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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20220824BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61K8/98
A61Q5/00
A61K8/891
A61K8/31
A61K8/81
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018086699
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019189580
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】下田 康平
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-058853(JP,A)
【文献】特開2013-075840(JP,A)
【文献】特開2010-070534(JP,A)
【文献】特開2000-191455(JP,A)
【文献】特表2002-512971(JP,A)
【文献】米国特許第06447788(US,B1)
【文献】特表2001-513781(JP,A)
【文献】特開2001-131021(JP,A)
【文献】特開2017-137249(JP,A)
【文献】Combing Cream Extensions(ID: 10154429),Mintel GNPD [online],2022年05月08日,[検索日;2022年5月9日], https://www.gnpd.com
【文献】Fair Trade Honey Shampoo(ID: 1922861),Mintel GNPD [online],2012年11月,[検索日;2022年5月9日], https://www.gnpd.com
【文献】Honey Mild Hair D-ToxShampoo (ID: 1565177),Mintel GNPD [online],2011年06月,[検索日;2022年5月9日], https://www.gnpd.com
【文献】ミューヴル アクアミルク M2,Cosmetic-Info.jp[online],2015年03月13日, [検索日2022.5.9],URL https://www.cosmetic-info.jp/
【文献】サロンプレミアム トリートメント エクストラスパ,Cosmetic-Info.jp[online],2015年05月20日,[検索日2022.5.20], URL https://www.cosmetic-info.jp/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハチミツ(A)を35~55質量%と、揮発性油(B)を1~50質量%と、乳化剤(D)を0.1~2質量%とを含
前記乳化剤(D)が、乳化増粘剤であり、
前記乳化増粘剤が、(ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマーである、毛髪化粧料。
【請求項2】
ハチミツ(A)を35~55質量%と、揮発性油(B)を1~30質量%と、シリコーンワックス(C)を0.5~30質量%と、乳化剤(D)を0.1~2質量%とを含む毛髪化粧料。
【請求項3】
前記シリコーンワックス(C)が、ビスポリエチレングリコールアルキルエーテルジメチルシラン、ステアリルジメチコン、アルキルメチコン、ビスステアロキシジメチルシラン、およびアルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサンから選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記乳化剤(D)が、乳化増粘剤である請求項2または3に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記乳化増粘剤が、カチオン性ポリマーである請求項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
前記揮発性油(B)がシクロメチコン、ジメチコン、イソドデカン、およびドデカンから選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々の安心安全志向の高まりから、安心安全なイメージのある天然原料を使った毛髪化粧料が高い支持を集めるようになっている。
天然原料の一つであるハチミツは、市場での人気が高く、毛髪にきれいな艶と毛流れなどの動きを出すことができるため、従来から毛髪化粧料の天然原料として利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カチオン性界面活性剤、25℃における粘度が10,000センチストークス以上であるシリコーンオイル、油分、ハチミツが配合された毛髪化粧料の発明が開示されている。そして、前記毛髪化粧料は、毛髪化粧料全体に対する、ハチミツの配合量が0.1~10重量%であり、ハチミツは、仕上がり後のしっとり感や毛髪のまとまり性を付与し、多すぎるとべたつきが生じる場合があるとしている。
【0004】
特許文献2には、スタイリング化粧料全体に占める割合で、ハチミツ:30質量%以下(0質量%を含まない)、および糖アルコール:30質量%以下(0質量%を含まない)を夫々含有し、ハチミツと糖アルコールの質量比が0.1:1~2:1であるスタイリング化粧料が開示されている。そして、前記スタイリング化粧料は、ハチミツが30質量%よりも多くなると、仕上がり感が重くなり、べたつきを感じるとし、ハチミツは保湿成分であるとともに、セット力を付与する成分としている。
【0005】
特許文献3には、カチオン化ハチミツ誘導体と、25℃において100000mm2/s以上の粘度を有するシリコーン化合物の1種または2種以上とを含有する毛髪化粧料が開示されている。そして、前記毛髪化粧料は、カチオン化ハチミツ誘導体が、毛髪化粧料全体に対し、0.001~10質量%配合されることで、使用性を損なわず十分なコンディショニング効果を与えるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-191455号公報
【文献】特開2013-075840号公報
【文献】特開2004-035520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の特許文献1~3の技術は、毛髪のきれいな艶と毛流れを充分に感じられるものでは無かった。また、ハチミツの効果を高めるためにその配合量を多くすると、べたつきが生じてしまい、一般消費者に受け入れられる品質ではなかった。
【0008】
このようなことから、本発明は、ハチミツを高配合することで毛髪のパサつきを抑え、きれいな艶とまとまりを出すことができ、かつ、ハチミツ特有のべたつきを抑えた毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪化粧料は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の[1]~[7]である。
[1]ハチミツ(A)を15~65質量%と、揮発性油(B)を1~50質量%とを含む、毛髪化粧料。
[2]ハチミツ(A)を15~65質量%と、揮発性油(B)を1~30質量%と、シリコーンワックス(C)を0.5~30質量%とを含む毛髪化粧料。
[3]前記シリコーンワックス(C)が、ビスポリエチレングリコールアルキルエーテルジメチルシラン、ステアリルジメチコン、アルキルメチコン、ビスステアロキシジメチルシラン、およびアルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサンから選択される少なくとも1種である、[2]に記載の毛髪化粧料。
[4]乳化剤(D)を0.1~2質量%含む、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[5]前記揮発性油(B)がシクロメチコン、ジメチコン、イソドデカン、およびドデカンから選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[6]前記乳化剤(D)が、乳化増粘剤である[4]に記載の毛髪化粧料。
[7]前記乳化増粘剤が、カチオン性ポリマーである[6]に記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハチミツを高配合することで毛髪のパサつきを抑え、きれいな艶とまとまりを出すことができ、かつ、ハチミツ特有のべたつきを抑えた毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の毛髪化粧料について具体的に説明する。
<毛髪化粧料>
本発明の毛髪化粧料は、指通りを重視する第一の態様、および、セット力を重視する第二の態様がある。
【0012】
本発明の毛髪化粧料における第一の態様は、ハチミツ(A)を15~65質量%と、揮発性油(B)を1~50質量%とを含む態様である。第一の態様によれば、毛髪のパサつきを抑え、きれいな艶とまとまりを出すことができ、ハチミツ特有のべたつきを抑えつつ、さらに、指通りのよい毛髪化粧料を提供することができる。
【0013】
本発明の毛髪化粧料における第二の態様は、ハチミツ(A)を15~65質量%と、揮発性油(B)を1~30質量%と、シリコーンワックス(C)を0.5~30質量%とを含む態様である。第二の態様によれば、毛髪のパサつきを抑え、きれいな艶とまとまりを出すことができ、ハチミツ特有のべたつきを抑えつつ、さらに、セット力のある毛髪化粧料を提供することができる。
なお、本発明における各成分の含有量は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の含有量を示している。
【0014】
<ハチミツ(A)>
本発明におけるハチミツ(A)とは、ミツバチが植物の花の蜜腺から蜜を吸い、それを唾液腺から出る酵素の作用で分解し、さらに濃縮したものを意味する。ハチミツの香り、色、成分は、蜂群、花により異なるが、通常は少なくとも糖類(ぶどう糖、果糖、ショ糖、オリゴ糖等)を含有し、そのほかに、水分、有機酸、芳香類、各種ミネラルなどを含む。
【0015】
ハチミツ(A)は、ハチミツの蜜源となった植物を参考に、適宜選択すればよい。ハチミツの蜜源となる植物として、具体的には、ナタネ、ソバ、レンゲ、シロツメクサ類、ウメ、ミカン、カキ、クリ、サクラ、ニセアカシア、トチノキ、マヌカなどが挙げられる。ハチミツの蜜源となる植物は、1種単独でも、2種以上組み合わさっていてもよい。
ハチミツ(A)として、市販されているものを用いることができ、具体的には、日本薬局方ハチミツ(小堺製薬株式会社製)などが挙げられる。
【0016】
<揮発性油(B)>
本発明の毛髪化粧料に用いる揮発性油(B)として、例えば、シクロメチコン、トリシロキサン、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンなどの揮発性シリコーン油;ドデカン、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン、ドデカン、イソヘキサデカンなどの炭化水素油;が挙げられる。具体的には、シクロメチコン、ジメチコン、イソドデカン、ドデカンが挙げられ、毛髪に艶を付与し、指通りに優れることからシクロメチコンが好ましい。また、ジメチコンとしては、粘度が0.5~2cSt(センチストークス)であることが好ましい。
本発明の毛髪化粧料に用いる揮発性油(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
<シリコーンワックス(C)>
本発明の毛髪化粧料に用いるシリコーンワックス(C)として、例えば、ビスポリエチレングリコールアルキルエーテルジメチルシラン、ステアリルジメチコン、アルキルメチコン、ビスステアロキシジメチルシラン、およびアルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサンが挙げられる。
ビスポリエチレングリコールアルキルエーテルジメチルシランとしては、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【0018】
【化1】
(式(I)中、lおよびmは、それぞれ独立に、10~25の整数を示す。)
【0019】
シリコーンワックス(C)として、具体的には、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン、アルキル(C26-28)ジメチコン、アルキル(C30-45)ジメチコン、アルキル(C30-45)ジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサンが挙げられる。
【0020】
シリコーンワックス(C)としては、ビスステアロキシジメチルシラン、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランが好ましく、洗い落ちに優れることから、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランがより好ましい。
【0021】
ビスステアロキシジメチルシランは、市販されているものを用いることができる。具体的には、「BELSIL W3230(旭化成ワッカーシリコーン社製)」などが挙げられる。
【0022】
ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランは、市販されているものを用いることができる。具体的には、「2501 Cosmetic Wax(東レ・ダウコーニング社製)」などが挙げられる。ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシランは、上記式(I)において、lおよびmがそれぞれ平均18である化合物である。
本発明の毛髪化粧料に用いるシリコーンワックス(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<乳化剤(D)>
本発明の毛髪化粧料は、乳化剤(D)を含むことが好ましい。
本発明の毛髪化粧料に用いる乳化剤(D)は、乳化増粘剤でも、乳化増粘剤以外の乳化剤でもよいが、乳化増粘剤を使用すると透明な剤型にでき、乳化安定性が高いため、乳化増粘剤が好ましい。
【0024】
本発明において、乳化増粘剤とは、油分を乳化することができ、かつ添加した対象に粘度を付与できる剤のことを指す。また、乳化増粘剤以外の乳化剤とは、油分を乳化することができ、かつ増粘作用を示さない剤のことを指す。
【0025】
前記乳化増粘剤としては、カチオン化タイプの乳化増粘剤、アニオン化タイプの乳化増粘剤などが挙げられる。
カチオン化タイプの乳化増粘剤として、具体的には、(ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマー(チノビスCD:BASF社製)、ポリクオタニウム37(サルケアSC96:BASF社製)が挙げられる。
【0026】
アニオン化タイプの乳化増粘剤として、具体的には、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー(アリストフレックスAVC:クラリアントジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0027】
前記乳化増粘剤としては、カチオン化タイプの乳化増粘剤が、毛髪のまとまりと柔らかさを付与できることから好ましく、(ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマーが、透明性が高く安定な剤型にできることから、より好ましい。
【0028】
前記乳化増粘剤以外の乳化剤としては、例えば、カチオン性、アニオン性、ノニオン性および両性界面活性剤が挙げられる。
カチオン性界面活性剤として、具体的には、アルキルアンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0029】
アニオン性界面活性剤として、具体的には、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)ラウリルエーテル硫酸塩、POEアルキル/アルキルアリルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、N-アシルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、POEアルキルエーテルリン酸およびその塩、ステアリン酸塩等が挙げられる。
【0030】
ノニオン性界面活性剤として、具体的には、POEアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド、POE硬化ヒマシ油、ピログルタミン酸イソステアリン酸POE硬化ヒマシ油、POEエチレンラノリン、POEコレステロール、POEフィトステロール、POEコレスタノール、POEフィトスタノール、ステアリン酸エステル、PEG-30水添ヒマシ油、セタノールのポリエチレングリコールエーテル、などが挙げられる。
【0031】
両性界面活性剤として、具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム等のイミダゾリン型、アミノ酸型等が挙げられる。
【0032】
前記乳化増粘剤以外の乳化剤としては、ノニオン性界面活性剤が皮膚への刺激が少ないことから好ましい。この中でも、HLB10~20程度のPOEアルキルエーテルが乳化しやすいことからより好ましく、セテス-15が最も好ましい。
本発明の毛髪化粧料に用いる乳化剤(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
<その他成分>
本発明の毛髪化粧料は、水を含むことが好ましく、水を5~84質量%含むことがより好ましく、10~70質量%含むことがさらに好ましい。
水として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、および色素等の添加剤を含有することができる。
【0034】
<第一の態様>
本発明の毛髪化粧料は、指通りを重視する第一の態様として、ハチミツ(A)を15~65質量%と、揮発性油(B)を1~50質量%とを含む。
第一の態様は、ハチミツ(A)を25~55質量%含むことが好ましく、35~45質量%含むことがより好ましい。また、第一の態様は、揮発性油(B)を10~30質量%含むことが好ましい。
【0035】
さらに、第一の態様は乳化剤(D)を0.1~2質量%含むことが好ましい。
また、第一の態様では、シリコーンワックス(C)を実質的に含まないことが指通りの観点から好ましい。実質的に含まないとは、シリコーンワックス(C)を含まないか、含む場合であっても少量であることを意味する。具体的には、第一の態様はシリコーンワックス(C)を0質量%以上0.5質量%未満含むことが好ましい。
【0036】
本発明の毛髪化粧料は、上記第一の態様として、ハチミツ(A)を上記の量含むことによって、毛髪に艶を与え、毛流れの動きを出すことができる。ハチミツ(A)が、前記下限量より少ないと、艶がなく、毛流れの動きを出すことができない。また、ハチミツ(A)が、前記上限量より多いと不自然な艶があり、べたつきが生じる。
【0037】
本発明の毛髪化粧料は、上記第一の態様として、揮発性油(B)を上記の量含むことによって、毛髪のべたつきを抑え、指通りがよく、柔らかさと艶を与えることができる。揮発性油(B)が、前記下限量より少ないとべたつきを抑えることができず、前記上限量より多いとセット力が弱く、まとまりも悪くなる。また、不自然な艶が生じる。
【0038】
<第二の態様>
本発明の毛髪化粧料は、セット力を重視する第二の態様として、ハチミツ(A)を15~65質量%と、揮発性油(B)を1~30質量%と、シリコーンワックス(C)を0.5~30質量%とを含む。
【0039】
第二の態様は、ハチミツ(A)を25~55質量%含むことが好ましく、35~45質量%含むことがより好ましい。また、第二の態様は、揮発性油(B)を5~15質量%含むことが好ましい。そして、第二の態様は、シリコーンワックス(C)を5~15質量%含むことが好ましい。
【0040】
さらに、第二の態様は、乳化剤(D)を0.1~2質量%含むことが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、上記第二の態様として、ハチミツ(A)を上記の量含むことによって、毛髪に艶を与え、毛流れの動きを出すことができる。ハチミツ(A)が、前記下限量より少ないと、艶がなく、毛流れの動きを出すことができない。また、ハチミツ(A)が、前記上限量より多いと不自然な艶があり、べたつきが生じる。
【0041】
本発明の毛髪化粧料は、上記第二の態様として、揮発性油(B)を上記の量含むことによって、毛髪のべたつきを抑え、指通りがよく、柔らかさと艶を与えることができる。揮発性油(B)が、前記下限量より少ないとべたつきを抑えることができず、前記上限量より多いとセット力が弱く、まとまりも悪くなる。また、不自然な艶が生じる。
【0042】
本発明の毛髪化粧料は、上記第二の態様として、シリコーンワックス(C)を上記の量含むことによって、まとまりや艶を与え、べたつきを抑えることができる。シリコーンワックス(C)が、前記下限量より少ないとまとまりや艶を与えることができず、べたつきを抑えることができない。また、シリコーンワックス(C)が前記上限量より多いと、不自然な艶が生じ、セット力の持続性が低く、毛髪が硬い触感となる。
【0043】
<毛髪化粧料の製造等>
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、加熱条件下で行ってもよい。加熱条件下で製造する場合の温度としては、例えば75~85℃が挙げられる。
【0044】
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の配合量で混合することにより製造することが可能であり、製造直後に使用すること、一定期間経過後に使用することもできる。
本発明の毛髪化粧料の状態としては、例えば、ミルク状、クリーム状、ジェル状、ローション状、水相および油相の2液状などが挙げられ、具体的には、ジェル状が好ましい。なお、2液状である場合には、使用直前に混合したうえで使用することが好ましい。
【0045】
本発明の毛髪化粧料は、噴射剤とともに用いることによりスプレー用組成物として用いることもできる。
本発明の毛髪化粧料の外観としては、例えば、透明または不透明な外観が挙げられる。透明な外観は、整髪した際に、毛髪へ艶を与える効果が高いこと、また、消費者に対して、ハチミツを想起させる効果が期待できることから好ましい。
【0046】
本発明の毛髪化粧料の外観としては、例えば、ハチミツ(A)の由来成分、またはその他着色料などで色が付いていてもよい。
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に塗布して使用することができる。
【0047】
本発明の毛髪化粧料は、整髪料、トリートメントとして使用することができ、透明な外観であることが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、毛髪のパサつきを抑え、きれいな艶とまとまりを出すことができ、さらに、ハチミツ特有のべたつきを抑えつつ、毛流れなどの動きを簡単に作ることができる。
【実施例
【0048】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1~38、比較例1~7〕
表1~6に示す処方で各成分を混合することにより毛髪化粧料を製造し、試料として以下の方法で評価した。なお、表中の処方の数値は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。結果を表1~6に示す。
なお、表1~6に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
【0049】
<ハチミツ(A)>
ハチミツ:日本薬局方ハチミツ(小堺製薬株式会社製)
<揮発性油(B)>
シクロメチコン:KF-995(信越化学社製)
ジメチコン(2cst):BELSIL DM 2(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)
イソドデカン:Isododecane(カネダ株式会社製)
ドデカン:PARAFOL 12-97(綿半トレーディング株式会社製)
<シリコーンワックス(C)>
ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン:2501 Cosmetic Wax(東レ・ダウコーニング株式会社製)
ステアリルジメチコン:2503 Cosmetic Wax(東レ・ダウコーニング株式会社製)
アルキル(C26-28)ジメチコン:BELSIL CDM 3526 VP(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)
BELSIL W3230(旭化成ワッカーシリコーン社製)(製品全体を100質量%とした場合、ビスステアロキシジメチルシランを75質量%含有)
アルキル(C30-45)ジメチコン:SF1642(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
アルキル(C30-45)ジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサン:SW-8005 C30 RESIN WAX(東レ・ダウコーニング株式会社製)
<乳化剤(D)>
セテス-15:NIKKOL BC-15(日光ケミカルズ株式会社製)
チノビスCD(BASF社製)(製品全体を100質量%とした場合、ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマーを54質量%含有)
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー:アリストフレックスAVC(クラリアントジャパン株式会社製)
<その他の成分>
【0050】
〔官能評価〕
室温(25℃)の条件下で、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、試料2gを手に取った後、トップ40cm、ネープ25cmのPAMS社製人毛ウィッグUNの毛髪に万遍なく塗布した。その後、直ちに毛流れ(ヘアスタイル)を作った。そして、毛流れ(ヘアスタイル)について、(1)~(7)、および(8)~(9)に記載した評価項目と評価基準に従って官能評価を行った。各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
【0051】
(1)~(7)の官能評価は、◎、○、△、または×の4段階評価とした。(1)、(2)、(3)、(4)については、後述のように、同じ点数でも異なる評価[A]、[B]が存在する。[A]または[B]の、どちらの評価が多かったかを示すため、○[A]、○[B]、△[A]、△[B]、×[A]、×[B]と記した。すなわち、○[A]のように、[A]が付されているものは[B]よりも[A]と評価した専門パネラーが多いことを示している。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○、○[A]、または、○[B]:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△、△[A]、または、△[B]:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×、×[A]、または、×[B]:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0052】
(8)~(9)の官能評価は、◎◎、◎、○、△、または×の5段階評価とした。
◎◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が4.5点以上である。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上4.5点未満である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0053】
〔物性評価〕
後述する(10)~(11)の各項目に記載した評価項目および評価基準に従って物性評価を行った。
〔評価項目および評価基準〕
(1)艶
毛流れ(ヘアスタイル)の艶を目視で評価した。
4点:とても艶が出ている
3点[A]:艶が出ている
3点[B]:少しギラギラした不自然なツヤが出ているが気になる程度ではない
2点[A]:それほど艶が出ていない
2点[B]:ギラギラした不自然な艶が出ている
1点[A]:艶が出ていない
1点[B]:かなりギラギラした不自然な艶が出ている
(2)艶の持続力
毛流れ(ヘアスタイル)を作成してから6時間経過後の艶を目視で評価した。
4点:とても艶が出ている
3点[A]:艶が出ている
3点[B]:少しギラギラした不自然なツヤが出ているが気になる程度ではない
2点[A]:それほど艶が出ていない
2点[B]:ギラギラした不自然な艶が出ている
1点[A]:艶が出ていない
1点[B]:かなりギラギラした不自然な艶が出ている
(3)べたつき、パサつき
毛流れ(ヘアスタイル)に沿って手櫛を通し、べたつき、およびパサつきについて触感で評価した。
4点:しっとりしているが、べたつきは全くない
3点:少しべたつきがあるが、気にならない程度である
2点[A]:少しパサついている
2点[B]:少しべたついている
1点[A]:かなりパサついている
1点[B]:かなりべたついている
(4)まとまり
毛流れ(ヘアスタイル)が、どの程度まとまっているのかを目視で評価した。
4点:毛先までしっかりまとまっている
3点:毛先はややまとまっていないが、ヘアスタイル全体としてはまとまっている
2点[A]:あまりまとまっていない
2点[B]:少し不自然に束っぽくまとまっている
1点[A]:まったくまとまっていない
1点[B]:不自然に束っぽくまとまっている
(5)柔らかさ
毛流れ(ヘアスタイル)に沿って手櫛を通し、柔らかさを触感で評価した。
4点:髪に硬さがなく、非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:やや硬い
1点:とても硬い
(6)洗い落ちの良さ
毛流れ(ヘアスタイル)を水温38℃付近のお湯で1分間水洗した。洗い流した時の洗い落ちの良さを触感で評価した。
4点:洗い落ちが良い
3点:やや洗い落ちが悪いが、気にならない程度である
2点:洗い落ちが悪い
1点:かなり洗い落ちが悪い
(7)指通りの良さ
毛流れ(ヘアスタイル)に沿って手櫛を通し、指通りを触感で評価した。
4点:非常に指通りが良い
3点:指通りが良い
2点:少し指通りが悪い
1点:非常に指通りが悪い
(8)セット力
毛流れ(ヘアスタイル)の形成力を目視で評価した。
5点:しっかりとヘアスタイルが形成されている
4点:ヘアスタイルが形成されている
3点:部分的に崩れているところもあるが、全体としてはヘアスタイルが形成されている
2点:あまりヘアスタイルが形成されていない
1点:全くヘアスタイルが形成されていない
(9)セット力の持続力
毛流れ(ヘアスタイル)が、6時間経過後に、どの程度維持されているかを目視で評価した。
5点:形成されたヘアスタイルが完璧に維持されている
4点:形成されたヘアスタイルが維持されている
3点:部分的に崩れているところもあるが、全体としては形成されたヘアスタイルが維持されている
2点:形成されたヘアスタイルがあまり維持されていない
1点:形成されたヘアスタイルが全く維持されていない
(10)透明性
室温(25℃)における試料の外観を、目視で評価した。
◎:透明もしくは半透明である
×:白色クリームである
(11)安定性
試料を容量100mLのガラス容器に80g入れ、45℃の恒温槽に90日間保存した後、試料の状態を目視で評価した。
◎:滑らかな状態であり、分離をしていたり、粒が発生したりせず、安定な状態である
△:少し、ボソッとした状態であったり、分離をしていたり、粒が発生したりしてしまっている
×:かなり、ボソッとした状態であったり、分離をしていたり、粒が発生したりしてしまっている
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
実施例1~6、13~19、33~35で製造した毛髪化粧料は、(1)~(7)の評価項目において良好な結果となった。実施例33および34は、特に良好な結果となった。
実施例7~12、20~32、36~38で製造した毛髪化粧料は、(1)~(6)、(8)~(9)の評価項目において良好な結果となった。実施例36および37は、特に良好な結果となった。
【0061】
本発明の毛髪化粧料は、ハチミツを高配合することで毛髪のパサつきを抑え、きれいな艶とまとまりを出すことができ、さらに、ハチミツ特有のべたつきを抑えた毛髪化粧料であることがわかる。
【0062】
比較例1で製造した毛髪化粧料は、ハチミツ(A)の配合量が少ないため、充分な艶、艶の持続力が得られず、まとまりもよくなかった。
比較例2で製造した毛髪化粧料は、ハチミツ(A)の配合量が多いため、かなりギラギラした不自然な艶、べたつきがあり、指通りが悪く、不自然に束っぽくまとまっていた。
【0063】
比較例3で製造した毛髪化粧料は、ハチミツ(A)の配合量が少ないため、充分な艶、艶の持続力が得られず、まとまりがよくなかった。また、セット力の持続力も低かった。
比較例4で製造した毛髪化粧料は、ハチミツ(A)の配合量が多いため、かなりギラギラした不自然な艶、べたつきがあり、不自然に束っぽくまとまっていた。
【0064】
比較例5で製造した毛髪化粧料は、揮発性油(B)の配合量が少ないため、充分な艶、艶の持続力が得られず、べたつきもあった。また、指通りも悪かった。
比較例6で製造した毛髪化粧料は、揮発性油(B)の配合量が多いため、かなりギラギラした不自然な艶があり、まったくまとまりがなかった。
【0065】
比較例7で製造した毛髪化粧料は、揮発性油(B)の配合量が少ないため、シリコーンワックス(C)が配合されている場合でも、それほど艶が出ず、艶の持続力もあまりなく、かなりべたつきがあった。また、毛髪がとても硬い触感となった。