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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】浮上式シェルター
(51)【国際特許分類】
   B63C 9/06 20060101AFI20220824BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B63C9/06
E04H9/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022063876
(22)【出願日】2022-04-07
【審査請求日】2022-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-245486(JP,A)
【文献】中国実用新案第215399230(CN,U)
【文献】特開2021-80760(JP,A)
【文献】特開2011-106142(JP,A)
【文献】特開2013-63753(JP,A)
【文献】特開2013-238094(JP,A)
【文献】特開2014-95228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/06
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に支持されたシェルター本体と、
太陽光発電パネルを有して、前記シェルター本体に連結される一対の張出屋根と、
前記張出屋根に固定される浮体と、
前記張出屋根にスライド可能に接続するガイド支柱と、を備え、
水位が上昇したとき、前記シェルター本体と前記張出屋根が一体となって前記ガイド支柱に沿って上昇することを特徴とする浮上式シェルター。
【請求項2】
前記張出屋根は、前記シェルター本体に回動可能に連結され、
前記張出屋根の回動変位を抑制するための回動抑制機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の浮上式シェルター。
【請求項3】
前記回動抑制機構は、バネと、ダンパーと、を有し、前記バネと、前記ダンパーは力学的に並列接続した状態で前記シェルター本体と前記張出屋根に接続することを特徴とする請求項2に記載の浮上式シェルター。
【請求項4】
前記張出屋根は、前記ガイド支柱の一部を内挿した状態で、前記ガイド支柱にスライド可能に接続するスライドリングを有し、前記スライドリングは前記張出屋根の先端部に対向して設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の浮上式シェルター。
【請求項5】
前記シェルター本体に設けられた避難空間に、前記太陽光発電パネルで発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナーと、前記直流電力を蓄電するための蓄電池が設置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の浮上式シェルター。
【請求項6】
前記浮体は、前記張出屋根の先端部に固定された状態で、台座を介して地面に支持されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の浮上式シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位の上昇に伴い、ガイド部に沿って浮上する浮上式シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
巨大津波から生命を守るためには、迅速に高台に避難することが防災上有効な手段の一つである。しかしながら、東海、東南海、南海の三連動地震が発生した場合、地震発生後わずか5分で30mの津波が襲来する地域も存在することが予測されており、このような短時間で高台に避難することは、極めて困難である。解決策として、水面上に浮上できる浮上式のシェルターが提案されている。
【0003】
特許文献1の発明によれば、津波到来時においてはシェルター本体を浮遊させることができるとともに、津波が去った後にはシェルター本体を元の場所の近くに戻すことが可能である津波避難用シェルターが開示されている。具体的には、避難者を収容可能であって水に浮くことが可能なシェルター本体を備え、シェルター本体は地面上に固定された漂流防止用の連結部材に連結されており、水位の上昇に伴って地面からの突出長さが増加し、水位の低下に伴って地面からの突出長さが減少することを特徴とする浮上式のシェルターである。
【0004】
特許文献2の発明によれば、多くの家庭で購入することができて、庭の片隅に置き、水害時に、軽量で強度にすぐれたカプセル内に避難することにより、津波等の水害から避難を可能とする安価な避難救命カプセルが開示されている。具体的には、概ね枡形で下部が括れた形状のカプセル本体を樹脂で一体成形しカプセル本体の上部に防水シートカバーを被せるための骨組みを構築し、防水シートカバーには出入口扉を設け、カプセル本体には少なくとも4人の大人が膝を抱えて座ることができる空間を設けるとともに、シートベルトを取付け、カプセル本体の下部には重心を下げるための錘とキャスター付き台座を取り付けた浮上式のシェルターである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-74385号公報
【文献】特開2014-58296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2で開示されている浮上式のシェルターは、あくまで津波、洪水などの災害時のみの使用が考慮されたものであり、通常時の使用を前提とするものではないと考えられる。また、長期に渡って避難する際に必要となると考えられる電力源については考慮されてない。さらに、水上で浮遊するとき、波の影響で大きく揺れて安定性を欠く事態が想定される。
【0007】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、通常時においては独立した部屋としての利用が可能であるとともに、津波、洪水などの災害時においては長期間にわたって安心して避難できる浮上式シェルターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明は、浮上式シェルターであって、地面に支持されたシェルター本体と、太陽光発電パネルを有して、シェルター本体に連結される一対の張出屋根と、張出屋根に固定される浮体と、張出屋根にスライド可能に接続するガイド支柱と、を備え、水位が上昇したとき、シェルター本体と張出屋根が一体となってガイド支柱に沿って上昇することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、水位が上昇したとき、一対の張出屋根のそれぞれに固定される浮体は、シェルター本体とともに浮力を受けた状態でガイド部に沿って上昇する。すなわちシェルター本体は、浮体およびガイド部との位置関係を維持した状態でガイド部に沿って上昇する。これによりシェルター本体は安定した、浮遊姿勢を保つことができる。また、この構成によれば、所定の水位上昇においては、シェルター本体が、流されることはなく、水位の低下に伴って当初の設置位置に再度、設置され得る。
【0010】
好ましくは、張出屋根は、シェルター本体に回動可能に連結され、張出屋根の回動変位を抑制するための回動抑制機構を備えることを特徴とする。
【0011】
シェルター本体は、波の影響を受けて姿勢を変化させるが、この構成によれば、シェルター本体に回動可能に連結され、張出屋根の回動変位を抑制するための回動抑制機構を備えるので、シェルター本体は、浮体の変動の影響を直接に、また一義的に受けることはない。これにより、シェルター本体の水中姿勢の変動は抑制される。
【0012】
好ましくは、回動抑制機構は、バネと、ダンパーと、を有し、バネと、ダンパーは力学的に並列接続した状態でシェルター本体と張出屋根に接続することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、バネと、ダンパーは力学的に並列接続した状態でシェルター本体と張出屋根に接続するので、シェルター本体は減衰力を伴った状態で浮体に弾性支持された状態となる。これにより、シェルター本体は、波の影響による浮遊姿勢の変化をさらに抑制できる。
【0014】
好ましくは、張出屋根は、ガイド支柱の一部を内挿した状態で、ガイド支柱にスライド可能に接続するスライドリングを有し、スライドリングは張出屋根の先端部に対向して設けられることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、張出屋根は、ガイド支柱の一部を内挿した状態で、ガイド支柱にスライド可能に接続するスライドリングを有し、スライドリングは張出屋根の先端部に対向して設けられるので、シェルター本体は水流によって流されることなく安定した浮遊姿勢を保った状態で、水位の上昇に伴って上昇する。
【0016】
好ましくは、シェルター本体に設けられた避難空間に、太陽光発電パネルで発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナーと、直流電力を蓄電するための蓄電池が設置されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、パワーコンディショナーと蓄電池が避難空間に設置されているので、水位が上昇した状態でも避難空間に電力を供給できる。さらに、荒天で、太陽光発電パネルの発電が十分に行われない場合も、蓄電地によっての電力供給が可能となる。
【0018】
C6
好ましくは、浮体は、張出屋根の先端部に固定された状態で、台座を介して地面に支持されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、浮体は、張出屋根の先端部に固定された状態で、台座を介して地面に支持されるので、張出屋根の一方の端部はシェルター本体を介して地面に支持され、他方の端部は浮体および台座を介して地面に支持される。これにより、張出屋根の耐風荷重性能が向上するととともに、耐風安定性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)本実施形態における浮上式シェルターの概略正面図である。(b)同、概略平面図である。
図2】同、部分正面断面図である。
図3】同、部分平面断面図である。
図4】(a)浮上式シェルターがガイド支柱に沿って浮上する状態を説明する正面図である。 (b)同、ガイド支柱を離れて水上に浮遊する状態を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1~3を参照して本発明の浮上式シェルターの実施形態を詳述する。
【0022】
図1(a)、(b)に示す通り、浮上式シェルター1は、洪水等で周囲の水位が上昇したとき、水位の上昇に伴い浮上できるシェルターであり、シェルター本体10、一対の張出屋根20、20、ガイド部30、浮体40、回動抑制機構50を有している。シェルター本体10は内部に避難できる避難空間10aが設けられており、地面110に載置されている。一対の張出屋根20、20は第1方向D1に延びており、シェルター本体10と回動可能に連結している。また、ガイド部30のガイド支柱31とスライド可能に接続している。浮体40は、張出屋根20の端部に取付けられており、台座45を介して地面110に設置されている。回動抑制機構50は、シェルター本体10と張出屋根20の双方に接続している。
【0023】
シェルター本体10は、内部に災害時に避難するための避難空間10aが設けられている。避難空間10aにはパワーコンディショナー(図示略)、および蓄電池(図示略)が設置されている。パワーコンディショナーは太陽光発電パネル22で発電された直流電力を交流電力に変換するためのものであり、蓄電池は太陽光発電パネル22で発電された直流電力を貯蔵するためのものである。
【0024】
避難空間10aは底板11、側壁12、天井13で画定される閉ざされた空間であり、シェルター本体10が単体で水上に浮上できる容積を備えている。底板11、側壁12は、水位が上昇したときに、漂流物が衝突しても破損しない強度を確保することが好ましい。また、側壁12の外形寸法は、第1方向D1の長さを第2方向D2の長さよりも長くすることが好ましい。なお、第1方向D1は、一対の張出屋根20、20が延びる方向であり、第2方向D2は、第1方向D1と直交する方向である。
【0025】
側壁12に扉14が設けられて、天井13にハッチ15が装着されるとともに、天井太陽光発電パネル16(以後、天井発電パネル16と記す。)が取付けられている。また扉14は外開きタイプであり、水密性能を高めるために外周部に環状にパッキンが装着されている。扉14を外開きタイプとすることで、水圧によって側壁12と扉14の密着度が高まり、水密性能の向上をより一層図ることができる。
【0026】
天井13に装着された天井発電パネル16は、固定金具を介して天井13に装着されている。また、天井発電パネル16の中央部に開口部16aが設けられている。開口部16aは、ハッチ15の開放を阻害しないために設けられている。
【0027】
天井13に装着されたハッチ15は外開きタイプであって、緊急時に脱出するために用いることができる。例えば、洪水が終息したとき、漂流物が、扉14の前方に漂着した場合は、扉14の開放が困難となる事態が想定される。このような場合、避難空間10aから扉14を経由しての脱出は困難となる。一方でハッチ15は洪水時において、常時、水面上に位置していることから、漂流物の漂着によって、開放が阻害されることはない。 したがって、避難空間10aからハッチ15を経由しての脱出は可能となる。このように、扉14の開放が困難となった場合でも、ハッチ15からの脱出は可能となる。
【0028】
ハッチ15は、太陽の光を透過できる透明な素材を用いることが好ましい。これにより、避難したときにハッチ15から外部の状況を確認できる。また、避難空間10aに採光することで、被災時のみならず通常時に使用することも容易となる。
【0029】
図2、3に示す通り、張出屋根20は、張出屋根フレーム21(以後、張出フレーム21と記す。)に太陽光発電パネル22(以後、発電パネル22と記す。)が装着された構造である。
【0030】
張出フレーム21は、4本の縦桁23と5本の横桁24が相互に固定される構造である。縦桁23は第1方向D1に延びる金属製の角筒であり、横桁24は、第1方向D1と直交する方向となる第2方向D2に延びる金属製の角筒である。縦桁23と横桁24を相互に固定することで、張出フレーム21を剛性の高い強固なものとすることができる。本実施形態では、縦桁23の本数を4本、横桁24の本数を5本としているが、縦桁23、および横桁24の本数は複数本であればよい。横桁24の上端部に発電パネル22が固定金具(図示略)を介して装着されている。
【0031】
張出屋根20は、シェルター本体10に4個の丁番25を介して回動可能に接続している。4個の丁番25の一方はシェルター本体10の天井13に固定されている。また、他方は、4本の縦桁23のそれぞれの端部に固定されている。丁番25は、所定の回動角度で回動が抑制される構造であることが好ましい。これにより、回動抑制機構50は所定の負荷の範囲で変位することができる。
【0032】
回動抑制機構50は、張出屋根20の回動変位、および回動振動を抑制するためのものであり、一方の端部は第1連結部51を介してシェルター本体10に、また他方の端部は第2連結部52を介して縦桁23に回動可能に接続している。第1連結部51、第2連結部52は、回動抑制機構50の変形に伴う力を効率よく支持するためのものである。
【0033】
ガイド部30は、スライドリング32とガイド支柱31を有している。スライドリング32は、張出フレーム21の外端の隅部に取付けられている円筒であり、ガイド支柱31を内挿している。ガイド支柱31は、一端が地面110に接続する上下方向に延びる円筒である。これにより、水位が上昇したとき、張出屋根20の第1方向D1、第2方向D2の移動を拘束した状態で、上下方向に移動させることができる。この構成では、スライドリング32は、張出屋根20の先端部に対向して設けられることになる。
【0034】
張出屋根20の端部に、浮体40が取付けられている。浮体40は2段に積まれた2個のフロート41が第2方向D2に沿って2列並べられている。それぞれの2段に積まれた2個のフロート41は取付金具42を介して縦桁23に取り付けられている。具体的には、取付金具42の上端部が、溶接等によって4個の縦桁23のそれぞれに固定されている。
【0035】
フロート41は俵形状の外形であり、発泡スチロール製のコア材41aと、コア材41aを覆うカバー材41bを有している。カバー材41bは耐久性に優れた素材、例えばテント生地等に用いるポリエステル製の生地であることが好ましい。カバー材41bで、コア材41aを覆うことで、コア材41aの耐久性を確保できる。具体的には、漂流物の衝突によるコア材41aの破損を防ぐことができるとともに、紫外線によるコア材41aの劣化を抑えることができる。
【0036】
フロート41は台座45を介して地面110に支持されている。台座45はコンクリート製であり、図2に示す通り、俵型のフロート41の形状に対応する凹部45aを有している。凹部45aにフロート41の一部が面接触することでフロート41は安定した状態で台座45に支持される。また、台座45に空気バネを取り付けてもよい。フロート41を、空気バネを介して支持することで、強風時の張出屋根20のより一層の耐風安定性を確保できる。
【0037】
回動抑制機構50は、バネ53とダンパー54が力学的に並列に配置されている。具体的には、ダンパー54は、ピストン部54aとシリンダー部54bを有しており、ピストン部54aの端部は第2連結部52に接続し、シリンダー部54bの端部は第1連結部51に接続している。バネ53は、ピストン部54aの一部と、シリンダー部54bの一部を内挿した状態で、一方の端部は、シリンダー接続部55を介してシリンダー部54bに接続し、他方の端部は、ピストン接続部56を介してピストン部54aに接続している。
【0038】
力学的に並列して配置されているバネ53とダンパー54が協働して張出屋根20の回動変位、および回動振動を抑制する。具体的には、張出屋根20が回動したときバネ53に大きく速い力が加わる。その反力で張出屋根20は反対方向に大きく回動しようとする。これが繰り返されることで、バネ53は振動することとなる。バネ53が素早く振動しようとする事象を、ダンパー54によってゆっくりした動作へと変換することで張出屋根20の回動変位、および回動振動を抑制できる。すなわち、ダンパー54がゆっくりと動き、衝撃を吸収する性質があることを活かし、バネ53が吸収した衝撃エネルギーをダンパー54によって減衰する(運動エネルギーを熱エネルギーに変換する)ことで、バネ53の振動を抑える役割を果たしている。バネ53のバネ定数、ダンパー54の減衰定数は、張出屋根20の重量、波力などを勘案して適宜定める。
【0039】
図1図4(a)、(b)を参照して浮上式シェルター1の挙動について説明する。
【0040】
通常時においては、図1に示す通りシェルター本体10は地面110に載置されるとともに、浮体40は台座45を介して地面110に載置されている。このとき、バネ53は引張力が生じた状態となっている。すなわち、バネ53の引張力によって浮体40は地面110に押し付けられる状態となっている。浮体40に地面110方向に向かう力を作用させておくことで、強風時の張出屋根20の安定を図ることができる。
【0041】
避難空間10aには、パワーコンディショナー、蓄電池が配置されている。シェルター本体10に取り付けた天井発電パネル16、および張出屋根20に取り付けた発電パネル22によって発電された直流電力をパワーコンディショナーで交流電力に変換することで、天井発電パネル16および発電パネル22で発電された電力を売電することができる。また、余剰電力を蓄電池で蓄電することで、電力の安定供給を図ることができる。この売電で得られた収入を浮体式シェルターの建設資金に繰り入れることで浮体的シェルターをトータルとして安価に設置することが可能となる。また、張出屋根20の直下は、張出屋根20に覆われていて、降雨の影響を受け難い空間を創出できることから、菜園、テラス、日曜大工などの屋外作業スペースとして多目的に利用できる。
【0042】
洪水、津波などで周囲の水位が上昇したとき、図4(a)に示す通り、浮上式シェルター1は浮力を受けてガイド支柱31に沿って浮上する。具体的には、水位の上昇に伴って、地面110に設置されているシェルター本体10が浮力を受けて、シェルター本体10と地面110の設置圧力が減少する。さらに水位が上昇して、水面がフロート41の下面に接した後に、スライドリング32がガイド支柱31に沿って上昇するとともに、張出屋根20とシェルター本体10は一体となってガイド支柱31に沿って上昇する。フロート41の設置高さは、シェルター本体10が浮上する水位の高さとすることが好ましい。より好ましくは、フロート41が受ける浮力を、当初の台座45に作用する力と一致させることである。これにより、浮上式シェルター1は、最初の状態(図1の設置状態)を維持してガイド支柱31に沿って上昇する。
【0043】
水位が低下すると、浮上式シェルター1は、ガイド支柱31に沿って降下して、最初の設置状態に戻る。パワーコンディショナー、蓄電池は避難空間10aに収容されているので、電力を供給できる状態を維持している。この電力については、避難生活に利用できるとともに、災害で被災した人々に供給することができる。すなわち、災害用の緊急電源としての活用が期待できる。
【0044】
図4(a)の状態からさらに水位が上昇すると、図4(b)に示す通り張出屋根20に取り付けられたスライドリング32はガイド支柱31から離脱して、シェルター本体10と張出屋根20は一体となって水面を浮遊する。このとき、張出屋根20の端部に取り付けられる浮体40によって支持された状態となり、さらに回動抑制機構50の働きで、波浪によるシェルター本体10の揺れは抑制される。また、避難空間10aに、十分な電力の供給が可能となることから快適な避難生活が維持できる。
【0045】
また、ハッチ15を開放して天井13の上に脱出し、合図を送ることで、救助隊に救助を求める意思を伝えることができる。
【0046】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、本実施形態では、4本のガイド支柱31が、張出屋根20避難の四隅近傍に設置されていたが、少なくとも2本のガイド支柱31がそれぞれの張出屋根20の近傍に少なくとも1本ずつ設置されてもよい。また、浮体40は張出屋根20の中央部に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る浮上式シェルターは、大容量の太陽光発電パネルを搭載できるので、売電によって得られた代価を浮上式シェルターの設置費用、管理費用に充当することで、シェルターのライフサイクルコストを大幅に削減できる。また、災害終息後の避難生活においても、太陽光発電パネルで発電された電力を被災された方々に供給できることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0048】
1 :浮上式シェルター
10 :シェルター本体
10a :避難空間
20 :張出屋根
22 :発電パネル(太陽光発電パネル)
30 :ガイド部
31 :ガイド支柱
32 :スライドリング
40 :浮体
45 :台座
50 :回動抑制機構
53 :バネ
54 :ダンパー
【要約】
【課題】通常時においては独立した部屋としての利用が可能であるとともに、津波、洪水などの災害時は長期間にわたって安心して避難できる浮上式シェルターを提供する。
【解決手段】浮上式シェルター1は、洪水等で周囲の水位が上昇した時、水位の上昇に伴い浮上できるシェルターであり、シェルター本体10、張出屋根20、ガイド部30、浮体40、回動抑制機構50を有する。シェルター本体10は内部に避難空間10aが設けられており、地面110に載置されている。一対の張出屋根20は第1方向D1に延びており、シェルター本体10と回動可能に連結している。また、ガイド部30のガイド支柱31とスライド可能に接続している。浮体40は、張出屋根20の端部に取付けられており、台座を介して地面110に設置されている。回動抑制機構50は、シェルター本体10と張出屋根20の双方に接続して、張出屋根20の回動変位、および回動振動を抑制する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4