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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20220824BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018078291
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019180353
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518132444
【氏名又は名称】志賀 守
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志賀 守
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-076252(JP,A)
【文献】実開平02-137857(JP,U)
【文献】特開2003-235347(JP,A)
【文献】特開2016-214194(JP,A)
【文献】特開2003-189749(JP,A)
【文献】特開2008-022750(JP,A)
【文献】特開2014-217349(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190017(WO,A1)
【文献】特開2002-223648(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0223418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物保持体が挿入される植栽穴を側面に有する縦置きの栽培パイプと、前記栽培パイプの上端側に接続される養液供給パイプと、前記栽培パイプの下端側に接続される養液回収パイプと、前記養液供給パイプから前記栽培パイプと前記養液回収パイプを介して回収される養液を前記養液供給パイプに供給する養液供給装置とを備え、
前記栽培パイプ、前記養液供給パイプ及び前記養液回収パイプを支持する支持フレーム体は、一対の栽培パイプ支持フレームと、前記一対の栽培パイプ支持フレームの間の空間を区画する複数の分画フレームとを有しており、
前記栽培パイプの上端部が、前記一対の栽培パイプ支持フレームと前記分画フレーム群とで囲まれた空間に下方から挿入されて配置され、前記栽培パイプの下端部が、前記養液回収パイプに形成された接続穴に着脱可能に挿入されることによって、前記栽培パイプが、前記養液回収パイプ及び前記支持フレーム体から取外し可能に配置されている、
水耕栽培装置。
【請求項2】
前記養液供給パイプから前記栽培パイプに供給される養液が前記栽培パイプの内壁面のうち前記植栽穴に対向する奥部分を伝って流下するように構成される一方、
前記植物保持体は、前記栽培パイプの内壁面の前記奥部分を流れる養液に接触するように前記植栽穴に配置されている、
請求項1に記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記植物保持体は、植物を保持する保持部材と、前記保持部材を覆う筒部材とを備え、
前記筒部材は、筒軸方向に延びる割り溝を有することで弾性変形可能に構成されており、
前記植物保持体は、前記割り溝を上向きにして前記植栽穴に配置されている、
請求項1又は2に記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
複数の前記栽培パイプが平面視で一列に並べられており、隣り合う前記栽培パイプ同士で前記植栽穴が互いに逆側に位置している、
請求項1から3のいずれか一項に記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記養液供給パイプは、主供給パイプと、前記主供給パイプから分岐して前記栽培パイプごとに設けられる分岐供給パイプとを備え、
前記分岐供給パイプごとに、養液の流量を調整可能な流量調整バルブが設けられており、
前記流量調整バルブの操作具は、対応する前記栽培パイプの前記植栽穴の向きに合わせて配置されている、
請求項4に記載の水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、水耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水耕栽培と呼ばれる栽培方法が盛んになりつつある。水耕栽培では、植物の成長に必要な水分や養分が、培土を用いずに養液を用いて与えられる。このような水耕栽培を実現する装置の一つとして、縦型の水耕栽培装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
従来の縦型の水耕栽培装置では、植物保持体が挿入される植栽穴を側面に有する栽培パイプが略鉛直方向に又は傾斜して縦置き配置されている。また、栽培パイプの上端側に養液供給パイプが接続され、栽培パイプの下端側に養液回収パイプが接続される。一般に、栽培パイプに供給される養液は、養液供給パイプから栽培パイプに供給され、栽培パイプの下端側から養液回収パイプを介して回収され、養液供給パイプに再度供給されるように適宜循環される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/190017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水耕栽培装置では、養液に発生した藻が栽培パイプ内に付着することが知られている。藻は、養液に含まれる栄養分を吸収し、植栽穴に定植された植物の成長を阻害するので、藻を除去する洗浄を行うことが好ましい。しかし、縦置きの栽培パイプを有する水耕栽培装置においては、栽培パイプ内に付着した藻の除去洗浄が困難であるという問題があった。
【0006】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の水耕栽培装置は、植物保持体が挿入される植栽穴を側面に有する縦置きの栽培パイプと、前記栽培パイプの上端側に接続される養液供給パイプと、前記栽培パイプの下端側に接続される養液回収パイプと、前記養液供給パイプから前記栽培パイプと前記養液回収パイプを介して回収される養液を前記養液供給パイプに供給する養液供給装置とを備え、前記栽培パイプ、前記養液供給パイプ及び前記養液回収パイプを支持する支持フレーム体は、一対の栽培パイプ支持フレームと、前記一対の栽培パイプ支持フレームの間の空間を区画する複数の分画フレームとを有しており、前記栽培パイプの上端部が、前記一対の栽培パイプ支持フレームと前記分画フレーム群とで囲まれた空間に下方から挿入されて配置され、前記栽培パイプの下端部が、前記養液回収パイプに形成された接続穴に着脱可能に挿入されることによって、前記栽培パイプが、前記養液回収パイプ及び前記支持フレーム体から取外し可能に配置されているものである。
【0008】
本願発明の水耕栽培装置によれば、栽培パイプを養液供給パイプ及び養液回収パイプから取り外した状態で、栽培パイプの洗浄作業を行えるので、藻の除去洗浄などの洗浄作業が容易になる。そして、栽培パイプ内を適宜洗浄することで、栽培パイプ内に藻がない状態又は少ない状態で、植栽穴に定植された植物を栽培でき、植物に効率的に養分を供給して、植物の生産性を向上できる。また、栽培パイプを容易に洗浄できることで、栽培パイプを綺麗な状態にして繰り返し使用できるので、水耕栽培装置の維持管理費用を低減できる。
【0009】
ところで、縦置きの栽培パイプを有する従来の水耕栽培装置は、植栽穴が栽培パイプの側面に設けられていることから、栽培パイプ内を流れる養液が植栽穴を介して栽培パイプ外へ漏れ出すおそれがあるという問題があった。
【0010】
そこで、本願発明の水耕栽培装置において、前記養液供給パイプから前記栽培パイプに供給される養液が前記栽培パイプの内壁面のうち前記植栽穴に対向する奥部分を伝って流下するように構成される一方、前記植物保持体は、前記栽培パイプの内壁面の前記奥部分を流れる養液に接触するように前記植栽穴に配置されているようにしてもよい。
【0011】
このような態様によれば、栽培パイプ内において植栽穴から離れた奥部分で養液が流れることで植栽穴からの養液漏れを防止しながら、植物保持体に保持される栽培植物に養液を確実に供給できる。
【0012】
ただし、本願発明の水耕栽培装置は、養液が栽培パイプ内壁面の奥部分を流れる構成に限定されず、例えば、栽培パイプ上端側の中央部から養液が滴下又は噴霧される構成を含む。
【0013】
また、縦置きの栽培パイプを有する従来の水耕栽培装置は、植栽穴への植物保持体の配置作業が煩雑であるという問題があった。
【0014】
そこで、本願発明の水耕栽培装置において、前記植物保持体は、植物を保持する保持部材と、前記保持部材を覆う筒部材とを備え、前記筒部材は、筒軸方向に延びる割り溝を有することで弾性変形可能に構成されており、前記植物保持体は、前記割り溝を上向きにして前記植栽穴に配置されているようにしてもよい。
【0015】
このような態様によれば、植物保持体の保持部材を筒部材内に配置する際に、筒部材をその内径が広がるように弾性変形させることで、筒部材への保持部材の挿入作業が容易になり、作業効率が向上する。また、保持部材が挿入された筒部材を栽培パイプの植栽穴に抜き差しする際に、筒部材をその外形が小さくなるように弾性変形させることで、栽培パイプへの植物保持体の着脱作業が容易になり、作業効率が向上する。さらに、植物保持体は、筒部材の割り溝を上向きにして植栽穴に配置されているので、上方から滴下又は流下する養液が筒部材の割り溝を介して保持部材に吸収されやすくなり、植物保持体に保持される栽培植物に養液を確実に供給できる。
【0016】
なお、本願発明の水耕栽培装置において、植物保持体は、上記保持部材と割り溝を有する筒部材とで構成されるものに限定されない。例えば、本願発明の水耕栽培装置は、植物保持体がスポンジ、不織布又はロックウールなどからなる保持部材単体で形成されている構成を含む。また、本願発明の水耕栽培装置は、植物保持体が保持部材とそれを覆う筒部材とを備え、保持部材に割り溝が形成されていない構成を含む。
【0017】
また、従来の水耕栽培装置では、縦置きの栽培パイプを複数並べて配置する場合には、隣り合う栽培パイプに定植される植物同士がそれぞれ十分に成長できる空間を確保するために隣り合う栽培パイプ同士の間隔を狭くできず、水耕栽培装置が大型化するという問題があった。
【0018】
そこで、本願発明の水耕栽培装置において、複数の前記栽培パイプが平面視で一列に並べられており、隣り合う前記栽培パイプ同士で前記植栽穴が互いに逆側に位置しているようにしてもよい。
【0019】
このような態様では、栽培パイプの配列方向と平行な方向で隣り合う植栽穴同士の間に、少なくとも栽培パイプ一本分の空間が形成される。したがって、このような態様によれば、栽培植物の成長に十分な空間を確保しながら隣り合う栽培パイプ同士を近接配置できるので、水耕栽培装置を小型化できる。
【0020】
ただし、本願発明の水耕栽培装置は、複数の前記栽培パイプが、隣り合う前記栽培パイプ同士で前記植栽穴が互いに同じ側に位置している構成を含む。
【0021】
また、このような態様において、前記養液供給パイプは、主供給パイプと、前記主供給パイプから分岐して前記栽培パイプごとに設けられる分岐供給パイプとを備え、前記分岐供給パイプごとに、養液の流量を調整可能な流量調整バルブが設けられており、前記流量調整バルブの操作具は、対応する前記栽培パイプの前記植栽穴の向きに合わせて配置されているようにしてもよい。
【0022】
このような態様によれば、栽培パイプ内を流れる養液流量を栽培パイプごとに適切に調整可能であるとともに、流量調整バルブの操作具を操作する際に植栽穴を介して栽培パイプ内を目視しながら、栽培パイプ内を流れる養液流量を調整できるので、養液流量の調整作業が容易になる。
【0023】
ただし、本願発明の水耕栽培装置において、流量調整バルブの操作具の向きは適宜変更可能である。例えば、複数の流量調整バルブにおいて、各操作具の向きは互いに同じであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本願発明の水耕栽培装置は、栽培パイプの洗浄作業を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態を示す側面図である。
図2】同実施形態を示す正面図である。
図3】同実施形態を示す平面図である。
図4】同実施形態の栽培パイプ上端部周辺を拡大して示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図5】同実施形態の支持フレーム体上端部周辺を示す図であり、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
図6】同実施形態の栽培パイプ下端部周辺を示す図であり、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
図7】栽培パイプを拡大して示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は(A)のA-A位置に沿った断面図である。
図8】(A)は植物保持体の筒部材を筒軸方向から見た図、(B)は植物保持体の保持部材と筒部材を分離して示す斜視図、(C)は植物保持体を示す斜視図、(D)は植物保持体が配置された栽培パイプを示す縦断面図である。
図9】栽培パイプの取付け手順を説明するための正面図である。
図10】照明機構の照明装置支持フレームをスライド移動させた状態を示す側面図である。
図11】栽培パイプと養液供給パイプとの接続構造の変形例を示す縦断面図である。
図12】栽培パイプと養液回収パイプとの接続構造の変形例を示す縦断面図である。
図13】栽培パイプと養液回収パイプとの接続構造の他の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態の水耕栽培装置1は、複数の縦置き栽培パイプ2を有している。また、各方向を特定するため、前後・左右の文言を使用するが、図1から図3に示すように、栽培パイプ2の配列方向を前後方向とし、平面視で前後方向と直交する方向を左右方向と定義している。なお、本願発明は、方向の定義も含めて、この実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1から図6に示すように、水耕栽培装置1は、複数の縦置きの栽培パイプ2と、栽培パイプ2の上端側に接続される養液供給パイプ3と、栽培パイプ2の下端側に接続される養液回収パイプ4と、養液Nを循環させる養液供給装置5とを備えている。そして、複数の栽培パイプ2は、栽培パイプ2ごとに、養液供給パイプ3及び養液回収パイプ4から取外し可能に構成されている。
【0028】
複数の栽培パイプ2は、長手方向が鉛直方向又は略鉛直方向に沿うようにして、縦置き配置されている。また、複数の栽培パイプ2は、平面視で前後方向に一列に配列されている。
【0029】
栽培パイプ2は、略円筒形の主パイプ部21と、主パイプ部21の側面に設けられた複数の枝パイプ部22を備えている。枝パイプ部22は、主パイプ部21の筒軸方向に沿って上下方向に配列されている。
【0030】
図7及び図8にも示すように、各枝パイプ部22は、略円筒形であり、主パイプ部21が縦置き配置された状態で、筒軸方向が斜め上向きになるようにして主パイプ部21に設けられている。枝パイプ部22の開口は、植物保持体6が配置される植栽穴23を構成している。
【0031】
栽培パイプ2の主パイプ部21の下端部に、筒状の下端部材24が取外し不能に固着されている。下端部材24は、下端側(主パイプ部21とは反対側)の外径が、上端側(主パイプ部21側)の外径よりも小さくなっている。
【0032】
栽培パイプ2の上端側に接続される養液供給パイプ3は、養液供給装置5に繋がる中継供給パイプ31と、中継供給パイプ31に繋がる主供給パイプ32と、主供給パイプ32から分岐して各栽培パイプ2に繋がる複数の分岐供給パイプ33を備えている。中継供給パイプ31は、上下方向に延びて配置され、床面Gに設置される養液供給装置5と、栽培パイプ2の上方に配置される主供給パイプ32とを繋いでいる。
【0033】
図5に示すように、主供給パイプ32は、栽培パイプ2の上方で、複数の栽培パイプ2の配列に沿って、前後方向に延びて配置されている。主供給パイプ32から分岐する複数の分岐供給パイプ33は、前後方向に並んで配置されている。各分岐供給パイプ33は、下方に向けて延びている。
【0034】
各分岐供給パイプ33には、養液の流量を調整可能な流量調整バルブ34がそれぞれ設けられている。分岐供給パイプ33の先端部(主供給パイプ32とは反対側の端部)は、上端キャップ部材35に設けられた挿通穴35aに挿通されて固着されている。分岐供給パイプ33のうち、流量調整バルブ34と上端キャップ部材35との間の部分は、柔軟性のあるパイプ、例えばフレキシブルホースで形成されている。
【0035】
図7に示すように、上端キャップ部材35は、栽培パイプ2の主パイプ部21の上端部に着脱可能に取り付けられて、主パイプ部21の上端部を閉塞する。上端キャップ部材35が主パイプ部21に取り付けられることで、養液供給パイプ3の分岐供給パイプ33が、栽培パイプ2の主パイプ部21に接続される。なお、上端キャップ部材35の中央部には通気穴35bが設けられており、主パイプ部21内外の空気が通気穴35bを介して流通可能に構成されている。
【0036】
上端キャップ部材35は、分岐供給パイプ33の先端部が、主パイプ部21の内壁面のうち植栽穴23に対向する奥部分21aに接触するようにして、主パイプ部21に取り付けられている。なお、主パイプ部21の内壁面の奥部分21aは、平面視で植栽穴23に対向する部分であり、この実施形態では、主パイプ部21の内壁面のうち枝パイプ部22から離れた半円筒形部分である。
【0037】
栽培パイプ2の下端側に接続される養液回収パイプ4は、栽培パイプ2の配列の下方で前後方向に延びて配置される直線状回収パイプ部41と、直線状回収パイプ部41の前端に接続されて下方へ湾曲する湾曲回収パイプ部42を備えている。
【0038】
直線状回収パイプ部41の側面には、上方に向けて開口する複数の接続穴43が形成されている。これらの接続穴43は、直線状回収パイプ部41の筒軸方向に沿って等間隔に配置されている。
【0039】
養液回収パイプ4の接続穴43は、栽培パイプ2の下端部材24の下端部の外径よりも大きく、かつ下端部材24の上端部の外径よりも小さい直径で開口されている。接続穴43に栽培パイプ2の下端部(下端部材24)が上方から差し込まれることで、栽培パイプ2と養液回収パイプ4とが着脱可能に接続される。そして、下端部材24の中途部が接続穴43に当接することで、栽培パイプ2が養液回収パイプ4に支持される。
【0040】
養液回収パイプ4の湾曲回収パイプ部42の先端部は、養液供給装置5に接続されている。直線状回収パイプ部41の後端部(湾曲回収パイプ部42とは反対側の端部)は、取外し可能なキャップ部材44で塞がれている。
【0041】
養液供給装置5は、養液Nを貯留する養液容器51と、養液容器51内の養液Nを養液供給パイプ3に供給するポンプ52を備えている。養液容器51には、養液回収パイプ4の湾曲回収パイプ部42が接続されている。ポンプ52には、養液供給パイプ3の中継供給パイプ31が接続されている。
【0042】
養液供給装置5は、ポンプ52の駆動によって養液容器51内の養液Nを養液供給パイプ3に供給する。養液供給パイプ3に供給された養液Nは、栽培パイプ2内に上部側から供給され、栽培パイプ2の下部から養液回収パイプ4を介して養液容器51に回収される。養液供給装置5は、回収された養液Nを養液供給パイプ3に再度供給して循環させる。養液供給装置5は、養液Nを間欠的又は連続的に循環させる構成のいずれであってもよい。
【0043】
図1から図6に示すように、水耕栽培装置1は、栽培パイプ2、養液供給パイプ3及び養液回収パイプ4を支持する支持フレーム体7を備えている。支持フレーム体7は、左右方向に延びる前後一対の下部フレーム71を備えている。下部フレーム71の中途部には、互いに間隔を空けて2本の縦フレーム72が立設されている。左右に並ぶ縦フレーム72は、前後の下部フレーム71ごとに設けられており、支持フレーム体7には合計4本の縦フレーム72が設けられている。
【0044】
左右に並ぶ縦フレーム72の上端部同士は、左右方向に延びる上部フレーム73によって連結されている。支持フレーム体7には前後一対の上部フレーム73が設けられており、各上部フレーム73の左右両端部は、縦フレーム72との連結部よりも左右方向の外側に設けられている。
【0045】
左右に並ぶ縦フレーム72の下端寄り部位同士は、左右方向に延びる回収パイプ支持フレーム74で連結されている。養液回収パイプ4の直線状回収パイプ部41の前後両端部は、左右に並ぶ縦フレーム72の間に配置されて、前後一対の回収パイプ支持フレーム74に支持されている。
【0046】
図5に示すように、前後に並ぶ縦フレーム72の上端寄り部位同士は、前後方向に延びる栽培パイプ支持フレーム75で連結されている。左右一対の栽培パイプ支持フレーム75の間の空間は、複数の分画フレーム76で前後方向に分画されている。各分画フレーム76は、左右方向に延びて配置され、分画フレーム76の左右端部は、左右の栽培パイプ支持フレーム75に連結されている。
【0047】
栽培パイプ2の主パイプ部21の上端部は、左右の栽培パイプ支持フレーム75と前後の分画フレーム76で囲まれた空間に下方から挿入されて配置され、前後左右方向の移動が規制される。上述のように、栽培パイプ2の下端部材24は、養液回収パイプ4の接続穴43に着脱可能に挿入されて、養液回収パイプ4に支持される。これにより、栽培パイプ2は、養液回収パイプ4及び支持フレーム体7から取外し可能に縦置き配置される。
【0048】
図9に示すように、栽培パイプ2の取付け時には、まず、左右の栽培パイプ支持フレーム75と前後の分画フレーム76で囲まれた空間に、主パイプ部21の上端部を下方から挿入する((A)参照)。そして、栽培パイプ2の下端部材24が、養液回収パイプ4の接続穴43の上方に位置するまで、栽培パイプ2を持ち上げる((B)参照)。次に、下端部材24を接続穴43に挿入した後、主パイプ部21の上端部に上端キャップ部材35を取り付ける((C)参照)。これにより、栽培パイプ2に養液供給パイプ3と養液回収パイプ4が接続された状態になる(図1から図3等を参照)。
【0049】
また、栽培パイプ2の取外し時には、栽培パイプ2の取付け時の作業と逆の手順で作業することで、栽培パイプ2を養液供給パイプ3及び養液回収パイプ4から容易に取り外せる。なお、栽培パイプ2の取付け又は取外しは、支持フレーム体7の左右どちらからでも行える。
【0050】
そして、栽培パイプ2を養液供給パイプ3及び養液回収パイプ4から取り外した状態で洗浄できるので、栽培パイプ2に付着した藻の除去洗浄などの洗浄作業を容易に行える。そして、栽培パイプ2内を適宜洗浄することで、栽培パイプ2内に藻がない状態又は少ない状態で、植栽穴23に定植される植物を栽培でき、植物に効率的に養分を供給して、植物の生産性を向上できる。また、栽培パイプ2を容易に洗浄できることで、栽培パイプ2を綺麗な状態にして繰り返し使用できるので、水耕栽培装置1の維持管理費用を低減できる。
【0051】
また、この実施形態では、養液回収パイプ4は支持フレーム体7に取外し可能に支持されている。したがって、養液回収パイプ4を支持フレーム体7から取り外した状態で洗浄でき、養液回収パイプ4に付着した藻の除去洗浄などの洗浄作業を容易に行える。なお、養液回収パイプ4の洗浄時には、キャップ部材44を取り外した状態で行うことで、直線状回収パイプ部41内部の洗浄作業がより一層容易になる。
【0052】
図1から図4に示すように、栽培パイプ2は、植栽穴23が左右方向を向くようにして縦置き配置される。そして、前後方向に一列に配列される複数の栽培パイプ2は、隣り合う栽培パイプ2同士で植栽穴23が互いに逆側に位置するように、配置されている。これにより、栽培パイプ2の配列方向と平行な方向で隣り合う植栽穴23同士の間に、少なくとも栽培パイプ2の一本分の空間が形成される。したがって、植栽穴23に定植される栽培植物の成長に十分な空間を確保しながら、隣り合う栽培パイプ2同士を近接配置できるので、水耕栽培装置1を小型化できる。
【0053】
図1から図5に示すように、養液供給パイプ3の主供給パイプ32は、左右の栽培パイプ支持フレーム75に立設された前後一対のパイプ支持具77で支持されている。
【0054】
図4に示すように、主供給パイプ32から分岐する分岐供給パイプ33に設けられた流量調整バルブ34の操作具34aは、対応する栽培パイプ2の植栽穴23の向きに合わせて配置されている。これにより、流量調整バルブ34の操作具34aを操作する際に、植栽穴23を介して栽培パイプ2内を目視しながら、栽培パイプ2内を流れる養液Nの流量を調整できるので、養液Nの流量の調整作業が容易になる。
【0055】
図8に示すように、植栽穴23に配置される植物保持体6は、植物を保持する保持部材61と、保持部材61を覆う筒部材62を備えている。保持部材61は、養液を保持可能な柔らかい材料からなり、例えばスポンジや綿、不織布、ロックウール、グラスウールなどで形成される。保持部材61に保持される栽培植物は、例えば、イチゴやトマトなどの果実野菜、レモンバームなどのハーブ、ホウレンソウなどの葉物野菜、バラなどの花卉などである。
【0056】
筒部材62は、略円筒形の樹脂製であり、筒軸方向に延びる割り溝62aを備えている。筒部材62は、割り溝62aを有することで、弾性変形可能に構成されている。
【0057】
図8(B),(C)に示すように、保持部材61は、筒部材62の一端側から筒部材62内に押し込まれて、筒部材62内に配置される。このとき、図8(A)に示すように、筒部材62をその内径が広がるように弾性変形させることで、筒部材62への保持部材61の挿入作業が容易になり、作業効率が向上する。
【0058】
図8(D)に示すように、保持部材61が筒部材62内に配置されてなる植物保持体6は、栽培パイプ2の植栽穴23内に着脱可能に配置される。そして、植物保持体6を植栽穴23に抜き差しする際に、図8(A)に示すように、筒部材62をその外形が小さくなるように弾性変形させることで、栽培パイプ2への植物保持体6の着脱作業が容易になり、作業効率が向上する。
【0059】
上述のように、栽培パイプ2の主パイプ部21に接続される分岐供給パイプ33は、主パイプ部21の内壁面の奥部分21aに接触するように配置されている。したがって、分岐供給パイプ33から流れ出る養液Nは、主パイプ部21内において植栽穴23から離れた奥部分21aを伝って下向きに流れる。これにより、植栽穴23からの養液漏れを防止できる。
【0060】
図8(D)に示すように、植物保持体6は、栽培パイプ2の主パイプ部21の奥部分21aを流れる養液Nに接触するようにして、植栽穴23に配置される。これにより、植物保持体6に保持される栽培植物に養液Nを確実に供給できる。
【0061】
また、図8(C),(D)に示すように、植物保持体6において、保持部材61の奥部分21a側の端部は、筒部材62で覆われておらず、露出している。そして、保持部材61の奥部分21a側の端部が主パイプ部21の奥部分21aに接触するようにして、植物保持体6が植栽穴23に差し込まれている。これにより、主パイプ部21の奥部分21aを流れる養液Nに保持部材61が確実に接触するので、植物保持体6に保持される栽培植物に養液Nを確実に供給できる。
【0062】
また、図8(D)に示すように、植物保持体6は、筒部材62の割り溝62aを上向きにして植栽穴23に配置されている。したがって、植物保持体6の上方から滴下又は流下する養液Nが筒部材62の割り溝62aを介して保持部材61に吸収されやすくなり、植物保持体6に保持される栽培植物に養液Nを確実に供給できる。
【0063】
また、植物保持体6が保持部材61と筒部材62とを備え、筒部材62が割り溝62aを有することで弾性変形可能に構成されている構成は、従来の縦型水耕栽培装置にも適用可能である。さらに、植物保持体6が割り溝62aを上向きにして植栽穴23に配置される構成も、従来の縦型水耕栽培装置に適用可能である。
【0064】
図1から図3及び図10に示すように、水耕栽培装置1は、栽培パイプ2の配列を挟んで配置された左右一対の照明機構8を備えている。照明機構8は、栽培パイプ2で栽培される植物に光を照射する照明装置81を備えている。照明装置81は、例えばLED光源群を有する上下縦長のLEDモジュールで構成されている。この実施形態では、複数の照明装置81が前後方向に配列されている。
【0065】
照明装置81は、栽培パイプ2の配列に対向して配置される照明装置支持フレーム82に支持されている。照明装置支持フレーム82の前後方向長さは、栽培パイプ2の配列長さの半分程度である。
【0066】
照明機構8は、照明装置支持フレーム82の下方に配置される下部レール83と、照明装置支持フレーム82の上方に配置される上部レール84を備えている。前後方向に延びる下部レール83は、床面Gの上に配置される一方で、支持フレーム体7の前後一対の下部フレーム71の端部同士を連結している。また、前後方向に延びる上部レール84は、支持フレーム体7の前後一対の上部フレーム73の端部同士を連結している。
【0067】
照明装置支持フレーム82と下部レール83との間に前後一対の車輪部材85が設けられている。また、照明装置支持フレーム82と上部レール84との間に前後一対の車輪部材85が設けられている。これにより、照明装置81を支持する照明装置支持フレーム82は、下部レール83及び上部レール84に沿って、前後方向にスライド可能に設けられている。
【0068】
図1から図3に示す状態では、照明装置支持フレーム82は、前後方向に延びる栽培パイプ2の配列の後側半分に対向して配置されている。すなわち、栽培パイプ2の配列の後側半分に定植された栽培植物には照明装置81から光が照射される一方で、栽培パイプ2の配列の前側半分に定植された栽培植物には光が照射されない状態にできる。
【0069】
一方、図10に示す状態では、照明装置支持フレーム82は、栽培パイプ2の配列の前側半分に対向して配置されている。すなわち、栽培パイプ2の配列の前側半分に定植された栽培植物には照明装置81から光が照射される一方で、栽培パイプ2の配列の後側半分に定植された栽培植物には光が照射されない状態にできる。
【0070】
このように、照明装置81を支持する照明装置支持フレーム82をスライド移動させることで、栽培パイプ2に定植された栽培植物に明期(昼)と暗期(夜)を周期的に与えることができる。
【0071】
さらに、照明装置支持フレーム82をスライド可能に設けることで、取付け又は取外し対象の栽培パイプ2の配置位置の左右側方に照明装置支持フレーム82が無い状態にでき、栽培パイプ2の取付け及び取外し作業が容易になる。同様に、照明装置支持フレーム82を適宜スライド移動させることで、植栽穴23への植物保持体6の出入れ作業や、果実や花卉などの収穫作業も、容易にできる。
【0072】
次に、栽培パイプ2と養液供給パイプ3又は養液回収パイプ4との接続構造の変形例について説明する。ただし、栽培パイプ2と養液供給パイプ3及び養液回収パイプ4との接続構造は、上記実施形態に示された構造及び下記変形例に示される構造に限定されない。
【0073】
図11に示す実施形態では、栽培パイプ2の主パイプ部21の上端部に、上端キャップ部材35が固着されている。この変形例では、上端キャップ部材35は栽培パイプ2の一部分を構成している。そして、養液供給パイプ3の分岐供給パイプ33の先端部は、上端キャップ部材35の挿通穴35aに上方から抜き差し可能に装着される。これにより、養液供給パイプ3の分岐供給パイプ33は、栽培パイプ2に取外し可能に接続される。
【0074】
図12に示す実施形態では、養液回収パイプ4の接続穴43に、筒状の下端部材24が固着されている。この変形例では、下端部材24は養液回収パイプ4の一部分を構成している。そして、栽培パイプ2の主パイプ部21の下端部は、下端部材24に上方から抜き差し可能に嵌め込まれる。これにより、栽培パイプ2は、養液回収パイプ4の下端部材24に取外し可能に接続される。なお、主パイプ部21と下端部材24との間に、Oリングなどのシール部材(図示省略)を配置して、養液Nの液漏れを防止することが好ましい。
【0075】
また、図13に示す実施形態では、栽培パイプ2の下端側に下端部材24(図1図2図6等を参照)が設けられていない。そして、栽培パイプ2の主パイプ部21の下端部は、養液回収パイプ4の接続穴43に上方から抜き差し可能に挿入される。なお、栽培パイプ2は、主パイプ部21の下端が直線状回収パイプ部41の内周壁に当接することで、養液回収パイプ4に下向きに支持される。
【0076】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、一列に配列される複数の栽培パイプ2の姿勢は、鉛直方向又は略鉛直方向に延びる姿勢に限定されず、平面視で栽培パイプ2の配列方向に沿って、同じ方向に傾斜していてもよい。
【0077】
また、水耕栽培装置1に配列される栽培パイプ2の本数は、2本以上であればよく、上記実施形態における8本に限定されない。なお、本発明の水耕栽培装置において、栽培パイプの本数は1本であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 水耕栽培装置
2 栽培パイプ
3 養液供給パイプ
4 養液回収パイプ
5 養液供給装置
6 植物保持体
21 主パイプ部
21a 奥部分
22 枝パイプ部
23 植栽穴
32 主供給パイプ
33 分岐供給パイプ
34 流量調整バルブ
34a 操作具
35 上端キャップ部材
35a 挿通穴
35b 通気穴
41 直線状回収パイプ部
42 湾曲回収パイプ部
43 接続穴
61 保持部材
62 筒部材
62a 割り溝
N 養液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13