(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】超高電荷密度エレクトレット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20220824BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01L27/04 U
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018127301
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ティン
(72)【発明者】
【氏名】ニール・クルーガー
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111689(WO,A1)
【文献】特開2014-107890(JP,A)
【文献】特開2008-141171(JP,A)
【文献】特開2006-319846(JP,A)
【文献】特開2013-165043(JP,A)
【文献】A. Madanayake et al.,Energy-Efficient ULF/VLF Transmitters Based on Mechanically-Rotating Dipoles,2017 Moratuwa Engineering Research Conference (MERCon),IEEE,2017年,230-235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキストメッセージプロセッサと、
前記テキストメッセージプロセッサの出力に結合されたブロードキャストプロセッサと、
前記ブロードキャストプロセッサの出力に結合された信号プロセッサと、
前記信号プロセッサの出力に結合された変調器と、
前記変調器の出力に結合された電力増幅器と、
前記電力増幅器の出力に結合されたアンテナと、
を備えるシステムであって、
前記変調器は、複数の超高電荷密度エレクトレットを含み、
前記超高電荷密度エレクトレットは、
複数の三次元構造と、
前記複数の三次元構造の1つ1つにおける複数の側壁と、
前記複数の側壁上に形成された多孔質二酸化ケイ素膜と、
を備え、前記多孔質二酸化ケイ素膜は、複数の正又は負イオンによって電荷を付与されている、システム。
【請求項2】
前記複数の三次元構造の1つ1つは、ピラミッド形のシリコン構造である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の三次元構造は、シリコンウェハ又はダイの表面に形成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] エレクトレットは、半永久的に埋め込まれた静電荷及び/又は半永久的に分極された双極子を持つ誘電物質である。注目すべきことに、エレクトレット材料は、例えば、静電センシング応用(例えば、エレクトレットマイク、コピー機)、信号伝送応用(例えば、30kHz以下で動作するULF/VLFトランスミッタ)、及び環境発電応用(例えば、環境の振動、風、熱、又は光などの外部資源からエネルギーを取り出すこと)などの、多くの商用及び技術的応用において利用されている。
【0002】
[0002] エレクトレット材料の性能は、単位体積当りの材料の電荷密度、即ちC/m3に比例する。しかしながら、静電荷は多くの場合、関与しているエレクトレット材料の表面に配置されることしかできないので、これらのエレクトレット材料の電荷密度は、多くの場合、単位面積、即ちC/m2の観点で表現される。注目すべきことに、ある応用において、より高い電荷密度を有する既存のエレクトレット材料が、関与する応用デバイスの性能を最大化するために利用されている。しかしながら、エレクトレットの最大電荷密度は、主としてエレクトレットの誘電物質と周囲の空気との間の絶縁破壊閾値レベルによって制限される。
【0003】
[0003] 従来のエレクトレットの研究開発は、およそ30mC/m2の最大電荷密度を有する二次元あるいは平坦表面の材料に主として制限されてきた。しかしながら、これらの二次元表面の電荷密度は、イオン化された電荷の浅い侵入深さのせいで、比較的低いと考えられる。注目すべきことに、多くの商用及び防衛応用において、30mC/m2よりもずっと高い電荷密度を有するエレクトレット材料を利用した電子デバイス又は電気機械デバイスが要求される。例えば、クリティカルな長距離水中通信のために利用されるVLF信号伝送応用では、>1C/m2と等価の電荷密度を有するエレクトレット材料を利用したVLF送信デバイスが要求される。この点に関し、ULF/VLF伝送は、ある伝導媒体(例えば、水、金属、岩石、建築材料等)を通じた信号の透過が望まれる応用に対して特に有用である。また、ULF/VLF伝送は、長距離通信応用に対して非常に有用である。なぜなら、これらの周波数範囲の信号は、地球を取り囲んでそのような信号をほとんど減衰させることなく地球の周りに伝搬させる、仮想的な電離層―地表間の「導波層」に結合され得るからである。
【0004】
[0004] エレクトレット材料は、通例、2つのグループ:有機エレクトレット材料(例えばポリマー)と無機エレクトレット材料(例えば二酸化ケイ素)に分かれる。ポリマーエレクトレット材料は、通例、低い電荷密度(<5mC/m2)を有する。また、ポリマー材料は、従来の微小電気機械システム(MEMS)の製造プロセスと親和的でなく、したがって、例えばアレイのスケーリングにおいて、設計上の困難な挑戦を呈し得る。
【0005】
[0005] 二酸化ケイ素エレクトレット材料の注目すべき利点は、それらが既存のシリコンMEMSの製造プロセスと親和的であり、典型的にポリマーなどの有機エレクトレット材料よりもずっと高い電荷密度(例えば34mC/m2)を有しているということである。また、ポリマーエレクトレット材料に対する二酸化ケイ素エレクトレット材料の別の利点は、二酸化ケイ素エレクトレット材料は単極性又は双極性電荷のいずれかで埋め込まれることができるということである。
【0006】
[0006] 上述された理由のため、及び本明細書を読んで理解すれば当業者に明らかになるだろう後述される他の理由のため、非常に高い(例えば、超高)電荷密度のエレクトレットに対する必要性が、当該分野に存在する。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本明細書において開示される実施態様は、超高電荷密度エレクトレットを製造するための手法を提示する。本開示の例示的な一実施態様において、表面体積比の大きい三次元シリコン構造を大表面積の多孔質二酸化ケイ素膜と組み合わせ、こうして形成されるエレクトレットの電荷密度を(例えば、従来のエレクトレットに対して)大幅に増加させることによって、複数の超高電荷密度エレクトレットが形成される。具体的に、例示的な一実施態様として、シリコン構造(例えば、シリコンウェハ、ダイ等)が、複数の先細形状の側壁(例えば、ピラミッド形の)を形成するようにエッチングされ、それにより、関与するシリコン構造の表面体積比を大幅に増加させる三次元のテクスチャー加工された表面がもたらされる。先細形状の側壁の複数の表面に多孔質二酸化ケイ素膜が形成され、先細形状の側壁の複数の表面における多孔質二酸化ケイ素膜内に正(又は負)電荷が生成され、それにより、関与するシリコン構造の表面に複数の超高電荷密度エレクトレットがもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[0008] 好適な実施態様の記載及び以下の図に鑑みて考慮されると、本開示の実施態様はより容易に理解されることが可能であり、それの更なる利点と用途はより容易に明らかになり得る。
【0009】
【
図1】[0009]
図1は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができるシリコン構造の側断面を示す構造図である。
【
図2】[0010]
図2は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができる第2のシリコン構造の側断面を示す構造図である。
【
図3】[0011]
図3は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができる第3のシリコン構造の側断面を示す構造図である。
【
図4】[0012]
図4は、
図3に描かれた例示的な実施態様の三次元斜視図を示す構造図である。
【
図5】[0013]
図5は、
図3に描かれた例示的な実施態様の第2の三次元斜視図を示す構造図である。
【
図6】[0014]
図6は、
図3-5に示される三次元シリコン構造を製造するのに利用されることができる例示的なプロセスから生じる構造の複数の二次元側面図を示す構造図である。
【
図7】[0015]
図7は、
図6に示される例示的な製造プロセスを実施するのに利用されることができる例示的な方法を示すフロー図である。
【
図8】[0016]
図8は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができるシステムの簡略化された模式的なブロック図である。
【0010】
[0017] 一般的な慣例に従って、説明される様々な特徴は一定の縮尺で描かれず、本開示に関連する特徴を強調するように描かれる。符号は図及び文章の全体にわたって同様の要素を記述する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0018] 以下の詳細な説明では、その一部をなす添付図面への参照がなされ、添付図面には、実施態様が実現されることのできる具体的な例示の実施態様として示されている。これらの実施態様は、当業者が実施態様を実現することができるように十分に詳しく説明され、また、他の実施態様が利用され得ること、並びに、本開示の範囲を逸脱することなく論理的、機械的、及び電気的な変更がなされ得ることが、理解されなければならない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味に捉えられてはならない。
【0012】
[0019]
図1は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができるシリコン構造100の側断面を示す構造図である。
図1に示されるように、シリコン構造100の表面は、例えば、先細形状の側壁を有する複数の三次元構造(例えば、102a、102b…102n)を含むようにテクスチャー加工されている。例示された実施態様において、三次元構造102a-102nの各々はピラミッド形である。しかしながら、第2実施態様において、三次元構造102a-102nは、ピラミッドとは異なる形状とされることができる。例えば、三次元構造102a-102nの各々は、(例えば、垂直な側壁を有する)柱体、(例えば、垂直な又は先細形状の側壁を有する)トレンチ、又はスパイクの形状に形成されることができる。注目すべきことに、三次元構造102a-102nの技術的な利点は、それらが、シリコン構造100の表面体積比を従来の二次元(例えば、平坦表面)シリコン構造に対して大幅に増大させることである。また、従来の二次元表面に対するシリコン構造100の増大した表面体積比は、従来の二次元表面によってもたらされるよりも(例えば、およそ50倍高い)電荷密度の増加における顕著な性能強化をもたらす。
【0013】
[0020]
図2は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができるシリコン構造200の側断面を示す構造図である。
図2に示されるように、シリコン構造200は、シリコン層202(例えば、シリコンウェハ、ダイ等)と、シリコン層202の表面上に形成された(例えば、エッチングされた)多孔質シリコン204の層(例えば、膜)とを含む。注目すべきことに、多孔質シリコンの特質は、非多孔質シリコンと比べて大きな表面体積比であり、これが、多孔質シリコンの実効的な電荷密度を非多孔質シリコンの同等の構造に対して大幅に増大させる。
【0014】
[0021] 多孔質シリコン構造(例えば、層204)は、適切な電気化学的エッチングプロセスを利用して作製されることができ、そのエッチングパラメータは、細孔のサイズ及び配置、並びに細孔による空隙スペースの割合を支配する。したがって、
図2に示される例示的な実施態様に関し、多孔質シリコン構造204は、多孔質二酸化ケイ素膜204を生成するための適切なシリコン酸化プロセスを利用して酸化されている。報告によれば、およそ300m
2/cm
3の特定の表面積を有する多孔質二酸化ケイ素構造が生産されてきている。したがって、例えば、100μmの多孔質二酸化ケイ素膜を利用して、非多孔質シリコン膜に対して30,000倍(理論上)の表面体積の向上が達成されることができるであろう。しかしながら、
図2に示される正イオン化された電荷206の限界深さによって示されるように、多孔質シリコン膜204内へ電荷を2μm(例えば、点線208によって示されるイオン侵入深さ)以上、膜にダメージを与えることなく注入するのは困難なプロセスである。したがって、現実的な問題として、
図2に示される例示的なシリコン構造204のような二次元の多孔質シリコン構造においては、実際にはおよそ600倍の表面体積の向上が達成されるだけである。
【0015】
[0022]
図3は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができる性能強化された三次元シリコン構造300の側断面を示す構造図である。
図3に示されるように、シリコン構造300の表面は、先細形状の側壁(例えば、ピラミッド形の側壁)を有する複数の三次元シリコン構造302a-302nを含むようにテクスチャー加工されている。シリコン構造302a-302nの複数の側壁の表面には、多孔質二酸化ケイ素の層(例えば、膜)(例えば、304a-304n)が形成されている。注目すべきことに、
図3に示される例示的な実施態様において、性能強化された三次元シリコン構造300は、
図1に示される三次元シリコン構造100の技術的特徴を
図2に示される多孔質二酸化ケイ素膜204の技術的特徴と好都合に組み合わせる。したがって、三次元シリコン構造302が表面体積の増加における30倍の性能強化をもたらすことができ、また多孔質二酸化ケイ素膜304が表面体積の増加における600倍の性能強化をもたらすことができることを(例えば、控えめに)仮定すれば、
図3に示される性能強化されたシリコン構造300を形成したときに、(例えば、
図1及び2に開示される技術的特徴を組み合わせて)全体として表面体積の増加における18,000倍の向上が達成されることができる。この、既存のエレクトレット材料に対するエレクトレット電荷密度の大幅な増大によって、例えば、30kHz以下の信号を伝送する能力を有した小サイズ、小重量、及び低電力(SWaP)ULF/VLFトランスミッタのようなクリティカルな技術の先進的な開発が可能となる。
【0016】
[0023]
図4は、
図3に描かれた例示的な実施態様に示される性能強化された三次元シリコン構造300の一部分の三次元斜視
図400を示す構造図である。
図3に関して上述されたように、例えばピラミッド形の三次元構造402のような各々の三次元シリコン構造は、例示的な三次元構造402の(例えば4つの)表面の1つ1つの上に多孔質二酸化ケイ素の層又は膜404を有している。注目すべきことに、斜視
図400は、
図3に描かれた例示的な実施態様の理解を容易にするために、主としてここに提供されている。
【0017】
[0024]
図5は、
図3に描かれた例示的な実施態様に示される性能強化された三次元シリコン構造300の大部分の三次元斜視
図500を示す構造図である。注目すべきことに、
図5に示される例示図において、複数の三次元シリコン構造が(例えば、「n」行「m」列のアレイの形に(ここで、「n」と「m」は等しい数を表してもよいし、表さなくてもよい))示されている。いずれにしても、アレイにおける各々の三次元シリコン構造502a-502n、mは、図示された例示的な三次元構造の(例えば4つの)表面の1つ1つの上に多孔質二酸化ケイ素の層又は膜504a-504n、mを有している。注目すべきことに、拡大
図500は、
図3に描かれた性能強化された三次元シリコン構造の「テクスチャー加工された」表面を図解するために、主としてここに提供されている。したがって、多孔質二酸化ケイ素の表面膜504a-504n、mを有する(例えば、ピラミッド形の)三次元構造502a-502n、mのアレイによって形成されたエレクトレット材料は、従来のエレクトレット材料に対して、全体として表面体積の増加におけるおよそ18,000倍の向上をおそらく達成することができる。
【0018】
[0025]
図6は、
図3-5に示される性能強化された三次元シリコン構造を製造するのに利用されることができる例示的なプロセス600から生じる構造の複数の二次元側面図を示す構造図である。
図6を参照すると、適切なシリコンウェハ602が提供(例えば、形成又は成長)される。次に、シリコンウェハ上に複数のエッチングマスク(例えば、二酸化ケイ素エッチングマスク603)を形成するために、適切な(例えば、フォトリソグラフィ)パターンニング工程604が利用される。複数の三次元シリコン構造(例えば、
図1における102a-102n)を形成するために、適切なエッチング工程(例えば、深掘り反応性イオンエッチング、即ちDRIEプロセス)606が利用される。一実施態様では、こうして形成された各々の三次元構造(例えば607)の深さ/厚さは、およそ200μmである。しかしながら、別の実施態様では、こうして形成された各々の三次元構造の深さ/厚さは、<1μmから用いられているウェハの厚さまで及ぶことが可能である。次に、マスクを除去し、三次元シリコン構造の1つ1つにおける複数の表面に多孔質シリコン層609を形成するために、適切なエッチング工程(例えば、電気化学エッチング)608が利用される。次に、三次元シリコン構造の1つ1つにおける複数の表面に多孔質二酸化ケイ素層611を形成するために、適切な酸化工程(例えば、熱的等)610が利用される。次に、三次元構造に電荷(正又は負イオン)を発生させるために、適切なイオン化工程(例えば、イオン注入)612が利用される。もし必要と考えられる場合、イオン化された表面をアニールし、それによって、こうして形成されたエレクトレット材料の電荷保持時間を増大させるために、適切なアニール工程614が次に利用されることができる。
【0019】
[0026]
図7は、
図6に示される例示的な製造プロセス600を実施するのに利用されることができる例示的な方法700を示すフロー図である。
図6及び7を参照すると、方法は、シリコンウェハ(又はシリコンディスク、ダイ等)を形成する、又は他の方法で提供することによって開始する(702)。次に、(例えば、二酸化ケイ素の)エッチングマスクのパターンが形成される(704)。次に、複数の三次元構造を形成するために、エッチング工程が利用される(706)。次にマスクが除去され、三次元構造の複数の表面に多孔質シリコン層が形成(エッチング)される(708)。次に、多孔質二酸化ケイ素層を形成するために、多孔質シリコン層が酸化される(710)。次に、性能強化されたエレクトレット材料を生じさせるために、多孔質二酸化ケイ素層が(例えば、正又は負イオンを注入して)電荷を付与される(712)。次に、例えばもしより高い電荷保持時間が必要とされる場合、性能強化されたエレクトレット材料がアニールされることができる(714)。
【0020】
[0027]
図8は、本発明の例示的な一実施態様を実現するのに利用されることができるシステム800の簡略化された模式的なブロック図である。この例示的な実施態様に関して、システム800はVLFトランスミッタシステムである。
図8を参照すると、例示的なシステム800は、ユーザからのテキストメッセージを入力し処理するように構成されたテキストメッセージプロセッサ802(例えば、音声メッセージ通信はVLFにおいては現実的でない)と、テキストメッセージプロセッサ802に結合され、ユーザからの多数のテキストメッセージをVLF用の適切なブロードキャストフォーマットに加工するように構成されたトランスミッタ(例えば、ブロードキャスト)プロセッサ804とを含む。信号プロセッサ/エンコーダ806が、トランスミッタプロセッサ804に結合され、トランスミッタプロセッサ804から受け取られたテキストメッセージをVLF伝送用の適切な符号化フォーマットにエンコードするように構成される。変調器808が、信号プロセッサ806に結合され、エンコードされたテキストメッセージを適切なVLF信号に変換するように構成される。変調器808において生成されたVLF信号は、VLF電力増幅器812に結合され、次いで、アンテナ814を介して送信される。注目すべきことに、例示的な一実施態様において、変調器808は、変調器808内の超高電荷密度(性能強化)エレクトレット810を物理的に動かし、それによって、VLFアンテナ814を介してブロードキャスト又は送信されることとなるVLF信号を発生させるように構成された、適切な電子回路及び/又は電気機械式回路を含む。斯くして、(例えば、
図3-6に関して上述されたような)性能強化されたエレクトレット材料810は、VLF信号を送信するのに利用されている従来のエレクトレット材料に対して、全体として表面体積の増加におけるおよそ18,000倍の向上をもたらす能力を有する。したがって、VLFトランスミッタシステム800のSWaP及び伝送性能は、従来のエレクトレット材料を利用する既存のVLFトランスミッタに対して大幅に増大する。
【0021】
[0028] 上述された実施態様及び例示図の要素は、本開示の範囲内にあると明示的に意図される更なる実施態様を生み出すために、互いに様々に組み合わせて用いられることができる、ということが理解されるべきである。
【0022】
<例示的実施態様>
[0029] 例1は、三次元構造と、前記三次元構造における複数の側壁と、前記複数の側壁上に形成された多孔質二酸化ケイ素膜と、を備え、前記多孔質二酸化ケイ素膜は、複数の正又は負イオンによって電荷を付与されている、超高電荷密度エレクトレットを含む。
【0023】
[0030] 例2は、前記三次元構造は、ピラミッド形のシリコン構造である、例1の超高電荷密度エレクトレットを含む。
【0024】
[0031] 例3は、前記三次元構造は、シリコンウェハの表面に形成されている、例1-2のいずれかの超高電荷密度エレクトレットを含む。
【0025】
[0032] 例4は、前記三次元構造は、トレンチ形、柱体形、又はスパイク形のシリコン構造のうちの少なくとも1つである、例1-3のいずれかの超高電荷密度エレクトレットを含む。
【0026】
[0033] 例5は、複数の三次元構造を更に備える、例1-4のいずれかの超高電荷密度エレクトレットを含む。
【0027】
[0034] 例6は、前記複数の三次元構造は、三次元構造のアレイを備える、例5の超高電荷密度エレクトレットを含む。
【0028】
[0035] 例7は、超高電荷密度エレクトレットを形成するための方法であって、シリコンウェハを提供するステップと、前記シリコンウェハの表面にパターンを有するエッチングマスクを形成するステップと、前記シリコンウェハの前記表面に複数の三次元構造を形成するステップと、前記複数の三次元構造の各々の少なくとも1つの表面に多孔質シリコン層を形成するステップと、前記複数の三次元構造の前記各々の前記少なくとも1つの表面に酸化多孔質シリコン層を形成するステップと、前記複数の三次元構造の前記各々の前記少なくとも1つの表面における前記酸化多孔質シリコン層上に電荷を形成するステップと、を含む方法を含む。
【0029】
[0036] 例8は、前記多孔質シリコン層を形成する前記ステップは、前記複数の三次元構造の前記各々の複数の前記表面に前記多孔質シリコン層を形成するステップを更に含む、例7の方法を含む。
【0030】
[0037] 例9は、前記シリコンウェハの前記表面に前記複数の三次元構造を形成する前記ステップは、前記シリコンウェハの前記表面に前記複数の三次元構造をエッチングするステップを含む、例7-8のいずれかの方法を含む。
【0031】
[0038] 例10は、前記酸化多孔質シリコン層を形成する前記ステップは、二酸化ケイ素層を形成し、前記二酸化ケイ素層をエッチングし、それによって前記二酸化ケイ素層に複数の細孔を形成するステップを更に含む、例7-9のいずれかの方法を含む。
【0032】
[0039] 例11は、前記シリコンウェハの前記表面に前記複数の三次元構造を形成する前記ステップは、前記シリコンウェハ上に複数のピラミッド形構造を形成するステップを含む、例7-10のいずれかの方法を含む。
【0033】
[0040] 例12は、前記シリコンウェハの前記表面に前記複数の三次元構造を形成する前記ステップは、前記シリコンウェハ上に複数のトレンチ形、柱体形、又はスパイク形構造を形成するステップを含む、例7-11のいずれかの方法を含む。
【0034】
[0041] 例13は、前記酸化多孔質シリコン層上に前記電荷を形成する前記ステップは、前記複数の三次元構造の前記各々の前記少なくとも1つの表面に複数の正又は負イオンを注入するステップを含む、例7-12のいずれかの方法を含む。
【0035】
[0042] 例14は、前記複数の三次元構造の前記各々の前記少なくとも1つの表面における前記酸化多孔質シリコン層をアニールするステップを更に含む、例7-13のいずれかの方法を含む。
【0036】
[0043] 例15は、テキストメッセージプロセッサと、前記テキストメッセージプロセッサの出力に結合されたブロードキャストプロセッサと、前記ブロードキャストプロセッサの出力に結合された信号プロセッサと、前記信号プロセッサの出力に結合された変調器と、前記変調器の出力に結合された電力増幅器と、前記電力増幅器の出力に結合されたアンテナと、を備えるシステムであって、前記変調器は、複数の超高電荷密度エレクトレットを含み、前記超高電荷密度エレクトレットは、複数の三次元構造と、前記複数の三次元構造の1つ1つにおける複数の側壁と、前記複数の側壁上に形成された多孔質二酸化ケイ素膜と、を備え、前記多孔質二酸化ケイ素膜は、複数の正又は負イオンによって電荷を付与されている、システムを含む。
【0037】
[0044] 例16は、前記複数の三次元構造の1つ1つは、ピラミッド形のシリコン構造である、例15のシステムを含む。
【0038】
[0045] 例17は、前記複数の三次元構造は、シリコンウェハ又はダイの表面に形成されている、例15-16のいずれかのシステムを含む。
【0039】
[0046] 例18は、前記複数の三次元構造の1つ1つは、トレンチ形、柱体形、又はスパイク形のシリコン構造のうちの少なくとも1つである、例15-17のいずれかのシステムを含む。
【0040】
[0047] 例19は、前記複数の三次元構造は、三次元構造のアレイを備える、例15-18のいずれかのシステムを含む。
【0041】
[0048] 例20は、前記複数の超高電荷密度エレクトレットは、超長波(VLF)信号を発生させるように構成された電気機械回路の構成部品である、例15-19のいずれかのシステムを含む。
【0042】
[0049] 本明細書において特定の実施態様が例示され説明されてきたけれども、それと同じ目的を達成するように意図されたあらゆる改変が、示された当該特定の実施態様に取って代わることができる、ということが当業者によって理解されるだろう。この出願は、提示された実施態様のあらゆる翻案又は変形を網羅するように意図される。したがって、実施態様はクレーム及びその均等物によってのみ限定される、ということが明白に意図される。