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特許7128546リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法およびシステム
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  • 特許-リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/08 20060101AFI20220824BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20220824BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20220824BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C01D15/08
B01D61/02 500
B01D61/14 500
B01D61/58
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020550119
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2018099548
(87)【国際公開番号】W WO2019205343
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】201810403535.1
(32)【優先日】2018-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520036891
【氏名又は名称】四川思達能環保科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】何志
(72)【発明者】
【氏名】郭定江
(72)【発明者】
【氏名】何勁松
(72)【発明者】
【氏名】劉超
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106044804(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106282557(CN,A)
【文献】中国実用新案第205773393(CN,U)
【文献】国際公開第2017/139852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 15/00
B01D 61/00
C22B 3/00,26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)リチウム鉱石の精鉱を用い、硫酸リチウム溶出液を調製する工程、
2)硫酸リチウム溶出液にアルカリを添加してpHを9~10に調整し、硫酸リチウム溶出液中のFe2+、Al3+を沈殿させる工程、
3)工程2)で得られた硫酸リチウム溶出液をろ過し、硫酸リチウム溶出液中のFe2+、Al3+の沈殿物を除去する工程、
4)ろ過で得られた硫酸リチウム溶出液をイオン交換法で処理し、硫酸リチウム溶出液中のCa2+、Mg2+を除去する工程、
5)続いて、得られる濃縮液中のFe2+の濃度<0.0005%、Al3+の濃度<0.0005%、Ca2+の濃度<0.0024%、Mg2+の濃度<0.0040%、且つ、硫酸リチウムの濃度が15~20%となるよう、イオン交換処理で得られた硫酸リチウム溶出液を膜濃縮して硫酸リチウム溶出液の濃縮液を得る工程、および、
6)工程5)で得られた硫酸リチウム溶出液の濃縮液に炭酸ナトリウム飽和溶液を添加して炭酸リチウムを沈殿させ、炭酸リチウム沈殿物をろ過分離した後、該炭酸リチウム沈殿物を熱水で洗浄し、乾燥させ、炭酸リチウム完成品を得る工程を含むことを特徴とする、
リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法。
【請求項2】
工程5)において、硫酸リチウム溶出液を濃縮する前に、先に硫酸リチウム溶出液中の懸濁物を除去し、且つ、硫酸リチウム溶出液のpHを調整することを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法。
【請求項3】
工程5)における膜濃縮のプロセスは、限外ろ過膜によるろ過、および、逆浸透によるろ過を含むことを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明はリチウム塩の製造プロセスの技術分野に関する。具体的には、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法およびシステムに関する。
【0002】
〔背景技術〕
炭酸リチウムを調製するための原料は、主に塩湖のかん水およびリチウム鉱石に分けられる。近年、中国では塩湖のリチウム資源の採掘が積極的に行われているが、資源や技術などの要因に制限され、開発速度が比較的遅い。そのため、現在、中国では、リチウム鉱石からリチウムを抽出する手法が主流となっている。リチウム鉱石とは、通常、リチウム鉱石、レピドライト、アンブリゴナイトなどのリチウム含有鉱石を指す。
【0003】
現在、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための主な方法は、収率の高い硫酸法である。硫酸法は、リチウム鉱石を焙焼する工程、硫酸リチウム溶出液を調製する工程、硫酸リチウム溶出液を処理する工程、および、リチウム沈殿工程を含む。ここで、硫酸リチウム溶出液の精製濃縮は、最終製品である炭酸リチウムの品質に直接影響を及ぼす処理である。現在、メーカーにおいて、硫酸リチウム溶出液に対する処理のほとんどが、不純物の除去、ろ過、蒸発濃縮などの一連の工程を含む。ここで、不純物の除去工程は、主に、大量のアルカリを添加することによって、得られる炭酸リチウムの純度に影響を及ぼすFe2+、Al3+、Ca2+、Mg2+などのイオンを、硫酸リチウム溶出液中から除去する。そのため、当該工程は、最終製品である炭酸リチウムの品質に直接影響を及ぼす工程である。しかし、大量のアルカリを添加することによって不純物を除去する従来技術の方法では、生産効率およびコストが或る程度に影響され、最終的には不純物の除去が不十分で、調製された炭酸リチウム製品の品質も不安定である。
【0004】
ところで、本発明者らによる中国特許文献CN106044804Aには、硫酸法による新たなリチウム塩製造プロセスが開示されている。この製造プロセスは、主にイオン交換法またはナノろ過膜法によって、硫酸リチウム溶出液中の不純物を除去する。イオン交換法によって、硫酸リチウム溶出液中のFe2+、Al3+、Ca2+、Mg2+を除去する該方法は、大量のアルカリを添加することによって不純物を除去する従来の方法に完全に取って代わったものである。当該方法は、炭酸リチウム製品の品質をある程度改善できるが、アルカリを添加する手法に比べ、生産コストが比較的に高い。また、イオン交換法において使用されるイオン交換樹脂の寿命が短いため、生産コストはさらに高くなる。さらに、イオン交換時間の延長にせよ、イオン交換樹脂の使用量の変更にせよ、得られる炭酸リチウム製品の品質はこれ以上に向上することがない。
【0005】
〔発明の内容〕
本発明の主な目的は、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製する従来技術のプロセスでは製品の品質が低いという問題を解決するために、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法およびシステムを提供することである。
【0006】
本発明が解決すべき技術的課題は、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法であって、
1)リチウム鉱石の精鉱を用い、硫酸リチウム溶出液を調製する工程、
2)硫酸リチウム溶出液にアルカリを添加してPHを9~10に調整し、硫酸リチウム溶出液中のFe2+、Al3+を沈殿させる工程、
3)工程2)で得られた硫酸リチウム溶出液をろ過し、硫酸リチウム溶出液中のFe2+、Al3+の沈殿物を除去する工程、
4)ろ過で得られた硫酸リチウム溶出液をイオン交換法で処理し、硫酸リチウム溶出液中のCa2+、Mg2+を除去する工程、
5)続いて、得られる濃縮液中のFe2+の濃度<0.0005%、Al3+の濃度<0.0005%、Ca2+の濃度<0.0024%、Mg2+の濃度<0.0040%、且つ、硫酸リチウムの濃度が15~20%となるように、イオン交換処理で得られた硫酸リチウム溶出液を膜濃縮して硫酸リチウム溶出液の濃縮液を得る工程、および、
6)工程5)で得られた硫酸リチウム溶出液の濃縮液に炭酸ナトリウム飽和溶液を添加して炭酸リチウムを沈殿させ、炭酸リチウム沈殿物をろ過分離した後、該炭酸リチウム沈殿物を熱水で洗浄し、乾燥させ、炭酸リチウム完成品を得る工程を含む、
リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法を提供することにある。
【0007】
本発明に係る、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法によれば、初期の段階において、アルカリ添加工程でFe2+、Al3+を除去することにより、最終製品である炭酸リチウムの純度を高めることができるとともに、Fe2+の存在によってイオン交換樹脂が酸化されて樹脂の構造が変化し、樹脂のイオン交換能力が失われることを避けることができる。また、沈殿後のFe2+、Al3+の沈殿物を先にろ過することにより、これらの沈殿物がイオン交換樹脂の樹脂チャネルを塞いでイオン交換樹脂において無機物のファウリングが起こることを回避でき、イオン交換樹脂を効果的にリサイクルすることができる。また、本発明によれば、後期の段階においてイオン交換法を用いるため、硫酸リチウム溶出液中のCa2+、Mg2+をより徹底的に除去でき、最終製品である炭酸リチウムの純度を高めることができる。
【0008】
さらに、工程5)において、硫酸リチウム溶出液を濃縮する前に、先に硫酸リチウム溶出液中の懸濁物を除去し、且つ、硫酸リチウム溶出液のPHを調整する。
【0009】
さらに、工程5)における膜濃縮のプロセスは、限外ろ過膜によるろ過、および、逆浸透によるろ過を含む。
【0010】
本発明は、LiSO溶出液産出システム、リチウム沈殿システムおよび乾燥システムを含む、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するためのシステムであって、順につながっている、精密ろ過装置、イオン交換装置、および、膜濃縮ろ過システムを含み、前記精密ろ過装置の液体注入口とLiSO溶出液産出システムの液体排出口とがつながっており、前記膜濃縮ろ過システムの濃縮液排出口が、順にリチウム沈殿システムおよび乾燥システムとつながっている、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するためのシステムをさらに提供する。
【0011】
本発明は、精密ろ過装置を用いてLiSO溶出液を先に精密ろ過するため、従来技術の複式フィルタープレスよりも、ろ過効果がより優れている。また、イオン交換樹脂によるイオン交換でCa2+、Mg2+を除去するため、プロセスを簡単化し、除去効果をより向上させることができる。また、イオン交換後、従来の蒸発濃縮システムの代わりに膜濃縮ろ過システムを用いるため、生産エネルギーの消費を低減させ、製品の品質を向上させることができる。従来技術に比べ、本発明は、LiSO溶出液に対する処理の効果をさらに向上させ、構成をさらに簡単化し、生産コストをさらに低減させることができる。このように、従来技術に比べ、本発明によれば、LiSO溶出液に対する処理の効果がより優れており、構成がより簡単で、生産コストがより低くなる。リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための上記システムを用いることにより、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための上記方法を実現することができ、硫酸法による炭酸リチウム製造工法に適用することができる。
【0012】
さらに、前記膜濃縮ろ過システムは、順につながっている、限外ろ過膜ろ過装置、および少なくとも一段のディスクを有するディスクチューブ型逆浸透膜ろ過装置を含む。限外ろ過膜ろ過装置処理は、主に、分子サイズが大きい粒子状物質を捕集する。その後、LiSO溶出液は一段または多段のディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置に入り、濃縮される。システム全体の生成水は、生産システムへリサイクルされてもよい。濃縮後のLiSOの濃度は15~20%に達することが可能である。
【0013】
さらに、前記限外ろ過膜ろ過装置は、分子量>2000、直径0.005~0.05μmの物質を捕集するろ過装置である。この条件下で、限外ろ過膜ろ過装置は、分子サイズが大きい粒子状物質をより効果的に捕集することができる。
【0014】
さらに、前記ディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置は、分子量50~150、直径0.0001~0.001μmの物質を捕集するろ過装置である。この条件下で、ディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置は、ろ過後のLiSO溶出液を最も効果的に濃縮することができる。
【0015】
さらに、前記精密ろ過装置は、分子直径>0.1μmの物質を捕集するろ過装置である。この条件下で、LiSO溶出液中の大部分の固体粒子状不純物を捕集することができる。
【0016】
さらに、前記イオン交換装置と膜濃縮ろ過システムとの間に前処理装置がさらに備えられている。前処理装置を設けることにより、膜濃縮ろ過システムに入る液体の品質を保証できる。
【0017】
さらに、前処理装置は、初期ろ過装置およびPH調整装置を含む。これにより、膜濃縮ろ過システムに入るLiSO溶出液の不純物濃度およびPHが制御され、よりよい濃縮効果を保証できる。
【0018】
以下、図面および具体的な実施形態を参照しながら、本発明をさらに説明する。本発明の付加的態様および利点は、その一部が以下の説明により、残りの部分が以下の説明により明らかとなり、または本発明の実践により理解される。
【0019】
〔図面の説明〕
本発明の一部を構成する図面は、本発明に対する理解を補助するためのものである。図面に開示の内容、および、それに関する明細書中の記載は、本発明の解釈に資するためのものであるが、本発明を限定するものではない。
【0020】
図面として、図1はリチウム鉱石から炭酸リチウムを調製する本発明に係る方法およびそのシステムにおける、装置およびプロセスを示す模式図である。
【0021】
上記図面中の符号は下記の通りである。
【0022】
1:精密ろ過装置
2:イオン交換装置
3:前処理装置
4:限外ろ過膜ろ過装置
5:ディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置
6:LiSO溶出液産出システム
7:リチウム沈殿システム
8:乾燥システム
〔具体的な実施形態〕
以下、図面を参照しながら、本発明を明確かつ完全に説明する。本分野の当業者は、これらの説明に基づき本発明を実現することができる。図面を参照しながら本発明を説明する前に、特に以下のことを述べておく。
【0023】
本発明において、以下の説明を含む様々な形態として提供される技術的構成および技術的特徴は、矛盾しない限り、互いを組み合わせることができる。
【0024】
さらに、以下の説明に含まれる本発明の実施例は、一般的に本発明における一部の実施例にすぎず、全ての実施例を意味するものではない。したがって、本分野の当業者がこれらの実施例に基づき、創造的労力なしに得られる他の全ての実施例も、本発明の保護範囲に含まれると理解すべきである。
【0025】
本発明の用語および単位について、本願の明細書、特許請求の範囲、および関連記載箇所において、「含む」、「有する」といった用語およびそれらの変形的表現は、排他的ではない「包含」をカバーすることを意図している。
【0026】
本発明に係る、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法は、
1)リチウム鉱石の精鉱を用い、硫酸リチウム溶出液を調製する工程、
2)硫酸リチウム溶出液にアルカリを添加してPHを9~10に調整し、硫酸リチウム溶出液中のFe2+、Al3+を沈殿させる工程、
3)工程2)で得られた硫酸リチウム溶出液をろ過し、硫酸リチウム溶出液中のFe2+、Al3+の沈殿物を除去する工程、
4)ろ過で得られた硫酸リチウム溶出液をイオン交換法で処理し、硫酸リチウム溶出液中のCa2+、Mg2+を除去する工程、
5)続いて、得られる濃縮液中のFe2+の濃度<0.0005%、Al3+の濃度<0.0005%、Ca2+の濃度<0.0024%、Mg2+の濃度<0.0040%、且つ、硫酸リチウムの濃度が15~20%となるように、イオン交換処理で得られた硫酸リチウム溶出液を膜濃縮して硫酸リチウム溶出液の濃縮液を得る工程、および、
6)工程5)で得られた硫酸リチウム溶出液の濃縮液に炭酸ナトリウム飽和溶液を添加して炭酸リチウムを沈殿させ、炭酸リチウム沈殿物をろ過分離した後、該炭酸リチウム沈殿物を熱水で洗浄し、乾燥させ、炭酸リチウム完成品を得る工程を含む。
【0027】
工程1)において、硫酸リチウム溶出液の具体的な調製プロセスとして、従来技術の調製プロセスを用いる。本具体的な実施形態において、硫酸リチウム溶出液の調製プロセスは以下のとおりである。まず、リチウム鉱石の精鉱を焙焼し、次に冷却し、リチウム鉱石のカルシンを得る。リチウム鉱石のカルシンを粉砕して、リチウム鉱石の粉末を得る、リチウム鉱石の粉末に硫酸を添加し、焙焼し、酸クリンカーを得る。酸クリンカーに炭酸カルシウムを添加し、混合物を得る。混合物に水を添加し、混合物のpH値が5.5~6.0になった後、ろ過して硫酸リチウム溶出液を得る。
【0028】
工程5)において、硫酸リチウム溶出液を濃縮する前に、先に硫酸リチウム溶出液中の懸濁物を除去し、且つ、硫酸リチウム溶出液のPHを調整する。
【0029】
工程5)における膜濃縮のプロセスは、限外ろ過膜によるろ過、および、逆浸透によるろ過を含む。
【0030】
以下、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製する方法の幾つかの比較例、および、本発明に係る、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法を通して、本発明を詳細に説明する。
【0031】
<比較実験1>
リチウム鉱石の精鉱を用い、硫酸リチウム溶出液を調製した後、硫酸リチウム溶出液に大量のアルカリを添加することのみにより、不純物を除去する。
【0032】
<比較実験2>
リチウム鉱石の精鉱を用い、硫酸リチウム溶出液を調製した後、イオン交換法で炭酸リチウム溶出液中の不純物を除去する。
【0033】
<実施例1>
本発明に係る、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するための方法を実施する。
【0034】
以下、上記3つの実験方法の効果を比較した結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
上記の表1の比較から、本発明の実施例1は、試験効果が最もよく、生産コストが最も低く、硫酸リチウム溶出液から産出される炭酸リチウム製品の品質が最も高かったことがわかる。なお、表中イオン濃度とは、硫酸リチウム溶出液の質量に対するイオン質量の比である。
【0037】
また、本具体的な実施形態では、実施例1において、工程5)における濃縮液中の硫酸リチウム濃度をそれぞれ15%、18%、20%に3回変更し、3つの実施例とした。これらの実施例の最終的な試験結果(効果)は実施例1と同様であった。
【0038】
「精密ろ過」とは、通常の砂ろ過では除去できない微細な懸濁物またはコロイド粒子を除去するろ過処理工程を指し、供給水を処理して超純水とする前処理装置においてよく使用される。
【0039】
本発明の具体的な実施形態は、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するためのシステムをさらに提供する。図1に示すように、本具体的な実施形態では、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するためのシステムは、順につながっている、LiSO溶出液産出システム6と、精密ろ過装置1と、イオン交換装置2と、前処理装置3と、限外ろ過膜ろ過装置4と、ディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置5と、リチウム沈殿システム7と、乾燥システム8とを含む。
【0040】
ここで、前処理装置3は、初期ろ過装置およびPH調製装置を含む。前記精密ろ過装置1は、ろ過温度が50~70℃に制御されるろ過装置である。
【0041】
好ましくは、前記精密ろ過装置1は、分子直径>0.1μmの物質を捕集するろ過装置であり、前記限外ろ過膜ろ過装置4は、分子量>2000、直径0.005~0.05μmの物質を捕集するろ過装置であり、前記ディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置5は、分子量50~150、直径0.0001~0.001μmの物質を捕集するろ過装置である。
【0042】
ここで、LiSO溶出液産出システム6においては、主に、リチウム鉱石の精鉱を細かく粉砕し、焙焼し、硫酸およびCaCOを添加した後、LiSO溶出液を溶出させる。
【0043】
リチウム沈殿システム7においては、主に、ディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置5で得られたLiSO濃縮液を85~95℃に温度制御しながら、飽和NaCO溶液を添加し、炭酸リチウム固体を含有する液体を得て、固体-液体分離により炭酸リチウム固体を得る。分離後の炭酸リチウム固体は、乾燥システム8で乾燥し、LiCO完成品を得る。
【0044】
本具体的な実施形態における、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するためのシステムは、精密ろ過装置1を用いてLiSO溶出液を先に精密ろ過するため、従来技術の複式フィルタープレスよりも、ろ過効果がより優れている。また、イオン交換装置2中のイオン交換樹脂によるイオン交換で、Ca2+、Mg2+を除去するため、プロセスを簡単化し、除去効果をより向上させることができる。また、イオン交換後、前処理装置中の初期ろ過装置およびPH調整装置により、膜濃縮ろ過システムに入るLiSO溶出液の不純物濃度およびPHが制御される。次に、従来の蒸発濃縮システムの代わりに、膜濃縮ろ過システム中の限外ろ過膜ろ過装置4およびディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置5を用いるため、生産エネルギーの消費を低減させ、製品の品質を向上させることができる。
【0045】
従来技術と比べ、本具体的な実施形態における、リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製するためのシステムは、イオン交換装置中のイオン交換樹脂を用いるため、Ca2+、Mg2+をより徹底的に除去できる。また、蒸発工程の代わりに膜濃縮ろ過システムを用いるため、エネルギーの消費およびコストを低減させるとともに、生成された水を生産システムへリサイクルすることができる。本発明は、ランニングコストが低く、制御しやすく、環境への二次的汚染がなく、硫酸法によるリチウム塩生産という分野における精製および濃縮処理に広く適用できる。
【0046】
以上、本発明に関する内容について説明した。本分野の当業者は、これらの説明に基づき本発明を実現することができる。本分野の当業者が、本発明に関する上記内容に基づき、創造的労力なしに得られる他の全ての実施例も、本発明の保護範囲に含まれると理解すべきである。
【0047】
以上の説明は、本発明の好適な実施例にしかすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨および精神の範囲内で成された如何なる変更、均等的置換、および改良等も、本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0048】
以上、本発明に関する内容について説明した。本分野の当業者は、これらの説明に基づき本発明を実現することができる。本分野の当業者が本発明の上記内容に基づき、創造的労力なしに得られる他の全ての実施例も、本発明に含まれる。
【0049】
〔符号の説明〕
1 精密ろ過装置
2 イオン交換装置
3 前処理装置
4 限外ろ過膜ろ過装置
5 ディスクチューブ逆浸透膜ろ過装置
6 LiSO溶出液産出システム
7 リチウム沈殿システム
8 乾燥システム
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】リチウム鉱石から炭酸リチウムを調製する本発明に係る方法およびそのシステムにおける、装置およびプロセスを示す模式図である。
図1