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7128371熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20220823BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20220823BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20220823BHJP
   B01J 13/18 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
C08J3/22 CER
C08J9/32 CEZ
B01J13/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022008513
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2021130096
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川上 健
(72)【発明者】
【氏名】松窪 竜也
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕作
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-006625(JP,A)
【文献】特開2004-323854(JP,A)
【文献】特開2002-320843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/18
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、
D10/D50が0.6以上1.0以下、かつ、D99/D50が1.0以上2.0以下である、
熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項2】
D99とD50の体積換算比[(D99)/(D50)]が1.0以上8.0以下である、請求項1に記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項3】
D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.4以下である、請求項1又は2に記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項4】
D99が15μm以上80μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項5】
シェルは、ニトリル系モノマーを含有するモノマー組成物の重合体からなる、請求項1~4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項6】
シェルは、ニトリル系モノマーとカルボキシル基を有するモノマーとを含有するモノマー組成物の重合体であり、モノマー組成物中における、カルボキシル基を有するモノマーの含有量は5重量%以上、50重量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル及び熱可塑性樹脂を含有する、発泡性マスターバッチ。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル、又は、請求項に記載の発泡性マスターバッチを用いてなる、発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性マイクロカプセル、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡性マスターバッチ、及び、発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、樹脂材料の軽量化や高機能化を目的として、発泡剤を用いて材料を発泡させることが行われており、このような発泡剤としては、熱膨張性マイクロカプセルや化学発泡剤が一般的に用いられている。
熱膨張性マイクロカプセルは、意匠性付与剤や軽量化剤として幅広い用途に使用されており、発泡インク、壁紙をはじめとした軽量化を目的とした塗料等にも利用されている。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤が内包されているものが広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、外殻内に発泡剤が封入されたマイクロスフェアーにおいて、マイクロスフェアーの平均粒子径と、発泡剤の量とを所定の関係式とすることが記載されている。
また、特許文献2には、中空粒子と有機基剤樹脂とを含有する樹脂組成物において、中空粒子に含まれる空気量の体積割合が、中空粒子全体の30%以上である樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/110201号
【文献】国際公開第2018/012415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の熱膨張性マイクロカプセルは、発泡後の均一性が課題となっている。特に、薄層の発泡成形体に熱膨張性マイクロカプセルを利用する場合、均一に発泡しないと、得られる発泡成形体の表面が粗くなり、表面性が著しく損なわれる。
また、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させる工程において、発泡倍率が低く、発泡倍率にバラツキがあることによって、得られる軽量性等の機能性の面で劣るものとなっている。
【0006】
本発明は、表面が均一で、軽量性に優れる発泡成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供することを目的とするものである。
また、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上1.0以下、かつ、D99/D50が1.0以上2.0以下である、熱膨張性マイクロカプセルである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、シェルと、コア剤として内包された揮発性膨張剤から構成される。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを構成するシェルは、重合体化合物を含有することが好ましい。
上記重合体化合物は、ニトリル系モノマーに由来するユニットを含有する重合体であることが好ましく、ニトリル系モノマーに由来するユニットと、カルボキシル基を有するモノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来するユニットを含有する重合体であることが好ましい。
また、上記重合体化合物は、ニトリル系モノマーを含有するモノマー組成物の重合体であることが好ましく、ニトリル系モノマーとカルボキシル基を有するモノマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを含有するモノマー組成物の重合体であることが好ましい。
【0009】
上記ニトリル系モノマーは特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル、又は、これらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0010】
上記モノマー組成物中のニトリル系モノマーの含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は99重量%である。20重量%以上とすることで、シェルのガスバリア性を高めて発泡倍率を向上させることができる。99重量%以下とすることで、耐熱性を向上させたり、黄変を防止したりすることができる。より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は98重量%である。
【0011】
上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、カルボキシル基を有し、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーを用いることができる。
具体的には例えば、不飽和ジカルボン酸やその無水物又は不飽和ジカルボン酸のモノエステルやその誘導体が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記不飽和ジカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸のモノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等が挙げられる。
これらのなかでは、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
【0012】
上記モノマー組成物中における、上記カルボキシル基を有するモノマーの含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は50重量%である。5重量%以上とすることで、最大発泡温度を高めることができ、50重量%以下とすることで、発泡倍率を向上させることが可能となる。より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル類、又は、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環・芳香環・複素環含有メタクリル酸エステル類が好ましい。
【0014】
上記モノマー組成物中における、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は25重量%である。上記他のモノマーの含有量を0.1重量%以上とすることで、熱膨張性マイクロカプセルを用いた組成物の分散性を向上させることができ、25重量%以下とすることで、セル壁のガスバリア性を向上させて、熱膨張性を改善することが可能となる。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量のより好ましい下限は0.3重量%、より好ましい上限は22重量%である。
【0015】
上記モノマー組成物は、分子内に二重結合を2つ以上有する架橋性モノマーを含有することが好ましい。上記架橋性モノマーは、架橋剤としての役割を有する。上記架橋性モノマーを含有することにより、シェルの強度を強化することができ、熱膨張時にセル壁が破泡し難くなる。
【0016】
上記架橋性モノマーとしては、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有するモノマーが挙げられ、具体例には例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、重量平均分子量が200~600であるポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレートを用いてもよい。
上記3官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのなかでは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能性のものや、ポリエチレングリコール等の2官能性の(メタ)アクリレートが、アクリロニトリルを主体としたシェルには比較的均一に架橋が施される。
【0017】
上記モノマー組成物中における、上記架橋性モノマーの含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は1.0重量%である。上記架橋性モノマーの含有量を0.1重量%以上とすることで、架橋剤としての効果を充分に発揮することができ、上記架橋性モノマーの含有量を1.0重量%以下とすることで、熱膨張性マイクロカプセルの発泡倍率を向上させることが可能となる。上記架橋性モノマーの含有量のより好ましい下限は0.15重量%、より好ましい上限は0.9重量%である。
【0018】
上記モノマー組成物は、上記ニトリル系モノマーと、カルボキシル基を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、架橋性モノマー以外の他のモノマーを含有することが好ましい。上記他のモノマーを含有することで、熱膨張性マイクロカプセルと熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂の混和性が良好となり、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体が優れた外観を有する。
上記他のモノマーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等も挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記モノマー組成物は、上記ニトリル系モノマー、カルボキシル基を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、架橋性モノマー、他のモノマー以外に熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0020】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0021】
上記熱硬化性樹脂は、カルボキシル基と反応する官能基を1分子中に2個以上有することが好ましい。上記カルボキシル基と反応する官能基を2個以上有することで、熱硬化性樹脂の硬化性をより強固なものとすることができる。特に、上記モノマー組成物がカルボキシル基を有するモノマーを含有する場合は、加熱発泡させる際の熱によって、カルボキシル基と熱硬化性樹脂とがより強固に結合し、耐熱性や耐久性を大幅に向上させることが可能となる。
なお、上記熱硬化性樹脂は、ラジカル重合性の二重結合を有しないものであることが好ましい。
【0022】
上記カルボキシル基と反応する官能基としては、例えば、グリシジル基、フェノール基、メチロール基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、グリシジル基が好ましい。上記カルボキシル基と反応する官能基としては、同種のものを用いてもよく、2種以上のものを用いてもよい。
【0023】
上記モノマー組成物中における、上記熱硬化性樹脂の含有量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は30重量%である。
上記熱硬化性樹脂の含有量を0.01重量%以上とすることで、加熱発泡時の耐圧縮性を向上できる。上記熱硬化性樹脂の含有量を30重量%以下とすることで、シェルのガスバリア性を改善し、発泡性が向上する。より好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0024】
上記モノマー組成物には、上記モノマーを重合させるため、重合開始剤を添加する。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。
具体例には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル等が挙げられる。
また、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
また、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピル-オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
更に、ジ(2-エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
加えて、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物等が挙げられる。
【0025】
上記シェルを構成する重合体化合物の重量平均分子量の好ましい下限は10万、好ましい上限は200万である。10万未満であると、シェルの強度が低下することがあり、200万を超えると、シェルの強度が高くなりすぎ、発泡倍率が低下することがある。
【0026】
上記シェルは、更に必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
【0027】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上記シェルにコア剤として揮発性膨張剤が内包されている。上記揮発性膨張剤は、シェルを構成するポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる物質であり、低沸点有機溶剤が好適である。
【0028】
上記揮発性膨張剤(コア剤)としては、例えば、炭素数が8未満の炭化水素、炭素数が8以上の炭化水素、石油エーテル、クロロフルオロカーボン、テトラアルキルシラン等が挙げられる。
上記炭素数が8未満の炭化水素としては、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン等が挙げられる。
上記炭素数が8以上の炭化水素としては、イソオクタン、オクタン、デカン、イソドデカン、ドデカン、ヘキサンデカン等が挙げられる。
上記クロロフルオロカーボンとしては、CClF、CCl、CClF、CClF-CClF等が挙げられる。上記テトラアルキルシランとしては、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等が挙げられる。なかでも、イソブタン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-へキサン、及び、これらの混合物が好ましい。これらの揮発性膨張剤は、2種以上を併用してもよい。
また、本発明では、炭素数が8未満の炭化水素と、炭素数が8以上の炭化水素とを組み合わせて用いてもよい。例えば、ペンタンとイソオクタンとを組み合わせて用いることが好ましい。
更に、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状となる熱分解型化合物を用いてもよい。
【0029】
また、上記熱膨張性マイクロカプセルにおいて、コア剤の含有量は15~30重量%であることが好ましい。上記範囲内とすることで、成形時のせん断への耐久性に優れるとともに、発泡倍率を向上させることができる。上記コア剤の含有量のより好ましい下限は18重量%、好ましいより上限は24重量%である。
【0030】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、発泡開始温度(Ts)の好ましい下限は110℃、好ましい上限は250℃である。上記範囲内とすることで、射出成形の場合、特に金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック発泡成形において、コアバック発泡過程で樹脂温度が冷えてしまい発泡倍率が上がらなくなることを防止できる。より好ましい下限は120℃、より好ましい上限は180℃である。
【0031】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度(Tmax)の好ましい下限が130℃、好ましい上限は270℃である。上記範囲内とすることで、耐熱性を高めることができ、高温領域や成形加工時において、熱膨張性マイクロカプセルが破裂、収縮することを防止できる。また、マスターバッチペレット製造時に剪断により発泡してしまうことがなく、未発泡のマスターバッチペレットを安定して製造することができる。より好ましい下限は150℃、更に好ましい下限は160℃、より好ましい上限は230℃、更に好ましい上限は225℃である。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となったとき(最大変位量)における温度を意味する。
なお、本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大変位量(Dmax)の好ましい下限が300μm、好ましい上限が2000μmである。上記範囲内であると、適度な発泡倍率となり、所望の発泡性能が得られる。
【0032】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上1.0以下である。
上記D10/D50が0.6以上であることで、熱膨張性マイクロカプセルに含有される微粉の割合を低くすることができ、発泡性が高くすることができる。
上記D10/D50の好ましい下限は0.62、より好ましい下限は0.63、さらに好ましい下限は0.65であり、好ましい上限は1.0、例えば0.9以下である。
【0033】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D99/D50が1.0以上2.0以下である。
上記D99/D50が1.0に近づくほどよく、2.0以下であることで、熱膨張性マイクロカプセルに含有される粗大粒子の割合を低くすることができ、当該熱膨張性マイクロカプセルを用いた成型品の表面性が滑らかにすることができる。
上記D99/D50の好ましい上限は2.0、より好ましい上限は1.9、さらに好ましい上限は1.8、更により好ましい上限は1.75であり、好ましい下限は1.2、例えば1.3以上である。
【0034】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D99とD50の体積換算比[(D99)/(D50)]が好ましくは1.0以上である。また、上記D99とD50の体積換算比は、例えば2以上であり、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7.0以下である。
上記(D99)/(D50)が上記上限以下であることで、熱膨張性マイクロカプセルを用いた成型品の表面性をさらに滑らかなものとすることができる。
【0035】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、
D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が好ましくは0以上であり、例えば0.5以上であり、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.2以下である。
上記(D99-D10)/D50が上記上限以下であることで、熱膨張性マイクロカプセルを用いた成型品の表面性をさらに滑らかなものとすることができる。
【0036】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、D10の好ましい下限は1.0μm、より好ましい下限は5.0μm、さらに好ましい下限は8.0μmであり、好ましい上限は40μm、より好ましい上限は30μm、さらに好ましい上限は25μmである。上記D10が上記下限以上であることで、発泡性を良好なものとすることができ、上記上限以下であることで、得られる成形体の表面性を良好なものとすることができる。
また、本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、D50の好ましい下限は5μm、より好ましい下限は8μm、さらに好ましい下限は10μmであり、好ましい上限は60μm、より好ましい上限は50μm、さらに好ましい上限は40μm、さらにより好ましい上限は30μmである。上記D50が上記下限以上であることで、発泡性を良好なものとすることができ、上記上限以下であることで、表面性を良好なものとすることができる。
更に、本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、D99の好ましい下限は10μm、より好ましい下限は15μm、さらに好ましい下限は20μmであり、好ましい上限は80μm、より好ましい上限は70μm、さらに好ましい上限は60μmである。上記D99が上記下限以上であることで、発泡性を良好なものとすることができ、上記上限以下であることで、表面性を良好なものとすることができる。
【0037】
本発明において、上記「D10」とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、小粒子側からの分布の累積頻度が10体積%に達する点の粒子径である。また、「D50」とは、同様に分布の累積頻度が50体積%に達する点の粒子径であり、「D99」とは、同様に分布の累積頻度が99体積%に達する点の粒子径のことである。上記D10、D50、D99は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-950)を用いて測定できる。
【0038】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法としては特に限定されない。例えば、水性媒体を調製する工程、ニトリル系モノマーと、カルボキシル基を有するモノマーと、架橋性モノマーと、それ以外のモノマーとを含有するモノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、及び、上記モノマーを重合させる工程を行うことにより製造することができる。
本発明では、使用する原料の組成、添加量に加えて、分散工程、重合工程、分級工程を調整することで、「D10/D50」、「D99/D50」、「[(D99)/(D50)]」、「[(D99-D10)/D50]」、「D10」、「D50」、「D99」が所定の範囲内の熱膨張性マイクロカプセルを製造することができる。
【0039】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合、最初に水性媒体を調製する工程を行う。具体例には例えば、重合反応容器に、水と分散安定剤、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
【0040】
上記分散安定剤としては、例えば、コロイダルシリカ等のシリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0041】
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類、マイクロカプセルの粒子径等により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0042】
上記補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物が挙げられる。また、水溶性窒素含有化合物、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
【0043】
上記水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0044】
また、上記分散安定剤と補助安定剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましい。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
【0045】
上記コロイダルシリカの添加量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、油相100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。更に好ましい下限は2重量部、更に好ましい上限は5重量部である。また、上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の量についても熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、油相100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が1重量部である。
【0046】
上記分散安定剤及び補助安定剤に加えて、更に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルが得ることができる。上記無機塩の添加量は、通常、モノマー100重量部に対して0~100重量部が好ましい。
【0047】
上記分散安定剤を含有する水性分散媒体は、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカ等のシリカを使用する場合は、酸性媒体で重合がおこなわれ、水性媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3~4に調製される。一方、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性媒体の中で重合させる。
【0048】
次いで、熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法では、ニトリル系モノマーと、カルボキシル基を有するモノマーと、架橋性モノマーと、それ以外のモノマーとを含有するモノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。この工程では、モノマー組成物及び揮発性膨張剤を別々に水性分散媒体に添加して、水性分散媒体中で油性混合液を調製してもよいが、通常は、予め両者を混合し油性混合液としてから、水性分散媒体に添加する。この際、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で調製しておき、別の容器で攪拌しながら混合することにより油性混合液を水性分散媒体に分散させた後、重合反応容器に添加しても良い。
なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
【0049】
上記モノマー組成物中には、上記モノマーを重合させるため、重合開始剤を含有させる。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。具体例には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピル-オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物等が挙げられる。
本発明では、アクリロニトリルを優先的に重合させるために、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートあるいは2、2’-アゾビスイソブチロニトリルを用いることが好ましい。これにより、ポリメタクリロニトリルと比較して、高い可塑剤耐性を有するポリアクリロニトリルの比率を高めることが可能となる。
【0050】
上記油性混合液を水性分散媒体中に分散させる方法としては、ホモジナイザー(例えば、特殊機化工業社製)等により攪拌する方法や、ラインミキサーやエレメント式静止型分散器(スタティックミキサー)等の静止型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
なお、上記静止型分散装置には水系分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
【0051】
特に、本発明では、上記モノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程において、エレメント式静止型分散器を用いて分散させることが好ましい。
従来用いられてきた攪拌翼や回分式高速回転高剪断型分散器を用いた攪拌混合による懸濁重合では、局所的に混合が不均一となり、粗大粒子を含んだ熱膨張性マイクロカプセルが得られるという不具合がある。上記エレメント式静止型分散器を用いて、孔径サイズと流速を調整して得られた液滴を重合することで、粗大粒子と微粉が少ない熱膨張性マイクロカプセルを提供することができる。
【0052】
上記エレメント式静止型分散器を用いて分散を行う場合、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で一次分散液調製しておき、加圧した状態でエレメント式静止型分散器に投入することが好ましい。
なお、上記エレメント式静止型分散器(スタティックミキサー)は、両端が開口された筒状体内に、多数の孔が形成された複数枚の板状エレメントが装着されている。また、少なくとも一部の隣り合う複数枚の板状のエレメントの間で隣り合う板状エレメントの孔の中心が互いに会わないが少なくとも互いの開口の一部は対向するように複数枚重ね合わされている構造になっている。
【0053】
上記エレメント式静止型分散器を用いて分散を行う場合、流量に加えて、エレメント個数、エレメントに存在する孔の個数(エレメント孔数)、エレメント孔径を設定することが好ましい。
上記エレメント式静止型分散器を用いる際の流量は50~200L/minであることが好ましい。
上記エレメント個数は10個以上、20個以下であることが好ましい。
また、上記エレメント孔径は1mm以上、3mm以下であることが好ましい。
更に、エレメント孔数は65個以上、85個以下であることが好ましい。
【0054】
また、上記ホモジナイザーを用いて分散を行う場合、回転数は6000rpm以上、12000rpm以下であることが好ましく、8000rpm以上、10000rpm以下であることがより好ましい。更に、撹拌時間は5分以上、60分以下であることが好ましく、6分以上、25分以下であることがより好ましい。
なお、上記ホモジナイザーを用いて分散を行う場合は、後述する分級工程を併せて行うことが好ましい。
【0055】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上述した工程を経て得られた分散液を、例えば、加熱することによりモノマーを重合させる工程を行うことにより、製造することができる。
上記重合温度は、50~90℃とすることが好ましい。なお、上記重合温度は重合時に一定温度としてもよく、複数回に分けて段階的に上昇させてもよい。
また、上記重合圧力は、窒素で加圧して0.5~1.0MPaであることが好ましい。なお、上記重合圧力とする際は、その前に窒素置換もしくは真空操作を行うことが好ましい。
【0056】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルにおいては、上述した工程を行った後に分級工程を行ってもよい。
上記分級工程としては、例えば、振動篩式分級機、電磁振動式分級機、音波式分級機、JIS規格の篩等を使用した篩分級のほか、乾式分級(風力分級)、湿式分級等が挙げられる。
上記乾式分級(風力分級)は、空気の流れを利用して粒子を分級する方法をいう
上記風力分級としては、粒子を空気の流れにのせて、スクリーンに衝突させ、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法、粒子を旋回気流の流れにのせて、旋回気流により与えられる遠心力と、気流の旋回中心に向かう気流の流れとの相互作用によって大小二つの粒径のグループに分級する方法(遠心分級)が挙げられる。そのほか、重力分級、慣性分級等が挙げられる。
上記風力分級を行うための風力分級機としては、自由渦型遠心分級機、強制渦型遠心分級機、重力分級機、慣性分級機等が使用できる。
また、上記湿式分級としては、重力分級(液中での沈降速度差によって分級)、水力分級(粒子の沈降方向と逆向きの水流を加えて分級)、遠心分級(遠心力場で沈降速度差を利用して分級)等が挙げられる。
【0057】
本発明の熱膨張性マイクロカプセル及び熱可塑性樹脂(ベースレジン)を含有する発泡性マスターバッチもまた本発明の1つである。
【0058】
上記ベースレジンに使用される熱可塑性樹脂は特に限定されず、通常の発泡成形に用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。上記熱可塑性樹脂として、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性エラストマー、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)等が挙げられる。
上記熱可塑性エラストマーとして、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBCと略記される。以下、括弧内は略記号を表す)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、オレフィン系動的架橋エラストマー(TPV)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)等が挙げられる。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
なかでも、オレフィン系動的架橋エラストマー(TPV)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)が好ましい。
【0059】
発泡性マスターバッチにおける上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が10重量部、好ましい上限が90重量部である。
【0060】
上記発泡性マスターバッチを製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂等のベースレジン、各種添加剤等の原材料を、同方向2軸押出機等を用いて予め混練する。次いで、所定温度まで加熱し、熱膨張性マイクロカプセル等の発泡剤を添加した後、更に混練することにより得られる混練物を、ペレタイザーにて所望の大きさに切断することによりペレット形状にしてマスターバッチとする方法等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂等のベースレジンや熱膨張性マイクロカプセル等の原材料をバッチ式の混練機で混練した後、造粒機で造粒することによりペレット形状のマスターバッチを製造してもよい。
上記混練機としては、熱膨張性マイクロカプセルを破壊することなく混練できるものであれば特に限定されず、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0061】
また、本発明の熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチを用いて得られる発泡成形体もまた本発明の1つである。特に本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、表面性に優れることから、凹凸形状等の高外観品質を有する発泡シートが得られ、住宅用壁紙等の用途に好適に用いることができる。
具体的には、本発明の熱膨張性マイクロカプセル又は本発明の熱膨張性マイクロカプセルを含有する発泡性マスターバッチと、マトリックス樹脂とを混練し、成形することで発泡成形体が得られる。
【0062】
上記発泡成形体の成形方法としては、特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。射出成形の場合、工法は特に限定されず、金型に樹脂材料を一部入れて発泡させるショートショート法や金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック法等が挙げられる。
また、上記マトリックス樹脂としては、上記ベースレジンと同様の樹脂を使用することができる。
【0063】
本発明の熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体は、例えば上記形態において、ドアトリム、インストルメントパネル(インパネ)等の自動車内装材や、バンパー等の自動車外装材、壁紙、木粉プラスチック等の建材用途、靴底、人工コルク等で有利に用いることができる。また、塗料、粘着剤としても使用することができる。更に、半導体分野における熱剥離テープ等にも用いることができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、表面が均一で、軽量性に優れる発泡成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを得ることができる。
また、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0066】
(組成1[水系分散媒体、油性混合物]の調製)
固形分20重量%のコロイダルシリカ300g、ポリビニルピロリドン7g、塩化ナトリウム600gをイオン交換水2,000gに加え混合した後、pH3.5に調整し水系分散媒体を調製した。
アクリロニトリル160g、メタクリロニトリル180g、メタクリル酸250g、メタクリル酸メチル160g、トリメチロールプロパントリアクリレート6gを混合して均一溶液のモノマー組成物とした。これに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)10g、ノルマルペンタン200g、イソオクタン50gを添加してオートクレーブ中に仕込み混合して油性混合物を得た。
【0067】
(組成2[水系分散媒体、油性混合物]の調製)
表1に示す組成で油性混合物と水系分散媒体とを混合した以外は組成1と同様にして組成2[水系分散媒体、油性混合物]を得た。(表1の単位はg)
【0068】
【表1】
【0069】
(実施例1)
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
組成1で得られた油性混合物をタンク1、水系分散媒体をタンク2の中に仕込み、タンク1の油性混合物をタンク2に投入、混合し一次分散液を得た。
得られた一次分散液をエレメント式静止型分散器を用いて、流量120L/minで通過させた。通過した液はオートクレーブ中に仕込んだ。なお、使用したエレメント式静止型分散器は、板状エレメントの孔数が70個、孔径2mmのものを使用した。そして、エレメント数は20個とした。
その後、窒素置換し、反応温度60℃で15時間反応させた。反応圧力は0.5MPa、攪拌は200rpmで行った。
更に、得られた重合スラリー8000Lを圧搾脱水装置に分割して供給し、脱水した後に洗浄水の所定量を脱水機に供給し、洗浄工程を行った後、乾燥させて、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
【0070】
(発泡性マスターバッチ及び発泡成形体の作製)
ベースレジン(低密度ポリエチレン)100重量部と、得られた熱膨張性マイクロカプセル100重量部、滑剤(ステアリン酸)10重量部を添加し、バンバリーミキサーで100℃30秒間混練して押し出すと同時にペレット化し、マスターバッチペレットを得た。
得られたマスターバッチペレット3重量部と、オレフィン系動的架橋エラストマー(TPV、三井化学社製、ミラストマー7030BS、密度0.88g/cm)100重量部とを混合し、得られた混合ペレットを押出成形機のホッパーに供給して溶融混練し、押出成形を行い、厚み0.5mm、3mmの厚みの異なる板状の発泡成形体を得た。なお、成形温度は210℃とした。
【0071】
(実施例2~5、比較例1)
エレメント式静止型分散器を用いた分散において、流量、エレメント孔径、エレメント数を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0072】
(実施例6)
組成1で得られた油性混合物及び水系分散媒体をタンクに投入し、ホモジナイザー(プライミクス社製、ホモミキサー)を用い、回転数10000rpm、攪拌時間10分で混合した。
その後、窒素置換し、反応温度60℃で15時間反応させた。反応圧力は0.5MPa、攪拌は200rpmで行った。
更に、得られた重合スラリー8000Lを圧搾脱水装置に分割して供給し、脱水した後に洗浄水の所定量を脱水機に供給し、洗浄工程を行った後、乾燥させた。
次いで、風力分級機(アイシンナノテクノロジーズ社製、ドナセレック)を用いて、分級工程を行った以外は実施例1と同様にして、熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0073】
(比較例2~6)
ホモジナイザーを用いた分散における回転数及び攪拌時間、分級工程の有無を表2に示すものに変更した以外は、実施例6と同様にして、熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0074】
(比較例7)
振動篩式分級機(DALTON社製、振動篩)を用いて、分級することにより、分級工程を行った以外は、実施例6と同様にして、熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0075】
(実施例7)
組成1に代えて、組成2で得られた油性混合物及び水系分散媒体を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
また、オレフィン系動的架橋エラストマーに代えて、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS、JSR社製、TR1600、密度0.96g/cm)を用い、成形温度を170℃とした以外は実施例1と同様にして、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0076】
(実施例8)
組成1に代えて、組成2で得られた油性混合物及び水系分散媒体を用いた以外は、実施例6と同様にして、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
また、オレフィン系動的架橋エラストマーに代えて、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS、JSR社製、TR1600、密度0.96g/cm)を用い、成形温度を170℃とした以外は実施例1と同様にして、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0077】
(比較例8)
組成1に代えて、組成2で得られた油性混合物及び水系分散媒体を用いた以外は、比較例1と同様にして、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
また、オレフィン系動的架橋エラストマーに代えて、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS、JSR社製、TR1600、密度0.96g/cm)を用い、成形温度を170℃とした以外は比較例1と同様にして、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0078】
(比較例9)
組成1に代えて、組成2で得られた油性混合物及び水系分散媒体を用いた以外は、比較例7と同様にして、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
また、オレフィン系動的架橋エラストマーに代えて、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS、JSR社製、TR1600、密度0.96g/cm)を用い、成形温度を170℃とした以外は比較例7と同様にして、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を得た。
【0079】
(評価方法)
得られた熱膨張性マイクロカプセル及び発泡成形体の性能を以下の方法で評価した。結果を表2に示した。
【0080】
(1)熱膨張性マイクロカプセルの評価
(1-1)粒子径(D10、D50、D99)測定
得られた熱膨張性マイクロカプセルについて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-950)を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布により、粒子径(D10、D50、D99)を、測定した。また、測定したD10、D50、D99から「D10/D50」、「D99/D50」、「(D99)/(D50)」、「(D99-D10)/D50」を算出した。
【0081】
(1-2)発泡開始温度及び最大発泡温度
熱機械分析装置(TMA)(TMA2940、TA instruments社製)を用い、発泡開始温度(Ts)、最大発泡温度(Tmax)を測定した。具体的には、試料25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から250℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定し、変位が上がり始める温度を発泡開始温度とした。また、発泡倍率を測定し、発泡倍率が最大となる温度を最大発泡温度とした。
【0082】
(2)発泡成形体の評価
(2-1)表面粗さ[表面性]
3D形状測定機(キーエンス社製、VR-3000)により、発泡体表面の表面粗さ(Ra)を計測した。
また、成形体厚み3mmの表面性Raに対する成形体厚み0.5mmの表面性Raの変化率を表面性悪化率とした。
【0083】
(2-2)密度の測定、軽量化率
得られた発泡成形体の密度(発泡後密度)をJIS K-7112 A法(水中置換法)に準拠した方法により測定した。
また、発泡前密度に対する発泡後密度の比率を算出し、軽量化率とした。
【0084】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、表面が均一で、軽量性に優れる発泡成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供することができる。
また、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を提供することができる。
【要約】
【課題】本発明は、表面が均一で、軽量性に優れる発泡成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供する。また、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡性マスターバッチ及び発泡成形体を提供する。
【解決手段】シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上1.0以下、かつ、D99/D50が1.0以上2.0以下である、熱膨張性マイクロカプセル。
【選択図】なし