(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物および光学フィルター
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220824BHJP
C08K 5/5435 20060101ALI20220824BHJP
C08K 5/375 20060101ALI20220824BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/5435
C08K5/375
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2018036829
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】松本 愛
(72)【発明者】
【氏名】青木 正矩
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-063144(JP,A)
【文献】特開2013-035937(JP,A)
【文献】特表2011-517321(JP,A)
【文献】特開2015-151540(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114363(WO,A1)
【文献】特許第6833763(JP,B2)
【文献】特開2008-231304(JP,A)
【文献】国際公開第2011/061906(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235510(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/087983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
G02B 5/20-5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂、
(B)エポキシ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、およびその加水分解縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種、および
(C)チオエーテル結合を有する紫外線吸収剤
を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)成分の紫外線吸収剤は、下記式(1)で表される
化合物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、
R
1はシアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基またはアミド基を表し、
R
2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基またはヘテロアリール基を表し、
R
1とR
2がともにアシル基、カルボン酸エステル基またはアミド基である場合、R
1とR
2は互いに連結して環を形成していてもよく、
R
3は水素原子またはアルキル基を表し、
R
4は水素原子、有機基または極性官能基を表し、複数のR
4は互いに同一または異なっていてもよく、
R
5は有機基を表し、
Xは硫黄原
子を表す。
]
【請求項3】
前記(B)成分として、エポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解物および/または加水分解縮合物を含有する請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(D)近赤外吸収色素および/または可視光吸収色素を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
基板と、前記基板上に形成され、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化した樹脂層とを有することを特徴とする光学フィルター。
【請求項6】
請求項5に記載の光学フィルターを備えることを特徴とするセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物と、当該樹脂組成物から形成された樹脂層を有する光学フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物や、当該樹脂組成物から形成された光学フィルム等が知られている(例えば、特許文献1~4)。このような樹脂組成物は、紫外線による劣化を抑えることができ、また紫外~紫色領域の光を吸収する光学フィルター形成用の樹脂組成物として適用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-190553号公報
【文献】特開2010-100787号公報
【文献】特開2003-26942号公報
【文献】特開2003-43259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂組成物は用途に応じて様々な形状に成形して用いられ、例えば樹脂組成物から光学フィルターを形成する場合は、樹脂組成物を基板上に塗工して樹脂層を形成することにより、厚みの薄い光学フィルターを得ることができる。このように樹脂組成物を基板上に塗工して樹脂層を形成する場合、樹脂層と基板との密着性を高めて、できるだけ一体化することが好ましい。特に光学フィルターでは、樹脂層と基板の間に隙間が生じると、屈折率が変わったりして所望の光学性能が得られなくなるおそれがあるため、樹脂層と基板との密着性を確保することが重要となる。この際、過酷な条件下でも樹脂層と基板との密着性が維持されることが望ましい。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物を用いて基板上に樹脂層を形成した際に、過酷な条件下でも樹脂層の基板への密着性を確保することができる樹脂組成物と、当該樹脂組成物から形成された光学フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を含む。
[1](A)熱可塑性樹脂、(B)エポキシ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、およびその加水分解縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種、および(C)エーテル結合および/またはチオエーテル結合を有する紫外線吸収剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
[2]前記(B)成分として、エポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解物および/または加水分解縮合物を含有する[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(C)成分の紫外線吸収剤は、少なくともチオエーテル結合を有する[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記(C)成分の紫外線吸収剤は、下記式(1)で表される化合物である[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、
R
1はシアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基またはアミド基を表し、
R
2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基またはヘテロアリール基を表し、
R
1とR
2がともにアシル基、カルボン酸エステル基またはアミド基である場合、R
1とR
2は互いに連結して環を形成していてもよく、
R
3は水素原子またはアルキル基を表し、
R
4は水素原子、有機基または極性官能基を表し、複数のR
4は互いに同一または異なっていてもよく、
R
5は有機基を表し、
Xは硫黄原子または酸素原子を表す。]
[5]さらに(D)近赤外吸収色素および/または可視光吸収色素を含有する[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]基板と、前記基板上に形成され、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化した樹脂層とを有することを特徴とする光学フィルター。
[7][6]に記載の光学フィルターを備えることを特徴とするセンサー。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂に、(B)エポキシ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、およびその加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種と、(C)エーテル結合および/またはチオエーテル結合を有する紫外線吸収剤とが配合されているため、当該樹脂組成物を用いて基板上に樹脂層を形成した際に、樹脂層の基板への密着性を高めることができる。このように形成された樹脂層は、基板上に樹脂層を形成した直後だけでなく、過酷な条件である水煮沸後においても、優れた基板への密着性を示すものとなる。また、このように樹脂層が基板上に形成された光学フィルターは、樹脂層と基板との密着性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)エポキシ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、およびその加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種と、(C)エーテル結合および/またはチオエーテル結合を有する紫外線吸収剤とを含有するものである。本発明の樹脂組成物は上記の(A)~(C)成分を含有することにより、当該樹脂組成物を用いて基板上に樹脂層を形成した際に、樹脂層の基板への密着性を高めることができる。
【0009】
(A)成分として用いられる熱可塑性樹脂は、加熱することにより軟化する樹脂であれば特に限定されない。熱可塑性樹脂としては、透明性が高い樹脂を用いることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、シクロオレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN)等)等が挙げられる。これらの中でも、透明性や耐熱性に優れる点から、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素化芳香族ポリマーが好ましい。
【0010】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有する重合体であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系樹脂は主鎖に環構造を有するものも好ましく、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、マレイミド環構造等のカルボニル基含有環構造;オキセタン環構造、アゼチジン環構造、テトラヒドロフラン環構造、ピロリジン環構造、テトラヒドロピラン環構造、ピペリジン環構造等のカルボニル基非含有環構造が挙げられる。なお、カルボニル基含有環構造には、イミド基などのカルボニル基誘導体基を含有する構造も含む。カルボニル基含有環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2004-168882号公報、特開2008-179677号公報、国際公開第2005/54311号、特開2007-31537号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0011】
シクロオレフィン系樹脂は、モノマー成分の少なくとも一部としてシクロオレフィンを用い、これを重合して得られる重合体であり、主鎖の一部に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプラスチック社製のトパス(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)等を用いることができる。
【0012】
ポリイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にイミド結合を含む重合体であり、例えば、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを重合させてポリアミド酸を得て、これを脱水・環化(イミド化)させることにより製造することができる。ポリイミド樹脂としては、芳香族環がイミド結合で連結された芳香族ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、デュポン社製のカプトン(登録商標)、三井化学社製のオーラム(登録商標)、サンゴバン社製のメルディン(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI3000シリーズ等を用いることができる。
【0013】
ポリアミドイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合とイミド結合を含む重合体である。ポリアミドイミド樹脂は、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のトーロン(登録商標)、東洋紡社製のバイロマックス(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI5000シリーズ等を用いることができる。
【0014】
ポリエステル樹脂は、主鎖の繰り返し単位にエステル結合を含む重合体であり、例えば、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)とを縮重合させることにより得ることができる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、例えば、大阪ガス化学社製のOKPシリーズ、帝人社製のTRNシリーズ、テオネックス(登録商標)、デュポン社製のライナイト(登録商標)、三菱化学社製のノバペックス(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のノバデュラン(登録商標)、東レ社製のルミラー(登録商標)、トレコン(登録商標)等を用いることができる。
【0015】
ポリアリレート樹脂は、2価フェノール化合物と2塩基酸(例えば、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸)とを縮重合して得られる重合体であり、主鎖の繰り返し単位に芳香族環とエステル結合とを含む繰り返し単位を有する。ポリアリレート樹脂は、例えば、クラレ社製のベクトラン(登録商標)、ユニチカ社製のUポリマー(登録商標)やユニファイナー(登録商標)等を用いることができる。
【0016】
ポリアミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合を含む重合体であり、例えば、ジアミンとジカルボン酸とを縮重合させることにより得ることができる。ポリアミド樹脂は主鎖に脂肪族骨格を有するものであってもよく、このようなアミド樹脂として、例えばナイロンを用いることができる。ポリアミド樹脂は芳香族骨格を有するものであってもよく、このようなポリアミド樹脂としてアラミド樹脂が知られている。アラミド樹脂は、耐熱性に優れ、強い機械強度を有する点から好ましく用いられ、例えば、帝人社製のトワロン(登録商標)、コーネックス(登録商標)、デュポン社製のケブラー(登録商標)、ノーメックス(登録商標)等を用いることができる。
【0017】
ポリカーボネート樹脂は、主鎖の繰り返し単位にカーボネート基(-O-(C=O)-O-)を含む重合体である。ポリカーボネート樹脂としては、帝人社製のパンライト(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチック社製のユーピロン(登録商標)、ノバレックス(登録商標)、ザンター(登録商標)、住化スタイロンポリカーボネート社製のSDポリカ(登録商標)等を用いることができる。
【0018】
ポリスルホン樹脂は、芳香族環とスルホニル基(-SO2-)と酸素原子とを含む繰り返し単位を有する重合体である。ポリスルホン樹脂は、例えば、住友化学社製のスミカエクセル(登録商標)PES3600PやPES4100P、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のUDEL(登録商標)P-1700等を用いることができる。
【0019】
フッ素化芳香族ポリマーは、1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位を有する重合体であり、これらの中でも、1以上のフッ素原子を有する芳香族環とエーテル結合とを含む繰り返し単位を必須的に含む重合体であることが好ましい。フッ素化芳香族ポリマーは、例えば、特開2008-181121号公報に記載されたものを用いることができる。
【0020】
(A)成分として用いられる熱可塑性樹脂は透明性が高いことが好ましく、これにより樹脂組成物を光学用途に好適に適用しやすくなる。熱可塑性樹脂は、例えば、厚さ0.1mmでの全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の前記全光線透過率の上限は特に限定されず、全光線透過率は100%以下であればよいが、例えば95%以下であってもよい。全光線透過率は、JIS K 7105に基づき測定する。
【0021】
熱可塑性樹脂はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましく、これにより、樹脂組成物から形成された樹脂層の耐熱性を高めることができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えば、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、樹脂組成物の成形加工性を高める点から、例えば380℃以下が好ましい。
【0022】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、45質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、また99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。なお、樹脂組成物の固形分量とは、樹脂組成物が溶媒を含有する場合に、溶媒を除いた樹脂組成物の量を意味する。
【0023】
樹脂組成物は、(B)成分として、エポキシ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解物、およびエポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を含有する。樹脂組成物が(B)成分を含有することにより、後述する(C)成分と相まって、当該樹脂組成物を用いて基板上に樹脂層を形成した際に、樹脂層の基板への密着性を高めることができる。
【0024】
本発明者らが、樹脂組成物に配合するシランカップリング剤について様々な種類を検討したところ、エポキシ基を含有するシランカップリング剤を用いた場合は、メルカプト基、アミノ基あるいはカルボン酸基等を有するシランカップリング剤を用いる場合に比べて、樹脂層の基板への密着性が向上することが明らかになった。特に、エポキシ基含有シランカップリング剤は、後述する(C)成分と併用した場合に、通常の状態での密着性だけでなく、過酷な条件である水煮沸後の密着性も付与できることが明らかになった。
【0025】
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、エポキシ基とアルコキシシリル基を有する化合物を用いることができる。エポキシ基含有シランカップリング剤には、エポキシ基が1つのみ含まれていてもよく、複数含まれていてもよく、またアルコキシシリル基が1つのみ含まれていてもよく、複数含まれていてもよい。
【0026】
エポキシ基含有シランカップリング剤がアルコキシシリル基を1つのみ含むものである場合、当該シランカップリング剤としては、下記式(4)で表されるエポキシ基を有するアルコキシシランが好ましく用いられる。
SiR11
kR12
m(OR13)n(OH)4-k-m-n (4)
【0027】
式(4)中、R11はエポキシ基含有基を表し、R12とR13はそれぞれ独立してアルキル基を表し、kは1~3の整数を表し、mは0~2の整数を表し、nは1~3の整数を表す。kが2以上のとき、複数のR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、mが2のとき、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上のとき、複数のOR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。R11とR12とOR13とOHは、それぞれSiに直接結合する基である。
【0028】
式(4)において、R11のエポキシ基含有基としては、エポキシ基を含むものであれば特に限定されず、グリシドキシ基含有基やシクロアルケンオキサイド(脂環式エポキシ基)含有基が挙げられる。グリシドキシ基やシクロアルケンオキサイドは、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10のアルキレン基)等の連結基を介してケイ素原子に結合していてもよい。R11にはエポキシ基が1つのみ含まれていることが好ましい。R11のエポキシ基含有基としては、グリシドキシ基、3-グリシドキシプロピル基、8-(グリシドキシ)-n-オクチル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。なお、樹脂層の基板への密着性を高める観点から、R11に含まれるエポキシ基はケイ素原子との距離が離れすぎないことが好ましく、例えばグリシドキシ基やシクロアルケンオキサイドは、ケイ素原子に直接結合しているか、炭素数1~6のアルキレン基を介してケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0029】
式(4)において、R12とR13のアルキル基は、炭素数1~6が好ましく、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3である。R12としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく挙げられる。OR13としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基が好ましく挙げられる。
【0030】
式(4)において、kは1または2が好ましく、1がより好ましく、これにより樹脂層の基板への密着性を高めやすくなる。また、mは0または1が好ましく、0がより好ましく、nは2または3が好ましい。
【0031】
エポキシ基含有シランカップリング剤がアルコキシシリル基を複数含むものである場合、当該シランカップリング剤としては、ポリマー型多官能エポキシ基含有シランカップリング剤(以下、単に「ポリマー型シランカップリング剤」と称する場合がある)を用いることができる。ポリマー型シランカップリング剤は、有機ポリマー鎖にエポキシ基含有基とアルコキシシリル基含有基が結合した構造を有しており、1分子中にアルコキシシリル基を複数含むとともに、エポキシ基も複数含むことができる。なお、ポリマー型シランカップリング剤の有機鎖にはポリシロキサンは含まれない。ポリマー型シランカップリング剤は、このように1分子中にアルコキシシリル基とエポキシ基を複数有することができるため、樹脂や基板との反応点が多く形成され、樹脂層の基板への密着性を高めることができる。ポリマー型シランカップリング剤は、1分子中にアルコキシシリル基よりもエポキシ基を多く含むことが好ましく、エポキシ基/アルコキシシリル基のモル比が例えば2~5であることが好ましい。
【0032】
(B)成分として用いられるエポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解物は、当該シランカップリング剤に含まれるアルコキシシリル基を加水分解によりシラノール基に変換することで得ることができる。また、エポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解縮合物は、当該シランカップリング剤の加水分解物に含まれるシラノール基を脱水縮合させてシロキサン結合(-Si-O-Si-)を形成することにより得ることができる。通常シランカップリング剤を加水分解させると、シランカップリング剤の加水分解物が得られるとともに、当該加水分解物に含まれるシラノール基の脱水縮合反応も起こることにより、シランカップリング剤の加水分解縮合物も容易に得られる。
【0033】
シランカップリング剤の加水分解縮合物は、同種のシランカップリング剤の加水分解物の脱水縮合物であってもよく、異種のシランカップリング剤の加水分解物の脱水縮合物であってもよい。シランカップリング剤の加水分解縮合物が上記式(4)で表されるケイ素化合物の縮合物である場合、当該縮合物としては、下記式(5)で表される化合物が示される。
SipOqR11
rR12
s(OR13)t(OH)u (5)
【0034】
上記式(5)中、pは2以上の整数を表し、qはp-1~pの整数を表し、rはp~2p+1の整数を表し、sは0~p+2の整数を表し、tは0~p+2の整数を表し、uは0~p+2の整数を表し、r+s+t+uの上限は2p+2である。式(5)中、複数のR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、sが2以上のとき、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよく、tが2以上のとき、複数のOR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。R11とR12とOR13とOHは、それぞれSiに直接結合する基である。
【0035】
式(5)において、pは1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、これにより樹脂との相溶性を高めやすくなる。uは1以上であることが好ましく、0.5p以上がより好ましく、p以上がさらに好ましく、これにより樹脂層の基板への密着性を高めやすくなる。sはp以下であることが好ましく、0.5p以下がより好ましく、0であることがさらに好ましい。rは、樹脂との相溶性やハジキ防止の観点から、2p以下であることが好ましく、1.5p以下であることがより好ましく、r=pであることがさらに好ましい。
【0036】
樹脂組成物には、(B)成分が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。なお樹脂組成物には、(B)成分として、少なくともエポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解物または加水分解縮合物が含まれることが好ましく、これにより樹脂層の基板への密着性、とりわけ過酷な条件である水煮沸後の密着性を高めることができる。より好ましくは、エポキシ基を有するアルコキシシラン(例えば、上記式(4)で表されるアルコキシシラン)の加水分解物または加水分解縮合物が、(B)成分に少なくとも含まれる。この場合、(B)成分100質量%中のエポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解物と加水分解縮合物の合計含有割合は10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0037】
(B)成分には、エポキシ基を有するアルコキシシラン(例えば、上記式(4)で表されるアルコキシシラン)の加水分解縮合物が含まれることがさらに好ましい。この場合の脱水縮合物としては、エポキシ基を有するアルコキシシランの二量体や三量体が少なくとも含まれることが好ましい。例えば、(B)成分として用いられるシラン化合物の重量平均分子量を測定したときに、五量体相当(ただし、アルコキシ基は全て水酸基になっているとする)の分子量以下となることが好ましく、四量体相当の分子量以下となることがより好ましい。当該重量平均分子量の具体的な値としては、例えば、300以上が好ましく、また1000以下が好ましく、800以下がより好ましく、600以下がさらに好ましい。
【0038】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、また20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。樹脂組成物の固形分100質量%中、(B)成分が0.1質量%以上の含有量で含まれていれば、当該樹脂組成物を用いて基板上に樹脂層を形成した際に、樹脂層の基板への密着性を高めやすくなる。一方、樹脂組成物中に(B)成分が過剰に含まれていても、樹脂層の基板への密着性を高める効果がそれ以上あまり向上しないことから、樹脂組成物の固形分100質量%中、(B)成分の含有量は20質量%以下であることが好ましい。(A)成分の熱可塑性樹脂を基準とした(B)成分の含有量としては、当該樹脂100質量部に対して、(B)成分の含有量が0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0039】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーにより求めることができる。ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーにより樹脂組成物に含まれる(B)成分のシラン化合物を種類ごとに定量し、その総和から(B)成分の含有量を求めることができる。(B)成分として、シランカップリング剤の脱水縮合物(二量体や三量体等のオリゴマー)が含まれる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析などを組み合わせて、脱水縮合物の存在形態の判断材料とすることもできる。例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤を加水分解またはさらに脱水縮合する場合などは、初期に用いたシランカップリング剤の量から、加水分解またはさらに脱水縮合した後のその残存量を差し引くことで、その加水分解物と加水分解縮合物の含有量を求めることができる。
【0040】
樹脂組成物は、(C)成分として、エーテル結合および/またはチオエーテル結合を有する紫外線吸収剤を含有する。樹脂組成物が、(C)成分として、エーテル結合および/またはチオエーテル結合を有する紫外線吸収剤を含有することにより、上記に説明した(B)成分と相まって、当該樹脂組成物を用いて基板上に樹脂層を形成した際に、樹脂層の基板への密着性を高めることができる。このような紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤が通常有する二重結合基や芳香族基と、エーテル結合および/またはチオエーテル結合とが1つの分子内に含まれることによって、樹脂層と基板との密着性を高めるように作用すると考えられる。
【0041】
樹脂組成物は、(C)成分として紫外線吸収剤を含有することにより、紫外~紫色領域の光に起因する劣化を抑制することができるとともに、これを硬化してフィルム等の樹脂成形体とすることで、紫外~紫色領域の光をカットする光学フィルター等に適用することができる。さらに、樹脂組成物や樹脂成形体の保管の際や光学フィルターの製造・加工(例えば蒸着や実装など)の際に紫外光にさらされても、当該紫外光から樹脂成分や樹脂組成物中に含まれる他の成分(後述する近赤外吸収色素や可視光吸収色素など)を保護し、これらの成分の劣化を抑制することができる。
【0042】
紫外線吸収剤としては、吸収スペクトルを測定したときに、例えば波長300nm以上420nm以下の範囲に吸収極大を有する吸収ピークを示す化合物が好ましく用いられる。紫外線吸収剤の化学構造としては、上記に説明したエーテル結合やチオエーテル結合に加えて、芳香族基を有することが好ましく、アリール基などの芳香族炭化水素基を有することがより好ましい。
【0043】
(C)成分の紫外線吸収剤が有するエーテル結合やチオエーテル結合は、カルボキシル基やスルホ基などの官能基の一部として紫外線吸収剤に含まれるものではなく、従ってエーテル結合やチオエーテル結合には、カルボニル基(-C(=O)-)、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、リン原子などが隣接して結合していない。エーテル結合の両側、あるいはチオエーテル結合の両側には、アルキレン基やアリーレン基が結合していることが好ましく、当該アルキレン基やアリーレン基は置換基を有していてもよい。
【0044】
(C)成分の紫外線吸収剤は、樹脂層と基板との密着性を高める観点から、エーテル結合および/またはチオエーテル結合を1分子中に2つ以上有することが好ましい。また、同様の観点から、(C)成分の紫外線吸収剤は、少なくともチオエーテル結合を有することが好ましく、チオエーテル結合を1分子内に2つ以上有することがより好ましい。
【0045】
(C)成分の紫外線吸収剤としては、下記式(1)で表されるスチレン系化合物が好ましく示される。下記式(1)で表されるスチレン系化合物は、紫外~紫色領域にシャープな吸収ピークを示し、優れた紫外線吸収効果を示すとともに、樹脂層の基板への密着性、とりわけ過酷な条件である水煮沸後の密着性を高めることができる。
【0046】
【0047】
式(1)中、R1はシアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基またはアミド基を表し、R2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基またはヘテロアリール基を表し、R1とR2がともにアシル基、カルボン酸エステル基またはアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、R3は水素原子またはアルキル基を表し、R4は水素原子、有機基または極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一または異なっていてもよく、R5は有機基を表し、Xは硫黄原子または酸素原子を表す。
【0048】
式(1)のスチレン系化合物において、R1とR2を含むエチレン構造部は発色団として機能し、少なくともR1は電子求引性基である。R1とR2は、両方とも電子求引性基であってもよい。式(1)では、R1とR2の電子求引性基として、シアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基またはヘテロアリール基が用いられる。式(1)中、R1(またはR2)はR3に対して、シス位にあってもよく、トランス位にあってもよい。
【0049】
R1およびR2のアシル基(アルカノイル基)としては、メタノイル基、エタノイル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、エイコサノイル基等が挙げられる。アシル基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、ハロゲノ基、水酸基等で置換されていてもよい。前記アシル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。アシル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、2~21が好ましく、より好ましくは2~11であり、さらに好ましくは2~6である。
【0050】
R1およびR2のカルボン酸エステル基は、式:*-C(=O)-O-Ra1で表され、*は式(1)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。当該式中、Ra1は炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
【0051】
Ra1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の環状(脂環式)アルキル基等が挙げられる。アルキル基は、水素原子の一部が、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。アルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1~20が好ましく、具体的には、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば炭素数1~20が好ましく、より好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~5であり、環状のアルキル基であれば炭素数4~10が好ましく、5~8がより好ましい。
【0052】
Ra1のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基等が挙げられる。アリール基は、水素原子の一部が、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。アリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、6~20が好ましく、より好ましくは6~12である。
【0053】
Ra1のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アラルキル基に含まれるアリール基は、水素原子の一部が、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。アラルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、7~25が好ましく、より好ましくは7~15である。
【0054】
R1およびR2のアミド基は、式:*-C(=O)-NRa2Ra3で表され、*は式(1)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。当該式中、Ra2は水素原子またはアルキル基を表す。Ra3は炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基、アシル基、アリール基またはアラルキル基を表す。Ra2とRa3のアルキル基、Ra3のアシル基とアリール基とアラルキル基の具体例は、上記のRa1のアルキル基、アリール基、アラルキル基、およびR1とR2のアシル基の説明が参照される。
【0055】
R1とR2がともにアシル基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、この場合のR1とR2から形成される基としては、式:*-C(=O)-Ra4-C(=O)-*で表される基が示される。当該式中、Ra4は直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、*は式(1)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。アルキレン基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。Ra4のアルキレン基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、2~10が好ましく、3~8がより好ましい。R1とR2のアシル基が互いに連結することにより形成される基(環状基)としては、例えば下記式(3-1)に示される基が挙げられる。
【0056】
R1とR2がともにカルボン酸エステル基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、この場合のR1とR2から形成される基としては、式:*-C(=O)-O-Ra5-O-C(=O)-*で表される基が示される。当該式中、Ra5は直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、*は式(1)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。アルキレン基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。Ra5のアルキレン基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1~8が好ましく、1~6がより好ましい。R1とR2のカルボン酸エステル基が互いに連結することにより形成される基(環状基)としては、例えば下記式(3-2)に示される基が挙げられる。
【0057】
R1とR2がともにアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、この場合のR1とR2から形成される基としては、式:*-C(=O)-NRa6-Ra7-NRa8-C(=O)-*で表される基が示される。当該式中、Ra6とRa8は、水素原子または炭化水素基を表し、Ra7は直鎖状または分岐状のアルキレン基、またはカルボニル基を表し、*は式(1)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。Ra6とRa8の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基またはアラルキル基が好ましく挙げられる。Ra6とRa8のアルキル基とアリール基とアラルキル基の具体例は、上記のRa1のアルキル基、アリール基およびアラルキル基の説明が参照される。Ra7のアルキレン基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。Ra7のアルキレン基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1~8が好ましく、1~6がより好ましい。R1とR2のアミド基が互いに連結することにより形成される基(環状基)としては、例えば下記式(3-3)と式(3-4)に示される基が挙げられる。
【0058】
【0059】
R2の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基(アリール基)が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、飽和と不飽和のいずれであってもよく、また直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。脂肪族飽和炭化水素基の具体例は、上記のRa1のアルキル基に関する説明が参照され、脂肪族不飽和炭化水素基の具体例は、上記に説明したRa1のアルキル基の炭素-炭素単結合の一部が二重結合または三重結合に置き換わったものが挙げられる。芳香族炭化水素基(アリール基)の具体例は、上記のRa1のアリール基に関する説明が参照される。
【0060】
R2のヘテロアリール基としては、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。なおヘテロアリール基は、炭素原子が式(1)のエチレン二重結合の炭素原子に結合していることが好ましく、ヘテロ原子に隣接する炭素原子が式(1)のエチレン二重結合の炭素原子に結合していることがより好ましく、これにより式(1)のスチレン系化合物の合成が容易になる。ヘテロアリール基の炭素数は、3~18が好ましく、より好ましくは4~12である。
【0061】
式(1)において、R2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボン酸エステル基またはアミド基であることが好ましく、これにより、紫外~紫色領域の光を効果的に吸収しやすくなる。吸収ピークをより長波長側に設定したい場合など、例えば、完全な紫外領域ではなく、波長350nm~420nmの領域の光を吸収させたいような場合などは、R2は水素原子ではないことが好ましい。
【0062】
式(1)のR3は水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基の具体例は、上記のRa1のアルキル基に関する説明が参照される。R3のアルキル基は、好ましくは炭素数1~3であり、より好ましくは炭素数1~2である。R3としては水素原子が特に好ましい。
【0063】
式(1)において、エチレン構造部に結合したベンゼン環は、当該ベンゼン環に結合したX(硫黄原子または酸素原子)とともにエチレン構造部に電子を供与するように機能し、エチレン構造部の発色団の吸収波長を紫外~紫色領域にくるように調整する。当該ベンゼン環に結合するR4は水素原子、有機基または極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一または異なっていてもよい。
【0064】
式(1)のR4の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基等が挙げられる。R4の極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
【0065】
R4のアルキル基の具体例は、上記のRa1のアルキル基に関する説明が参照される。R4のアルキル基は置換基を有していてもよく、当該アルキル基が有する置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。
【0066】
R4のアルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基に含まれるアルキル基の具体例は、R4のアルキル基に関する説明が参照される。
【0067】
R4のアリール基とアラルキル基の具体例は、上記のRa1のアリール基とアラルキル基に関する説明が参照される。R4のアリール基あるいはアラルキル基に含まれるアリール基は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。
【0068】
R4のアリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基に含まれるアリール基の具体例は、R4のアリール基に関する説明が参照される。
【0069】
R4のヘテロアリール基の具体例は、上記のR2のヘテロアリール基に関する説明が参照される。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、ヘテロアリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。
【0070】
R4のアミノ基としては、式:-NRa9Ra10で表され、Ra9およびRa10がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は上記の説明が参照され、アルケニル基とアルキニル基としては、上記に説明したアルキル基の炭素-炭素単結合の一部が二重結合または三重結合に置き換わった置換基が挙げられ、これらの置換基は水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、Ra9とRa10は互いに連結して環を形成していてもよい。
【0071】
R4のアミド基としては、式:-NH-C(=O)-Ra11で表され、Ra11がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は上記の説明が参照され、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0072】
R4のスルホンアミド基としては、式:-NH-SO2-Ra12で表され、Ra12がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は上記の説明が参照され、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0073】
R4のハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0074】
R4としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリールオキシ基およびアリールチオ基から選ばれる1種以上であることが好ましい。例えば、R4が含窒素置換基である場合は、置換基R4が加熱や反応によって分解したり他の構造に変化して、スチレン系化合物が黄色などの着色を呈しやすくなるため、あまり好ましくない。スチレン系化合物が安定して紫外~紫色領域の光を吸収できるようにする観点からは、R4は水素原子またはアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基は炭素数1~4が好ましく、1~3がより好ましい。なかでも、スチレン系化合物のベンゼン環に結合する4つのR4のうち、2以上が水素原子であることが好ましく、3以上が水素原子であることがより好ましく、4つ全部が水素原子であることが特に好ましい。
【0075】
式(1)のR5の有機基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられる。これらの各基の具体例は、上記のR4のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基に関する説明が参照される。なお、アルキル基およびアラルキル基に含まれるアルキレン基の一部は、Xの隣接位置でなければ、エーテル結合(-O-)またはチオエーテル結合(-S-)によって置き換わってもよい。
【0076】
式(1)のXは硫黄原子または酸素原子を表し、これによりスチレン系化合物が安定して紫外~紫色領域の光を吸収しやすくなる。UVA領域の光を効果的に吸収できるようにする観点からは、Xは硫黄原子であることが好ましい。
【0077】
式(1)のスチレン系化合物において、Xはエチレン構造部に対してオルト位に結合していてもよく、メタ位に結合していてもよく、パラ位に結合していてもよい。なお、スチレン系化合物の製造容易性の観点からは、Xはエチレン構造部に対してパラ位に結合していることが好ましい。
【0078】
上記に説明したスチレン系化合物としては、下記式(2)で表される化合物を用いることが好ましい。下記式(2)で表されるスチレン系化合物は、樹脂層の基板への密着性を高めることができるととともに、耐熱性に優れるものとなる。そのため、樹脂組成物が、(C)成分として下記式(2)で表されるスチレン系化合物を含有していれば、基板への密着性に優れ、耐熱性に優れた樹脂硬化物を形成することができる。本発明の樹脂組成物は、(A)成分として熱可塑性樹脂を含有しているため、(C)成分として下記式(2)で表されるスチレン系化合物を含有していれば、樹脂組成物を加熱成形した場合でも、(C)成分による効果を好適に発揮させることができる。特に、高温での熱硬化反応が必要な樹脂(例えば、ポリイミド前駆体、アクリル樹脂等)や高温での乾燥が必要な樹脂(例えば、高沸点溶媒を含有する樹脂やガラス転移温度が高い樹脂)を用いた場合でも、(C)成分による効果を好適に発揮させることができる。
【0079】
【0080】
式(2)中、R1~R4およびXは上記と同じ意味を表し、aは2以上の整数を表し、Lは2価以上の連結基を表し、Lに結合した基は互いに同一または異なっていてもよい。aおよび連結基Lの価数は、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。安定性の高いスチレン系化合物を容易に製造できる点からは、aは3以下がより好ましく、2であることが特に好ましい。
【0081】
連結基Lとしては、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-等の2価の連結基;アルキル基を有していてもよいメチン基(-C<)、-N<等の3価の連結基;>C<等の4価の連結基;およびこれらを組み合わせた連結基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、アルキレン基とアリーレン基は、水酸基および/またはチオール基を有していてもよい。なお、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-N<の連結基は、Xと隣接して設けられない。
【0082】
スチレン系化合物の安定性を高める観点からは、連結基Lは、水素原子の一部が水酸基および/またはチオール基で置き換えられていてもよいアルキレン基、水素原子の一部が水酸基および/またはチオール基で置き換えられていてもよいアリーレン基、-O-、-S-、およびこれらの基を組み合わせた連結基が好ましい(ただし、エーテル結合およびチオエーテル結合は連続せず、Xと隣接して設けられない)。直鎖状または分岐状のアルキレン基の炭素数(連続する炭素数)は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。環状のアルキレン基であれば、炭素数は4以上が好ましく、5以上がより好ましく、また10以下が好ましく、8以下がより好ましい。アリーレン基の炭素数は、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また10以下が好ましく、8以下がより好ましい。
【0083】
スチレン系化合物としては、下記式(2-1)に示されるスチレン系化合物が特に好ましく示される。このようなスチレン系化合物は、例えば波長300nm~420nmの範囲に吸収極大を有するピークを有し、紫外(UVA)~紫色領域の光を効果的に吸収できるとともに、安定性に優れるものとなり、製造が容易になる。下記式(2-1)において、R1aとR1bの説明は上記のR1の説明が参照され、R2aとR2bの説明は上記のR2の説明が参照され、R3aとR3bの説明は上記のR3の説明が参照され、XaとXbの説明は上記のXの説明が参照される。
【0084】
【0085】
(C)成分として用いられるスチレン系化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。樹脂組成物は、(C)成分として使用可能な紫外線吸収剤(特にスチレン系化合物)に加えて、他の紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、メロシアニン系化合物、トリアジン系化合物等)を含有していてもよい。
【0086】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、所望の性能を発現させる点から、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、樹脂組成物の成形性や成膜性等を高める点から、樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。樹脂組成物が(C)成分としてスチレン系化合物を含有する場合は、スチレン系化合物の含有量が上記範囲にあることも好ましい。樹脂組成物が他の紫外線吸収剤をも含む場合は、これらの合計含有量が上記範囲にあることが好ましい。なお、他の紫外線吸収剤の含有量は、(C)成分として用いられる紫外線吸収剤100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましく、60質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0087】
樹脂組成物は、(D)成分として、近赤外吸収色素および/または可視光吸収色素をさらに含有していてもよい。樹脂組成物が、(D)成分として、近赤外吸収色素および/または可視光吸収色素をさらに含有していれば、当該樹脂組成物から光選択透過性を有する光学フィルターを得ることができる。例えば、樹脂組成物が(D)成分として近赤外吸収色素を含有していれば、紫外~紫色領域および赤色~近赤外領域の光の透過を抑え、可視光領域の光を優先的に透過させる光選択透過フィルター用の樹脂組成物とすることができる。樹脂組成物が(D)成分として可視光吸収色素を含有する場合は、着色フィルターやブルーライト軽減フィルター用などの樹脂組成物とすることができる。
【0088】
近赤外吸収色素は、波長680nm以上1100nm以下の範囲に吸収極大を有するものが好ましい。近赤外吸収色素は、より好ましくは、波長450nm以上1100nm以下の範囲における吸収スペクトルにおいて、波長680nm以上1100nm以下の範囲に吸収極大を有するピークを有し、かつ当該吸収ピークの吸収極大が波長450nm以上1100nm以下の範囲で最大値をとる。当該吸収極大波長は685nm以上がより好ましく、690nm以上がさらに好ましく、また1000nm以下がより好ましく、900nm以下がさらに好ましく、800nm以下がさらにより好ましい。
【0089】
可視光吸収色素としては、可視光領域(例えば、波長420nm超680nm未満の範囲)に極大吸収を有するものであれば特に制限なく用いることができる。なかでも、可視光吸収色素としては、視感度が高い波長500nm以上680nm未満の範囲に極大吸収を有するものを用いることが好ましい。
【0090】
近赤外吸収色素と可視光吸収色素は、有機色素であっても、無機色素であっても、有機無機複合色素(例えば、金属原子またはイオンが配位した有機化合物)であっても、特に限定されない。近赤外吸収色素および可視光吸収色素としては、例えば、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、コリン類等)、シアニン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キサンテン系色素、インドリン系色素、アリールメタン系色素、クアテリレン系色素、ジイモニウム系色素、ペリレン系色素、キナクドリン系色素、オキサジン系色素、ジピロメテン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられる。これらの色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0091】
樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、所望の性能を発現させる点から、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、樹脂組成物の成形性や成膜性等を高める点から、樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。なお、(C)成分と(D)成分との合計含有量(あるいはさらに他の紫外線吸収剤を合わせた合計含有量)は、樹脂組成物の固形分100質量%中、30質量%以下となることが好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0092】
樹脂組成物を、可視光領域の光を優先的に透過させる光選択透過フィルター用の樹脂組成物として用いるような場合は、近赤外吸収色素として、スクアリリウム系色素やクロコニウム系色素を用いることが好ましい。このような色素を用いた場合、(B)成分のシランカップリング剤(加水分解物や加水分解縮合物を含む)としてエポキシ基含有シランカップリング剤を用いることにより、スクアリリウム系色素やクロコニウム系色素の耐久性が向上するという効果も得られる。
【0093】
スクアリリウム系色素としては、例えば下記式(6)で表されるスクアリリウム化合物を用いることができ、クロコニウム系色素としては、例えば下記式(7)で表されるクロコニウム化合物を用いることが好ましい。下記式(6)および式(7)において、R21~R24はそれぞれ独立して、下記式(8)または式(9)で示される基を表す。下記式(8)で表される基を有するスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物は、赤色~近赤外領域の吸収ピークが幅広に形成され、比較的広い波長域の光をカットすることができる。一方、下記式(9)で表される基を有するスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物は、赤色~近赤外領域の吸収ピークがシャープに形成されるため、この吸収ピークに対応した波長域の光を選択的にカットすることが可能となる。
【0094】
【0095】
【0096】
式(8)中、環Pは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、R31~R33はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R32とR33は互いに連結して環を形成してもよい。式(9)中、R34~R38はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R34とR35、R35とR36、R36とR37、R37とR38はそれぞれ、互いに連結して環を形成していてもよい。*は、式(6)中の4員環または式(7)中の5員環との結合部位を表す。
【0097】
なお、スクアリリウム化合物とクロコニウム化合物には共鳴関係にある化合物が存在している場合があるが、上記式(6)で表されるスクアリリウム化合物と上記式(7)で表されるクロコニウム化合物には、これらの共鳴関係にある化合物も含まれる。
【0098】
R31~R38の有機基と極性官能基の詳細は、上記のR4の有機基と極性官能基の説明が参照される。R31~R38が独立した基である場合、R31~R38はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基またはヒドロキシ基であることが好ましい。これらの基の詳細は、上記のR4に関する説明が参照される。
【0099】
R32~R38から形成される各環構造としては、炭化水素環や複素環が挙げられ、これらの環構造は芳香族性を有していても有していなくてもよいが、非芳香族炭化水素環または非芳香族複素環であることが好ましい。非芳香族炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等のシクロアルカン;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(例えば、1,3-シクロヘキサジエン)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン等のシクロアルケン等が挙げられる。非芳香族複素環としては、前記に説明したような炭化水素環の環を構成する炭素原子の1個以上が、N(窒素原子)、S(硫黄原子)およびO(酸素原子)から選ばれる少なくとも1種以上の原子に置き換わった環が挙げられる。非芳香族複素環としては、例えば、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピペリジン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオピラン環、モルホリン環、ヘキサメチレンイミン環、ヘキサメチレンオキシド環、ヘキサメチレンスルフィド環、ヘプタメチレンイミン環等が挙げられる。
【0100】
式(8)の基において、R32とR33が連結して形成される環構造としては、4~9員の不飽和炭化水素環であることが好ましく、なかでもシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンがより好ましい。このように式(8)の基が構成されていれば、赤色~近赤外領域の吸収波形のショルダーピークが低減され、吸収ピークがシャープなものとなる。
【0101】
式(8)の環Pの芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。芳香族炭化水素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。環Pの芳香族複素環は、N(窒素原子)、O(酸素原子)およびS(硫黄原子)から選ばれる1種以上の原子を環構造に含み、芳香族性を有するものであり、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。芳香族複素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。環Pのこれらの環構造を含む縮合環は、芳香族炭化水素環と芳香族複素環とが縮環した構造を有するものであり、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。環Pのπ共役系を適宜設定することにより、赤色~近赤外領域の吸収波長を容易に調整することができる。
【0102】
環Pは置換基を有していてもよく、当該置換基としては上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。環Pが置換基を有する場合、その数は1~3が好ましく、1~2がより好ましく、さらに好ましくは1である。環Pは置換基を有さなくてもよい。
【0103】
式(8)の基を有するスクアリリウム化合物およびクロコニウム化合物の詳細は、特開2016-74649号公報の記載が参照される。
【0104】
式(9)で表される基においては、R35とR36が連結して環を形成していることが好ましく、さらにR36とR37が連結して環を形成していてもよい。この場合、少なくともR34とR38は独立した基となる。このように式(9)の基が構成されていれば、赤色~近赤外領域の吸収ピークがシャープなものとなる。なお、R35とR36から形成される環構造やR36とR37から形成される環構造の環員数は5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。
【0105】
式(9)で表される基では、R36がアミノ基であるか、アミノ基であるR36がR35と連結して環を形成しているか、さらにR37とも連結して環を形成していることが好ましい。この場合、吸収極大波長が長波長側(例えば685nm以上)にシフトして、赤色領域の光の透過率を高めて、透過光の色味を実際のものに近付けることができる。また、同様の観点から、R34またはR38がアミド基であることが好ましい。
【0106】
式(9)で表される基を有するスクアリリウム化合物およびクロコニウム化合物は、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格の両側のベンゼン環が連結基によって連結していてもよい。そのような化合物としては、例えば特開2015-176046号公報に開示されるスクアリリウム化合物が示される。
【0107】
樹脂組成物は、溶媒を含有するものであってもよい。例えば、樹脂組成物が塗料化された樹脂組成物である場合は、溶媒を含むことにより樹脂組成物の塗工が容易になる。溶媒は、(A)~(C)成分の溶媒(溶剤)として機能するものであっても、分散媒として機能するものであってもよい。溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2-アセトキシ-1-メトキシプロパン)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体類(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N-メチル-ピロリドン(具体的には、1-メチル-2-ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
溶媒の含有量としては、樹脂組成物100質量%中、例えば50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。溶媒の含有量をこのような範囲内に調整することにより、各成分濃度の高い樹脂組成物を得ることが容易になる。
【0109】
樹脂組成物は表面調整剤を含んでいてもよく、これにより、樹脂組成物を硬化して樹脂層を形成した際に、樹脂層にストライエーションや凹み等の外観上の欠陥を生じることを抑制することができる。表面調整剤の種類は特に限定されず、シロキサン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系レベリング剤などを用いることができる。表面調整剤としては、例えば、ビックケミー社製のBYK(登録商標)シリーズや信越化学工業社製のKFシリーズ等を用いることができる。
【0110】
樹脂組成物は分散剤を含んでいてもよく、これにより、樹脂組成物の分散性を安定化し、再凝集を抑制することができる。分散剤の種類は特に限定されず、エフカアディティブズ社製のEFKAシリーズ、ビックケミー社製のBYK(登録商標)シリーズ、日本ルーブリゾール社製のソルスパース(登録商標)シリーズ、楠本化成社製のディスパロン(登録商標)シリーズ、味の素ファインテクノ社製のアジスパー(登録商標)シリーズ、信越化学工業社製のKPシリーズ、共栄社化学社製のポリフローシリーズ、ディーアイシー社製のメガファック(登録商標)シリーズ、サンノプコ社製のディスパーエイドシリーズ等を用いることができる。
【0111】
樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0112】
樹脂組成物は、硬化することにより硬化物とすることができる。樹脂組成物は、例えば、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形等をすることにより硬化物とすることができる。この場合、樹脂組成物は、例えば150℃~350℃程度に加熱し溶融させた後、成形すればよい。成形品の形状は特に限定されるものではないが、板状、シート状、粒状、粉状、塊状、粒子凝集体状、球状、楕円球状、レンズ状、立方体状、柱状、棒状、錐形状、筒状、針状、繊維状、中空糸状、多孔質状等が挙げられる。また樹脂を混練する際に、可塑剤等の通常の樹脂成形に用いられる添加剤を加えてもよい。
【0113】
樹脂組成物は、スピンコート法、溶媒キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等により塗工できるよう塗料化されたものであってもよい。この場合、液状またはペースト状の樹脂組成物を基板(例えば、樹脂板、フィルム、ガラス板等)上に塗工することで、厚さ200μm以下のフィルム状や、厚さ200μm超のシート状の硬化物を得ることができる。このようにして得られた樹脂組成物の硬化物は、基材と一体化して取り扱うことができる。本発明の樹脂組成物は基材との密着性に優れることから、塗料化された樹脂組成物として取り扱うことが好ましい。
【0114】
本発明の樹脂組成物は、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途で用いられるフィルター形成用の樹脂組成物として好ましく使用できる。樹脂組成物は、例えば、紫外線カットフィルターや光選択透過フィルター等の光学フィルター用途に用いることができる。
【0115】
携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、ビデオカメラ、表示素子(LED等)等の撮像装置には、被写体の光を電気信号等に変換して出力する撮像素子が通常使用されているが、このような撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の受光素子やレンズを備えるとともに、高性能化のため、画像処理等の妨げとなる光学ノイズ(例えばゴーストやフレア)を除去するための光選択透過フィルターが備えられる。このような光選択透過フィルターには、通常、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜が設けられており、誘電体多層膜は、高屈折率材料層と低屈折率材料層の各層の厚みを調整することにより、所望の波長域の光の入射をカットすることができる。
【0116】
しかし、誘電体多層膜は入射角によってカット波長域あるいは透過波長域が変化するため、入射角が垂直方向から斜め方向に変化すると、カット波長域や透過波長域が短波長側にシフトする。そのため誘電体多層膜では、斜め方向の入射光に対しては、所望の波長域の光を十分にカットできなかったり、あるいは可視光領域の光線もカットして色味が変化する事態が生じうる。特に、撮像素子は近年、小型化とともに薄型化が強く求められており、これに伴いレンズと受光素子との距離が縮まることになるため、受光素子がより斜め方向からの入射光を受光する必要性が出てくる。この場合、カット波長域や透過波長域の入射角依存性がより強くなるため、従来はほとんど影響が出なかった短波長領域の光、すなわち紫外~紫色領域の光の短波長側へのシフトが顕在化することとなる。
【0117】
本発明の樹脂組成物は(C)成分として紫外線吸収剤を含有するため、当該樹脂組成物から形成された光学フィルターは紫外~紫色領域の光を選択的に吸収でき、可視光領域の短波長側における入射角依存性を低減できるものとなる。樹脂組成物が(D)成分として近赤外吸収色素をも含有していれば、当該樹脂組成物から形成された光学フィルターは、可視光領域の短波長側と長波長側の両方における入射角依存性を低減できるものとなる。なお、(C)成分の紫外線吸収剤として上記式(2)で表される化合物を用いる場合は、当該化合物の優れた耐熱性によって、樹脂組成物を加熱成形する際や、蒸着により誘電体多層膜を設けるような場合でも、当該化合物の分解や揮散が抑えられ、紫外~紫色領域の光を効果的にカットできるものとなる。さらに、光学フィルターの保管や製造・加工(例えば蒸着や実装など)の際に紫外光にさらされても、当該紫外光に起因する樹脂成分や近赤外吸収色素等の劣化を抑制することができる。
【0118】
光学フィルターとしては、本発明の樹脂組成物を硬化した樹脂層が基板上に形成されたものが好ましく、これにより基板と樹脂層とが高い密着性で積層一体化した光学フィルターが得られる。樹脂層は、基板の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。
【0119】
樹脂層の厚さは特に限定されないが、所望の光選択透過性能を確保する点から、例えば0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。樹脂層の厚みの上限としては、例えば1mm以下であってもよく、500μm以下、200μm以下、あるいは50μm以下であってもよい。塗料化された樹脂組成物をスピンコート法により基板上に塗工する場合は、樹脂層の厚みをさらに薄く形成することができ、より薄い光学フィルターを形成する観点からは、樹脂層は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0120】
基板としては、樹脂板、樹脂フィルム、ガラス板等の透明基板を用いることが好ましい。なかでも、基板としてはガラス基板を用いることが好ましい。樹脂層をガラス基板上に設けることにより、耐熱性に優れた光学フィルターを得ることができる。このようにして得られた光学フィルターは、例えば、半田リフローにより、光学フィルターを電子部品に実装することが可能となり、電子部品の小型化を図ることができる。またガラス基板は、高温にさらされても割れや反りが起こりにくいため、樹脂層との密着性を確保しやすくなる。さらに、ガラス基板を用いることにより、(B)成分の作用によって、樹脂層とガラス基板との密着性を高めることが容易になる。
【0121】
ガラス基板に用いられるガラスは、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス等の公知のガラスを用いることができる。これらのガラスは、ケイ素原子、ホウ素原子またはリン原子が、酸素原子と網目構造を形成してガラスの主骨格を形成しており、ガラス中には、これらの原子以外にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、鉄、銀、銅、コバルト、ニッケル、鉛、亜鉛、フッ素等の原子またはイオンが存在していてもよい。ガラスは無色透明であってもよく、用途によってはブルーガラスのような着色ガラスを用いてもよい。
【0122】
基板の厚みは、例えば、強度を確保する点から、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、また薄型化の点から、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
【0123】
本発明の樹脂組成物から形成された樹脂層には、第2の樹脂層として、当該樹脂層と同一または異なる樹脂から構成された保護層を積層させてもよい。保護層を設けることにより、樹脂層に含まれる各成分の耐久性(耐分解性)を高めることができる。保護層は、樹脂層の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。
【0124】
光学フィルターは、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性や防眩性を有する層(反射防止膜)、傷付き防止性能を有する層、その他の機能を有する透明基材等を有していてもよい。光学フィルターは、樹脂層上に紫外線反射膜や近赤外線反射膜を有していてもよい。紫外線反射膜や近赤外線反射膜は、樹脂層よりも入光側に設けられていることが好ましい。光学フィルターに紫外線反射膜や近赤外線反射膜が設けられていれば、光学フィルターの透過光から紫外線や近赤外線をよりカットすることができる。紫外線反射膜と近赤外線反射膜は、1つで紫外線反射機能と近赤外線反射機能を有するものであってもよい。
【0125】
紫外線反射膜、近赤外線反射膜、反射防止膜(可視光反射防止膜)は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜から構成することができる。従って、このような機能を光学フィルターに付与する場合は、光学フィルターは誘電体多層膜を有することが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7~2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素をドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2~1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
【0126】
光学フィルターはまた、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化スズを少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜等を有していてもよい。
【0127】
光学フィルターの厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、例えば、撮像素子の小型化への要請に十分に応えることができる。光学フィルターの厚みは、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは150μm以下であり、また30μm以上が好ましく、50μm以上がさらに好ましい。
【0128】
光学フィルターは、イメージセンサー(撮像素子)、照度センサー、近接センサー等のセンサーの構成部材の一つとして用いることができる。例えばイメージセンサーは、被写体の光を電気信号等に変換して出力する電子部品として用いられ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等が挙げられる。イメージセンサーは、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に用いることができる。センサーは、上記の光学フィルターを1または2以上含み、必要に応じて、さらに他のフィルター(例えば、可視光線カットフィルター、赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター等)やレンズを有していてもよい。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0130】
(1)化合物の合成
(1-1)合成例1:紫外線吸収剤Aの合成
200mLの4口フラスコに、4-フルオロベンズアルデヒド4.98g(0.039mol)、エチレングリコールビス(2-メルカプトエチル)エーテル3.57g(0.020mol)、炭酸カリウム10.86g(0.079mol)、アセトニトリル74gを仕込み、窒素流通下(10mL/min)、撹拌羽を用いて撹拌しながら60℃で12時間反応させた。反応終了後、減圧ろ過によって不溶分をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。得られた濃縮物を200mLの4口フラスコに入れ、そこにシアノ酢酸イソブチル11.09g(0.079mol)、ピペリジン3.32g(0.039mol)、メタノール68gを加え、還流条件下で4時間反応させた。反応終了後、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)によって精製を行い、表1に示す紫外線吸収剤Aを得た。紫外線吸収剤Aのトルエン中の透過スペクトルを測定したところ、吸収極大波長は364nmであった。
【0131】
(1-2)合成例2:紫外線吸収剤Bの合成
合成例1において、シアノ酢酸イソブチルの代わりにマロノニトリルを用いたこと以外は、合成例1と同様の手順により表1に示す紫外線吸収剤Bを得た。紫外線吸収剤Bのトルエン中の透過スペクトルを測定したところ、吸収極大波長は381nmであった。
【0132】
(1-3)合成例3:紫外線吸収剤Cの合成
合成例1において、シアノ酢酸イソブチルの代わりにマロン酸ジブチルを用いたこと以外は、合成例1と同様の手順により表1に示す紫外線吸収剤Cを得た。紫外線吸収剤Cのトルエン中の透過スペクトルを測定したところ、吸収極大波長は325nmであった。
【0133】
(1-4)合成例4:近赤外吸収色素Aの合成
特開2016-74649号公報の実施例1-18に記載の方法に従い、表1に示す近赤外吸収色素A(スクアリリウム化合物)を合成した。近赤外吸収色素Aのトルエン中の透過スペクトルを測定したところ、吸収極大波長は737nmであった。
【0134】
(1-5)合成例5:近赤外吸収色素Bの合成
300mLの4口フラスコに、クロロホルム110g、酢酸1.8g、7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン5.4g(0.0303mol)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド12.84g(0.0606mol)を入れ、窒素流通下(10mL/min)、撹拌羽を用いて撹拌しながらイソブチルアルデヒド4.37g(0.0606mol)を10分間かけて滴下した。滴下終了後、得られた反応液を水300gに加え、塩酸を用いて中和した。そこに酢酸エチル300gを加え、分液ロートにて有機相を抽出し、抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を濃縮後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、1-イソブチル-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを得た。
【0135】
次いで、1-イソブチル-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを2.8g(0.012mol)、濃塩酸(塩酸濃度36重量%)を9.0g入れ、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、塩化スズ・2水和物9.1gと濃塩酸(塩酸濃度36重量%)9.1gの入った溶液を、反応熱に注意しながら少しずつ添加した。添加後、3時間ほど室温にて撹拌した。その後、純水100gと酢酸エチル100gの入ったビーカーに、得られた反応液を撹拌させながら加えた。そこに水酸化カリウム溶液を少しずつ添加し、水溶液のpHが10付近になったところでしばらく撹拌した後、分液ロートにて有機相を抽出し、抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を濃縮後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、1-イソブチル-7-アミノ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを得た。
【0136】
次いで、100mLの3口フラスコに、1-イソブチル-7-アミノ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを2.86g(0.0143mol)、超脱水クロロホルムを50g入れ、窒素流通下(5mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、トリエチルアミンを4.34g(0.0429mol)、パルミトイルクロリド(n-ヘキサデカノイルクロリド)を7.86g(0.0286mol)加え、室温にて12時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をイオン交換水に加えて酢酸エチルで抽出を行った。抽出した有機相に硫酸マグネシウム(無水)を加えて脱水した。この有機相から固形物(無機分)をろ別した後、エバポレーターを用いて溶媒を濃縮後、適宜シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)を用い、また濃縮および真空乾燥を行うことにより、1-イソブチル-7-(N-パルミトイルアミノ)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを得た。
【0137】
次いで、300mLの2口フラスコに、1-イソブチル-7-(N-パルミトイルアミノ)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを6.3g(0.0143mol)、スクアリン酸0.82g(0.0072mmol)、1-ブタノール30g、トルエン30gを入れ、窒素流通下(10mL/min)、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、かつディーンスターク装置を用いて溶出してくる水を取り除きながら、還流条件にて3時間反応させた。反応終了後室温まで冷却させ、析出物をろ別した。ろ別した析出物をメタノールで洗浄し、再び析出物のみをろ過して、得られたケーキ(固形物)をアルミナによるカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)によって精製を行った。得られた精製物を真空乾燥機を用いて60℃で12時間乾燥し、表1に示す近赤外吸収色素B(スクアリリウム化合物)を得た。近赤外吸収色素Bのトルエン中の透過スペクトルを測定したところ、吸収極大波長は700nmであった。
【0138】
(1-6)合成例6:可視光吸収色素Aの合成
Tetrahedron Letters, Vol.40, pp.4067-4068 (1999)に記載の手法に従って、表1に示す可視光吸収色素Aを合成した。可視光吸収色素Aのクロロホルム中の透過スペクトルを測定したところ、吸収極大波長は655nmであった。
【0139】
【0140】
(2)樹脂組成物の調製
(2-1)調製例1:樹脂組成物1の調製
撹拌翼を備えた容量2リットルの反応容器に、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン10.01g(0.044mol)、水酸化ナトリウム3.59g(0.090mol)、イオン交換水300gを仕込み、溶解させた後、そこにトリエチルアミン0.89g(0.009mol)を加えて溶解させた。テレフタル酸ジクロリド3.57g(0.021mol)とイソフタル酸ジクロリド3.57g(0.021mol)を500gの塩化メチレンに溶解させた溶液を滴下ロートに入れ、これを前記反応容器に取り付けた。反応容器中の溶液を20℃に保ちながら撹拌し、滴下ロートから塩化メチレン溶液を60分間かけて滴下した。さらにそこに、塩化ベンゾイル0.71g(0.005mol)を10gの塩化メチレンに溶解させた溶液を添加し、60分間撹拌した。得られた反応液に酢酸水溶液を加えて中和して、水相のpHを7にしてから分液ロートを用いて油相と水相を分離した。得られた油相を、撹拌下、メタノールに滴下してポリマーを再沈させ、沈殿をろ過により回収し、80℃オーブンで乾燥して白色固体のポリアリレート樹脂(PAR樹脂)を得た。得られたポリアリレート樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は33,780、数平均分子量(Mn)は8,130であった。
【0141】
上記で得られたポリアリレート樹脂9.9質量部をトルエン43.5質量部とo-キシレン43.5質量部の混合溶媒に加え、さらにそこに紫外線吸収剤Aを1.1質量部、近赤外吸収色素Aを0.8質量部、近赤外吸収色素Bを0.3質量部、表面調整剤としてビックケミー社製BYK-310(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を0.03質量部加え、均一に混合した。このようにして得られたベース樹脂組成物をメルカプト基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製、X-12-1154)と、ベース樹脂組成物:シランカップリング剤=99:1の質量比で25℃で均一に混合し、これを孔径0.1μmのフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)でろ過して異物を取り除くことで、樹脂組成物1を得た。
【0142】
(2-2)調製例2:樹脂組成物2の調製
調製例1において、メルカプト基含有シランカップリング剤の代わりにアミノ基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製、KBP-90)を用いた以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物2を得た。
【0143】
(2-3)調製例3:樹脂組成物3の調製
調製例1において、メルカプト基含有シランカップリング剤の代わりにアルキレングリコール基(―CH(OH)CH2OH)含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製、X-12-1098)を用いた以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物3を得た。
【0144】
(2-4)調製例4:樹脂組成物4の調製
調製例1において、メルカプト基含有シランカップリング剤の代わりにカルボキシル基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製、X-12-1135)を用いた以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物4を得た。
【0145】
(2-5)調製例5:樹脂組成物5の調製
調製例1において、メルカプト基含有シランカップリング剤の代わりにエポキシ基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製、X-12-981S;ポリマー型多官能エポキシ基含有シランカップリング剤)を用いた以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物5を得た。
【0146】
(2-6)調製例6:樹脂組成物6の調製
調製例1において、メルカプト基含有シランカップリング剤の代わりにエポキシ基含有シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、OFS-6040;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を用いた以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物6を得た。
【0147】
(2-7)調製例7:樹脂組成物7の調製
調製例1において、メルカプト基含有シランカップリング剤の代わりにエポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解溶液を用いた以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物7を得た。ポリアリレート樹脂組成物とエポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解溶液との配合比は、前者:後者=99:1(質量比)であった。なお、エポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解溶液は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、OFS-6040)24.7質量部と2-プロパノール32.1質量部と蒸留水3.4質量部とを配合し、25℃で均一に混合した後、ギ酸1.54質量部を加えて90分間混合し、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解反応を進行させることにより調製した。
【0148】
(2-8)調製例8:樹脂組成物8の調製
調製例7において、ポリアリレート樹脂に配合する紫外線吸収剤Aの量を1.1質量部から0.55質量部に変更した以外は、調製例7と同様にして樹脂組成物8を得た。
【0149】
(2-9)調製例9:樹脂組成物9の調製
調製例7において、ポリアリレート樹脂に近赤外吸収色素Aと近赤外吸収色素Bを配合しなかったこと以外は、調製例7と同様にして樹脂組成物9を得た。
【0150】
(2-10)調製例10:樹脂組成物10の調製
調製例7において、ポリアリレート樹脂に配合する紫外線吸収剤を紫外線吸収剤Aから紫外線吸収剤Bに変更した以外は、調製例7と同様にして樹脂組成物10を得た。
【0151】
(2-11)調製例11:樹脂組成物11の調製
調製例7において、ポリアリレート樹脂に配合する紫外線吸収剤を紫外線吸収剤Aから紫外線吸収剤Cに変更した以外は、調製例7と同様にして樹脂組成物11を得た。
【0152】
(2-12)調製例12:樹脂組成物12の調製
調製例7において、ポリアリレート樹脂に配合する色素を近赤外吸収色素Aと近赤外線吸収色素Bから可視光吸収色素Aに変更し、紫外線吸収剤を紫外線吸収剤Aから紫外線吸収剤Cに変更した以外は、調製例7と同様にして樹脂組成物12を得た。
【0153】
(2-13)調製例13:樹脂組成物13の調製
調製例1において、ポリアリレート樹脂にシランカップリング剤を配合しなかったこと以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物13を得た。
【0154】
(2-14)調製例14:樹脂組成物14の調製
調製例7において、ポリアリレート樹脂に紫外線吸収剤Aを配合しなかったこと以外は、調製例7と同様にして樹脂組成物14を得た。
【0155】
(2-15)調製例15:樹脂組成物15の調製
調製例7において、ポリアリレート樹脂の代わりにシクロオレフィン系樹脂(ポリプラスチックス社製、TOPAS(登録商標)5013)を用いた以外は、調製例7と同様にして樹脂組成物15を得た。
【0156】
(3)樹脂層積層基板の作製
上記で得られた各樹脂組成物を、ガラス基板(Schott社製、D263Teco)上に2cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H-D7)を用い、0.2秒間かけて1600回転にし、20秒間その回転数で保持し、その後0.2秒間かけて0回転になるようにして、樹脂組成物をガラス基板上に成膜した。樹脂組成物を成膜したガラス基板を、イナートオーブン(ヤマト科学社製、DN610I)を用いて50℃で30分間窒素置換した後、15分程度で190℃に昇温し、窒素雰囲気下で190℃で30分間乾燥することにより、ガラス基板上に樹脂層を形成した(以下、「樹脂層積層基板」と称する)。ガラス基板上に形成した樹脂層の厚みは2μmであった。なお、樹脂層の厚みは、樹脂層を形成したガラス基板の厚みとガラス基板単独の厚みをそれぞれマイクロメーターにより測定し、両者の差から求めた。
【0157】
(4)密着性評価方法
(4-1)初期耐剥離性試験
上記で得られた樹脂層積層基板の樹脂層にカッター(エヌティー社製、A-300)で切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ2mm間隔で10本のクロスカット線を設けることによって4mm2の四角を81マス作製し、評価用サンプル基板を作製した。このサンプル基板を、空気が入らないようにテープ(3M(スリーエム)社製、スコッチ(登録商標)透明粘着テープ透明美色(登録商標))を貼り付け、5秒間放置した。その後、サンプル基板からのテープの剥離を1秒以内に行い、下記基準で評価した。なお、いずれのマスにおいても剥離力が一定となるようにテープの剥離を行った。
【0158】
A:作製した81マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかった
B:作製した81マスの四角のうち、1~9マスに剥がれが発生した
C:作製した81マスの四角のうち、10~81マスに剥がれが発生した
(4-2)水煮沸後耐剥離性試験
上記で得られた樹脂層積層基板の樹脂層にカッター(エヌティー社製、A-300)で切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ2mm間隔で10本のクロスカット線を設けることによって4mm2の四角を81マス作製し、評価用サンプル基板を作製した。次に、このサンプル基板を、沸騰状態に加熱した超純水中に入れ、2時間煮沸した。続いて、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M(スリーエム)社製、スコッチ(登録商標)透明粘着テープ透明美色(登録商標))を貼り付け、5秒間放置した。その後、サンプル基板からのテープの剥離を1秒以内に行い、下記基準で評価した。なお、いずれのマスにおいても剥離力が一定となるようにテープの剥離を行った。
【0159】
A:作製した81マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかった
B:作製した81マスの四角のうち、1~9マスに剥がれが発生した
C:作製した81マスの四角のうち、10~81マスに剥がれが発生した
【0160】
【0161】
(5)結果
樹脂組成物1~15の各成分と密着性評価試験の結果を表2に示す。(B)成分のエポキシ基含有シランカップリング剤またはその加水分解(縮合)物と(C)成分の紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物5~12,15は、水煮沸後の密着性評価がAまたはB評価となり、初期密着性もA評価となった。特に、(B)成分として、エポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解(縮合)物を含有する樹脂組成物7,9~12,15は水煮沸後の密着性がA評価となった。一方、エポキシ基以外の官能基を有するシランカップリング剤を含有する樹脂組成物1~4、シランカップリング剤そのものを含有しない樹脂組成物13、(C)成分の紫外線吸収剤を含有しない樹脂組成物14は、初期密着性の評価に関わらず、いずれも水煮沸後の密着性評価がC評価となった。(B)成分のエポキシ基含有シランカップリング剤またはその加水分解(縮合)物と(C)成分の紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物5~12,15から形成した樹脂層は、過酷な条件の水煮沸後においても、基板に対する密着性が高く維持されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の樹脂組成物は、基板上に塗工して樹脂層を形成することにより、光学デバイス、表示デバイス、機械部品、電気・電子部品等の用途に有用な光学フィルターなどに用いることができる。