩化トリメチルアンモニウムヒドロキシプロピルグァーガム、塩化トリメチルアンモニオヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー等が挙げられる。
【0073】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコフェロール誘導体、トコトリエノール、亜硫酸水素塩、次亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、L-システイン塩酸塩等が挙げられる。
【0074】
(B)成分以外の保存剤又は防腐剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、メチルイソチアゾリン、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、又は、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0075】
pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)、ならびにそれらの塩、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、等が挙げられる。
【0076】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン4酢酸(エデト酸)、エチレンジアミン4酢酸塩(ナトリウム塩(エデト酸ナトリウム:日本薬局方、EDTA-2Naなど)、カリウム塩など)、フィチン酸、グルコン酸、ポリリン酸、メタリン酸等が挙げられる。
【0077】
[製造方法]
本発明の油性外用組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、必要に応じ各成分を加熱しながら攪拌し、溶解又は分散させて、混合後、冷却しながら撹拌し、その後室温で静置する方法が挙げられるが、特にこれに限定はされない。
【0078】
[製剤形態]
本発明の油性外用組成物は、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて添加剤と共に混合して油性外用組成物とすることができる。
【0079】
本発明の油性外用組成物の製剤形態は特に限定されないが、皮膚用の外用組成物の形態であることが好ましい。このような製剤形態としては、例えば、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、貼付剤、容器に収容した固形剤(スティック剤、球形剤、半球形剤)等が挙げられる。これらの製剤は、第17改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。これらの製剤形態の中でも、クリーム剤、ゲル剤、又は軟膏剤が好ましく、軟膏剤がより好ましい。
【0080】
[適用部位]
本発明の油性外用組成物の適用部位は、鼻内(鼻の中)を含めばよく、鼻内としては、外鼻孔、鼻前庭(鼻の入り口)、鼻限等が例示される。本発明の油性外用組成物の適用部位としては、鼻前庭、外鼻孔、又は、鼻限を含むことが好ましく、鼻前庭を含むことが特に好ましい。
【0081】
鼻は、呼吸によって、常に様々な外界からの刺激に曝されており、周囲環境の温度・湿度の変化、花粉・ハウスダスト・浮遊粒子状物質等の各種のアレルゲン、細菌・ウイルス等の病原体、化学物質等からのバリア機能を果たしている。この鼻の構造の中でも、鼻前庭はバリア機能の最前線として重要な部位であるため、細胞の構造としても粘膜ではなく、重層扁平上皮細胞から構成されている。鼻前庭は、外鼻孔から1~2cm以内の部位が含まれ、鼻毛、脂腺、アポクリン腺などが存在しているが、更に鼻腔側となるにつれて、鼻毛は少なくなり、鼻限に至ると絨毛上皮細胞により構成されるようになる。外鼻孔から鼻前庭、鼻限までの部位を鼻腔前部ともいう。
【0082】
[用途]
本発明の油性外用組成物を鼻内に適用することにより、アレルゲンの吸着力が発揮され、アレルギー症状の発症や悪化を防ぐことが出来る。
【0083】
本発明におけるアレルゲンとしては、花粉、ダニ、ハウスダスト(室内塵)、大気汚染物質(排気ガス等)、及び浮遊粒子状物質(PM2.5等)等が例示され、特に花粉、ハウスダストが好適に例示される。
【0084】
後述の実施例において、本発明の油性外用組成物に、疑似花粉や疑似ハウスダストとして利用されている石松子を接触させた後、疑似鼻汁を添加して洗いこむことで、どの程度本発明の油性外用組成物に石松子が吸着・維持されているかを評価している。その結果、本発明の油性外用組成物を用いることで、鼻汁存在下における石松子の捕捉力が向上することが認められている。このように、本発明の油性外用組成物に、花粉、ダニ、ハウスダスト(室内塵)、大気汚染物質(排気ガス等)、及び浮遊粒子状物質(PM2.5等)等のアレルゲンを捕捉吸着させ、維持することによって、鼻粘膜や体内に移行することを抑制し、アレルギー反応や炎症反応を抑止することに繋がるものと推測される。
【0085】
よって、本発明の油性外用組成物は特にアレルギー疾患を発症している人、又は、アレルギー疾患を予防したい人に特に好ましく用いられる。
【0086】
さらに、本発明の油性外用組成物は、鼻内(鼻前庭、外鼻孔、鼻限等)における炎症を抑制することが出来るため、鼻内の痛痒い炎症(掻痒感等)がある人に好適に使用することが出来る。さらに、鼻内乾燥感(カピカピ感)や摩擦感(ヒリヒリ感)を軽減すること可能であるため、これらの症状を有する人にも好適に使用することが出来る。
【0087】
また、後述の実施例において、アレルゲンモデルである石松子が、疑似鼻汁中と比較して、製剤中により多く残存していたことから、本発明の油性外用組成物において、(A)成分と(B)成分とを共存させることにより、鼻汁と油性外用組成物との親和性(なじみ性)を低減させることができるものと推測される。鼻汁が鼻前庭周辺を流れた場合、鼻をかむ動作や、鼻汁を吸い込む動作によって、本来であれば、鼻前庭周辺に塗布した薬剤は鼻汁と共に低減してしまう。本発明の油性外用組成物を用いることにより、鼻汁との親和性(なじみ性)を低減させることによって、鼻内で本発明の油性外用組成物と鼻汁とが接触した場合であっても、塗布部分に製剤を多く残存させ、製剤中の薬剤の効果を顕著に奏し、また、乾燥や摩擦等の刺激から患部をより効果的に保護することが可能となる。
【0088】
さらに別の実施形態では、(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種、並びに、(B)抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン類、及び、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、鼻内に塗布して用いられることを特徴とする、鼻内の炎症、湿疹、かゆみの治療剤、緩和剤、予防剤を提供するものである。
【0089】
本明細書において、限定はされないが、(A)成分及び/又は(B)成分は、有効成分として含有されていてもよい。
【0090】
[pH]
本発明の油性外用組成物のpHは、他の配合成分の種類及び含有量、油性外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定され限定されないが、通常pH3.0~7.5であり、pH3.0~7.0であることが好ましく、pH3.0~6.5であることがさらに好ましく、pH3.5~6.0であることがさらにより好ましく、pH3.8~5.5であることが特に好ましい。なお、このpHは、例えば、pH調整剤の使用により調整することができる。ただし、pH測定が不能又は困難な製剤形態については、この限りではない。
【0091】
(容器)
本発明の油性外用組成物は、使用目的及び用途に応じ、適宜選択した形状、材質の容器に収容し、使用することができる。具体的な容器としては、例えば、ノズル付き容器、ポンプ付き容器、ジャー容器、チューブ容器、中栓に穴の開いたタイプの容器、ヒンジキャップ付き容器、スポンジヘッド容器、ロールオン容器、スティックタイプの容器等を例示できる。これらの容器に収容することで、油性外用組成物を所望の患部に直接的に又は間接的に塗布することができる。ノズルやスポンジは、患部の狭い範囲又は広い範囲に塗布できるように、先細又は大きな径に設計することも可能である。患部に本実施形態に係る油性外用組成物を塗布した後に、不織布や指等により、塗り拡げて用いること、又は綿棒やティッシュペーパーなどに塗布して適用することも可能である。
【0092】
また、容器の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE等)、ABS樹脂、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリスチレン、ガラス、及び金属(アルミ等)等を例示できる。また、これらの材料は、強度、柔軟性、耐候性、又は成分の安定性等を考慮し、各種コーティング処理を行ったり、これらの材料を例えば混合する等 して組み合わせたり、積層したりして、容器材料として用いることができる。
【0093】
[2.アレルゲン吸着促進方法]
本発明によれば、(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種;並びに(B)抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン類、及び、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する油性外用組成物とすることにより、鼻内に塗布した際に、鼻内に吸入されたアレルゲンを吸着することが出来る。したがって、本発明は、油性外用組成物に(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(B)抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン類、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを含む、該油性外用組成物のアレルゲンに対する吸着を向上する方法と捉えることもできる。
ここで、各成分の含有量、比率、その他成分等の条件は、[1.鼻内用の油性外用組成物]に記載した内容に準じる。
【0094】
[3.MRSA、MSSAに対する抗菌力向上方法]
本発明によれば、(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種;並びに(B)抗菌成分を含有する油性外用組成物とすることにより、鼻前庭炎の原因菌である、MRSA(methicillin―resistant Staphylococcus aureus、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、MSSA(meticillin-susceptible Staphylococcus aureus、メチシリン感性黄色ブドウ球菌)に対する抗菌力が向上している。したがって、本発明は、油性外用組成物に、(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種;並びに(B)抗菌成分を配合することを含む、該油性外用組成物の、MRSA、MSSAに対する殺菌力を向上する方法と捉えることもできる。
ここで、各成分の含有量、比率、その他成分等の条件は、[1.鼻内用の油性外用組成物]に記載した内容に準じる。
【実施例】
【0095】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。表における各成分量の単位は、特に記載がない限り、質量%である。
【0096】
[試験例1 鼻汁環境下におけるアレルゲン捕捉力試験]
表2に記載の処方に従い、各試験製剤を調製した。すなわち、セバシン酸ジエチルに(A)成分、(B)成分を加え、70℃にて攪拌溶解・分散させた。その後ワセリンを加え、70℃にて、攪拌溶解・分散させ、室温まで冷却した。
調製直後の各製剤について、以下に記すアレルゲン吸着試験を実施した。
【0097】
[アレルゲン吸着試験]
各表に示す各試験製剤をガラス製シャーレ(フラットシャーレ、FS-60、直径64mm、高さ20mm)に1gずつ秤量した。60~70℃程度にて加温融解した後、水平に静置し製剤をシャーレ底面に均一に広げ冷却した。前記のシャーレに石松子(ヒカゲノカズラの胞子であり、疑似花粉や疑似ハウスダスト等を含み一般的なアレルゲンモデルとして用いられている)0.05gを量り入れ、均一に広げた。次に、シャーレに、表1の記載に従って調製した疑似鼻汁(日本公衆衛生誌 第39巻 第6号 P341~P346 参照)10mLを量り入れ、振とう機(DOUBLE SHAKER NR-30、Taitec社製)にて100rpmで10分間振とう撹拌した。振とう後の上清を50mL容量ガラス製ねじ口瓶に採取し、更に残存した石松子を、疑似鼻汁約30mLにて洗いこんだ。この液を、メンブランフィルター(型番:NY1104700、Merck社製)にてろ過し、石松子を補足した。(ねじ口瓶中に残存した石松子について、約20mLのエタノールで洗いこみ、捕捉した。)前記のメンブランフィルターを50mL容量の遠沈管(型番:VIO-50RN 、VIOLAMO社製)に入れ、エタノール5mLを加え、超音波処理機(超音波洗浄機 US-107;株式会社エスエヌディ社製)及びボルテックスミキサー(VORTEX-2 GENIE G-560、SCIENTIFIC INDUSTRIES INC.社製)にて、各約1分間ずつ撹拌し、石松子を完全に回収した。その後、血球計算板(C-CHIP Disposable Hemocytometer, NanoEnteck社)を用いて、製剤に捕捉されず、疑似鼻汁と共に回収された石松子数をカウントした。
疑似鼻汁中の石松子数をもとに、下記式(I)を用いて、比較例1―1における石松子の捕捉量を基準とした場合の、各処方における石松子捕捉量増加率(%)を算出した。
石松子捕捉量増加率(%)=
(比較例1-1の石松子カウント数-各製剤での石松子カウント数)/比較例1-1の石松子カウント数)×100 ・・・(式I)
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
表2に示す通り、(B)成分を含まず、(A)成分のみを含有する場合には、比較例1―1と比較して鼻汁共存下における、製剤によるアレルゲン捕捉量の増加率がマイナスとなり、すなわち、製剤によるアレルゲン捕捉力が低下することが確認された(比較例1-2)。一方、(A)成分と(B)成分とが共存している場合には、(A)成分のみを含有する場合と比較してアレルゲンの捕捉量が向上し、比較対照である比較例1-1よりもさらにアレルゲン捕捉力が向上することが確認された。
【0104】
表2~表5に示す通り、本試験の結果について、疑似鼻汁の存在下において実施例の製剤の方に、アレルゲンモデルである石松子がより多く残存していたことから、比較例の製剤と比較して実施例の製剤の方がより鼻汁との親和性(なじみ性)が低いとも解釈することが出来る。鼻汁とのなじみが低減した結果、製剤が塗布部においてより顕著に薬剤としての効果を奏することが可能となる。そのため、より高い抗炎症効果や鎮痒効果が期待できる。
【0105】
実施例1-1~実施例1-12の各試験製剤を、鼻内の痛痒さ、乾燥感(カピカピする感覚)、摩擦感(ヒリヒリする感覚)を感じているパネラー3名が、綿棒を用いて、鼻の外鼻孔から鼻前庭にかけて塗布し、20分後に評価をおこなったところ、痛痒さ、乾燥感(カピカピする感じ)、摩擦感(ヒリヒリする感じ)が抑制されていた。
【0106】
[試験例2 MRSA、MSSAに対する抗菌性試験]
表6に記載の処方を用いたこと以外は、試験例1と同様に試験製剤を調製し、MIC(最小発育阻止濃度)を求めることでMRSA、MSSAに対する抗菌性を評価した。
【0107】
MRSAとしてStaphyllococcus aureus(ATCC:43300)、MSSAとしてStaphyllococcus aureus(ATCC:29213)を使用した。各使用菌株をSCD斜面培地へ塗抹し、33℃、21時間培養を行い、培養後の培地へ滅菌生理食塩水を5.0mL添加・懸濁することで菌懸濁液とした。
【0108】
試料(試験製剤)を2g、20mL容量の遠沈管(型番:VIO-50RN、VIOLAMO社製)へに秤量し、そこへエタノールを2mL、ガラスビーズ2gを添加し、50℃の恒温水槽にて30分間加温した。加温後、ボルテックスミキサー(VORTEX-2 GENIE G-560、SCIENTIFIC INDUSTRIES INC.社製)を用いて良く混合し、サンプルを分散させることで試料溶液(50%)とした。試料溶液を、エタノールにて公比2の希釈を繰り返し、各濃度の試料溶液を調製した。各濃度の試料溶液2mLをシャーレ(型番3101011-10223、アテクト社製)へ添加し、別途調製しておいたミューラー・ヒントン寒天培地18mLを注加し、混合後固化させた。最終的に、1平板培地あたり試料濃度が5%を最大とした公比2の段階濃度を含む平板培地を10段階調製した(最終試料濃度:5%、2.5%、1.25%、0.625%、0.313%、0.156%、0.781%、0.391%、0.195%、0.098%)。
【0109】
調製した各平板培地へ107cfu/mL相当のMRSAおよびMSSA菌懸濁液を1μLの白金耳にて3か所に塗抹した。同時に、試料溶液を含まないミューラー・ヒントン平板培地および、最終5%のエタノール含有ミューラー・ヒントン平板培地へ同様に塗抹し対照とした。塗抹後の平板培地は33℃にて、対照が発育するまで5日間培養を行った。
【0110】
培養後、各培地における菌の発育の有無を確認し、発育が確認されなかった濃度を最小発育阻止濃度(MIC)と結論付けた。
【0111】
【0112】
(B)成分のみを含有する場合(比較例2-1)に比較して、さらに(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種を共に含有する場合(実施例2-1、実施例2-2)には、最小発育阻止濃度が低下し、すなわち、MRSA、MSSAに対する抗菌性が向上することが確認された。上記の結果から、(A)成分として、ステロイド系抗炎症成分を用いた場合であっても、抗ヒスタミン成分を用いた場合であっても、(B)成分と組み合わせて用いることで、MRSA、MSSAに対する抗菌性が向上したことから、(A)成分や(B)成分の具体的な成分の種類によらず、(A)成分及び(B)成分を併用することによる効果が奏されるものと推測される。
【0113】
[試験例3 MRSA、MSSAに対する殺菌力試験]
表7に記載の処方を用いたこと以外は、試験例1と同様に試験製剤を調製し、以下の方法でMRSA、MSSAに対する抗菌性を評価した。
【0114】
表7に記載の試験製剤を、20mL容量の遠沈管(型番:VIO-50RN、VIOLAMO社製)に20gずつ充填した。次に、MRSAとしてStaphyllococcus aureus(ATCC:43300)、MSSAとしてStaphyllococcus aureus(ATCC:29213)の菌液を、最終菌濃度が約105(cfu/mL)になるように、前記製剤入りのチューブに添加し、混合後25℃にて保管した。菌添加直後、保存24時間後の、試験製剤中の生菌数(cfu/g)を測定した。
【0115】
試験製剤中の生菌数の測定方法としては、試験製剤0.5gをスピッツ管(型番:06470、日水製薬社製)に量りとり、20%(w/v)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(富士フィルム和光純薬株式会社、CAS RN(登録商標) : 9005-65-6)4.5mLを添加し、攪拌して混和したものを試験サンプルとした。必要に応じて滅菌生理食塩液にて希釈操作を繰り返した。この試験サンプルを100μL分取し、それぞれSCDLP培地(アテクト社製、3201053-13008D)へ塗抹し33℃、5日間培養した。培養後のSCDLP培地に発育したコロニー数をカウントし、希釈倍率を乗じて生残菌数を算出した。残存菌数のLog値をもとに、下記式(II)を用いて、もとになる比較例に対する試験製剤の殺菌力向上率を算出した。なお、実施例3-1について、もとになる比較例は、比較例3-1である。
殺菌力向上率(%)=(対象となる比較例の残存菌数のLog値-製剤の残存菌数のLog値)/対象となる比較例の残存菌数のLog値×100 ・・・式(II)
【0116】
結果を、表7に併せて示す。
【0117】
【0118】
表7に示す通り、(B)成分のみを含有する場合(比較例3-1)に比較して、さらに(A)成分を共に含有する場合(実施例3-1)には、MRSA、MSSAに対する殺菌力が向上することが確認された。 [製剤例]
【0119】
下記表8~11に製剤例を示す。製剤例1~36はすべて軟膏であり、単位はすべて質量%である。
【表8】
【0120】
【0121】
【0122】
【要約】
【課題】アレルゲン吸着力が高く、使用感にも優れる鼻内用の薬剤を提供する。
【解決手段】(A)ステロイド系抗炎症成分、及び、抗ヒスタミン成分からなる群より選択される少なくとも1種、並びに、
(B)抗菌成分、局所麻酔成分、ビタミン、及び、テルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、鼻内用の油性外用組成物を調製する。
【選択図】なし