(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】熱膨張性マイクロカプセル、発泡用樹脂組成物及び発泡体
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20220823BHJP
C08J 9/32 20060101ALI20220823BHJP
C08F 220/00 20060101ALI20220823BHJP
B01J 13/14 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
C08J9/32 CER
C08J9/32 CEZ
C08F220/00
B01J13/14
(21)【出願番号】P 2022015011
(22)【出願日】2022-02-02
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2022007976
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰広
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩司
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045485(JP,A)
【文献】特開2012-067181(JP,A)
【文献】特開2006-035092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/14
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、
前記シェルは、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含み、
温度70℃で1時間静置した際の揮発分が0.55重量%以上、2重量%以下である、熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項2】
温度210℃で20分間静置した際の揮発分が20重量%以上、30重量%以下である、請求項1に記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項3】
温度210℃で20分間静置した際の揮発分に対する温度70℃で1時間静置した際の揮発分の比率が8%以下である、請求項1又は2に記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項4】
温度50℃、湿度80%以上で12時間静置した際の重量増加率が60重量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項5】
平均粒子径が10μm以上、45μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項6】
最大発泡温度(Tmax)が180℃以上、225℃以下である、請求項1~5のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル及び熱可塑性樹脂を含有する、発泡性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡性樹脂組成物を用いて得られる、発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性マイクロカプセル、及び、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡用樹脂組成物及び発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、樹脂材料の軽量化や高機能化を目的として、発泡剤を用いて材料を発泡させることが行われており、このような発泡剤としては、熱膨張性マイクロカプセルや化学発泡剤が一般的に用いられている。
【0003】
熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる液体の揮発性膨張剤が内包されているものが広く知られている。例えば、特許文献1には、低沸点の脂肪族炭化水素等の揮発性膨張剤をモノマーと混合した油性混合液を、油溶性重合触媒とともに分散剤を含有する水系分散媒体中に攪拌しながら添加し懸濁重合を行うことにより、揮発性膨張剤を内包する熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法によって得られた熱膨張性マイクロカプセルを発泡剤として使用した場合、得られる成形体に凹み等の不具合が生じ、外観的に劣るという問題がある。
また、上述の外観不良への対策を実施した場合は、発泡性能の低減を招き、得られる成形体の密度が不充分になる等の問題が生じる。
【0006】
本発明は、発泡倍率が高く、軽量かつ外観に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセル、及び、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡用樹脂組成物及び発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、前記シェルは、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含み、温度70℃で1時間静置した際の揮発分が0.55重量%以上、2重量%以下である、熱膨張性マイクロカプセルである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、得られる成形体の性能に熱膨張性マイクロカプセルの揮発分が大きく関連していることを見出した。
そこで、シェルに、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含む熱膨張性マイクロカプセルについて、揮発分を所定の範囲とすることで、発泡倍率が高く、軽量かつ外観に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、温度70℃で1時間静置した際の揮発分が0.55重量%以上、2重量%以下である。上記揮発分が0.55重量%以上であることで、成形品の外観と発泡性向上を両立させることができる。また、2重量%以下であることで、特に成形品の外観を向上させることができる。
また、このような熱膨張性マイクロカプセルは、発泡時に凝集が起こりにくく、発泡性能の向上に寄与することが可能となる。
更に、このような熱膨張性マイクロカプセルは、多粒子の集合体とした際の流動性にも優れるため、例えば、成形時にホッパー等から安定的に投入することが可能となる。
上記温度70℃で1時間静置した際の揮発分の好ましい下限は0.57重量%、より好ましい下限は0.6重量%、好ましい上限は1.8重量%、より好ましい上限は1.5重量%である。
なお、本明細書において上記温度70℃で1時間静置した際の揮発分は、オーブンを用いて温度70℃、湿度20%未満で1時間加熱した後の重量変化から測定することができる。当該揮発分の測定において、湿度が20%未満である場合、湿度の違いによる重量変化の差は無視できる程度である。
【0010】
本発明では、熱膨張性マイクロカプセルの成分を調整することや、熱膨張性マイクロカプセルを製造する際の反応工程、洗浄工程、乾燥工程を調整することにより、温度70℃で1時間静置した際の揮発分、後述する温度210℃で20分間静置した際の揮発分、揮発分の比率、重量増加率を制御することができる。
【0011】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、温度210℃で20分間静置した際の揮発分が20重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。上記揮発分が20重量%以上であることで、十分な発泡性を確保することができる。また、30重量%以下であることで、発泡成形体としたときの高外観を確保することができる。
上記温度210℃で20分間静置した際の揮発分のより好ましい下限は23重量%、更に好ましい下限は25重量%、より好ましい上限は28重量%、更に好ましい上限は27重量%である。
なお、本明細書において上記温度210℃で20分間静置した際の揮発分は、オーブンを用いて温度210℃、湿度20%未満で20分間加熱した後の重量変化から測定することができる。
【0012】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、温度210℃で20分間静置した際の揮発分に対する温度70℃で1時間静置した際の揮発分の比率([温度70℃で1時間静置した際の揮発分/温度210℃で20分間静置した際の揮発分]×100)が8%以下であることが好ましい。
上記比率が8%以下であることで、発泡後の凝集を抑制し、外観が良好(平滑)かつ発泡倍率の高い発泡成形体を得ることができる。より好ましい上限は7.5%、更に好ましい上限は5%、更により好ましい上限は3%である。好ましい下限については特に限定されないが、0%である。
【0013】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、温度50℃、湿度80%以上で12時間静置した際の重量増加率が60重量%以下であることが好ましい。上記重量増加率が60重量%以下であることで、発泡成形体にしたときの外観を向上させることができる。
上記重量増加率のより好ましい上限は50重量%、更に好ましい上限は35重量%、好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は20重量%である。
なお、本明細書において上記重量増加率は、恒温恒湿器を用いて温度50℃、湿度80%以上で12時間静置した際の重量変化から測定することができる。当該重量増加率の測定において、湿度が80%以上である場合、湿度の違いによる重量変化の差は無視できる程度である。
【0014】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度(Tmax)の好ましい下限が180℃、好ましい上限が225℃である。上記範囲内とすることで、耐熱性が高くなり、熱膨張性マイクロカプセルを含有する組成物を高温領域で成形する際に、熱膨張性マイクロカプセルが破裂、収縮することを防止することができる。また、成形時における熱膨張性マイクロカプセル同士の凝集を抑制して、外観を良好なものとすることができる。より好ましい下限は185℃、更に好ましい下限は190℃、より好ましい上限は222℃、更に好ましい上限は220℃である。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となったとき(最大変位量)における温度を意味する。また、変位が上がり始める温度を発泡開始温度とする。
【0015】
また、発泡開始温度(Ts)の好ましい上限は170℃である。170℃以下とすることで、発泡が容易となり所望の発泡倍率を実現することができる。より好ましい上限は165℃であり、好ましい下限は145℃、より好ましい上限は165℃である。
【0016】
更に、本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、熱機械分析で測定した最大変位量(Dmax)の好ましい下限が350μm、好ましい上限が1000μmである。上記範囲内とすることで、発泡倍率が向上し、所望の発泡性能が得られる。なお、上記最大変位量は、所定量の熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、所定量全体の熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となるときの値をいう。
【0017】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径(体積平均粒子径)の好ましい下限は10μm、好ましい上限は45μmである。上記範囲内とすることで、得られる成形体の気泡が適度なものとなり、充分な発泡倍率が得られ、外観の面でも優れたものとすることができる。より好ましい下限は15μm、更に好ましい下限は20μm、より好ましい上限は35μm、更に好ましい上限は32μm、特に好ましい上限は30μmである。
また、本発明の熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径のCV値は、35%以下であることが好ましく、通常10%以上であり、好ましくは15%以上である。
なお、上記平均粒子径(体積平均粒子径)及びCV値は、粒度分布径測定器等を用いることで測定することができる。
【0018】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを構成するシェルは、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含むものである。
【0019】
上記シェルは、二酸化ケイ素を含む。
上記二酸化ケイ素は、上記シェルの表面に付着していてもよく、シェル内に混在していてもよい。なお、上記二酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の水和物も含まれる。
上記二酸化ケイ素としては、シリカ微粒子に含まれるものやコロイダルシリカに含まれるもの等が挙げられる。
上記コロイダルシリカは、二酸化ケイ素又は二酸化ケイ素の水和物のコロイドである。
上記二酸化ケイ素を含有するコロイダルシリカとしては、平均粒子径が10~300nmであることが好ましい。
【0020】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルにおける、上記二酸化ケイ素の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は5重量%である。上記二酸化ケイ素の含有量を1重量%以上とすることで、熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径を安定に保つことができ、上記二酸化ケイ素の含有量を5重量%以下とすることで、発泡性能に優れる熱膨張性マイクロカプセルを得ることが可能となる。上記二酸化ケイ素の含有量のより好ましい下限は1.5重量%、より好ましい上限は3重量%である。
【0021】
上記シェルは、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、並びに、二酸化ケイ素を含む。
【0022】
上記カルボニル基含有モノマーとしては、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルモノマー、多官能性カルボン酸エステルモノマー等が挙げられる。
【0023】
上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、イオン架橋させるための遊離カルボキシル基を分子当たり1個持つものを用いることができる。
具体的には例えば、不飽和カルボン酸やその無水物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸が挙げられる。
これらのなかでは、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
【0024】
上記モノマー組成物中における、上記炭素数3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーの含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は50重量%である。5重量%以上とすることで、最大発泡温度を高めることができ、50重量%以下とすることで、発泡倍率を向上させることが可能となる。好ましい下限は10重量%、好ましい上限は30重量%である。
【0025】
上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル類が好ましい。また、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環・芳香環・複素環含有メタクリル酸エステル類が好ましい。
【0026】
上記モノマー組成物中における、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルモノマーの含有量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は35重量%である。上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルモノマーの含有量を0.01重量%以上とすることで、熱膨張性マイクロカプセルを用いた組成物の分散性を向上させることができ、35重量%以下とすることで、セル壁のガスバリア性を向上させて、熱膨張性を改善することが可能となる。上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルモノマーの含有量のより好ましい下限は0.05重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0027】
上記多官能性カルボン酸エステルモノマーとは、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有するカルボン酸エステルモノマーをいい、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルモノマーとは異なるものである。
上記多官能性カルボン酸エステルモノマーは、架橋剤としての役割を有する。上記多官能性カルボン酸エステルモノマーを含有することにより、シェルの強度を強化することができ、熱膨張時にセル壁が破泡し難くなる。
【0028】
上記多官能性カルボン酸エステルモノマーとしては、具体的には例えば、ジ(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、重量平均分子量が200~600であるポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレートを用いてもよい。
上記3官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのなかでは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能性のものや、ポリエチレングリコール等の2官能性の(メタ)アクリレートが、アクリロニトリルを主体としたシェルには比較的均一に架橋が施される。
【0029】
上記モノマー組成物中における、上記多官能性カルボン酸エステルモノマーの含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は1.0重量%である。上記多官能性カルボン酸エステルモノマーの含有量を0.1重量%以上とすることで、架橋剤としての効果を充分に発揮することができ、上記多官能性カルボン酸エステルモノマーの含有量を1.0重量%以下とすることで、熱膨張性マイクロカプセルの発泡倍率を向上させることが可能となる。上記多官能性カルボン酸エステルモノマーの含有量のより好ましい下限は0.15重量%、より好ましい上限は0.9重量%である。
【0030】
上記モノマー組成物は、上記カルボニル基含有モノマー以外に、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマーを含有することが好ましい。
上記ニトリル系モノマーを添加することで、シェルのガスバリア性を向上させることができる。
また、上記カルボニル基含有モノマー、ニトリル系モノマー以外にも、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、スチレン系モノマー等を含有してもよい。
【0031】
上記モノマー組成物中のニトリル系モノマーの含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は90重量%である。40重量%以上とすることで、シェルのガスバリア性を高めて発泡倍率を向上させることができる。90重量%以下とすることで、耐熱性を向上させたり、黄変を防止したりすることができる。より好ましい下限は50重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0032】
特に、耐熱性、発泡倍率、軽量性、硬度、耐磨耗性の観点から、上記モノマー組成物は、ニトリル系モノマー40~90重量%と、カルボニル基含有モノマー10~60重量%とを含有することが好ましい。
【0033】
上記モノマー組成物中には、上記モノマーを重合させるため、重合開始剤を含有させる。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。
具体的には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル等が挙げられる。
また、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
また、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピル-オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
更に、ジ(2-エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
加えて、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物等が挙げられる。
【0034】
上記シェルを構成する重合体の重量平均分子量の好ましい下限は10万、好ましい上限は200万である。10万以上であると、シェルの強度の低下を抑制することができ、200万以下であると、シェルの強度が過度な上昇を抑え、発泡倍率の低下を抑制することができる。
【0035】
上記シェルは、更に必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
【0036】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上記シェルにコア剤として揮発性膨張剤が内包されている。
上記揮発性膨張剤は、シェルを構成するポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる物質であり、低沸点有機溶剤が好適である。
上記揮発性膨張剤としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン、石油エーテル、イソオクタン、オクタン、デカン、イソドデカン、ドデカン、ヘキサンデカン等の低分子量炭化水素等が挙げられる。
また、CCl3F、CCl2F2、CClF3、CClF2-CClF2等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。なかでも、イソブタン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-へキサン、イソオクタン、イソドデカン及び、これらの混合物が好ましい。これらの揮発性膨張剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状となる熱分解型化合物を用いてもよい。
【0037】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルでは、上述した揮発性膨張剤のなかでも、炭素数が5以下の低沸点炭化水素を用いることが好ましい。このような炭化水素を用いることにより、発泡倍率が高く、速やかに発泡を開始する熱膨張性マイクロカプセルとすることができる。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物を用いることとしてもよい。
【0038】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、水性媒体を調製する工程、モノマー組成物と揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、及び、上記モノマーを重合させる工程を行うことにより製造することができる。
上記モノマー組成物としては、例えば、上述したニトリル系モノマー40~90重量%と、カルボニル基含有モノマー10~60重量%とを含有するものを用いることができる。
【0039】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合、最初に水性媒体を調製する工程を行う。具体的には例えば、重合反応容器に、水と二酸化ケイ素を含有する分散安定剤、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、二酸化ケイ素を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
【0040】
上記二酸化ケイ素を含有する分散安定剤としては、コロイダルシリカが挙げられる。
上記コロイダルシリカとしては、コロイド溶液(水分散液)のpHが7を超えるアルカリ性コロイダルシリカを用いてもよく、pHが7未満の酸性コロイダルシリカを用いてもよい。なかでも、アルカリ性コロイダルシリカがより好ましい。
また、上記コロイダルシリカとしては、固形分としての二酸化ケイ素を10~50重量%含有し、単分散であることが好ましい。
【0041】
上記二酸化ケイ素以外の分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0042】
上記二酸化ケイ素を含有する分散安定剤の添加量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、油性混合液(油相)100重量部に対して、好ましい下限が2.5重量部、好ましい上限が7重量部である。更に好ましい下限は3重量部、更に好ましい上限は5重量部である。なお、上記油相の量は、モノマーと揮発性膨張剤との合計量を意味する。
【0043】
上記補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物等が挙げられる。また、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
【0044】
また、上記分散安定剤と補助安定剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましい。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
【0045】
上記水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0046】
上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の量については、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、油性混合液100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が0.2重量部である。
【0047】
上記分散安定剤及び補助安定剤に加えて、更に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルを得ることができる。上記無機塩の添加量は、通常、モノマー100重量部に対して0~100重量部が好ましい。
【0048】
上記分散安定剤を含有する水性分散媒体は、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤として二酸化ケイ素を使用する場合は、酸性媒体で重合がおこなわれ、水性媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3~4に調製される。一方、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性媒体の中で重合させる。
【0049】
次いで、熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法では、モノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。
具体的には、例えば、上述したニトリル系モノマー40~90重量%と、カルボニル基含有モノマー10~60重量%とを含有するモノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。この工程では、モノマー組成物及び揮発性膨張剤を別々に水性分散媒体に添加して、水性分散媒体中で油性混合液を調製してもよいが、通常は、予め両者を混合し油性混合液としてから、水性分散媒体に添加する。この際、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で調製しておき、別の容器で攪拌しながら混合することにより油性混合液を水性分散媒体に分散させた後(一次分散液)、重合反応容器に添加してもよい。
なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
【0050】
上記モノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程としては、後退翼等の攪拌翼や回分式高速回転高せん断型分散器(例えば特開平7-96167号)及び連続式高速回転高せん断型分散器(例えば特開2000-191817号)等により攪拌する方法が挙げられる。また、ラインミキサーや静的管内混合器(スタティックミキサー)等の管内型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
【0051】
本発明では、上記モノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程において、静的管内混合器を用いて分散させることが好ましい。上記静的管内混合器を用いることで、槽内ではなく管内での混合、及び、撹拌翼を用いない静的な混合が可能となるため、本発明の熱膨張性マイクロカプセルを好適に作製することができる。また、その際に、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で一次分散液調製しておき、加圧した状態で静的管内混合器に投入することが好ましい。
なお、上記静的管内混合器(スタティックミキサー)は、両端が開口された筒状体内に、多数の孔が形成された複数枚の板状エレメントが装着されている。また、少なくとも一部の隣り合う複数枚の板状のエレメントの間で隣り合う板状エレメントの孔の中心が互いに会わないが少なくとも互いの開口の一部は対向するように複数枚重ね合わされている構造になっている。
このような工程を行うことにより、本発明の熱膨張性マイクロカプセルを好適に製造することができる。また、上記加圧は、1~6MPaで行うことが好ましい。
また、流量によりエレメントに存在する孔の個数を設定することが好ましい。
更に、上記加圧は、孔径と流速により設定できる。上記孔径は1~3mmであることが好ましい。流速については100~500L/minが好ましい。具体的には、孔径2mm、流速200L/minなどの組み合わせが好適である。
【0052】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上述した工程を経て得られた分散液を、加熱することによりモノマーを重合させる工程、及び、洗浄する工程を行うことにより、製造することができる。このような方法により製造された熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度が高く、耐熱性に優れ、高温領域での成形時においても破裂、収縮することがない。
【0053】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法では、洗浄工程を行う。
上記洗浄工程としては、例えば、浸漬洗浄、流水洗浄、シャワー洗浄方法等が挙げられ、さらにはこれらと超音波や揺動を合わせた洗浄方法等を適用することができる。
また、上記洗浄工程は、脱水工程と併用して行うことで生産効率を向上させることが可能となる。具体的には以下の方法が挙げられる。
圧搾脱水機で供給されたスラリーをウエットケーキにした後に所定量の洗浄水(イオン交換水が望ましい)を脱水機内に供給し再度、圧搾する。再度、洗浄水を供給し圧搾する。この工程を数回繰り返す。ここで脱水機に供給するスラリー量と洗浄水の量や比率及び洗浄回数が塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を除去する上で重要となる。
この工程を経ることで、無機塩を除去することが可能となり、半導体用途や自動車部材用途(成形用途)における設備の腐食を防止することができる。
上記洗浄工程における洗浄水量[体積]は、重合スラリーに対して、2.5~5倍量とすることが好ましい。
【0054】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法では、次いで乾燥工程を行う。
上記乾燥工程では、液体成分を揮発させる目的のほか、シェルの二酸化ケイ素含有量を調整することができる。
【0055】
上記乾燥工程としては、自然乾燥、熱風乾燥(流動層乾燥)、真空乾燥等の方法を用いることができる。
上記乾燥温度は、30℃以上が好ましく、32℃以上がより好ましく、35℃以上が更に好ましく、70℃以下が好ましく、68℃以下がより好ましく、65℃以下が更に好ましい。
また、上記乾燥工程における乾燥時間(総乾燥時間)は、12時間以上が好ましく、13時間以上がより好ましく、14時間以上がより好ましく、20時間以下が好ましく、18時間以下がより好ましい。
【0056】
上記乾燥工程は、一定温度で乾燥しても良く、段階的に乾燥温度を変化させて行ってもよい。
また、段階的に乾燥温度を変化させる場合、複数回に分けてもよい。
その際の乾燥工程の回数は、2~4回とすることが好ましい。
【0057】
上記乾燥方法としては、特に真空乾燥を用いることが好ましい。その場合は、加熱真空振動乾燥機等を用いる方法等が挙げられる。
また、上記真空乾燥における真空値の範囲としては、-0.065~-0.100MPaであることが好ましく、-0.070~-0.095MPaであることがより好ましく、-0.075~-0.090MPaであることが更に好ましい。なお、上記真空値は真空マノメーターや真空計によって測定できる。
【0058】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルに、熱可塑性樹脂等のマトリクス樹脂を加えた発泡性樹脂組成物、又は、熱膨張性マイクロカプセルと熱可塑性樹脂等のベースレジンとを混合することでマスターバッチペレットが得られる。
また、上記マスターバッチペレットに熱可塑性樹脂等のマトリクス樹脂を加えた発泡性樹脂組成物を添加し、射出成形等の成形方法を用いて成形した後、成形時の加熱により、上記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、発泡を製造することができる。
【0059】
本発明の発泡性樹脂組成物は、マトリクス樹脂100重量部に対して、熱膨張性マイクロカプセルを0.1~10重量部含有することが好ましい。
【0060】
また、上記発泡性樹脂組成物は、化学発泡剤を含有していてもよい。
上記化学発泡剤としては、常温で粉末状のものであれば特に限定されず、従来から化学発泡剤として汎用されているものを使用することができる。
上記化学発泡剤は、有機系発泡剤と無機系発泡剤に分類され、それぞれ更に熱分解型と反応型に分類される。
有機系の熱分解型発泡剤としては、ADCA(アゾジカーボンアミド)、DPT(N,N’-ジニトロペンタメチレンテトラミン)、OBSH(4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)等がよく用いられる。
無機系の熱分解型発泡剤としては、炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸塩の組み合せなどがある。上記化学発泡剤としては、熱分解型化学発泡剤を使用することが好ましい。また、熱分解型化学発泡剤の性能を決定するのは、分解温度,ガス発生量,粒子径である。
【0061】
上記化学発泡剤の分解温度は180~200℃であることが好ましい。
上記分解温度は、必要に応じて尿素系や亜鉛系の発泡助剤などを組み合わせて使用することにより調整することができる。
上記化学発泡剤のガス発生量は、220~240ml/gであることが好ましい。なお、上記ガス発生量とは、化学発泡剤が分解する際に発生するガスの体積である。このガスが気泡内のガスになるため、発泡倍率に影響する。
更に、上記化学発泡剤と、クエン酸塩や酸化亜鉛と併用することで気泡径を小さくすることが可能である。
【0062】
上記化学発泡剤は通常は粉末であり、粒子径が小さいほど単位重量当たりの粒子数が多くなる。粒子数が多いほど発生気泡数が多くなる傾向にある。
上記化学発泡剤の平均粒子径(メジアン径)の好ましい下限は4μm、好ましい上限は20μmである。上記範囲内とすることで、得られる成形体の気泡が適度なものとなり、充分な発泡倍率が得られ、外観の面でも優れたものとすることができる。より好ましい下限は5μm、より好ましい上限は10μmである。
【0063】
上記発泡成形体の成形方法としては、特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。射出成形の場合、工法は特に限定されず、金型に樹脂材料を一部入れて発泡させるショートショート法や金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、発泡倍率が高く、軽量かつ外観に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセル、及び、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡用樹脂組成物及び発泡体を作製することができる。また、本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、自動車部材、塗料、粘着剤及びインクに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0066】
(実施例1)
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
固形分20重量%のコロイダルシリカ330重量部(平均粒子径20nm)、ポリビニルピロリドン12重量部、塩化ナトリウム1096重量部、亜硝酸ナトリウム0.85重量部をイオン交換水3300重量部に加え混合した後、水系分散媒体を調製した。なお、コロイダルシリカ(水分散液)としては、アルカリ性コロイダルシリカを用いた。
アクリロニトリル390重量部(28重量%)、メタクリロニトリル585重量部(42重量%)、メタクリル酸420重量部(29.9重量%)、メタクリル酸メチル1.4重量部(0.1重量%)を混合して均一溶液のモノマー組成物(括弧内はモノマー組成物全体に対する重量%)とした。これに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)11.1重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8.3重量部、nペンタン440重量部を添加してタンク1の中に仕込み混合した。
次いで、水系分散媒体をタンク2の中に仕込み、タンク1の油性混合物をタンク2に投入、混合し一次分散液を得た。この時、一次分散液のpHは3.5~4.0となる。得られた一次分散液を静的管内混合器(スタティックミキサー、株式会社フジキン社製、分散君)を用いて、流速が200L/min、圧力1.5MPaで通過させた。通過した液はオートクレーブ中に仕込んだ。
なお、使用したエレメント式静止型分散器は、板状エレメントが厚さ5mm、有効直径15mm、板状エレメントの孔径2mmで杵状の形状をしており、隣り合う異なる種類の板状エレメントの間で少なくとも一部が対向することができる孔数が78個のものを使用した。そして、第1エレメントと第2エレメントの組合せで構成されるユニットの数は10組で各板状エレメントの孔を通過する流体となるようにセットした。
その後、窒素置換し、反応温度60℃で15時間反応させた。反応圧力は0.5MPa、攪拌は200rpmで行った。
その後、得られた重合スラリー8000Lを圧搾脱水装置(石垣社製、フィルタープレス)に分割して供給し、脱水した後に洗浄水の所定量を脱水機に供給し、洗浄工程を行い、乾燥前熱膨張性マイクロカプセルを得た。なお、洗浄工程は、重合スラリー300Lに対して、1000Lの洗浄水を用いて洗浄を行った。
【0067】
得られた乾燥前熱膨張性マイクロカプセルについて、加熱真空振動乾燥機(中央化工機社製、VU型)を用いて真空乾燥(総乾燥時間:12.5時間、真空値:-0.085MPa)を行うことにより、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
真空乾燥について、具体的には、設定温度45、50、55℃で5.5時間乾燥(第1乾燥工程)を行い、(いずれも10℃/hrで昇温)その後、設定温度60、65℃で1.5時間乾燥(第2乾燥工程)を行った。(いずれも10℃/hrで昇温)次いで、5℃/hrで昇温した後、設定温度70℃、乾燥温度(初期)43℃、乾燥温度(終了時)60℃で5.5時間乾燥(第3乾燥工程)を行った。なお、設定温度とは乾燥機のジャケット設定温度、乾燥時間とは実際の乾燥時間のことをいう。各設定温度での乾燥温度、時間を表2及び表3に示す。
【0068】
(発泡体前駆体の製造)
表1に示す配合にてヘンシェルミキサー(120℃でドライアップ)を用いて混合を行い、発泡性樹脂組成物を得た。
得られた発泡性樹脂組成物300gを8インチのラボロール機にて3分間加熱混錬した。ロール温度は発泡体の発泡開始温度から30℃~50℃以下の温度とした。
次に、混錬後のロールシートを材料として、ロールと同じ温度設定のプレス機にて厚み1~2mm、縦150mm×横150mmに成形しプレスシート(発泡前駆体)を得た。なお、プレス条件は予熱3分間、加圧3分間、冷却3分間で、面圧が予熱時は5~8MPa、加圧時と冷却時は20MPaとした。
【0069】
(実施例2~6、比較例1~5)
得られた乾燥前熱膨張性マイクロカプセルについて、表2及び表3に示す乾燥条件(第1~第3乾燥工程、総乾燥時間、真空値)、洗浄条件(重合スラリー300Lに対する洗浄水量)で乾燥工程、洗浄工程を行った以外は実施例1と同様にして熱膨張性マイクロカプセル、発泡前駆体を得た。
【0070】
【0071】
(1)熱膨張性マイクロカプセルの評価
(1-1)発泡開始温度、最大発泡温度、最大変位量
熱機械分析装置(TMA)(TMA2940、TA instruments社製)を用い、発泡開始温度(Ts)、最大変位量(Dmax)及び最大発泡温度(Tmax)を測定した。具体的には、試料25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から220℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定し、変位が上がり始める温度を発泡開始温度、その変位の最大値を最大変位量とし、最大変位量における温度を最大発泡温度とした。
【0072】
(1-2)平均粒子径(体積平均粒子径)
粒度分布径測定器(LA-950、HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径を測定した。
【0073】
(1-3)揮発分(70℃で1時間、210℃で20分間)
熱膨張性マイクロカプセル約10gをアルミカップに計量し、70℃で1時間加熱した後、デシケーター中で40℃以下まで放冷し、その重量を量る。次の式により揮発分を算出した。
また、210℃で20分間加熱した後の揮発分についても同様に測定した。また、温度210℃で20分間静置した際の揮発分に対する温度70℃で1時間静置した際の揮発分の比率([温度70℃で1時間静置した際の揮発分/温度210℃で20分間静置した際の揮発分]×100)を算出した。
V=[(B-C)/(B-A)]×100
V:揮発分(重量%)
A:アルミカップの重量(g)
B:試料の入ったアルミカップの質量(g)
C:試料の入ったアルミカップの加熱放冷後の重量(g)
【0074】
(1-4)重量増加率
温度50℃、湿度80%以上で12時間静置した前後の揮発分を前記(1-3)の「70℃、1時間」と同様の方法で測定して、次の式により重量増加率を測定した。
D=(E-F)/E×100
D:重量増加率
E:温度50℃、湿度80%以上で12時間静置した後の揮発分
F:温度50℃、湿度80%以上で12時間静置する前の揮発分
【0075】
(1-5)SiO2含有量
熱膨張性マイクロカプセルを微量(約0.01g)採取し、EDSエネルギー分散形X線分析装置(JSM-6510、日本電子社製)を用いてSiO2含有量(熱膨張性マイクロカプセル中の二酸化ケイ素含有量)を測定した。
【0076】
(1-6)熱膨張性マイクロカプセルの発泡時の凝集度
熱膨張性マイクロカプセルを0.05g秤量しアルミカップに入れ、200℃で1.5分静置後の発泡した熱膨張性マイクロカプセルの凝集度をマイクロスコープで確認した。なお、凝集が全く見られない場合を「無し」、わずかに凝集している場合を「あり」、ほとんどの熱膨張性マイクロカプセルが凝集している場合を「強く凝集」とした。
【0077】
(1-7)ホッパー流動性
JIS K7370記載の嵩比重測定用の容器を使用し、得られた熱膨張性マイクロカプセルをホッパーの上部まで投入し、その後、自重落下させホッパーが空になるとき(熱膨張性マイクロカプセルが全て落ちたときの)の秒数を測定した。
【0078】
(2)発泡体の評価
(2-1)外観(凹み個数)
得られたプレスシート(発泡前駆体)をテフロン(登録商標)シート上に置き、200℃のギアオーブン内に入れて10分間加熱して熱膨張性マイクロカプセルを発泡させた。10分後にギアオーブンから取り出して30分以上放冷し、放冷後の発泡体サンプルの外観を観察し、表面の凹凸から凹み個数をカウントした。
【0079】
(2-2)密度測定
得られた発泡体の密度(発泡後密度)をJIS K-7112 A法(水中置換法)に準拠した方法により測定した。
【0080】
【0081】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、発泡倍率が高く、軽量かつ外観に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセル、及び、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡用樹脂組成物及び発泡体を提供することができる。
【要約】
【課題】発泡倍率が高く、軽量かつ外観に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセル、及び、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡用樹脂組成物及び発泡体を提供する。
【解決手段】重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、前記シェルは、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含み、温度70℃で1時間静置した際の揮発分が0.55重量%以上、2重量%以下である、熱膨張性マイクロカプセル。
【選択図】なし