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特許7128617監視システムおよび複数の識別符号送信装置を備えるシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】監視システムおよび複数の識別符号送信装置を備えるシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 1/68 20060101AFI20220824BHJP
   G01S 1/72 20060101ALI20220824BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20220824BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20220824BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G01S1/68
G01S1/72
G08B25/00 510C
G08B25/08 A
G08B25/10 C
G08B25/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017194923
(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公開番号】P2019066434
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝田 宏靖
(72)【発明者】
【氏名】山寺 清治
(72)【発明者】
【氏名】平林 康彦
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033082(JP,A)
【文献】特開2016-156799(JP,A)
【文献】特開2008-035363(JP,A)
【文献】特開2008-282261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00- 1/82
G01S 5/00- 5/14
G08B 23/00-31/00
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグと、複数の識別符号送信装置と、を備える監視システムであって、
各前記識別符号送信装置は、
無線部と、
複数の前記識別符号送信装置に割り当てられた複数のスロットのうち、自らに割り当てられたスロットを前記無線部を介した電波通信によって認識する同期処理部と、
超音波を送信する超音波送信部と、を備え、
前記無線部は、
自らを特定する識別符号を含む電波信号を、前記同期処理部によって認識されたスロットで送信し、
前記無線タグは、
前記電波信号を受信する電波受信部と、
前記識別符号を前記電波信号から復号する復号部と、
前記超音波を検出する超音波検出部と、
前記識別符号を前記復号部が復号し、かつ、前記超音波検出部が前記超音波を検出したときに、前記識別符号を保持する符号保持部と、
前記符号保持部によって保持された前記識別符号を送信する符号送信部と、
を備えることを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記超音波送信部は、
前記同期処理部によって認識されたスロットで前記超音波を送信することを特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の監視システムにおいて、
前記無線タグは、
前記無線タグの動きを検出するセンサを備え、
前記符号送信部は、前記センサの検出結果に応じて前記識別符号を送信することを特徴とする監視システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の監視システムにおいて、
前記超音波検出部は、
前記復号部が前記電波信号から前記識別符号を復号したときに、前記超音波を検出することを特徴とする監視システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の監視システムにおいて、
前記復号部は、
前記超音波検出部が前記超音波を検出したときに、前記電波信号から前記識別符号を復号することを特徴とする監視システム。
【請求項6】
電波信号および超音波を無線タグに送信する複数の識別符号送信装置を備えるシステムであって、
各前記識別符号送信装置は、
無線部と、
複数の前記識別符号送信装置に割り当てられた複数のスロットのうち、自らに割り当てられたスロットを前記無線部を介した電波通信によって認識する同期処理部と、
前記超音波を送信する超音波送信部と、を備え、
前記無線部は、
自らを特定する識別符号を含む前記電波信号を、前記同期処理部によって認識されたスロットで送信し、
前記無線タグは、
前記電波信号を受信する電波受信部と、
前記識別符号を前記電波信号から復号する復号部と、
前記超音波を検出する超音波検出部と、
前記識別符号を前記復号部が復号し、かつ、前記超音波検出部が前記超音波を検出したときに、前記識別符号を保持する符号保持部と、
前記符号保持部によって保持された前記識別符号を送信する符号送信部と、を備えることを特徴とするシステム
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記超音波送信部は、
前記同期処理部によって認識されたスロットで前記超音波を送信することを特徴とするシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグおよび識別符号送信装置に関し、特に、識別符号送信装置から送信された識別符号を無線タグが取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
受信機が存在する場所を特定するシステムに関し、研究開発が行われている。このようなシステムには、送信装置を所定の位置に固定しておき、送信装置から送信された電波信号を受信機が受信するものがある。受信機は、電波信号に含まれる識別符号を取得することで送信元の送信装置を特定し、予め記憶された送信装置の位置に基づいて自らの存在場所を特定する。また、受信機が電波信号に含まれていた識別符号を管理装置に送信し、管理装置が予め記憶された送信装置の位置に基づいて受信機の存在場所を特定するシステムもある。
【0003】
このようなシステムを応用したものとして、ユーザが居る部屋を特定する監視システムが考えられている。建造物内の複数の部屋のそれぞれには送信装置が配置される。ユーザが所持する無線タグは、自らが受信した電波信号に含まれていた識別符号を無線LAN等を介して、管理装置としてのホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは識別符号に基づいて送信装置を特定し、予め記憶された送信装置の位置に基づいて無線タグがある部屋、すなわち、ユーザが居る部屋を特定する。
【0004】
以下の特許文献1には、公道上に設置された電波ビーコンから送信される交通制御用の電磁波をIC無線タグが受信し、IC無線タグが電磁波に含まれる位置情報を取得することが記載されている。また、特許文献2には、本願発明に関連する技術として展示物説明システムが記載されている。このシステムでは、展示物の近傍に配置された基地局からビーコンフレームを端末に送信し、端末はビーコンフレームに基づいて基地局の所在を把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-282261号公報
【文献】特開2013-26765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、電波信号は建造物の壁を透過する。したがって、上記のような監視システムでは、ある部屋の送信装置から送信された電波信号が他の部屋に到達することがある。この場合、無線タグは、自らが存在する部屋の送信装置から送信された電波信号のみならず、他の部屋の送信装置から送信された電波信号をも受信してしまう。そのため、自らが位置する部屋の送信装置のみから識別符号を取得することが困難となる場合がある。
【0007】
本発明は、特定の送信装置から識別符号を取得する処理を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無線タグと、複数の識別符号送信装置と、を備える監視システムであって、各前記識別符号送信装置は、無線部と、複数の前記識別符号送信装置に割り当てられた複数のスロットのうち、自らに割り当てられたスロットを前記無線部を介した電波通信によって認識する同期処理部と、超音波を送信する超音波送信部と、を備え、前記無線部は、自らを特定する識別符号を含む電波信号を、前記同期処理部によって認識されたスロットで送信し、前記無線タグは、前記電波信号を受信する電波受信部と、前記識別符号を前記電波信号から復号する復号部と、前記超音波を検出する超音波検出部と、前記識別符号を前記復号部が復号し、かつ、前記超音波検出部が前記超音波を検出したときに、前記識別符号を保持する符号保持部と、前記符号保持部によって保持された前記識別符号を送信する符号送信部と、を備えることを特徴とする。望ましくは、前記超音波送信部は、前記同期処理部によって認識されたスロットで前記超音波を送信する。
【0009】
前記無線タグは、望ましくは、前記無線タグの動きを検出するセンサを備え、前記符号送信部は、前記センサの検出結果に応じて前記識別符号を送信する。
【0010】
望ましくは、前記無線タグにおける前記超音波検出部は、前記復号部が前記電波信号から前記識別符号を復号したときに、超音波を検出する。
【0011】
望ましくは、前記無線タグにおける前記復号部は、前記超音波検出部が前記超音波を検出したときに、前記電波信号から前記識別符号を復号する。
【0012】
本発明は、電波信号および超音波を無線タグに送信する複数の識別符号送信装置を備えるシステムであって、各前記識別符号送信装置は、無線部と、複数の前記識別符号送信装置に割り当てられた複数のスロットのうち、自らに割り当てられたスロットを前記無線部を介した電波通信によって認識する同期処理部と、前記超音波を送信する超音波送信部と、を備え、前記無線部は、自らを特定する識別符号を含む前記電波信号を、前記同期処理部によって認識されたスロットで送信し、前記無線タグは、前記電波信号を受信する電波受信部と、前記識別符号を前記電波信号から復号する復号部と、前記超音波を検出する超音波検出部と、前記識別符号を前記復号部が復号し、かつ、前記超音波検出部が前記超音波を検出したときに、前記識別符号を保持する符号保持部と、前記符号保持部によって保持された前記識別符号を送信する符号送信部と、を備えることを特徴とする。望ましくは、前記超音波送信部は、前記同期処理部によって認識されたスロットで前記超音波を送信する。
【0013】
望ましくは、前記識別符号送信装置における前記電波送信部は、時間帯を区切る複数のスロットのうち、自らに割り当てられたスロットで前記電波信号を送信し、前記超音波送信部は、前記自らに割り当てられたスロットで超音波を送信する。
【0014】
また、本発明の関連技術に係る前記識別符号送信装置は、自らを特定する識別符号が割り当てられた識別符号送信装置において、超音波を送信する超音波送信部と、前記識別符号を含む電波信号を送信する電波送信部と、を備え、前記電波送信部は、時間帯を区切る複数のスロットのうち、前記識別符号送信装置に割り当てられたスロットで前記電波信号を送信し、前記超音波送信部は、前記識別符号送信装置に割り当てられたスロットで超音波を送信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の送信装置から識別符号を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】監視システムの構成を示す図である。
図2】ゲート装置の構成を示す図である。
図3】無線タグの構成を示す図である。
図4】監視システムの構成を示す図である。
図5】ゲート装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には本発明の実施形態に係る監視システムの構成が示されている。監視システムは、ゲート装置(識別符号送信装置)10-1~10-3、無線タグ12、アクセスポイント14、ホスト無線機16およびホストコンピュータ18を備える。ゲート装置10-1~10-3は、それぞれ、部屋20-1~20-3に配置されており、自らに割り当てられた識別符号を含む電波信号を送信すると共に、超音波を送信する。無線タグ12は、自らが位置する部屋のゲート装置から送信された電波信号から識別符号が復号され、かつ、そのゲート装置から送信された超音波を検出したときに、その識別符号を記憶する。無線タグ12の所持者が発病した等の異常を無線タグ12が検出したときは、無線タグ12は、アクセスポイント14およびホスト無線機16を介してホストコンピュータ18に識別符号を含むID信号を送信する。ホストコンピュータ18は、ID信号に含まれる識別符号に基づいてゲート装置およびそのゲート装置が配置されている部屋を特定し、無線タグ12の所持者の居る部屋を特定する。
【0018】
監視システムの動作について具体的に説明する。ゲート装置10-1~10-3は、それぞれ、部屋20-1~20-3に電波信号を送信すると共に超音波を送信する。各ゲート装置が送信する超音波は、送信対象の情報を含んでいなくてもよい。
【0019】
部屋20-1~20-6のそれぞれは、超音波が透過し難いか超音波が透過しないものの、電波が透過する壁および床で囲まれている。すなわち、部屋20-1~20-6の相互間での超音波の伝搬が妨げられている一方で、部屋20-1~20-6の相互間での電波の伝搬は可能である。図1に示されている例では、ゲート装置が配置された部屋20-1~20-3の1つ上の階(フロア)に、それぞれ、部屋20-4~20-6が位置している。部屋20-4~20-6にはゲート装置は配置されていない。
【0020】
ゲート装置10-1~10-3は、それぞれ、部屋20-1~20-3の天井付近に配置される。各ゲート装置が送信する電波信号の周波数の範囲は、例えば30kHz~1MHzである。電波信号の周波数の範囲は、50kHz~200kHzであってもよい。ゲート装置が天井付近に配置された場合、この周波数範囲の電波信号は、その強度によっては、同一フロアの1つの部屋から他の部屋に到達することがない一方で、その直上階の部屋に到達してしまう。すなわち、図1に示されている例では、部屋20-1から部屋20-2、20-3、20-5、および20-6に電波信号は到達しないが、部屋20-1から部屋20-4には電波信号が到達してしまう。また、部屋20-2から部屋20-1、20-3、20-4および20-6に電波信号は到達しないが、部屋20-2から部屋20-5には電波信号が到達してしまう。
【0021】
無線タグ12は、電波信号を受信し電波信号に含まれている識別符号を復号し、かつ、超音波を受信したときは、その識別符号を記憶する。一方、電波信号のみを受信したときは、電波信号から復号した識別符号を記憶しない。これによって、無線タグ12は、その所持者の居場所に応じて部屋20-1~20-3のいずれかに位置する場合には、自らが位置する部屋のゲート装置から送信された電波信号から識別符号を復号し記憶する。そして、無線タグ12が、その所持者の居場所に応じて部屋20-4~20-6のいずれかに位置する場合には、直下階の部屋のゲート装置から送信された電波信号を受信するものの、超音波は受信しない。そのため、無線タグ12は、受信した電波信号から復号した識別符号を記憶しない。
【0022】
無線タグ12は、自らが急激に移動したこと、鉛直方向に対して傾いたこと、所定時間以上に亘って移動しなかったこと等を検出するセンサを備えている。このようなセンサとしては、例えば、加速度センサがある。これによって無線タグ12は、その所持者が転倒したり、急病によって動けなくなったりした等の異常事態を検出する。無線タグ12は、異常事態が検出されると、そのときに記憶していた識別符号を含むID信号をアクセスポイント14に送信する。無線タグ12は、所持者によって操作されるスイッチを有していてもよい。この場合、無線タグ12は、スイッチが操作されたときにID情報をアクセスポイント14に送信する。
【0023】
アクセスポイント14およびホスト無線機16には、例えば、無線LANの端末装置が用いられる。アクセスポイント14は、ID信号をホスト無線機16に無線送信する。ホスト無線機16はID信号を受信し、ID信号をホストコンピュータ18に出力する。なお、アクセスポイント14とホストコンピュータ18との間は有線通信網によって接続されてもよい。
【0024】
無線タグ監視装置としてのホストコンピュータ18は、ID信号に含まれる識別符号に基づいて送信装置を特定し、部屋20-1~20-3のうち無線タグ12が位置する部屋を特定する。ホストコンピュータ18は、識別符号によって特定された部屋を表示する等によって、無線タグ12の所持者に異常事態が発生したことや、無線タグ12の所持者が居る部屋を示す情報を監視システムのユーザに報知する。
【0025】
本実施形態に係る監視システムでは、ゲート装置10-1~10-3は、それぞれ、部屋20-1~20-3に電波信号を送信すると共に、超音波を送信する。各ゲート装置が送信する電波信号は、その周波数および強度によっては、同一フロアの1つの部屋から他の部屋に到達することがない一方で、その直上階の部屋には到達してしまう。無線タグ12は、電波信号を受信して識別符号を復号し、かつ、超音波を受信したときに識別符号を記憶するものの、電波信号のみを受信したときは識別符号を記憶しない。そのため、無線タグ12は、自らが位置する部屋でない部屋のゲート装置から送信された識別符号を記憶しない。
【0026】
仮に無線タグ12を所持するユーザが上階の部屋20-4~20-6のいずれかに居ることによって、直下階の部屋のゲート装置から送信された電波信号を無線タグ12が受信したとしても、無線タグ12は超音波を受信しないため、電波信号から復号した識別符号を記憶しない。これによって、無線タグ12を所持するユーザが部屋20-4~20-6のいずれかに居るにも関わらず、部屋20-1~20-3のいずれかに居るものとホストコンピュータ18が誤った判断をすることが回避される。
【0027】
上記では、各ゲート装置が自らの部屋に電波信号を送信したときに、直上階の部屋に電波信号が到達してしまう状態について説明した。このような状態の他、ゲート装置が部屋の床付近に配置された場合等、各ゲート装置が自らの部屋に電波信号を送信したときに、直下階の部屋に電波信号が到達してしまう状態においても、上述のようにホストコンピュータ18による誤った判断が回避される。
【0028】
図2には、ゲート装置10-jの構成例が示されている。ここでjは正の整数である。ゲート装置10-jは、ゲート装置演算部22、識別信号生成部32、無線部34、送信信号増幅部26、超音波振動子28、およびメモリ30を備える。ゲート装置演算部22は、メモリ30に記憶されたプログラム、または予め自らに記憶されたプログラムによって動作するプロセッサによって構成してもよい。また、識別信号生成部32が実行する処理によっては、識別信号生成部32の一部または全部を、ゲート装置演算部22の内部に構成してもよい。
【0029】
メモリ30には、ゲート装置10-jに予め割り当てられた識別符号が記憶されている。ゲート装置演算部22は、メモリ30から識別符号を読み込み、識別符号を含む情報を識別信号生成部32に出力する。
【0030】
識別信号生成部32および無線部34は電波信号送信部35を構成し、識別符号を含む電波信号を送信する。識別信号生成部32は、識別符号によって変調された識別信号を生成し、無線部34に出力する。無線部34は、識別信号を電波信号に変換して無線送信する。
【0031】
ゲート装置演算部22は信号発生器24を有する。信号発生器24、送信信号増幅部26、および超音波振動子28は超音波送信部29を構成し、超音波を送信する。信号発生器24は、超音波を発生させるための送信信号を生成し、送信信号増幅部26に出力する。送信信号は、例えば、40kHz~10MHzの矩形波信号である。送信信号増幅部26は、送信信号を増幅して超音波振動子28に出力する。超音波振動子28は、送信信号に応じて超音波を発生する。
【0032】
このような構成によって、ゲート装置10-jは予め割り当てられた識別符号を含む電波信号を送信すると共に、超音波を送信する。
【0033】
図3には、無線タグ12の構成例が示されている。無線タグ12は、電波受信部36、復号部38、無線タグ演算部40、超音波振動子42、受信信号増幅部44、検出部46、符号送信部50、加速度センサ52、電源管理部54、およびメモリ48を備える。メモリ48には識別符号を記憶する符号保持部58が設けられている。符号保持部58は、直近に復号された識別符号を、その送信に備えて保持する機能を有するものであり、メモリ48とは別のハードウエアによって構成されてもよい。無線タグ演算部40は、メモリ48に記憶されたプログラム、または予め自らに記憶されたプログラムによって動作するプロセッサによって構成してもよい。復号部38、検出部46、符号送信部50および電源管理部54が実行する処理によっては、これらの構成要素の一部または全部を、無線タグ演算部40の内部に構成してもよい。
【0034】
電波受信部36は、無線タグ12に到来した電波信号を受信し、電気信号である電波受信信号に変換し、復号部38に出力する。復号部38は、電波受信信号から識別符号を復号し、識別符号を含む情報を無線タグ演算部40に出力する。
【0035】
超音波振動子42、受信信号増幅部44および検出部46は、超音波を検出する超音波検出部56を構成する。超音波振動子42は、無線タグ12に到来した超音波を電気信号である超音波受信信号に変換し、受信信号増幅部44に出力する。受信信号増幅部44は、超音波受信信号を増幅して検出部46に出力する。検出部46は、超音波受信信号に含まれる所望周波数成分を検出したときに検出信号を無線タグ演算部40に出力する。この処理に際して検出部46は、例えば、所望周波数成分に対応する周期を有する成分が所定周期に亘って検出された場合に検出信号を出力する。なお、検出部46は、検出された所望周波数成分の大きさが所定の閾値を超える場合に検出信号を出力し、検出された所望周波数成分の大きさが所定の閾値以下である場合に検出信号を出力しないように構成してもよい。
【0036】
無線タグ演算部40は、識別符号を含む情報が復号部38から出力されており、かつ、検出部46から検出信号が出力されたときは、その識別符号を符号保持部58に記憶する。なお、無線タグ演算部40は、識別符号を符号保持部58に上書で記憶する。すなわち、過去に取得された識別符号が符号保持部58に記憶されているときは、過去の識別符号を削除等により無効にした上で最新の識別符号を記憶する。
【0037】
無線タグ演算部40は、検出部46から検出信号が出力されないときは、識別符号を含む情報が復号部38から出力されていたとしても、その識別符号について処理を実行しない。
【0038】
加速度センサ52は、無線タグ12の動きを検出するセンサとしての機能を有する。すなわち、加速度センサ52は、無線タグ12が急激に動いたこと、鉛直方向に対して傾いたこと、所定時間以上に亘って移動しなかったこと等を検出するためのセンサである。加速度センサ52には、1方向または複数方向についての加速度を検出するものを用いてもよい。加速度センサ52は、無線タグ12の1方向または複数方向についての加速度を検出し、検出値を無線タグ演算部40に出力する。
【0039】
無線タグ演算部40は、加速度センサ52から出力された検出値に基づいて、無線タグ12が所定値以上の加速度で動いたこと、鉛直方向に対して傾いたこと、あるいは、所定時間以上に亘って動かなかったこと等の異常事態が発生したか否かを判定する。
【0040】
無線タグ演算部40は、異常事態が発生したときはメモリ48から識別符号を読み込み、識別符号を含む情報を符号送信部50に出力する。符号送信部50は、識別符号を含むID信号を図1に示されたアクセスポイント14に無線送信する。符号送信部50は、アクセスポイント14を介さずに、ホスト無線機16にID信号を送信してもよい。
【0041】
無線タグ12は、超音波を検出したときに初めて、電波信号を受信して識別符号を復号する動作を実行してもよい。すなわち、電波受信部36、復号部38および無線タグ演算部40は、超音波受信信号から所望周波数成分が検出されるまでは、電波信号から復号された識別符号を記憶する処理を実行しなくてもよい。
【0042】
また、無線タグ12は、電波信号を受信して識別符号を復号したときに初めて、超音波を検出する動作を実行してもよい。すなわち、復号部38から識別符号を含む情報が出力されるまでは、検出部46は、超音波受信信号から所望周波数成分を検出する処理を実行しなくてもよい。このような処理によれば、検出部46が所望周波数成分を検出する処理を繰り返し実行しなくてもよく、消費電力が少なくなる。
【0043】
さらに、電波信号を受信し識別符号を復号する処理と、検出部46による検出処理とが時分割で実行される場合には次のような利点がある。すなわち、検出部46による検出処理に要される時間が、識別符号を復号する処理に要される時間よりも長い場合には、識別符号を復号する処理の頻度を高くしても、検出部46による検出処理と識別符号を復号する処理とを併せた時間は短時間に抑えられる。これによって、短時間で確実に識別符号がメモリ48に記憶される。
【0044】
なお、無線タグ12は、自らに搭載されたバッテリから供給される電源電力を用いて動作してもよい。電源管理部54は、無線タグ12を構成する各構成要素に電源電力を投入する処理、または、無線タグ12を構成する各構成要素に供給される電源電力を遮断する処理を実行する。無線タグ12は、電源管理部54の処理によって次のような省電力モードで動作してもよい。
【0045】
無線タグ演算部40は、異常事態が発生していないと判定したときに、電源管理部54に省電力状態の設定を行わせる。省電力状態では、無線タグ12を構成する電子回路のうち一部の電子回路(電源セーブ対象回路)に電源電力が供給されない状態となる。電源セーブ対象回路は、例えば、異常事態が発生したときに、識別符号を含む電波信号を受信して識別符号を復号する処理、および、ゲート装置から送信された超音波を検出する処理を所定時間内に開始することが可能であるという条件で決定される。無線タグ12は、異常事態が発生したと判定すると、電源管理部54に省電力状態の設定を解除させる。すなわち、電源管理部54は、電源セーブ対象回路に電源電力を供給する処理を実行する。
【0046】
上記では、各ゲート装置が送信する電波信号が、同一フロアの1つの部屋から他の部屋に電波信号が到達することがないものの、その直上階または直下階の部屋に電波信号が到達してしまう場合について説明した。時間帯を区切る複数のスロットのうち1つのスロットにおいて、各ゲート装置が電波信号および超音波を送信する場合には、各ゲート装置は、自らが配置されている部屋のみならず他の部屋に到達する電波信号を送信してもよい。
【0047】
すなわち、複数のゲート装置のそれぞれには、時間帯を区切る複数のスロットのうち1つのスロットが割り当てられており、各ゲート装置は、自らに割り当てられたスロットにおいて、電波信号および超音波を送信する。各ゲート装置にスロットを割り当てる処理は、例えば、複数のゲート装置の相互間の電波通信によって、各ゲート装置が同期処理を実行することで行われる。
【0048】
図4には、このようなゲート装置10-1~10-6が、それぞれ、部屋20-1~20-6に配置されている例が示されている。各ゲート装置が送信する電波信号の周波数は1MHzを超えるものとする。この場合、各ゲート装置が送信する電波信号は、その強度によっては、自らが配置された部屋から他の部屋に到達してしまう。しかし、以下に説明するように、無線タグ12は、自らが位置する部屋のゲート装置に割り当てられたスロットにおいてのみ、そのゲート装置から送信された電波信号および超音波の両者を受信する。そのため、無線タグ12は、自らが位置する部屋のゲート装置から送信された電波信号から復号された識別符号を選択的に記憶する。
【0049】
無線タグ12が所持者の居場所に応じて部屋20-jに位置する場合、無線タグ12は、ゲート装置10-jに割り当てられたスロットjにおいて、ゲート装置10-jから送信された電波信号を受信すると共に、ゲート装置10-jから送信された超音波を検出する。ゲート装置10-j以外のゲート装置10-kは、スロットjでは電波信号および超音波のいずれも送信しない(ただし、jおよびkは1~6のいずれかの整数であり、jとkは異なる値である)。したがって、無線タグ12は、ゲート装置10-jから送信された電波信号から識別符号を復号し、さらに、ゲート装置10-jから送信された超音波を検出し、その識別符号を記憶する。
【0050】
一方、ゲート装置10-j以外のゲート装置10-kは、自らに割り当てられたスロットkにおいて電波信号および超音波を送信する。電波信号および超音波のうち、超音波は部屋20-jに到達しないものの、電波信号は部屋20-jに到達してしまう。無線タグ12は、ゲート装置10-kから送信された電波信号を受信するが、ゲート装置10-kから送信された超音波を検出しない。そのため、無線タグ12は、ゲート装置10-kから送信された電波信号から識別符号を復号したとしても、その識別符号を記憶しない。
【0051】
また、無線タグ12が、その所持者の居場所に応じて部屋20-1~20-6の外側に位置する場合には、ゲート装置10-1~10-6のそれぞれが、自らに割り当てられたスロットにおいて電波信号および超音波を送信するものの、部屋20-1~20-6の外側には超音波は到達しない。したがって、無線タグ12は超音波を検出しないため、受信した電波信号から復号した識別符号を記憶しない。
【0052】
このような監視システムによれば、1つの部屋に配置されたゲート装置から他の部屋に電波信号が到達する場合であっても、無線タグ12は、その所持者が居る部屋に配置されたゲート装置から送信された識別符号のみを記憶する。これによって、自らが位置していない部屋のゲート装置から無線タグ12が識別符号を取得し、ホストコンピュータ18に送信することが回避される。したがって、無線タグ12の所持者が実際には居ないにも関わらず、無線タグ12の所持者が居る部屋であるとホストコンピュータ18が誤って判断することが回避される。
【0053】
図5には、ゲート装置10-jの構成例が示されている。同期処理部60が設けられている点が、図2に示されているゲート装置10-jと異なる。同期処理部60は、無線部34を介して他のゲート装置との間で電波通信を行い、自らのゲート装置10-jに割り当てられたスロットのタイミングを認識する。同期処理部60は、自らのゲート装置10-jに割り当てられたスロットのタイミングを示す信号をゲート装置演算部22に出力する。なお、同期処理部60が実行する処理によっては、同期処理部60の一部または全部はゲート装置演算部22の内部に構成されてもよい。
【0054】
ゲート装置10-jは、スロットの割り当てに関わらず、常時、超音波を送信してもよい。この場合、無線タグ12は、自らが位置する部屋のみならず他の部屋に配置されたゲート装置が送信した電波信号から識別符号を復号したときにも、超音波を検出する可能性がある。無線タグ12は、複数のゲート装置から送信された複数の電波信号から各識別符号を復号したときは、例えば、所定時間だけ過去に遡った時間内において最もレベルが大きかった電波信号から復号された識別符号を記憶すればよい。
【0055】
上記では、無線タグ12の所持者の異常が検出されたときに、無線タグ12がID信号をホストコンピュータ18に送信し、ホストコンピュータ18が、無線タグ12の所持者の居る部屋を特定する監視システムについて説明した。このようなシステムの他、無線タグ12の所持者の異常の有無に関わらず、ホストコンピュータ18が、無線タグ12の所持者の居る部屋を特定するシステムを構成してもよい。この場合、図3に示される無線タグ演算部40は、加速度センサ52の検出値に関わらず、メモリ48から読み込まれた識別符号を符号送信部50に出力する。符号送信部50は、識別符号を含むID信号を図1に示されたアクセスポイント14に無線送信する。この場合、ゲート装置10-jは、ID信号の送信を所定の周期で実行してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10-1~10-6 ゲート装置、12 無線タグ、14 アクセスポイント、16 ホスト無線機、18 ホストコンピュータ、20-1~20-6 部屋、22 ゲート装置演算部、24 信号発生器、26 送信信号増幅部、28,42 超音波振動子、29 超音波送信部、30,48 メモリ、32 識別信号生成部、34 無線部、35 電波信号送信部、36 電波受信部、38 復号部、40 無線タグ演算部、44 受信信号増幅部、46 検出部、50 符号送信部、52 加速度センサ、54 電源管理部、56 超音波検出部、58 符号保持部、60 同期処理部。
図1
図2
図3
図4
図5