(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及びインクジェット記録装置用のインク捕集部材
(51)【国際特許分類】
B41J 2/185 20060101AFI20220824BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220824BHJP
B41J 2/08 20060101ALI20220824BHJP
B41J 2/085 20060101ALI20220824BHJP
B41J 2/09 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B41J2/185 101
B41J2/01 301
B41J2/08
B41J2/085
B41J2/09
(21)【出願番号】P 2018096029
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 崇博
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 光雄
(72)【発明者】
【氏名】岡野 守
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001275(JP,A)
【文献】実開昭61-018841(JP,U)
【文献】特開昭63-153145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361926(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03103641(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第106240162(CN,A)
【文献】特開平10-264412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0197406(US,A1)
【文献】国際公開第2015/187983(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第106457831(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに取外し自在に構成され、前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を捕集するインク捕集部材と、
を有し、
前記印字ヘッドは、
前記インク粒子を形成するノズルと、
前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、
浮遊する前記インク微粒子を静電力で吸引するインク微粒子吸引部と、
を有し、
前記インク微粒子吸引部は、
前記印字対象物から跳ね返って浮遊する前記インク微粒子を前記インク捕集部材の表面に前記静電力により付着させ、
前記印字ヘッドの内部に侵入した前記インク微粒子を前記偏向電極の裏側に前記静電力により付着させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記印字ヘッドは、
前記インク捕集部材を前記印字ヘッドに固定するための捕集部材固定部を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記捕集部材固定部は、
前記印字ヘッドの側面の内の対角となる2面に設置されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク捕集部材は、
前記印字ヘッドから吐出されて印字に用いるための前記インク粒子を通過させるための開口部と、
前記開口部と前記印字ヘッドとの位置関係がずれないように形成した捕集部材位置決め部と、
前記捕集部材固定部の一部と係合する固定用開口部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記印字ヘッドは、
前記ノズル、前記帯電電極、前記偏向電極及び前記インク微粒子吸引部を保護するヘッドカバーを更に有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ヘッドカバーは、
前記インク粒子を吐出させるためのインク粒子吐出穴と、
前記インク粒子吐出穴を形成した面の外側に形成された捕集部材ベースと、
前記インク微粒子吸引部を外側に突き出すための開口部と、
を有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記捕集部材ベースは、
前記ヘッドカバーに取り付けるための第1の捕集部材ベース面と、
前記インク粒子の進行方向に突き出した第2の捕集部材ベース面と、
前記第1の捕集部材ベース面と前記第2の捕集部材ベース面とを接続する捕集ベース側壁と、
前記第1の捕集部材ベース面と前記第2の捕集部材ベース面との間に気流が通過するように形成された捕集ベース空間と、
を有することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに取外し自在に構成され、前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を捕集するインク捕集部材と、
を有し、
前記印字ヘッドは、
前記インク粒子を形成するノズルと、
前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、
浮遊する前記インク微粒子を静電力で吸引するインク微粒子吸引部と、
を有し、
前記インク微粒子吸引部は、
前記偏向電極と同一の電源が接続されており、
前記電源を介して1kV~7kVの範囲の電圧が印加されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに取外し自在に構成され、前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を捕集するインク捕集部材と、
を有し、
前記印字ヘッドは、
前記インク粒子を形成するノズルと、
前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、
浮遊する前記インク微粒子を静電力で吸引するインク微粒子吸引部と、
を有し、
前記インク微粒子吸引部と前記偏向電極は、電極接続部を介して一体として形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに取外し自在に構成され、前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を捕集するインク捕集部材と、
を有し、
前記印字ヘッドは、
前記インク粒子を形成するノズルと、
前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、
浮遊する前記インク微粒子を静電力で吸引するインク微粒子吸引部と、
を有し、
前記インク微粒子吸引部は、絶縁カバーで覆われていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、
インク容器内のインクを前記印字ヘッドに供給するための供給経路、印字に使用しない前記インクを前記インク容器内に回収するための回収経路及び前記供給経路と前記回収
経路における前記インクの流れを調整する調整部を備えた本体と、を有し、
前記印字ヘッドは、
前記インクを粒子化させて前記インク粒子を形成するノズルと、
前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、
印字に使用しない前記インク粒子を回収するガターと、
前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を静電力で吸引するインク微粒子吸引部と、
前記ノズル、前記帯電電極、前記偏向電極及び前記インク微粒子吸引部を保護するヘッドカバーと、
を有
し、
前記インク微粒子吸引部と前記偏向電極は、
電極接続部を介して一体として形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、
インク容器内のインクを前記印字ヘッドに供給するための供給経路、印字に使用しない前記インクを前記インク容器内に回収するための回収経路及び前記供給経路と前記回収
経路における前記インクの流れを調整する調整部を備えた本体と、を有し、
前記印字ヘッドは、
前記インクを粒子化させて前記インク粒子を形成するノズルと、
前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、
印字に使用しない前記インク粒子を回収するガターと、
前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を静電力で吸引するインク微粒子吸引部と、
前記ノズル、前記帯電電極、前記偏向電極及び前記インク微粒子吸引部を保護するヘッドカバーと、
を有
し、
前記インク微粒子吸引部は、
前記偏向電極と同一の電源が接続されており、
前記電源を介して1kV~7kVの範囲の電圧が印加されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、
インク容器内のインクを前記印字ヘッドに供給するための供給経路、印字に使用しない前記インクを前記インク容器内に回収するための回収経路及び前記供給経路と前記回収
経路における前記インクの流れを調整する調整部を備えた本体と、を有し、
前記印字ヘッドは、
前記インクを粒子化させて前記インク粒子を形成するノズルと、
前記インク粒子を帯電させる帯電電極と、
帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極と、
印字に使用しない前記インク粒子を回収するガターと、
前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を静電力で吸引するインク微粒子吸引部と、
前記ノズル、前記帯電電極、前記偏向電極及び前記インク微粒子吸引部を保護するヘッドカバーと、
を有
し、
前記インク微粒子吸引部は、
前記ヘッドカバーの内部に侵入した前記インク微粒子の一部を前記偏向電極の裏側に前記静電力により付着させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録装置用のインク捕集部材に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、印字ヘッドのインク吐出口からインク粒子を飛翔させて印字を行うため、被印字媒体に対して非接触に印字を行うことができる。しかし、印字ヘッドと被印字媒体との距離が近接する場合には、インク粒子が被印字媒体に衝突した際に印字ヘッド側に跳ね返り、印字ヘッドの表面が汚れる場合がある。
【0003】
このような印字ヘッドの表面の汚れを防止する技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、浮遊するインク粒子を静電力で回収するインク回収装置を印字ヘッドの側面に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、印字ヘッドの側面にインク回収装置を設置するための広いスペースが必要になる。
また、特許文献1では、インク回収装置を用いてインク粒子を捕集部材としての吸着部材の表面に吸着させている。しかし、捕集部材の具体的な構造や捕集部材の交換方法については言及されていない。
【0006】
本発明の目的は、インクジェット記録装置において、広いスペースを必要としないで浮遊するインク粒子を捕集し、かつ捕集部材を簡単に交換可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のインクジェット記録装置は、インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドと、前記印字ヘッドに取外し自在に構成され、前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を捕集するインク捕集部材とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様のインクジェット記録装置用のインク捕集部材は、インク粒子を吐出させて印字対象物に印字する印字ヘッドを有するインクジェット記録装置用のインク捕集部材であって、前記インク捕集部材は、前記印字ヘッドに取外し自在に構成され、前記印字対象物と前記印字ヘッドとの間の空間を浮遊し、前記インク粒子がミスト状になったインク微粒子を捕集することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、インクジェット記録装置において、広いスペースを必要としないで浮遊するインク粒子を捕集し、かつ捕集部材を簡単に交換可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1におけるインクジェット記録装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】実施例1におけるインクジェット記録装置の動作原理を示す概念図である。
【
図3】実施例1におけるインクジェット記録装置で印字する際のインク微粒子の発生状態を説明する図である。
【
図4】実施例1における印字ヘッドの使用状態を示す斜視図である。
【
図5】実施例1における印字ヘッドの外観を示す斜視図である。
【
図6】実施例1における印字ヘッドに取り付けられたインク捕集部材の交換方法を示す図である。
【
図7】実施例1におけるインク捕集部材を水平方向に外した状態の印字ヘッドの外観を示す斜視図である。
【
図8】実施例1におけるインク捕集部材を垂直方向に外した状態の印字ヘッドの外観を示す斜視図である。
【
図9】実施例1における印字ヘッドを捕集部材側から見た平面図を示す。
【
図10】実施例1におけるインク捕集部材の展開図である。
【
図11】実施例1における印字ヘッドの内部構成を示す部分断面図である。
【
図12】実施例1における印字ヘッド内部のインク微粒子の流れを示す断面図である。
【
図13】実施例2における印字ヘッド内部のインク微粒子の流れを示す断面図である。
【
図14】実施例3における使用状態の印字ヘッドを示す部分断面図である。
【
図15】実施例3における使用状態の印字ヘッド内部構成を示す断面図である。
【
図16】実施例4における印字ヘッド構造と印字ヘッドに取り付けられたインク捕集部材の交換方法を示す図である。
【
図17】
図16におけるインク捕集部材固定部の構成を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
<装置の使用形態>
図1を参照して、実施例1に係るインクジェット記録装置400の使用状態について説明する。
図1に示すように、インクジェット記録装置400は、インクジェット記録装置本体1に操作表示部3を備え、外部に印字ヘッド2を備える。インクジェット記録装置本体1と印字ヘッド2は導管4にて接続されている。また、印字ヘッド2の先端には、インク捕集部材71が取り付けられている。
【0013】
インクジェット記録装置400は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据え付けられ、インクジェット記録装置本体1は使用者が操作できる位置に設置され、印字ヘッド2はベルトコンベア14などの生産ライン上を矢印Aの方向に給送される印字対象物15A~15Cに近接できる位置に設置される。
【0014】
ベルトコンベア14などの生産ライン上には、印字対象物(印字前)15Aを検出してインクジェット記録装置に印字を指示する信号を出力する印字センサ16や、印字対象物(印字後)15Cの印字結果に問題無いか検査するために印字検査用カメラ17が設置されていて、それぞれはインクジェット記録装置本体1内の制御部(図示せず)に接続されている。
【0015】
印字センサ16からの信号に応じて制御部がノズル8から吐出されるインク粒子7Cへの帯電量や帯電タイミングを制御し、印字対象物(印字前)15Aが印字ヘッド2近傍を通過する間に帯電、偏向されたインク粒子7Cを印字対象物(印字中)15Bへ付着させて印字を行うようになっている。
【0016】
<装置の動作原理>
次に、
図2を参照して、インクジェット記録装置400の動作原理について説明する。
図2に示すように、21は主インク容器、7Aはインク、24はインクを加圧し、送り出すポンプ(供給用)、9は電圧を印加すると所定の周波数で振動する電歪素子、8はインクを吐出するノズル、7Bはインク柱である。10はインク粒子に帯電させる帯電電極、7Cはインク粒子で、11はマイナス偏向電極、12はプラス偏向電極、15Bは印字される印字対象物、14は印字しないインク粒子を回収するガター、25はインクを吸引し、回収するポンプ(回収用)、28は高圧電源、91はインク微粒子吸引電極部(インク微粒子吸引部)である。
【0017】
主インク容器21内のインク7Aはポンプ(供給用)24に吸引、加圧されてインク柱7Bとなってノズル8から吐出される。ノズル8には、電歪素子9が備えられており、インクに所定の周波数で振動を加えてノズル8から吐出されるインク柱7Bを粒子化するようになっている。これにより生成されるインク粒子7Cの数は,電歪素子9に印加する励振電圧の周波数により決定され、その周波数と同数となる。インク粒子7Cは、印字情報に対応した大きさの電圧を帯電電極10にて印加することで電荷を与えられるようになっている。
【0018】
帯電電極10で帯電させられたインク粒子7Cは、マイナス偏向電極11とプラス偏向電極12間の電界中を飛翔する。偏向電界は、高圧電源28に接続されていることによって、1~7kVの高電圧が印加されたプラス偏向電極12と、前記プラス電極と対向した位置に設置されたマイナス偏向電極11との間に形成されている。帯電したインク粒子7Cは、その帯電量に比例した力を受けて偏向し、印字対象物15Bへ向かって飛翔して着弾する。
【0019】
その際、インク粒子7Cは帯電量に応じて偏向方向の着弾位置は変化し、さらに偏向方向と直交する矢印Bの方向に生産ラインが印字対象物15Bを移動させる。これにより、偏向方向と直交した方向にも粒子を着弾させることが可能となり、複数の着弾インク粒子7Dによって文字を構成し印字を行う。印字に使用されなかったインク粒子7Cはプラス偏向電極12間を直線的に飛翔して、ガター14により捕捉された後に、ポンプ(回収用)25で吸引されて主インク容器21に回収される。
【0020】
ここで、プラス偏向電極12とインク微粒子吸引電極部91は、電気的に接続された状態になっている。例えば、プラス偏向電極に5kVの電圧が印加された状態であれば、インク微粒子吸引電極部91にも5kVの電圧が印加された状態となる。尚、インク微粒子吸引電極部91の役割については、
図11~
図15で詳細を説明する。
【0021】
<実施例1の印字ヘッド外観構造>
実施例1に係るインクジェット記録装置400の印字ヘッド2の外観構造について、
図5~
図9、
図11を用いて説明する。
ここで、
図5は実施例1の印字ヘッドの外観を示す斜視図である。
図6は実施例1の印字ヘッドに取り付けられた捕集部材の交換方法を示す図である。
図7は実施例1の捕集部材を水平方向に外した状態の印字ヘッドの外観を示す斜視図である。
図8は実施例1の捕集部材を垂直方向に外した状態の印字ヘッドの外観を示す斜視図である。
図9は実施例1の印字ヘッドを捕集部材側から見た平面図である。
図11は印字ヘッドの内部構成を示す部分断面図である。
【0022】
図5~
図9、
図11に示すように、印字ヘッド2は、ノズル8と、帯電電極10と、マイナス偏向電極11と、プラス偏向電極12と、ガター14と、それらを保護する目的で組み付けられたヘッドカバー61と、それらを設置するためのヘッドベース41とを備えている。ヘッドベース41には、図示しない印字ヘッド2の内部部品を保護する目的で保護カバー81が組み付けられている。保護カバー81には、ヘッドカバー61を固定するためのヘッドカバー固定ネジ82が組み付けられている。ヘッドカバー固定ネジ82を緩めることで、ヘッドカバー61を印字ヘッド2から着脱することが可能となる。
【0023】
印字ヘッド2に組み付けられたノズル8などの重要部品については、金属製のヘッドベース41、保護カバー81とヘッドカバー61で囲われた空間に設置されているため、メンテナンス時の衝撃等から保護されるようになっている。また、ヘッドカバー61と保護カバー81は、印字ヘッド2に組み付けた状態では電気的に接地された状態になっている。
【0024】
次に、ヘッドカバー61の形状について、主に
図7を用いて説明する。
ヘッドカバー61は、印字に使用するインク粒子7Cが通過するためのカバースリット穴61Aと、カバースリット穴61Aを形成する面の面積が小さくなるように形成したカバー斜め側面(右)61B及びカバー斜め側面(左)61Dと、カバー斜め側面(右)61Bを介して接続されてカバースリット穴61を形成した面と垂直になるように設置されたカバー側面(右)61Cと、カバー斜め側面(左)61Dを介して接続されてカバー側面(右)61Cと平行になるように設置されたカバー側面(左)61Eとを形成している。
【0025】
ヘッドカバー61は、カバー斜め側面(右)61Bとカバー斜め側面(左)61D、カバー側面(右)61C及びカバー側面(左)61E、と接続されたカバー上面61Fを形成しており、また更にカバー上面61Fの反対側にカバー下面61Gを形成している。このようなヘッドカバー61は、カバースリット穴61Aを形成している面が小さいほど印字ヘッド2を印字対象物15に近づけることが容易になる。このために、印字ヘッド2を工場内の生産ラインに据え付ける場合の設置性が向上する。
【0026】
ヘッドカバー61のカバースリット穴61Aが形成されている面には、捕集部材ベース固定ネジ63を用いて捕集部材ベース62が組み付けられている。捕集部材ベース62は、印字に使用するインク粒子7Cが通過するためのベーススリット穴62Aと、インク微粒子吸引電極カバー92を突き出すための開口部を形成している。この捕集部材ベース62の材料は、印字に用いるインク粒子7Cの飛翔方向に影響を与えないようにするために絶縁体材料を用いている。例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)やポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の樹脂を材料として使用している。
【0027】
ヘッドカバー61には、インク捕集部材71を取り付けるために、カバー側面(右)61Cに捕集部材固定部(右)65と、カバー側面(左)61Eに捕集部材固定部(左)64が組み付けられている。このような捕集部材固定部(右)65と捕集部材固定部(左)64は、実施例1においてはステンレス材料の薄板を折り曲げて製作したものを例として用いたが、樹脂材料を用いて成型加工などで製作した部品であってもよい。
【0028】
捕集部材固定部(右)65と捕集部材固定部(左)64の形状について、主に
図9と
図11を用いて説明する。
【0029】
捕集部材固定部(右)65は、固定(右)組み付け部65Eを介して位置決めをした上でカバー側面(右)61Cに固定されており、インク捕集部材71を押し当てて固定するための固定(右)勘合部65Dと、インク捕集部材71を印字ヘッド2に取り付けやすくするために斜めに突き出るように形成した固定(右)案内部65Fと、インク捕集部材71の着脱時に押すことで固定(右)勘合部65Dが動くように形成した固定(右)押し部65Cとを形成している。
【0030】
捕集部材固定部(左)64は、固定(左)組み付け部64Eを介して位置決めをした上でカバー側面(左)61Eに固定されており、インク捕集部材71を押し当てて固定するための固定(左)勘合部64Dと、インク捕集部材71を印字ヘッド2に取り付けやすくするために斜めに突き出るように形成した固定(左)案内部64Fと、インク捕集部材71の着脱時に押すことで固定(左)勘合部64Dが動くように形成した固定(左)押し部64Cとを形成している。
【0031】
捕集部材固定部(右)65に形成された固定(右)上部65Aと捕集部材固定部(左)64に形成された固定(左)上部64A、及び捕集部材固定部(右)65に形成された固定(右)下部65Bと捕集部材固定部(左)64に形成された固定(左)下部64Bは、印字ヘッド2への組み付け時に異なる高さになるようにしている。そのため、インク捕集部材71は、印字ヘッド2に取り付ける時に上下左右が逆にならないように誤取り付け防止となっている。
【0032】
<実施例1のインク捕集部材の形状>
実施例1に係るインクジェット記録装置400のインク捕集部材71の形状について、
図5~
図11を用いて説明する。ここで、
図5~
図9、
図11は実施例1の印字ヘッド2とインク捕集部材71を示す。
図10は実施例1のインク捕集部材71の展開図を示す。
【0033】
先ず、インク捕集部材71の印字ヘッド2への取り付け前の形状について、主に
図10を用いて説明する。
インク捕集部材71は、厚さ0.1~1.5mmの範囲の紙材で製作されており、外形はプレスなどによる打ち抜きで加工されていて、また、印字ヘッド2に取り付けやすい形状に折りたためるように複数(実施例1では、4ヵ所)の折り目を形成している。インク捕集部材71は、印字に用いるインク粒子7Cが通過するための捕集部材スリット穴71Aと、捕集部材スリット穴71Aを有しており捕集部折り目(右)71Gと捕集部折り目(左)71Iにより挟まれた捕集部材正面71Bを形成している。
【0034】
インク捕集部材71は、捕集部材折り目(右)71Gと捕集部材折り目(右)71Hにより挟まれた捕集部材斜め側面(右)71Cと、捕集部材固定用スリット(右)71Kと捕集部材位置決め段差(右)71Mを有しており捕集部折り目(右)71Hと隣接する捕集部材側面(右)71Dと、捕集部折り目(左)71Iと捕集部折り目(左)71Jにより挟まれた捕集部材斜め側面(左)71Eと、捕集部材固定用スリット(左)71Lと捕集部材位置決め段差(左)71Nを有しており捕集部折り目(左)71Jと隣接する捕集部材側面(左)71Fと、を形成している。
【0035】
インク捕集部材71は、捕集部材折り目(右)71Gなどの前記複数の折り目と垂直に形成された捕集部材上部71Pと、捕集部材スリット穴71Aを挟んで捕集部材上部71Gと反対側に形成された捕集部材下部71Qとを有している。
【0036】
次に、インク捕集部材71の印字ヘッド2への取り付けた時の形状について、主に
図7と
図9を用いて説明する。
インク捕集部材71は、印字ヘッド2の外観形状に合わせて捕集部材折り目(右)71Gと捕集部材折り目(右)71Hと、捕集部材折り目(左)71Iと捕集部材折り目(左)71Jを折り曲げると、
図7のような状態となる。印字ヘッド2への取り付け時にインク捕集部材71は、捕集部材ベース62と捕集部材正面71Bが接触するようになっており、この時に、ベーススリット穴62Aと捕集部材スリット穴71Aの少なくとも一部が重なるようになっており、組み付け状態においても印字に使用するインク粒子7Cの飛翔軌跡を阻害しないようになっている。
【0037】
印字ヘッド2へ取り付ける状態のインク捕集部材71は、カバー斜め側面(右)61Bと捕集部材斜め側面(右)71Cが接触するように形成しており、カバー側面(右)61Cと捕集部材側面(右)71Dが接触するように形成しており、また、カバー斜め側面(左)61Dと捕集部材斜め側面(左)71Eが接触するように形成しており、カバー側面(左)61Eと捕集部材側面(左)71Fが接触するように形成した構成となっている。
【0038】
インク捕集部材71の固定については、印字ヘッド2側の固定(右)勘合部65Dが捕集部材固定用スリット(右)71Kを押さえて、更に印字ヘッド2側の固定(左)勘合部64Dが捕集部材固定用スリット(左)71Lを押さえる。これにより、インクジェット記録装置400の稼働中にインク捕集部材71が印字ヘッド2から脱落することを防止することが可能となる。
【0039】
印字ヘッド2は、捕集部材固定部(左)64及びそれと勘合する捕集部材固定用スリット(左)71Lと、捕集部材固定部(右)65及びそれと勘合する捕集部材固定用スリット(右)71Kの大きさ(長さ)が違っている。これにより印字ヘッド2にインク捕集部材71を取り付ける際の間違った取り付けを防止することができる構造になっている。
【0040】
<実施例1のインク捕集部材の交換方法>
実施例1に係るインクジェット記録装置400の保守部材71の交換方法について、
図6~
図8を用いて説明する。ここで、
図5は実施例1の印字ヘッド2にインク捕集部材71が固定された状態を示す斜視図である。
図6(A)は実施例1の印字ヘッド2にインク捕集部材71が固定された状態を示す正面図である。
図6(B)は実施例1の印字ヘッド2からインク捕集部材71を取り外した状態を示した正面図である。
図7と
図8は実施例1の印字ヘッド2からそれぞれの図で別の方向にインク捕集部材71が取り外されている状態を示す斜視図である。
【0041】
インク捕集部材71の印字ヘッド2への取り付け及び取り外し作業方法について、主に
図6を用いて説明する。
図6(A)において、インク捕集部材71は、印字ヘッド2に組み付けらいる固定(右)勘合部65Dと固定(左)勘合部64Dにより押圧されることにより、固定されている。
【0042】
図6(B)において、インク捕集部材71が、印字ヘッド2から矢印Gの方向に取り外されている状態を示した。捕集部材固定部(右)65は、作業者の指などが固定(右)押し部65Cを矢印Cの方向に押し付けることによって、固定(右)勘合部65Dと固定(右)案内部65Fが矢印Fの方向に変位するようになっている。また、捕集部材固定部(左)64は、作業者の指などが固定(左)押し部64Cを矢印Eの方向に押し付けることによって、固定(左)勘合部64Dと固定(左)案内部64Fが矢印Fの方向に変位するようになっている。
【0043】
これにより、インク捕集部材71は、固定(右)勘合部65Dと固定(左)勘合部64Dから離れるため、印字ヘッド2から取り外すことが可能となる。また、インク捕集部材71は、先ほど説明した印字ヘッド2からの取り外し手順と逆の手順で矢印Hの方向に動かすことで、印字ヘッド2に取り付けることが可能となる。
【0044】
図7に示すように、インク捕集部材71は、使用済みの状態を示しており捕集部材正面71Bにインク汚れ32が付着している。インク捕集部材71は、定期的に交換するようにしており、矢印Hの方向に水平方向に移動することにより、印字ヘッド2から取り外すようにしている。また、インク捕集部材71は、交換する場合は矢印Hとは逆の方向に移動させて捕集部材正面71Bと捕集部材ベース62を接触させた状態で、印字ヘッド2に固定するようにしている。
【0045】
図8に示すように、インク捕集部材71は、矢印Jの方向に移動させて印字ヘッド2から取り外すようにしている。また、インク捕集部材71は、交換する場合は矢印Jとは逆の方向に移動させて固定(右)上部65Aと捕集部材位置決め段差(右)71Mを接触させた状態で、印字ヘッド2に固定するようにしている。このように、インク捕集部材71の取り付け作業においては、インク捕集部材71と印字ヘッド2の構成部品の一部を位置決めとして使用して、印字ヘッド2にインク捕集部材71を固定することで、捕集部材スリット穴71Aとベーススリット穴62Aの位置が合うようになっている。
【0046】
<実施例1の印字ヘッド内部構造>
実施例1に係るインクジェット記録装置400の印字ヘッド2の内部構造について、
図11を用いて説明する。ここで、
図11は、
図5の印字ヘッド2にインク捕集部材71が取り付けられた状態で、実施例1の印字ヘッド2の内部構成が分かるように一部を断面で示した部分断面図である。
【0047】
図11に示すように、印字ヘッド2は、ヘッドベース41と、ヘッドベース41に組み付けられていてインク柱7Bを吐出するためのノズル8と、ヘッドベース41に組み付けられていてインク柱7Bがインク粒子7Cになるタイミングでインク粒子7Cに荷電させるための帯電電極10と、ヘッドベース41に組み付けられていて帯電されたインク粒子7Cを帯電量に応じて変更させるための偏向電界を形成させるためのマイナス偏向電極11とプラス偏向電極12と、ヘッドベース41に組み付けられていて印字に使用しないインク粒子7Cを主インク容器21に回収するためのガター14と、を備えている。
【0048】
ヘッドベース41には、印字ヘッド2の内部部品を保護する目的でヘッドカバー61を組み付けており、
図11では印字ヘッド2の内部構成を説明するために、このヘッドカバー61の一部を部分断面にしている。
【0049】
実施例1におけるプラス偏向電極12の形状について説明する。
プラス偏向電極12は、耐溶剤性のあるステンレス材料の板材で製作されており、インク粒子7Cの飛翔方向にマイナス偏向電極11と偏向電界を形成するための電極表面12Aと、電極表面12Aと反対側の面に電極裏面12Bとを有している。また、プラス偏向電極12は、電極接続部91Aを介してインク微粒子吸引電極部91と接続されている。
図11では、説明しやすくするためにインク微粒子吸引電極部91の一部を、部分断面にしている。
【0050】
インク微粒子吸引電極部91は、インクジェット記録装置400が稼働している時に電界によるインク微粒子31の吸引効果を高めるために、電極先端部91Bがヘッドカバー61の端面より突き出るようにしている。インク微粒子吸引電極部91は、プラス偏向電極12と同様に1~7kVの電圧がかかるため、安全性を考慮して絶縁カバー91を圧入などの組立方法により取り付けている。この絶縁カバー92の材料は、フッ素系樹脂(例えばPTFE)を用いており、絶縁性と合わせて撥水性についても高めるようにしており、例えば湿気が多いような環境でも他の部品と絶縁する工夫をしている。
【0051】
また、電極先端部91B及び、ヘッドカバー61の外側に形成された絶縁カバー91の電極カバー先端部92Aは、捕集部材ベース62のインク捕集部材71と接触している面より外側に突き出ないように形成されている。これにより、印字ヘッド2へのインク捕集部材71の取り付け性を向上している。そして、
図11に示すように、印字に用いるインク粒子7Cが通過するための開口部は、カバースリット穴61Aとベーススリット穴62Aと捕集部材スリット穴71Aにより、印字ヘッド2の内部から外部にかけて貫通するようになっている。
【0052】
<実施例1の印字ヘッド使用形態>
実施例1に係るインクジェット記録装置400の印字ヘッド2の使用形態について、
図3、
図4、
図12を用いて説明する。ここで、
図3は実施例1のインクジェット記録装置400で印字する際のインク微粒子31の発生状態を説明する印字ヘッド2の側面図を示す。
図4は実施例1の印字ヘッド2の使用状態を示す斜視図である。
図12は実施例1の印字ヘッド2内部のインク微粒子31Aの流れを示す断面図である。
【0053】
先ず、
図3及び
図4は、インクジェット記録装置400の印字ヘッド2で印字対象物15Bの表面に印字している状態の印字ヘッド2を示している。固定された印字ヘッド2と対向する位置で印字対象物15Aが矢印Bの方向に搬送されることによって、印字対象物15Bの上側に文字や記号などが印字される。
【0054】
この時、印字ヘッド2の捕集部材スリット穴71Aから吐出するインク粒子の速度や印字ヘッド2と印字対象物15Bの表面との距離によって、印字対象物15Bに着弾した着弾インク粒子7Dの一部が跳ね返ることがある。そして、着弾インク粒子7Dが跳ね返ったインクは、ミスト状になったインク微粒子31の状態で浮遊する。このインク微粒子31の量は着弾インク粒子7D同士の間隔が狭いほど、着弾インク粒子7D同士が乾燥する前に重なるように着弾する。これによって、インクが跳ね返る量が多くなるために、インク微粒子31の発生量も多くなる。
【0055】
印字ヘッド2と印字対象物15との距離が短い場合、印字ヘッド2内で帯電されたインク微粒子31は、インク跳ね返り時の気流の影響やインク微粒子吸引電極部91による電界の影響により、印字ヘッド2に保持されたインク捕集部材71に付着しやすくなっている。インク捕集部材71の表面に着弾インク粒子7Dから跳ね返ったインク微粒子31により汚れが付着するが、その汚れは矢印Bで示した印字対象物15Bの搬送方向側に偏って存在する。これについては、
図4のインク捕集部材71にインク汚れ32として示した。このような構成とすることで、浮遊するインク微粒子31により印字ヘッド2が汚れることを防止、または汚れることを低減することが可能となる。
【0056】
インク捕集部材71は、捕集部材上部71Pが印字ヘッド2のカバー上面61Fより印字ヘッド2の外側に突き出しており、また更に捕集部材下部71Qが印字ヘッド2のカバー下面61Gより印字ヘッド2の外側に突き出している構成としている。インク捕集部材71に付着するインク汚れ32は、ベルトコンベア14の搬送スピードが速いほど搬送方向(矢印A)にインク汚れ32が伸びていきやすい。このため、インク捕集部材71が長いほど、インク微粒子31をインク捕集部材71に付着させやすくなる。
【0057】
実施例1で用いるインク捕集部材71は、インク微粒子31を捕捉することにより、徐々にインク汚れ32で示したようにインクで汚れていく。このため、定期的に新しいインク捕集部材71に交換するか、もしくは汚れたインク捕集部材71を洗浄することが必要になる。このように印字ヘッド2は、インク微粒子31をインク捕集部材71に付着させることで、インク微粒子31により印字ヘッド2が汚れることを低減することが可能となる。実施例1では、インク捕集部材71の材質は紙材としたが、汚れたインク捕集部材71を洗浄して使用する場合には、樹脂材料や金属材料を用いてもよい。
【0058】
次に、
図12は、インクジェット記録装置400の印字ヘッド2で印字対象物15Bの表面に印字している状態の印字ヘッド2内部状態を示している。インク跳ね返り時の気流の影響やインク微粒子吸引電極部91による電界の影響により、印字ヘッド2に保持されたインク捕集部材71に付着しやすくなっている。特に、インク微粒子31は、電界の集中する電極カバー先端部92の付近のインク捕集部材71への付着が多くなりやすい。
【0059】
また、印字ヘッド2においては、一部のインク微粒子31がインク捕集部材71に付着せずに捕集部材スリット穴71Aを通り抜けて、インク微粒子31Aに示したように印字ヘッド2の内部に侵入する場合がある。インク微粒子31Aは、インク吸引電極91の電界の影響、及び印字ヘッド2の内部の気流の影響を受けながら矢印Kのように進むようになっている。
【0060】
そして、少なくともインク微粒子31Aの一部は、プラス偏向電極12の電極裏面12Bに付着するようになっている。つまり、実施例1の印字ヘッド2は、インク微粒子吸引電極部91を設置することにより、印字に使用するインク粒子7Cの飛翔を物理的に妨げるような電極表面12Aへのインク微粒子31Aへの付着及び堆積を低減することが可能となる。
【0061】
<実施例1の効果>
以上のように、実施例1によれば、インクジェット記録装置400は、浮遊するインク微粒子31をインク捕集部材71に付着させることにより、印字ヘッド2の内部のインク汚れを低減することができる。そして、定期交換が必要なインク捕集部材71を簡単に交換可能な構成としたことで、印字ヘッド2の清掃作業を簡単にしたインクジェット記録装置400を提供することができる。
【0062】
更に、実施例1によれば、印字ヘッド2にインク微粒子吸引電極部91を設置したことで、印字に使用するインク粒子7Cの飛翔を阻害するような印字ヘッド2の内部汚れを低減することができる。
【実施例2】
【0063】
次に、実施例2について図面を用いて説明する。なお、実施例1と共通する部分についての説明は省略し、主に実施例1と異なる部分について説明を行う。
【0064】
<実施例2の印字ヘッド構成、及び使用形態>
本発明の実施例2に係るインクジェット記録装置410の実施の形態について、
図13を用いて説明する。
図13では、インクジェット記録装置410の印字ヘッド102で印字対象物15Bの表面に印字している状態の印字ヘッド102内部状態を示している。
【0065】
ヘッドベース41には、ノズル8などの主要部品を保護する目的でヘッドカバー161が組み付けられている。印字ヘッド102のメンテナンス時などには、ヘッドカバー61を印字ヘッド102から着脱することが可能な構成となっている。
【0066】
ヘッドカバー161の形状について説明する。ヘッドカバー161は、印字に使用するインク粒子7Cが通過するためのカバースリット穴161Aと、カバースリット穴161Aを形成したカバー正面161Bと、カバー正面161Bの面積が小さくなるように形成したカバー斜め側面(右)161C及びカバー斜め側面(左)161Eと、カバー斜め側面(右)161Cを介して接続されてカバースリット穴61を形成した面と垂直になるように設置されたカバー側面(右)161Dと、カバー斜め側面(左)161Eを介して接続されてカバー側面(右)161Cと平行になるように設置されたカバー側面(左)161Eと、を形成している。
【0067】
印字ヘッド102のプラス偏向電極12は、電極接続部191Aを介してインク微粒子吸引電極部191と接続されている。そして、インク微粒子吸引電極部191は、カバー正面161Aの方向に向かって伸びており、電極先端部191Bを形成している。インク微粒子吸引電極部191は、プラス偏向電極12と同様に1~7kVの電圧がかかるため、電極先端部191Bは、ヘッドカバー191との間に一定の距離を設けて空気により絶縁することで、絶縁破壊による放電(火花放電)の発生を抑制するようにしている。
【0068】
印字ヘッド102においては、一部のインク微粒子31がカバースリット穴161Aを通り抜けて、インク微粒子31Aに示したように印字ヘッド102の内部に侵入する場合がある。インク微粒子31Aは、インク吸引電極191の電界の影響、及び印字ヘッド102の内部の気流の影響を受けながら矢印Lのように進むようになっている。そして、少なくともインク微粒子31Aの一部は、プラス偏向電極12の電極裏面12Bに付着するようになっている。つまり、実施例2の印字ヘッド102は、インク吸引電極191を設置することにより、印字に使用するインク粒子7Cの飛翔を妨げるような電極表面12Aへのインク微粒子31Aへの付着及び堆積を、低減することが可能となる。
【0069】
<実施例2の効果>
実施例2によれば、インクジェット記録装置410は、印字ヘッド102にインク微粒子吸引電極部191を設置したことで、簡単な部品構成で印字に使用するインク粒子7Cの飛翔を阻害するような印字ヘッド102の内部汚れを低減することができる。
【実施例3】
【0070】
次に、実施例3について図面を用いて説明する。なお、実施例1及び2と共通する部分についての説明は省略し、主に実施例1及び2と異なる部分について説明を行う。
<実施例3の印字ヘッド構成>
実施例3に係るインクジェット記録装置420の印字ヘッド202の使用形態について、
図14、
図15を用いて説明する。ここで、
図14は実施例3のインクジェット記録装置420で印字する際のインク微粒子31の発生状態を説明する印字ヘッド202の側面図(一部を部分断面にした図)を示す。
図15は実施例3の印字ヘッド202内部のインク微粒子31Aの流れを示す断面図である。
【0071】
先ず、
図15に示すように、ヘッドカバー61のカバースリット穴61Aが形成されている面には、捕集部材ベース固定ネジ63を用いて捕集部材ベース262が組み付けられている。捕集部材ベース262は、ヘッドカバー61と接触するように形成されたベース1段目正面262Bと、ベース1段目正面262Bに形成されて印字に用いるインク粒子7Cが通過するためのベース1段目スリット穴262Bと、ベース1段目正面262Bよりインク捕集部材271と印字対象物15Bとの距離を近づけるために形成したベース2段目正面262Dと、を有している。
【0072】
捕集部材ベース262は、ベース2段目正面262Dに形成されて印字に用いるインク粒子7Cが通過するためのベース2段目スリット穴262Eと、ベース1段目正面262Bとベース2段目正面262Dを接続するために形成されたベース側面272Cと、ベース側面272Cによってベース1段目正面262Bとベース2段目正面262Dとの間に形成されたベース空間262Fと、を有している。
【0073】
図15に示すように、印字ヘッド202には、インク捕集部材271が取り付けられており、インク捕集部材271は、捕集部材固定部(左)64と捕集部材固定部(右)65によって印字ヘッド202に固定されている。インク捕集部材271は、厚さ0.1~1.5mmの範囲の紙材で製作されており、外形はプレスなどによる打ち抜きで加工されていて、また、印字ヘッド202に取り付けやすい形状に折りたためるように形成している。
【0074】
図15において、インク捕集部材271は折りたたまれて印字ヘッド202に取り付けられた状態を示している。インク捕集部材271は、印字に用いるインク粒子7Cが通過するための捕集部材スリット穴271Aと、捕集部材スリット穴271Aを有している捕集部材正面271Bと、ベース側面262Cに合わせた形状に折りたたまれた捕集部材手前側面(右)271Cと捕集部材手前側面(右)271Fと、ヘッドカバー61の外側の形状に合わせて折りたたまれた捕集部材斜め側面(右)271Dと捕集部材奥側側面(右)271E、及び捕集部材斜め側面(左)271Gと捕集部材奥側側面(左)271Hを形成している。
【0075】
インク捕集部材271の捕集部材奥側側面(右)271Eには、固定(右)勘合部65Dと合わさるように捕集部材固定用スリット(右)271Kと、固定(右)上部65Aと接触して位置決めに利用するために捕集部材位置決め段差(右)271Mと、を形成している。そして、捕集部材奥側側面(左)271Hには、固定(左)勘合部64Dと合わさるように捕集部材固定用スリット(左)271Lと、固定(左)上部64Aと接触して位置決めに利用するために捕集部材位置決め段差(左)271Nと、を形成している。
【0076】
ここで、インク捕集部材271を印字ヘッド202に取り付けた状態においては、捕集部材スリット穴271Aとベース2段目スリット穴262E、ベース1段目スリット穴262Aとカバースリット穴61Aの少なくとも一部は貫通するようになっており、印字に使用するインク粒子7Cの飛翔軌跡を妨げないような構成となっている。
【0077】
図14においては、インクジェット記録装置420の印字ヘッド202で印字対象物15Bの表面に印字している状態の印字ヘッド202を示している。固定された印字ヘッド202と対向する位置で印字対象物15Aが矢印Bの方向に搬送されることによって、印字対象物15Bの上側に文字や記号などが印字される。インク捕集部材71は、捕集部材上部271Pが印字ヘッド202のカバー上面61Fより印字ヘッド2の外側に突き出しており、また更に捕集部材下部271Qが印字ヘッド202のカバー下面61Gより印字ヘッド202の外側に突き出している構成としている。インク捕集部材271に付着するインク汚れ232は、ベルトコンベア14の搬送スピードが速いほど搬送方向(矢印A)にインク汚れ232が伸びていきやすいので、インク捕集部材271が長いほど、インク微粒子231をインク捕集部材271に付着させやすくなる。
【0078】
ここで、実施例3においては、印字対象物15Bとインク捕集部材271との距離を近づけることが可能となる。このため、インク微粒子31を実施例1の構成より多くインク捕集部材271に付着させることが可能となる。また、インク微粒子31が、捕集部材スリット穴271Aを通り抜けてベース空間262Fに到達した場合には、インク微粒子31Bは、矢印Mで示したような印字対象物15Bの搬送方向に向けて発生する気流に乗って、印字ヘッド2の外部に流れていく。そのため、実施例3では、印字ヘッド202の内部に流入するインク微粒子31Aを低減することが可能となる。
【0079】
<実施例3の効果>
実施例3によれば、インクジェット記録装置410は、浮遊するインク微粒子31をインク捕集部材271に付着させることにより、印字ヘッド202の内部のインク汚れを実施例1よりも低減することができる。
【実施例4】
【0080】
最後に、実施例4について図面を用いて説明する。なお、実施例1~3と共通する部分についての説明は省略し、主に実施例1~実施例3と異なる部分について説明を行う。
【0081】
<実施例4の印字ヘッド構成>
実施例4に係るインクジェット記録装置430の印字ヘッド302の使用形態について
図16、
図17を用いて説明する。ここで、
図16は実施例4の印字ヘッド302の構造と印字ヘッド302に取り付けられたインク捕集部材71の交換方法を示す。
図17は
図16の捕集部材固定部(左)364と捕集部材固定部(右)365を拡大した部分拡大図である。
【0082】
ヘッドカバー361の形状について、主に
図16を用いて説明する。ヘッドカバー361は、印字に使用するインク粒子7Cが通過するためのカバースリット穴361Aと、カバースリット穴361Aを形成する面の面積が小さくなるように形成したカバー斜め側面(右)361B及びカバー斜め側面(左)361Dと、カバー斜め側面(右)361Bを介して接続されてカバースリット穴361を形成した面と垂直になるように設置されたカバー側面(右)361Cと、カバー斜め側面(左)361Dを介して接続されてカバー側面(右)361Cと平行になるように設置されたカバー側面(左)361Eとを形成している。そして、ヘッドカバー361は、カバー斜め側面(右)361Bとカバー斜め側面(左)361D、カバー側面(右)361C及びカバー側面(左)361Eを形成している。
【0083】
ヘッドカバー361には、インク捕集部材71を取り付けるために、カバー側面(右)361Cに捕集部材固定部(右)365と、カバー側面(左)361Eに捕集部材固定部(左)364が組み付けられている。このような捕集部材固定部(右)365と捕集部材固定部(左)364は、本実施例においてはステンレス材料の薄板を折り曲げて製作したものを例として用いたが、樹脂材料を用いて成型加工などで製作した部品であってもよい。
【0084】
図16(A)及び
図17(A)においては、インク捕集部材71は、印字ヘッド302に組み付けられて、捕集部材固定部(左)364と捕集部材固定部(右)365によって固定されている。そして、
図16(B)と
図17(B)においては、印字ヘッド302からインク捕集部材71が取り外された状態となっている。
【0085】
捕集部材固定部(右)365と捕集部材固定部(左)364の形状について説明する。捕集部材固定部(右)365は、固定(右)組み付け部365Eを介して位置決めをした上でカバー側面(右)361Cに固定されており、インク捕集部材71を押し当てて固定するための固定(右)勘合部365Dと、捕集部材固定用スリット(右)71Kが当たるようにしてインク捕集部材71が抜けにくくするための固定(右)抜け止め部365Gと、インク捕集部材71を印字ヘッド302に取り付けやすくするために大きなRを取って曲げて形成した固定(右)案内部365Fと、インク捕集部材71の着脱時に押すことで固定(右)勘合部365Dが動くように形成した固定(右)押し部365Cを形成している。
【0086】
捕集部材固定部(左)364は、固定(左)組み付け部364Eを介して位置決めをした上でカバー側面(左)361Eに固定されており、インク捕集部材71を押し当てて固定するための固定(左)勘合部364Dと、捕集部材固定用スリット(左)71Lが当たるようにしてインク捕集部材71が抜けにくくするための固定(左)抜け止め部364Gと、インク捕集部材71を印字ヘッド302に取り付けやすくするために大きなRを取って曲げて形成した固定(左)案内部364Fと、インク捕集部材71の着脱時に押すことで固定(左)勘合部364Dが動くように形成した固定(左)押し部364Cを形成している。
【0087】
ヘッドカバー361は、カバー側面(右)361Cにカバー固定用凹み部(右)361Jと、カバー側面(左)361Eにカバー固定用凹み部(左)361Kを形成している。印字ヘッド302は、インク捕集部材71を固定した状態において、カバー固定用凹み部(右)361Jには固定(右)勘合部365Dの一部が入り込むようになり、カバー固定用凹み部(左)361Kには固定(左)勘合部364Dの一部が入り込むようになっている。これにより、印字ヘッド302は、例えば
図16(A)の状態で、インク捕集部材71を矢印Gの方向に引き抜く力が加わった場合でも、
図17(A)に示したように、捕集部材固定用スリット(右)71Kの端部と固定(右)抜け止め部365Gが接触することと、捕集部材固定用スリット(左)71Lの端部と固定(左)抜け止め部364Gが接触することにより、印字ヘッド302からインク捕集部材71が外れることを防止することができる。
【0088】
図16(B)及び
図17(B)において、インク捕集部材71が、印字ヘッド302から矢印Gの方向に取り外されている状態を示す。捕集部材固定部(右)365は、作業者の指などが固定(右)押し部365Cを矢印Cの方向に押し付けることによって、固定(右)勘合部365Dと固定(右)案内部365Fが矢印Fの方向に変位するようになっている。また、捕集部材固定部(左)364は、作業者の指などが固定(左)押し部364Cを矢印Eの方向に押し付けることによって、固定(左)勘合部364Dと固定(左)案内部364Fが矢印Fの方向に変位するようになっている。
【0089】
これにより、インク捕集部材71は、固定(右)勘合部365Dと固定(左)勘合部364Dから離れるため、印字ヘッド2から取り外すことが可能となる。また、インク捕集部材71は、先ほど説明した印字ヘッド302からの取り外し手順と逆の手順で矢印Hの方向に動かすことで、印字ヘッド302に取り付けることが可能となる。
【0090】
<実施例4の効果>
実施例4によれば、インクジェット記録装置430は、実施例1~実施例3と比較して、印字ヘッド302にインク捕集部材71を固定している状態において、インク捕集部材71が印字ヘッド302から外れにくくすることが出来る。
【0091】
なお、本発明は上記した実施例1~実施例4に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例1~実施例4は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
1…インクジェット記録装置本体、2…印字ヘッド、7A…インク、7C…インク粒子、7D…着弾インク粒子、10…帯電電極、12A…電極表面、12B…電極裏面、14…ベルトコンベア、15A…印字対象物(印字前)、15B…印字対象物(印字中)、15C…印字対象物(印字後)、28…高圧電源、31…インク微粒子、32…インク汚れ、41…ヘッドベース、61…ヘッドカバー、62…捕集部材ベース、63…捕集部材ベース固定ネジ、64…捕集部材固定部、65…捕集部材固定部、71…インク捕集部材、81…保護カバー、82…ヘッドカバー固定ネジ、91…インク微粒子吸引電極部、102…印字ヘッド、132…インク汚れ、161…ヘッドカバー、191…インク微粒子吸引電極部、202…印字ヘッド、232…インク汚れ、262…捕集部材ベース、271…捕集部材、302…印字ヘッド、361…ヘッドカバー、364…捕集部材固定部、365…捕集部材固定部、400…インクジェット記録装置、410…インクジェット記録装置、420…インクジェット記録装置、430…インクジェット記録装置