(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/58 20100101AFI20220824BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220824BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220824BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20220824BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220824BHJP
【FI】
H01L33/58
H01L33/00 L
F21S2/00 340
B01J19/12 C
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2017197322
(22)【出願日】2017-10-11
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】松島 竹夫
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525455(JP,A)
【文献】韓国登録特許第0955321(KR,B1)
【文献】特開2015-173149(JP,A)
【文献】特開2014-090055(JP,A)
【文献】特開2012-109543(JP,A)
【文献】特表2016-519436(JP,A)
【文献】特開2016-127022(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147342(WO,A1)
【文献】特開2012-169505(JP,A)
【文献】特開2005-352205(JP,A)
【文献】特開2013-073081(JP,A)
【文献】特表2015-523673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0199852(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
F21S 2/00
F21K 9/00 - 9/90
B01J 19/12
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数のLEDが第一方向およびこれと直交する第二方向に配列されてなる発光部を備え、
前記発光部が前記第一方向に沿って複数並べられて、該第一方向に長尺な発光面を形成する光照射装置において、
前記発光部には、前記LEDの個々に対応するレンズを複数備えたレンズ複合体が設けられており、
前記レンズ複合体に設けられる各レンズは、それぞれ同一形状のレンズ表面を備えており、
前記発光部における前記第一方向において、前記レンズ複合体の個々のレンズの配列ピッチ(Lp1)が前記LEDの配列ピッチ(Ep1)よりも大きくされており、
前記LEDの光軸と前記レンズの中心軸の偏位量が、前記発光部の中央部から端部に向かって大きくなっていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記発光部における前記第二方向において、前記レンズ複合体の個々のレンズの配列ピッチ(Lp2)が前記LEDの配列ピッチ(Ep2)よりも小さくされており、
前記LEDの光軸と前記レンズの中心軸の偏位量が、前記発光部の中央部から端部に向かって大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記発光部における前記第1方向での前記LEDおよび前記レンズの配列が奇数配列であり、当該配列の中央の配列が、前記発光部の中央部上に位置することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記発光部における前記第1方向での前記LEDおよび前記レンズの配列が偶数配列であり、当該配列の中央の2配列の中間位置が、前記発光部の中央部上に位置することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光照射装置に関するものであり、特に、搬送される記録媒体に光照射してインクを硬化させる光照射装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体上に紫外線硬化型のインクを塗布した後に、前記記録媒体の全域に光照射装置から紫外線を照射してインクを硬化させて画像形成処理する技術がある。
このような光照射装置では、複数のLEDが配列された発光部を複数並列配置してライン状の発光面を形成したものが用いられている。
図9にその一例が示されており、光照射装置100は、筐体110内に、複数の光源ユニット121、121からなる光源部120と、電装部130と、冷却ファン140が収納されている。
前記光源ユニット121は、発光素子として複数のLED122と、これが実装されたLED基板123と、このLED基板123が装着されたヒートシンク124とからなる。
【0003】
このような光照射装置は、
図10に示すように、搬送される記録媒体150上に設置され、光源部120のLED122から紫外光を照射して、記録媒体上のインクを硬化させるものである。
ところで、このような光照射装置では、複数の光源ユニット121を連設する構造であるために、隣接配置された各光源ユニット121の連設部分(隣り合う領域)において光量に落ち込みが生じてしまい、そのため、全体の照射領域内において照度分布が不均一なものとなってしまうという不具合がある。
【0004】
図11に示すように、各光源ユニット121は、基板上に設置された複数のLED122と、これに対向配置された複数のレンズ125とを備えてなり、各LED122からの光は、レンズ125を介して記録媒体上の照射面に照射される。
このような構成では、各光源ユニット121に対応した各照射領域S内においては光量の均一性が保たれるものの、隣接する照射領域Sの間の隣接領域Tでは、光量が十分ではなく照度低下が発生するという不具合がある。
【0005】
そこで、このような不具合を解消するものとして、特開2014-90055号公報(特許文献1)では、隣り合う光照射デバイス(光源ユニット)の間(連設領域)での照度低下を抑えるために、光照射デバイスの端部領域に配されるLEDの光軸が前記隣接領域に向けられるように、当該LEDに対応するレンズの形状を工夫することが開示されている。
【0006】
しかしながら、このような手段では、光照射デバイスの端部領域の光軸のみが傾けられたものであって、隣接領域での照度低下は抑えられるものの、各光照射デバイスに対応した照射領域内での照度均一性に問題があり、ひいては、複数連接された光照射デバイスの発光面全体での出射光量の分布が不均一となってしまい、より高い照度均一化を図ることが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、基板上に複数のLEDが第一方向およびこれと直交する第二方向に配列されてなる発光部を備え、前記発光部が前記第一方向に沿って複数並べられて、該第一方向に長尺な発光面を形成する光照射装置において、隣接された発光部間の隣接領域での照度低下を防止するとともに、全体の照射領域内の照度分布をより均一化することが可能な光照射装置の構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の光照射装置は、前記発光部には、前記LEDの個々に対応するレンズを複数備えたレンズ複合体が設けられており、前記発光部における前記第一方向において、前記レンズ複合体の個々のレンズの配列ピッチ(Lp1)が前記LEDの配列ピッチ(Ep1)よりも大きくされており、前記LEDの光軸と前記レンズの中心軸の偏位量が、前記発光部の中央部から端部に向かって大きくなっていることを特徴とする。
【0010】
また、前記発光部における前記第二方向において、前記レンズ複合体の個々のレンズの配列ピッチ(Lp2)が前記LEDの配列ピッチ(Ep2)よりも小さくされており、前記LEDの光軸と前記レンズの中心軸の偏位量が、前記発光部の中央部から端部に向かって大きくなっていることを特徴とする。
また、前記発光部における前記第1方向での前記LEDおよび前記レンズの配列が奇数配列であり、当該配列の中央の配列が、前記発光部の中央部上に位置することを特徴とする。
また、前記発光部における前記第1方向での前記LEDおよび前記レンズの配列が偶数配列であり、当該配列の中央の2配列の中間位置が、前記発光部の中央部上に位置することを特徴とする。
また、前記レンズ複合体に設けられる各レンズは、それぞれ同一形状のレンズ表面を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明の光照射装置によれば、各発光部における前記レンズ複合体の個々のレンズの配列ピッチ(Lp1)が前記LEDの配列ピッチ(Ep1)よりも大きくされており、前記LEDの光軸と前記レンズの中心軸の偏位量が、前記発光部の中央部から端部に向かって大きくなっていることにより、隣接する発光部間の隣接領域での照度低下が防止されるとともに、各発光部内での照度分布が配列方向において均一なものとなり、照射領域全体としての照度均一性が確保される。
また、このような照度均一性を、LEDピッチとレンズピッチのみを設定することで達成できるので、製作が容易でかつコストも安価なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および
図2は、本発明の光照射装置1における発光部2の側面図および下面図である。
発光部2は、基板31上に配列された複数のLED3と、これに個々に対応する複数のレンズ4を備えたレンズ複合体5とからなる。ここで、各レンズ4は同一形状のレンズ表面を備えていることが製造上及びコスト面からみて好適である。
図2に示されるように、複数のLED3およびレンズ4は、第一方向Aおよびこれと直交する第二方向Bに配列されている。この第1方向Aは、後述するように、記録媒体の搬送方向と直交する方向であり、また、第2方向Bは、記録媒体の搬送方向に沿った方向である。
図1、2に示すように、このLED3およびレンズ4の配列は、前記第1方向Aにおいて、レンズ複合体5における各レンズ4の配列ピッチ(Lp1)(以下、レンズピッチともいう)は、各LED41の配列ピッチ(Ep1)(以下、LEDピッチともいう)よりも大きくされている(Lp1>Ep1)。そして、前記LED3の光軸32と前記レンズ4の中心軸42の偏位量Xは、前記発光部2の中央部21から端部に向かって大きくなっている。
【0014】
この第1の実施例は、LED3およびレンズ4が第1方向Aおよび第2方向Bともに5列ずつ配列された例が示されており、第1方向Aにおいて、発光部2の中央部21上に中央のLED3およびレンズ4が配置されている。
この配置により、前記第1方向Aにおいて、発光部2の中央部21から端部に向かうほど、LED3の光軸32とレンズ4の中心軸42の偏位量X(X1、X2)は、レンズピッチ(Lp1)とLEDピッチ(Ep1)の差分(Lp1-Ep1)が積算されていき、より大きくなる(X2>X1)。
なお、この実施例では、第2方向BでのLED3の配列ピッチ(Ep2)とレンズ4の配列ピッチ(Lp2)が同一のものが示されている。
【0015】
図3には、上記のような発光部2を、第1方向Aに沿うように複数(この図では2つ)配列しているものが示されていて、この複数の発光部2により第1方向Aに沿って長尺な発光面が形成される。
この第1方向Aが、
図10で示した搬送される記録媒体の幅方向(搬送方向とは直交する方向)に沿う方向となるように光照射装置が配置される。
図4はこの実施例の作用説明図であって、第1方向Aにおいて、各発光部2の中央部21から両端部に向かうに従って、LED3からレンズ4を経た光は少しずつ外方向(端部方向)に偏位するように照射されていく。これにより、隣接する発光部2間の隣接領域Tにおいても光量の低下が生じることがなく、かつ、発光部2内の照射領域S内での照度均一性が担保される。
【0016】
図5、6には他の第2の実施例が示されていて、この実施例では、第1方向Aにおいて、各発光部2でのLED3およびレンズ4の数が6列ずつ配列されている。この実施例でも、各レンズの配列ピッチ(Lp1)は、各LED41の配列ピッチ(Ep1)よりも大きくされている。そして、前記LED3の光軸32と前記レンズ4の中心軸42の偏位量Xは、前記発光部2の中央部21から端部に向かって大きくなっている。
そして、この実施例では、発光部2の中央部21に相当する箇所にはLED3およびレンズ4は存在せず、中央2列のLED3およびレンズ4の間に中央部21が存在する。
この配置により、各発光部2においては、その中央部21から両端部に向かうほど、LED3の光軸32とレンズ4の中心軸42の偏位量X(X1、X2、X3)は、より大きくなる(X3>X2>X1)。
【0017】
図6はこの第2の実施例の作用説明図であって、各発光部2の中央部21から両端部に向かうに従って、LED3からレンズ4を経た光は少しずつ外方向(端部方向)に偏位するように照射されていき、これにより、隣接する発光部2間の隣接領域Tにおいても光量の低下が生じることがなく、かつ、発光部2内の照射領域S内での照度均一性が担保されることは、
図4の説明と同様である。
【0018】
以上のように、発光部2における第1方向にLED3およびレンズ4が奇数列配列されている場合は、その中央のLED3とレンズ4の列が、発光部2の中央部21上に位置するものであり、また、偶数列配列されている場合は、中央の2列の間の中間位置が、発光部2の中央部21上に位置するものである。
こうすることで、発光部2において、その中央部21から両端部に向かうほど、LED3の光軸32とレンズ4の中心軸42の偏位量Xが、より大きくなるという構成が得られる。
【0019】
図7に更に他の第3の実施例が示されている。
図1、2の第1の実施例では、発光部2の第2方向BでのLED3とレンズ4の配列ピッチは、同一であったが、この第3の実施例では、第2方向Bにおいて、レンズ複合体5の個々のレンズ4の配列ピッチ(Lp2)がLED3の配列ピッチ(Ep2)よりも小さくされている(Lp2<Ep2)。
そして、この第2方向Bでの発光部2の中央部22上に中央のLED3およびレンズ4が配置されている。この配置により、前記第2方向Bにおいて、発光部2の中央部22から両端部に向かうほど、LED3の光軸32とレンズ4の中心軸42の偏位量Y(Y1、Y2)は、より大きくなる(Y2>Y1)。
【0020】
この第3の実施例では、
図8に示すように、LED3からの光はレンズ4により集光され、記録媒体の搬送方向に見た照射領域は中央部側に徐々に絞られて、光量密度の高いライン状の光照射が可能となる。
【0021】
なお、発光部2に設けられるLED3やレンズ4の配列数は上記に限定されるものではなく、また、隣接配置される発光部2の数も同様である。
【0022】
以上説明したように、本発明の光照射装置では、複数のLEDとこれに対応する複数のレンズを備えた発光部における第一方向において、前記個々のレンズの配列ピッチ(Lp1)が前記LEDの配列ピッチ(Ep1)よりも大きくされており、前記LEDの光軸と前記レンズの中心軸の偏位量が、前記発光部の中央部から端部に向かって大きくなっていることにより、複数の発光部を隣接配置した時の連接領域における光量の低下を防止できとともに、各発光部内での照射領域における照度均一性が担保され、その結果、照射領域全体での光量低下がなく、照度を均一化できるという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0023】
1 :光照射装置
2 :発光部
21:(第1方向Aの)中央部
22:(第2方向Bの)中央部
3 :LED
31:基板
32:LEDの光軸
4 :レンズ
42:レンズの中心軸
5 :レンズ複合体
A :第1方向
B :第2方向
Lp:レンズの配列ピッチ
Ep:LEDの配列ピッチ
X :LEDの光軸とレンズの中心軸の偏位量
S :発光部の照射領域
T :隣接領域