(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】一液型塗膜防水材の供給装置および供給方法
(51)【国際特許分類】
E04F 21/08 20060101AFI20220824BHJP
E04D 7/00 20060101ALI20220824BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220824BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
E04F21/08 J
E04D7/00 F
B05D3/00 B
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2018133416
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000133342
【氏名又は名称】株式会社ダイフレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】石塚 勉
(72)【発明者】
【氏名】和知 貴志
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-154781(JP,A)
【文献】特開2000-320472(JP,A)
【文献】特開2009-221851(JP,A)
【文献】特開2010-106608(JP,A)
【文献】特開2002-129008(JP,A)
【文献】特開2002-364128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/08
E04D 7/00
B05D 3/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂である一液型塗膜防水材を供給する供給管路と、
前記供給管路を通して前記一液型塗膜防水材を送出する供給ポンプと、を備え、
前記供給管路は、流路の断面積が減少するように弾性的に圧縮変形可能な送出管部を有し、
前記供給ポンプは、前記送出管部を押圧して弾性的に圧縮変形させる
複数の押圧部と、前記押圧部を駆動する駆動部と、
ケーシングと、を有し、
前記駆動部は、前記押圧部を前記送出管部の長さ方向に移動させることによって前記送出管部内の前記一液型塗膜防水材を送出
し、
前記駆動部は、駆動軸を有する駆動部本体と、
前記駆動部本体によって、前記駆動軸を中心として前記押圧部を回転移動させる支持体と、を有し、
前記支持体は、前記駆動軸に固定された中央部と、前記中央部の径方向の外方に延出して前記押圧部をそれぞれ支持する複数のアーム部と、を有し、
前記支持体は、前記押圧部を回転移動させることによって前記送出管部の長さ方向に移動させ、
前記ケーシングは、少なくとも一部が円弧状に湾曲した内周面を有する外周壁部を備え、
前記送出管部は、前記内周面に沿って配置され、
前記押圧部は、前記送出管部を前記外周壁部に押し当てることで圧縮変形させ、
前記送出管部の少なくとも最外周部分は、前記押圧部が回転移動する際に、前記内周面に沿う形状を維持し、
前記送出管部は、流路の断面積が増減するように弾性変形可能であり、前記支持体の周方向に隣り合う前記押圧部の間において、前記駆動軸と平行な方向から見て前記押圧部から離れるほど幅広となる、
一液型塗膜防水材の供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の一液型塗膜防水材の供給装置を使用し、
前記駆動部によって、前記押圧部を前記送出管部の長さ方向に移動させることによって前記送出管部内の前記一液型塗膜防水材を送出して被供給面に供給する、一液型塗膜防水材の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型塗膜防水材の供給装置および供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の屋上、ベランダ、橋梁などの防水工事においては、ポリウレタン樹脂などで構成される一液型塗膜防水材(液状防水材)を被施工面に供給し、塗り広げることによって防水塗膜を形成する(例えば、特許文献1を参照)。一液型塗膜防水材は、例えば、容器(例えば容積18リットルの缶)に充てんされた状態で施工場所(例えば建造物の屋上)に荷揚げした後、容器から出して被施工面に供給される。作業後、空の容器は荷卸しされて廃棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防水工事においては、施工場所への容器の荷揚げ、および施工場所からの空の容器の荷卸しなどに多大な労力および時間を要するという問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、作業が容易であって、作業時間の短縮が可能となる一液型塗膜防水材の供給装置および塗膜防水材の供給方法を提供することを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、一液型塗膜防水材を供給する供給管路と、前記供給管路を通して前記一液型塗膜防水材を送出する供給ポンプと、を備え、前記供給管路は、流路の断面積が減少するように弾性的に圧縮変形可能な送出管部を有し、前記供給ポンプは、前記送出管部を押圧して弾性的に圧縮変形させる押圧部と、前記押圧部を駆動する駆動部と、を有し、前記駆動部は、前記押圧部を前記送出管部の長さ方向に移動させることによって前記送出管部内の前記一液型塗膜防水材を送出する、一液型塗膜防水材の供給装置を提供する。
【0007】
前記駆動部は、駆動軸を有する駆動部本体と、前記駆動部本体によって、前記駆動軸を中心として前記押圧部を回転移動させる支持体と、を有し、前記支持体は、前記押圧部を回転移動させることによって前記送出管部の長さ方向に移動させることが好ましい。
【0008】
前記液状防水材の供給装置は、少なくとも一部が円弧状に湾曲した内周面を有する外周壁部をさらに備え、前記送出管部は、前記内周面に沿って配置され、前記押圧部は、前記送出管部を前記外周壁部に押し当てることで圧縮変形させることが好ましい。
【0009】
本発明の他の態様は、一液型塗膜防水材を供給する供給管路と、前記供給管路を通して前記一液型塗膜防水材を送出する供給ポンプと、を用い、前記供給管路は、流路の断面積が減少するように弾性的に圧縮変形可能な送出管部を有し、前記供給ポンプは、前記送出管部を押圧して弾性的に圧縮変形させる押圧部と、前記押圧部を駆動する駆動部と、を有し、前記駆動部によって、前記押圧部を前記送出管部の長さ方向に移動させることによって前記送出管部内の前記一液型塗膜防水材を送出して被供給面に供給する、一液型塗膜防水材の供給方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、塗膜防水材の供給に要する作業が容易であり、作業時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の一液型塗膜防水材の供給装置を示す概略図である。
【
図2】
図1の供給装置の供給ポンプを示す正面図である。
【
図3】
図1の供給装置の供給ポンプを示す側面図である。
【
図4】
図1の供給装置の供給ポンプの動作を示す説明図である。
【
図5】
図1の供給装置の供給管路の動作を示す説明図である。
【
図6】
図1の供給装置の使用例を示す説明図である。
【
図7】
図1の供給装置の使用例を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態の一液型塗膜防水材の供給装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[一液型塗膜防水材の供給装置](第1実施形態)
図1は、第1実施形態の一液型塗膜防水材の供給装置10(以下、単に供給装置10という)を示す概略図である。
図2は、供給装置10の供給ポンプ2を示す正面図である。
図3は、供給ポンプ2を示す側面図である。
図4は、供給ポンプ2の動作を示す説明図である。
図5は、供給管路1の動作を示す説明図であって、供給管路1の長さ方向に直交する断面を示す図である。
【0013】
図1に示すように、供給装置10は、供給管路1と、供給ポンプ2と、吐出部3とを備える。
供給管路1は、吸入管12と、導入管部13と、送出管部14(
図2参照)と、導出管部15とを備える。供給管路1は、貯留容器11から供給された塗膜防水材L(液状防水材)を吐出部3を通して被施工面に供給する。
【0014】
吸入管12は、直管状の管路であり、例えば、樹脂、金属などで構成される。吸入管12は、非可撓性であってよい。吸入管12は、貯留容器11に挿入され、貯留容器11内の塗膜防水材Lを取り出し、導入管部13に導く。吸入管12は、可撓性の管であってもよい。
【0015】
導入管部13は、樹脂などで構成され、吸入管12の先端に接続されている。導入管部13は、可撓性を有し、曲げ変形可能である。
図2に示すように、導入管部13は、接続部17を介して送出管部14に接続されている。導入管部13は、吸入管12から導入された塗膜防水材L(
図1参照)を送出管部14に導く。
【0016】
図2に示すように、送出管部14は、例えば、樹脂などで構成された管路である。
図5に示すように、送出管部14は、流路16の断面積(送出管部14の長さ方向に直交する断面の面積)が減少するように弾性的に圧縮変形可能である。例えば、径方向に押圧する力が加えられたときに、送出管部14は、流路16の断面形状(送出管部14の長さ方向に直交する断面の形状)が通常形状16aから閉塞形状16bとなるように弾性的に変形することができる。通常形状16aは円形状である。閉塞形状16bは、送出管部14が押し潰されて内周面どうしが密着し、流路16が閉塞する形状である。押圧が解除されれば、送出管部14の弾性力によって、流路16は通常形状16aに戻る。送出管部14は、可撓性を有し、曲げ変形可能である。
図2に示すように、送出管部14は、供給ポンプ2の外周壁部30の内周面30aに沿って配置される。
【0017】
図1に示すように、導出管部15は、樹脂などで構成され、接続部18を介して送出管部14(
図2参照)の先端に接続されている。導出管部15は、可撓性を有し、曲げ変形可能である。導出管部15は、送出管部14から導入された塗膜防水材Lを吐出部3に導く。
【0018】
導入管部13および導出管部15としては、10A~100Aの管を用いることができる。導出管部15の長さは、例えば5~60mが望ましい。導出管部15の最高使用圧力は、例えば0.1MPa以上が望ましい。
【0019】
図2に示すように、供給ポンプ2は、押圧ローラ21(押圧部)と、駆動部22(
図3参照)と、ケーシング23とを備える。
駆動部22は、駆動部本体25(
図3参照)と、支持体26とを備える。駆動部本体25は、例えばモータ等の駆動手段(図示略)と、駆動軸27とを有する。駆動部本体25としては、例えば出力0.75kW~5kWのモータが使用できる。駆動軸27は、例えば、ギヤ(図示略)を介してモータ等の駆動手段(図示略)と接続される。供給ポンプ2による塗膜防水材の送液量は、3~60kg/minが望ましい。
【0020】
支持体26は、中央部31と、1または複数のアーム部32と、支持軸部33とを備える。中央部31は、例えば、中心軸が駆動軸27と一致する円柱状とされている。中央部31は、駆動軸27に固定されている。複数(本実施形態では3つ)のアーム部32は、中央部31の外周面から中央部31の径方向外方に延出している。3つのアーム部32は、駆動軸27を中心軸とする回転対称(3回対称)となる位置に形成されている。支持軸部33は、アーム部32の先端部に形成されている。支持軸部33は、駆動軸27と平行である。支持体26は、駆動部本体25によって、駆動軸27の軸周り方向に回転することによって、押圧ローラ21を、駆動軸27を中心として回転移動させる。
【0021】
押圧ローラ21は、支持軸部33に回転自在に支持されている。押圧ローラ21は、送出管部14を外方に押圧し、外周壁部30に押し当てることで弾性的に圧縮変形させる。押圧ローラ21は、支持体26の回転によって、送出管部14を押圧しつつ送出管部14の長さ方向に転動する。供給ポンプ2は、押圧ローラ21を送出管部14の長さ方向に移動させることによって塗膜防水材を送出するポンプであり、いわゆるチューブポンプである。
【0022】
ケーシング23は、主部28(
図3参照)と、外周壁部30とを有する。主部28は、基板部29を有する。基板部29は、厚さ方向から見て円形状とされている。外周壁部30は、基板部29の周縁の一部から、基板部29に対して垂直に立設されている。外周壁部30は、駆動軸27と平行な内周面30aを有する。内周面30aは、駆動軸27と平行に見て円弧状とされている。なお、内周面30aは、全部が円弧状でなくてもよく、一部のみが円弧状であってもよい。
【0023】
図1に示すように、吐出部3は、導出管部15の先端に設けられた吐出ノズルである。吐出部3は、導出管部15から導入された塗膜防水材Lを、吐出口(図示略)を通して被施工面に供給する。
【0024】
[一液型塗膜防水材の供給方法](第1実施形態)
図6および
図7は、供給装置10の使用例を示す説明図である。以下、供給装置10を用いて塗膜防水材を被施工面に供給する方法を含む防水施工方法を説明する。
【0025】
(第1工程:一液型塗膜防水材の供給)
図6に示すように、本実施形態の供給方法では、建造物50の屋上51の床面51a(
図7参照)を被施工面とする。建造物50は、例えば、複数階を有する建造物である。床面51aは、地上52よりも高所にある。供給ポンプ2は、地上52に置かれた車両53に搭載されている。供給管路1の導出管部15は供給ポンプ2から建造物50の屋上51に向かって延び、
図7に示すように、吐出部3は屋上51に達している。
なお、被施工面は、屋上51におけるパラペット部54に囲まれた平場面に限らず、平場面およびパラペット部54の内面(立ち上がり面)を含む面であってもよい。被施工面としては、このほか、ベランダ、橋梁などが挙げられる。
【0026】
一液型塗膜防水材は、例えば、ポリウレタン樹脂などで構成される。一液型塗膜防水材としては、その他、アクリルエマルジョン・水系アクリルゴム、水系ゴムアスファルト系などを用いてもよい。一液型(湿気硬化型)のポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを含む。ポリイソシアネートとしては、例えばジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)等の低分子量イソシアネート化合物が挙げられる。ポリオールとしては、水酸基を2以上持つものであれば特に限定されないが、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0027】
一液型ウレタン塗膜防水材は、溶剤、可塑剤、硬化触媒、充填材、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色顔料等の添加剤を含んでいてもよい。なお、一液型塗膜防水材は、ポリウレタン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。
一液型塗膜防水材を貯留する貯留容器11は、例えば、容積200リットルのドラム缶、容積1m3のコンテナタンクなどである。
【0028】
図2および
図4に示すように、押圧ローラ21は、送出管部14を外周壁部30に押し当てることで弾性的に圧縮変形させる。
図5に示すように、押圧ローラ21に押圧されることによって、送出管部14の流路16が通常形状16a(円形)から閉塞形状16bとなる。
【0029】
図2および
図4に示すように、供給ポンプ2の駆動部本体25を稼働し、支持体26を駆動軸27の周りに回転移動させる。押圧ローラ21は、支持体26の回転によって、送出管部14を押圧しつつ送出管部14の長さ方向に転動する。これによって、閉塞部位が送出管部14の長さ方向に移動するため、送出管部14内の塗膜防水材は、
図4に示す矢印の方向に送出され、導出管部15に導かれる。
【0030】
押圧ローラ21が通り過ぎると、送出管部14の流路16は通常形状16aに戻るため(
図5参照)、送出管部14の基端側の管路(吸入管12および導入管部13)(
図1参照)の内部は負圧となる。そのため、貯留容器11(
図1参照)内の塗膜防水材は吸入管12に吸引され、導入管部13を経て送出管部14に導かれる。
【0031】
図6に示すように、供給ポンプ2によって送出された塗膜防水材は、導出管部15を通って吐出部3に達し、吐出口(図示略)を通して屋上51の床面51a(被施工面)に供給される。
図7に示すように、作業者100は、吐出部3を操作して床面51aのうち必要な箇所に塗膜防水材を供給する。
【0032】
施工場所である屋上51には、一時貯留のための容器20(
図7参照)を用意しておいてもよい。この場合、吐出部3から吐出された塗膜防水材を、床面51aに供給する前に容器20に移し、容器20から床面51aに供給することができる。
1つの貯留容器11(
図6参照)内の塗膜防水材をすべて屋上51の床面51a(
図7参照)に供給することによってその貯留容器11が空になったら、新たな貯留容器11を開栓し、この貯留容器11に吸入管12(
図1参照)を移し替えることによって塗膜防水材の供給を継続することができる。
【0033】
(第2工程:塗膜防水材の塗布)
一液型塗膜防水材を、塗工器具(例えば、コテ、ローラー、レーキ等)を用いて床面51aに塗り広げる。
【0034】
(第3工程:防水塗膜の形成)
塗り広げた一液型塗膜防水材を硬化させることによって、防水塗膜とする。
【0035】
(その他の工程)
床面51a(被施工面)への一液型塗膜防水材の供給作業終了後には、
図2に示す供給ポンプ2の支持体26を、供給時とは逆に回転させる。これにより、送出管部14内が負圧となり、導出管部15内に残っている一液型塗膜防水材は逆流し、送出管部14、導入管部13、吸入管12を経て貯留容器11に返送される。これにより、供給管路1内の塗膜防水材の残留量を少なくできる。
【0036】
供給管路1内に溶剤等を流すことによって、供給管路1内を洗浄することができる。
【0037】
[第1実施形態によって得られる効果]
本実施形態の供給装置10は、押圧ローラ21を送出管部14の長さ方向に移動させることによって塗膜防水材を送出する供給ポンプ2(いわゆるチューブポンプ)を備えるため、供給管路1を通して塗膜防水材を屋上51に供給できる。そのため、塗膜防水材入りの容器を建造物50の屋上51にまで荷揚げする必要がない。作業後、空の容器を荷卸しする必要もない。したがって、作業が容易であり、必要な作業者の数を少なくできる。また、作業時間の短縮が可能となる。
【0038】
供給装置10では、必要に応じて、供給ポンプ2の稼働/停止(すなわちON/OFF)を制御したり、駆動部本体25(例えばモータ)の回転数を制御することなどによって、塗膜防水材の供給量を容易に調整できる。そのため、作業に応じて適切な量の塗膜防水材を供給することができる。例えば、一液型塗膜防水材の送液量は、3~60kg/minの範囲で任意に選択できる。
【0039】
供給装置10は、押圧ローラ21を送出管部14の長さ方向に移動させることによって塗膜防水材を送出する供給ポンプ2を備えているため、他の構造のポンプを使用する場合に比べて、装置構成を簡略にできる。そのため、設備コストを抑制できる。
【0040】
供給装置10では、供給ポンプ2が前述の構造を有するため、供給管路1に洗浄剤(溶剤等)を流すことによって塗膜防水材を洗い流すことができる。そのため、作業後の洗浄、およびメンテナンスが容易となる。
【0041】
洗浄の際には、供給管路1内に洗浄体を入れた状態で洗浄剤(溶剤等)を流す方法をとることができる。洗浄体は、圧縮変形可能な弾性体であることが好ましい。洗浄体は、例えば、発泡樹脂(例えば連泡発泡ウレタン)などの多孔質体で構成されている。洗浄体の形状は、球状、円柱状などであってよい。洗浄体は、供給管路1の内面に接した状態で洗浄剤により管路に沿って移動するため、供給管路1の内面の塗膜防水材を効率的に除去することができる。そのため、供給管路1を洗浄する効果が高められる。洗浄体は、未変形状態での外形寸法が供給管路1の内径より大きく、かつ供給管路1内では弾性的に圧縮変形した状態となることが好ましい。これにより、洗浄体は、その弾性力により供給管路1の内面に押し当てられるため、塗膜防水材を除去する効果が高められる。洗浄剤は、吸入管12側から吐出部3に向けて流してもよいし、逆に、吐出部3から吸入管12側に流してもよい。供給装置10は、供給ポンプ2の構造が簡略であるため、このような洗浄方法によって洗浄することができる。
【0042】
[塗膜防水材の供給装置および供給方法](第2実施形態)
図8は、第2実施形態の塗膜防水材の供給装置110を示す概略図である。以下、第1実施形態との共通構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
図8に示すように、供給装置110は、供給管路1と、供給ポンプ2と、吐出部3(
図1参照)と、発電機104と、制御部105と、操作部106とを備える。発電機104は供給ポンプ2に電力を供給し、供給ポンプ2を稼働させる。制御部105は、操作部106からの信号に基づいて、供給ポンプ2の駆動部本体25(モータ等)の動作を制御する。制御部105は、例えば、供給ポンプ2の稼働/停止(すなわちON/OFF)、駆動部本体25(例えばモータ)の回転数、駆動部本体25(例えばモータ)の回転方向などを制御できる。
【0044】
制御部105が供給ポンプ2の稼働/停止(すなわちON/OFF)を制御する場合には、吐出部3における塗膜防水材の供給および停止を制御できる。制御部105が供給ポンプ2の駆動部本体25(例えばモータ)の回転数を制御する場合には、吐出部3における一液性塗膜防水材の供給量を制御できる。制御部105が供給ポンプ2の駆動部本体25(例えばモータ)の回転方向を制御する場合には、一液型塗膜防水材の流れ方向を制御できる。作業者(例えば、
図7に示す作業者100)は、一液型塗膜防水材の供給作業を行う際に、操作部106を操作することによって、一液型塗膜防水材の供給量等を調整できる。
供給ポンプ2が稼働しているときには、圧力計19によって供給管路1内の圧力を確認することができる。
【0045】
[第2実施形態によって得られる効果]
本実施形態の供給装置110は、第1実施形態と同様に、供給ポンプ2(いわゆるチューブポンプ)を備えるため、供給管路1を通して塗膜防水材を屋上51に供給できる。そのため、塗膜防水材入りの容器の荷揚げ、および空の容器の荷卸しの必要がなく、作業が容易であり、必要な作業者の数を少なくできる。また、作業時間の短縮が可能となる。
【0046】
供給装置110では、供給ポンプ2の稼働/停止(すなわちON/OFF)制御、駆動部本体25(例えばモータ)の回転数制御などによって、一液型塗膜防水材の供給量を容易に調整できる。そのため、作業に応じて適切な量の一液型塗膜防水材を供給することができる。また、駆動部本体25(例えばモータ)の回転方向の制御によって、洗浄操作が容易になる。
【実施例】
【0047】
図1に示す供給装置10を作製した。供給装置10を用いて、建造物50の屋上51の床面51a(
図7参照)を被施工面として、以下の仕様で防水施工を行った。
施工面積:1000m
2
塗膜防水材:(株)ダイフレックス製 一液型ウレタン防水材 エバーコートZero1-H
塗膜防水材の使用量:3.9(kg/m
2)×1000m
2=3,900kg
塗膜防水材の容器:実施例では、貯留容器11として、容積200リットルのドラム缶を20個用いた。比較例では、塗膜防水材入り容器として、容積18リットルの缶を216個用いた。
【0048】
図6に示すように、実施例では、供給装置10を用いて屋上51の床面51a(
図7参照)に一液型塗膜防水材を供給した。供給ポンプ2は、地上52に置かれた車両53に搭載されている。被施工面に供給された一液型塗膜防水材を、塗工器具(例えば、コテ、ローラー、レーキ等)を用いて床面51aに塗り広げ、硬化させて防水塗膜を形成した。
【0049】
比較例では、一液型塗膜防水材入り容器を屋上51の床面51a(
図7参照)に荷揚げし、これらの容器から被施工面に一液型塗膜防水材を供給した。被施工面に供給された一液型塗膜防水材を、実施例と同様にして床面51aに塗り広げ、硬化させて防水塗膜を形成した。
【0050】
実施例および比較例において、作業者の必要性および必要数などを表1に示す。表1において、「荷揚げ」は、地上52から屋上51への塗膜防水材入り容器の荷揚げ作業である。「開缶」は塗膜防水材入り容器の開缶作業である。「移液」は塗膜防水材入り容器から一時貯留用の容器へ塗膜防水材を移動させる作業である。「かき取り」は、一液型塗膜防水材入り容器から他の容器へ一液型塗膜防水材を移動させる際に、元の容器に残った一液型塗膜防水材をかき取る作業である。「オペレーター」は、地上52に待機し、貯留容器11内の一液型塗膜防水材がなくなったときに、新たな貯留容器11へ吸入管12を移し替える作業者である。「汲み出し」は、吐出部3から吐出された一液型塗膜防水材を一時貯留用の容器に定量汲み出す作業である。「塗布」は、一液型塗膜防水材を床面51aに塗布する作業である。「缶潰し」は、空の容器を押し潰す作業である。「残缶荷卸し」は、空の容器を地上52まで荷卸しする作業である。「機械洗浄」は、溶剤を用いて供給装置の内部を洗浄する作業である。
【0051】
【0052】
表1に示すように、実施例では、比較例に比べて工程数が少ないため、作業者の数を少なくでき、かつ作業時間を短くできた。
【0053】
本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、実施形態では、供給ポンプ2に、押圧ローラ21を駆動軸27の周りに回転移動させることによって送出管部14内の塗膜防水材を送出する構成が採用されているが、供給ポンプの構成はこれに限定されない。例えば、駆動部の支持体は、押圧部(押圧ローラ)を送出管部の長さ方向に移動させることによって一液型塗膜防水材を送出することができれば、押圧部(押圧ローラ)を回転移動させる構成に限定されない。例えば、供給ポンプは、押圧部を送出管部に沿って直線的に移動させることで塗膜防水材を送出する構成であってもよい。実施形態の液状防水材の供給装置および供給方法は、二液型の塗膜防水材に適用することもできるが、一液型の塗膜防水材に適用することによって、その特性を十分に発揮する。
【符号の説明】
【0054】
1 供給管路
2 供給ポンプ
3 吐出部
14 送出管部
21 押圧ローラ(押圧部)
22 駆動部
25 駆動部本体
30 外周壁部
30a 内周面