(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ヒドロホルミル化プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 45/50 20060101AFI20220824BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20220824BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20220824BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
C07C45/50
B01J31/22 Z
C07C47/02
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2017529301
(86)(22)【出願日】2015-11-18
(86)【国際出願番号】 US2015061332
(87)【国際公開番号】W WO2016089602
(87)【国際公開日】2016-06-09
【審査請求日】2018-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2014-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エイ・ブラマー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・アール・フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シー・エンシュミット
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィン・ビー・コックス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ヘッターレイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジョン・ベインブリッジ
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】冨永 保
【審判官】瀬良 聡機
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527287(JP,A)
【文献】特開2002-161063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続ヒドロホルミル化プロセスであって、(a)反応流体を反応器から除去することと、(b)前記反応流体を気化器に送ることと、(c)前記気化器内の前記反応流体を分離して、触媒含有液体流及びガス相流を生成することと、(d)前記気化器内の平均CO分圧を16psia(110kPa)より高く維持することとを含む、連続ヒドロホルミル化プロセス。
【請求項2】
連続ヒドロホルミル化プロセスであって、
(a)1つ以上の生成物と、1つ以上の重質副生成物と、遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒と、1つ以上の未転化反応物と、1つ以上の不活性軽質物とを含む反応流体を気化器に供給することと、
(b)前記気化器から、1つ以上の生成物と、1つ以上の未転化反応物と、1つ以上の不活性軽質物と、前記重質副生成物の一部とを含む塔頂ガス流を除去し、前記塔頂ガス流を凝縮器に供給することと、
(c)前記凝縮器から、1つ以上の未転化反応物と1つ以上の不活性軽質物とを含む凝縮器塔頂ガス流を除去することと、
(d)前記凝縮器塔頂ガス流の少なくとも一部を前記気化器に再循環させることと、
(e)前記気化器内の平均CO分圧が16psia(110kPa)よりも高くなるように、前記凝縮器塔頂ガス流に加えて、COを含むガス流を前記気化器に導入することと、
(f)前記遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒と前記重質副生成物の残部とを含む液体再循環触媒流を、前記気化器から廃棄流として除去することとを含む、連続ヒドロホルミル化プロセス。
【請求項3】
前記気化器内の前記平均CO分圧が少なくとも20psia(138kPa)である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記気化器のプロセス出口温度が少なくとも80℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記生成物がアルデヒドを含む、
請求項2~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記気化器において、H
2分圧が0.1psia(0.7kPa)以上かつ前記CO分圧の半分未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応流体が、ヒドロホルミル化反応条件下で反応域において、COと、H
2と、オレフィンと、ロジウム及びオルガノホスファイト配位子を含む触媒とを接触させて、前記反応流体中にアルデヒド生成物を生成することによって得られる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒が遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒であり、前記配位子がオルガノモノホスファイト配位子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記気化器内の平均H
2分圧を2psia(14kPa)未満に維持することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応流体を前記気化器に送る前に、前記反応流体をフラッシュ容器に送ることをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、ヒドロホルミル化プロセスに関する。より具体的には、本発明は、触媒再循環流中の重質物の量が制御されるようなプロセスに関する。
【0002】
アルデヒドが、オレフィンを金属有機リン配位子錯体触媒の存在下で一酸化炭素及び水素と反応させることによって生成され得ること、ならびに好ましいプロセスが、金属が第8族、第9族、または第10族から選択される金属-有機リン配位子錯体触媒を含有する触媒溶液の連続ヒドロホルミル化及び再循環を含むことが、よく知られている。ロジウムは好ましい第9族金属である。米国特許第4,148,830号、米国特許第4,717,775号、及び米国特許第4,769,498号は、このプロセスの例を開示している。得られたアルデヒドは、アルコール、アミン及び酸を含む多くの生成物を製造するために使用することができる。生成物を触媒から分離する目的で、反応域に続いて気化器を使用することが慣習となっている。
【0003】
ロジウム及びオルガノホスファイト配位子を含むヒドロホルミル化触媒は非常に高い反応速度が可能であることが知られている。「Rhodium Catalyzed Hydroformylation」、van Leeuwen,Claver,Kluwer Academic Pub.(2000)を参照されたい。これらの触媒を使用して生成速度を増加させるか、または線状アルファオレフィンよりもゆっくりと反応する内部及び/もしくは分岐内部オレフィンを効率的にヒドロホルミル化することができるので、このような触媒は、工業的有用性を有する。しかし、いくつかの条件下で、これらの触媒が液体再循環ヒドロホルミル化プロセスにおいてロジウムを消失することも、例えば、米国特許第4,774,361号から知られている。ロジウムの連続的な消失は、ロジウムが非常に高価であるため、触媒費用を劇的に増加させる可能性がある。
【0004】
ロジウム消失の正確な原因は不明であるが、米国特許第4,774,361号及び他の文献では、低濃度の一酸化炭素(CO)及び典型的な生成物分離ステップの高温環境により消失が悪化すると仮定されている。米国特許第6,500,991号は、生成物の除去後に濃縮触媒を冷却し、次いでCOを濃縮流に添加することによって有機ホスホン促進プロセスにおけるロジウム消失を遅らせる手段を記載している。米国特許第6,500,991号はまた、分離ステップの前に減圧/フラッシュ容器にCOを添加することを記載している。いずれの選択についても、分離域の全圧は1バール以下になるように教示される。このように、米国特許第6,500,991号の方法は、分離ステップの過酷な環境中に起こり得る消失に直接対処することなく、分離域の前後で触媒を安定化させることを試みている。
【0005】
米国特許第8,404,903号は、比較的中程度の温度を使用しながら、大気圧よりも高い圧力でアルデヒド生成物を除去する手段を記載している。しかしながら、この方法は、分離域の凝縮器温度を変えることを超えてCO含有量を制御する手段を提供しない。この制御手段は狭い範囲のCO分圧に限定され、そのような大きなガス流を調整するためには高価な冷凍ユニットを必要とする。米国特許第8,404,903号に記載されている最大全圧(100psia)及びCOモル%(16%)では、最大16psiaのCO分圧が可能であるが、この高圧では、比較的揮発性のC5アルデヒドの除去のためであっても、分離域の生成速度は許容できないほど低くなる。これは、許容可能な生成物回収速度及びロジウム消失速度を達成するためには、気化器温度及び再循環ガス流量の許容可能なバランスが必要であるという事実に起因する。米国特許第8,404,903号は、再循環ガス中のCOの存在が亜リン酸塩配位子の安定性のために有益であるはずであると述べているが、ロジウム消失を遅くしたり防止したりすることについて言及していない。
【0006】
先行技術の欠点に鑑みて、ロジウム消失を低減しつつ、ロジウム-オルガノホスファイトヒドロホルミル化触媒から高沸点のアルデヒドを分離する手段が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明のプロセスは、連続ヒドロホルミル化プロセスであって、(a)粗生成物を反応器から除去することと、(b)粗生成物を気化器に送ることと、(c)気化器内の粗生成物を分離して、触媒含有液体流及びガス相流を生成することと、(d)気化器内の平均CO分圧を16psia(110kPa)より高く維持することとを含む、そのような連続ヒドロホルミル化プロセスである。
【0008】
一実施形態では、本プロセスは、
(a)1つ以上の生成物と、1つ以上の重質副生成物と、遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒と、1つ以上の未転化反応物と、1つ以上の不活性軽質物とを含む粗生成物を気化器に供給することと、
(b)該気化器から、1つ以上の生成物と、1つ以上の未転化反応物と、1つ以上の不活性軽質物と、該重質副生成物の一部とを含む塔頂ガス流を除去し、該塔頂ガス流を凝縮器に供給することと、
(c)該凝縮器から、1つ以上の未転化反応物と1つ以上の不活性軽質物とを含む凝縮器塔頂ガス流を除去することと、
(d)該凝縮器塔頂ガス流の少なくとも一部を該気化器に再循環させることと、
(e)該気化器内の平均CO分圧が16psia(110kPa)よりも高くなるように、該凝縮器塔頂ガス流に加えて、COを含むガス流を該気化器に導入することと、
(f)該遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒と該重質副生成物の残部とを含む液体再循環触媒流を、該気化器から排出流として除去することとを含む。
【0009】
過圧は、C5以上のアルデヒドの気化のためのプロセス条件として通常回避される。したがって、気化器の過酷な過圧雰囲気中でCO分圧を増加させると、ロジウム-オルガノホスファイト触媒が安定化されると同時に、適度な温度でこのような高沸点アルデヒドを除去することができることは驚くべきことである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のプロセスの一実施形態の概略フローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ヒドロホルミル化プロセスは、成分として遷移金属及び加水分解性配位子を含む触媒の存在下で、少なくとも1種のアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下でCO、H2、及び少なくとも1つのオレフィンを接触させることを含む。任意のプロセス成分には、アミン及び/または水が含まれる。
【0012】
元素周期表及びその中の種々の族への全ての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991-1992)CRC Press,at page I-11に所載の版に対するものである。
【0013】
反対の記述、または文脈からの暗示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての試験方法は、本願の出願日時点で最新のものである。米国特許実務のために、参照されるあらゆる特許、特許出願、または公開の内容は、その全体が参照により組み込まれ(または、その相当する米国版が、同じように参照により組み込まれ)、特に、定義の開示(本開示において具体的に示されるいかなる定義とも矛盾しない程度に)、及び当技術分野における一般知識に関して、参照により組み込まれる。
【0014】
本明細書に使用されるとき、「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、同義に使用される。用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、及びこれらの変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲内に現れる場合、限定的な意味を持たない。したがって、例えば、「1つの(a)」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、この組成物が、「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
【0015】
また本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数(例えば1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)を含む。本発明の目的で、当業者の理解と同様に、数値範囲は、その範囲内に含まれる全ての可能な部分範囲を含みかつ支持することを意図していることが理解されよう。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99、1.01~99.99、40~60、1~55等を示唆することを意図している。また本明細書において、数値範囲及び/または数値の列挙は、特許請求の範囲におけるこのような列挙を含めて、用語「約(about)」を含むように読み取ることができる。このような場合には、用語「約」は、本明細書で記述されたものと実質的に同じ数値範囲及び/または数値を意味する。
【0016】
本明細書で使用する用語「ppm」及び「ppmw」は、重量比で100万分の1部を意味する。
【0017】
本発明の目的で、「炭化水素」という用語は、少なくとも1つの水素原子及び少なくとも1つの炭素原子を有する全ての許容可能な化合物を含むことが意図されている。また、このような許容可能な化合物は、1つ以上のヘテロ原子を有してもよい。広範な態様において、許容可能な炭化水素としては、非環式(ヘテロ原子を有するまたは有さない)及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物が挙げられ、これらは、置換されていても、非置換であってもよい。
【0018】
本明細書に使用されるとき、「置換」という用語は、別途示されない限り、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことが企図される。広範な態様において、許容可能な置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、炭素数が1~20個またはそれよりも多く、好ましくは1~12の範囲であり得る、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ならびにヒドロキシ、ハロ、及びアミノが挙げられる。許容可能な置換基は、1つ以上であってもよく、同じかまたは適切な有機化合物の場合には異なっていてもよい。本発明は、決して、有機化合物の許容可能な置換基により限定されることを意図するものではない。
【0019】
「反応流体」、「反応媒体」、及び「触媒溶液」という用語は、本明細書において同義に使用され、(a)金属-有機リン配位子錯体触媒と、(b)遊離有機リン配位子と、(c)反応中に形成されたアルデヒド生成物と、(d)未反応反応物と、(e)該金属-有機リン配位子錯体触媒及び該遊離有機リン配位子の溶媒と、場合によっては(f)反応で形成された1種または複数種のリン酸化合物(均質でも不均質でもよく、プロセス設備表面に付着したものを含む)とを含む混合物が含まれ得るが、これに限定されない。反応流体は、(a)反応域中の流体、(b)分離域への途中の流体流、(c)分離域中の流体、(d)再循環流、(e)反応域または分離域から回収された流体、(f)水性緩衝液で処理中の回収された流体、(g)反応域または分離域に戻された処理済流体、(h)外部冷却器中の流体、ならびに(i)配位子分解生成物及びそれらの塩を包含し得るが、これらに限定されない。
【0020】
「加水分解性リン配位子」は、少なくとも1つのP-Z結合を含有する三価のリン配位子であり、Zは酸素、窒素、塩素、フッ素、または臭素である。例としては、ホスファイト、ホスフィノ-ホスファイト、ビスホスファイト、ホスホナイト、ビスホスホナイト、ホスフィナイト、ホスホロアミダイト、ホスフィノ-ホスホロアミダイト、ビスホスホロアミダイト、フルオロホスファイト等が挙げられるが、これらに限定されない。配位子はキレート構造を含んでもよく、かつ/またはポリホスファイト、ポリホスホロアミダイト等のように複数のP-Z部分、及びホスファイト-ホスホロアミダイト、フルオロホスファイト-ホスファイト等のように混合P-Z部分を含有してもよい。
【0021】
本明細書に使用される「錯体」という用語は、電子に富む分子または原子(すなわち、配位子)と、1つ以上の電子不足の分子または原子(すなわち、遷移金属)との結合により形成される配位化合物を意味する。例えば、本明細書で利用可能な有機リン配位子は、金属と配位共有結合を形成することができる、1つの非共有電子対を有する1つのリン(III)ドナー原子を有する。本発明で利用可能なポリ有機リン配位子は、2つ以上のリン(III)ドナー原子を有し、それぞれが1つの非共有の電子対を有し、そのそれぞれが独立にまたは可能な場合は遷移金属と共同して(例えば、キレート化により)それぞれが配位共有結合を形成できる。一酸化炭素がまた存在してもよく、遷移金属と錯化していてもよい。錯体触媒の最終的組成物はまた、金属の配位部位または核電荷を満たす上記のような追加の配位子(複数可)、例えば、水素、モノ-オレフィン、またはアニオンを含有してもよい。
【0022】
本発明の目的で、「重質副生成物」及び「重質物」という用語は、同義に使用され、プロセスの所望の生成物の標準沸点よりも少なくとも25℃高い標準沸点を有するヒドロホルミル化プロセス液体副生成物を指す。ヒドロホルミル化反応において、例えば、反応物が1つ以上のオレフィンを含む場合、所望の生成物は、1つ以上の異性体アルデヒド、ならびに重質物を頻繁に含む。
【0023】
本発明の目的で、「供給物対排出物」及び「供給物対排出物比」という用語は、同義に使用され、分離域の塔底を出て第1のヒドロホルミル化反応器に戻る濃縮流出物(気化器の排出物)の質量に対する、分離域に入る反応流体の質量を指す。「供給物対排出物」は、アルデヒド生成物などの揮発性物質が反応流体から除去される割合の指標である。例えば、2の「供給物対排出物比」は、分離域に入る反応流体の重量が、第1の反応器に戻される濃縮流出物の重量の2倍であることを意味する。
【0024】
本発明の目的で、「ノックアウトポット」、「ノックアウト容器」及び「フラッシュ容器」という用語は、同義に使用され、反応域と気化器との間の低圧セクションを指す。フラッシュ容器は、反応流体が速やかに脱ガスすることを可能にし、気化器分圧の制御を容易にする。このような容器は、典型的には、ヒドロホルミル化反応器で確立された圧力及び温度より十分低い圧力及び温度に維持される。
【0025】
本発明の目的で、「軽質物」という用語は、大気圧で25℃以下の標準沸点を有する材料を指す。本明細書で使用する場合、「不活性軽質物」または「軽質不活性物質」という用語は、プロセスにおいて本質的に非反応性である軽質物を指す。「反応性軽質物」とは、プロセスにおいて重要な程度に反応する軽質物を指す。一例として、ヒドロホルミル化プロセスにおいて、反応性軽質物は、一酸化炭素及び水素を含み、一方で、不活性軽質物には、反応のオレフィン供給物中に存在するアルカンなどのアルカン、及び窒素などの他の不活性ガスが含まれる。
【0026】
「本質的に等圧で」等の用語は、本質的に一定の圧力または1バール(100kPa)以下、好ましくは0.5バール(50kPa)以下の圧力差を意味する。言い換えれば、本発明の一実施形態では、生成物相ストリッパーと生成物凝縮器との間の最大圧力差は1バール(100kPa)以下、好ましくは0.5バール(50kPa)以下である。
【0027】
用語「気化器」、「ストリッピングガス気化器」、「ストリッパー」及び「生成物相ストリッパー」は、本明細書では互換的に使用され、製品からの生成物含有流の成分の分離を助けるためにストリッピングガスを使用する装置を指す。
【0028】
本明細書に使用される時、「平均CO分圧」という用語は、定常状態運転で少なくとも10分間にわたり気化器の蒸気出口で測定される平均一酸化炭素分圧を意味する。ガスクロマトグラフィー(GC)を用いてガス組成物中のCOのモル%を測定することは周知である。次いで、全圧を測定し、ラウルの法則を用いてCO分圧を計算する。
【0029】
本明細書に使用される時、「平均H2分圧」という用語は、定常状態運転で少なくとも10分間にわたり気化器の蒸気出口で測定される平均水素分圧を意味する。ガスクロマトグラフィー(GC)を用いてガス組成物中のH2のモル%を測定することは周知である。次いで、全圧を測定し、ラウルの法則を用いて水素分圧を計算する。
【0030】
水素及び一酸化炭素は、石油分解法及び精製操作を含む、任意の好適な供給源から得ることができる。シンガス混合物が、水素及びCOの好ましい供給源である。
【0031】
(合成ガスに由来する)シンガスとは様々な量のCO及びH2を含有するガス混合物に付与される名称である。生成方法は周知である。典型的には、水素及びCOがシンガスの主成分であるが、シンガスは、CO2、ならびにN2、及びArといった不活性ガスを含有してもよい。H2とCOとのモル比は大きく変動するが、通常は、1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。シンガスは市販されており、燃料源として、または他の化学物質を生成するための中間体として多用される。化学的生成に最も好ましいH2:COのモル比は、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途では約1:2~2:1にすることが目標とされる。
【0032】
ヒドロホルミル化プロセスで用いることができる置換または非置換オレフィン不飽和反応物質としては、2~40個、好ましくは3~30個の炭素原子、より好ましくは4~20個の炭素原子を含有する、光学活性(プロキラル及びキラル)及び非光学活性(アキラル)オレフィン不飽和化合物の両方が挙げられる。これらの化合物は、米国特許公開第7,863,487号に詳述されている。このようなオレフィン不飽和化合物は、末端または内部で不飽和であってもよく、直鎖、分岐鎖、または環状構造のものであってもよく、加えてオレフィン混合物、例えば、混合ブテンの二量化、プロペン、ブテン、イソブテン等のオリゴマー化から得られるもの(例えば、米国特許第4,518,809号及び同第4,528,403号に開示される、いわゆる二量体、三量体、または四量体プロピレン等)であってもよい。
【0033】
不斉ヒドロホルミル化において有用なプロキラル及びキラルオレフィンは、エナンチオマーアルデヒド混合物を製造するために使用することができる。不斉ヒドロホルミル化において有用な例示的な光学活性またはプロキラルなオレフィン化合物は、例えば、米国特許第4,329,507号、同第5,360,938号、及び同第5,491,266号に記載されている。
【0034】
有利なことに、ヒドロホルミル化プロセスでは溶媒が用いられる。過度にヒドロホルミル化プロセスに干渉しない任意の好適な溶媒を使用することができる。実例として、ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスに好適な溶媒としては、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号、及び同第5,929,289号に開示されるものが挙げられる。ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスでは、一次溶媒として、生成しようとする所望のアルデヒド生成物に対応するアルデヒド化合物、及び/またはより高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物、例えば、米国特許第4,148,380号及び同第4,247,486号に記載のように、ヒドロホルミル化プロセス中にインサイチュで生成され得るようなものを用いるのが好ましい場合がある。一次溶媒は、連続プロセスという性質のため、通常、最終的には、アルデヒド生成物及び高沸点アルデヒド液体凝縮副生成物(重質物)の両方を含むことになる。溶媒の量は、特に重要ではなく、反応媒体に所望な程度の遷移金属濃度を付与するのに十分であればよい。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量に基づいて、約5重量パーセント~約95重量パーセントの範囲である。溶媒の混合物を用いてもよい。
【0035】
このようなヒドロホルミル化反応に利用可能な例示的な金属-有機リン配位子錯体の例としては、金属-有機リン配位子錯体触媒が挙げられる。これらの触媒ならびにそれらの調製方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に記載される特許に開示されているものが含まれる。一般に、このような触媒は、予備形成またはインサイチュで形成でき、有機リン配位子、一酸化炭素、及び場合によっては水素と錯体結合している金属が含まれる。触媒の正確な構造はわかっていない。
【0036】
金属-有機リン配位子錯体触媒は、光学活性または非光学活性であり得る。金属としては、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)から選択される、第8、第9、及び第10族金属、ならびにこれらの混合物を挙げることができ、好ましい金属は、ロジウム、コバルト、イリジウム、及びルテニウムであり、より好ましくはロジウム、コバルト、及びルテニウムであり、とりわけロジウムである。これらの金属の混合物を用いてもよい。金属-有機リン配位子錯体及び遊離有機リン配位子を構成する許容される有機リン配位子としては、モノ、ジ、トリ、及びより高次のポリ有機リン配位子が挙げられる。配位子の混合物を、金属-有機リン配位子錯体触媒及び/または遊離配位子において用いてもよく、そのような混合物は、同じであっても異なっていてもよい。本発明の一実施形態において、モノオルガノホスファイトと有機ポリホスファイト、例えばビスホスファイトとの混合物を使用することができる。
【0037】
金属-有機リン配位子錯体触媒の配位子及び/または遊離配位子として機能し得る有機リン化合物は、アキラル(光学不活性)またはキラル(光学活性)タイプであってもよく、当技術分野において周知である。アキラル有機リン配位子が好ましい。
【0038】
金属-有機リン配位子錯体触媒の配位子として機能し得る有機リン配位子は、モノオルガノホスファイト、ジオルガノホスファイト、トリオルガノホスファイト、及びオルガノポリホスファイト化合物である。このような有機リン配位子及び/またはそれらの調製方法は、当技術分野において周知である。
【0039】
代表的なモノオルガノホスファイトとしては、式:<<I>>
【0040】
【0041】
を有するものを挙げることができ、式中、R10は、4~40個またはそれよりも多くの炭素原子を含有する置換または非置換の三価炭化水素ラジカル、例えば、三価非環式及び三価環式ラジカル、例えば、三価アルキレンラジカル、例えば、1,2,2-トリメチロールプロパン等に由来するもの、または三価シクロアルキレンラジカル、例えば、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン等に由来するものを表す。このようなモノオルガノホスファイトは、例えば、米国特許第4,567,306号においてさらに詳細な記載を見出すことができる。
【0042】
代表的なジオルガノホスファイトとしては、式:<<II>>
【0043】
【0044】
を有するものを挙げることができ、式中、R20は、4~40個またはそれよりも多くの炭素原子を含有する置換または非置換の二価炭化水素ラジカルを表し、Wは、1~18個またはそれよりも多くの炭素原子を含有する置換または非置換の一価炭化水素ラジカルを表す。
【0045】
上記式(II)においてWで表される代表的な置換及び非置換の一価炭化水素ラジカルとしては、アルキル及びアリールラジカルが挙げられ、一方で、R20によって表される代表的な置換及び非置換の二価炭化水素ラジカルとしては、二価非環式ラジカル及び二価芳香族ラジカルが挙げられる。例示的な二価非環式ラジカルには、例えば、アルキレン、アルキレン-オキシ-アルキレン、アルキレン-S-アルキレン、シクロアルキレンラジカル、及びアルキレン-NR24-アルキレンが挙げられ、式中、R24は、水素または置換もしくは非置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。より好ましい二価非環式ラジカルは、例えば、米国特許第3,415,906号及び同第4,567,302号等により詳細に開示されているような二価アルキレンラジカルである。例示的な二価芳香族ラジカルには、例えば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、アリーレン-オキシ-アリーレン、アリーレン-NR24-アリーレン(式中、R24は、上記に定義したとおりである)、アリーレン-S-アリーレン、及びアリーレン-S-アルキレン等が挙げられる。より好ましくは、R20は、例えば米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号等により詳細に開示されているような二価芳香族ラジカルである。
【0046】
代表的なより好ましいクラスのジオルガノホスファイトは、式:<<III>>
【0047】
【0048】
のものであり、式中、Wは、上記に定義した通りであり、各Arは、同じかまたは異なり、かつ置換または非置換アリールラジカルを表し、各yは、同じかまたは異なり、かつ0または1の値であり、Qは、-C(R33)2-、-O-、-S-、-NR24-、Si(R35)2、及び-CO-から選択される二価架橋基を表し、各R33は、同じかまたは異なり、かつ水素、1~12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル、及びアニシルを表し、R24は上記に定義される通りであり、各R35は、同じかまたは異なり、かつ水素またはメチルラジカルを表し、mは0または1の値を有する。このようなジオルガノホスファイトは、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号により詳細に記載されている。
【0049】
代表的なトリオルガノホスファイトとしては、式:<<IV>>
【0050】
【0051】
を有するものを挙げることができ、式中、各R46は、同じかまたは異なり、かつ置換もしくは非置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1~24個の炭素原子を含有し得る、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、及びアラルキルラジカルである。例示的なトリオルガノホスファイトとしては、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイト等、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ブチルジエチルホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)メチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)シクロヘキシルホスファイト、トリス(3,6-ジ-t-ブチル-2-ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)フェニルホスファイト、及びビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-スルホニルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。最も好ましいトリオルガノホスファイトは、トリフェニルホスファイトである。このようなトリオルガノホスファイトは、例えば米国特許第3,527,809号及び同第5,277,532号においてより詳細に記載されている。
【0052】
代表的なオルガノポリホスファイトは、2個以上の第三級(三価)リン原子を含有し、これには、式:<<V>>
【0053】
【0054】
を有するものを挙げることができ、式中、Xは、2~40個の炭素原子を含有する置換または非置換のn価有機架橋ラジカルを表し、各R57は、同じかまたは異なり、かつ4~40個の炭素原子を含有する二価有機ラジカルを表し、各R58は、同じかまたは異なり、かつ1~24個の炭素原子を含有する置換または非置換一価炭化水素ラジカルを表し、a及びbは、同じであっても異なっていてもよく、かつそれぞれが、0~6の値を有するが、ただし、a+bの合計が、2~6であり、nがa+bに等しいことを条件とする。aが2以上の値を有するとき、各R57ラジカルは、同じであっても異なっていてもよいことを理解されたい。各R58ラジカルはまた、任意の所与の化合物において、同じであっても異なっていてもよい。
【0055】
上記でXによって表される代表的なn価(好ましくは、二価)有機架橋ラジカル、及びR57によって表される代表的な二価有機ラジカルとしては、非環式ラジカル及び芳香族ラジカルの両方、例えば、アルキレン、アルキレン-Qm-アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、及びアリーレン-(CH2)y-Qm-(CH2)y-アリーレン等が挙げられ、式中、各Q、y、及びmは、上記の式(III)で定義される通りである。上記X及びR57で表されるより好ましい非環式ラジカルは、二価アルキレンラジカルであり、一方で上記X及びR57で表されるより好ましい芳香族ラジカルは、例えば、米国特許第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,179,055号、同第5,113,022号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,264,616号、同第5,364,950号、及び同第5,527,950号でより詳細に開示されているような、二価アリーレン及びビスアリーレンラジカルである。上記の各R58ラジカルで表される代表的な好ましい一価炭化水素ラジカルとしては、アルキル及び芳香族ラジカルが挙げられる。
【0056】
例示的な好ましいオルガノポリホスファイトには、以下の式(VI)~(VIII):
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
のものといった、ビスホスファイトを挙げることができ、式中、式(VI)~(VIII)の各R57、R58、及びXは、式(V)に関して上記で定義されたものと同じである。好ましくは、R57及びXはそれぞれ、アルキレン、アリーレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、及びビスアリーレンから選択される二価炭化水素ラジカルを表し、一方で各R58ラジカルは、アルキル及びアリールラジカルから選択される一価炭化水素ラジカルを表す。このような式(V)~(VIII)のオルガノホスファイト配位子は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,748,261号、同第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,113,022号、同第5,179,055号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,254,741号、同第5,264,616号、同第5,312,996号、同第5,364,950号、及び同第5,391,801号の開示に見出すことができる。
【0061】
式(VI)~(VIII)中の、R10、R20、R46、R57、R58、Ar、Q、X、m、及びyは、上で定義した通りである。最も好ましくは、Xは、二価のアリール-(CH2)y-(Q)m-(CH2)y-アリールラジカルであり、各yが個々に0または1の値を有し、mが0または1の値を有し、Qが-O-、-S-、または-C(R35)2-であり、各R35が同じかまたは異なり、水素またはメチルラジカルを表す。より好ましくは、上記で定義したR58基の各アルキルラジカルは、1~24個の炭素原子を含有し得、上記式(VI)~(VIII)の上記で定義したAr、X、R57、R58基の各アリールラジカルは、6~18個の炭素原子を含有してもよく、該ラジカルは同じであっても異なっていてもよいが、Xの好ましいアルキレンラジカルは、2~18個の炭素原子を含有し得、R57の好ましいアルキレンラジカルは、5~18個の炭素原子を含有し得る。さらに、好ましくは、上記式のXの二価のArラジカル及び二価のアリールラジカルはフェニレンラジカルであり、-(CH2)y-(Q)m-(CH2)y-で表される架橋基が、式のリン原子にフェニレンラジカルを結合させている式の酸素原子に対してオルト位の位置で該フェニレンラジカルに結合している。このようなフェニレンラジカル上に存在する場合の任意の置換ラジカルが、与えられた置換フェニレンラジカルをそのリン原子に結合させている酸素原子に対してフェニレンラジカルのパラ及び/またはオルト位に結合していることもまた好ましい。
【0062】
上記の式(I)~(VIII)のオルガノホスファイトのR10、R20、R57、R58、W、X、Q、及びArラジカルのいずれかは、本発明のプロセスの所望の結果に不当に悪影響を及ぼさない1~30個の炭素原子を含む任意の適切な置換基で、必要に応じて置換されてもよい。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びシクロヘキシル置換基のような対応する炭化水素ラジカルに加えて該ラジカル上に存在し得る置換基は、例えば--Si(R35)3のようなシリルラジカル、-N(R15)2のようなアミノラジカル、-アリール-P(R15)2;のようなホスフィンラジカル、-OC(O)R15のようなアシルラジカル-C(O)R15のようなアシルオキシラジカル、--CON(R15)2及び-N-(R15)COR15のようなアミドラジカル、スルホニルラジカル、例えば-SO2R15、アルコキシラジカル、例えば-OR15、-SOR15のようなスルフィニルラジカル、-P(O)(R15)2のようなホスホニルラジカル、加えてハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシラジカルなどを含み得、各R15ラジカルは個々に、1~18個の炭素原子を有する同一または異なる1価炭化水素ラジカル(例えば、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びシクロヘキシルラジカル)を表し、但し、-N(R15)2一緒になって得られる各R15は、窒素原子と複素環式ラジカルを形成する2価の架橋基を表し、-C(O)N(R15)2、及び-N(R15)COR15各R15などのアミド置換基において、また水素である。特定の所与のオルガノホスファイトを構成する置換または非置換の炭化水素ラジカルのいずれも同じであっても異なっていてもよいことを理解されたい。
【0063】
より具体的に例示的な置換基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、アミル、sec-アミル、t-アミル、イソ-オクチル、デシル、オクタデシルなどのような第一級、第二級及び第三級アルキルラジカル;フェニル、ナフチルなどのようなアリールラジカル;ベンジル、フェニルエチル、トリフェニルメチルなどのようなアラルキルラジカル;トリル、キシリルなどのアルカリールラジカル;シクロペンチル、シクロヘキシル、1-メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチルなどのような脂環式ラジカル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t-ブトキシ、-OCH2CH2OCH3、-O(CH2CH2)2OCH3、-O(CH2CH2)3OCH3などのようなアルコキシラジカル、フェノキシなどのようなアリールオキシラジカル;ならびに-Si(CH3)3、-Si(OCH3)3、-Si(C3H7)3などのようなシリルラジカル;-NH2、-N(CH3)2、-NHCH3、-NH(C2H5)などのようなアミノラジカル;-P(C6H5)2などのようなアリールホスフィンラジカル;-C(O)CH3、-C(O)C2H5、-C(O)C6H5などのようなアシルラジカル;-C(O)OCH3などのようなカルボニルオキシラジカル;-O(CO)C6H5などのようなオキシカルボニルラジカル;-CONH2、-CON(CH3)2、-NHC(O)CH3などのようなアミドラジカル;-S(O)2C2H5などのようなスルホニルラジカル;-S(O)CH3などのようなスルフィニルラジカル;-SCH3、-SC2H5、-SC6H5などのようなスルフィジルラジカル;-P(O)(C6H5)2、-P(O)(CH3)2、-P(O)(C2H5)2、-P(O)(C3H7)2、-P(O)(C4H9)2、-P(O)(C6H13)2、-P(O)CH3(C6H5)、-P(O)(H)(C6H5)、などのようなホスホニルラジカルなどが含まれる。
【0064】
このようなオルガノホスファイト配位子の特定の例示的な例としては、次の:トリス(2,4-di-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2-t-ブチル-4-メトキシフェニル(3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト、メチル(3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト、6,6’-[[3,3’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6,6’-[[3,3’,5,5’-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン、(2R,4R)-ジ[2,2’-(3,3’,5,5’-テトラキス-tert-ブチル-1,1-ビフェニル)]-2,4-フェニルジホスファイト、(2R,4R)ジ[2,2’-(3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、2-[[2-[[4,8,-ビス(1,1-ジメチルエチル),2,10-ジメトキシジベンゾ-[d,f][1,3,2]ジオキソホスフェピン(dioxophosphepin)-6-イル]オキシ]-3-(1,1-ジメチルエチル)-5-メトキシフェニル]メチル]-4-メトキシ、亜リン酸のメチレンジ-2,1-フェニレンテトラキス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エステル、及び亜リン酸の[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイルテトラキス[2-(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]エステルが挙げられる。
【0065】
一実施形態では、オルガノホスファイト配位子は、有機ビスホスファイト配位子を含む。一実施形態では、配位子は、例えば国際公開第00/56451A1号に開示されているクラスの二座ホスホラミダイト配位子のような二座ホスホラミダイト配位子である。
【0066】
金属-有機リン配位子錯体触媒は、均質または不均質形態であってもよい。例えば、予備形成されたロジウムヒドリド-カルボニル-有機リン配位子触媒を調製し、ヒドロホルミル化反応混合物に導入してもよい。より好ましくは、ロジウム-有機リン配位子錯体触媒は、活性触媒をインサイチュで形成するために反応媒体に導入することができるロジウム触媒前駆体から誘導することができる。例えば、ロジウム触媒前駆体、例えばロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh2O3、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16、Rh(NO3)3等は、活性触媒をインサイチュで形成するために、有機リン配位子とともに反応混合物に導入され得る。好ましい実施形態において、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートは、ロジウム前駆体として用いられ、有機リン配位子を含む溶媒の存在下で反応して、活性触媒をインサイチュ形成するために過剰量の(遊離)有機リン配位子とともに反応器に導入される触媒のロジウム-有機リン配位子錯体前駆体を形成する。いずれにしても、一酸化炭素、水素、及び有機リン配位子は、全て金属と錯化可能な配位子であり、ヒドロホルミル化反応で使われる条件下で反応混合物中に活性金属-有機リン配位子触媒が存在することは、十分である。カルボニル及び有機リン配位子は、ヒドロホルミル化プロセスの前またはヒドロホルミル化プロセス中にインサイチュでのいずれかにおいてロジウムと錯化することができる。
【0067】
実例として、好ましい触媒前駆体組成物は、可溶性ロジウムカルボニルオルガノホスファイト配位子錯体前駆体、溶媒、及び任意選択的に、遊離オルガノホスファイト配位子から本質的になる。好ましい触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒、及びオルガノホスファイト配位子の溶液を形成することによって、調製することができる。有機リン配位子は、一酸化炭素ガスの発生により証明されるように、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニル配位子のうちの1つを容易に置き換える。
【0068】
したがって、金属-有機リン配位子錯体触媒は、有利なことに、一酸化炭素及び有機リン配位子と錯化する金属を含み、該配位子は、キレート化及び/または非キレート化様式で金属に結合(錯化)する。
【0069】
触媒の混合物を用いてもよい。反応流体中に存在する金属-有機リン配位子錯体触媒の量は、用いるのに所望される所与の金属濃度をもたらし、例えば上述の特許に開示されるもの等、少なくとも関与する特定のヒドロホルミル化プロセスを触媒するのに必要な金属触媒量を基準に供給するのに必要な最小限の量とするだけでよい。一般に、反応媒体中の遊離金属として計算して、10ppmw~1000ppmwの範囲の触媒金属、例えばロジウムの濃度が、大抵のプロセスには十分なはずであるが、通常、好ましくは10~500ppmwの金属、より好ましくは、25~350ppmwの金属が用いられる。
【0070】
金属-有機リン配位子錯体触媒に加えて、反応媒体中に遊離有機リン配位子(すなわち、金属と錯化していない配位子)が存在してもよい。遊離有機リン配位子は、本明細書で使用可能なものとして上記で考察し、上記で定義した任意の有機リン配位子に相当し得る。遊離有機リン配位子は、用いられる金属-有機リン配位子錯体触媒の有機リン配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、このような配位子は、全ての所与のプロセスにおいて同じである必要はない。本発明のヒドロホルミル化プロセスには、反応媒体中の金属1モル当たり0.1モル以下~100モル以上の遊離有機リン配位子が関与し得る。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に存在する金属1モル当たり1~50モルの有機リン配位子の存在下で実行される。より好ましくは、オルガノポリホスファイトについて、金属1モル当たり1.1~4モルのオルガノポリホスファイト配位子が用いられる。該有機リン配位子の量は、存在する金属に結合(錯化)する有機リン配位子の量と、存在する遊離(非錯化)有機リン配位子の量との合計である。所望される場合、例えば、反応媒体中の所定濃度の遊離配位子を維持するために、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体に、随時、任意の好適な方法で追加の有機リン配位子を供給してもよい。
【0071】
オルガノホスファイト配位子の加水分解及び有機-亜リン酸塩配位子錯体の不活性化を防止及び/または減少させるための抽出系などの水性緩衝液の使用は周知であり、例えば、米国特許第5,741,942号及び米国特許第5,741,944号に開示されている。緩衝液の混合物を用いてもよい。
【0072】
場合により、有機窒素化合物をヒドロホルミル化反応流体に添加して、例えば米国特許第4,567,306号及び米国特許第5,731,472号に教示されているように、有機リン配位子の加水分解で形成された酸性加水分解副生成物を除去することができる。このような有機窒素化合物は、酸性化合物と反応生成物塩を形成することにより酸性化合物と反応して中和することにより、触媒金属が酸性加水分解副生成物と錯化するのを防止し、したがって触媒が反応条件下で反応域に存在している間に触媒の活性を保護する助けとなる。
【0073】
ヒドロホルミル化プロセス及びその操作のための条件は、周知である。ヒドロホルミル化プロセスは、非対称であっても非対称であってもよく、好ましいプロセスは非対称であり、任意のバッチ、連続、または半連続様式で行うことができ、任意の所望の触媒液体及び/またはガス循環操作を伴い得る。
【0074】
用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望されるアルデヒド生成物の種類により決定されるであろう。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物のガス全圧は、1~69,000kPaの範囲であってもよい。しかしながら、一般には、プロセスは、14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満の水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物のガス全圧で操作されるのが好ましい。最小全圧は、主に、所望の反応速度を得るのに必要な反応物質の量により限定される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスにおける一酸化炭素の分圧は、好ましくは1~6,900kPa、より好ましくは21~5,500kPaであり、一方で水素の分圧は、好ましくは34~3,400kPa、より好ましくは69~2,100kPaである。一般に、H2ガス:COガスのモル比は、1:10~100:1以上であり得、より好ましいモル比は1:10~10:1である。
【0075】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の操作可能な反応温度で行うことができる。有利なことに、ヒドロホルミル化プロセスは、-25℃~200℃、好ましくは50℃~120℃の反応温度で行われる。
【0076】
ヒドロホルミル化プロセスは、1つ以上の好適な反応器、例えば、固定床反応器、流動床反応器、連続撹拌槽反応器(CSTR)、またはスラリー反応器といったものを用いて行うことができる。触媒の最適な細部及び形状は、使用される反応器の種類に依存するであろう。用いられる反応域は、単一容器であってもよく、または2つ以上の別個の容器を含んでもよい。
【0077】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、1つ以上のステップまたは段階で行うことができる。反応ステップまたは段階の正確な数は、資本費用と、高い触媒選択性、活性、寿命、及び操作性の容易さ、ならびに問題の出発物質の内因性反応性、及び反応条件に対する出発物質及び所望の反応生成物の安定性を達成する最良の妥協点により決定される。
【0078】
一実施形態では、本発明に有用なヒドロホルミル化プロセスは、例えば、米国特許第5,728,893号に記載されているような多段反応器中で行うことができる。このような多段反応器は、容器当たり1つ以上の理論的反応段階を生成する内部の物理的障壁を用いて設計することができる。
【0079】
一般に、連続的にヒドロホルミル化プロセスを実施することが好ましい。連続的なヒドロホルミル化プロセスは、当該技術分野において周知である。最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒再循環プロセスを含む。適切な液体触媒再循環手順は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、及び同第5,110,990号に開示されている。
【0080】
図1は、本発明の一体化ヒドロホルミル化プロセスを示す。
図1を参照して、1つ以上のオレフィン化合物及び場合によって1つ以上の不活性
軽質物を含むオレフィン供給流1を、1つ以上のヒドロホルミル化反応器(オキソ反応器)を含むヒドロホルミル化反応器システム100に供給する。同時に、一酸化炭素、水素、場合によって1つ以上のガス状不活性物質を含むガス状供給流2もまた、ヒドロホルミル化反応器システム100に供給される。簡略化のために、ヒドロホルミル化反応器システムを1つのユニットとして
図1に示すが、有利には、一連の連続的に連結されたヒドロホルミル化反応器を含む。
【0081】
遷移金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒、好ましくはロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体触媒、及び場合により遊離または非錯化有機モノホスフィット配位子を含み、液体の重質副生成物相に可溶化されて溶解された、再循環触媒流23は、ヒドロホルミル化反応器システム100に供給され、ここで、オレフィンのヒドロホルミル化が起こって、1つ以上のアルデヒド生成物、1つ以上の重質副生成物、1つ以上の未転化オレフィン反応体、遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒、遊離オルガノホスファイト配位子、不活性軽質物を含む軽質物、一酸化炭素、ならびに場合により水素を含む、粗ヒドロホルミル化生成物流21を生成する。本発明の一実施形態では、粗ヒドロホルミル化生成物流21は液体と気体とを含む流れであり、気体は液体中に部分的に溶解していてもよい。不活性軽質物、水素及び一酸化炭素を含む主に軽質成分を含む反応器通気流27は、その中の反応器のいずれか1つ以上の反応器システム100から気体流として塔頂に取り出すことができる。流れ21内の任意のフラッシュポット(図示せず)を使用して、圧力を低下させ、余分なH2を除去することができる。
【0082】
液体ヒドロホルミル化生成物流21は、1つ以上のアルデヒド生成物、1つ以上の未転化オレフィン反応体、重質副生成物の一部、1つ以上の不活性軽質物、一酸化炭素、及び場合により水素を含む塔頂ガス流22が得られる、ストリッピングガス気化器ユニット200に供給される。ストリッピングガス気化器からの塔頂ガス流22は、1つ以上のオレフィン反応体の一部、不活性軽質物の一部、一酸化炭素、及び場合により水素を含む凝縮器塔頂ガス流28が得られる、生成物凝縮器300に供給される。凝縮器300から、1つ以上のアルデヒド生成物、気化器からの塔頂ガス流からの重質副生成物の一部、及び未転化オレフィン反応体(複数可)の残部を含む液体生成物流26が得られる。凝縮器塔頂ガス流28は、ブロワ400を介してストリッピングガス気化器200に戻される再循環流24と、ヒドロホルミル化反応器系100に再循環されるかまたはフレア化されるかまたは燃料、または別の下流プロセスで使用される。再循環流24は、1つ以上の不活性軽質物、一酸化炭素、及び場合により水素を含む1つ以上の未転化オレフィン反応体及び軽質物を含み、ブロワ400に送られる。流れ25は、1つ以上の不活性軽質物、一酸化炭素、及び場合により水素を含む、1つ以上の未転化オレフィン反応物及び軽質物を含む。ストリッピングガス気化器200から、再循環触媒流23が、重質副生成物、遷移金属オルガノホスファイト配位子錯体触媒、及び任意に遊離オルガノホスファイト配位子のバランスを含む気化器排出流として得られる。再循環触媒流23は、液体触媒流としてオキソ反応器システム100に戻される。
【0083】
流れ55は、流れ20を介して気化器200に入る前に気化器200及び/または流れ24内の任意の場所にCOを直接添加するために使用することができる。気化器内のCO分圧は、気化器内で直接的に測定することができ、または例えば、気流20、22、24、25、55及び/または28の適切な選択などの、1つ以上の適切な気化器の入力及び/または出力の流れを分析することによって間接的に測定することができる。
【0084】
COを添加しなければ、塔頂ガス再循環流中のCOの分圧は、凝縮器300の動作温度の関数として変化する。このような場合、凝縮器300の操作温度の操作は、ヒドロホルミル化触媒の安定化のために気化器200に再循環される所望量のCOをほとんど制御せず、所望の、例えば16psia(110kPa)~50psia(345kPa)、CO分圧よりも高い。したがって、本発明の1つの特徴は、例えば
図1に示すようにライン55を介して気化器200にCOを添加することである。
【0085】
ライン55を介して添加される相当量のCOは、ライン24/ライン25の分割比に応じてライン24を介して再循環される。この再循環は、液体生成物出口流中のCOの溶解度が比較的低いために、従来の気化器と比較して、ストリッピングガス気化器中のCO分圧を維持するために必要なライン55からの総流量を減少させる。ライン55の流れは、気化器内の観察されたCO分圧を所望の範囲内に維持するように調整される。このラインはまた、上流プロセスからの適切なガスが利用できない場合に、始動中にCO含有ストリッピングガスを導入するために使用することができる。本発明の様々な実施形態では、流れ55に相当する流れを気化器のどこにでも加えることができる。しかしながら、流れ20として気化器に入る前に、メークアップCO供給流をストリッピングガス24と混合することによって気化器にCOを導入することが好ましい。
【0086】
流れ55は、有利にはCO含有流であり、好ましくは硫黄またはハロゲン含有不純物及び酸素(O2)を実質的に含まない。流れ55の供給源は、ヒドロホルミル化反応域へのCO及びH2の供給源と同じ供給源であってもよいが、圧力スイング吸着、膜分離、または他の公知の技術のような従来の技術を用いてCOを富化することが好ましい。これらの濃縮技術には、新鮮なシンガス及び/またはヒドロホルミル化ユニットからの通気孔の1つを供給することができる。一般に、流れ55中のCO含量が高いほど、通気流25の流れが小さくなり、通気消失がより少なくなる。
【0087】
ヒドロホルミル化反応器からの反応流体は、ストリッピングガス気化器に直接供給することができる。ストリッピングガス気化器は、
図1に単一のユニット200として示されているが、気化器は、異なる圧力で作動する一連の連続的に接続された気化器を含むことができる。
【0088】
あるいは、反応流体を最初にフラッシュ容器に供給して、圧力を下げ、反応性及び不活性軽質物を除去し、その後残りの液体をストリッピングガス気化器に供給することができる。例えば、反応器(100)圧力と気化器(200)圧力の中間の圧力で動作するフラッシュ容器は、水素、CO2、メタン、窒素、アルゴンなどのガスを除去してから気化器に入る。これにより、これらのガスの濃度を迅速に低下させることができるだけでなく、それらが再循環されたストリッピングガス中に蓄積するのを防ぐのに役立つ。このようなガスの蓄積は、気化器内の所望のCO分圧を達成するために、より高い新鮮CO供給速度(流れ55)及びパージ流量(流れ25)を必要とする。したがって、気化器の前にフラッシュ容器を使用することにより、気化器の実行可能な作動圧力を延ばすことができ(すなわち、より低い全圧を可能にする)、より経済的な操作をもたらすことができる。
【0089】
遷移金属-有機リン配位子錯体触媒及び任意の遊離配位子を除く、ヒドロホルミル化反応器からの反応流体の組成物は、約38~約58重量%の1種以上のアルデヒド生成物、約16~約36重量%の重質副生物、約2~約22重量%の未転化のオレフィン反応物、約1~約22重量%の不活性軽質物、約0.02~約0.5重量%の一酸化炭素、及び約100ppmw未満の水素を含み、合計100重量%まで添加する。
【0090】
気化器のハードウェアは、設計において従来のものであってもよく、多くの例が当業者に知られている。蒸発器は、熱交換器内に垂直の一連の管を含むように有利に設計される。最適気化器寸法(管の数、直径及び長さ)は、プラント容量によって決定され、当業者によって容易に決定され得る。気化器及びその使用の例は、米国特許第8,404,903号に記載されている。
【0091】
本発明のCO分圧を維持するために、再循環されたストリッピングガスの一部を通気流25によって排出することが必要な場合がある。通気流に同伴されるアルデヒド、未反応オレフィン及びアルカンは、凝縮によって回収することができる。凝縮は、任意の適切な熱伝達流体を使用して、任意の適切な凝縮器で行うことができる。そのような流体の例としては、例えば、冷却水、ブラインまたは他の塩溶液、DOWTHERMブランドの熱伝達流体、またはそれらの混合物を含む他の熱交換流体が挙げられる。
【0092】
ストリッピングガス気化器及び生成物凝縮器は、本質的に一定の圧力で操作することができるので、本発明のプロセスのいくつかの実施形態では、ガス状流を大幅に圧縮する必要はない。生成物凝縮器からストリッパーへの再循環ガスの循環には、送風機またはファンを適切に使用することができる。圧縮ユニットと比較して、送風機または送風機の設備投資及び保守費用が大幅に削減される。しかしながら、必要に応じて圧縮ユニットを使用することができる。一般に、ストリッパー及び製品凝縮器は、1.5バール絶対圧(150kPa)~4バール絶対圧(400kPa)、好ましくは2~3絶対バール(200~300kPa)の範囲の圧力で操作される。
【0093】
ストリッピングガス気化器中のCO分圧は、例えば、
図1に示すようなライン55を介してCO含有流を添加することにより、有利には16psia(110kPa)~50psia(345kPa)の範囲内に維持される。本発明の一実施形態では、気化器は、ガス塔頂流中の生成物流から重質の少なくとも一部分を除去するのに十分なほど高い温度で、気化器中の触媒及び有機リン配位子の安定性を確実にするのに十分低い温度で操作される。好ましくは、気化器プロセス出口温度は、少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも90℃である。好ましくは、気化器プロセス出口温度は130℃以下、より好ましくは120℃以下である。有利には、気化器の全圧は、少なくとも16psia(110kPa)超であり、好ましくは少なくとも20psia(138kPa)であり、最も好ましくは少なくとも25psia(172kPa)である。気化器の全圧は、有利には100psia(689kPa)以下であり、好ましくは60psia(414kPa)以下である。CO分圧は16psia(110kPa)より大きく、好ましくは20psia(138kPa)より大きく、最も好ましくは25psia(172kPa)超である。50psia(345kPa)を超えるCO分圧には利点がない。これは、生産性を維持するために高い気化器温度を必要とするためである。したがって、CO分圧は50psia(345kPa)以下、好ましくは40psia(276kPa)未満、より好ましくは35psia(241kPa)未満であることが好ましい。気化器は、1.5/1~5/1、好ましくは2/1~3/1の範囲の粗液体生成物供給物対液体排出物の質量比で有利に操作される。粗液体生成物供給物対再循環ガス供給物の気化器への質量比は、好ましくは0.1/1より大きく、より好ましくは0.25/1より大きく、好ましくは2/1より小さく、より好ましくは1/1より小さい。本発明の一実施形態では、気化器において、H
2分圧は0.1psia(0.7kPa)、または3psia(21kPa)からCO分圧の半分未満までである。一実施形態では、本発明は、ストリッピングガス気化器及び生成物凝縮器が本質的に等圧で操作される本明細書に記載のプロセスである。
【0094】
気化器からの塔頂ガス流は凝縮器に供給される。所望の冷却媒体を凝縮器とともに使用することができ、冷媒の種類は特に重要ではない。本発明の一実施形態では、凝縮器は従来の水冷を使用する。水は、凍結以上(すなわち、0℃超)~約50℃、好ましくは約34℃~約45℃の範囲の操作温度で好ましい冷却媒体である。
【0095】
凝縮器からの塔頂流は、有利には、ガス通気流と気化器へのガス再循環流とに分割される。本発明の一実施形態では、凝縮器から気化器へのガス再循環流は、5重量%未満のアルデヒド生成物を含む。
【0096】
約50モル%のH2を含有するシンガスの使用は気化器の全圧を増加させるので、精製されたCOが好ましい。シンガスが使用される場合、ヒドロホルミル化装置に供給されるシンガスと同じH2/CO比である必要はない。このシンガスのほとんどがヒドロホルミル化系に再循環されるために流れ23中に存在しないからである。このCO含有流55の好ましい供給源は、アルデヒド生成物及びオレフィン出発物質のような凝縮物の大部分を、必要に応じて膜セパレータまたはCOで流れをさらに濃縮するための他の分離装置と一緒に除去するために凝縮器を通過した反応器通気流である。
【0097】
一実施形態では、本発明は、(a)CO、H2、オレフィン及びロジウム及びオルガノホスファイト配位子、好ましくはモノオルガノホスファイト配位子を含む触媒をヒドロホルミル化反応条件下で反応器に接触させてアルデヒド生成物を生成させることと、(b)液体生成物含有流を反応器から除去することと、(c)液体生成物含有流を気化器に送ることと、(d)COを含む気相流を気化器に導入することと、(e)気化器中の液体生成物含有流を分離して触媒含有液体流及び気相流を生成することと、(f)気化器中の平均CO分圧を16psia(110kPa)より高く、好ましくは少なくとも17psia(117kPa)に維持することと、を含む連続プロセスである。
【0098】
有利には、本発明のプロセスは、示されたCO分圧を維持しない比較プロセスと比較して、より低いロジウム消失をもたらし、それにより触媒コストを低下させる。本発明の一実施形態では、粗生成物流は、ヒドロホルミル化反応条件下でCO、H2、オレフィン、ならびにロジウム及びオルガノホスファイト配位子を含む触媒を反応域で接触させて、アルデヒド生成物を粗生成物流に生成させることによって得られる。本発明の一実施形態では、このプロセスは、遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒及び重質副生成物を含む液体再循環触媒流を気化器から排出流として除去することをさらに含む。
【0099】
一実施形態では、本発明は、(a)1種以上の生成物、1種以上の重質副生成物、遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒、1種以上の未反応物、及び1種以上の不活性軽質物を含む粗生成物流をストリッピングガス気化器に供給することと、(b)1つ以上の生成物、1つ以上の未転化反応物、1つ以上の不活性軽質物、及び重質副生成物の一部を含む塔頂ガス流を気化器から除去し、(c)塔頂ガス流を凝縮器に供給することと、(d)凝縮器から、1つ以上の未反応の反応物質と1つ以上の不活性軽質物とを含む塔頂ガス流を除去することと、(e)凝縮器塔頂ガススチームの一部を気化器に再循環させることと、(f)気化器から排出流として触媒及び重質副生成物の残部を含む液体再循環触媒流を除去することを含み、気化器中のCO分圧は17psia(117kPa)~50psia(345kPa)であることと、を含む液体再循環ヒドロホルミル化プロセスにおいて生成物を除去する手段を提供する。
【0100】
一実施形態では、本発明は、触媒再循環流中のヒドロホルミル化、触媒-生成物分離、及び重質副生成物の制御された統合プロセスを提供し、このプロセスは、(a)遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒及び任意に遊離オルガノホスファイト配位子の存在下で、1つ以上のオレフィン反応体及び1つ以上の不活性軽質物を含むヒドロホルミル化供給流をCO及び水素と接触させて、1つ以上のアルデヒド生成物、1つ以上の重質副生成物、遷移金属オルガノホスファイト配位子錯体触媒、任意に遊離オルガノホスファイト配位子、1つ以上の未転化オレフィン反応物、及び1つ以上の不活性軽質物、水素を含む、粗液体ヒドロホルミル化生成物流を調整することと、(b)粗液体ヒドロホルミル化生成物流をストリッピングガス気化器に供給することと、(c)1つ以上のアルデヒド生成物と、1つ以上の未転化オレフィン反応物と、1つ以上の重質副生成物の一部と、1つ以上の不活性軽質物、一酸化炭素、及び場合により水素を含む軽質物とを含む塔頂ガス流を、ストリッピングガス気化器から除去し、該気化器の塔頂ガス流を凝縮器に供給することと、(d)凝縮器から、1つ以上の未転化オレフィン反応物及び1つ以上の不活性軽質物、一酸化炭素及び場合により水素を含む軽質物を含む塔頂ガス流を除去することと、(e)凝縮器塔頂ガス流の一部を気化器に再循環させることと、(f)重質副生成物、遷移金属-配位子錯体触媒、及び任意に遊離の有機ホスフィット配位子の残部を含む液体再循環触媒流を気化器から排出流として除去し、ステップ(c)における凝縮器塔頂ガス流中のCO分圧が17psia(117kPa)~50psia(345kPa)であるステップ(a)へ液体再循環触媒流を再循環することと、を含む。
【0101】
例示的な非光学活性アルデヒド生成物としては、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-メチル1-ブチルアルデヒド、ヘキサナール、ヒドロキシヘキサナール、2-メチル1-ヘプタナール、ノナナール、2-メチル-1-オクタナール、デカナール、アジプアルデヒド、2-メチルグルタルアルデヒド、2-メチルアジプアルデヒド、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、6-ヒドロキシヘキサナール、アルケナール、例えば、2-、3-、及び4-ペンテナール、アルキル5-ホルミルバレラート、2-メチル-1-ノナナール、2-メチル1-デカナール、3-プロピル-1-ウンデカナール、ペンタデカナール、3-プロピル-1-ヘキサデカナール、エイコサナール、2-メチル-1-トリコサナール、ペンタコサナール、2-メチル-1-テトラコサナール、ノナコサナール、2-メチル-1-オクタコサナール、ヘントリアコンタナール、2-メチル-1-トリアコンタナール等が挙げられる。
【0102】
例示的な光学活性アルデヒド生成物としては、本発明の不斉ヒドロホルミル化プロセスにより調製された(エナンチオマー)アルデヒド化合物、例えば、S-2-(p-イソブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(6-メトキシ-2-ナフチル)プロピオンアルデヒド、S-2-(3-ベンゾイルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(3-フルオロ-4-フェニル)フェニルプロピオンアルデヒド、及びS-2-(2-メチルアセトアルデヒド)-5-ベンゾイルチオフェンが挙げられる。
【0103】
本発明の特定の実施形態
以下の実施例における全ての部及び割合は、別途示されない限り、重量基準である。以下の実施例における圧力は、別途示されない限り、絶対圧力として提供される。触媒溶液の調製などの全ての操作は、別途示されない限り、不活性雰囲気下で行われる。比較実験は、本発明の実施形態ではない。
【0104】
ロジウム分析は、空気/アセチレン原子吸光(AA)または誘導結合プラズマ(ICP)によって行われる。空気/アセチレンAAはクラスター化されたロジウムを確実に定量することはできないが、この方法は依然として「ロジウム消失」(例えば、ロジウムがクラスター化されているか、そうでなければ溶液中にもはや存在しない)を示すために使用することができることが判明した。ICPは、プラズマの高温による形態にかかわらず試料中のロジウムを全て検出すると考えられているため、ICPで測定したロジウムの減少は、ロジウムの一部がもはや溶解していないことを示す。色の変化(無色または淡黄色溶液から開始)、黒色化または黒色フィルムまたは固体の形成も、触媒分解の指標である。
【0105】
ガス組成(モル%)はガスクロマトグラフ(GC)で測定し、ラウルの法則を用いて全圧に基づいて分圧を計算する。ストリップガスは、典型的には、列挙されたもの(例えば、≦0.5psia)に加えて微量成分を含むことが理解されるべきである。
【0106】
一般手順
別途示されない限り、実施例及び比較実験は、温度及びガス流量の正確な制御のための手段を備えたフロースルーフィッシャーポーター反応器90mL中で実施される。反応器オフガスをオンラインGCで分析して分圧を決定する。流通式反応器での混合は、反応器の塔底にあるスパージャを介した連続的なガス流の影響を受ける。この反応器の設計は、米国特許第5,731,472号に詳細に記載されており、その教示は参照により組み込まれる。
【0107】
【0108】
典型的な実験では、溶媒(テキサノールまたはテトラグリム)を、反応温度で窒素下で組み立てた反応器に添加する。次いで、トルエン中の配位子Aのストック溶液を添加し、続いてトルエン中のジカルボニル-アセチルアセトナトロジウムから調製したロジウムのストック溶液を添加する。110℃で30~60分間、165psia(1138kPa)で反応器内の液体に1:1のCO:H2混合物を通し、ロジウム-配位子錯体を形成する。その後、反応器分圧への調整が行われる。引き続いて反応器を密閉し、撹拌せずに温度を維持する。
【0109】
比較実験A-本発明の実施形態ではない
反応器中の300ppmのロジウム及び10モル当量の配位子Aを含むTexanol溶液を110℃で窒素下でシンガスもオレフィンもなしで加熱することにより、「気化器条件」をシミュレートするための一般的な手順の装置で実験を行う(全圧165psia;(1138kPa))である。これらの条件は、典型的な気化器のモデルとして後続の実験で使用される。結果は以下のとおりである。
【0110】
【0111】
これらの条件下で、触媒は、透明な黄色の溶液として開始し、次いで暗色の沈殿物と溶解したロジウムの実質的な消失とともに暗色の溶液へと変化し、急速に分解する。
【0112】
実施例1~3及びC.E. B及びC
一般的手順に従って、テトラグリム中に525ppmのロジウム及び6当量の配位子Aの溶液を個々の反応器に充填する。1:1のCO:H2ガスと30~60分間接触させた後、比較実験B(C.E. B)を約60分間窒素でフラッシュし、次いで165psia(1138kPa)で密封する。残りの反応器をCOで約60分間フラッシュし、次いで表1に示す圧力下で密閉する。7日後、反応器をサンプリングしてロジウム消失を測定し、その結果を表1に要約する。
【0113】
【0114】
比較実験Bは、原子吸光分析(AA)及び視覚的外観(ロジウム黒色)の両方による実質的なロジウム消失を示す。実施例1~3は実質的な改善を示す。分析結果は消失がほとんどまたは全くないが、視覚的外観は触媒劣化の開始を示すが、比較実験と比較してはるかに低い速度である。
【0115】
実施例4~8及びC.E. D
一般的手順に従って、テトラグリム中に300ppmのロジウム及び10当量の配位子Aの溶液を個々の反応器に充填する。1:1のCO:H2ガスと30~60分間接触させた後、比較実験D(C.E. D)を約60分間窒素でフラッシュし、次いで165psia(1138kPa)で密封する。残りの反応器をCOで約60分間フラッシュし、次いで表2に示す圧力下で密閉する。6日後、反応器をサンプリングしてロジウム消失を測定し、その結果を表2に要約する。
【0116】
【0117】
表1及び表2の結果は、ロジウム消失がCOの雰囲気を維持することによって著しく低下し、より具体的には16psia(110kPa)を超える圧力が所望の結果をもたらすことを示している。
【0118】
実施例9~11及びC.E. E
一般的手順に従って、テトラグリム中に300ppmのロジウム及び10当量の配位子Aの溶液を110℃で個々の反応器に充填する。1:1のCO:H2ガスと30~60分間接触させた後、比較例E(C.E. E)を約60分間窒素でフラッシュし、次いで165psia(1138kPa)で密封する。実施例9をCOで約60分間フラッシュし、次いで表3に示す圧力下で密封する。残りの反応器をCO及びH2の混合物で約60分間フラッシュし、次いで表3に示す雰囲気下で密閉する。反応器をサンプリングしてロジウム消失を測定し、その結果を表3に要約する。
【0119】
【0120】
表3の結果は以下を示している。
1)壊滅的な触媒の分解は、COの不在下で観察される。
2)1:1のシンガスの雰囲気は、COが枯渇した環境に比べていくつかの利点をもたらす。しかしながら、COリッチまたはほぼ純粋なCO雰囲気が好ましい。
3)1:1のシンガスの雰囲気は、1:2のCO:H2雰囲気に対して有益である。
4)H2の不在下でのCOは、最良の性能を提供する。
【0121】
ロジウム触媒によるヒドロホルミル化は、[H2]に対する高次の応答を示すことがあるので、水素が豊富な雰囲気下での運転は、オレフィン転化速度を最大にするために明らかに有益であろう。しかしながら、これは触媒のための最良の環境ではない。一酸化炭素に富んだ雰囲気を維持することがロジウムクラスター化を遅くするという事実は、ストリップガス気化器(すなわち、気化ガスを用いて生成物の除去を促進する気化器)において触媒を安定化する能力を強調する。
【0122】
実施例12~14、及びC.E. F、G、及びH
この試験は、一酸化炭素、水素、及び窒素の正確な制御のための質量流量メーターと、反応器温度の正確な制御のための電気ヒーターを備えた100mLのステンレススチールオートクレーブ中で行われる。各オートクレーブに、50mLのトルエン中に185ppmのロジウム及び10当量の配位子Aの溶液を入れ、115psiaの1:1シンガスで3回フラッシュする。次いで、反応器を1:1のシンガスで115psiaに加圧し、撹拌しながら85℃で30分間加熱した後、熱を止め、溶液を室温に冷却させる。反応器を通気させ、表4に示すようにガス混合物を変化させて599.5~607.5psia(4133.4~4188.6kPa)に加圧する。溶液を4日間撹拌しながら110℃に加熱し、その後反応器を冷却し、通気した。通気流をGCで分析してガス組成を確認する。反応器は次に解体される。各溶液のロジウム濃度をICPで測定し、各溶液の外観を記録する。結果を表4に要約する。
【0123】
【0124】
表4の結果はさらに、一酸化炭素の有益性及び水素の有害な影響を確立する。
【0125】
実施例15
図1は、液体触媒流のヒドロホルミル化反応域への再循環及びCO含有流をストリッピングガス(ライン55)に添加して、ヒドロホルミル化生成物流からアルデヒド生成物及び触媒を引き続いて分離するヒドロホルミル化プロセスを示す。
図1の気化器プロセスは、Cambridge,Massachusetts,USAにある、ASPEN Technology,Inc.から入手可能なASPEN Plusソフトウェアを使用してモデル化される。反応域と気化器との間のノックアウト容器は使用されない。気化器凝縮器からの通気塔頂は、ブロワ400を介してライン24を介して気化器に戻され、追加のCO(純度95%)がライン55を介して添加される。このモデルは、配位子Aのロジウム-オルガノホスファイト配位子錯体触媒の存在下でのC8オレフィンの一酸化炭素と水素によるヒドロホルミル化を仮定している。
表5に示すように、ASPENモデルは、気化器の動作に関連する
図1の流れの質量バランスを提供する。定常状態では、気化器200の条件は以下の通りである:全圧は27.6psia(190kPa)、CO分圧は24.9psia(172kPa)、及び気化域温度は115℃である。気化器凝縮器300の出口プロセス温度は40℃である。ストリップガス流20、流れ24と流れ55の合計は、28.9psia(199kPa)CO分圧で31.9psia(220kPa)及び58℃である。
【0126】
【0127】
表5は、全生成速度26と比較して非常に小さい流れ55をCO流れとして加えた場合、CO分圧は、上流のヒドロホルミル化反応に影響を与えずに>24psia(165kPa)で容易に制御される、すなわち、無視できる量のCOが気化器から流れ23を介して反応器に移送される、ことを示している。流れ55が存在しない場合、米国特許第8,404,903号に教示されているように、気化器CO分圧は5psia(34kPa)未満である。表5はまた、重合体をその形成速度でモデル化し、時間の経過とともに反応域中のそれらの濃度を一定に保つ二量体及び三量体の除去を示す。主に気化器全圧及び気化器温度が異なる他のオレフィンについても同様の結果が得られる。
【0128】
実施例16、17、ならびに比較実験I及びJ
試験は、3つの直列に接続された1リットルのステンレススチール製撹拌タンク反応器からなる液体再循環ヒドロホルミル化システムで行われる。このシステムには、一酸化炭素、水素、及び窒素の正確な制御のための質量流量メーターと、反応器温度の正確な制御のための電気ヒーターとが装備されている。C8オレフィン混合物は、制御された速度で第1の反応器に供給される。液体反応溶液の一部は、最終反応器からフラッシュ容器に連続的に供給され、そこでガスと液体の初期分離が行われる。フラッシュ容器を窒素でパージし、液体流出物を濾過し、加熱された垂直に取り付けられた管(気化器)の上の分配プレートに供給する。液体流出物は、流動ガス(ストリップガス)の流れの下で気化器内の管の表面を流れ落ちる。ストリップガスの流量は、圧縮機の上流の制御弁を使用して制御され、流れは、圧縮機の下流の流量計を使用して正確に測定される。ストリップガスのモルパーセント組成は、GC分析によって決定される。気化器からの流出流は、気化器の塔底に位置するガス-液体分離器へと送られ、ここで、気化したアルデヒドが、反応溶液中の不揮発性の成分から分離される。気化したアルデヒド生成物を凝縮させ、生成物受け器に集める。残留アルデヒド、アルデヒド重縮合物及び濃縮触媒を含む不揮発性成分は、一連の第1の反応器にポンプで戻される。揮発性の非凝縮性ガスは圧縮機を用いて再循環され、ストリップガスとして利用される。
【0129】
連続的な3リットルのヒドロホルミル化システムに、最初に、混合C8オレフィンと、トルエン中のロジウムと、配位子Aの溶液とを充填し、連続操作の過程で、生成アルデヒド及びアルデヒド重縮合生成物が反応溶媒として作用し始める(例えば、約2日後)。反応パラメーターは、表6に要約されるように確立される。
【0130】
【0131】
ストリップガス組成を変化させ、ロジウム消失に対する影響をシステム全体を通してICPを用いて測定する。結果を表7に要約する。
【0132】
【0133】
表7の結果は以下を示している。
・ストリップガスが主に窒素(C.E.J)である場合、最高ロジウム消失が生じる。
・シンガス(C.E.I)からなるストリップガスは、窒素ストリップガス(C.E.J)に対してロジウム消失速度を低下させる。
・ストリップガスが主にCOである場合(実施例16及び17)に最良の結果が得られる。
・水素の有害な影響が再び実証される(実施例16及び17と比較したC.E.I)。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
連続ヒドロホルミル化プロセスであって、(a)反応流体を反応器から除去することと、(b)前記反応流体を気化器に送ることと、(c)前記気化器内の前記反応流体を分離して、触媒含有液体流及びガス相流を生成することと、(d)前記気化器内の平均CO分圧を16psia(110kPa)より高く維持することとを含む、連続ヒドロホルミル化プロセス。
項2.
連続ヒドロホルミル化プロセスであって、
(a)1つ以上の生成物と、1つ以上の重質副生成物と、遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒と、1つ以上の未転化反応物と、1つ以上の不活性光とを含む反応流体を気化器に供給することと、
(b)前記気化器から、1つ以上の生成物と、1つ以上の未転化反応物と、1つ以上の不活性光と、前記重質副生成物の一部とを含む塔頂ガス流を除去し、前記塔頂ガス流を凝縮器に供給することと、
(c)前記凝縮器から、1つ以上の未転化反応物と1つ以上の不活性光とを含む凝縮器塔頂ガス流を除去することと、
(d)前記凝縮器塔頂ガス流の少なくとも一部を前記気化器に再循環させることと、
(e)前記気化器内の平均CO分圧が16psia(110kPa)よりも高くなるように、前記凝縮器塔頂ガス流に加えて、COを含むガス流を前記気化器に導入することと、
(f)前記遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒と前記重質副生成物の残部とを含む液体再循環触媒流を、前記気化器から排出流として除去することとを含む、連続ヒドロホルミル化プロセス。
項3.
前記気化器内の前記平均CO分圧が少なくとも20psia(138kPa)である、項1または2に記載のプロセス。
項4.
前記気化器内の前記平均CO分圧が少なくとも25psia(172kPa)である、項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
項5.
前記気化器のプロセス出口温度が少なくとも80℃であり、好ましくは少なくとも90℃である、項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
項6.
前記生成物がアルデヒドを含む、項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
項7.
前記気化器において、H2分圧が0.1psia(0.7kPa)以上かつ前記CO分圧の半分未満である、項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
項8.
前記気化器において、H2分圧が0.1psia(0.7kPa)以上かつ前記CO分圧の10%以下である、項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
項9.
前記反応流体が、ヒドロホルミル化反応条件下で反応域において、COと、H2と、オレフィンと、ロジウム及びオルガノホスファイト配位子を含む触媒とを接触させて、前記反応流体中にアルデヒド生成物を生成することによって得られる、項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
項10.
前記触媒が遷移金属-オルガノホスファイト配位子錯体触媒であり、前記配位子がオルガノモノホスファイト配位子を含む、項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
項11.
前記気化器内の平均H2分圧を2psia(14kPa)未満に維持することをさらに含む、項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
項12.
前記反応流体を前記気化器に送る前に、前記反応流体をフラッシュ容器に送ることをさらに含む、項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。