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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】洗浄剤用分散剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 216/18 20060101AFI20220824BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20220824BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20220824BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C08F216/18
C08F220/06
C08F220/12
C11D7/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017124307
(22)【出願日】2017-06-26
(65)【公開番号】P2019006914
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹知 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰弘
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-209134(JP,A)
【文献】特開2019-006913(JP,A)
【文献】特開2010-285556(JP,A)
【文献】特開2012-132007(JP,A)
【文献】特開2007-231260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00-246/00
C08F290/00-290/14
C11D1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性基含有共重合体を含む洗浄剤用分散剤であって、
該分散剤は、下記式(1);
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。AOは、同一若しくは異なって、炭素数2~8のアルキレンオキシドに由来する基を表す。Xは、AOで表される単位の平均繰り返し数を表し、1~200の数である。Rは、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。)で表されるエーテル結合含有単量体由来の構造単位(A)と下記式(2);
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、炭素数1~20のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。)で表されるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位(B)とを有する疎水性基含有共重合体であって、
該共重合体は、共重合体における構造単位(A)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して50~80質量%であり、
構造単位(B)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して5~35質量%であり、
カルボン酸系単量体由来の構造単位(C)の割合が全単量体由来の構造単位100質量%に対して15~29質量%であり、
重量平均分子量が2000~46000である疎水性基含有共重合体を含むことを特徴とする洗浄剤用分散剤。
【請求項2】
前記疎水性基含有共重合体は、カルボン酸系単量体由来の構造単位(C)の割合が全単量体由来の構造単位100質量%に対して15~25質量%であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄剤用分散剤。
【請求項3】
前記カルボン酸系単量体は、(メタ)アクリル酸系単量体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄剤用分散剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤用分散剤を含むことを特徴とする洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤用分散剤に関する。より詳しくは、洗浄剤の成分として好適に用いることができる洗浄剤用分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、界面活性剤を主成分とする洗浄剤は、衣服用、食器用等の様々な種類のものが開発されており、洗浄力等の特性を高めるための成分の研究開発が活発に行われている。
例えば、特許文献1には、アクリル酸系単量体由来の構造単位とオキシアルキレン基を有する不飽和単量体由来の構造単位と(メタ)アクリル酸アルキル系単量体由来の構造単位とを有する(メタ)アクリル酸系共重合体を洗剤組成物の材料として使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-231260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗浄剤が対象とする汚れには親水性の汚れや、油や疎水性微粒子等の疎水性汚れがあるが、洗浄剤は水で洗うだけでは落ちない油汚れ等の疎水性汚れの洗浄力に優れることが重要である。そのために油汚れ等の疎水性汚れの分散性が高い洗浄剤用分散剤が求められており、洗浄剤の洗浄力を更に高めるために、更に油汚れ等の疎水性汚れの分散性に優れた洗浄剤用分散剤の開発が求められている。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、油汚れ等の疎水性汚れの分散性に優れた洗浄剤用分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、油汚れ等の疎水性汚れの分散性に優れた洗浄剤用分散剤について種々検討したところ、所定の繰り返し数のオキシアルキレン基を有するエーテル結合含有単量体由来の構造単位とアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位とを必須とし、該アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位の割合とカルボン酸系単量体由来の構造単位の割合とが所定の割合である疎水性基含有共重合体を分散剤の成分として用いることで、油汚れ等の疎水性汚れの分散性に優れた洗浄剤用分散剤が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、疎水性基含有共重合体を含む洗浄剤用分散剤であって、
該分散剤は、下記式(1);
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。AOは、同一若しくは異なって、炭素数2~8のアルキレンオキシドに由来する基を表す。Xは、AOで表される単位の平均繰り返し数を表し、1~200の数である。Rは、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。)で表されるエーテル結合含有単量体由来の構造単位(A)と下記式(2);
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、炭素数1~20のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。)で表されるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位(B)とを有する疎水性基含有共重合体であって、該共重合体は、共重合体における構造単位(B)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して5~50質量%であり、カルボン酸系単量体由来の構造単位(C)の割合が全単量体由来の構造単位100質量%に対して29質量%以下である疎水性基含有共重合体を含むことを特徴とする洗浄剤用分散剤である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0012】
<洗浄剤用分散剤>
本発明の洗浄剤用分散剤が含む疎水性基含有共重合体は、上記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位(B)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して5~50質量%であり、カルボン酸系単量体由来の構造単位(C)の割合が、全単量体由来の構造単位100質量%に対して29質量%以下であることを特徴とする。アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位(B)は疎水性汚れに対する親和性が高く、カルボン酸系単量体由来の構造単位(C)は疎水性汚れを分散させる作用を発揮する。また、もう1つの構造単位(A)は、末端の構造によってこれらいずれの作用も発揮する。上記疎水性基含有共重合体は、このような所定の構造を所定の割合で有する共重合体であることで、疎水性汚れの分散性に優れた効果を発揮することができる。
【0013】
上記疎水性基含有共重合体における上記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位(B)の割合は、全単量体由来の構造単位100質量%に対して5~40質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~35質量%であり、更に好ましくは、6~30質量%である。上記アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位(B)の割合が、このような範囲にあると、疎水性基含有共重合体を溶液重合で製造することが可能である点で好ましい。
【0014】
上記疎水性基含有共重合体におけるカルボン酸系単量体由来の構造単位(C)の割合は、全単量体由来の構造単位100質量%に対して25質量%以下であることが好ましい。このような割合であると、硬度成分による凝集を抑制することができる。より好ましくは、22質量%以下であり、更に好ましくは、20質量%以下である。また、カルボン酸系単量体由来の構造単位(C)を有する場合、その割合は、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上である。
本発明において、上記カルボン酸系単量体由来の構造単位(C)の割合を計算する場合は、対応する酸に換算して計算するものとする。例えば、上記構造単位(C)が、アクリル酸ナトリウム由来の構造単位-CH-CH(COONa)-であれば、対応する酸であるアクリル酸由来の構造単位-CH-CH(COOH)-として、質量割合(質量%)の計算をする。
なお、同様に、単量体成分におけるカルボン酸系単量体の質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸に換算して計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
【0015】
上記疎水性基含有共重合体におけるカルボキシル基は、酸型であっても、塩型であってもよいが、当該疎水性基含有共重合体の全カルボキシル基100モル%に対して、5~90モル%のカルボキシル基が、塩型であることが好ましい。塩型のカルボキシル基の割合としてより好ましくは7~80モル%、更に好ましくは10~70モル%である。後述する製造方法において、重合反応中若しくは重合反応後に中和工程を行うことにより、又は、カルボキシル基の一部が塩型であるカルボン酸系単量体を原料として用いることにより、塩型のカルボキシル基の割合を上記好ましい範囲とすることができる。
【0016】
上記疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合は、全単量体由来の構造単位100質量%に対して25~95質量%であることが好ましい。構造単位(A)において、Rが水素原子である場合、構造単位(A)は親水性の構造となって疎水性汚れを分散させる作用を発揮し、Rが炭素数1~20の疎水性有機基である場合には疎水性汚れに対する親和性が高くなり、疎水性汚れとのなじみが良くなる。このように、構造単位(A)は末端の構造によって作用が異なるが、いずれの場合においても、構造単位(A)をこのような割合で有することで、上記疎水性基含有共重合体が、疎水性汚れの分散性により優れたものとなる。
上記疎水性基含有共重合体における構造単位(A)の割合は、より好ましくは、全単量体由来の構造単位100質量%に対して40~90質量%であり、更に好ましくは、50~88質量%である。
【0017】
(エーテル結合含有単量体)
上記疎水性基含有共重合体は、上記式(1)で表されるエーテル結合含有単量体(以下、単量体(a)ともいう)由来の構造単位(A)を有する。本発明において、構造単位(A)は、1種が単独で存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在していてもよい。また、構造単位(A)は、上記式(1)において、ビニル基の二重結合が単結合になった(-CH-C(R)(R-O-(AO)x-R)-)形態となる。
【0018】
上記式(1)のRが水素原子である場合、疎水性汚れの分散に効果的である。
上記式(1)のRが炭素数1~20の炭化水素基である場合、疎水性の相互作用により疎水性汚れとのなじみが良くなる。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基 、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、上記疎水性有機基の炭素数としては、2~18が好ましく、より好ましくは3~12であり、更に好ましくは4~8である。上記炭素数が4以上であれば疎水性をより充分に発揮することができ、8以下であれば、重合性をより充分に向上させることができる。
【0019】
上記式(1)において、AOは、同一若しくは異なって、炭素数2~8のアルキレンオキシドに由来する基を表わす。この際、炭素数2~8のアルキレンオキシドとしては、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、及び2-ブテンオキシド等が好ましく挙げられる。より好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、さらにより好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドであり、最も好ましくはエチレンオキシドである。これらのオキシアルキレン基は、単独で存在していても若しくは2種以上の混合物の形態で存在していてもよく、また、2種以上の混合物の形態の場合には、各オキシアルキレン基の結合順序に特に制限はない。
【0020】
上記式(1)におけるXは、当該炭素数2~8のアルキレンオキシドに由来する基であるAOの平均繰り返し数(平均付加モル数)を表し、1~200の数である。Xが1~200の場合、エーテル結合含有単量体は、親水性をより向上させることができるため、水等の親水性溶媒を用いても共重合しやすいという特性を有する。
としては、5~100であることが好ましく、8~50であることが最も好ましい。なお、上記式(1)において、Xが2以上である場合には、1つの構造単位(b)中に存在するAOは、同一であってもあるいは異なる種類からなるものであってもよい。
上記疎水性基含有共重合体は、親水性と疎水性とのバランスを良好なものとすることにより、疎水性汚れの分散性能をより充分に発揮することができるため、共重合体における構造単位(B)や(C)の割合等に応じてXの値を調節することが好ましい。
【0021】
上記式(1)におけるRは、水素原子又はCH基であり、好ましくはCH基である。
上記式(1)におけるRは、CH基、CHCH基又は直接結合であり、好ましくはCHCH基である。
【0022】
上記単量体(a)としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール及びイソプレノール等の不飽和二重結合を有するアルコールにエチレンオキシドを付加させた付加物や、更にその付加物に炭素数1~20のハロゲン化アルキルを反応させた化合物等が挙げられる。
【0023】
(アルキル(メタ)アクリレート)
上記疎水性基含有共重合体は、上記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(以下、単量体(b)ともいう)由来の構造単位(B)を有する。本発明において、構造単位(B)は、1種が単独で存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在していてもよい。また、構造単位(B)は、上記式(2)において、ビニル基の二重結合が単結合になった(-CH-C(R)(COOR)-)形態となる。
【0024】
は、炭素数1~20のアルキル基又はシクロアルキル基であるが、Rの炭素数がある程度大きいほうが得られる重合体の安定性が高くなる。一方でRの炭素数が大きすぎると、重合性が著しく低下するため、炭素数2~12のものが好ましい。より好ましくは、炭素数4~8のものである。
なお、Rがシクロアルキル基である場合、炭素数は3~20である。
【0025】
上記炭素数1~20のアルキル基としては、所望の効果を発揮できるものであれば特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基等の直鎖状又は分岐状の基が挙げられる。
上記炭素原子3~20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状の基が挙げられる。
これらのうち、Rは、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基であることが好ましく、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基がより好ましい。
【0026】
ゆえに、本発明で好ましく使用されるアルキル(メタ)アクリレートとしては、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体などが挙げられ、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、上述したように、本発明では、アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもいずれでもよい。
【0027】
(カルボン酸系単量体)
上記カルボン酸系単量体(以下、単量体(c)ともいう)は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシ基及び/又はカルボン酸塩基とを含む単量体である。
構造単位(C)は、疎水性基含有共重合体の水溶性を良好にし、また疎水性汚れの分散性を向上させる作用を有する。
【0028】
ここで、カルボキシ基及び/又はカルボン酸塩基を含むとは、-COOZ(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される基を、1分子中に1個以上有することを意味する。金属原子としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アミン基としては、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が挙げられる。上記カルボン酸塩基としては、これらの中でも、より好ましくはアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、更に好ましくはナトリウム塩である。
【0029】
上記カルボン酸系単量体としては、1分子内に不飽和二重結合と1つのカルボキシ基(又はカルボン酸塩基)とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体や、1分子内に不飽和二重結合と2つのカルボキシ基(又はカルボン酸塩基)とを含む不飽和ジカルボン酸系単量体が好適である。
【0030】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-ヒドロキシ(メタ)アクリル酸、α-ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸及びその誘導体等の不飽和カルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体として具体的には、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩、及び、これらの無水物等が挙げられる。また、これら不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2~4のグリコールとのハーフアミド等であってもよい。
【0031】
上記カルボン酸系単量体の中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩が好適である。中でも、(メタ)アクリル酸系単量体である(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
すなわち、カルボン酸系単量体が(メタ)アクリル酸系単量体であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
【0032】
(その他の単量体)
上記疎水性基含有共重合体は、その他の単量体(上記エーテル結合含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート及びカルボン酸系単量体以外の単量体)に由来する構造単位(D)を有していてもよい。
この際、構造単位(D)が疎水性基含有共重合体中に存在する割合は、特に制限されないが、必須の構造単位である構造単位(A)、(B)及び(C)の効果を阻害しないことを考慮すると、構造単位(A)、(B)及び(C)の合計組成100質量%に対して、0質量%を超えて10質量%以下、より好ましくは0質量%を超えて7質量%以下、最も好ましくは0質量%を超えて5質量%以下の割合であることが好ましい。このような範囲であれば、必須の構造単位である構造単位(A)、(B)及び(C)の効果、即ち、疎水性汚れの分散能力が維持できる上、構造単位(D)による効果、例えば、キレート能、粘度調整能がさらに付与されるため好ましい。なお、構造単位(D)の割合が、10質量%を超えると、共重合体の調製においてゲル化や架橋反応が起こり、共重合体の水溶性が低下したり、色調の悪化や悪臭を発するおそれがある。
【0033】
上記その他の単量体(以下、単量体(d)ともいう)は、上記単量体(a)、(b)及び(c)と共重合可能なものであれば特に限定されず、所望の効果によって適宜選択可能である。
上記その他の単量体(d)としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体、ならびにビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸系単量体及びこれらの塩;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルオキサゾリドン等のN-ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、3-アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、3-アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを1~200モル付加させた化合物(3-アリルオキシ-1,2-ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)、(メタ)アリルアルコール等のアリルエーテル系単量体;イソプレノール等のイソプレン系単量体等が挙げられる。
その他の単量体(d)は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0034】
上記疎水性基含有共重合体は、上記構造単位(A)、(B)及び(C)、ならびに必要であれば構造単位(D)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構造単位は、ブロック状あるいはランダム状のいずれで存在していてもよい。また、上記疎水性基含有共重合体の重量平均分子量は、適宜設定できるものであり、特に限定されない。具体的には、疎水性基含有共重合体の重量平均分子量は、2,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000~100,000、最も好ましくは4,000~60,000である。2,000未満であると、汚れに対する分散性が低下し、逆に、200,000を超えると洗浄対象物への汚れの付着を促進してしまうおそれがある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による測定値であり、具体的な測定方法は実施例に記載される方法に従って算出される。
【0035】
本発明の洗浄剤用分散剤は、上記疎水性基含有共重合体の1種を含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、上記疎水性基含有共重合体を含む限り、その他の成分を含んでいてもよい。
【0036】
<疎水性基含有共重合体の製造方法>
上記疎水性基含有共重合体の製造方法は、特に制限されず、公知の重合方法を同様にしてあるいは修飾した方法が使用できる。例えば、上記疎水性基含有共重合体を製造する方法としては、エーテル結合含有単量体(a)、アルキル(メタ)アクリレート(b)、及び必要に応じてカルボン酸系単量体(c)を含む単量体成分を共重合することにより製造することができる。また、単量体成分を共重合する際には、必要に応じ、上記その他の単量体(d)を更に共重合させてもよい。
上記単量体成分における単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)及びその他の単量体(d)の含有割合は、上述した、上記疎水性基含有共重合体におけるこれらの単量体由来の構造単位の割合と同様である。
【0037】
このような製造方法においては、重合開始剤を用いて単量体成分を共重合すればよい。
また本発明において、上記単量体成分の共重合は、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いる、および/または連鎖移動剤の存在下で行なうことが好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤の存在下で行なうことがより好ましい。この際、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制できるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。また、連鎖移動剤を使用すると、製造される疎水性基含有共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制することができるという利点がある。特に連鎖移動剤として亜硫酸や亜硫酸塩を使用すると、以下に詳述するが、得られる疎水性基含有共重合体の末端に定量的にスルホン酸基を導入することができ、耐ゲル性を向上することができる。
【0038】
上記態様で使用される溶媒としては、使用する溶媒全量に対して50質量%の割合で水を含むものであれば特に制限されない。重合に使用される単量体の溶媒への溶解性向上という観点から、必要に応じて、有機溶媒を添加してもよい。この場合においても、全混合溶媒中の水の含量は50質量%以上である。この際使用できる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で試用されてもよい。本発明では、水の量は、使用する溶媒全量に対して、好ましくは60質量%以上であり、最も好ましくは水単独(即ち、100質量%)である。
【0039】
上記連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、公知の連鎖移動剤が使用できる。具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、2-メルカプトエタンスルホン酸、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、本発明に係る共重合反応においては、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることが好適である。これにより、得られる疎水性基含有共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができることとなり、耐ゲル性を向上することが可能となる。なお、スルホン酸基を定量的に導入できるということは、亜硫酸塩が連鎖移動剤等として非常に良好に機能していることを示しており、これにより、重合反応系に過剰な連鎖移動剤等を添加する必要がなくなり、共重合体の製造コストの上昇を低減するとともに、製造効率が向上され、しかも不純物を十分に低減することが可能となる。また、重合反応系に亜硫酸塩を加えることによって、得られる共重合体が必要以上に高分子量化することが抑制されることとなる。
【0040】
上記疎水性基含有共重合体の製造方法において、連鎖移動剤の添加量は、単量体成分が良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは全単量体成分1モルに対して、1~20g、より好ましくは2~15gである。
【0041】
上記開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’-アゾビス-4-シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩およびアゾ化合物が好ましい。
これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L-アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。なお、過酸化水素を用いる場合は、L-アスコルビン酸(塩)等の促進剤と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0042】
上記開始剤の使用量は、単量体成分の共重合を開始できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、10g以下、より好ましくは1~5gであることが好ましい。
【0043】
上記疎水性基含有共重合体の製造方法においては、反応促進剤として重金属イオンを用いてもよい。
反応促進剤として使用される重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
【0044】
上記重金属イオンの含有量は、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して0.1~10ppmであることが好ましい。
【0045】
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、全単量体成分1モルに対して、2~20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、上記疎水性基含有共重合体を効率よく生産することができ、また、(メタ)アクリル酸系共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4~18gであり、更に好ましくは、5~16gである。
【0046】
上記重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、単量体成分を構成する各単量体、溶媒等とあらかじめ混同しておいてもよい。
【0047】
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体のうち(例えば、単量体(a))の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法等が好適である。
【0048】
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、上述したように、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒または水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
【0049】
上記溶媒の使用量としては、単量体成分100質量%に対して40~200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。
【0050】
上記共重合方法において、共重合温度等の共重合条件としては、用いられる共重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、共重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上であり、特に好ましくは、60℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。特に、亜硫酸(塩)を用いる場合には、共重合温度は、通常、60℃~95℃、好ましくは70℃~95℃、さらに好ましくは、80℃~95℃である。この際、60℃未満では、亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。逆に、95℃を超えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
【0051】
上記共重合時間としては、30~360分であることが好ましい。より好ましくは、60~330分であり、更に好ましくは、120~240分である。
【0052】
上記共重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0053】
共重合を行う際の中和率は、開始剤によって適宜変更できる。例えば、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、上記単量体が塩を形成し得るものである場合、単量体の中和率を0~60モル%として単量体成分の共重合を行うことが好ましい。単量体の中和率は、単量体の全モル数を100モル%としたときに、塩を形成している単量体のモル%で表されることになる。単量体の中和率が60モル%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる共重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50モル%以下であり、更に好ましくは、40モル%以下、特に好ましくは、30モル%以下であり、より特に好ましくは、20モル%以下であり、最も好ましくは、10モル%以下である。
【0054】
<洗浄剤>
本発明の洗浄剤用分散剤は、疎水性汚れの分散性に優れるため、洗浄剤の成分(ビルダー)として好適に用いることができる。
このような本発明の洗浄剤用分散剤を含むことを特徴とする洗浄剤もまた、本発明の1つである。
【0055】
洗浄剤には通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。
本発明の洗浄剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上の界面活性剤を含むことができる。
また、添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン-チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含むことができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明の洗浄剤用分散剤は、上述の構成よりなり、油汚れや疎水性微粒子汚れ等の疎水性汚れの分散性に優れることから、洗浄剤の成分(洗剤ビルダー)として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0058】
本発明の疎水性基含有共重合体の重量平均分子量(Mw)、油汚れ分散能を求めるのに用いるライムソープ分散能及び、疎水性微粒子汚れ分散能を求めるのに用いるカーボンブラック分散能は、以下に示す方法により測定した。
【0059】
<重量平均分子量の測定条件>
疎水性機含有共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、共にGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:東ソー社製 HLC-8320
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF-310-HQ,GF-710-HQ,GF-1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
検量線:ジーエルサイエンス株式会社製 POLYETHYLENE GLYCOL STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
【0060】
<ライムソープ分散性試験>
油汚れ分散能として、以下の方法により、ライムソープ分散能の測定を行った。
まずライムソープ分散能の測定においては、硬水の調製を行った。塩化カルシウム2水和物8.20gに純水を加えて100gとし、硬水を調製した。
次に固形分換算で1%の重合体水溶液0.3g、1%オレイン酸ナトリウム水溶液1.5g、純水14.1gを20ミリリットルサンプル管に入れて撹拌した。そこに、調製した硬水0.1gを加えて撹拌し、試験液とした。その後サンプル管を暗所に10分間静置した。10分間後、試験液をUV分光器(島津製作所、UV-1200;1cmセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この値が小さいほど、ライムソープ分散性が高いことを示す。
【0061】
<カーボンブラック(疎水性微粒子)分散性試験>
疎水性微粒子分散能として、以下の方法により、カーボンブラック分散能の測定を行った。
まずカーボンブラック分散能の測定においては、分散液の調製を行った。グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、水酸化ナトリウム2.4gに純水を加え、600gとした。(これをバッファーAとする。)バッファーA 60gに塩化カルシウム2水和物0.163gを加え、さらに純水を加え、1000gとした。(これをバッファーBとする。)固形分換算で0.1%重合体水溶液4gに、バッファーBを36g加え、撹拌し分散液とした。
次に、試験管(直径16mm、高さ180mm)にカーボンブラック粉末0.03gを入れた後、上記の分散液30gを加え、密閉する。試験管を振り、カーボンブラックを均一に分散させた後、試験管を暗所に20時間静置した。20時間後、上澄みを5mL取り、それを10倍希釈した後、UV分光器(島津製作所、UV-1200;1cmセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この値が大きいほど、カーボンブラック分散能が高いことを示す。
【0062】
(疎水性基含有共重合体の合成)
合成例1
環流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水225.0g、イソプロピルアルコール225.0g、イソプレノールのエチレンオキシド50モル付加物の80%濃度水溶液(以下、80%IPN50と略す。)425.6g、および70%パラトルエンスルホン酸1水和物(以下、70%PTSと略す。)1.97gを仕込み、撹拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、85℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す。)66.9g、100%ブチルアクリレート(以下、100%BAと略す。)56.0g、10%2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩水溶液(以下、10%V-50と略す。)67.0gをそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび100%BAは180分間、10%V-50は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
10%V-50の滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHと略す。)12.4gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。このようにして、固形分濃度43%、重量平均分子量11,000の重合体1を得た。
【0063】
合成例2
環流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水375.0g、80%IPN50 472.9g、70%PTS 2.19gを仕込み、撹拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA 74.4g、100%BA 62.2g、10%V-50 74.5g、50%イソプロピルアルコール30.0gをそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AA、100%BAおよび50%イソプロピルアルコールは180分間、10%V-50は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
10%V-50の滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%NaOH 13.8gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。このようにして、固形分濃度46%、重量平均分子量46,000の重合体2を得た。
【0064】
合成例3
環流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水375.0g、80%IPN50 472.9g、70%PTS 2.19gを仕込み、撹拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA 74.4g、100%BA 62.2g、10%V-50 74.5gをそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび100%BAは180分間、10%V-50は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
10%V-50の滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%NaOH 13.8gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。このようにして、固形分濃度48%、重量平均分子量70,000の重合体3を得た。
【0065】
合成例4
環流冷却器、撹拌機および窒素導入管を備えたガラス製セパラブルフラスコに、80%IPN50 233.0g、70%PTS 1.2g、0.1%モール塩1.8gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して、そこに35%過酸化水素水溶液1.1gを加え、重合反応系とした。次に、重合反応系中に、100%AA 29.4gと100%BA 30.6gの混合溶液、L-アスコルビン酸(以下、L-ASと略す。)0.1gをイオン交換水14.2gで希釈した水溶液、3-メルカプトプロピオン酸(以下、MPAと略す。)2.9gをイオン交換水9.8gで希釈した水溶液をそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%AAと100%BAの混合溶液は150分間、L-AS水溶液は270分間、MPA水溶液は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
L-AS水溶液滴下終了後、さらに60分間、上記反応液を60℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、30%水酸化ナトリウム水溶液(以下、30%NaOHと略す。)5.9gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。また濃度調製用の希釈水90.6gを加えた。このようにして、固形分濃度58%、重量平均分子量17,000の重合体4を得た。
【0066】
合成例5
環流冷却器、撹拌機および窒素導入管を備えたガラス製セパラブルフラスコに、80%IPN50 454.7g、70%PTS 2.2g、0.1%モール塩3.6gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して、そこに35%過酸化水素水溶液1.5gを加え、重合反応系とした。次に、重合反応系中に、100%AA 52.3gと100%2-エチルヘキシルアクリレート(以下、100%2EHAと略す。)22.7gの混合溶液、L-AS 0.2gをイオン交換水17.4gで希釈した水溶液、MPA 5.0gをイオン交換水17.8gで希釈した水溶液をそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%AAと100%2EHAの混合溶液は150分間、L-AS水溶液は270分間、MPA水溶液は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
L-AS水溶液滴下終了後、さらに60分間、上記反応液を60℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、30%NaOH 20.8gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。また濃度調製用の希釈水403.0gを加えた。このようにして、固形分濃度44%、重量平均分子量16,000の重合体5を得た。
【0067】
合成例6
環流冷却器、撹拌機および窒素導入管を備えたガラス製セパラブルフラスコに、80%IPN50 193.5g、70%PTS 1.1g、0.1%モール塩1.5gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して、そこに35%過酸化水素水溶液1.2gを加え、重合反応系とした。次に、重合反応系中に、100%AA 27.4gと100%BA 47.6gの混合溶液、L-AS 0.1gをイオン交換水15.6gで希釈した水溶液、MPA 3.3gをイオン交換水11.1gで希釈した水溶液をそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%AAと100%BAの混合溶液は150分間、L-AS水溶液は270分間、MPA水溶液は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
L-AS水溶液滴下終了後、さらに60分間、上記反応液を60℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、30%NaOH 11.1gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。また濃度調製用の希釈水82.7gを加えた。このようにして、固形分濃度57%、重量平均分子量16,000の重合体6を得た。
【0068】
合成例7
環流冷却器、撹拌機および窒素導入管を備えたガラス製セパラブルフラスコに、80%IPN50 247.7g、70%PTS 1.4g、0.1%モール塩1.9gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して、そこに35%過酸化水素水溶液1.3gを加え、重合反応系とした。次に、重合反応系中に、100%AA 32.5gと100%BA 42.5gの混合溶液、L-AS 0.2gをイオン交換水19.7gで希釈した水溶液、MPA 3.7gをイオン交換水8.6gで希釈した水溶液をそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%AAと100%BAの混合溶液は150分間、L-AS水溶液は270分間、MPA水溶液は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
L-AS水溶液滴下終了後、さらに60分間、上記反応液を60℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、30%NaOH 45.8gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。また濃度調製用の希釈水80.8gを加えた。このようにして、固形分濃度61%、重量平均分子量17,000の重合体7を得た。
【0069】
合成例8
環流冷却器、撹拌機および窒素導入管を備えたガラス製セパラブルフラスコに、80%IPN50 338.8g、70%PTS 1.5g、0.1%モール塩2.7gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して、そこに35%過酸化水素水溶液0.6gを加え、重合反応系とした。次に、重合反応系中に、100%BA 37.0g、L-AS 0.1gをイオン交換水13.4gで希釈した水溶液、MPA 1.6gをイオン交換水9.3gで希釈した水溶液をそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%BAは150分間、L-AS水溶液は270分間、MPA水溶液は210分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
L-AS水溶液滴下終了後、さらに60分間、上記反応液を60℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、30%NaOH 0.6gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。また濃度調製用の希釈水285.6gを加えた。このようにして、固形分濃度53%、重量平均分子量7,000の重合体8を得た。
【0070】
比較合成例1
環流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水430g、モール塩0.03gを入れ、撹拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、90℃に保持された重合反応系中に、80%AA 315.3gと48%NaOH 14.6gの混合溶液、100%イソプレノールのエチレンオキシド10モル付加物(以下、100%IPN10と略す。)227.0g、100%BA 25.2g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと略す。)82.6g、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、35%SBSと略す。)70.8gをそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAと48%NaOHの混合溶液は180分間、100%IPN10および100%BAは170分間、15%NaPSは210分間、35%SBSは175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。
15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%NaOH 247.9gを徐々に滴下し、重合液の中和を行った。このようにして、固形分濃度44%、重量平均分子量14,000の比較重合体1を得た。
【0071】
合成例1~8、比較合成例1で合成した重合体1~8、比較重合体1の組成及び重量平均分子量をまとめたものを表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
(洗浄剤用分散剤の特性評価)
実施例1~8、比較例1
合成例1~8、比較合成例1で合成した重合体1~8、比較重合体1について、上記方法に従ってライムソープ分散性能、及び、カーボンブラック分散性能の評価を行った。その結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明における重合体1~8は、比較重合体1に対して、ライムソープ分散性能、及び、カーボンブラック分散性能のいずれについても有意に優れた性能を有することが確認された。
【0074】
【表2】