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特許7128490測定装置、その動作方法および動作プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】測定装置、その動作方法および動作プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20220824BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61B5/053
A61B5/107 100
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020203396
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090842
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】513261783
【氏名又は名称】メディカル・イノベイション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521063030
【氏名又は名称】合同会社DeRyme.
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 英孝
(72)【発明者】
【氏名】片山 正輝
(72)【発明者】
【氏名】大川 雄平
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0053736(US,A1)
【文献】特開2008-301938(JP,A)
【文献】特開2013-081577(JP,A)
【文献】特表2008-506444(JP,A)
【文献】特開2009-183531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053-5/0538
A61B 5/256
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の頭部の設定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、
前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受ける受信電極を含む第2の電極部と、
設定された出力の前記電気信号を生成して、前記第1の電極部から前記電気信号を印加させる信号生成部と、
前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを格納し、前記評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含むデータベースと、
前記信号生成部で生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する測定部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定部位は少なくとも前記頭部の側頭筋を含む生体組織であり、
前記印加電極から印加された前記電気信号が前記生体組織を通じて前記受信電極に流れることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第1の電極部は、前記印加電極を保持し、前記被測定者の一方の耳穴の内部または該耳穴の開口部に前記送信電極を配置させる第1の保持手段を備え、
前記第2の電極部は、前記受信電極を保持し、被測定者の他方の耳または頭部の一部に前記受信電極を配置させる第2の保持手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
さらに、前記評価情報を提示する情報提示部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかの請求項に記載の測定装置。
【請求項5】
被測定者の頭部の設定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、
前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受ける受信電極を含む第2の電極部と、
設定された出力の前記電気信号を生成して、前記第1の電極部から前記電気信号を印加させる信号生成部と、
記頭部の外形形状を表す画像を取得する画像取得部と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、取得した前記画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて前記被測定者の栄養状態の評価情報を生成する測定部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
被測定者の頭部の測定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備える電極ユニットと、
前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを格納し、前記評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含むデータベースを備え、設定された出力の前記電気信号を生成して前記第1の電極部から印加させ、前記信号生成部で生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する測定ユニットと、
を備えることを特徴とする測定システム。
【請求項7】
前記測定ユニットは、
前記第1の電極部が前記印加電極を保持し、前記被測定者の一方の耳穴の内部または該耳穴の開口部に前記送信電極を配置させる第1の保持手段を備えるとともに、前記第2の電極部が前記受信電極を保持し、被測定者の他方の耳または頭部の一部に前記受信電極を配置させる第2の保持手段を備えることを特徴とする請求項に記載の測定システム。
【請求項8】
さらに、前記評価情報を提示する情報提示手段を備えることを特徴とする請求項6または請求項に記載の測定システム。
【請求項9】
被測定者の頭部の測定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備える電極ユニットと、
前記頭部の外形形状を表す画像を撮影する撮影部を備え、設定された出力の前記電気信号を生成して前記第1の電極部から印加させるとともに、前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、前記画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて前記被測定者の栄養状態の評価情報を生成する測定ユニットと、
を備えることを特徴とする測定システム。
【請求項10】
被測定者の頭部の測定部位に対して電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着されており前記印加電極から送信された電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置の動作方法であって、
設定された出力の電気信号を生成して前記第1の電極部に供給する工程と、
前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを、該評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含めてデータベースに格納する工程と、
生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す工程と、
前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを前記データベースから読み出して参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する工程と、
を含むことを特徴とする測定装置の動作方法。
【請求項11】
被測定者の頭部の測定部位に対して電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着されており、前記印加電極から送信された電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置の動作方法であって、
撮影手段で撮影した前記被測定者の頭部画像を読み込む工程と、
設定された出力の前記電気信号を生成して前記第1の電極部に供給する工程と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す工程と、
前記頭部画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて基準生体インピーダンスと対比し、この対比結果によりデータベースから前記基準生体インピーダンスに関連付けられた栄養状態の評価情報を読み出して提示させる工程と、
を含むことを特徴とする測定装置の動作方法。
【請求項12】
被測定者の頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置で前記印加電極から印加送信された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置のコンピュータに実行させる動作プログラムであって、
設定された出力の電気信号を生成して前記印加電極に供給させる機能と、
前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを、該評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含めてデータベースに格納する機能と、
生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す機能と、
前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを前記データベースから読み出して参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する機能と、
を含むことを特徴とする動作プログラム。
【請求項13】
被測定者の頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置で前記印加電極から印加送信された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置のコンピュータに実行させる動作プログラムであって、
撮影手段で撮影した前記被測定者の頭部画像を読み込む機能と、
設定された出力の前記電気信号を生成して前記印加電極に供給させる機能と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す機能と、
前記頭部画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて基準生体インピーダンスと対比し、この対比結果によりデータベースから前記基準生体インピーダンスに関連付けられた栄養状態の評価情報を読み出して提示させる機能と、
を含むことを特徴とする動作プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の生体状態の評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体機能の状態の把握には、たとえば身体の栄養状態に基づいて判断する手法がとられている。栄養状態の悪化は、筋肉や骨のほか脳などの生体組織の減退や劣化に繋がるおそれがある。このような栄養状態に影響を及ぼす要素の1つとして、顎を動かして口を開閉させたり、咀嚼動作が行えるかどうかが関連している。すなわち、咀嚼ができない状態であれば飲食による栄養摂取が困難となるため、身体や脳組織の栄養状態の悪化に影響する。顎の動作は、頭部側面にある側頭筋を含む生体組織を利用して行われている。この側頭筋は、年齢の増加や病気などで栄養摂取が十分に行われていないことなどの影響により減少していく。さらにこのように咀嚼が困難な状態が継続することで、認知症の発症やその進行を招くことにもなりうる。
【0003】
頭部内の状態を把握するには、たとえばCT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などを利用して筋肉や体脂肪などの組織の断層画像を撮影し、その画像から判断する手法がある。また、人体の頭部に取付けた静電容量センサにより、咀嚼したときの筋肉組織の活動によって生じた微弱な電気信号や脳波などを計測手法がある。
そのほか、身体全体の筋肉量や脂肪量の体組成の計測では、計測したい部位に微弱な電気を流し、そのときの電気の流れ易さを割り出す所謂生体電気インピーダンス法を用いることが知られている。
【0004】
このような生体の筋肉量などを測定する手法に関し、対向した第1の電極と第2の電極、これらの電極間に設けられた変形可能な誘電体、誘電体よりも堅い材料からなる支持部材を備え、測定対象の筋肉の伸縮に対応した静電容量型圧力センサについて知られている(たとえば、特許文献1)。また複数の電極に駆動電極に電気信号を供給する入力信号生成部、電極のうちセンシング電極を通じて出力される出力電気信号から生体インピーダンス測定部を備え、入力信号生成部は信号を変調する変調部を備えるものが知られている(たとえば、特許文献2)。また、身体に接触させた電極により高周波数の交流電流を流したときのインピーダンスと、低周波数の交流電流を流したときのインピーダンスを測定し、これらのインピーダンス比から筋発達・筋萎縮を判定するものがある(たとえば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再公表WO2013/073677号公報
【文献】特開2010-221036号公報
【文献】特開2012-210355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、CT装置など医療機器を利用して側頭筋を含む頭部の生体組織を計測するには、病院などの医療施設において医師の診断や検査を受ける必要がある。体調の状態は常に変化することから、生体組織の計測は、たとえば定期的に複数のデータが収集できることが望ましい。しかしながら、計測場所やデータ計測機会が限定されたのでは、定期的なデータ収集が行えず、栄養状態の変化を把握することが出来ない。たとえば、慢性的に体調に症状が出ている場合や、他の検査に付随して側頭筋の減少が発見された場合などに限って計測を行うのでは、側頭筋の減少が原因となる体調変化の予兆などを迅速に発見することは困難であるという課題がある。また、CT装置では、放射線を利用して測定するため短期間に何度も計測を行うことができない。
【0007】
さらに、計測処理では、計測に利用する電極などのセンサの設置位置が計測結果に影響を与える。測定部位である側頭筋を含む生体部位に対して、同じ状態でセンサを設置する必要がある。特に頭部の周面は曲面であり、側頭筋を含む生体部位の位置に合せて電極を同じ位置に固定させることが困難であるという課題がある。また、計測装置では、センサの設置位置を安定化させるために装着状態や手順が複雑なものであると、たとえば寝たきりの状態の者や介助が必要な者に対してセンサの装着が困難になるという課題がある。
そこで、本発明の発明者は、筋肉量を推定可能な生体インピーダンス法を利用して、側頭筋の厚さなどに影響を受ける生体部位のデータを計測し、この値から咀嚼動作に連動する生体部位の栄養状態の推定を行えるとの知見を得た。また、耳を利用してセンサを設置することで、生体部位に対する測定位置が確保できるので、基準データとの対比や時間経過による計測結果同士の比較により、被測定者の状態把握が可能となるとの知見を得た。
斯かる課題について特許文献1ないし3には開示や示唆はなく、特許文献1、2に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、生体インピーダンス法を利用した計測手法により、側頭筋を含む生体部位の厚さなどに応じて変化する生体インピーダンスを割り出して、被測定者の栄養状態の変化やその予兆を迅速に把握することにある、
また、本発明の他の目的は、被測定者に対して測定装置を容易に、かつ測定時に略同じ位置に機器を装着可能にして、栄養状態の変化を把握するための対比データの精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の測定装置の一側面は、被測定者の頭部の設定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受ける受信電極を含む第2の電極部と、設定された出力の前記電気信号を生成して、前記第1の電極部から前記電気信号を印加させる信号生成部と、前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを格納し、前記評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含むデータベースと、前記信号生成部で生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する測定部とを備える。
【0010】
上記測定装置において、前記測定部位は少なくとも前記頭部の側頭筋を含む生体組織であり、前記印加電極から印加された前記電気信号が前記生体組織を通じて前記受信電極に流れてよい。
上記測定装置において、前記第1の電極部は、前記印加電極を保持し、前記被測定者の一方の耳穴の内部または該耳穴の開口部に前記送信電極を配置させる第1の保持手段を備え、前記第2の電極部は、前記受信電極を保持し、被測定者の他方の耳または頭部の一部に前記受信電極を配置させる第2の保持手段を備えてよい
記測定装置において、さらに、前記評価情報を提示する情報提示部を備えてよい。
上記目的を達成するため、本開示の測定装置の一側面は、被測定者の頭部の設定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受ける受信電極を含む第2の電極部と、設定された出力の前記電気信号を生成して、前記第1の電極部から前記電気信号を印加させる信号生成部と、前記頭部の外形形状を表す画像を取得する画像取得部と、前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、取得した前記画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて前記被測定者の栄養状態の評価情報を生成する測定部とを備える。
【0011】
上記目的を達成するため、本開示の測定システムの一側面は、被測定者の頭部の測定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備える電極ユニットと、前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを格納し、前記評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含むデータベースを備え、設定された出力の前記電気信号を生成して前記第1の電極部から印加させ、前記信号生成部で生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する測定ユニットを備える。
【0012】
記測定システムにおいて、前記測定ユニットは、前記第1の電極部が前記印加電極を保持し、前記被測定者の一方の耳穴の内部または該耳穴の開口部に前記送信電極を配置させる第1の保持手段を備えるとともに、前記第2の電極部が前記受信電極を保持し、被測定者の他方の耳または頭部の一部に前記受信電極を配置させる第2の保持手段を備えてよい。
上記測定システムにおいて、さらに、前記評価情報を提示する情報提示手段を備えてよい。
上記目的を達成するため、本開示の測定システムの一側面は、被測定者の頭部の測定位置に装着され、該頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着され、前記印加電極で印加された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備える電極ユニットと、前記頭部の外形形状を表す画像を撮影する撮影部を備え、設定された出力の前記電気信号を生成して前記第1の電極部から印加させるとともに、前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出し、前記画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて前記被測定者の栄養状態の評価情報を生成する測定ユニットとを備える。
【0013】
上記目的を達成するため、本開示の測定装置の動作方法の一側面は、被測定者の頭部の測定部位に対して電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着されており前記印加電極から送信された電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置の動作方法であって、設定された出力の電気信号を生成して前記第1の電極部に供給する工程と、前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを、該評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含めてデータベースに格納する工程と、生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す工程と、前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを前記データベースから読み出して参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する工程とを含む。
【0014】
上記目的を達成するため、本開示の測定装置の動作方法の一側面は、被測定者の頭部の測定部位に対して電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置に装着されており、前記印加電極から送信された電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置の動作方法であって、撮影手段で撮影した前記被測定者の頭部画像を読み込む工程と、設定された出力の前記電気信号を生成して前記第1の電極部に供給する工程と、前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す工程と、前記頭部画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて基準生体インピーダンスと対比し、この対比結果によりデータベースから前記基準生体インピーダンスに関連付けられた栄養状態の評価情報を読み出して提示させる工程とを含む。
【0015】
上記目的を達成するため、本開示の動作プログラムの一側面は、被測定者の頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置で前記印加電極から印加送信された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置のコンピュータに実行させる動作プログラムであって、設定された出力の電気信号を生成して前記印加電極に供給させる機能と、前記被測定者の識別情報または前記被測定者に関する情報であるパーソナル情報に応じて設定された評価情報ファイルを、該評価情報ファイル毎に生体インピーダンスに関連付けて登録された栄養状態の評価情報を含めてデータベースに格納する機能と、生成された前記電気信号の設定出力値と、前記第2の電極部で受けた前記電気信号から計測した電流値および電圧値とともに、前記被測定者の前記パーソナル情報から算出した前記第1の電極部と前記第2の電極部間の距離と前記被測定者の頭部の大きさのいずれかまたは双方とに流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す機能と、前記被測定者の前記パーソナル情報によって前記データベースから前記評価情報ファイルを選択するとともに、割り出した前記生体インピーダンスにより選択された前記評価情報ファイルを前記データベースから読み出して参照して前記被測定者の栄養状態の前記評価情報を生成する機能とを含む。
【0016】
上記目的を達成するため、本開示の動作プログラムの一側面は、被測定者の頭部の測定部位に電気信号を印加する印加電極を含む第1の電極部と、前記測定部位を介して前記第1の電極部と対向する位置で前記印加電極から印加送信された前記電気信号を受信する受信電極を含む第2の電極部を備えた測定装置のコンピュータに実行させる動作プログラムであって、撮影手段で撮影した前記被測定者の頭部画像を読み込む機能と、設定された出力の前記電気信号を生成して前記印加電極に供給させる機能と、前記第1の電極部と前記第2の電極部間に流した前記電気信号に基づいて前記測定部位の生体インピーダンスを割り出す機能と、前記頭部画像と基準画像とを対比して前記被測定者の頭部形状の変化量を計測し、該変化量と抽出した前記生体インピーダンスを組み合せて基準生体インピーダンスと対比し、この対比結果によりデータベースから前記基準生体インピーダンスに関連付けられた栄養状態の評価情報を読み出して提示させる機能と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次のいずれかのような効果が得られる。
【0018】
(1) 頭部内にある側頭筋を含む生体部位の生体インピーダンスの値により被測定者の栄養状態を推定することができる。
(2) 容易に多数の計測データを収集できるので、被測定者の栄養状態を管理し易くなる。
(3) 定期的に生体インピーダンスを割り出し、栄養状態の変化を捉えることで、被測定者の身体の状態変化やその兆し、または身体の状態変化が発生してからの経過状態などの把握が可能となる。
(4) 耳穴などの把握し易い設定位置に電極部を装着させることで、設置位置の誤差が少なくなり、計測精度の向上、またはばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る測定装置の機能構成例を示す図である。
図2】測定装置の動作処理の一例を示すフローチャートである。
図3】評価情報データベースの一例を示す図である。
図4】第2の実施形態に係る測定システムの構成例を示す図である。
図5】測定装置の機能構成例を示す図である。
図6】制御部の構成例を示す図である。
図7】ユーザデータベースの一例を示す図である。
図8】測定情報データベースの一例を示す図である。
図9】評価結果画面の一例を示す図である。
図10】生体インピーダンスの変遷状態の一例を示す図である。
図11】測定装置の動作処理の一例を示すフローチャートである。
図12】第3の実施形態に係る測定システムの構成例を示す図である。
図13】測定対象の外形変化情報の取得状態の一例を示す図である。
図14】評価情報データベースの一例を示す図である。
図15】測定装置の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
図1は、測定装置の機能構成例を示している。図1に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
この測定装置2は、たとえば図1に示すように電極部4、6の間に測定対象である生体部位を介在させ、これらの電極部4、6間で微弱な電気信号を流して生体部位の電気の流れ難さを示す生体インピーダンスを割り出す。そして、この測定装置2は、生体インピーダンスを利用して被測定者の栄養状態などを示す指標を生成する。また測定装置2は、栄養状態の指標に加えて、被測定者の食事や生活状態に対するアドバイスなどの情報を提示してもよい。
測定装置2は、たとえば電極部4、6のほか、信号生成部8、測定部10を備える。測定装置2は、たとえば被測定者12の測定部位14の一部または全部に対して電気信号を流すことで、測定部位14を含む生体部位の生体インピーダンスを割り出す。この測定部位14は、被測定者12の頭部の一部として、少なくとも側頭筋を含む生体部位が設定されている。側頭筋は、頭部の両側面にある骨格筋であり、収縮動作によって下顎骨が上がり、噛むことを可能とする咀嚼筋の一例である。また測定部位14には、側頭筋のほか、頭部にある神経組織や脂肪、体液、血液、骨などの生体組織を含んでよい。
測定装置2の電極部4から印加された電気信号は、測定部位14にある側頭筋やその他の組織を通じて電極部6側に流れる。
被測定者12は、たとえば特定の症状などに対する治療や経過観察となっている者に限られず、通常の生活を送っている者なども含まれる。また被測定者12には、年齢や性別などによる区別は設けられていない。
【0021】
電極部4は、電気信号を測定対象に向けて印加する本開示の第1の電極部の一例であり、電気信号を生成する信号生成部8に接続されている。電極部4と信号生成部8は、たとえば1つの筐体で一体に形成されてもよく、またはそれぞれ別筐体で構成されて有線または無線により電気的に接続されてもよい。
電極部6は、本開示の第2の電極部の一例であり、測定部位14を介して電極部4と対向する位置に装着され、測定部位14を通じて流された電気信号を受信する。これにより電極部4から印加した電気信号が、被測定者12の頭部内の測定部位14を通過して電極部6に流される構成であり、測定部位14が電極部4、6を含む信号経路、または電気回路の一部を形成する。電極部6は、測定部10に接続されている。電極部6は、たとえば測定部10と一体に形成されてもよく、または別筐体で構成されてもよい。
電極部4、6は、たとえば被測定者12の頭部の一部に接着もしくは吸着され、または図示しないフックなどの係合手段によって係合することで装着される。
【0022】
信号生成部8は、たとえば生体インピーダンス法を利用した計測処理において印加する電気信号を生成する手段の一例であり、図示しない電源や、設定された電流値に調整する調整回路、所定の周波数の交流信号に調整する変調回路などで構成される。この信号生成部8は、たとえば電極部4から測定部位14に向けて印加される電気信号または電極部4から印加する際の電圧値が設定された値になるように調整する。
測定部10は、電極部6で受信した電気信号を取込んで生体インピーダンス値を所定の算出方法により割り出すとともに、その生体インピーダンスの値に基づいて被測定者の栄養状態などを含む生体の評価情報を生成する。測定部10は、たとえば電極部4、6間の電圧値や、信号生成部8で設定された電気信号の電流値情報などを利用して生体インピーダンスの算出処理を行う。測定部10には、たとえば受信した電気信号の変調処理を行う変調回路や電気信号により生体インピーダンスを演算する演算部などで構成される。さらに測定部10には、算出した生体インピーダンスの値に基づいて評価情報を生成する生成機能部や、この評価情報を被測定者や介護者その他の家族などに通知する通知部などを備える。
【0023】
図2は、測定装置の動作処理の一例を示している。図2に示す処理内容、処理工程などは一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。
この動作処理は、本開示の動作方法またはプログラムの一例であり、たとえば被測定者の情報の読み込み(S101)、設定情報の入力(S102)、電極部の設置確認(S103)、電気信号の生成および送信(S104)、電気信号の取込み(S105)、生体インピーダンスの割り出し(S106)、対比(S107)、評価情報の生成(S108)、評価情報の提示(S109)などを含む。
【0024】
被測定者の情報読み込み(S101):測定装置2は、たとえば図示しない記憶部などに登録された情報、もしくは入力手段によって入力された情報、外部データベースなどから読み込んだ情報を利用して、次に測定処理を行う被測定者の情報を読み込む。ここで読み込む情報は、たとえば被測定者の氏名や年齢、体重や性別、そのほか過去の病歴や治療歴などを含むパーソナル情報が含まれる。
設定情報の入力(S102):測定装置2には、たとえば測定処理を行うための設定情報が入力される。設定情報は、たとえば測定のパラメータであって、生成する電気信号の設定電流値や設定周波数、電気信号を印加する時間情報などが含まれる。また設定情報は、たとえば被測定者12の過去の健康状態や病歴、治療歴、その他の情報を含む個人的データのほか、身長や体重、性別などの一般的データなどに基づいて設定さればよい。また設定情報は、たとえば信号生成部8や測定部10にそれぞれ記憶されてもよく、または図示しない記憶部などに格納されてもよい。
電極部の設置確認(S103):測定装置2は、電極部4、6が被測定者12に設置されたか否かの確認処理を行う。ここでは、たとえば電極部4、6間にテスト用に設定された電気信号を流し、計測した電圧値を判断してもよく、または被測定者12や測定介助者などに対して音声や文字情報によって電極部4、6の装着の確認を促す情報を報知してもよい。測定装置2は、電極部4、6が被測定者12に装着されるまで待機し(S103のNo)、装着が確認できると(S103のYES)、信号生成部8に対して測定処理の開始指示を出力する。
【0025】
電気信号の生成および送信(S104):信号生成部8は、測定処理の開始指示を受けると、設定情報に基づいて設定電流値でかつ設定周波数に調整された電気信号を生成し、電極部4を通じて測定部位14に流す。
電気信号の取込み(S105):測定部10は、たとえば電極部6に流れた電気信号を受けると、その電流値や電極部4、6間の電圧値を計測する。計測した電流値や電圧値は、たとえば記憶部の計測データベースに格納される。
生体インピーダンスの割り出し(S106):測定部10は、たとえば取得した設定電流値、電極部4、6で計測した電圧値や電流値のほか、被測定者12の身長や体重などの情報から算出もしくは割り出した電極部4、6の設置間隔、頭部の大きさなどのデータを利用して生体インピーダンスを算出する。
生体インピーダンスは、以下の理論に基づいて算出する。すなわちインピーダンス(Z)の算出処理の一例として、高周波電流(I)と電圧計測する電極部4、6間に生じた電位差(E)の比であり、以下の式で表すことができる。
Z=E/I ・・・(1)
これにより、たとえば設定電流値と計測した電圧値を利用してインピーダンスを算出してもよい。
また、測定部位14の側頭筋の大きさに対する解析処理として、以下の推定処理を行ってもよい。脂肪などを除外した側頭筋部分の生体インピーダンスの算出処理では、たとえば以下のような推測原理に基づいて算出する。測定部位14はたとえば円柱形の伝導体と仮定したモデルを利用する。そして、この円柱形の伝導体のインピーダンスは、固有抵抗(体積抵抗率:ρ)と、伝導体の長さおよび断面積によって算出する。
高周波の電流(I)が伝導体を通電する場合の電気インピーダンス(Z)は、円柱の長さ(L)に比例し、断面積(A)に反比例するため、たとえば以下の式(2)で表せる。
Z=ρ×(L/A) ・・・(2)

ここで、円柱の体積Vは、長さLと断面積Aに対し、V=A×Lの関係がある。このため、式(2)は、以下のように変形できる。
A=(ρ×L)/Z
そして、
V={(ρ×L)/Z}×L
=ρ×(L2×Z) ・・・(3)

という関係が成立する。これにより伝導体の体積は伝導体の長さLの2乗に比例し、インピーダンスZに反比例する。側頭筋などの筋肉組織を把握するには、測定部位14に含まれる筋肉や脂肪、その他水分などの組織に対する円柱形モデルを生成し、式(3)を利用して、基準生体インピーダンスとの比率を算出してもよい。
【0026】
対比(S107):測定部10は、たとえば記憶部などに格納された対比情報として、基準生体インピーダンスを読み出し、算出した生体インピーダンスと対比する。基準生体インピーダンスは、たとえば評価情報データベース16(図3)に格納されており、年齢や性別、その他の情報をパラメータとして設定された比較情報の一例である。基準生体インピーダンスは、たとえば一般的な健康指標に基づいて設定された情報のほか、基準モデルとなる人の生体インピーダンスとそのときの栄養状態情報、または同一の被測定者12の過去の栄養状態を含む健康状態情報およびそのときに算出した生体インピーダンスなどが用いられる。
評価情報の生成(S108):測定部10は、算出した生体インピーダンスと基準生体インピーダンスとの対比結果に基づいて、評価情報データベース16(図3)の評価結果を読み出す。そして測定部10は、読み出した評価結果を利用して評価情報を生成する。この評価情報には、算出された生体インピーダンスの値や評価結果とともに、栄養状態や健康に対するアドバイス情報などを含んでもよい。
評価情報の提示(S109):測定装置2は、たとえば図示しないモニタや被測定者12などが所持する端末装置の表示部に対して評価画面を送信し、表示させる。
【0027】
<評価情報データベース16について>
図3は、評価情報データベースの構成例を示している。
この評価情報データベース16は、たとえば算出した生体インピーダンスに対する比較情報およびその評価情報を格納するデータベースの一例であり、適用条件ごとに複数の評価情報ファイル18A、18B、・・・18Nを備える。測定部10は、評価情報データベース16に格納される評価結果を利用して、生体インピーダンスとの対比や評価情報を生成する。
評価情報ファイル18A、18B、・・・18Nには、それぞれ適用条件20、基準生体インピーダンス部22、評価結果部24が含まれる。
適用条件20は、たとえば被測定者12に対し、いずれの評価情報ファイル18A、18B、・・・18Nを選択して適用するかの条件情報が格納されている。適用条件は、たとえば各ファイルに1つが設定されてもよく、または複数の条件が組み合わされてよい。この適用条件は、たとえば専用条件として、被測定者12の名前やID(IDentification)などが設定されてもよく、または年齢や性別、身長や体重、体格、過去の健康状態などの情報が設定されてもよい。
【0028】
基準生体インピーダンス部22は、算出した生体インピーダンスに対する対比情報の一例であり、たとえば栄養状態などから把握できる健康状態について、所定の基準による分類情報が格納される。この分類情報には、たとえば健康と判断できる栄養状態のときの生体インピーダンスの範囲情報、少し栄養状態が悪いと判断されるときの生体インピーダンスの範囲情報、体調の変化の可能性があると判断できるときの生体インピーダンスの範囲情報などが格納されてよい。
評価結果部24は、基準生体インピーダンス部22の範囲情報に対して栄養状態などの評価情報が格納される。この評価情報には、栄養状態を示す数値が格納されてもよく、または栄養状態が良好であることを表す情報、栄養状態が悪化傾向であることの情報、通院を促す情報などが格納されてもよい。
【0029】
<第1の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が期待できる。
(1) 被測定者の頭部の設定位置に装着した電極部から流した電気信号により、生体インピーダンスを割り出すことで、栄養状態などに基づく被測定者の評価情報を容易に生成することができる。
(2) 容易に多数の計測データを収集できるので、被測定者の栄養状態を管理し易くなる。
(3) 生体インピーダンスの値に関連付けた評価結果を含む評価情報データベース16を利用して、生体インピーダンスの値を評価することで、測位処理の迅速化が図れるとともに、評価情報の生成処理の負荷を軽減できる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
図4は、第2の実施形態に係る測定システムの構成例や電極部の装着状態の一例を示している。図4に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
この測定システム30は、たとえば図4Aに示すように、被測定者12に対して電気信号を印加し、電圧値を計測して生体インピーダンスを割り出すとともに、その生体インピーダンスに基づいて評価情報を生成する測定装置32と、この測定装置32と接続する端末装置40を備える。
測定装置32には、たとえば被測定者12の設定位置に装着される装着部34、36、測定処理を実行するコントローラ38を備える。
装着部34は、本開示の第1の保持手段の一例であって、内部に配置した電極部品の周囲を覆うとともに電気信号を発振する先端部分を外部に配置させるように保持する筐体を備える。この装着部34は、たとえば図4のBに示すように、所謂イヤホン形に形成されており、被測定者12の耳44の穴に対して挿入もしくは穴の入口に向けて先端部分を配置される。これにより装着部34は、設定位置である耳44に対して装着されることで、電気信号を耳穴から測定部位14に対して印加することができる。
装着部36は、本開示の第2の保持手段の一例であって、たとえば少なくとも被測定者12に接触する部分が平面またはこれに近い形状に形成された筐体であり、その平面に電極部品を貼付けて保持し、または平面部から電極部品の一部を露出させる筐体を備える。この装着部36は、たとえば図4のBに示すように、平面の一部または全部が吸着部材で構成されるほか、ゲル状の接着材などが塗布されており、被測定者12の頭部42の前面部である「額」部分に装着される。装着部36の配置位置は、たとえば装着部34が配置される耳44に対し、頭部42の側面にある側頭筋を含む測定部位14が直線上に介在する位置が望ましい。このように配置されることで、装着部36は、装着部34に保持された電極部4から印加される電気信号を受けることができ、測定装置であるコントローラ38と測定部位14の生体組織が電気回路となる。
【0031】
コントローラ38は、測定装置32の本体機能部の一例であり、たとえば単一の筐体で構成されている。このコントローラ38には、たとえば少なくとも電気信号を生成する信号生成部8や電極部4、6間の電圧値の測定や電流値および電圧値などを利用した生体インピーダンスの割り出し処理、および生体インピーダンスに基付いて評価情報を生成する測定部10を備える。
端末装置40は、コントローラ38との間で通信可能であって、被測定者12の情報を入力する手段であるとともに、測定処理において生成された評価情報などをコントローラ38から受信して表示する手段の一例である。端末装置40は、たとえばこの測定処理に利用する専用装置であってもよく、または携帯電話機やモバイルPC(Personal Computer)などであってもよい。端末装置40とコントローラ38とは、たとえば有線接続または無線通信接続により接続されており、データの送受信が可能な状態となっている。
【0032】
なお、装着部36は、頭部42の「額」に装着される場合を示したがこれに限られず、装着部34が設置された頭部42の側面に対して反対側の側面の一部に吸着させてもよい。また、装着部36は、電気信号を受信する電極部6を保持する平面部を備えるものに限定されない。装着部36は、たとえば電気信号印加側の装着部34と同様に耳穴に挿入または耳穴に先端部が配置されるイヤホン形に形成されてもよい。
【0033】
<測定装置の構成例について>
図5は、測定装置の機能構成例を示している。図5に示す構成は一例である。
コントローラ38は、たとえば電流印加部50、給電部52、電圧測定部54、制御部56を備える。
電流印加部50は、設定電流値および設定周波数の電気信号を生成し、電極部4側から印加させる回路構成であって、信号生成部8の一例である。電流印加部50は、たとえば装着部34内に設置された電流印加電極60-1と装着部36内に設置された電流印加電極60-2と接続されている。これにより装着部34、36が被測定者12の所定位置に装着されることで、その測定部位14を抵抗とする電気回路が形成される。
給電部52は、たとえば電流印加部50と接続されており、電池などの蓄電手段、または外部のコンセントなどを介して交流の商用電源を取込んで電流印加部50に給電する手段の一例である。給電部52には、たとえば蓄電手段から供給される直流電流を交流電流に変換するインバーター回路などを含んでもよい。
電圧測定部54は、電極部4、6間の電位差を測定する回路であって、測定部10の一例である。電圧測定部54は、たとえば装着部34内に設置された電圧測定用電極62-1と装着部36内に設置された電圧測定用電極62-2と接続されている。
制御部56は、測定装置32の運転動作を制御する手段の一例であり、生体インピーダンス演算部58を備える。制御部56は、電流印加部50および電圧測定部54と接続されており、測定処理の実行時に電気信号生成指示や印加指示、または電圧測定指示を出力する。また制御部56は、電気信号の設定電流値や周波数情報、被測定者の情報、測定した電圧値などの情報を読み込み、生体インピーダンス演算部58により生体インピーダンスを割り出す。さらに制御部56は、割り出した生体インピーダンスを利用して、評価情報を生成する。生体インピーダンス演算部58は、たとえば測定処理プログラムを制御部56で実行することで形成される機能部の一例である。
【0034】
<制御部56について>
図6は制御部の構成例を示している。
コントローラ38はコンピュータで構成されている。このコントローラ38の制御部56には、たとえばプロセッサ64、記憶部66、情報入力部68、通信部70、入出力部(I/O)72を備える。
プロセッサ64は、記憶部66にあるOS(Operating System)や測定処理プログラムを実行して測定処理を実行し、生体インピーダンス演算部58などの機能を構成する。
記憶部66は、プログラムの演算領域であるRAM(Random-Access Memory)84やプログラムなどが格納されるデータ領域88などで構成される。このデータ領域88は、たとえばHDD(Hard Disk Drive)のほか、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)などの半導体メモリなどで構成された記憶媒体の一例である。データ格納領域には、たとえばOSや測定処理プログラムなどの動作制御プログラムが格納されるほか、測定処理に利用するデータとして、ユーザデータベース90(図7)や評価情報データベース16、測定情報データベース92(図8)などのデータベースが格納される。
なお、データ領域88は、たとえば制御部56内に搭載される記憶装置に限られず、外部データベースからプログラムをダウンロードして利用してもよく、またはUSB(Universal Serial Bus)規格の挿抜可能なメモリなどの記憶媒体で構成されてもよい。
【0035】
情報入力部68は、たとえば図示しない表示部と一体化したタッチパネルやキーボード、マウスなどの操作手段を利用した入力手段の一例であって、ユーザデータや測定処理の設定情報などの入力に用いられる。
通信部70は、たとえばWi-Fiなどの無線ネットワークに接続したり、赤外線通信などにより、端末装置40や外部データベースなどに接続する機能部の一例である。
入出力部(I/O)72は、制御部56が電流印加部50や電圧測定部54との間でデータの送受信を可能にするインターフェースの一例である。また、I/O72は、たとえば測定処理の制御に利用するタイマー80や端末装置40やコントローラ38に搭載したモニタなどの情報提示部82と接続されており、計測処理の実行時間情報の受信や評価情報を情報提示部に通知するのに用いられる。
【0036】
<ユーザデータベース90について>
図7は、ユーザデータベースの構成例を示している。
このユーザデータベース90は、被測定者12に関する情報を含むパーソナルデータベースの一例であり、ユーザごとの複数のデータファイル90-1、90-2、・・・90-Nで構成されている。
ユーザデータベース90には、たとえば図7に示すように、氏名部93、生年月日部94、性別部95、計測日部96、年齢部97、身長部98、体重部99、その他100、評価結果部101などで構成される。
氏名部93、生年月日部94、性別部95には、被測定者12を識別するための氏名やID、生年月日、性別などの情報が格納される。
計測日部96は、測定処理を実行する日や時間情報が格納される。計測日部96には、たとえばタイマー80からの情報が自動で入力されればよい。
年齢部97は、測定処理の実行時の年齢情報が格納される。この年齢情報は、たとえば算出した生体インピーダンスと対比に利用する基準生体インピーダンスの適用条件として利用される。
身長部98および体重部99は、たとえば予め設定された情報を読み込んでもよく、または測定処理を行うときにユーザが計測した情報が入力されてもよい。また身長部98、体重部99には、たとえば外部の体重計や身長計などの測定装置や外部データベースとコントローラ38とが有線接続または無線通信して受信したデータが格納されてもよい。これらの身長情報や体重情報は、たとえば基準生体インピーダンスの適用条件として設定されてもよく、または側頭筋などの筋肉量を詳細に分析して割り出す場合の生体インピーダンスの算出処理において、電極部4、6間の距離を割り出すのに利用してもよい。
その他100には、たとえば被測定者12の過去の病歴や治療歴、現在の健康状態などの情報が格納される。これらの情報は、たとえば基準生体インピーダンスの適用判断において、重み付けとして利用してもよい。この重み付けは、たとえば同じ年齢や性別、身長や体重であっても、被測定者ごとに過去の病歴やその他の個性などにより、同一の基準生体インピーダンスを適用できない場合などの調整基準として用いればよい。
評価結果部101は、評価情報データベース16を利用して得られた評価情報が格納される。
【0037】
<測定情報データベース92について>
図8は、測定情報データベースの構成例を示している。
この測定情報データベース92は、測定処理を実行した結果などが格納される。
測定情報データベース92には、たとえば図8に示すように、氏名部111、計測日時部112、電流値部113、計測電圧値部114、生体インピーダンス部115、測定装置情報部116、評価情報部117などが含まれる。
氏名部111は、被測定者12を特定する氏名情報が格納される。また氏名部111には、ID情報やその他の情報であってもよい。この氏名部111は、たとえば測定処理において読み出されたユーザデータベース90の氏名部93の情報とリンクしてもよい。
計測日時部112は、計測処理を実行した日、時間情報が格納される。この計測日時部112には、たとえば制御部56から電流印加部50などに対して測定指示や設定情報などを出力したタイミングで、タイマー80から取得した情報が格納されればよい。計測日時部112に格納された情報は、たとえばユーザデータベース90の計測日部96にリンクさせてよい。
電流値部113は、たとえば測定処理プログラムにある設定電流値情報や、電流印加部50によって生成された電気信号の電流値を計測して入力してもよい。
計測電圧値部114は、電圧測定部54によって計測された電圧値情報が格納されればよい。
生体インピーダンス部115は、算出された生体インピーダンスの値が格納されればよい。
測定装置情報部116は、たとえば測定処理に利用した電極部4、6に関する情報などが格納される。この情報には、たとえば被測定者12に対する装着部34、36の設置位置などであり、イヤホン形と「額」に貼付ける所謂パッチ形の組み合せ、イヤホン形同士の組み合せなどの情報が格納される。コントローラ38は、たとえば装着部34、36の設置位置の違いにより、電気信号を通過させる測定部位14の大きさや組織の状態が異なることから、装着部34、36の設置状態に応じて生体インピーダンスの算出処理や基準生体インピーダンスの選択基準を異ならせばよい。
評価情報部117は、割り出した生体インピーダンスと基準生体インピーダンスとの対比により抽出した評価情報が格納される。
【0038】
<評価情報について>
図9は、評価結果画面の一例を示す図である。
制御部56は、たとえば記憶部にある評価情報データベース16を利用して、生体インピーダンス演算部58が割り出した生体インピーダンスに対する評価結果を抽出する。そして制御部56は、たとえば図9に示すように、評価結果を利用して生成した評価情報として、評価画面120を生成する。この評価画面120には、たとえば被測定者12を示す特定情報122や測定日時情報124、評価結果126、評価結果履歴情報127、アドバイス情報128などが含まれる。
評価結果126には、たとえば今回の評価結果とともに、前回の評価結果や過去の平均の評価結果などの比較情報が表示されてもよい。この評価結果は、たとえば生体インピーダンスの値や評価情報データベース16に登録されている情報、または被測定者12に対して作成される情報などであって、栄養状態を表す指標や身体状態を推定する情報などが含まれる。
評価結果履歴情報127には、たとえば過去の数回分の生体インピーダンスの値や評価情報などが表示される。
アドバイス情報128には、たとえば評価結果に応じて設定される情報であって、現状を維持する旨のアドバイスや病院での検査を勧めるアドバイスなどの情報などが表示される。
【0039】
そのほか、制御部56は、測定情報データベース92に格納された生体インピーダンスの値の推移状態を監視して、アドバイス情報128を生成してもよい。この推移状態の監視処理では、たとえば図10に示すように、横軸に測定回数nをとり、縦軸に生体インピーダンスの値を設定したグラフにおいて、生体インピーダンス値の変化傾向に基づいて栄養状態の変化を監視してもよい。生体組織において、脂肪組織は水分含有率が低いため電気伝導性が低く、脂肪以外の組織は電解質や水分含有率が高いために電気伝導性が高くなる。これにより、同一の被測定者12の測定部位14では、筋肉組織の断面が大きければ電気抵抗であるインピーダンスが低くなり、筋肉組織の断面が小さくなる、または脂肪組織が大きくなればインピーダンスが高くなると想定できる。これにより制御部56は、たとえば測定回数X1における生体インピーダンスの値がY1であるのに対し、それ移行に計測した生体インピーダンスがY2まで増加している場合、筋肉組織の減少などに基づいて栄養状態が悪化していると判断してもよい。また、制御部56は、たとえば生体インピーダンスの値に閾値Pを設定し、その閾値Pを超えたときに警告情報を表示してもよい。
【0040】
<測定処理について>
図11は、測定装置の動作処理の一例を示している。図11に示す処理内容、処理工程などは一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。
測定処理では、たとえば図11に示すように、初期設定処理(S201)、ユーザデータの設定処理(S202)、装着部34、36の装着確認処理(S203)、電気信号の生成処理(S204)、電気信号の印加処理(S205)、電圧検出処理(S206)、生体インピーダンスの算出処理(S207)、測定情報の格納処理(S208)、評価情報の読み出し処理(S209)、生体インピーダンスの変化傾向の確認処理(S210)、評価情報の表示処理(S211)が含まれる。
【0041】
初期設定処理(S201):制御部56は、測定装置32に対する電源投入や起動操作を契機に、OSや測定処理プログラムなどを読み込むほか、電圧測定部54や電流印加部50に対するイニシャライズ処理などを含む初期設定処理を行う。
ユーザデータの設定処理(S202):制御部56は、被測定者12が指定されると、ユーザデータベース90にアクセスし、被測定者12の情報を読み込む。
装着部34、36の装着確認処理(S203):制御部56は、装着部34、36が被測定者の耳44などの設定位置に装着されたことの確認処理を行う。この確認処理では、たとえばS103の電極部4、6の確認処理と同様の処理を行えばよい。
電気信号の生成処理(S204):コントローラ38の電流印加部50は、たとえば制御部56からの指示情報を受けると、給電部52から給電を開始させ、設定電流値および設定周波数に調整した電気信号を生成する。
電気信号の印加処理(S205):コントローラ38では、電気信号が生成されると、装着部34の電流印加電極60-1と装着部36の電流印加電極60-2の間に電気信号を印加する。
【0042】
電圧検出処理(S206):電気信号の印加が開始されると、電圧測定部54は、たとえば制御部56からの指示情報の通知を契機に電圧測定用電極62-1、62-2間の電位差を計測する。
生体インピーダンスの算出処理(S207):制御部56は、生体インピーダンス演算部58において、設定電流値や周波数、計測した電圧値を利用した算出処理により、生体インピーダンスを割り出す。
測定情報の格納処理(S208):また制御部56は、電流印加部50や電圧測定部54から設定情報や検出情報を取得して、測定情報データベース92に取得した情報を格納する。
評価情報の読み出し処理(S209):制御部56は、評価情報データベース16を読み出し、割り出した生体インピーダンスと基準生体インピーダンスの対比処理を行うとともに、その生体インピーダンスに関連付けられた評価結果を抽出する。
生体インピーダンスの変化傾向の確認処理(S210):制御部56は、たとえばユーザデータベース90や測定情報データベース92を読み出し、被測定者12の過去の生体インピーダンスや評価結果を対比し、その変化傾向を確認する。
評価情報の表示処理(S211):制御部56は、抽出した評価結果や過去の生体インピーダンスの値やその変化傾向の情報やその他の情報などを組み合せて、評価画面120を生成し、端末装置40の表示部などに表示させる。
【0043】
〔第2の実施形態の効果〕
斯かる構成によれば、以下のような効果が期待できる。
(1) 第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(2) 評価結果や評価結果に基づくアドバイス情報を評価画面120に表示させることで、被測定者12が容易に身体、特に咀嚼能力の状態や栄養摂取状態を容易に把握できる。
(3) 過去の測定結果を評価画面120に表示させることで、身体状態や栄養状態に変化が生じていることを直感的に把握することができる。
(4) 複数の生体インピーダンスの状態を監視し、その変化傾向に基づいて栄養状態などの身体の状態のアドバイスすることで、体調変化を早期に発見して対応を図ることが期待できる。
(5) イヤホン形の装着部を耳穴に挿入、または耳に係合させることで、電流印加電極60-1、60-2および電圧測定用電極62-1、62-2の設置位置が略同一に維持することができる。
【0044】
〔第3の実施形態〕
図12は、第3の実施形態に係る測定システムの構成例を示している。図12に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。また、図12において、図1図5などと同一部分には同一符号を付している。
このコントローラ38は、たとえば図12に示すように、被測定者12の外観画像を取込む画像取得部130を備える。この画像取得部130は、たとえば端末装置40との間でWi-Fiや赤外線通信などの無線通信、またはUSB規格などのケーブルで接続されており、端末装置40で撮影した画像情報を読み込む。
端末装置40は、たとえば撮像部132を備えており、撮影された画像が記憶部134に格納される。そして端末装置40では、たとえばコントローラ38との接続や制御部56からの画像要求を受けると、制御部136が記憶部134から画像を読み出してコントローラ38側に送信する。
また、コントローラ38の制御部56には、取得した画像情報と、基準画像とを比較する画像比較部138が形成される。
このような構成により、この実施形態に係る測定システム30では、測定部位の生体インピーダンスとともに、被測定者12の測定部位14周辺の外観状態からも栄養状態の変化の推定処理を行う。
【0045】
被測定者12は、たとえば自ら、もしくは測定介助者によって端末装置40のカメラアプリや測定処理アプリを起動すると、図13Aに示すように、測定部位14にあたる「こめかみ」や「額」を含む頭部の外観画像を撮影する。
端末装置40は、たとえば図13Bに示すように、測定処理アプリを実行すると、撮影した被測定者の頭部や顔の輪郭情報を読み取るとともに、過去の同一の被測定者12の輪郭情報などで形成された基準ラインMを表示させる。端末装置40の制御部136は、たとえば測定部位14にあたる「こめかみ」について基準ラインMと撮影した輪郭情報とを対比して、輪郭の変形量αを抽出する。測定部位14の一部である側頭筋は咀嚼の強さや回数、頻度などの動作による影響、または栄養状態や年齢などによる筋肉の変化の影響を強く受ける。これにより顔の輪郭のうち特に「こめかみ」部分は、側頭筋の増減に応じて突出または引込みの変化が生じる。従って、このような被測定者12の輪郭の変化情報からも栄養状態を推測することが可能となる。
なお、人の顔は、たとえば撮影時間帯の違いや季節、気候などの影響によりむくみが生じたり、逆に締まったりする場合がある。また、撮影時の倍率の変動や撮影基準位置のずれなどが生じるおそれがある。そこで、制御部136は、たとえば撮影時の顔の基準位置を表示したり、撮影画像の一部を基準として、基準ラインMを表示させるようにしてもよい。
【0046】
<評価情報について>
図14は評価情報データベースの構成例を示している。
この評価情報データベース140は、たとえば図14Aに示すように、適用条件ごとに複数の評価情報ファイル142A、142B、・・・142Nを備える。評価情報ファイル142A、142B、・・・142Nには、たとえば基準生体インピーダンス部22と画像情報から割り出した輪郭の外形変化量部144とを関連付けておき、それらの情報に基づいて評価情報部146から評価結果が抽出可能となっている。
また外形変化量データベース150は、たとえば図14Bに示すように、輪郭の変形量αが格納される外形変化量部152とアドバイス情報部154で構成されている。すなわち、この外形変化量データベース150は、輪郭の変形量αのみを利用した評価結果を抽出するとともに、第1および第2の実施形態で述べたように、評価情報データベース16を利用して生体インピーダンスに基づく評価結果を組み合せて、評価情報を生成する。
測定処理では、たとえばこれらの評価情報データベース140、外形変化量データベース150のいずれか、もしくは両方を利用して、測定した生体インピーダンスと輪郭の変形量αに基づく評価結果を生成すればよい。
【0047】
<測定処理について>
図15は、測定装置の動作処理の一例を示している。図15に示す処理内容、処理工程などは一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。
測定処理では、たとえば図15に示すように、コントローラ38および端末装置40の起動処理(S301)、端末装置40に対する画像要求処理(S302)、画像取得処理(S303)、変形量αの割り出し処理(S304)、生体インピーダンスの算出処理(S305)、評価情報データベース140、または外形変化量データベース150を利用して評価情報の生成処理(S306)、評価情報を端末装置40への通知処理(S307)が含まれる。
【0048】
コントローラ38および端末装置40の起動処理(S301):コントローラ38は、制御部56がOSや測定処理プログラムを起動させてイニシャライズ処理を行う。端末装置40は、たとえばコントローラ38の起動に応じて、撮像部132の起動や測定処理アプリなどの読み込みが開始される。
端末装置40に対する画像要求処理(S302):制御部56は、端末装置40に対して画像要求指示を出力する。これに対し端末装置40は、たとえば表示部などに被測定者12の輪郭画像の撮影を促すガイド画面を表示してもよい。
画像取得処理(S303):端末装置40は、撮像部132が撮影すると、その画像の確認処理やコントローラ38に対して送信するためのガイド情報を表示する。そして、画像取得部130は、端末装置40から画像を取得する。
変形量αの割り出し処理(S304):コントローラ38では、制御部56の画像比較部138において、画像の基準ラインMと輪郭との変形量αを抽出する。抽出した変形量αは、たとえば測定情報データベース92に格納される。
【0049】
生体インピーダンスの算出処理(S305):コントローラ38では、設定電流値や周波数の電気信号を生成して、測定部位14に印加するとともに、装着部34、36間の電位差を測定して生体インピーダンスを割り出す。この生体インピーダンスの算出処理については、第1および第2の実施形態に示す構成および処理と同様である。
評価情報データベース140、または外形変化量データベース150を利用して評価情報の生成処理(S306):コントローラ38の制御部56は、たとえば評価情報データベース140、または評価情報データベース16と外形変化量データベース150の組み合せのいずれかを選択して評価処理を行う。斯かる選択処理は、たとえば測定処理の開始時に被測定者12などが設定すればよい。この評価処理では、たとえば生体インピーダンスの値と基準生体インピーダンスの値との対比とともに、変形量αと外形変化量との対比を行い、それぞれの評価結果を抽出する。そしてこの評価結果に基づいて評価画面120を生成する。
評価情報を端末装置に通知処理(S307):制御部56は、生成した評価画面120を端末装置40に送信して表示させる。
【0050】
〔第3の実施形態の効果〕
斯かる構成によれば、以下のような効果が期待できる。
(1) 上記実施形態と同様の効果が得られる。
(2) 被測定者12の輪郭の変形量αを組み合せることで、側頭筋を含む測定部位14の状態および咀嚼動作に伴う栄養状態の把握精度が高められる。
(3) 輪郭の変形量αの度合いにより、被測定者12の栄養状態などの変遷を把握できる。

〔変形例〕
【0051】
以上説明した実施形態について、変形例を以下に列挙する。
【0052】
(1) 上記実施形態では、コントローラ38の制御部56から信号生成部8を構成する電流印加部50および給電部52や電圧測定部54に対して制御指示を出力する場合を示したがこれに限らない。この測定システム30では、たとえば端末装置40が測定指示や生体インピーダンスの演算処理を行うアプリケーションプログラムを実行し、コントローラ38に対して設定情報や測定結果などのデータ送受信に関する処理を実行してもよい。
【0053】
(2) 上記実施形態では、装着部34、36は被測定者12の耳穴内に一部が挿入され、または耳穴に配置される場合を示したがこれに限らない。装着部34、36は、たとえば耳輪や耳の裏部に対して係合する係合フックを備えており、これにより電極部を耳の所定位置に配置してもよい。
【0054】
(3) 上記実施形態では、割り出した生体インピーダンスを利用して被測定者12の栄養状態などによる身体の評価情報を生成する場合を示したがこれに限らない。その測定装置2、32または測定システム30では、たとえば加重負荷をかけて腕や脚などの身体部分の筋力を増強させるトレーニングの成果を推測する手段として用いられてもよい。
すなわち、ダンベル運動やその他のウェイトトレーニングでは、錘を持上げる際に歯を食いしばる傾向にある。このように歯を食いしばる動作が継続することで側頭筋が増強されて断面積が大きくなる傾向にある。これにより、たとえば生体インピーダンスの値が低下することで側頭筋が増強されたことを示す指標としてもよい。
【0055】
(4) 上記実施形態では、被測定者12の輪郭の変形量αに基づく評価結果と算出した生体インピーダンスに基づく評価結果を組み合せて評価画面120を生成する場合を示したがこれに限らない。測定処理では、たとえば変形量αに基づいて抽出した評価結果が所定の閾値を超えている場合には、生体インピーダンスによる測定に代えて、被測定者12に対して栄養状態に基づく異常状態や異常傾向を示すアドバイス情報を端末装置40に通知してもよい。
【0056】
(5) 上記実施形態では、被測定者12の輪郭と基準ラインMとの距離を変形量αに基づいて評価する場合を示したが、これに限らない。変形量αは、撮影した画像情報にある被測定者12の輪郭と基準ラインMとの間の体積を利用してもよい。また変形量αは、たとえば画像情報から解析した被測定者の血色(顔色)やむくみ状態などを情報であってもよい。
【0057】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、被測定者12の耳や「額」に装着した電極部4、6から電気信号を印加し、側頭筋を含む測定部位14の生体インピーダンスを割り出すことで、簡易にかつ迅速に、咀嚼に関連した栄養状態の評価を行うことができ、有用である。
【符号の説明】
【0059】
2、32 測定装置
4、6 電極部
8 信号生成部
10 測定部
12 被測定者
14 測定部位
16、140 評価情報データベース
18A、18B、・・・18N、142A、142B、・・・142N 評価情報ファイル
20 適用条件
22 基準生体インピーダンス部
24 評価結果部
30 測定システム
34、36 装着部
38 コントローラ
40 端末装置
42 頭部
44 耳
50 電流印加部
52 給電部
54 電圧測定部
56 制御部
58 生体インピーダンス演算部
60-1、60-2 電流印加電極
62-1、62-2 電圧測定用電極
64 プロセッサ
66 記憶部
68 情報入力部
70 通信部
72 入出力部(I/O)
80 タイマー
82 情報提示部
84 RAM
88 データ領域
90 ユーザデータベース
90-1、90-2、・・・90-N データファイル
92 測定情報データベース
93、111 氏名部
94 生年月日部
95 性別部
96 計測日部
97 年齢部
98 身長部
99 体重部
100 その他
101 評価結果部
112 計測日時部
113 電流値部
114 計測電圧値部
115 生体インピーダンス部
116 測定装置情報部
117 評価情報部
120 評価画面
122 特定情報
124 測定日時情報
126 評価結果
127 評価結果履歴情報
128 アドバイス情報
130 画像取得部
132 撮像部
134 記憶部
136 制御部
138 画像比較部
144 外形変化量部
146 評価情報部
150 外形変化量データベース
152 外形変化量部
154 アドバイス情報部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15