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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】車両のルーフ周辺構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018132277
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020006911
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】横原 忠
(72)【発明者】
【氏名】長島 洋明
【審査官】小松 竜一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024530(JP,A)
【文献】特開2004-182826(JP,A)
【文献】特開2013-124081(JP,A)
【文献】実開昭63-149375(JP,U)
【文献】実開昭62-079672(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第10055664(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフ部分を構成するルーフパネルと、
前記ルーフ部分の車両幅方向の側縁部に位置するルーフサイドレールと、
前記ルーフパネルの車両幅方向の側縁部に対して車両下方に位置するサイドドアパネルと
を備える車両のルーフ周辺構造であって、
前記ルーフサイドレールが、前記ルーフパネルに対して車両下方に位置すると共に前記ルーフ部分の天面部を向くルーフ面を有し、
前記サイドドアパネルの車両上下方向の上縁部が、前記ルーフサイドレールに対して車両幅方向の外側に配置され、
前記ルーフパネルの側縁部の意匠面と前記サイドドアパネルの上縁部の意匠面とが、それらの間に見切りを形成しながら車体意匠面の一部を構成しており、
前記見切りの少なくとも一部が、前記ルーフサイドレールのルーフ面よりも車両下方に配置され
前記ルーフパネルの側縁部と前記ルーフサイドレールとが互いに平行になっており、
前記ルーフパネル及び前記ルーフサイドレールを機械的結合要素によって結合した機械的結合部と、前記ルーフパネル及び前記ルーフサイドレールを接着剤又は溶接によって接合した接合部とが形成され、
前記機械的結合部が前記接合部よりも前記見切りに接近している、車両のルーフ周辺構造。
【請求項2】
前記ルーフパネルの側縁部の意匠面と前記サイドドアパネルの上縁部の意匠面とが互いに異なる色となっている、請求項1に記載の車両のルーフ周辺構造。
【請求項3】
前記ルーフパネルの側縁部が、車両幅方向における前記ルーフサイドレールと前記サイドドアパネルの上縁部との間の空間で延びるように形成され、
前記ルーフパネルの側縁部が前記見切りに対応する位置で屈曲している、請求項1又は2に記載の車両のルーフ周辺構造。
【請求項4】
前記ルーフパネルが一体品となっている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両のルーフ周辺構造。
【請求項5】
前記ルーフパネルが樹脂成形品となっている、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両のルーフ周辺構造。
【請求項6】
前記機械的結合部は、前記機械的結合要素が前記ルーフパネルのうち少なくともその側縁部を保持するように形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両のルーフ周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドドアパネルの意匠面とルーフパネルの意匠面とがそれらの間に見切りを形成しながら車体の意匠面の一部を構成する、車両のルーフ周辺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のルーフ周辺構造は、典型的に、ルーフ部分を構成するルーフパネルと、このルーフパネルに対して車両下方に位置するサイドドアパネルと、車両上下方向にてルーフパネル及びサイドドアパネル間に位置するルーフサイドレールのアウタパネルとを有する。そして、ルーフパネルと、ルーフサイドレールのアウタパネルと、サイドドアパネルとが車体の意匠面を構成している。
【0003】
典型的に、車両のルーフ周辺構造においては、ルーフサイドレールのアウタパネルが、ルーフパネルの車両幅方向の側縁部とフロントサイドドアにおけるドアサッシの車両上下方向の上端部との間で、車体の角部を構成するように湾曲形成される。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-68762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両において、その外観性能を向上させるために、ルーフパネルとサイドドアパネルとを異なる色とする2トーンルーフが採用されてきている。しかしながら、上述した車両のルーフ周辺構造において2トーンルーフを採用する場合、ルーフパネル側の色及びサイドドアパネル側の色の境界が、サイドドアパネルの車両上下方向の上縁部又はルーフサイドレールのアウタパネルに配置される。そのため、ルーフパネル側の色及びサイドドアパネル側の色の2色を別々にサイドドアパネル又はルーフサイドレールのアウタパネルに塗装する必要がある。
【0006】
このようなサイドドアパネル又はルーフサイドレールのアウタパネルの塗装においては、2色のうち一方を塗装される領域をマスキングする1回目のマスキング工程と、2色のうち他方を塗装する1回目の塗装工程と、2色のうち他方の塗装された領域を乾燥させる1回目の乾燥工程と、2色のうち他方を塗装された領域をマスキングする2回目のマスキング工程と、2色のうち一方を塗装する2回目の塗装工程と、2色のうち一方を塗装された領域を乾燥させる2回目の乾燥工程とを実施する必要がある。しかしながら、サイドドアパネル又はルーフサイドレールのアウタパネルのような1つの部品に対して2回のマスキング工程、2回の塗装工程及び2回の乾燥工程を実施することは、車両の製造効率を極めて低下させるものである。
【0007】
このような実情を鑑みると、車両のルーフ周辺構造においては、車両、特に、2トーンルーフ形式の車両の外観性能を向上させること、かかる車両の製造効率低下を防ぐことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、一態様に係る車両のルーフ周辺構造は、車両のルーフ部分を構成するルーフパネルと、前記ルーフ部分の車両幅方向の側縁部に位置するルーフサイドレールと、前記ルーフパネルの車両幅方向の側縁部に対して車両下方に位置するサイドドアパネルとを備える車両のルーフ周辺構造であって、前記ルーフサイドレールが、前記ルーフパネルに対して車両下方に位置すると共に前記ルーフ部分の天面部を向くルーフ面を有し、前記サイドドアパネルの車両上下方向の上縁部が、前記ルーフサイドレールに対して車両幅方向の外側に配置され、前記ルーフパネルの側縁部の意匠面と前記サイドドアパネルの上縁部の意匠面とが、それらの間に見切りを形成しながら車体意匠面の一部を構成しており、前記見切りの少なくとも一部が、前記ルーフサイドレールのルーフ面よりも車両下方に配置され、前記ルーフパネルの側縁部と前記ルーフサイドレールとが互いに平行になっており、前記ルーフパネル及び前記ルーフサイドレールを機械的結合要素によって結合した機械的結合部と、前記ルーフパネル及び前記ルーフサイドレールを接着剤又は溶接によって接合した接合部とが形成され、前記機械的結合部が前記接合部よりも前記見切りに接近している。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る車両のルーフ周辺構造によれば、車両、特に、2トーンルーフ形式の車両の外観性能を向上させることができ、かかる車両の製造効率低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る車両のルーフ周辺構造を含む車両を概略的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る車両のルーフ周辺構造における車両幅方向の一方側端部分を、図1のA-A線沿って切断した断面図である。
図3】第2実施形態に係る車両のルーフ周辺構造における車両幅方向の一方側端部分を、図1のA-A線に相当する線に沿って切断した断面図である。
図4】第3実施形態に係る車両のルーフ周辺構造における車両幅方向の一方側端部分を、図1のA-A線に相当する線に沿って切断した断面図である。
図5】第4実施形態に係る車両のルーフ周辺構造における車両幅方向の一方側端部分を、図1のA-A線に相当する線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1~第4実施形態に係る車両のルーフ周辺構造について、それを含む車両と共に説明する。本実施形態の説明に用いられる図1図5において、車両幅方向の一方側、車両幅方向の他方側、車両上側及び車両下側を、それぞれ、矢印W1、矢印W2、矢印U及び矢印Dによって示す。また、図1及び図2において、車両前方側及び車両後方側を、それぞれ、矢印F及び矢印Rによって示す。
【0012】
以下においては、車両のルーフ周辺構造における車両幅方向の一方側端部分について説明するが、フロントピラーの周辺構造は、車両幅方向の両側端部分に採用することができる。なお、フロントピラーの周辺構造は、もちろん、車両幅方向の一方側端部分のみに採用することもできる。
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る車両のルーフ周辺構造について、それを含む車両と共に説明する。
【0014】
[ルーフ周辺構造の概略について]
最初に、本実施形態に係るルーフ周辺構造の概略について説明する。図1及び図2に示すように、車両が、ルーフ部分1を構成するルーフパネル10を有する。車両は、ルーフ部分1の車両幅方向の側縁部1aに位置するルーフサイドレール20を有する。ルーフサイドレール20は車両前後方向に延びるとよい。車両は、ルーフパネル10の車両幅方向の側縁部11に対して車両下方に位置するサイドドアパネル30をさらに有する。サイドドアパネル30は、車両幅方向の車体側面部2に位置するサイドドア3を構成する。
【0015】
図2に示すように、ルーフサイドレール20は、ルーフパネル10に対して車両下方に位置するルーフ面21を有する。ルーフ面21は、ルーフ部分1の天面部1bを向いている。なお、図1に示すように、天面部1bは、ルーフ部分1の両側縁部1a間に位置する。
【0016】
再び図2に示すように、サイドドアパネル30の車両上下方向の上縁部31が、ルーフサイドレール20に対して車両幅方向の外側に配置される。車両外方を向くルーフパネル10の側縁部11の外表面11aは意匠面11aとなっている。車両外方を向くサイドドアパネル30の上縁部31の外表面31aは意匠面31aとなっている。ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aとサイドドアパネル30の上縁部31の意匠面31aとは、これらの意匠面11a,31aの間に見切りPを形成しながら車体意匠面4の一部を構成する。
【0017】
かかる見切りPはルーフパネル10の側縁部11及びサイドドアパネル30の上縁部31に沿って延びる。かかる見切りPの全体が、ルーフサイドレール20のルーフ面21よりも車両下方に配置される。しかしながら、見切りの一部、特に、見切りの延在方向の一部がルーフサイドレールのルーフ面よりも車両下方に配置されてもよい。すなわち、見切りの少なくとも一部、特に、見切りの延在方向の少なくとも一部がルーフサイドレールのルーフ面よりも車両下方に配置されてもよい。
【0018】
[ルーフ周辺構造の詳細について]
本実施形態に係るルーフ周辺構造の詳細は、次のようになっているとよい。図1に示すように、ルーフ周辺構造においては、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aは第1の色S1に着色されている。サイドドアパネル30の上縁部31の意匠面31aは第2の色S2に着色されている。第1及び第2の色S1,S2は互いに異なる。すなわち、車両は2トーンルーフ形式となっている。なお、図1においては、第1の色S1に着色された部分をドットパターンによって示す。しかしながら、第1及び第2の色は互いに同じにすることができる。
【0019】
ルーフ周辺構造においてはまた、ルーフパネル10が一体品となっている。さらに、ルーフ周辺構造においては、ルーフパネル10が樹脂成形品となっている。なお、ルーフパネルは、鉄、アルミ等の金属製とすることもできる。
【0020】
図2に示すように、ルーフ周辺構造においては、ルーフパネル10の側縁部11とルーフサイドレール20とが互いに略平行になっている。また、ルーフパネル10とルーフサイドレール20とを、機械的結合要素であるクリップCによって結合した機械的結合部M1が設けられる。クリップCは樹脂製であるとよい。しかしながら、クリップは、これに限定されず、樹脂以外の材料を用いて作製されてもよい。例えば、クリップは、ゴムを用いて作製されてもよい。また、機械的結合要素は、ルーフパネルとルーフサイドレールとを結合可能であれば、クリップ以外のものであってもよい。
【0021】
ルーフパネル10とルーフサイドレール20とを、接着剤Gによって接合した接合部N1が設けられる。さらに、ルーフ周辺構造においては、機械的結合部M1が接合部N1よりも見切りPに接近している。なお、上述のようにルーフパネルが金属製である場合は、接合部においては、ルーフパネルとルーフサイドレールとが溶接によって接合されるとよい。
【0022】
さらに、ルーフ周辺構造は次のようになっているとよい。図1に示すように、ルーフパネル10は、ルーフ部分1の天面部1bを構成する天面部12を有する。ルーフパネル10の天面部12は、車両幅方向にてルーフパネル10の側縁部11と隣接する。車両はまた、車両前方に位置するフロントガラス5を有する。見切りPは、車両上下方向にて、かかるフロントガラス5の車両上下方向の上縁部5aとルーフパネル10の車両前後方向の前縁部13との間における境界線Qと略一致するように配置されるとよい。
【0023】
図2に示すように、ルーフパネル10の側縁部11は、見切りPに対応して位置する終端14を有する。かかる側縁部11は、見切りPに対して車両上方側に位置する見切り上側区域15を有する。見切り上側区域15は、車両幅方向の中央側からその外側に向かうに従って車両上方から車両下方に向かって傾斜する。
【0024】
ルーフサイドレール20は、そのルーフ面21に対して車両幅方向の外側に位置する上側傾斜区域22を有する。上側傾斜区域22は、車両幅方向の中央側からその外側に向かうに従って車両上方から車両下方に向かって傾斜する。上側傾斜区域22は見切り上側区域15と略平行であるとよい。上側傾斜区域22は、ルーフ面21と車両幅方向にて隣接するとよい。この場合、ルーフ面21と上側傾斜区域22との間には上側屈曲区域23が形成されるとよい。
【0025】
ルーフサイドレール20はまた、上側傾斜区域22に対して車両下方に位置する下側傾斜区域24を有する。下側傾斜区域24は、車両上方から車両下方に向かうに従って車両幅方向の外側からその中央側に向かって傾斜する。車両上下方向にて、上側傾斜区域22と下側傾斜区域24との間には中間屈曲区域25が形成される。中間屈曲区域25は、車両上下方向にて見切りPと略一致するように配置されるとよい。また、ルーフサイドレール20とサイドドアパネル30の上縁部31とが車両幅方向に間隔を空けている。特に、ルーフサイドレール20の下側傾斜区域24とサイドドアパネル30の上縁部31とが車両幅方向に間隔を空けているとよい。
【0026】
図2に示すように、車両前後方向から見たルーフ周辺構造の断面において、ルーフパネル10は、その車両幅方向の最も外側に位置する最外方点K1を有する。最外方点K1とサイドドアパネル30の上縁部31との距離は約1mm~約10mmであるとよい。最外方点K1は、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11a上に位置する。さらに、最外方点K1は、ルーフパネル10の側縁部11の終端14に位置する。
【0027】
ここで、最外方点K1を通って車両幅方向に延びる水平線H1(一点鎖線により示す)と、側縁部11の意匠面11aの最外方点K1における接線T1(一点鎖線により示す)とを想定する。この場合、接線T1は、最外方点K1を中心として水平線H1を車両下方側かつ車両中央側に向かって角度θ1回転させるように配置されるとよい。そして、角度θ1は約0度~約90度であるとよい。
【0028】
機械的結合部M1について、クリップCは、ルーフサイドレール20の上側傾斜区域22に取り付けられる先端部C1を有する。クリップCはまた、ルーフパネル10の側縁部11の見切り上側区域15に取り付けられる基端部C2を有する。基端部C2は、ルーフパネル10とルーフサイドレール20との間に挟まれるとよい。特に、かかるクリップCは見切りPの近傍に位置するとよい。言い換えれば、クリップCはルーフパネル10の終端14近傍に位置するとよい。
【0029】
接合部N1について、接着剤Gは、ルーフパネル10とルーフサイドレール20の上側傾斜区域22とを接合する。特に、接着剤Gは、ルーフパネル10とルーフサイドレール20のルーフ面21、上側傾斜区域22及び上側屈曲区域23のそれぞれとを接合するとよい。
【0030】
さらに、図1に示すように、車両外方を向くルーフパネル10の天面部12の外表面12aが意匠面12aとなっており、この意匠面12aは、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aと同じ第1の色S1に着色されている。特に、車両外方を向くルーフパネル10の全体の外表面10aが、単一の第1の色S1に着色された意匠面10aであるとよい。
【0031】
図2に示すように、ルーフサイドレール20の外表面20aは、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aと同じ第1の色S1に着色される。しかしながら、ルーフサイドレールの外表面は、ルーフパネルの側縁部の意匠面とは異なる色とすることもできる。
【0032】
図1に示すように、サイドドアパネル30の上縁部31に対して車両下方に位置するサイドドアパネル30の下部32の外表面32aは、上縁部31と互いに同じ第2の色S2に着色された意匠面32aとなっている。特に、車両外方を向くサイドドアパネル30の全体の外表面30aが、単一の第2の色S2に着色された意匠面30aであるとよい。
【0033】
なお、サイドドアパネル30の上縁部31の意匠面31aが設けられる場合においては、サイドドア3の車両上下方向の上縁部3a(図1に示す)における車両幅方向の耐衝撃性能を向上させることができる。また、クリップCのような機械的結合要素を用いる場合においては、見切りPは、ルーフパネル10の側縁部11及びサイドドアパネル30の上縁部31に直接的に挟まれた空間によって形成されるとよい。すなわち、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aとサイドドアパネル30の上縁部31の意匠面31aとが、かかる見切りPを形成しながら連続するとよい。ルーフパネル10の側縁部11とサイドドアパネル30の上縁部31との間において部材を介在させずに見切りPが形成され、これによって、車両の外観性能を向上させることができる。
【0034】
以上、本実施形態に係るルーフ周辺構造においては、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aを第1の色S1に塗装し、かつサイドドアパネル30の上縁部31の意匠面31aを第2の色S2に塗装すれば、優れた外観を有する車両、特に、2トーンルーフ形式の車両を容易に得ることができる。すなわち、車両、特に、2トーンルーフ形式の車両を得るために、従来のように1つの部品に対して2回のマスキング工程、2回の塗装工程、2回の乾燥工程等のような煩雑な塗り分け作業を実施することを避けることができる。よって、車両、特に、2トーンルーフ形式の車両の外観性能を向上させることができ、かかる車両の製造効率低下を防ぐことができる。
【0035】
本実施形態に係るルーフ周辺構造によれば、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aと、サイドドアパネル30の上縁部31の意匠面31aとが異なる色である場合において、2トーンルーフ形式の車両の外観は、ルーフパネル10の側縁部11の意匠面11aとサイドドアパネル30の上縁部31の意匠面31aとが見切りPを境に分けられた異なる色となる。このような車両の外観は優れた美感をもたらす。そのため、車両、特に、2トーンルーフ形式の車両の外観性能を向上させることができる。
【0036】
本実施形態に係るルーフ周辺構造においては、ルーフパネル10が、天面部12と、天面部12から見切りPまで延びる側縁部11とを有する一体品となっていて、かかる一体品のルーフパネル10がルーフ部分1を構成している。そのため、ルーフ部分をルーフモールディングによって構成する場合と比較して、ルーフ部分1の構成部品を削減でき、ルーフ部分1を簡単な構造によって構成することができる。その結果、車両、特に、2トーンルーフ形式の車両の製造効率低下を防ぐことができる。また、一体品のルーフパネル10によって優れた美感がもたらされる。その結果、車両の外観性能を向上させることができる。付随的には、ルーフモールディングによって構成されるルーフ部分と比較して、一体品のルーフパネル10を用いて構成されるルーフ部分1は、車両走行中の風切り音を低減することができる。さらに、ルーフモールディングによって構成されるルーフ部分と比較して、一体品のルーフパネル10を用いて構成されるルーフ部分1は、上記側縁部11及び天面部12を含むルーフパネル10とルーフサイドレール20とによって囲まれる閉断面を大きくすることができる。そのため、特に、ルーフパネル10を樹脂成形品とする場合において、かかる大きな閉断面によって、車体剛性の低下等のような車両性能の低下を抑制することができる。
【0037】
本実施形態に係るルーフ周辺構造においては、ルーフパネル10の側縁部11を、この側縁部11と略平行なルーフサイドレール20によって確実に支持できる。また、見切りPの周辺で、クリップ等の機械的結合要素と接着剤との併用によってルーフパネル10をルーフサイドレール20に結合している。そのため、ルーフパネル10を、見切りPを一定に維持するように固定することができる。さらには、ルーフパネル10が見切りPの周辺で変形することを防止でき、車両の外観性能を向上させることができる。付随的には、見切りPの周辺でルーフパネル10及びルーフサイドレール20間に雨水等の水が入ることを防止できる。
【0038】
本実施形態に係るルーフ周辺構造においては、ルーフパネル10、特に、ルーフパネル10の側縁部11が、接合部N1よりも見切りPに接近する機械的結合部M1によってルーフサイドレール20に結合される。そのため、見切りPの変形を抑制するように、ルーフパネル10、特に、ルーフパネル10の側縁部11を固定できる。その結果、車両の外観性能を向上させることができる。
【0039】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る車両のルーフ周辺構造について、それを含む車両と共に説明する。それを含む車体と共に説明する。本実施形態に係る車両のルーフ周辺構造は、以下に述べる点を除いて、第1実施形態に係る車両のルーフ周辺構造と同様である。なお、本実施形態に係る構成要素が、第1実施形態に係る構成要素と同様に構成される場合、その第1実施形態に係る構成要素と同様の符号を付す。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る車両のルーフ周辺構造は、第1実施形態のルーフパネル10の代わりに、次のようなルーフパネル40を有する。ルーフパネル40は、第1実施形態のルーフパネル10の側縁部11と同様である側縁部41を有する。ルーフパネル40の側縁部41は、車両幅方向におけるルーフサイドレール20とサイドドアパネル30の上縁部31との間の空間まで延びるように形成される。ルーフパネル40の側縁部41は見切りPに対応する位置で屈曲している。
【0041】
さらに、かかるルーフ周辺構造は、次のようになっているとよい。図3に示すように、ルーフパネル41の側縁部41の外表面41aが意匠面41aとなっている。かかるルーフパネル40の側縁部41の意匠面41aは第1の色S1に着色される。特に図示はしないが、ルーフパネル40は、第1実施形態のルーフパネル10の天面部12と同様である天面部42を有する。ルーフパネル40の天面部42の意匠面42aもまた第1の色S1に着色される。さらに、ルーフパネル40の全体の意匠面が単一の第1の色S1に着色される。特に図示はしないが、ルーフパネル40はまた、第1実施形態の前縁部13と同様である前縁部を有する。
【0042】
再び図3に示すように、ルーフパネル40の側縁部41は、車両幅方向におけるルーフサイドレール20とサイドドアパネル30の上縁部31との間の空間に位置する終端44を有する。かかる側縁部41は、見切りPに対して車両上方側に位置する見切り上側区域45を有する。見切り上側区域45は、車両幅方向の中央側からその外側に向かうに従って車両上方から車両下方に向かって傾斜する。さらに、見切り上側区域45は、ルーフサイドレール20の上側傾斜区域22と略平行であるとよい。
【0043】
ルーフパネル40の側縁部41は、見切りPに対して車両下方に位置する見切り下側区域46を有する。見切り下側区域46は、車両上方から車両下方に向かうに従って車両幅方向の外側からその中央側に向かって傾斜する。見切り下側区域46は、車両幅方向の外側から見て、ルーフサイドレール20の下側傾斜区域24を隠すように配置されるとよい。
【0044】
上述のごとく、ルーフパネル40の側縁部41が見切りPに対応する位置で屈曲するように、見切り上側区域45と見切り下側区域46との間には見切り屈曲区域47が形成される。見切り屈曲区域47は、車両上下方向にて見切りPと略一致するように配置されることとなる。見切り屈曲区域47はまた、車両上下方向にてルーフサイドレール20の中間屈曲区域25と略一致するように配置されるとよい。
【0045】
図3に示すように、車両前後方向から見たルーフ周辺構造の断面において、ルーフパネル40は、その車両幅方向の最も外側に位置する最外方点K2を有する。最外方点K2とサイドドアパネル30の上縁部31との距離は約1mm~約10mmであるとよい。最外方点K2は、ルーフパネル40の側縁部41の意匠面41a上に位置する。さらに、最外方点K2は、ルーフパネル40の側縁部41の見切り屈曲区域47に位置する。
【0046】
ここで、最外方点K2を通って車両幅方向に延びる水平線H2(一点鎖線により示す)と、側縁部41の意匠面41aの最外方点K2における接線T2(一点鎖線により示す)とを想定する。この場合、接線T2は、最外方点K2を中心として水平線H2を車両下方側かつ車両中央側に向かって角度θ2回転させるように配置されるとよい。そして、角度θ2は約90度であるとよい。
【0047】
また、本実施形態に係るルーフ周辺構造は、第1実施形態の機械的結合部M1の代わりに、次のような機械的結合部M2を有する。機械的結合部M2においては、第1実施形態と同様に、機械的結合要素によってルーフサイドレール20とルーフパネル40とを結合する。特に、かかる機械的結合要素は、第1実施形態のクリップ40と同様に、クリップCであるとよい。なお、本実施形態の機械的結合部においても、機械的結合要素は、ルーフパネルとルーフサイドレールとを結合可能であれば、クリップ以外のものであってもよい。
【0048】
かかる機械的結合部M2について、クリップCの先端部C1はルーフサイドレール20の上側傾斜区域22に取り付けられる。クリップCの基端部C2はルーフパネル40の側縁部41の見切り下側区域46に取り付けられる。特に、クリップCはルーフパネル40の終端44近傍に位置するとよい。
【0049】
そして、本実施形態に係るルーフ周辺構造は、第1実施形態の接合部N1と同様の接合部N2を有する。
【0050】
以上、本実施形態に係るルーフ周辺構造においては、第1実施形態に係るルーフ周辺構造の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。サイドドア3を開いた状態で車両を車両幅方向外側から見た場合に、ルーフサイドレール20を、見切りPに対応する位置の周辺でルーフパネル40の側縁部41によって隠すことができる。そのため、ルーフサイドレール20とルーフパネル40の側縁部41との間に、見た目の悪い段差が生じることを防ぐことができる。また、ルーフパネル40の側縁部41が見切りPに対応する位置で屈曲しており、このような屈曲は曲線美をもたらす。その結果、車両の外観に優れた美感をもたらすことができる。よって、車両、特に、2トーンルーフ形式の車両の外観性能を向上させることができ、かかる車両の製造効率低下を防ぐことができる。
【0051】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る車両のルーフ周辺構造について、それを含む車両と共に説明する。それを含む車体と共に説明する。本実施形態に係る車両のルーフ周辺構造は、以下に述べる点を除いて、第1実施形態に係る車両のルーフ周辺構造と同様である。なお、本実施形態に係る構成要素が、第1実施形態に係る構成要素と同様に構成される場合、その第1実施形態に係る構成要素と同様の符号を付す。
【0052】
図4に示すように、本実施形態に係るルーフ周辺構造は、第1実施形態の機械的結合部M1の代わりに、次のような機械的結合部M3を有する。機械的結合部M3においては、機械的結合要素であるリップLを用いて、ルーフパネル10とルーフサイドレール20とが結合される。かかる機械的結合要素M3は、リップLがルーフパネル10のうち少なくともその側縁部11を保持するように形成される。リップLは樹脂製であるとよい。しかしながら、リップは、これに限定されず、樹脂以外の材料を用いて作製されてもよい。例えば、リップは、ゴムを用いて作製されてもよい。また、機械的結合要素は、ルーフパネルとルーフサイドレールとを結合可能であれば、リップ以外のものであってもよい。
【0053】
本実施形態に係るルーフ周辺構造は、第1実施形態の接合部N1の代わりに、次のような接合部N3を有する。接合部N3においては、ルーフパネル10とルーフサイドレール20とが接着剤Gによって接合される。さらに、ルーフ周辺構造においては、機械的結合部M3が接合部N3よりも見切りPに接近している。なお、ルーフパネルが金属製である場合は、接合部においては、ルーフパネルとルーフサイドレールとが溶接によって接合されるとよい。
【0054】
さらに、本実施形態に係るルーフ周辺構造は、次のようになっているとよい。図4に示すように、機械的結合部M3について、リップLが、ルーフサイドレール20の上側傾斜区域22に取り付けられる先端部L1を有する。かかる先端部L1は、ルーフパネル10とルーフサイドレール20との間に挟まれるとよい。
【0055】
リップLはまた、ルーフパネル10の側縁部11の見切り上側区域15に取り付けられる基端部L2を有する。かかる基端部L2は、ルーフパネル10の終端14と嵌合した状態でこの終端14に取り付けられる。より具体的には、基端部L2は、ルーフパネル10の終端14に向かう開口L3を有するように略U字形状に形成されている。ルーフパネル10の終端14は、リップLの基端部L2の開口L3から挿入された状態でこの基端部L2と嵌合する。
【0056】
接着部N3について、接着剤Gは、ルーフパネル10とルーフサイドレール20の上側傾斜区域22とを接合する。かかる接着部N3は、ルーフサイドレール20からルーフパネル10に向かって先細るように形成されるとよい。
【0057】
以上、本実施形態に係るルーフ周辺構造においては、第1実施形態に係るルーフ周辺構造の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。すなわち、ルーフパネル10が、日光の熱等によって膨張及び収縮を繰り返すと、ルーフパネル10は見切りPと共に変形し易くなる。このような環境下で、ルーフパネル10を経年使用すると、見切りPの見栄えが悪くなるおそれがある。これに対して、リップLがルーフパネル10の側縁部11、特に、ルーフパネル10の終端14を保持するので、見切りPの変形を抑制するように、ルーフパネル10の側縁部11を固定できる。
【0058】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る車両のルーフ周辺構造について、それを含む車両と共に説明する。それを含む車体と共に説明する。本実施形態に係る車両のルーフ周辺構造は、以下に述べる点を除いて、第2実施形態に係る車両のルーフ周辺構造と同様である。なお、本実施形態に係る構成要素が、第2実施形態に係る構成要素と同様に構成される場合、その第2実施形態に係る構成要素と同様の符号を付す。
【0059】
図5に示すように、本実施形態に係るルーフ周辺構造は、第2実施形態の機械的結合部M2の代わりに、次のような機械的結合部M4を有する。機械的結合部M4においては、第3実施形態と同様に、機械的結合要素によってルーフサイドレール20とルーフパネル40とが結合される。特に、かかる機械的結合要素は、第3実施形態と同様に、リップLであるとよい。
【0060】
かかる機械的結合部M4について、リップLの先端部L1は、ルーフサイドレール20の下側傾斜区域24に取り付けられる。かかる先端部L1は、ルーフサイドレール20とルーフパネル40との間に挟まれる。リップLの基端部L2は、ルーフパネル40の側縁部41の見切り下側区域46に取り付けられる。かかる基端部L2は、ルーフパネル40の終端44と嵌合した状態でこの終端44に取り付けられる。
【0061】
そして、本実施形態に係るルーフ周辺構造は、第3実施形態の接合部N3と同様の接合部N4を有する。
【0062】
以上のような本実施形態に係るルーフ周辺構造は、第2及び第3実施形態に係るルーフ周辺構造の効果と同様の効果を得ることができる。
【0063】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…ルーフ部分、1a…側縁部、1b…天面部、4…車体意匠面、10,40…ルーフパネル、11,41…側縁部、11a,41a…意匠面(外表面)、20…ルーフサイドレール、21…ルーフ面、30…サイドドアパネル、31…上縁部、31a…意匠面(外表面)、P…見切り、M1,M2,M3,M4…機械的結合部、C…クリップ、L…リップ、N1,N2,N3,N4…接合部、G…接着剤、S1…第1の色、S2…第2の色
図1
図2
図3
図4
図5