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特許7128672ガスタービンの燃焼室、ガスタービン、及び、ガスタービンの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃焼室、ガスタービン、及び、ガスタービンの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/36 20060101AFI20220824BHJP
   F23R 3/14 20060101ALI20220824BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20220824BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F23R3/36
F23R3/14
F23R3/28 D
F23R3/30
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018121769
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2019007726
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】10 2017 114 362.9
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・コシク
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ライス
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・テア-ケンプ
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009414(JP,A)
【文献】特開2002-257343(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015205069(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/36
F23R 3/14
F23R 3/28
F23R 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼空気の存在下で燃料を燃焼させるためのガスタービンの燃焼室(1)であって、前記燃焼室(1)は二元燃料燃焼室として構成されており、前記燃焼室には、気体燃料動作モードにおいて、気体燃料と燃焼空気とから成る混合物が、旋回体(3)を通じて供給可能であり、前記燃焼室には、液体燃料動作モードにおいて、噴霧装置(4)を通じて液体燃料が、及び、前記旋回体(3)を通じて燃焼空気が供給可能である燃焼室(1)において、
前記噴霧装置(4)は、少なくとも1つの噴霧ノズル(15、16)を有する、前記燃焼室(1)の長手方向中心軸(20)を基準として、又は、前記燃焼室(1)の予燃焼室(9)の長手方向中心軸(20)を基準として中央の噴霧ランス(17)を有しており、
前記噴霧装置(4)は、前記燃焼室(1)の前記長手方向中心軸(20)を基準として、又は、前記燃焼室(1)の前記予燃焼室(9)の前記長手方向中心軸(20)を基準として分散した、複数の噴霧ノズル(18)を有しており、
中央の前記噴霧ランス(17)が、径方向間隙(6)を形成しながら、径方向外側において、隣接する部材(5)によって少なくとも部分的に囲まれており、前記燃焼室(1)には、前記径方向間隙(6)を通じて、燃焼空気が、前記旋回体(3)を迂回して供給され得、
前記隣接する部材(5)の軸方向端部が、中央の前記噴霧ランス(17)の軸方向端部よりも前記燃焼室(1)に近く位置していることを特徴とする燃焼室(1)。
【請求項2】
分散した前記噴霧ノズル(18)が、前記燃焼室の前記長手方向中心軸(20)の周り、又は、前記燃焼室の前記予燃焼室の前記長手方向中心軸(20)の周りに延在する円軌道(19)上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃焼室。
【請求項3】
分散した前記噴霧ノズル(18)が配置されている前記円軌道(19)の中心点が、前記燃焼室(1)又は前記燃焼室(1)の前記予燃焼室(9)の前記長手方向中心軸(20)上に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の燃焼室。
【請求項4】
分散した前記噴霧ノズル(18)が配置されている前記円軌道(19)の半径が、前記旋回体(3)の内側半径の0.4倍から1.1倍の間であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の燃焼室。
【請求項5】
中央の前記噴霧ランス(17)が、少なくとも2つの噴霧ノズル(15、16)を有しており、前記少なくとも2つの噴霧ノズルは、単独かつ共に、60°の最大噴射角度(α)を有する噴霧円錐(8a)をそれぞれ供給しており、
分散した前記噴霧ノズル(18)のそれぞれは、40°の最大噴射角度(β)を有する噴霧円錐(8b)をそれぞれ供給していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃焼室。
【請求項6】
前記燃焼室(1)に、前記旋回体(3)を迂回して、前記噴霧装置(4)の前記噴霧ランス(17)と隣接する前記部材(5)との間の前記径方向間隙(6)を通じて供給可能である燃焼空気流が、前記旋回体(3)を通じて前記燃焼室に供給可能である燃焼空気流の1%から10%の間であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃焼室。
【請求項7】
前記燃焼室には、前記気体燃料動作モードにおいても、前記液体燃料動作モードにおいても、燃焼空気が、前記噴霧装置(4)の前記噴霧ランス(17)と隣接する前記部材(5)との間の前記径方向間隙(6)を通じて供給され得ることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼室。
【請求項8】
燃焼空気の存在下で燃料を燃焼させるための、請求項1からのいずれか一項に記載の燃焼室(1)と、
燃焼の際に生じる排ガスを膨張させるためのタービンと、
を有するガスタービン。
【請求項9】
請求項に記載のガスタービンを運転するための方法において、
燃焼室(1)には、気体燃料動作モードにおいて、気体燃料と燃焼空気とから成る混合物が、旋回体(3)を通じて供給され、
前記燃焼室(1)には、液体燃料動作モードにおいて、噴霧装置(4)を通じて液体燃料が供給され、少なくとも前記旋回体(3)を通じて燃焼空気が供給されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記液体燃料動作モードでは、中央の噴霧ランス(17)も、分散した噴霧ノズル(18)も、無負荷と全負荷との間の運転領域全体において、前記燃焼室(1)に液体燃料を供給するために用いられることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
中央の前記噴霧ランス(17)を通じて、無負荷と全負荷との間の運転領域全体において、前記燃焼室(1)に、一定量の液体燃料が供給され、出力の調節は、前記燃焼室(1)に、分散した前記噴霧ノズル(18)を通じて供給される液体燃料の量の変更によって行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体燃料動作モードでは、所定の負荷限界を下回る運転領域において、中央の前記噴霧ランス(17)も、分散した前記噴霧ノズル(18)も、前記燃焼室(1)に液体燃料を供給するために用いられるが、前記所定の負荷限界を上回る運転領域においては、前記燃焼室(1)に液体燃料を供給するために、専ら分散した前記噴霧ノズル(18)が用いられることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の負荷限界を下回る運転領域において、中央の前記噴霧ランス(17)を通じて、一定量の液体燃料が供給され、出力の調節は、前記燃焼室(1)に、分散した前記噴霧ノズル(18)を通じて供給される液体燃料の量の変更によって行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載のガスタービンの燃焼室に関する。さらに本発明は、当該燃焼室を有するガスタービンと、当該ガスタービンを運転するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、燃焼室と、燃焼室の下流に配置されたタービンと、を有している。ガスタービンの燃焼室内では、燃料が燃焼され、その際に高温の排ガスが生成される。高温の排ガスは、ガスタービンのタービン内で膨張し、その際に、駆動力を供給するために、例えば電流を発生させるべく発電機を駆動するために用いることができるエネルギーが得られる。実践からはすでに、二元燃料ガスタービンとして構成されたガスタービンが知られており、このような二元燃料ガスタービンは、二元燃料燃焼室を含んでおり、二元燃料燃焼室内では、気体燃料動作モードにおいて気体燃料が燃焼し、液体燃料動作モードにおいて液体燃料が燃焼する。気体燃料動作モードでは、気体燃料と燃焼空気とから成る混合物が、旋回体を通じて、燃焼室に供給され得る。液体燃料動作モードでは、ガスタービンの燃焼室に、液体燃料が噴霧装置を通じて、燃焼空気が旋回体を通じて、供給され得る。
【0003】
特に液体燃料動作モードにおいて、液体燃料を効果的に、すなわち窒素酸化物エミッション等の望ましくない排ガスエミッションを減少させて燃焼できるようになるまで、二元燃料燃焼室として構成されたガスタービンの燃焼室を、さらに改良する必要性が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この必要性から出発して、本発明の課題は、ガスタービンの新式の燃焼室と、当該燃焼室のガスタービンと、当該ガスタービンを運転するための方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、請求項1に記載のガスタービンの燃焼室によって解決される。本発明によると、噴霧装置は、少なくとも1つの噴霧ノズルを備えた、燃焼室の長手方向中心軸を基準として、又は、燃焼室の予燃焼室の長手方向中心軸を基準として中央の噴霧ランスを有している。噴霧装置はさらに、燃焼室の長手方向中心軸を基準として、又は、燃焼室の予燃焼室の長手方向中心軸を基準として分散した、複数の噴霧ノズルを有している。
【0006】
少なくとも1つの噴霧ノズルを含む中央の噴霧ランスを通じて、及び、複数の分散した噴霧ノズルを通じて、液体燃料動作モードでは、液体燃料が燃焼室に最適に導入可能であり、それによって、液体燃料の効果的な燃焼が保証される。中央の噴霧ランスを通じて、液体燃料は、燃焼室又は燃焼室の予燃焼室内部の中央再循環ゾーンに直接導入可能であり、それによって、安定した燃焼が実現し得る。その際、中央の噴霧ランスを通じた燃料の導入は、燃焼空気に対して均一には行われず、ここでは、液体燃料と燃焼空気との予混合は行われない。分散した噴霧ノズルを通じて、液体燃料は、燃焼空気内で均一に分散し得る。さらに、分散した噴霧ノズルを通じて、液体燃料と燃焼空気との部分的な予混合が得られる。分散した噴霧ノズルによって、中央の噴霧ランスと比較して、排ガスエミッション、特に窒素酸化物エミッションを削減することができる。
【0007】
本発明のさらなる発展形態によると、分散した噴霧ノズルは、燃焼室の長手方向中心軸又は燃焼室の予燃焼室の長手方向中心軸の周りに延在する円軌道上に配置されている。好ましくは、分散した噴霧ノズルが配置された円軌道の中心点は、燃焼室の長手方向中心軸又は燃焼室の予燃焼室の長手方向中心軸上に位置している。好ましくは、分散した噴霧ノズルが配置されている円軌道の半径は、旋回体の内側半径の0.4倍から1.1倍の間である。このような分散した噴霧ノズルを通じて、液体燃料が、燃焼空気と均一に分散されて、かつ、液体燃料と燃焼空気との予混合に関して最適に、燃焼室に導入可能であり、その結果、窒素酸化物エミッション等の排ガスエミッションが、可能な限り多く削減される。
【0008】
本発明のさらなる発展形態によると、中央の噴霧ランスは、少なくとも2つ、好ましくは2つの噴霧ノズルを有しており、これらの噴霧ノズルは、単独で、かつ、共にそれぞれ、60°の最大噴射角度、好ましくは55°の最大噴射角度を有する噴霧円錐を供給する。分散した噴霧ノズルのそれぞれは、40°の最大噴射角度、好ましくは30°の最大噴射角度を有する噴霧円錐をそれぞれ供給する。それによって、燃焼室及び燃焼室の予燃焼室の壁が液体燃料で湿されることが回避され得る。特にこれは、排ガスエミッションを減少させながら、液体燃料を効果的に燃焼させるために役立つ。
【0009】
本発明のさらなる発展形態によると、中央の噴霧ランスは、径方向間隙を形成しながら、隣接する部材によって径方向外側において、少なくとも部分的に囲まれており、燃焼室には、径方向間隙を通じて、旋回体を迂回しながら、燃焼空気を供給することができる。これによっても、中央の噴霧ランスを、燃焼室又は燃焼室の予燃焼室に液体燃料を導入するために用いる場合に、液体燃料動作モードにおける液体燃料の効果的な燃焼が、特に窒素酸化物エミッションを減少させながら保証され得る。
【0010】
本発明に係るガスタービンは、請求項9に規定されており、本発明に係るガスタービンの運転方法は、請求項10に規定されている。
【0011】
本発明に係る方法の第1の変型例によると、液体燃料動作モードにおいて、中央の噴霧ランスだけではなく、分散した噴霧ノズルも、無負荷と全負荷との間の運転領域全体において、燃焼室に液体燃料を供給するために使用される。本発明のこの運転に関する変型例は、運転されるべきガスタービンが迅速な負荷切り替えを実施すべき場合に適している。なぜなら、各噴射ノズルを作動又は停止させる必要がないからである。従って、このようにして各噴霧ノズルを停止させる場合に必要である浄化手順を回避することが可能である。その燃焼室が中央の噴霧ランスのみを有しているガスタービンと比較して、排ガスエミッションを減少させることが可能である。
【0012】
本発明に係る方法の第2の変型例によると、液体燃料動作モードでは、所定の負荷限界を下回る運転領域において、中央の噴霧ランスだけではなく、分散した噴霧ノズルも、燃焼室に液体燃料を供給するために用いられるが、所定の負荷限界を上回る運転領域においては、燃焼室に液体燃料を供給するために、専ら分散した噴霧ノズルが用いられる。本発明のこの運転に関する変型例は、排ガスエミッション、特に窒素酸化物エミッションをさらに減少させるために役立つ。大きい方の負荷領域では、液体燃料の導入に、中央の噴霧ランスはもはや用いられず、むしろ、大きい方の負荷領域では、液体燃料の導入は、専ら分散した噴霧ノズルを用いて行われる。それによって、窒素酸化物エミッション等の排ガスエミッションを、高負荷の運転領域においてさらに減少させることができる。
【0013】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項及び以下の説明から明らかになる。本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明するが、これに限定されるものではない。示されているのは、以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るガスタービンの、本発明に係る燃焼室の一部を極めて概略的に示した図である。
図2図1のIIの部分を詳細に示した図である。
図3】IIIの方向において見た、図1の詳細を示した図である。
図4】本発明に係るガスタービンを運転するための本発明に係る第1の方法を明らかにするためのグラフの図である。
図5】本発明に係るガスタービンを運転するための本発明に係る第2の方法を明らかにするためのグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ガスタービンの燃焼室、当該燃焼室を有するガスタービン、及び、当該ガスタービンを運転するための方法に関する。
【0016】
図1は、燃焼室1の領域におけるガスタービンの一部を、概略的に示した図である。燃焼室1は、壁2によって画定されており、燃焼室1内では燃料が燃焼される。燃焼室1内での燃料の燃焼の際に生じる排ガスは、ガスタービンの図示されていないタービンに供給可能であり、その結果、排ガスはタービン内で膨張し、その際にエネルギーが得られる。
【0017】
燃焼室1は、二元燃料燃焼室として構成されており、一方では気体燃料動作モードにおいて、他方では液体燃料動作モードにおいて、運転され得る。
【0018】
燃焼室1の気体燃料動作モードにおいて、燃焼室1では、気体燃料が燃焼され、気体燃料と燃焼空気とから成る混合物は、燃焼室1に、図1では燃焼室1の予燃焼室9に、旋回体3を通って供給される。
【0019】
旋回体3は、好ましくは径方向旋回体として構成されており、燃焼室1の予燃焼室9に流入する燃焼空気と気体燃料とから成る混合物の所定の渦を発生させる。気体燃料と燃焼空気とから成る混合物は、気体燃料動作モードにおいて、図示されていない電気点火装置を用いて点火される。
【0020】
燃焼室1の液体燃料動作モードにおいて、燃焼室1では、液体燃料が燃焼され、液体燃料は、燃焼室1に、図1では燃焼室1の予燃焼室9に、噴霧装置4を用いて供給される。
【0021】
噴霧装置4は、中央の噴霧ランス17を有しており、中央の噴霧ランス17は、およそ、例えば燃焼室1の予燃焼室9の中央、又は、燃焼室1の予燃焼室9の長手方向中心軸20上、又は、燃焼室1の長手方向中心軸20上に配置されており、液体燃料を、長手方向中心軸20の方向において、噴霧円錐又は噴射円錐8aを形成しながら、燃焼室1の予燃焼室9内に噴射する。
【0022】
この、燃焼室1又は予燃焼室9の長手方向中心軸20を基準として中央の噴霧ランス17に加えて、噴霧装置4は、燃焼室1又は予燃焼室9の長手方向中心軸20を基準として分散した複数の噴霧ノズル18を有しており、噴霧ノズル18は、液体燃料を同様に、それぞれ噴射円錐8bを形成しながら、燃焼室1の予燃焼室9内に噴射することが可能である。
【0023】
従って、噴霧装置4は、中央の噴霧ランス17と、複数の分散した噴霧ノズル18と、を有している。中央の噴霧ランス17は、少なくとも1つの噴霧ノズルを、好ましくは複数の噴霧ノズル15、16を有している(図2を参照)。
【0024】
図2は、噴霧装置4の中央の噴霧ランス17の詳細を示している。燃焼室1の取り付け壁12に受容されている噴霧ランス17と、同様に取り付け壁12に受容された隣接する部材5であって、噴霧装置4の噴霧ランス17に径方向外側において接続され、噴霧装置4の噴霧ランス17を径方向外側において少なくとも部分的に包囲する、隣接する部材5との間には、径方向間隙6が形成されており、径方向間隙6を通って、燃焼空気が同様に、燃焼室1、すなわち予燃焼室9に、旋回体3を迂回して供給され得る。例えば、矢印13(図1を参照)は、旋回体3を通る燃焼空気の流れを示しており、矢印14(図2を参照)は、噴霧ランス17と部材5との間の径方向間隙6を通る燃焼空気の流れを示しており、燃焼空気流は、この径方向間隙6を通り、旋回体25を通過して供給される。
【0025】
噴霧装置4の噴霧ランス17と共に径方向間隙6を画定する特別な部材5は、好ましくは別個のスリーブとして構成されており、当該スリーブは、噴霧ランス17と接続されている。これとは異なり、取り付け壁12自体が、噴霧ランス17と共に径方向間隙6を画定する、噴霧ランス17に径方向外側において隣接する部材5を規定することも可能である。
【0026】
燃焼室1又は予燃焼室9の長手方向中心軸20を基準として分散した噴霧装置4の噴霧ノズル18は、好ましくは円軌道19(図3を参照)上に配置されており、円軌道19は、燃焼室1の長手方向中心軸20の周り、又は、燃焼室1の予燃焼室9の長手方向中心軸20の周りに延在している。
【0027】
その際、分散した噴霧ノズル18が配置されたこの円軌道19の中心点は、長手方向中心軸20上に位置している。分散した噴霧ノズル18は、中央の噴霧ランス17を、好ましくは同心に取り囲んでいる。
【0028】
図3は、分散した噴霧ノズル18が配置された円軌道19の半径d18を示している。その際特に、分散した噴霧ノズル18が位置している円軌道19の半径d18が、旋回体3の内側半径dの0.4倍から1.1倍の間であることが規定されている。従って、分散した噴霧ノズル18が位置している円軌道19の半径d18が、旋回体3の内側半径dの1.0倍から1.1倍の間である場合、分散した噴霧ノズル18は、少なくとも部分的に、旋回体3を、その流出領域において覆っている。
【0029】
分散した噴霧ノズル18を、複数の好ましくは同心の円軌道上に、又は、楕円軌道上に、又は、多角形上に配置しても良い。
【0030】
上述したように、噴霧装置4の中央の噴霧ランス17は、好ましくは複数の噴霧ノズルを含んでおり、図2の実施例では2つの噴霧ノズル15、16を含んでおり、これらの噴霧ノズルは、好ましくは旋回噴霧ノズルである。中央の噴霧ランス17の2つの噴霧ノズル15、16には、液体燃料動作モードにおいて、液体燃料が、共通の液体燃料供給21から供給され得る。液体燃料供給21によって誘導される燃料は、2つの液体燃料部分供給21a、21bに分割可能であり、それによって、中央の噴霧ランス17の両方の噴霧ノズル15、16に液体燃料が供給される。
【0031】
中央の噴霧ランス17は、その両方の噴霧ノズル15、16を用いて、液体燃料を燃焼室1に向かって、最大60°、好ましくは最大55°の噴射角度αで噴射する。噴霧ランス17の両方の噴霧ノズル15、16が共に動作する場合も、これら噴霧ノズル15、16の内の一方が単独で動作する場合も、噴射角度αはそれぞれ、最大60°、好ましくは最大55°である。それによって、予燃焼室9の壁2aも、燃焼室1の壁2も、液体燃料によって湿されないことが確実化され、それによって、液体燃料のより効果的な燃焼が提供され得る。
【0032】
上述したように、間隙6を通って、燃焼空気が、燃焼室1、特に予燃焼室9に供給され得る。径方向間隙6を通る空気流14は、一方では、噴霧装置4の中央の噴霧ランス17を冷却するために用いられ、他方では、空気流14は、少なくとも部分的に外側で、噴霧ランス17の液体燃料の噴射円錐8aを囲んでおり、噴射円錐8aを包んでいる。
【0033】
燃焼室1、図1では予燃焼室9に、旋回体3を迂回して、径方向間隙6を通じて供給可能である特別な燃焼空気14は、旋回体3を通じて燃焼室に供給可能である燃焼空気の特に1%から10%の間である。
【0034】
その際、燃焼空気流14は、液体燃料動作モードにおいて燃焼室1に、径方向間隙6を通じて供給されるだけではなく、気体燃料動作モードにおいても燃焼室1に、径方向間隙6を通じて供給可能であり、気体燃料動作モードでは、噴霧装置4、すなわち特にその噴霧ランス17は、作動していないので、気体燃料動作モードでは、噴霧装置4によって燃料が導入されることはなく、旋回体3を通じてのみ導入される。
【0035】
上述したように、噴霧ランス17は、長手方向中心軸20を基準として中央に配置されており、噴霧ランス17を通じて、液体燃料動作モードにおいて、液体燃料が、中央の再循環ゾーンに導入され得る。それによって、非常に安定した燃焼が保証され得る。長手方向中心軸20を基準として中央の噴霧ランス17を通じた液体燃料の導入は、局所的に行われ、すなわち燃焼空気に対して均一には行われないので、液体燃料と燃焼空気との予混合は行われない。
【0036】
上述したように、燃焼室1は、中央の噴霧ランス17に加えて、複数の分散した噴霧ノズル18を含んでおり、これらの噴霧ノズルは、好ましくは円軌道19上に配置されている。これらの分散した噴霧ノズル18には、別個の液体燃料供給22(図1を参照)を通じて、液体燃料が供給可能であり、分散した噴霧ノズル18は、中央の噴霧ランス17のように、概ね同じ方向において、液体燃料を予燃焼室9又は燃焼室1に導入するが、その際の噴射角度βは、噴射角度αよりも小さく、分散した噴霧ノズル18の噴射角度βは、好ましくは最大で40°、好ましくは最大で30°である。
【0037】
円軌道19にわたって好ましくは均等に分散した噴霧ノズル18を用いて、燃料は、燃焼空気と均一な分散を形成しながら、燃焼室1、特に予燃焼室9に導入され、同時に、燃焼空気と液体燃料との部分的な予混合が、特に分散した噴霧ノズル18が旋回体3の出口に隣接して配置されていることによって支援されて、提供される。この部分的な予混合は、半径d18が半径dよりも大きい場合に改善され得る。従って、半径d18は、半径dの1.0倍から1.1倍の間であり得る。
【0038】
分散した噴霧ノズル18として、好ましくはダブルジェットノズル又はいわゆる平面ジェットが用いられる。分散した噴霧ノズル18によって、燃焼空気に対する液体燃料の均一な供給が実現し、さらに、液体燃料と燃焼空気との部分的な予混合が実現する。
【0039】
特に、燃焼室1が、気体燃料動作モードで動作すべき場合、燃焼室1には、ガスと燃焼空気との混合物が、旋回体3を通じて供給される。
【0040】
同様に、気体燃料動作モードにおいても、燃焼空気は環状間隙6を通じて供給され得る。環状間隙6を通るように誘導される燃焼空気流14は、空隙、いわゆるプレナム10の領域において、旋回体3の上流で分岐する。
【0041】
図1は、空気導管11を示しており、空気導管11を通って、プレナム10から燃焼空気が分岐可能であり、プレナム10から空気導管11を通って分岐した燃焼空気14は、壁12によって構成された空気室7に供給された後、空気室7から、噴霧装置4の噴霧ランス17と隣接する部材5との間に形成された環状間隙6を通って、燃焼室1の予燃焼室9に導入され得る。
【0042】
特に、燃焼室1が、液体燃料動作モードにおいて、作動した噴霧装置4と共に運転される場合、燃焼室1又は予燃焼室9には、液体燃料が、噴霧装置4を通じて供給され、燃焼空気は、旋回体3を通じて、及び、好ましくは中央の噴霧ランス17と部材5との間の環状間隙6を通じて供給される。
【0043】
第1の有利な動作状態では、液体燃料動作モードにおいて、噴霧装置4の中央の噴霧ランス17だけではなく、分散した噴霧ノズル18も、無負荷と全負荷との間の運転領域全体において、燃焼室1に液体燃料を供給するために使用されることが規定されている。
【0044】
この第1の動作状態については、図4において、ガスタービンの負荷Lに関して、複数の曲線21、22、23及び24が示されており、その際、曲線21は、中央の噴霧ランス17を通じた液体燃料供給21に対応しており、曲線22は、分散した噴霧ノズル18を通じた液体燃料供給22に対応しており、曲線23は、負荷全体Lに占める、中央の噴霧ランス17を通じて導入される液体燃料の燃焼によって供給され得る負荷の割合を示しており、曲線24は、負荷全体Lに占める、分散した噴霧ノズル18を通じて燃焼室に導入される燃料の燃焼によって供給され得る負荷の割合を示している。
【0045】
図4は、特に0%(無負荷)と100%(全負荷)との間の全ての負荷領域を通じて、中央の噴霧ランス17と分散した噴霧ノズル18との双方を介して燃料が燃焼室1に供給される場合、0%(無負荷)と100%(全負荷)との間の全ての運転領域において、中央の噴霧ランス17を通じて(曲線21を参照)、好ましくは一定量の液体燃料が、燃焼室1に供給されることを示している。出力の調節は、分散した噴霧ノズル18を通じて(曲線22を参照)燃焼室1に導入される液体燃料の変更によって行われるので、負荷需要Lの増大と共に、中央の噴霧ランス17の負荷割合23は、分散した噴霧ノズル18の負荷割合に対して減少するか、又は、分散した噴霧ノズル18の対応する負荷割合24は増大する。
【0046】
負荷領域全体において、又は、無負荷と全負荷との間の運転領域において、中央の噴霧ランス17だけではなく、分散した噴霧ノズル18も、燃焼室に液体燃料を供給するために用いられる、この動作コンセプトでは、特に、燃焼室1内での燃焼のガスタービンの加速の際に、噴霧ランス17の両方の噴霧ノズル15、16の内の専ら1つを通じて、燃料が燃焼室1に導入されるということ、並びに、加速の後、及び、ガスタービンの所定の回転速度に達した後に、噴霧ランス17の両方の噴霧ノズル15、16が、噴霧ランス17を通じて燃料を燃焼室1に導入するために用いられることが規定されている。
【0047】
上述したように、図4の動作コンセプトによると、運転領域全体にわたって、かつ、ガスタービンの負荷領域にわたって、中央の噴霧ランス17を通じて供給される燃料の量は一定であり、出力の調節は専ら、分散した噴霧ノズル18を通じて供給される燃料の量の変更によって行われる。この動作コンセプトは、特にガスタービンにおける迅速な負荷切り替えに適している。なぜなら、点火プロセスを除いて、噴霧ノズルを作動させる、又は、停止させる必要がないからである。また、噴霧ノズルを停止させた後に、噴霧ノズルを浄化する必要もない。この動作コンセプトは、液体燃料の非常に確実で安定した燃焼に役立つ。それに加えて、燃料エミッションを少なくすることができる。特に、窒素酸化物エミッションを、15%の酸素に対して150vppmよりも少なくすることが可能である。
【0048】
図5は、本発明に係る燃焼室、又は、本発明に係る燃焼室を含む本発明に係るガスタービンの第2の動作コンセプトを明らかにしている。図5が示すところによると、無負荷(0%)と全負荷(100%)との間の負荷領域Lは、2つの負荷領域に区分される。すなわち、無負荷(0%)と限界値GWとの間の負荷領域、及び、限界値GWと全負荷(100%)との間の負荷領域である。
【0049】
図5の本発明に係る第2の動作コンセプトによると、液体燃料動作モードでは、所定の負荷限界GWを下回る運転領域又は負荷領域において、燃焼室1に液体燃料を供給するために、中央の噴霧ランス17だけではなく、分散した噴霧ノズル18も用いられる。その際、好ましくは、当該負荷領域において、中央の噴霧ランス17を通じて導入される燃料の量(曲線21を参照)は一定であり、出力の調節はやはり、専ら、分散した噴霧ノズル18によって導入される液体燃料の量の変更によって行われる(曲線22を参照)。
【0050】
所定の限界値GWを上回る負荷領域においては、中央の噴霧ランス17は停止するので、もはや燃料が噴霧ランス17を通じて供給されることはなく、負荷限界GWと全負荷(100%)との間の大きい方の負荷領域においては、液体燃料は、専ら分散した噴霧ノズル18を通じて燃焼室1に供給される。
【0051】
この本発明に係る第2の動作コンセプトの利点は、負荷が所定の負荷限界GWを上回る場合に、液体燃料が、中央で、燃焼室1の再循環ゾーンに導入されるのではなく、専ら分散して導入されるので、導入される全ての液体燃料に関して、燃焼空気への均一な導入、及び、燃焼空気との部分的な予混合が保証され、それによって、排ガスエミッション、特に窒素酸化物エミッションを、図4の動作コンセプトに対して、さらに減少させることができることにある。特に、15%の酸素に対して、90vppmより少ない窒素酸化物エミッションが実現可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 燃焼室
2 壁
2a 壁
3 旋回体
4 噴霧装置
5 部材
6 径方向間隙
7 空隙
8a 噴霧円錐
8b 噴霧円錐
9 予燃焼室
10 空隙/プレナム
11 空気導管
12 壁
13 燃焼空気流
14 燃焼空気流
15 噴霧ノズル
16 噴霧ノズル
17 噴霧ランス
18 噴霧ノズル
19 円軌道
20 長手方向中心軸
21 液体燃料供給
21a 液体燃料部分供給
21b 液体燃料部分供給
22 液体燃料供給
23 負荷割合
24 負荷割合
25 弁
図1
図2
図3
図4
図5