(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】吊戸棚
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20220824BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220824BHJP
A47B 77/04 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G06F3/042 470
G06F3/01 510
G06F3/01 570
A47B77/04 A
(21)【出願番号】P 2017164960
(22)【出願日】2017-08-30
【審査請求日】2020-08-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日 平成29年7月7日 展示会名 産業とくらしの関東グランドフェア 2017 開催場所 幕張メッセ 展示日 平成29年7月21日 展示会名 産業とくらしの東北グランドフェア 2017 開催場所 夢メッセみやぎ
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592245890
【氏名又は名称】井上金物株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510262345
【氏名又は名称】ユアサクオビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】濱田 義明
(72)【発明者】
【氏名】島崎 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘桂
(72)【発明者】
【氏名】大澤 智秀
(72)【発明者】
【氏名】折戸 英伸
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-050982(JP,A)
【文献】特開2016-021082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0190104(US,A1)
【文献】特表2007-507782(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047173(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/042
G06F 3/01
A47B 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッチンの上方に設置された吊戸棚であって、
当該吊戸棚の下面に配置されたディスプレイと、
前記吊戸棚の下面の手前側に取付けられたヒンジと、
前記ヒンジを介して取付けられ、前記ディスプレイから発する光を屈折させて、空中画像を結像するレンズガラスと、
前記レンズガラスの奥側に取付けられ、空中画像に対するユーザの手の動きをスキャンするスキャナとを備え、
前記ヒンジは、前記吊戸棚の下面に対する前記レンズガラスの角度を調整して調整後の角度を保持
し、
前記レンズガラスは、不使用時には前記ヒンジによって該レンズガラスの角度を小さくして前記吊戸棚の下面に平行あるいは接するようにして収納可能であることを特徴とする吊戸棚。
【請求項2】
前記吊戸棚の下面は、該吊戸棚の前扉の下端よりも上方に位置し、
前記ディスプレイは、水平視で前記前扉によって隠されていることを特徴とする請求項1に記載の吊戸棚。
【請求項3】
前記ヒンジは、角度を任意の角度で調整可能であることを特徴とする請求項1
または2に記載の吊戸棚。
【請求項4】
前記レンズガラスの奥側に、ユーザに把持されるハンドルが設けられていることを特徴とする請求項1
から3のいずれか1項に記載の吊戸棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、キッチンの上方に設置された吊戸棚に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンにおいては、調理や食器洗いの最中、調理器や食器洗い機などを操作するためにスイッチに触れることがある。また近年は、レシピなどを参照するためにキッチンにタッチパネルディスプレイを設置する場合がある。しかし、調理中であれば食材や調味料などが、あるいは食器洗い中であれば洗剤などが手に付着していることがある。このような手でスイッチやタッチパネルに触れてしまうとこれらが汚れてしまい、その後で汚れを拭き取るなどの余計な手間がかかってしまう。
【0003】
特許文献1には、空中タッチパネルが記載されている。空中タッチパネルは、ディスプレイと、ディスプレイの画像を空中に結像させる結像手段(レンズガラス)と、結像させた空間画像を指などでタッチすると、その入力位置を検知する位置入力手段(スキャナ)とを備えている。特許文献1では、ディスプレイに接触しなくても、空間画像を見ながら特定の位置を入力できるため、ディスプレイが汚れたり、きずが付いたりすることがなく、極めて衛生的である、としている。
【0004】
特許文献2には、空中タッチパネルをテーブルのような筐体に収容したジャスチャー操作装置が記載されている。特許文献2によれば、パソコン等の入力装置のディスプレイ画像など、三次元空間に浮かび上がらせた空中画像に対して、ユーザがジェスチャー操作をわかりやすく行うことができ、操作指令を精度よく判別できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-067071号公報
【文献】特開2017-062709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでキッチンでは、調理スペースとなるカウンターがあるため、空中タッチパネルのシステムをカウンタートップに収容することが考えられる。しかしながら調理スペースは食材や調理器具を置く作業場所であるから、空中画像の光路やスキャナのセンシングを邪魔するおそれがある。一方、キッチンはその上方に吊戸棚を設けるなどして、調理用具や食器などを収納するスペースをより多く確保している。そこで特許文献1の空中タッチパネルを吊戸棚に適用することが考えられる。しかしながら、吊り戸棚に空中タッチパネルのシステムを収容しようとしても、ディスプレイに対してレンズガラスが傾斜して配置されているため、常に、レンズガラスが吊戸棚から飛び出していることになり、美観が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ディスプレイに触れずに入力でき、利便性を向上できると共に、美観が損なわれない吊戸棚を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる吊戸棚の代表的な構成は、キッチンの上方に設置された吊戸棚であって、吊戸棚の下面に配置されたディスプレイと、吊戸棚の下面の手前側に取付けられたヒンジと、ヒンジを介して取付けられ、ディスプレイから発する光を屈折させて、空中画像を結像するレンズガラスと、レンズガラスの奥側に取付けられ、空中画像に対するユーザの手の動きをスキャンするスキャナとを備え、ヒンジは、吊戸棚の下面に対するレンズガラスの角度を調整して調整後の角度を保持することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、空中画像を結像するレンズガラスは、吊戸棚の下面にヒンジを介して取付けられていて、吊戸棚の下面に対する角度をヒンジによって調整可能である。このため、不使用時にはレンズガラスの角度を小さくして吊戸棚の下面に接するようにして収納できるので、美観が損なわれない。
【0010】
一方、使用時には、レンズガラスの角度を調整することで空中画像が結像する空間での位置を調整でき、利便性が向上する。例えば背の高いユーザであれば、角度を大きくすることで空中画像に対する視線の角度を垂直に近づけることができ、視認性が向上する。一方、背が低いユーザであれば、角度を小さくすることで、視認性が向上することになる。
【0011】
またレンズガラスにスキャナが取付けられているため、レンズガラスがどのような角度に調整された場合であっても、空中画像に対するスキャナの位置は定まっている。このため、スキャナは、空中画像に対するユーザの手の動きを確実にスキャンできる。したがって、ユーザは、ディスプレイに触れずに、空中画像の特定の位置にタッチするジェスチャー操作を行うことで、調理器や食器洗い機などを操作できる。またユーザの手が汚れていたとしても、ディスプレイに触れることがないため、衛生的である。ここで空中画像の位置や角度は、レンズガラスの角度に応じて変化する。このため、空中画像の位置や角度が変化したらその都度、ユーザの手の動きからユーザのジェスチャー操作を認識するソフトウェアでキャリブレーションを行い、空中画像に対するユーザのジェスチャー操作を精度よく認識できるようにしてもよい。
【0012】
上記のヒンジは、角度を任意の角度で調整可能であるとよい。任意の角度で調整するために、具体的にはフリーストップヒンジを使用することができる。これにより、ヒンジを固定したり解除したりする操作が不要となるため、利便性が向上する。
【0013】
上記のレンズガラスの奥側に、ユーザに把持されるハンドルが設けられているとよい。これにより、ユーザはハンドルを把持して手前側に引き寄せることで、吊戸棚の下面に対するレンズガラスの角度を容易に調整できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ディスプレイに触れずに入力でき、利便性を向上できると共に、美観が損なわれない吊戸棚を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態における吊戸棚の全体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における吊戸棚100の全体を示す図である。吊戸棚100は、図示のように、キッチン102の上方に設置されている。キッチン102は、吊戸棚100が設置されることで、調理用具や食器などを収納するスペースをより多く確保している。
【0018】
キッチン102は、3つのキャビネットから構成されたシステムキッチンであって、例えばコンロキャビネット104、ベースキャビネット106およびシンクキャビネット108を有する。コンロキャビネット104には、加熱調理器としてのコンロ110が設置されている。ベースキャビネット106には、調理スペース112が設けられていて食器洗い機等を収容可能である。シンクキャビネット108には、水栓114およびシンク116が設置されている。
【0019】
図2は、
図1の吊戸棚100の要部を示す図である。図中では、
図1の吊戸棚100を斜め下方から見上げた状態を示している。
図3は、
図2の吊戸棚100を側方から見た図である。
【0020】
吊戸棚100の下面118には、ディスプレイ120が配置されている。ディスプレイ120には、例えばレシピや、調理器や食器洗い機などの操作メニューが表示される。また吊戸棚100の下面118のうち、壁面122(
図3参照)から離れる方向である手前側には、ヒンジ124が取付けられている。
【0021】
吊戸棚100はさらに、レンズガラス126を備える。レンズガラス126は、ヒンジ124を介して吊戸棚100の下面118に取付けられている。ヒンジ124は、例えばフリーストップヒンジであり、
図3の矢印Aに示すように、吊戸棚100の下面118に対するレンズガラス126の角度を任意の角度で調整可能であり、さらに調整後の角度を保持する。またフリーストップヒンジであるため、任意の角度で調整する際、ヒンジ124を固定したり解除したりする操作が不要となり、利便性が高い。
【0022】
このため、レンズガラス126は、
図3に示すように、不使用時に吊戸棚100の下面118に対する角度を小さくして、吊戸棚100の下面118に平行あるいは接するようにして収納できる。なお
図3では、レンズガラス126の不使用時と使用時のいずれの状態も示している。
【0023】
一方、使用時においてレンズガラス126は、吊戸棚100の下面118に対する角度を調整して、ディスプレイ120に対して傾斜して配置される(
図2参照)。レンズガラス126は、
図3に示す使用時において、ディスプレイ120から発する光Bを屈折させ、レンズガラス126の正面に立つユーザ134の視覚に対して、屈折後の光Cによって空中画像128を結像する。ここでレンズガラス126の屈折角は、例えば90度である。空中画像128は、ディスプレイ120の表示画面を空間内に浮かび上がらせたものであり、いわば仮想ディスプレイとして機能する。
【0024】
さらにレンズガラス126の奥側、すなわち不使用時に収納された状態で壁面122に近い側には、ハンドル130とスキャナ132とが取付けられている。
【0025】
吊戸棚100では、使用時に、ユーザ134がハンドル130を把持して手前側に引き寄せたりあるいは奥側に押し付けたりすることで、吊戸棚100の下面118に対するレンズガラス126の角度を容易に調整できる。そして吊戸棚100では、ユーザ134から見て空中画像128の視認性が最も高くなったら、ユーザ134がハンドル130から手136を離すだけで、ヒンジ124によってその角度が保持される。なお空中画像128の視認性が最も高くなる角度は、例えばユーザ134の視線Dに対して空中画像128の面方向が垂直になるような角度である。
【0026】
スキャナ132は、空中画像128に対するユーザ134の手136の動きをスキャンする。図示のように、空中画像128およびユーザ134の手136は、スキャナ132の撮影範囲E内に位置している。
【0027】
このため、スキャナ132は、空中画像128に対するユーザ134の手136の動き、例えば空中画像128の特定の位置にタッチしたことなどを確実にスキャンできる。空中画像128の特定の位置には、例えばレシピを表示させるメニューや、調理器や食器洗い機などの操作メニューが表示されている。
【0028】
さらに吊戸棚100では、ユーザ134の手136の動きがスキャナ132でスキャンされることで、空中画像128の特定の位置にタッチしたことが検知されて、空中画像128の特定の位置に対応付けられた所望の表示や操作が可能となる。
【0029】
図4は、
図3の吊戸棚100の使用例を示す図である。なお
図4(a)には、
図3と同様のユーザ134を示している。吊戸棚100を使用する際、ユーザ134は、まずハンドル130を把持して手前に引き寄せて、空中画像128の視認性が高くなるように、吊戸棚100の下面118に対するレンズガラス126の角度を調整する。
【0030】
図4(a)に示すように、吊戸棚100の下面118に対するレンズガラス126の角度をαにしたところ、視線Dに対して空中画像128の面方向が垂直となり、空中画像128の視認性が最も高くなった。つぎに、ユーザ134がハンドル130から手136を離すと、ヒンジ124によって角度αが保持される。これにより、ユーザ134は、空中画像128の特定の位置に対して手136で確実にタッチできる。
【0031】
図4(b)はユーザ138の視線が低い(背が低い)場合の例である。
図4(b)に示すユーザ138が吊戸棚100を使用する場合、ユーザ138は、まずハンドル130を把持して手前に引き寄せて、空中画像140の視認性が高くなるように、吊戸棚100の下面118に対するレンズガラス126の角度を調整する。
【0032】
ただし、ユーザ138は、
図4(a)に示すユーザ134よりも背が低い。このため、ユーザ138の視線Fに対して空中画像140の面方向が垂直であって、空中画像140の視認性が最も高くなる角度は、
図4(b)に示すように角度βとなり、
図4(a)に示す角度αよりも小さくなる。
【0033】
つぎに、ユーザ138がハンドル130から手142を離すと、ヒンジ124によって角度βが保持される。これにより、ユーザ138は、空中画像140の特定の位置に対して手142で確実にタッチできる。
【0034】
空中画像140は、ディスプレイ120からの光Gをレンズガラス126で90度に屈折させ、屈折後の光Hによって結像したものであり、
図4(a)に示す空中画像128に比べて下に向かって傾斜している。空中画像140は、下に向かって傾斜していることで、背の低いユーザ138から見て視認性が高くなっている。
【0035】
上記説明したように、本実施形態の吊戸棚100によれば、空中画像128、140を結像するレンズガラス126が吊戸棚100の下面118に対する角度をヒンジ124によって調整可能である。このため、吊戸棚100では、不使用時にはレンズガラス126の角度を小さくして吊戸棚100の下面118に平行あるいは接するようにして収納できる。したがって、レンズガラス126が吊戸棚100から飛び出すことがなく、美観が損なわれない。
【0036】
また吊戸棚100では、使用時にはレンズガラス126の角度を調整することで空中画像128、140が結像する空間での位置を調整でき、利便性が向上する。例えば、
図4(a)に示す背の高いユーザ134であれば、角度を大きくして角度αとすることで空中画像128に対する視線Dの角度を垂直に近づけることができ、空中画像128に対する視認性が向上する。一方、
図4(b)に示す背が低いユーザ138であれば、角度を小さくして角度βとすることで、空中画像140に対する視認性が向上することになる。
【0037】
また吊戸棚100では、レンズガラス126にスキャナ132が取付けられているため、レンズガラス126がどのような角度に調整された場合であっても、空中画像128、140に対するスキャナ132の位置は定まることになる。このため、スキャナ132は、空中画像128、140に対するユーザ134、138の手136、142の動きを確実にスキャンできる。したがって、吊戸棚100では、ユーザ134、138がディスプレイ120に触れずに、空中画像128、140の特定の位置にタッチするジェスチャー操作を行うことで、参照したいレシピを表示したり、調理器や食器洗い機などを操作したりすることができる。ただし空中画像128、140の位置や角度は、レンズガラス126の角度に応じて変化する。このため、空中画像128、140の位置や角度が変化したらその都度、ユーザ134、138の手136、142の動きからユーザ134、138のジェスチャー操作を認識するソフトウェアでキャリブレーションを行い、空中画像128、140に対するユーザ134、138のジェスチャー操作を精度よく認識できるようにしてもよい。
【0038】
さらに吊戸棚100では、調理や食器洗いの最中でユーザ134、138の手136、142が汚れていたとしても、ディスプレイ120に触れることがないため、衛生的である。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、キッチンの上方に設置された吊戸棚に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100…吊戸棚、102…キッチン、104…コンロキャビネット、106…ベースキャビネット、108…シンクキャビネット、110…コンロ、112…調理スペース、114…水栓、116…シンク、118…吊戸棚の下面、120…ディスプレイ、122…壁面、124…ヒンジ、126…レンズガラス、128、140…空中画像、130…ハンドル、132…スキャナ、134、138…ユーザ、136、142…ユーザの手