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  • 特許-油入静止誘導機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】油入静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/02 20060101AFI20220824BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01F27/02 E
H01F27/00 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018094566
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019201100
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山下 みどり
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-164816(JP,U)
【文献】特開昭55-006801(JP,A)
【文献】特開平06-077064(JP,A)
【文献】実開昭56-067725(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/02
H01F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導機器本体が収容されると共に絶縁油が充填される本体タンクと、
前記本体タンクの上部に配置され内部で発生したガスを検出するガス検出装置と、
前記本体タンクの上壁部に取付用の穴を開けた状態で取付けられるものであって、放圧装置及び負荷時タップ切換器を含む付属部品と、
前記本体タンクの上壁部内面側に設けられ、該本体タンク内で発生したガスの気泡が前記付属部品の取付用の穴から逸れるように案内するための防御板とを備え
前記防御板は、前記放圧装置に下方から被せられるように配置される上面が開口した矩形箱状をなし、底面を有すると共に及び側面のうち対向する2面の上辺部を除く位置に部分的に開放した開口部を有して構成された第1の防御板と、
前記負荷時タップ切換器の周囲を囲むリング板状に構成された第2の防御板とを含んでいる油入静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、油入静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
油入静止誘導機器、例えば高電圧受配電設備用の油入変圧器においては、変圧器本体を絶縁油と共に本体タンク内に収容すると共に、本体タンク内に、運転状態の変圧器において電圧調整のためにタップを切り換えるためのLTC(on-Load Tap Changer)と称される負荷時タップ切換器を備えて構成されるものがある。また、本体タンクの上部に、絶縁油の劣化を防止するためのコンサベータが設けられ、さらに、本体タンクの側方に絶縁油を冷却するための放熱器が設けられる。
【0003】
ところで、この種の油入変圧器にあっては、異常時の分解ガスを検出して遮断器を動作させるためのガス検出継電器やブッフホルツ継電器等のガス検出装置を設けて、保護を図るようにしている。このとき、本体タンクに計器等の付属部品を取付ける場合、本体タンクに取付用の穴を形成した上で、専用の取付座を溶接するといったことが行われるが、取付用の穴の形成部分にガス溜りができると、ガス検出装置によるガスの検出が正しく行えなくなる不具合が生ずる。そこで、例えば特許文献1では、ガスがマンホールの開口部に溜まらないように、開口部を埋めるような詰め物を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平3-6819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、ガス溜りができる穴部分を詰め物によって埋める構成では、ガス溜りの形状が詰め物の配置が可能な形状となっている場合は良いが、付属部品の種類や形状によっては、穴の構造上、詰め物ができないケースもあり、必ずしも適用ができなかった。
そこで、本体タンクの上部にガス検出装置を備えたものにあって、内部で発生するガスを効果的に検出することができる油入静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る油入静止誘導機器は、誘導機器本体が収容されると共に絶縁油が充填される本体タンクと、前記本体タンクの上部に配置され内部で発生したガスを検出するガス検出装置と、前記本体タンクの上壁部に取付用の穴を開けた状態で取付けられるものであって、放圧装置及び負荷時タップ切換器を含む付属部品と、前記本体タンクの上壁部内面側に設けられ、該本体タンク内で発生したガスの気泡が前記付属部品の取付用の穴から逸れるように案内するための防御板とを備え、前記防御板は、前記放圧装置に下方から被せられるように配置される上面が開口した矩形箱状をなし、底面を有すると共に及び側面のうち対向する2面の上辺部を除く位置に部分的に開放した開口部を有して構成された第1の防御板と、前記負荷時タップ切換器の周囲を囲むリング板状に構成された第2の防御板とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態を示すもので、油入絶縁変圧器の本体タンク部分の全体構成を示す断面図
図2】第1の防御板の外観を示す斜視図
図3】第2の防御板の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、高電圧受配電設備用の油入絶縁変圧器に適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る油入静止誘導機器としての油入絶縁変圧器1(以下単に「変圧器1」という)の全体構成を、放熱器を除いた状態で示している。尚、本実施形態の説明で方向をいう場合には、便宜上、本体タンクの長手方向を左右方向とし、図1を正面から見た図とする。
【0009】
この変圧器1は、全体として横長な矩形箱状をなす金属製の本体タンク2を備えている。この本体タンク2内には、誘導機器本体としての変圧器本体3を収容すると共に、その変圧器本体3全体が浸されるように、絶縁及び冷却用の絶縁油(例えば鉱油)Mが充填されている。前記変圧器本体3は、鉄心4及びその鉄心4に装着されたコイル5等からなる周知構成を備えており、本体タンク2内の例えば図で左寄り部分に配設されている。また、本体タンク2の外壁部には、電気接続用の複数個のブッシング6が設けられている。前記本体タンク2の上面を構成する天井板2aの上面には、金属板製のタンクカバー7が重なるように設けられて、これら天井板2aとタンクカバー7とから上壁部が構成される。
【0010】
更に、変圧器1は、本体タンク2の上部の図で左側部分に位置して、コンサベータ8を備えている。周知のように、このコンサベータ8は、上下に薄型のタンク状をなし、内部にゴム膜(ゴム袋)で区画された絶縁油Mの貯留部を有し、その貯留部がパイプにより前記本体タンク2内と連通している。これにて、本体タンク2内の絶縁油Mの温度変化に伴う膨張、収縮を吸収すると共に、外気との接触による絶縁油Mの劣化を防止する。また、図示はしないが、本体タンク2の前後部には、本体2内の絶縁油Mを冷却するための放熱器が設けられる。
【0011】
そして、変圧器1には、複数の保護用の付属部品が設けられる。具体的には、本実施形態では、本体タンク2の上壁部に、放圧装置9、ガス検出装置としてのブッフホルツ継電器10、負荷時タップ切換器11が設けられる。そのうち、ブッフホルツ継電器10は、周知のように、下端部に、分解ガスを収集するガス収集部10aを有し、変圧器1の異常発生時に絶縁油Mから発生した所定量の分解ガスが検出されると、遮断器を動作させて変圧器本体3への通電等を停止させるものである。このブッフホルツ継電器10は、本体タンク2の上壁部の例えば中央やや右側に、取付用の穴2cを形成すると共に、タンクカバー7に専用の取付座13を溶接した状態で、本体タンク2の上壁部に取付けられる。
【0012】
前記放圧装置9は、例えば変圧器本体3の異常発生時に、本体タンク2内の圧力が高圧となったことを下面側の受圧部9aにより検出し、発生した分解ガスや膨張した絶縁油Mを外部に放出すると共に、警報を発するものである。この放圧装置9は、本体タンク2の上壁部の例えばほぼ中央部(ブッフホルツ継電器10の図で左側)に、取付用の穴2bを形成すると共に、タンクカバー7に専用の取付座12を溶接した状態で、本体タンク2の上壁部に取付けられる。このとき、前記受圧部9aが本体タンク2内(絶縁油M中)に配置される。
【0013】
前記負荷時タップ切換器11は、運転状態の変圧器本体3のタップを切換えて電圧を調整する装置であり、図示はしないが、周知のように、負荷時タップ切換器11は、密閉されたタンク内に、タップ選択器及び切換開閉器を収納すると共に、内部を絶縁油Mで満たして構成される。この負荷時タップ切換器11は、本体タンク2の上壁部の例えば右端側(ブッフホルツ継電器10の図で右側)に、取付用の穴2dを形成すると共に、タンクカバー7に専用の取付座14を溶接した状態で、本体タンク2の上壁部に取付けられる。このとき、負荷時タップ切換器11は、タンクの上端部が、前記本体タンク2の上壁部から上方にやや突出した形態で、大部分が本体タンク2内に配置される。
【0014】
さて、本実施形態では、前記本体タンク2の上壁部の内面側には、該本体タンク2内で発生したガスの気泡が付属部品、この場合放圧装置9及び負荷時タップ切換器11の取付用の穴2b、2dから逸れるように案内するための防御板15及び16が設けられる。具体的には、前記放圧装置9の下部には、金属板からなる第1の防御板15が設けられる。この第1の防御板15は、図2にも示すように、上面が開口した矩形箱状をなし、4つの側面のうち、対抗する2面この場合前面及び後面に四角形の開口部15a、15aを有して構成されている。この第1の防御板15は、その上端部が前記本体タンク2の上壁部に溶接されることにより、放圧装置9に下方から被せられるように取付けられている。
【0015】
また、前記負荷時タップ切換器11の取付用の穴2dの下部には、金属板からなる第2の防御板16が設けられる。この第2の防御板16は、図3にも示すように、負荷時タップ切換器11の周囲を囲む枠状この場合リング板状に構成されている。この第2の防御板16は、その上端部が前記本体タンク2の上壁部に溶接されることにより、負荷時タップ切換器11のうち、穴2dの下面側周囲に位置して取付けられている。
【0016】
次に、以上のように構成された変圧器1の作用、効果について述べる。上記構成の変圧器1においては、例えば、変圧器本体3における短絡等の異常により、絶縁油Mの分解ガスが発生し、図1に示すように、その気泡Bが、絶縁油M中を真っ直ぐ上昇していく。この気泡Bは、ブッフホルツ継電器10のガス収集部10aに収集されることに基づいて動作し、回路の遮断や警報等が行われる。ここで、もし、発生した気泡Bが、ブッフホルツ継電器10のガス収集部10aに向かわずに、本体タンク2の上壁部の一部、特に付属部品9、11の取付用の穴2b、2d部分に溜まるようなことがあると、ブッフホルツ継電器10による正しい検出から外れてしまう虞がある。
【0017】
ところが、本実施形態では、そのようなガス溜りができそうな部分、即ち、放圧装置9の取付用の穴2b部分、及び、負荷時タップ切換器11の取付用の穴2d部分の下方には、ガスの気泡Bが逸れるように案内する防御板15及び16がそれぞれ配置されている。このとき、防御板15、16によって、ガスの気泡Bの上昇時の流れを変えたり堰き止めたりすることができ、気泡Bが取付用の穴2b、2d部分に至ることを防止できる。これにより、ガスの気泡Bを、ブッフホルツ継電器10のガス収集部10aに集めることができ、ブッフホルツ継電器10を正しく動作させることができる。
【0018】
このような本実施形態によれば、本体タンク2の上部にガス検出装置としてのブッフホルツ継電器10を備えたものにあって、防御板15、16を設けたことにより、発生したガスが取付用の穴2b、2d部分に溜まることを防止でき、本体タンク2の内部で発生するガスをブッフホルツ継電器10によって効果的に検出することができるという優れた効果を得ることができる。
【0019】
特に本実施形態では、本体タンク2の上壁部に放圧装置9を設けたものにあって、底面及び開口部15aを有する側面を有し、前記放圧装置9に下方から被せられるように配置される箱状の第1の防御板15を設けた。このとき、放圧装置9が受圧部9aを有する構造上、その下面側を塞ぐことはできないが、第1の防御板15の部分的に開放した側面によって、放圧装置9の下面の受圧部9aに対する絶縁油Mの流通が可能となる。これにより、箱状の第1の防御板15の内部、外部間での絶縁油Mの流通を確保しながら、第1の防御板15の底面部分でガスの気泡Bを堰き止めて流れを変えることができる。
【0020】
更に本実施形態では、本体タンク2の上壁部に負荷時タップ切換器11を設けたものにあって、負荷時タップ切換器11の周囲を囲む枠状の第2の防御板15を設けた。負荷時タップ切換器11を取付ける際の穴2d部分において、ガス溜りとなる虞のある隙間が形成される事情があっても、その隙間を塞ぐようにリング状の第2の防御板16が配置されるので、ガスの気泡Bを第2の防御板16の外周面に沿って流すことができ、ガスが隙間分に溜まることを防止することができる。
【0021】
尚、上記実施形態では、ガス検出装置としてブッフホルツ継電器10を採用するようにしたが、例えばガス検出継電器等であっても良い。また、上記実施形態では、付属部品として、放圧装置9及び負荷時タップ切換器11の双方を備えたものとしたが、いずれか一方のみを備える構成であっても良い。それ以外の付属部品、例えば計器類等についても、同様に防御板を設けることができる。ガス検出装置や付属部品を設ける位置としても、様々な変更が可能である。
【0022】
上記実施形態では、絶縁油Mとして、鉱油を例にあげたが、鉱油以外の絶縁油全般や液体シリコーン等であっても良い。変圧器の全体的な構成としても、例えば絶縁油Mを放熱器に対し強制循環させるための循環用ポンプや、強制冷却用のファン装置等を有するものであっても良い等、様々な変更が可能である。コンサベータとしても、開放式のものであっても良い。その他、静止誘導機器としては、変圧器に限らず、例えばリアクトルに適用することもできる。
【0023】
以上のように、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
図面中、1は油入変圧器(油入静止誘導機器)、2は本体タンク、2b、2dは取付用の穴、3は変圧器本体(誘導機器本体)、7はタンクカバー、9は放圧装置(付属部品)、9aは受圧部、10はブッフホルツ継電器(ガス検出装置)、11は負荷時タップ切換器、15は第1の防御板、16は第2の防御板、Mは絶縁油を示す。
図1
図2
図3