(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220824BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2018083977
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良広
(72)【発明者】
【氏名】木谷 健治
(72)【発明者】
【氏名】葛巻 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石飛 竜哉
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝彦
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/035677(WO,A1)
【文献】特開2016-039520(JP,A)
【文献】特開2012-063633(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029034(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0130606(KR,A)
【文献】特開2015-142336(JP,A)
【文献】特開2012-063639(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083316(WO,A1)
【文献】特表2009-516862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
G02B 27/01
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を画像生成素子に照射し、生成した画像をユーザの視界方向に表示するヘッドマウントディスプレイにおいて、
外面に凸部が設けられ、前記光源と光学部品が搭載された第一の光学筐体と、
前記画像生成素子と光学部品が搭載された第二の光学筐体と、
嵌合穴が設けられ、前記第一の光学筐体と前記第二の光学筐体とを接続固定する固定部材と、
前記第一の光学筐体、前記第二の光学筐体、及び前記固定部材を保持する外装筐体と、を備え、
前記固定部材による固定方向は、前記光源からの光が前記第一の光学筐体から出射し、前記画像生成素子を搭載した前記第二の光学筐体に入射するときの光軸方向とし、
前記固定部材は、
前記固定方向と直交する前記視界方向において対向する前記第二の光学筐体の2つの側面に接触しない状態で前記第二の光学筐体を抱え込んで前記嵌合穴が前記第一の光学筐体の前記外面に設けられた前記凸部と嵌合し、前記第一の光学筐体と前記第二の光学筐体とを接続固定する構成としたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
請求項
1に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、
前記第一の光学筐体と前記第二の光学筐体は、当該ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザが直立姿勢をとったとき、鉛直方向に重ねて配置されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
請求項
1に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、
前記固定部材の前記嵌合穴と前記第一の光学筐体の前記凸部との嵌合状態は、前記固定部材に設けた前記嵌合穴を、前記第一の光学筐体に設けた前記凸部に引っ掛けて固定された状態であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
請求項
3に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、
前記固定部材と前記第一の光学筐体とは、さらに、固定ネジにより前記光軸方向に固定されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、
前記固定部材と前記第一の光学筐体に搭載された前記光源との間隙、及び前記固定部材と前記第二の光学筐体に搭載された前記画像生成素子との間隙に、それぞれ放熱材を配置したことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
請求項
5に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、
前記固定部材と前記外装筐体との間隙に、放熱材を配置したことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに係り、特に光学部品の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD、Head Mounted Display)は、ユーザの頭部に取り付け、眼に映像を投影して情報を与える機器である。頭部に取り付ける手段としては、ヘルメット型、メガネ型などがあるが、利便性、慣習性などを考慮してメガネ型が主流である。また、映像情報の提供法としては、実視野とは違う仮定された空間を提供する仮想現実(バーチャルリアリティ)、実視野に映像情報を重ねて投影する拡張現実(アーギュメントリアリティ)がある。上述の仮想現実は、主にゲームやシミュレーション訓練などに適応し、拡張現実は説明ガイドなど実光景にオーバーレイするシーンなどに適応する。
【0003】
これらの技術では静止画像や動画像を扱うため、光源からユーザの眼までの光学特性が品質に大きな影響を及ぼす。光学特性を左右する項目としては、光源から眼までの光軸ずれが挙げられる。光軸がずれると、ユーザの見る画像の品質が悪化し、表示される画像や文字に歪みが生じたり、表示画像に色ムラや輝度ムラが生じたりする可能性がある。
【0004】
これに関連する技術として、特許文献1に記載のメガネ型のHMDでは、つる部に設けられた画像情報を出射する投影ユニットと、メガネレンズ部に設けられた反射部との相対的配置を可変とし、ユーザの眼の位置に応じて画像が表示される位置を調整できる構成が提案されている。
【0005】
また、特許文献2に記載のメガネ型のHMDでは、映像表示素子と投射レンズとの相対的な位置を調整しながら、映像表示素子を収納する映像素子ケースと、投射レンズを収納する鏡筒とを接着する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-220666号公報
【文献】特開2014-186201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の構成では、調整時には光学特性を最適化できるが、投影ユニットがメガネのつる部に取り付けられており、HMDを実際に頭部へ装着した際につる部が撓むことがある。その結果、投影ユニットと反射部との位置関係が変化し、最終的にはユーザの眼に対する表示位置がずれる恐れがある。
【0008】
特許文献2に記載の構成では、映像表示素子を収納する映像素子ケースと、投射レンズを収納する鏡筒とを、両者の位置の調整代となる間隙に接着剤を充填し、これを固化させることで接着している。この構成では、調整後の両者の位置が偏っているような場合には充填される接着剤の厚みが場所によって異なることになる。その結果、HMDが落下した際に、接着強度が十分でないことにより、映像素子ケース(映像表示素子)と鏡筒(投射レンズ)とが外れてしまう恐れがある。
【0009】
一般に、HMDのような光学系の調整では、調整を行った後の各部品の固定方法として、ネジや接着剤などが使用されるが、ネジは締め付けの際に位置ずれ(回転)を起こす可能性がある。また、HMDの使用環境を考慮すると、接着剤による固定は落下した際の強度不足や経時劣化など、信頼性に課題がある。
【0010】
以上述べた課題に鑑み、本発明の目的は、光軸位置の調整を簡単に行え、かつ調整後の状態を安定に保持できるヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明のヘッドマウントディスプレイは、光源と光学部品が搭載された第一の光学筐体と、画像生成素子と光学部品が搭載された第二の光学筐体と、第一の光学筐体と第二の光学筐体とを接続固定する固定部材と、第一の光学筐体、第二の光学筐体、及び固定部材を保持する外装筐体と、を備え、固定部材は、第二の光学筐体を抱え込んで第一の光学筐体と嵌合し、第一の光学筐体と第二の光学筐体とを接続固定する構成とした。ここに、固定部材による固定方向は、光源からの光が第一の光学筐体から出射し、画像生成素子を搭載した第二の光学筐体に入射するときの光軸方向とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光軸調整と組立作業が容易で、表示画像の品質劣化が少なく信頼性の高いヘッドマウントディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】外装筐体10を外したHMD本体20の構成を示す図。
【
図3】HMD本体20の光学筐体と固定部材への分解図。
【
図4A】HMD本体20の光学系を説明する上面図。
【
図4B】HMD本体20の光学系を説明する正面図。
【
図4C】HMD本体20の光学系を説明する側面図。
【
図5】2つの光学筐体21,22の位置決めと固定方法を説明する図。
【
図6】固定部材23の形状と固定方法を詳細に説明する図。
【
図7】固定部材取り付け時の放熱材の位置と構造を示す図(実施例2)。
【
図8】外装筐体取り付け時の放熱材の位置と構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のヘッドマウントディスプレイ(HMDと略す)の実施形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本実施例に係るHMDの外観を示す図である。ここでは、メガネ型のHMD1の例を示しており、ユーザの頭部に装着される。HMD1の外装筐体10の中には画像を生成して投影する光学系(HMD本体)を保持している。符号11L,11RはHMD本体を保護するためのシールドで、かつ景色を取り込めるように透過性を持った素材で構成されている。これによりユーザは、仮想現実や拡張現実などの画像を視認することができる。なお、以下説明における座標は、HMD1を装着したユーザが直立姿勢をとったとき、顔の正面方向をx方向、左右の耳の方向をy方向、鉛直方向をz方向と定義する。
【0016】
図2は、外装筐体10を外したHMD本体20の構成を示す図である。HMD本体20は、左右の第一の光学筐体21L,21R、第二の光学筐体22、それらを固定する左右の固定部材23L,23R、ユーザの眼前に画像を表示する画像表示部24L,24Rで構成される。さらにHMD本体20には、図示しない画像処理を行う基板や電源を含んでいる。後述するように、第一の光学筐体21L,21Rには光源と光学部品が搭載され、第二の光学筐体22には画像生成素子と光学部品が搭載されている。
【0017】
図3は、HMD本体20の光学筐体と固定部材への分解図であり、
図2における第一の光学筐体21L,21R、第二の光学筐体22および固定部材23L,23Rの位置関係を示す。第二の光学筐体22に対し第一の光学筐体21L,21Rの位置調整を行った後、固定部材23L,23Rにより両者を接続固定する構成となっている。ここに第一の光学筐体21L,21Rには、光源31L,32L,31R,32Rが搭載され、第二の光学筐体22には、画像生成素子33L,33Rが搭載されている。第一の光学筐体21L,21Rの側面に設けた凸部42L,42Rは、嵌合により固定部材23L,23Rと結合させるためのものである。
【0018】
本実施例のHMD1では、画像を生成する画像生成素子33L,33Rと、画像を表示する画像表示部24L,24Rとは、一体的に構成されている。よって、HMD1を頭部へ装着する際にメガネのつる部が撓むことがあっても、画像生成素子33L,33Rと画像表示部24L,24Rとの位置関係が変化することは少なく、ユーザの見る画像位置がずれることはない。
【0019】
また、光源31L,32L,31R,32Rを搭載した第一の光学筐体21L,21Rと、画像生成素子33L,33Rを搭載した第二の光学筐体22とは、接着剤ではなく、固定部材23L,23Rによる嵌合により接続固定している。よって、HMDが落下した際に、接着強度が原因で2つの光学筐体が外れることはない。
以下、本実施例のHMDの構造と組立方法について詳細に説明する。
【0020】
図4A、
図4B、
図4Cは、HMD本体20の光学系を説明する図であり、それぞれ、上面図(xy面)、正面図(yz面)、側面図(xz面)を示す。なお、
図2、
図3で示したように、HMD本体20は左右対称であるため、以下では片側(左目側)の構造について説明する。また、図面を含めた各部品の説明では左右の区別L,Rをなくし、例えば、左目側の第一の光学筐体21Lを単に符号21で示している。
【0021】
本実施例のHMD1ではカラーの映像を全色表示するため、第一の光学筐体21には3原色の光源を備えており、これを2つの光源31,32で構成する。例えば、31は緑色の1色の光源、32は赤色と青色の2色の光源とする。
図4Aに示すように、これらの光源31,32から発生した光51,52は、合波プリズムやハーフミラーなどの光学部品35で合波される。その後、合波された光53は、
図4Bに示すように、光学部品36で反射されてz方向に向きを変え、第二の光学筐体22に向う。
【0022】
第二の光学筐体22は画像生成素子33を備え、第一の光学筐体21に対してz方向に重ねて配置している。第一の光学筐体21から入射した光53は、第二の光学筐体22の入光部に設けたプリズムなどの光学部品37によりy方向に向きを変え、光54となって画像生成素子33を照射する。画像生成素子33は液晶素子などで構成され、光54に対して画像情報を付与する。画像情報が付与された光55は、光学部品37を透過し、第二の光学筐体22内を伝搬し、画像表示部24に向う。そして、
図4Aに示すように第二の光学筐体22に設けた光学部品38によりx方向に向きを変え、光56となって画像表示部24に入射する。
【0023】
画像表示部24は図示しない回折格子を備えており、第二の光学筐体22に対してz軸下方、x軸前面に装着されている。
図4B、
図4Cに示すように、画像表示部24に入射した光56はyz面内の-z方向に導光された光57に変換される。さらに、ユーザの眼前まで導光された光57は、回折格子により目線軸の方向(x軸)に回折された光58となり、画像表示部24の面外に出射されてユーザの眼に入射する。以上の光の流れによって、HMD1はユーザの視界方向に画像を表示する。
【0024】
以上説明したように、本実施例のHMD1では、画像生成素子33の手前とその後の光路を、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22の2つの構造体で分割した構造としている。これらの位置関係は、HMD1をユーザが装着した状態において両者が容易に外れないように、顔からなるべく近い位置に部品を配置する。そのため、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22とは、z方向に重ねて配置し、第一の光学筐体21の出射口にはy方向の光をz方向に変換する光学部品36を設けている。
【0025】
また、第一の光学筐体21は第二の光学筐体22に対して、端部位置をy方向にずらして配置している。これは、第一の光学筐体21上に、光源31、32を駆動する電装基板を収納する空間を確保するためである。このように本実施例では、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22とに分割しているため、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22の光路(光軸)が一致するよう位置決めする必要がある。そのため、以下に述べる固定部材23を用いて両者を固定する構成とした。
【0026】
図5は、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22との位置決めと固定方法を説明する図である。まず、第一の光学筐体21において、
図4A、
図4Bに示したように、光源31,32、および光学部品35,36を位置決めして取り付ける。一方で、第二の光学筐体22において、
図4A、
図4Bに示したように、画像生成素子33、および光学部品37,38、および画像表示部24を位置決めして取り付ける。
【0027】
サブアセンブリとして組み立てられた第一の光学筐体21と第二の光学筐体22は、一連の光学系を構成するために光軸の位置調整を行い、第一の光学筐体21を第二の光学筐体22に取り付ける。この調整は、第一の光学筐体21に搭載する光源31,32と、第二の光学筐体22に搭載する画像生成素子33との位置関係の調整であり、
図4Bで言えば、光源31,32からの光54を画像生成素子33の位置に正しく入射させるためである。この調整により、光源からユーザの眼までの光軸ずれをなくし、表示される画像の歪みや色ムラや輝度ムラをなくすことができる。
【0028】
本構成では、両光学筐体の分割面は、第一の光学筐体21の出射部である光学部品36と、第二の光学筐体22の入射部である光学部品37の間であり、光53の光軸方向(z方向)に直交する面(xy面)である。よって、両者の調整方向は、
図5に示す通り光53の光軸に直交方向(x,y方向)となり、光軸ずれの調整が容易である。調整後には、両者を接着するなどの仮固定を行うと作業性が良い。
【0029】
次に、仮固定された第一の光学筐体21と第二の光学筐体22に対し、固定部材23を用いて、第二の光学筐体22を抱え込むように第一の光学筐体21に固定する。その際、固定部材23の装着と固定方向は、
図5に示す通り2つの光学筐体の分割面(調整面)の法線方向、すなわちz方向となる。よって、固定部材23による固定動作の際に、光軸調整方向(x,y方向)に余分な力が掛かることがなく、調整済みの光軸がずれることがない。このようにして第一の光学筐体21内の光51の光軸と、第二の光学筐体22内の光53の光軸とを一致させて固定することができる。
【0030】
図6は、固定部材23の形状と固定方法を詳細に説明する図である。固定部材23の基本形状は、第一の光学筐体21に搭載された光源31,32の背面、及び第二の光学筐体22に搭載された画像生成素子33の背面を囲う形状とする。
【0031】
具体的には、固定部材23の終端に光源31,32が位置し、固定部材23は光源31,32の背面に平行な形状とする。そして、固定部材23のx、y方向の内寸法は第一の光学筐体21の外寸法に合わせ、固定部材23のz方向の内寸法は第二の光学筐体22の外寸法に合わせる。よって、固定部材23は、第一の光学筐体21の側面に接触するが、第二の光学筐体22の側面に接触することはなく、調整済みの光軸がずれることはない。
【0032】
また、画像生成素子33の近傍に図示しない電装基板の収納領域を確保するため、固定部材23は、画像生成素子33の背面を平行に囲うようにU字形状とする。さらに、光源31,32から画像生成素子33までに至る固定部材23の形状は、第一の光学筐体21の上面に前記電装基板を収納・保護する空間26を形成する。これにより、組立て後に不意に光源31,32や画像生成素子33に手を触れるのを防ぐ効果がある。
【0033】
次に、固定部材23による固定方法を詳細に説明する。固定部材23と第一の光学筐体21との結合箇所は最低3箇所設けている。まず、固定部材23の側面には2つの嵌合穴41を設け、第一の光学筐体21の側面には2つの凸部42を設け、両者を2箇所で嵌合させる。さらに、固定ネジ43を用いて、固定部材23のネジ穴44を通し、第一の光学筐体21のネジ固定部45に、1箇所でネジ止めする構成である。
【0034】
第一の光学筐体21と第二の光学筐体22の基本的な固定動作は、固定部材23の2つの嵌合穴41と第一の光学筐体21の2箇所の凸部42との嵌合で担う。この嵌合による固定する方向は、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22の分割面(調整面)の法線方向(z方向)であるから、固定作業の際に、光軸調整方向(x,y方向)に力が掛かることがない。また、固定後の組立体が落下した場合でも、両光学筐体が外れることを防ぐことができる。
【0035】
次に、固定ネジ43による固定動作は、第一の筐体21と固定部材23を結合固定するものであって、固定部材23の姿勢を安定化させる役目を担う。したがって、締め付けにより、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22との間で調整された光軸位置が変動する恐れはない。また、ネジ止め箇所においては、第一の光学筐体21と図示しない電装基板などを挟み込んで共に固定が可能であり、作業簡略化が可能である。加えて、このようにして固定された固定部材23と第一の光学筐体21とで囲んだ空間26には、図示しない電装基板が収納される。さらには、固定部材23と第二の光学筐体間22に図示しない弾性体を挟み込むことで、第一の光学筐体21と第二の光学筐体22とをより強固に固定させることが可能である。
【0036】
ここで、本実施例のHMDにおける固定部材23による固定方法について特徴をまとめる。固定部材23は、第二の光学筐体20を抱え込んで第一の光学筐体21の凸部42に引掛けて嵌合固定する方式を基本とする。よって、固定部材23による固定作業の際に、調整済の光軸がずれる恐れはなくなり、組立精度が向上し、作業性が容易になる。これに加えて、組立後のHMDが落下した時でも、第一の光学筐体21が第二の光学筐体20から脱落する恐れが少なく、信頼性が向上する。
【実施例2】
【0037】
実施例2は、実施例1で述べたHMD1における放熱特性の向上に関するものである。HMD本体20には、光源31,32や画像生成素子33などの発熱部品が含まれる。よって、これらの部品からの発熱を外装筐体10から外部へ効果的に放熱することで、光学筐体の温度上昇を抑え、温度上昇に伴う光軸ずれと画像品質の劣化を抑えるものである。
【0038】
前記
図3において、第一の光学筐体21L,21Rに搭載される光源31L,32L,31R,32Rと固定部材23L,23Rとの間隙、および第二の光学筐体22に搭載される画像生成素子33L,33Rと固定部材23L,23Rとの間隙に、放熱材を配置する。さらに、固定部材23L,23Rと外装筐体10との間隙にも放熱材を配置した構造とする。
【0039】
具体的には、前記
図6において、発熱部品である光源31,32や画像生成素子33に対し、放熱材61,62,63を取り付ける。放熱材には、吸湿硬化型放熱樹脂、クラッド材など、伝熱効果の高い材料を用いる。なお、この放熱材は周囲の光学部品などのずれ発生の要因とならないよう、筐体材料より軟らかい材質であることが望ましい。
【0040】
図7は、固定部材取り付け時の放熱材の位置と構造を示す図で、前記
図2のB-B位置での断面図である。サブアセンブリ状態の第一の光学筐体21や第二の光学筐体22において、光源31,32と画像生成素子33には、予め放熱材61,62,63を装着固定しておく。その際、各放熱材の形状(厚み)は、固定部材23を取り付けた状態で、放熱材61,62,63と固定部材23とが接触するように定める。これにより、光源31,32や画像生成素子33から固定部材23への放熱経路が形成される。このように組み立てたHMDの本体20を、外装筐体10に取り付ける。
【0041】
図8は、外装筐体取り付け時の放熱材の位置と構造を示す図で、前記
図1のA-A位置での断面図である。
図7の方法と同様に、外装筐体10とHMDの本体20の固定部材23と間に、放熱材65を配置する。これにより、HMD本体20からの発熱は、伝熱部材でもある固定部材23を介して外装筐体10へ伝熱させ、外気へ放熱させる。これによって、光源31,32や画像生成素子33で発生した熱は、外装筐体10を経由して外気へ放熱できる。
【0042】
本実施例によれば、HMDの光学筐体の温度上昇を抑え、温度上昇に伴う光軸ずれと画像品質の劣化を抑えることができる。これにより、信頼性の高いHMDを提供することができる。
【0043】
以上の実施例では、HMDの構造と組立方法を左目側について説明したが、右目側についても全く同様である。そして、光学系を左右で独立させている点が、本実施例のHMDの特徴の一つでもある。これによって、左右の光学系、光源や画像生成素子の特性誤差を独立調整できるため、品質を最大化することができる効果がある。
【符号の説明】
【0044】
1:ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、
10:外装筐体、
20:HMD本体、
21(21L,21R):第一の光学筐体、
22:第二の光学筐体、
23(23L,23R):固定部材、
24(24L,24R):画像表示部、
31(31L,31R),32(32L,32R):光源、
33(33L,33R):画像生成素子、
35,36,37,38:光学部品、
41:嵌合穴、
42:凸部、
43:固定ネジ、
44:ネジ穴、
45:ネジ固定部、
61,62,63,65:放熱材。