(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】古紙パルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
D21C 5/02 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
D21C5/02
(21)【出願番号】P 2018177784
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053054(JP,A)
【文献】特開2001-279588(JP,A)
【文献】特開2001-271284(JP,A)
【文献】特開2004-044067(JP,A)
【文献】特開2006-027130(JP,A)
【文献】特表2004-505184(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2148001(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプスラリーに、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマー、モノクロラミン、及び脱墨剤を共存させた状態でフローテーションを行うことを含む、古紙パルプの製造方法であって、
前記カチオンポリマーの重量平均分子量は、10,000~150,000である、古紙パルプの製造方法。
【請求項2】
フローテーター内又はその上流のパルプスラリーに、前記カチオンポリマーを添加することを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
フローテーター内又はその上流のパルプスラリーに、モノクロラミンを生成する薬剤及びモノクロラミンを含む薬剤の少なくとも一方を添加することを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ジアリルジアルキルアンモニウムモノマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドである、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、古紙パルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピッチと呼ばれる古紙や木材に由来する疎水性粘着物質は、パルプスラリー中において、コロイド粒子状の微粒子として分散していたり、パルプ原料に定着していたりする。パルプスラリー中に分散したピッチは、調成工程や抄紙工程において凝集化して粗大ピッチを生成し、紙製品の品質低下や、搾水不良、断紙等を引き起こす原因となり、操業に障害を及ぼすことが知られている。特に、古紙再生工程のパルプスラリーにはインク成分や樹脂、接着剤などに起因する微細ピッチ成分が含まれることが多く、ピッチトラブルが起こり易い。
【0003】
特許文献1は、水溶性両性アクリルアミド系重合体を含有する古紙脱墨工程フローテーターの異物除去剤を開示する。特許文献2は、架橋したポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを含有する脱墨剤を用いて異物除去を行うことを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4711096号
【文献】特許3654119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
古紙再生工程では、古紙パルプ原料からインク等を剥離し、剥離したインク等を泡に吸着させて取り除くフローテーションが行われる。フローテーションにおいて、パルプ原料からのインク成分や接着剤等の剥離が不十分であると、最終的に得られる古紙パルプの品質(白色度)が低下する。また、パルプ原料から剥離し、水中に分散したピッチの除去が不十分であると、操業に障害を及ぼす原因になるとともに、得られる古紙パルプの品質低下を引き起こす。
【0006】
本開示は、一又は複数の実施形態において、フローテーションにおける、パルプ原料からインク成分等の剥離性の向上と、該剥離により水中に分散したピッチを系外への排出効率の向上とが可能な新たな方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、パルプスラリーに、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマー、モノクロラミン、及び脱墨剤を共存させた状態でフローテーションを行うことを含む古紙パルプの製造方法であって、前記カチオンポリマーの重量平均分子量は、10,000~150,000である古紙パルプの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、脱墨工程のフローテーターにおけるフローテーションにおいて、古紙パルプからのピッチ成分の剥離性を向上させることができ、かつ、剥離したピッチの除去率(系外への排出率)を向上させることができる。このため、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、高品質な古紙再生パルプを製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、パルプスラリーに、モノクロラミンと、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有する重量平均分子量が1万~15万のカチオンポリマーと、脱墨剤とを共存させた状態でフローテーションを行うことにより、古紙パルプに定着するピッチ成分を効率的に剥離できるとともに、剥離したピッチのフローテーターの系外への除去効果を高めることができるという、知見に基づく。
【0010】
パルプスラリーに、モノクロラミンと、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有する重量平均分子量が1万~15万のカチオンポリマーと、脱墨剤とを共存させた状態でフローテーションを行うことにより、上記のピッチ剥離効果と剥離したピッチ除去効果とを向上できるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推定される。
モノクロラミンが古紙パルプに定着するインク等に作用して、これらのピッチ成分を剥離しやすくするとともに、剥離したピッチ成分を小さくする。ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有する上記の重量平均分子量を有するカチオンポリマーが、剥離して水中に分散するピッチ成分に作用してこれらを適度なサイズに凝集させることにより、フローテーションによって生じる泡に凝集したピッチ成分がより付着しやすくなる。泡に付着したピッチ成分は、泡とともにフローテーター外に排出することから、剥離したピッチのフローテーターの系外への除去効果が高くなるとともに、水中に分散するピッチ成分を減少させることができる。但し、本開示は、このメカニズムに限定されなくてもよい。
【0011】
[古紙パルプの製造方法]
本開示は、一態様において、パルプスラリーに、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマー、モノクロラミン、及び脱墨剤を共存させた状態でフローテーションを行うことを含む古紙パルプの製造方法であって、前記カチオンポリマーの重量平均分子量は、10,000~150,000である古紙パルプの製造方法(以下、「本開示の製造方法」ともいう)に関する。本開示の製造方法によれば、古紙原料からのインク成分等の剥離効果と、剥離したピッチ成分の系外への除去効果が高いことから、一又は複数の実施形態において、白色度の高い高品質な古紙再生パルプを製造することができる。
【0012】
本開示において「フローテーション」とは、フローテーション法によって、古紙パルプ原料から、該原料に定着するインク、樹脂及び接着剤等を分離除去することをいう。フローテーションは、一又は複数の実施形態において、古紙パルプ原料を含むスラリーに気泡を吹き込むことによって行うことができる。古紙パルプ原料としては、一又は複数の実施形態において、新聞紙、雑誌、及びチラシ等の古紙が挙げられる。
【0013】
ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマーとは、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含み、カチオン性官能基又はカチオン性官能基にイオン化されうる基を有し、かつ正の電荷又は正電荷性を有するポリマーをいう。
【0014】
カチオンポリマーの重量平均分子量は、脱墨性及びピッチ成分の系外排出効果をさらに向上させる点から、20,000以上、30,000以上、40,000以上、50,000以上,又は60,000以上が好ましく、同様の点から、140,000以下、130,000以下、120,000以下又は110,000以下が好ましい。本開示における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した値とする。
【0015】
ジアリルジアルキルアンモニウムモノマーとしては、一又は複数の実施形態において、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、ジアリルジメチルアンモニウムブロミド、ジアリルジメチルアンモニウムサルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムホスフェート、ジメチルアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジエチルアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0016】
ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマーは、一又は複数の実施形態において、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマーのホモポリマーであってもよいし、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマーとジアリルジアルキルアンモニウムモノマー以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー以外のモノマーとしては、一又は複数の実施形態において、アクリルアミド(AM)、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、及びビニルピロリドン等が挙げられる。
【0017】
ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマーの全構成単位中のジアリルジアルキルアンモニウムモノマーの含有量は、一又は複数の実施形態において、50重量%以上、55重量%以上又は60重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上又は95重量%以上である。
【0018】
ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマーとしては、一又は複数の実施形態において、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物等が挙げられる。
【0019】
ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマーは、一又は複数の実施形態において、架橋構造を有していないことが好ましい。ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマーは、一又は複数の実施形態において、架橋性モノマーを含んでいないか又は実質的に含んでいないことが好ましい。
【0020】
モノクロラミン(ClH2N)は、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸塩とアンモニウム塩との反応によって生成される結合残留塩素である。モノクロラミンは、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム又は次亜塩素酸カルシウムの次亜塩素酸塩の水溶液と、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硫酸アンモニウム又は硝酸アンモニウムの水溶性の無機アンモニウム塩の水溶液又はアンモニア水とを混合することにより生成できる。
【0021】
脱墨剤は、従来公知の及び/又は今後開発されるものが使用できる。脱墨剤としては、一又は複数の実施形態として、ポリエーテル基を親水基とする非イオン界面活性剤が挙げられる。脱墨剤としては、一又は複数の実施形態として、高級脂肪酸、高級アルコール又はアルキルアミンを親油基とし、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを親水基とするポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0022】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フローテーター内で、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有する重量平均分子量が1万~15万のカチオンポリマー、モノクロラミン、及び脱墨剤を含有するパルプスラリーに気泡を吹き込むことによってフローテーションを行うことを含む。
【0023】
フローテーション時におけるパルプスラリー中のカチオンポリマーの含有量は、一又は複数の実施形態において、パルプスラリー中の古紙パルプ原料の重量(絶乾重量)に対して、0.01重量%~1重量%であり、経済性の点から、0.05重量%~0.5重量%である。本開示において「絶乾重量」とは、105℃で3時間乾燥させた後の重量をいう。
【0024】
フローテーション時におけるパルプスラリー中(フローテーター内)のモノクロラミンの含有量は、一又は複数の実施形態において、パルプスラリーに対し、残留塩素量として、0.5mg/L~30mg/Lであり、脱墨性をさらに向上させる点から1mg/L~30mg/Lが好ましく、経済性の点から1mg/L~20mg/Lがより好ましい。残留塩素量は、ジエチル-p-フェニレンジアンモニウム(DPD)法(JIS K0101)により測定することができる。
【0025】
フローテーション時におけるパルプスラリー中(フローテーター内)の脱墨剤の濃度は、フローテーター内のパルプスラリーのパルプ濃度に応じて適宜決定できる。脱墨剤の濃度は、パルプスラリーのパルプ濃度が1重量%~2重量%である場合、一又は複数の実施形態において、0.1重量%~2重量%又は0.2重量%~1重量%である。
【0026】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フローテーター内又はその上流のパルプスラリーに、上記のカチオンポリマーを添加することを含んでいてもよい。カチオンポリマーは、パルプスラリーの古紙パルプ原料の重量(絶乾重量)に対して、0.01重量%~1重量%となるように添加すればよく、脱墨性向上の点から、0.05重量%~1重量%となるように添加することが好ましく、経済性の点から0.05重量%~0.5重量%となるように添加することがより好ましい。フローテーターの上流としては、一又は複数の実施形態において、パルパー、チェスト、クリーナー及びスクリーン、並びにそれぞれを繋ぐ配管等が挙げられる。
【0027】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フローテーター内又はその上流のパルプスラリーに、モノクロラミンを生成する薬剤及びモノクロラミンを含む薬剤の少なくとも一方を添加することを含んでいてもよい。モノクロラミンを生成する薬剤及びモノクロラミンを含む薬剤としては、一又は複数の実施形態として、次亜塩素酸塩とアンモニウム塩とを含む薬剤等が挙げられる。次亜塩素酸塩としては、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、及び次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。アンモニウム塩としては、一又は複数の実施形態において、硫酸アンモニウム、及び塩化アンモニウム等が挙げられる。次亜塩素酸塩とアンモニウム塩とのモル比は、一又は複数の実施形態において、残留塩素量と窒素とのモル比として1:1~1:2、1:1.1~1:2、1:1.2~1:2、または1:1.2~1:1.6である。モノクロラミンは、パルプスラリーに対し、残留塩素量として、0.5mg/L~30mg/Lとなるように添加すればよく、脱墨性向上の点から1mg/L~30mg/Lとなるように添加することが好ましく、経済性の点から1mg/L~20mg/Lとなるように添加することがより好ましい。残留塩素量は、ジエチル-p-フェニレンジアンモニウム(DPD)法(JIS K0101)により測定することができる。
【0028】
カチオンポリマーとモノクロラミンを生成する薬剤及びモノクロラミンを含む薬剤の少なくとも一方とは、同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。別々に添加する場合、添加する順序は特に限定されず、カチオンポリマーを添加した後、モノクロラミンを生成する薬剤及びモノクロラミンを含む薬剤の少なくとも一方を添加してもよいし、モノクロラミンを生成する薬剤及びモノクロラミンを含む薬剤の少なくとも一方を添加した後、カチオンポリマーを添加してもよい。
【0029】
本開示は、その他の態様において、古紙再生工程におけるフローテーター内又はその上流のパルプスラリーに、脱墨剤、モノクロラミン、及びジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有する重量平均分子量が1万~15万のカチオンポリマーを共存させることを含む古紙パルプの製造方法に関する。本態様において、脱墨剤、モノクロラミン、及びカチオンポリマーの種類、含有量及び添加量等は上述の通りである。
【0030】
本開示の製造方法によれば、白色度の高い古紙パルプを製造することができる。よって、本開示は、その他の態様において、古紙パルプの白色度向上方法に関する。本開示の古紙パルプの白色度向上方法は、パルプスラリーに、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有する重量平均分子量が10,000~150,000であるカチオンポリマー、モノクロラミン、及び脱墨剤を共存させた状態でフローテーションを行うことを含む。
また、本開示の製造方法によれば、パルプスラリー中のピッチを効率よく系外に除去できることから、一又は複数の実施形態において、古紙パルプ製造工程におけるピッチコントロール方法に関する。本開示の古紙パルプ製造工程におけるピッチコントロール方法は、古紙パルプ製造工程におけるピッチトラブルの発生を抑制することができる。よって、本開示はその他の態様において、パルプスラリーに、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有する重量平均分子量が10,000~150,000であるカチオンポリマー、モノクロラミン、及び脱墨剤を共存させた状態でフローテーションを行うことを含む。
これらの態様において、脱墨剤、モノクロラミン、及びカチオンポリマーの種類、並びにこれらの含有量及び添加量等は上述の通りである。
【0031】
本開示は、以下の、一又は複数の実施形態に関しうる;
〔1〕 パルプスラリーに、ジアリルジアルキルアンモニウムモノマー由来の構成単位を含有するカチオンポリマー、モノクロラミン、及び脱墨剤を共存させた状態でフローテーションを行うことを含む、古紙パルプの製造方法であって、
前記カチオンポリマーの重量平均分子量は、10,000~150,000である、古紙パルプの製造方法。
〔2〕 フローテーター内又はその上流のパルプスラリーに、前記カチオンポリマーを添加することを含む〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 フローテーター内又はその上流のパルプスラリーに、モノクロラミンを生成する薬剤及びモノクロラミンを含む薬剤の少なくとも一方を添加することを含む〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記ジアリルジアルキルアンモニウムモノマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドである〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
【0032】
以下、実施例及び比較例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0033】
[モノクロラミン調製例]次亜塩素酸ナトリウムと硫酸アンモニウムとの混合液によるモノクロラミン水溶液の調製
次亜塩素酸ナトリウム溶液(残留塩素量:140g/L)を脱イオン水で残留塩素量が2g/Lになるように希釈した後、30%硫酸アンモニウム水溶液(硫酸アンモニウム(キシダ化学(株)製)30gを脱イオン水で溶解し、全量を100gとしたもの)を混合し、残留塩素量と窒素のモル比が1:1.2となるようにモノクロラミン水溶液を調製した。
【0034】
[残留塩素量の測定]
表1のモノクロラミンの残留塩素量は、ジエチル-p-フェニレンジアンモニウム(DPD)法(JIS K0101)により測定した。
【0035】
[ポリマー]
表1に示すポリマーを用いた。なお、表1に示す平均分子量は、GPC法により測定して得られた重量平均分子量である。
【0036】
[卓上用フローテーターを用いた脱墨試験]
古紙パルプ製造設備を有する某製紙工場でフローテーター前原料を入手した。この原料はパルプ濃度が1重量%であり、古紙重量に対して市販の脱墨剤が0.5重量%添加されている。この原料の水温を40℃とし、表1に示す薬剤を表1に示す濃度となるように加えた後、実験用フローテーター(熊谷理機工業(株)製)に入れて、フローテーションを行った。フローテーションは15秒毎にフロスをかき出しながら1分30秒間行った。フローテーション中の泡高さを目視で確認し、Blankの泡立ちの高さを基準として以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
<評価>
A:Blankと同等
B:ブランクよりも低い
【0037】
[脱墨性の確認試験]
上記の脱墨試験で得られた原料(フローテーション後の原料)の一部を採取し、JIS P-8222に規定した丸型シートマシンを用いて手抄きシート(未洗浄パルプ)を作製した。得られた手抄きシートのISO白色度(未洗浄パルプの白色度)を分光白色度計(日本電色工業(株)製)で測定した。
また、手抄きシートの作製に使用した原料と同じ原料の一部を流水で1分間洗浄を行った。この洗浄したパルプ(完全洗浄パルプ)について同様の方法で手抄きシートを作製し、ISO白色度(完全洗浄パルプの白色度)を測定した。
未洗浄パルプの白色度と完全洗浄パルプの白色度とを用いて、下記式から脱墨性を算出した。その結果を表1に示す。完全洗浄パルプの白色度と未洗浄パルプの白色度との差が大きいと、脱墨性が優れていると評価することができ、得られるパルプの色味も白くなる。
[脱墨性]=[完全洗浄パルプの白色度]-[未洗浄パルプの白色度]
【0038】
[脱墨後の水中ピッチ残留量確認試験]
脱墨性の確認試験に使用した原料の一部を目開き150μmのステンレス製ふるいでろ過して、ろ液を回収した。このろ液に蛍光試薬であるナイルレッド(和光純薬(株)製)を添加して水中のピッチを染色し、市販蛍光光度計(励起波長585nm/蛍光波長624nm)で
蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度を、Blank値(脱墨剤のみ)を100%とした水中のピッチ残留率として求めた。その結果を表1に示す。水中のピッチ残留率が小さいと、水中(フローテータ内)に残留するピッチ量が少ない(フローテーターの系外に排出された)と評価することができる。
[ピッチ残留率](%)=[試験後ろ液の蛍光強度]/[Blankろ液の蛍光強度]×100
【0039】
【0040】
表1に示すように、実施例1~7では、Blankと同程度の泡立ちを維持した状態で、脱墨性の向上と、水中ピッチ残留率の減少とが確認できた。また、いずれの実施例においても、比較例と比べて脱墨性が高く、かつ水中のピッチ残留率が低かった。つまり、脱墨剤、モノクロラミン、及び重量平均分子量が2~10万のジアリルジメチルアンモニウムクロライド系カチオンポリマーを共存させた状態でフローテーションを行うことによって、古紙に定着するピッチの剥離効果が向上し、かつ剥離され水中に分散するピッチをフローテーターの系外に排出できたといえる。