(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】溶剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20220824BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C11D7/50
B08B3/08 A
(21)【出願番号】P 2019024335
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長舩 夏奈子
(72)【発明者】
【氏名】西口 祥雄
(72)【発明者】
【氏名】大谷 充孝
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038933(WO,A1)
【文献】特開平10-130183(JP,A)
【文献】特表2004-514025(JP,A)
【文献】特開2015-143359(JP,A)
【文献】特開2005-264133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0090408(US,A1)
【文献】特開平10-152573(JP,A)
【文献】特開2014-005418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
B08B 3/08
C09K 3/30
C09K 5/00- 5/20
C09K 3/18
C09D 1/00-201/10
C10M 101/00-177/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物であって、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む溶剤組成物。
【請求項2】
シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))または1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(CF
3-CH
2-CF
2-CH
3、HFC-365mfc)を含む、請求項1に記載の溶剤組成物。
【請求項3】
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類、ハイドロフルオロカーボン(HFC)類、ハイドロフルオロエーテル(HFE)類、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)類から選ばれる、有機溶剤を含む、請求項1または2に記載の溶剤組成物。
【請求項4】
安定剤、難燃剤、界面活性剤、金属不動態化剤または防錆剤を含む、請求項1~3のいずれかに記載の溶剤組成物。
【請求項5】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が、数平均分子量1300~8000で一般式(1)で表される化合物、数平均分子量3200~23000で一般式(2)で表される化合物、数平均分子量2000~11000で一般式(3)で表される化合物または数平均分子量1000~20000で一般式(4)で表される化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の溶剤組成物。
【化1】
(式中、mおよびnは1以上の整数であり、m+n=8~120を満たし、R
1およびR
2はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、pおよびqは1以上の整数であり、p+q=25~350を満たし、R
3およびR
4はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、rは10~80の整数であり、R
5は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、s、t、uおよびvは1以上の整数であり、t/s=2~5、(u+v)/(s+t+u+v)=0.07~0.2、s/(s+t+u+v)=0.1~0.3を満たし、R
6およびR
7はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。)
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の溶剤組成物と、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物とを含む、溶液。
【請求項7】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が、数平均分子量1300~8000で一般式(1)で表される化合物、数平均分子量3200~23000で一般式(2)で表される化合物、数平均分子量2000~11000で一般式(3)で表される化合物または数平均分子量1000~20000で一般式(4)で表される化合物である、請求項6に記載の溶液。
【化2】
(式中、mおよびnは1以上の整数であり、m+n=8~120を満たし、R
1およびR
2はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、pおよびqは1以上の整数であり、p+q=25~350を満たし、R
3およびR
4はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、rは10~80の整数であり、R
5は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、s、t、uおよびvは1以上の整数であり、t/s=2~5、(u+v)/(s+t+u+v)=0.07~0.2、s/(s+t+u+v)=0.1~0.3を満たし、R
6およびR
7はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。)
【請求項8】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を物品に塗布して塗膜を形成するための溶液である、請求項6または7に記載の溶液。
【請求項9】
請求項8に記載の溶液を物品に塗布し、次いで該物品から溶剤組成物を蒸発させて、該物品にパーフルオロポリエーテル基を有する化合物を含む塗膜を形成する方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載の溶剤組成物を用いて、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を洗浄する方法。
【請求項11】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が、数平均分子量1300~8000で一般式(1)で表される化合物、数平均分子量3200~23000で一般式(2)で表される化合物、数平均分子量2000~11000で一般式(3)で表される化合物または数平均分子量1000~20000で一般式(4)で表される化合物である、請求項8に記載の方法。
【化3】
(式中、mおよびnは1以上の整数であり、m+n=8~120を満たし、R
1およびR
2はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、pおよびqは1以上の整数であり、p+q=25~350を満たし、R
3およびR
4はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、rは10~80の整数であり、R
5は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、s、t、uおよびvは1以上の整数であり、t/s=2~5、(u+v)/(s+t+u+v)=0.07~0.2、s/(s+t+u+v)=0.1~0.3を満たし、R
6およびR
7はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロポリエーテル基(以下、「PFPE基」ともいう)を有する化合物を溶解するための溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
PFPE基を有する化合物(以下、単に「PFPE」ともいう)は、一般的に熱的、化学的に安定であり、電気絶縁性に優れる等といった種々の特徴を有する。PFPE基を有する化合物は、例えば、磁気記録媒体用等のフッ素系潤滑剤として知られている。
【0003】
PFPE基を有する化合物は一般的に含フッ素系溶剤以外には溶解し難い。PFPE基を有する化合物を含む潤滑剤溶液の調製に用いる溶剤や、PFPE基を有する化合物が付着した物品から該化合物を除去するための洗浄剤として、クロロフルオロカーボン類(以下、「CFC類」ともいう)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(以下、「HCFC類」ともいう)、パーフルオロカーボン類(以下、「PFC類」ともいう)、ハイドロフルオロカーボン類(以下、「HFC類」ともいう)等が使用されてきた。しかしながら、CFC類、HCFC類等は、オゾン層への悪影響の懸念から、先進国においては、使用が制限されたり、禁止される方向にある。PFC類やHFC類は、地球温暖化係数(GWP)が大きいことから、京都議定書で規制対象物質となっている。このことから、地球環境に与える影響が小さい物質の開発が求められている。これらの代替品としてハイドロクロロフルオロオレフィン類やハイドロフルオロオレフィン類(以下、これらを総称して「HFO類」ともいう)やハイドロフルオロエーテル類(以下、「HFE類」ともいう)が着目されている。
【0004】
HFE類の一種として、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(以下、「HFE-356mmz」ともいう)が知られている(特許文献1、2)。
【0005】
また、HFE類の別の例として、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(以下、「HFE-347pc-f」ともいう)が知られている。特許文献3には、溶剤としてHFE-347pc-fを用いた潤滑剤塗布溶液について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許5273592号公報
【文献】米国特許7429557号公報
【文献】特許4613537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、地球環境への負荷が小さく、かつ、PFPE基を有する化合物を溶解したときに安定性に優れる溶液とすることのできる溶剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)を含む組成物が、パーフルオロポリエーテル(PFPE)を十分に溶解し、洗浄剤、溶剤として優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の実施形態の一つは、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物であって、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを含む溶剤組成物である。この溶剤組成物において、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)から選択される少なくとも一つの化合物を含んでもよい。また、この溶剤組成物において、ハイドロクロロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類、ハイドロフルオロオレフィン類から選ばれる有機溶剤を含んでもよい。また、この溶剤組成物において、安定剤、難燃剤、界面活性剤、金属不動態化剤または防錆剤を含んでもよい。
【0010】
本発明の実施形態の一つは、前記溶剤組成物と、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物とを含む、溶液である。この溶液はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物を物品に塗布して塗膜を形成するための溶液として用いることができる。
【0011】
本発明の実施形態の一つは、前記溶液を物品の表面に塗布し、次いで物品から溶剤組成物を蒸発させて、物品の表面にパーフルオロポリエーテル基を有する化合物を含む塗膜を形成する方法である。
【0012】
本発明の実施形態の一つは、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物が付着した物品を、前記溶剤組成物を用いて洗浄する方法である。
【0013】
パーフルオロポリエーテル基を有する化合物は、数平均分子量1300~8000で一般式(1)で表される化合物、数平均分子量3200~23000で一般式(2)で表される化合物、数平均分子量2000~11000で、一般式(3)で表される化合物、または、数平均分子量1000~20000を有し、一般式(4)で表される化合物であってもよい。
【化1】
【0014】
一般式(1)中、mおよびnは1以上の整数であり、m+n=8~120を満たし、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。一般式(2)中、pおよびqは1以上の整数であり、p+q=25~350を満たし、R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。一般式(3)中、rは10~80の整数であり、R5は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。一般式(4)中、s、t、uおよびvは1以上の整数であり、t/s=2~5、(u+v)/(s+t+u+v)=0.07~0.2、s/(s+t+u+v)=0.1~0.3を満たし、R6およびR7はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地球環境への負荷が小さく、かつ、PFPE基を有する化合物を溶解したときに安定性に優れる溶液とすることのできる溶剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
後述の実施例においても示されるように、HFE類とフッ素系潤滑剤の組み合わせによっては、該フッ素系潤滑剤が該HFE類に溶解しないこともあり、また、溶液とすることができたとしても、安定的に均一溶液を保持できるか否かは不明である。このように、潤滑剤溶液を調製するために、溶剤とPFPE基を有する化合物の好適な組み合わせを見出すことは容易ではない。特許文献3には、HFE-356mmzを含む混合溶剤を用いた洗浄方法について記載されているものの、被洗浄物表面に付着している汚れがPFPE基を有する化合物である場合についての詳細は記載されておらず、PFPE基を有する化合物を溶液状態としたときの安定性についても不明であった。
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下の実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされたものと解される。
【0018】
[1.HFE-356mmzを含む溶剤組成物]
本実施形態では、PFPE基を有する化合物を溶解するための溶剤組成物であって、HFE-356mmzを含む溶剤組成物(以下、単に「本溶剤組成物」ともいう)を説明する。
【0019】
(HFE-356mmz)
本溶剤組成物には、HFE-356mmzが含まれ、例えば、30質量%以上含まれ、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上含まれる。また、実質的にHFE-356mmzのみが含まれてもよい。なお、HFE-356mmzは公知の化合物であり、例えば、アルカリ存在下、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロアルコールとジメチル硫酸との反応により得ることができる(米国特許3346448号)。
【0020】
(1233zd(Z)、HFC-365mfc)
本溶剤組成物には、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(以下、「1233zd(Z)」ともいう)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(以下、「HFC-365mfc」ともいう)が含まれてもよく、例えば、本溶剤組成物において、1233zd(Z)とHFC-365mfcとの合計の割合は、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、10質量%以下であってもよい。なお、1233zd(Z)(CELEFIN(登録商標)1233Z(セントラル硝子社製))、HFC-365mfc(ソルカン(登録商標)365mfc(ソルベイ社製))は公知の化合物であり、それぞれ市販されている。
【0021】
(他の有機溶剤)
本溶剤組成物には、他の有機溶剤が含まれてもよい。例えば、本溶剤組成物において、他の有機溶剤は30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下含まれてもよい。他の有機溶剤としては、例えば、ハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC類)、ハイドロフルオロカーボン類(HFC類)、ハイドロフルオロエーテル類(HFE類)、ハイドロフルオロオレフィン類(HFO類)が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
HCFC類としては、例えば、炭素数3~8の鎖状または環状のHCFC類が挙げられる。より具体的には、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225ca)、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225cb)等が挙げられるが、これらに限られない。
【0023】
HFC類としては、例えば、炭素数4~8の鎖状または環状のHFC類が挙げられ、1分子中のフッ素原子数が水素原子数以上であるHFC類が好ましい。より具体的には、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等が挙げられるが、これらに限られない。
【0024】
HFE類としては、例えば、炭素数4~8の鎖状または環状のHFE類が挙げられる。より具体的には、C4F9OCH3、C3F7OCH3、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン(HFE-347pc-f。例えば、市販品としてアサヒクリン(登録商標)AE-3000(AGC社製)がある)等が挙げられるが、これらに限られない。
【0025】
HFO類としては、例えば、炭素数3~6のHFO類が挙げられる。より具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等が挙げられるが、これらに限られない。
【0026】
(安定剤)
本溶剤組成物には、安定剤が含まれてもよい。安定剤が含まれることで、例えば、熱安定性、耐酸化性等を向上させることができる。例えば、本溶剤組成物において、安定剤は10質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下含まれてもよい。この安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、不飽和炭化水素類等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ニトロ化合物としては、例えば、脂肪族及び/または芳香族誘導体が挙げられる。脂肪族系ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン等が挙げられる。芳香族ニトロ化合物としては、例えば、ニトロベンゼン、o-、m-又はp-ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロトルエン、o-、m-又はp-エチルニトロベンゼン、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-又は3,5-ジメチルニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロアセトフェノン、o-、m-又はp-ニトロフェノール、o-、m-又はp-ニトロアニソール等が挙げられる。
【0028】
エポキシ化合物としては、例えばエチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリシジルメタアクリレート、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等のモノエポキシ系化合物、ジエポキシブタン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントルグリシジルエーテル等のポリエポキシ系化合物等が挙げられる。
【0029】
フェノール類としては、例えば、フェノール性水酸基とともに、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン等各種の置換基を含み得る芳香族化合物が挙げられる。このような芳香族化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、チモール、p-t-ブチルフェノール、o-メトキシフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、ブチルヒドロキシアニソール、フェノール、キシレノール等の1価のフェノールあるいはt-ブチルカテコール、2,5-ジ-t-アミノハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン等の2価のフェノール等が挙げられる。
【0030】
イミダゾール類としては、炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基をN位の置換基とする、1-メチルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-(β-オキシエチル)イミダゾール、1-メチル-2-プロピルイミダゾール、1-メチル-2-イソブチルイミダゾール、1-n-ブチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、1,2,5-トリメチルイミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
アミン類としては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジアリルアミン、トリエチルアミン、N-メチルアニリン、ピリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、トリアリルアミン、アリルアミン、α―メチルベンジルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0032】
不飽和炭化水素類としては、α-メチルスチレン、p-イソプロペニルトルエン、イソプレン類、プロパジエン類、テルペン類等が挙げられる。
【0033】
(難燃剤)
本溶剤組成物には、難燃剤が含まれてもよい。難燃剤が含まれることで、難燃性を向上させることができる。例えば、本溶剤組成物において、難燃剤は3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下含まれてもよい。このような難燃剤としては、ホスフェート類、ハロゲン化芳香族化合物、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
(界面活性剤)
本溶剤組成物には、界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤が含まれることで、例えば、洗浄力、界面作用等を向上させることができる。例えば、本溶剤組成物において、界面活性剤は3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下含まれてもよい。界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪族エステル類;ポリオキシエチレンのソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸アミド類等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0035】
(金属不動態化剤)
本溶剤組成物には、金属不動態化剤が含まれてもよい。例えば、本溶剤組成物において、金属不動態化剤は3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下含まれてもよい。
【0036】
(防錆剤)
本溶剤組成物には、防錆剤が含まれてもよい。例えば、本溶剤組成物において、防錆剤は3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下含まれてもよい。
【0037】
(溶剤組成物の例示)
本溶剤組成物は、例えば、以下の組成が挙げられるが、この限りではない。
本溶剤組成物100質量%に対し、
30質量%以上のHFE-356mmzと、60質量%以下の1233zd(Z)またはHFC-365mfcと、0質量%以上10質量%以下のその他の成分とを含む組成物;40質量%以上のHFE-356mmzと、50質量%以下の1233zd(Z)またはHFC-365mfcと、0質量%以上10質量%以下のその他の成分とを含む組成物;50質量%以上のHFE-356mmzと、40質量%以下の1233zd(Z)またはHFC-365mfcと、0質量%以上10質量%以下のその他の成分とを含む組成物;60質量%以上のHFE-356mmzと、30質量%以下の1233zd(Z)またはHFC-365mfcと、0質量%以上10質量%以下のその他の成分とを含む組成物;70質量%以上のHFE-356mmzと、20質量%以下の1233zd(Z)またはHFC-365mfcと、0質量%以上10質量%以下のその他の成分とを含む組成物;80質量%以上のHFE-356mmzと、10質量%以下の1233zd(Z)またはHFC-365mfcと、0質量%以上10質量%以下のその他の成分とを含む組成物;85質量%以上のHFE-356mmzと、5質量%以下の1233zd(Z)またはHFC-365mfcと、0質量%以上10質量%以下のその他の成分とを含む組成物;90質量%以上のHFE-356mmzを含む組成物;95質量%以上のHFE-356mmzを含む組成物。
【0038】
(PFPE基を有する化合物)
本明細書において、PFPE基を有する化合物とは、-CaF2aO-(aは1~6の整数である)で表される繰り返し単位(オキシパーフルオロアルキレン基)、好ましくは、-C4F8O-、-C3F6O-、-C2F4O-および-CF2O-からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有する化合物である。本溶剤組成物で溶解するPFPE基を有する化合物としては、PFPE基を有する化合物であれば特に制限されないが、PFPE基が化合物全体の主要部分を占める、すなわち、PFPE基を有する化合物の分子量のうち、PFPE基が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上もしくは90%以上を占める化合物が好ましい。PFPE基を有する化合物は、アルキル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、カルボニル基、アミノ基またはアルコキシ基を有していてもよい。PFPE基を有する化合物は、パーフルオロ化合物、すなわち、パーフルオロポリエーテルであることが好ましい。
【0039】
PFPE基を有する化合物としては、例えば、フッ素系潤滑剤として一般的に用いられるパーフルオロポリエーテルである以下の(a)~(d)の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
(a)数平均分子量1300~8000を有し、一般式(1)で表される化合物、
(b)数平均分子量3200~23000を有し、一般式(2)で表される化合物、
(c)数平均分子量2000~11000を有し、一般式(3)で表される化合物
(d)数平均分子量1000~20000を有し、一般式(4)で表される化合物。
【化2】
【0040】
一般式(1)中、mおよびnは1以上の整数であり、m+n=8~120を満たし、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。一般式(2)中、pおよびqは1以上の整数であり、p+q=25~350を満たし、R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。一般式(3)中、rは10~80の整数であり、R5は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。一般式(4)中、s、t、uおよびvは1以上の整数であり、t/s=2~5、(u+v)/(s+t+u+v)=0.07~0.2、s/(s+t+u+v)=0.1~0.3を満たし、R6およびR7はそれぞれ独立に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。
【0041】
ここで、数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0042】
この他にも、本溶剤組成物で溶解するPFPE基を有する化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル改質アルキルオキシシランポリマーが挙げられる。
【0043】
また、本溶剤組成物で溶解するPFPE基を有する化合物としては、例えば、以下の製品が挙げられるがこれらに限られない:
ソルベイ スペシャリティポリマー社製のFomblin(登録商標)Yシリーズ、Fomblin(登録商標)Mシリーズ、Fomblin(登録商標)Wシリーズ、Fomblin(登録商標)Zシリーズ;ダイキン工業社製のDEMNUM(登録商標)シリーズ;デュポン社製のKrytox(登録商標)シリーズ。
【0044】
パーフルオロポリエーテルを含有するフッ素系潤滑剤は、パーフルオロポリエーテルとともに添加剤(例えば防錆剤等)が含まれたり、ポリテトラフルオロエチレン樹脂パウダー等のフッ素系固体潤滑剤と混合して使用されることもある。本溶剤組成物は、PFPE基を有する化合物を溶解するとともに、このような成分が存在する場合にも有用である。したがって、本発明においては、PFPE基を有する化合物が、パーフルオロポリエーテルとともにこのような成分を含有する組成物であっても適用できる。
【0045】
[2.本溶剤組成物と、PFPE基を有する化合物とを含む、溶液]
本溶剤組成物は、PFPE基を有する化合物を溶解させて、本溶剤組成物とPFPE基を有する化合物とを含む溶液とすることができる。この溶液は、例えば、PFPE基を有する化合物の塗膜を形成するための溶液(以下、「塗布用溶液」ともいう)として用いることができる。この塗布用溶液を物品の表面に塗布し、次いで物品から本溶剤組成物を蒸発させることにより、物品の表面にPFPE基を有する化合物を含む塗膜を形成した塗膜付物品を製造することができる。
【0046】
例えば、刷毛による塗布、スプレーによる塗布、物品を塗布用溶液に浸漬することによる塗布、塗布用溶液を吸い上げることによりチューブや注射針の内壁に塗布用溶液を接触させる等の方法により、物品に塗布用溶液を塗布し、次いで乾燥により本溶剤組成物を蒸発させて、物品表面に塗膜を形成することができる。
【0047】
HFE-356mmzを含む本溶剤組成物は、蒸発速度が大きく、塗布物品から速やかに蒸発させることができるため、塗膜付物品の製造に好適である。本溶剤組成物100質量%に対し、HFE-356mmzが50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上含まれる場合が特に好適である。
【0048】
HFO類やHFE類は、CFC類等の代替品として期待されるものの、例えば、HFO類の一種である1214yaは、空気中での安定性が低いため、空気中での使用において分解して酸性化し得る。また、HFE類の一種である1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(347pc-f)は、後述の実施例においても示されるように、PFPEとの溶液の安定性が必ずしも良好とはいえない。その一方で、本溶剤組成物とPFPE基を有する化合物との溶液は優れた安定性を示す。
【0049】
PFPE基を有する化合物を本溶剤組成物に溶解させた溶液は、溶解直後にとどまらず、長期(例えば3日以上、10日以上)にわたって均一性を示し、溶液状態での安定性(溶解安定性)に優れる。このため、PFPE基を有する化合物を含む塗膜を物品表面に形成するための溶液(塗布用溶液)として安定的に供給することができる。また、本溶剤組成物を洗浄剤として用いる場合、物品からPFPE基を有する化合物を除去する際に、PFPE基を有する化合物と本溶剤組成物との溶液(以下、「洗浄工程後の溶液」ともいう)が形成される。本溶剤組成物のリサイクルのために、この洗浄工程後の溶液は回収された後に蒸留等の精製操作が施され、本溶剤組成物が回収される。このリサイクルは、一般的な方法においては、洗浄工程とは別途に行われるため、回収から精製操作までに長時間要することもある。この間、本洗浄工程後の溶液においては、PFPE基を有する化合物と本溶剤組成物とが均一性を示すため、PFPE基を有する化合物が回収容器に粘着したり、精製の妨げになることが少なく、本溶剤組成物の効率的なリサイクルが可能となる。
【0050】
[3.物品の洗浄方法]
本溶剤組成物を用いた物品の洗浄方法は、PFPE基を有する化合物が付着した物品に対して本溶剤組成物を用いること以外は特に限定されない。本溶剤組成物とPFPE基を有する化合物が付着した物品とを接触させることで、当該物品からPFPE基を有する化合物を除去することができる。この接触としては、例えば、手拭き洗浄、浸漬洗浄、スプレー洗浄、浸漬揺動洗浄、浸漬超音波洗浄、煮沸洗浄、蒸気洗浄、これらを組み合わせ等による方法が挙げられるが、この限りではない。
【0051】
この物品としては、金属、樹脂、ゴム、繊維、ガラス、セラミックス、これらの複合材料からなる材質のものが挙げられる。複合材料としては、金属と樹脂の積層体等が挙げられる。この物品は、具体的には、精密機械部品、電子材料(プリント基板、液晶表示器、磁気記録部品、半導体材料等)、樹脂加工部品、光学レンズ、繊維製品、医療器具等が挙げられるが、これらに限定されない。後述の実施例においても示されるように、本溶剤組成物は、PC(ポリカーボネート)、アクリル樹脂、ABS樹脂等の各種樹脂への悪影響が少ないため、このような樹脂を物品の材料として用いる実施形態において特に有効である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明に係る実施形態を詳細に説明するが、本発明の実施形態は実施例に限定されるものではない。
【0053】
本実施例において、PFPE基を有する化合物として、以下に示す市販のPFPE #1~PFPE #6のいずれかを使用した。
PFPE#1(Fomblin(登録商標)Y H VAC25/6(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量3300)、
PFPE#2(Fomblin(登録商標)M15(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OC2F4)p-(OCF2)q]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量9700)、
PFPE#3(DEMNUM(登録商標)S-65(ダイキン工業社製)): F-(C3F6O)m-C2F5で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量4500)、
PFPE#4(Fomblin(登録商標)Y25(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量3700)、
PFPE#5(Fomblin(登録商標)Y L VAC06/6(ソルベイ スペシャリティポリマー社製)): CF3-[(OCF(CF3)CF2)m-(OCF2)n]-OCF3で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量1800)、
PFPE#6(Krytox(登録商標)143AD(デュポン社製)): F-(C3F6O)m-C2F5で表される構造式を有するポリマー(数平均分子量7480)。
【0054】
<1.PFPE溶液の溶解安定性試験>
[実施例1~実施例16、比較例1~比較例15]
110mL硝子製スクリュー管瓶に溶剤38gを入れた後に、PFPE2gを入れ、十分に混合し均一な溶液とした。これを密閉状態、室温(20℃)、遮光下で保存し、0日後(PFPEと溶剤を混合した直後)、3日後、10日後の溶液の状態を目視で観察した。溶液が無色透明(濁りが無い)状態のものを「○」と評価し、わずかに濁りが生じた状態のものを「△」と評価し、明らかな着色、ゲル化の発生または二層分離が生じた状態のものを「×」と評価した。その結果を表1および表2に示す。
【表1】
【表2】
【0055】
実施例1~実施例16に示されるように、HFE-356mmz、HFE-356mmz/1233zd(Z)混合液、HFE-356mmz/HFC-365mfc混合液を溶剤として用いた場合には、3日後、10日後の溶液の状態はいずれも無色透明であった。一方で、比較例1~比較例15に示されるように、HFO類の一種である1233zd(Z)や、HFE類の一種である347pc-f、HFC類の一種であるHFC-365mfcを溶剤として用いた場合には、PFPEとの混合直後から二層分離した。
【0056】
全ての含フッ素化合物がPFPE基を有する化合物を溶解できるわけではない。一般的に、化合物中のフッ素原子の割合が高い溶剤は、PFPE基を有する化合物を溶解すると考えられている。しかしながら、上記の比較例が示すように、化合物中のフッ素原子の割合がより高いHFE-347pc-fを溶剤として用いた場合には、PFPE #1~PFPE #6を溶解できなかったのに対し、上記の実施例が示すように、化合物中のフッ素原子の割合がより低いHFE-356mmzやHFE-356mmzを含む混合液を溶剤として用いた場合には、PFPE #1~PFPE #6を溶解することができた。
【0057】
<2.塗布性、乾燥性評価試験>
[実施例17~実施例33]
PFPEと溶剤を混合して、0.5質量%PFPE溶液を調製した。このPFPE溶液をSUS316製テストピース上に塗布し、溶剤を風乾することにより、SUS316製テストピース表面に膜厚2nmのPFPE塗膜を形成した。得られた塗膜の状態を目視で確認した。塗膜にムラが見られなかったものを、塗布性が良好である(「〇」と表記)と評価した。また、塗膜の形成時にただちに溶剤が蒸発したものを、乾燥性が良好である(「〇」と表記)と評価した。その結果を表3に示す。
【表3】
【0058】
<3.洗浄性試験>
[実施例34]
300mL硝子製ビーカーにPFPE #1を200g入れた。次に、SUS316製テストピース(30mm×15mm×2mm)1枚をPFPE #1中に完全に浸漬させた。このテストピースをPFPE#1中から取り出して目視で確認したところ、テストピース表面にはPFPE #1が付着していた。その後、500mL硝子製ビーカーにHFE-356mmzを200g入れ、前記PFPE #1が付着したSUSテストピースを完全に浸漬するように入れ、25℃2分間超音波洗浄(超音波発振器:Alex Corporation社製 ネオソニック、出力100W、周波数28kHz)した。その後、テストピースを取り出し、80℃で5分間乾燥した後、テストピースの表面を目視観察したところ、テストピース表面に汚れは確認されなかった。
【0059】
[実施例35]
HFE-356mmzの替わりに、HFE-356mmz/HFC-365mfc(質量比:60/40)混合溶剤を用いた以外は実施例34と同様の操作を行った。その結果、洗浄乾燥後のテストピース表面に汚れは確認されなかった。
【0060】
[実施例36]
HFE-356mmzの替わりに、HFE-356mmz/1233zd(Z)(質量比:50/50)混合溶剤を用いた以外は実施例34と同様の操作を行った。その結果、洗浄乾燥後のテストピース表面に汚れは確認されなかった。
【0061】
実施例34~実施例36により、HFE-356mmz、HFE-356mmzを含む混合液の良好なPFPE洗浄性が示された。