(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】冷凍庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20220824BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20220824BHJP
F25B 9/14 20060101ALI20220824BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F25D11/00 101Z
F25B9/00 H
F25B9/14 520F
F25B9/14 520Z
F25D23/02 305
(21)【出願番号】P 2020217096
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2021-01-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302045602
【氏名又は名称】株式会社レーベン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高部 篤
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕士
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】田村 佳孝
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304745(JP,A)
【文献】特開昭53-5657(JP,A)
【文献】特開昭58-221014(JP,A)
【文献】特開2002-216417(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187849(WO,A1)
【文献】米国特許第4873841(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106030223(CN,A)
【文献】特開昭58-87040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D11/00 - 29/00
F25B 9/00 - 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を上方に開口する冷凍室に収納して冷却する冷凍庫であって、
機械室に配置されるスターリング冷凍機と、
前記スターリング冷凍機により冷熱を供給される冷却器と、
前記冷凍室内に空気流を生じさせる送風ファンと、を備え、
前記冷却器の少なくとも一部は、前記冷凍室の上部と連通し且つ前記機械室と隣接する隣接室に、前記機械室から前記隣接室に進入する前記スターリング冷凍機のコールドヘッドと接触するように配置され、
前記隣接室に貫通孔を有する誘導板を備え、
前記送風ファンは前記隣接室の上部に配置され、
前記誘導板は、前記送風ファンの下方において前記冷却器を所定間隔を置いて覆うように配置されて前記隣接室において空気の流路を形成し、
前記送風ファンにより取り込まれる前記冷凍室の空気は、前記冷却器の冷却フィンを通過して冷却されてから、前記誘導板の下方から前記冷凍室に流出する
ことを特徴とする冷凍庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箱体に形成され、上面に取出口を有する冷凍庫がある。例えば、収納物が格納される冷却室を取り囲む壁面の外周に冷却パイプを巻き付けて構成される冷凍庫がある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記冷凍庫は、コンプレッサを用いた冷凍サイクルを採用するもので、内箱の側壁面の外周に蒸発器としての冷却パイプを巻き付け、外箱の外壁面の対向する2つの内壁面に凝縮器としての放熱パイプが配設されている。
【0005】
このような冷凍庫は、消費電力が大きく、ランニングコストが高い。また、このような冷凍庫は、運搬にも向いていない。また、冷却室内の室温を例えば-30℃~-20℃に保つことはできるものの、-30℃よりも低い極低温の室温を得ることは難しい。
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためのもので、冷凍室の室温を極低温にすることができ、運搬に便利な冷凍庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した少なくとも1つの課題を解決するために、本発明の一方面に係る冷凍庫は、対象物を上方に開口する冷凍室に収納して冷却する冷凍庫であって、機械室に配置されるスターリング冷凍機と、前記スターリング冷凍機により冷熱を供給される冷却器と、前記冷凍室内に空気流を生じさせる送風ファンと、を備え、前記冷却器の少なくとも一部は、前記冷凍室の上部と連通し且つ前記機械室と隣接する隣接室に、前記機械室から前記隣接室に進入する前記スターリング冷凍機のコールドヘッドと接触するように配置される。
【0008】
上記冷凍庫において、前記隣接室に貫通孔を有する誘導板を備え、前記送風ファンは前記隣接室の上部に配置され、前記誘導板は、前記送風ファンの下方において前記冷却器を所定間隔を置いて覆うように配置されて前記隣接室において空気の流路を形成し、前記送風ファンにより取り込まれる前記冷凍室の空気は、前記冷却器の冷却フィンを通過して冷却されてから、前記誘導板の下方から前記冷凍室に流出してもよい。
【0009】
上述した少なくとも1つの課題を解決するために、本発明の一方面に係る冷凍庫は、対象物を上方に開口する冷凍室に収納して冷却する冷凍庫であって、機械室に配置されるスターリング冷凍機と、前記スターリング冷凍機により冷熱を供給される冷却器と、を備え、前記冷却器の基部は、前記冷凍室の上部と連通し且つ前記機械室と隣接する隣接室に、前記機械室から前記隣接室に進入する前記スターリング冷凍機のコールドヘッドと接触するように配置され、前記冷却器は、前記基部と接続し且つ前記冷凍室において下方に延びるように配設される複数のヒートパイプを有し、複数の前記ヒートパイプの少なくとも一つは、他と長さが異なる。
【0010】
上記冷凍庫において、前記冷凍室内に空気流を生じさせる送風ファンを備え、前記ヒートパイプにより冷却された空気が、前記送風ファンにより前記冷凍室内を循環してもよい。
上記冷凍庫において、前記スターリング冷凍機は、リニアモータを備えるフリーピストン型であってもよい。
【0011】
上記冷凍庫において、前記冷凍室に対象物を収納する籠を備え、前記冷凍室内に空気流を生じさせる送風ファンは、前記籠の下方に配設されてもよい。
【0012】
上記冷凍庫において、前記冷凍室内に空気流を生じさせる送風ファンは、モータの軸受周辺を温める電熱部が設けられてもよい。
【0013】
上記冷凍庫において、相対して配置される一対の車輪と、前記車輪の反対側に配置されるハンドルとを備え、対象物を前記冷凍室に収納して冷却状態で運搬することができてもよい。
【0014】
上記冷凍庫において、前記冷凍室の前記開口の縁部は、周囲部分よりも凸出して凸状に形成されてもよい。
【0015】
上記冷凍庫において、前記冷凍室の前記開口の縁部及びその周囲部分と当接する外周部と、前記開口を閉ざす内周部とを有し、断熱材を含んで構成される外蓋を備え、前記内周部は、前記外周部よりも凸出して前記開口内に進入し、前記外周部は、前記内周部の回りの部分が凹んで凹状の段差部を有し、前記段差部に気密パッキングが設けられ、前記冷凍室の前記開口の縁部は、周囲部分よりも凸出して凸状に形成され、前記外周部の前記段差部と嵌合してもよい。
【0016】
上記冷凍庫において、前記冷凍室の上端近辺の前記隣接室よりも高い位置に配置される内蓋を備えてもよい。
【0017】
上記冷凍庫において、前記外蓋に回動可能に取り付けられ、前記冷凍庫の筐体に設けられる止め部と係合する孔部を有し、伸縮性を有する止め具を備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一方面によれば、ランニングコストが低い冷凍庫を提供することができる。本発明の一方面によれば、運搬に便利な冷凍庫を提供することができる。本発明の一方面によれば、冷凍室の室温を極低温にすることができる冷凍庫を提供することができる。
【0019】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷凍庫の一例の構成の概要を示す図である。
【
図4】
図1の冷凍庫の止め具及び止め部の一例を示す図である。
【
図5】
図1の冷凍庫の止め具及び止め部の他の例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る冷凍庫の他の例の構成の概要を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る冷凍庫の冷却用の送風ファンの一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る冷凍庫の冷却用の送風ファンの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態の例を図面を用いて説明する。なお、下記実施形態において共通する構成要素については、前出の符号と同様な符号を付し説明を省略することがある。また、構成要素等の形状、位置関係等に言及する場合は、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0022】
図1~
図5は本発明の一実施形態に係る冷凍庫の一例を示す図で、
図1は構成の概要を示す図、
図2は外観図、
図3は運搬状態を示す図、
図4は止め具及び止め部の一例を示す図、
図5は他の例を示す図である。
図1において、Xは左右方向、Yは上下方向、Zは前後方向(対象物を出し入れする際の使用者の手前側を前方、その反対側を後方とする)を示している。
【0023】
冷凍庫1は、対象物を冷凍室2に収納して冷却状態で運搬する冷凍庫である。冷凍室2は、上方に開口する空間で、上面を有しない略直方体状である。冷凍室2は内箱3により構成され、隣接室4と連通する連通口を除き、内箱3の外側に断熱材5が配設される。なお、冷凍庫1は、内箱3を有せず、冷凍室2が断熱材5により区画されてもよい。冷凍室2の開口は後述の外蓋16により開閉できるようになっている。
【0024】
隣接室4は、冷凍室2の上部と連通し且つ下方において機械室6と隣接する空間である。隣接室4は、冷凍室2と共通の内箱3により構成され、連通口を除き、内箱3の外側に断熱材5が配設される。隣接室4は、冷凍室2と異なる内箱で構成されてもよいし、内箱を有せず断熱材5で区画される空間でもよい。機械室6は、断熱材5の外側に構成される空間で、冷凍室2の隣において、隣接室4の下方の断熱材5と筐体7との間に設けられる。
【0025】
冷凍庫1は、冷凍室2を冷却する装置として、筐体7内に、スターリング冷凍機8と、スターリング冷凍機8により冷熱を供給される冷却器9と、冷凍室2内に空気流を生じさせる送風ファン10と、電力を供給する電源装置(不図示)とを備える。電源装置は、外部の電源コンセントに電源プラグを差し込み、ケーブルを介して、電力を取得し、所定電圧に変換する変圧器である。電源装置は、冷凍庫1の内部に収容されたバッテリーから、または、冷凍庫1の外部に付帯させたバッテリーから電力を得るようにしてもよい。
【0026】
スターリング冷凍機8は、逆スターリングサイクル(外部動力により、作動ガスが圧縮、膨張することで、放熱、吸熱をするサイクル)を利用して極低温の冷熱を発生する冷凍機である。スターリング冷凍機8には、従来技術が適宜用いられ、ここでは詳細な説明を省略するが、作動媒体としてヘリウムガスや水素ガス、窒素ガスなどが用いられ、先端のコールドヘッド(低温吸熱部)8aに極低温の冷熱を発生する。スターリング冷凍機8のピストンを駆動するモータは電源装置(外部電源またはバッテリー)により電力が供給される。
【0027】
スターリング冷凍機8は、一例として、リニアモータを備えるフリーピストン型である。動力は、例えば、70w~1.2kwであり、移動用としては70w~350w、好ましくは80w~260wである。
【0028】
このように、スターリング冷凍機を用いることで、従来のコンプレッサを用いたものに比べ、オゾン層を破壊するフロン等の冷媒を使わなくて済むので環境に優しい。また、-50℃付近からの効率が極めて良いと言われている。さらに、コンプレッサを用いたものは、傾斜時にうまく稼働せず移動に適していない。一方、スターリング冷凍機は、例えばフリーピストン型のリニアモータ方式を用いれば、360度のどの方向においても稼働可能である。
【0029】
スターリング冷凍機8は、コールドヘッド8aが上方に突出して、内箱3及び断熱材5の下面を貫通して隣接室4に進入するように、機械室6に配置される。スターリング冷凍機8のウォームヘッド(高温放熱部)と熱伝導し温熱の放出を促進する熱交換器8bは、機械室6内に配置される。熱交換器8bの近辺には、筐体7を貫通する空気口11が設けられる。スターリング冷凍機8の下方には温熱排出用の送風ファン12が設けられ、機械室6内の空気を筐体7の下端の放熱口13から排出するようになっている。
【0030】
冷却器9は、スターリング冷凍機8により冷熱が供給される。言い換えれば、冷却器9は、スターリング冷凍機8の低温吸熱部と熱伝導する熱交換器である。冷却器9は、熱交換を促進するための複数のフィンを有し、隣接室4に進入するスターリング冷凍機8のコールドヘッド8aと接するように隣接室4の下部に配置される。
【0031】
送風ファン10は、冷凍室2内に空気流を生じさせるものである。送風ファン10は、隣接室4の上部に配置され、連通口を通じて冷凍室2内に空気の流れを生じさせる。送風ファン10の下方には、冷却器9との間に、貫通孔を有する誘導板14が設けられる。誘導板14は、冷却器9を所定間隔をおいて上方から覆うように配置され、隣接室4において空気の流路を形成する。なお、図示のように、送風ファン10、誘導板14及び冷却器9が上面及び連通口側面に開口するケーシングにより囲われてもよい。
【0032】
送風ファン10により冷却器9に取り込まれた冷凍室2内の空気は、冷却器9の冷却フィンを通過することで熱を奪われて冷却され、誘導板14の下方から冷凍室2に流出する。すなわち、冷凍室2は、送風ファン10により室内の空気が上方に吸い上げられ、隣接室4の冷却器9に取り込まれて冷却されてから送出され、下方に流れるという循環が生まれ、室温が極低温まで冷却され得る。冷凍室2の室温は、例えば、下限が-10℃~-198℃、より好ましくは、-20℃~-100℃で、上限が10℃~20℃、より好ましくは、5℃~10℃である。
【0033】
冷凍室2には、温度センサが設けられ、冷凍室2の室温を監視できるようになっている。好ましくは、冷凍庫1は、スターリング冷凍機8に動力を与えるモータの駆動を制御する制御部を備え、冷凍室2の室温を所定の温度に保てるようになっている。また、冷凍庫1は、使用者が冷凍室2の室温等を調整できるようになっており、室温等を調整するためのコントロールパネル15が筐体7の上面に設けられる。
スターリング冷凍機8に動力を与えるモータの駆動制御は、動力の供給、停止により行われる。また、電圧制御や電流制御等によりピストンの圧縮率を増減させたりしてもよい。周波数制御が用いられてもよい。
【0034】
外蓋16は、冷凍室2の開口を開閉するもので、横断面全面に広がる断熱材を含んで構成される。
図2に示すように、外蓋16は、冷凍室2の開口よりも横断面が大きく形成され、冷凍室2の開口の縁部及びその周囲部分(筐体7の上端)と当接する外周部16aと、冷凍室2の開口を閉ざす内周部16bとを有する。内周部16bは、外周部16aよりも凸出しており、閉じ状態では冷凍室2の開口内に進入する。
【0035】
図1に示すように、外周部16aは、内周部16bの回りの部分が凹んで凹状の段差部16cが設けられる。一方、冷凍室2の開口の縁部7aは、周囲部分よりも凸出して、閉じ状態では、凸出した開口の縁部7aが凹状の段差部16cと嵌合する。段差部16cには、気密用のパッキング17が設けられる。冷凍庫1は、冷凍室2の開口の縁部7aを凸状に形成することで、開口から冷凍室2内に液体等が流入しないようにすることができる。なお、冷凍室2の開口の縁部7aは筐体7により構成されてもよいし、内箱3ないし断熱材5により構成されてもよい。
【0036】
図2に示すように、外蓋16には、外蓋16を筐体7に固定するための止め具18が設けられる。止め具18は、引いて止める止め具である。より具体的には、止め具18は、伸縮性を有するバンド状のもので、貫通孔である孔部18aを有する。一方、筐体7には止め具18の孔部18aと係合するための止め部7bが設けられる。止め部7bは、前方に突出する突起状ないしフック状に形成される。止め部7bは、止め具18を引き伸ばさないと孔部18aの下端が止め部7bの下端に届かないように設けられる。一例として、孔部18a及び止め部7bは略矩形に形成され、孔部18aが止め部7bよりやや大きく形成される。
【0037】
図4に示すように、止め具18は、一端に軸部18bが設けられ、軸部18bを介して外蓋16に回動可能に取り付けられる。止め具18は、他端に指を掛けやすくし、力を入れやすくする指掛け部18cが設けられる。より具体的には、留め具18は、他端に帯状部分から左右にそれぞれ延出する一対の延出部18dが形成され、延出部18dと帯状部分で略L字状の一対の指掛け部18cが形成される。好ましくは、指掛け部18cは凹状部分または上方に傾斜する傾斜部分を有し、指をより掛けやすくなっている。一例として、指掛け部18cは、延出部18dが外側が上方に上がる緩やかな湾曲形状に形成されて、指を掛けやすくなっている。
【0038】
外蓋16を筐体7に固定する際には、両指掛け部18cにそれぞれ指を掛けて、図示の矢印A方向に止め具18を引き伸ばし、孔部18aに止め部7bを挿通させ、係合させる。冷凍庫1は、止め具18を設けることで、冷凍室2をより密閉した状態とすることができる。また、運搬の際に外蓋16がずれたり開いたりすることを回避できる。
【0039】
図5に示すように、止め具18の孔部18a及び筐体7の止め部7bは略三角形に形成されてもよい。このように形成することで、孔部18aが止め部7bにより係りやすくなり、より確実に係合するようになる。なお、孔部18a及び止め部7bは略円形や楕円形に形成されてもよい。また、止め具18に二以上の孔部が設けられてもよい。
【0040】
図1に示すように、冷凍庫1は、さらに内蓋19が設けられてもよい。内蓋19は、冷凍室2内に配置され、より具体的には、上端近辺の隣接室4よりも高い位置に配置される。一例として、内蓋19は、冷凍室2内に凸出するリブ状の部分で支えられる。
【0041】
冷凍庫1は、据置状態では、筐体7の下端に設けられる4つの足部7cにより床面や地面等の載置面に載置される。また、冷凍庫1は、対象物を冷凍室内に収納して冷却状態で運搬することができ、相対して配置される一対の車輪21と、車輪21の反対側に配置されるハンドル22とを備える。
【0042】
車輪21は、据置場所をずらす等の短い距離の移動だけでなく、長い距離の運搬にも使えるように直径がやや大きいものが用いられる。車輪21は、図示のように、例えば、左側にある冷凍室2を避けて機械室6が設けられる右側に配設される。車輪21の下端は、足部20の下端と同じ位置にあり、据置状態で冷凍室2は水平状態にある。
【0043】
ハンドル22は、例えば、筐体7の左端に配設され、
図1及び
図2の上下方向に延びる収納状態から、
図3の左右方向に延びる使用状態に回動できる。ハンドル22は、一例として、把持部の反対側に軸部を有し、軸部を介して回動可能に筐体7に取り付けられる。
【0044】
図3に示すように、使用者は、ハンドル22で冷凍庫1の左側を持ち上げてから、ハンドル22を押すまたは引くことで、車輪を転がせて(回転させて)、リヤカーのように冷凍庫1を移動させて対象物を運搬することができる。スターリング冷凍機8は、傾斜状態でも作動できるので、対象物を冷却状態で運搬することができる。
【0045】
なお、車輪21は、ハンドル22と同じ側に配設されてもよく、ハンドル22を押下げて冷凍庫1の右側を持ち上げてから、ハンドル22を押すまたは引くことで、車輪を転がせて冷凍庫1を移動させてもよい。また、2対の車輪が設けられて、どちら側を持ち上げてもよいようにしてもよい。
【0046】
冷凍庫1は、一例として、
図2に示すように、左端に右方に凹入する前後に延びる凹状の手掛け部7dが設けられ、右端に下方に凹入する前後に延びる手掛け部7eが設けられる。冷凍庫1は、手掛け部を設けることで、両手で持ち上げやすくなる。また、ハンドル22が使えない場合でも、手を掛けて、引いたり、押したりすることができるようになる。
【0047】
冷凍庫1は、
図2に示すように、筐体7の上端の四隅に保護部23を備えてもよい。保護部23を備えることで、運搬等移動の際に、冷凍庫1を衝突や転倒から守ることができる。また、保護部23は、
図1の側面図で示すように、コントロールパネル15の上面からやや張り出している。これにより、複数の冷凍庫1を重ねて載置した場合や、他の物を上に置いた場合に、コントロールパネル15の液晶ディスプレイやタッチパネルを損傷から保護することができる。
【0048】
図6は本発明の一実施形態に係る冷凍庫の他の例の構成の概要を示す図である。図示の冷凍庫1は、冷却器及び冷却用の送風ファンが上記実施形態と異なる。ここでは、主として異なる点を説明する。
【0049】
冷却器24の基部は、スターリング冷凍機8のコールドヘッド8aと接触するように隣接室4に配置される。冷却器24は、基部がコールドヘッド8aに装着されて冷熱が供給され、複数のヒートパイプが基部から冷凍室2内に下方に延びるように延設される熱交換器である。基端が基部と接続し、先端が冷凍室2内に延設されるヒートパイプは、基端の低温側と先端の高温側との間に温度差を有し、低温側で凝縮した冷媒が高温側で吸熱し蒸発して、冷凍室2を冷却する。好ましくは、冷却器24は、複数のヒートパイプの少なくとも一つが、他と長さが異なる。
【0050】
一例として、ここでは、ヒートパイプ24aと、これより長いヒートパイプ24bの2つのヒートパイプを有する例を説明する。図示のように、ヒートパイプ24aとヒートパイプ24bは、長さが異なるため、ヒートパイプ24bがより低い位置まで延びて、両者の冷却ゾーン(破線部分)が異なり、冷凍室2内をより均一に冷却することができる。なお、下部に冷気がたまりやすいので、短いヒートパイプを長いヒートパイプより数多く設けてもよい。また、ヒートパイプの先端にさらに熱交換を促進する熱交換器が設けられてもよい。
【0051】
冷凍庫1は、冷凍室2内に対象物を収納する籠25を備えてもよい。籠25は、足部25aを備え、足部25aにより冷凍室2の下面に載置される。好ましくは、籠25の下方に冷却用の送風ファン26が配設される。送風ファン26は、図示の矢印のように、籠25の下方において、吸い込んだヒートパイプ側の空気を反対側へ送出するようにして、空気流を生じさせる。好ましくは、さらに、冷凍室2の上部に冷却用の送風ファン27が設けられ、図示の矢印のように、下方へ流れる空気流を生じさせるようにしてもよい。
【0052】
なお、送風ファンを用いず、ヒートパイプの数や冷却ゾーンを調整することで冷凍室内を平均的に冷やすようにしもよい。
また、作動温度の異なるヒートパイプを組み合わせることで、冷凍室内の温度変化に対応しても良い。例えば、冷凍室上部には、冷凍室内の他の部分に配置されるヒートパイプより低温の作動温度(入熱部)のヒートパイプを設けることで、冷凍室上部付近が強く冷やされ、冷気が下降し冷凍室内が平均的に冷やされるようにしてもよい。また、例えば、蓋付近に、冷凍室内の他の部分に配置されるヒートパイプより低温の作動温度のヒートパイプを設けることで、蓋を開閉した際の温度の上昇を急速に回復するようにしてもよい。
【0053】
図7は本発明の一実施形態に係る冷凍庫の冷却用の送風ファンの一例を示す図で、
図8は他の例を示す図である。図示の送風ファンは、上記のいずれの送風ファンであってもよいが、以下では、送風ファン10として説明する。
【0054】
送風ファン10は、プロペラ10aと、モータ10bを有する。モータ10bは、ケーシング10c内に、磁界を作るステータ10dと、磁界の中で回転するロータ10eと、ロータ10eの回転軸を支える一対の軸受10fを有する。プロペラ10aは、ケーシング10cから外側に延出するロータ10eの回転軸に取り付けられる。
【0055】
好ましくは、送風ファン10は、モータ10bの軸受10f周辺を温める電熱部28が設けられる。送風ファン10は、軸受10fの潤滑用のグリスの限界温度が通常-60℃程度であるが、周囲が-60℃よりも低くなる場合がある。そのため、ここでは、軸受10fに電熱部28を設けて、軸受10fの周辺を温めてグリスの限界温度以下にならないようにする。なお、送風ファン10が動き出すと、摩擦係数が下がるので、送風ファン10の起動時にのみ電熱部28を通電させて温めるようにしてもよい。また、定期的に電熱部28を通電させたり、冷凍室2内ないし隣接室4内の室温が所定温度以下になった場合に通電させたりしてもよい。電熱部28には、セラミックヒータや電熱線、超音波誘導などが用いられる。また、軸受10fの周辺に温度を制御するための温度センサが設けられてもよい。
【0056】
送風ファン10は、回転軸に嵌め込まれるボス部のモータ側端部に滑り部29が設けられ、反対側端部に圧縮コイルバネ30が設けられて、滑り部29で押し付けるようにしてモータ10bの気密性を高めるようにしてもよい。図示のように、滑り部29に電熱部が設けられてもよい。
【0057】
なお、ここでは、送風ファンとしてプロペラファンを示しているが、他の種類の送風ファンであってもよい。
【0058】
なお、上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態の例に限定されるものではない。請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 冷凍庫
2 冷凍室
4 隣接室
5 断熱材
6 機械室
7 筐体
8 スターリング冷凍機
8a コールドヘッド
9、24 冷却器
10、26、27 送風ファン
14 誘導板
24a、24b ヒートパイプ