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特許7128691複数の力率改善回路を搭載した電源回路及びその制御回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】複数の力率改善回路を搭載した電源回路及びその制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220824BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02M7/12 W
H02M7/12 S
H02M3/155 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018165137
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020039209
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】仙田 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輔
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-070614(JP,A)
【文献】特開2013-143896(JP,A)
【文献】特開2015-198521(JP,A)
【文献】特開平10-225129(JP,A)
【文献】特開平01-321373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0132899(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を出力する交流電源と、
前記交流電源を全波整流するブリッジ整流器と、
インダクタとダイオードとスイッチング素子からなる複数の力率改善回路と、
前記力率改善回路からの電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
を備え、
複数の前記力率改善回路は並列に接続されており、前記力率改善回路のスイッチング周波数に応じて複数の前記力率改善回路のいずれかの前記力率改善回路に切り替える切替制御部を備えたこと、
を特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記複数の力率改善回路として、前記スイッチング周波数を所定の境界スイッチング周波数で別けた低周波領域と高周波領域のうち前記低周波領域に対応した第1力率改善回路と、前記高周波領域に対応した第2力率改善回路を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記低周波領域で前記第1力率改善回路を駆動し、前記高周波領域で前記第2力率改善回路を駆動すること、
を特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記第1力率改善回路は、MOSFET又はIGBTから成るダイオード及びスイッチング素子を含み、
前記第2力率改善回路は、GaN-HEMT又はSiCから成るダイオード及びスイッチング素子を含むこと、
を特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項5】
前記スイッチング周波数を求めるための電流検出素子をさらに備えること、
を特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項6】
前記電流検出素子として、前記第1力率改善回路と前記第2力率改善回路の合成入力電流平均値を検出するための電流検出抵抗を備えること、
を特徴とする請求項5に記載の電源回路。
【請求項7】
前記電流検出素子として、前記第1力率改善回路と前記第2力率改善回路の合成入力電流平均値を検出するためのロゴスキーコイルを備えること、
を特徴とする請求項5に記載の電源回路。
【請求項8】
前記ロゴスキーコイルは、中心部に導体を備えていること、
を特徴とする請求項7に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の力率改善回路を搭載した電源回路及びその制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源は、商用交流電源を様々な方式で直流電圧に変換している。この変換(AC/DC変換)の際に変換できる電力は有効電力のみであり、力率が100%に近い程、より多くの電力を直流に変換することができる。
【0003】
商用電源を、整流素子と平滑コンデンサを用いた整流・平滑回路で整流および平滑を行う場合、整流・平滑回路のピークホールド作用のために、交流電圧のピーク電圧付近の短時間だけ電流が流れることとなり、正弦波とは大きく異なる歪み波形になってしまう。このため、電源の利用効率を示す力率が損なわれるという問題が生じる。また、このような歪み電流波形となることによって高調波が発生する問題も生じる。これらの問題を解決するために、力率改善回路(PFC:Power Factor Correction)を設けている。
【0004】
特許文献1には、交流電源に接続されて直流電圧を得る力率改善回路と、力率改善回路の直流電圧をトランスの1次巻線に入力し、スイッチング素子によりオン/オフして別の直流電圧に変換し無負荷又は軽負荷時にスイッチング周波数が間欠発振に移行するスイッチング電源装置が開示されている。スイッチング周波数が間欠発振に移行したとき、力率改善回路を停止させている。
【0005】
特許文献2には、負荷サイズが所定閾値より大きいときには臨界モードで動作させ、負荷サイズが所定の閾値より小さいときには電流不連続モードで動作させるPFC回路が開示されている。
【0006】
特許文献3には、小型で高効率なPFCシステムを実現するインターリーブ制御方式が開示されている。インターリーブ制御は、電源を複数系統(2相)に分けて180度の位相差をもたせ、リップルなどを互いに打ち消しあう制御方式である。トータルの部品点数は増えるが、個々のインダクタや出力コンデンサなどを軽減でき、また複数系統になることで発熱も分散されるメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-348560号公報
【文献】特開2014-233110号公報
【文献】特開2013-132125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
力率改善回路は、入力電流が正弦波になるように電流波形を制御する。電流制御モードには、連続モード、臨界モードと不連続モードがある。連続モードは大電力に好適であるが、制御が複雑で、乗算器を必要とするなど回路の部品点数が多い。乗算器は、全波整流後の半サイクル正弦波電圧と出力電圧、又は、出力電圧と基準電圧との誤差増幅器の電圧とを乗算して正弦波の大きさを変えて出力する。不連続モードは、回路構成は簡単であるが、力率が低く、ノイズの発生もある。臨界モードは、回路構成が簡単で力率もよいが、電流のゼロクロスポイントでスイッチングする動作であるため、軽負荷・低電圧での低電流領域ではスイッチング素子のオン期間の減少とともに、スイッチング周波数が高くなり、スイッチング素子の周波数特性の限界を超える場合は、スイッチングを停止させるため、間欠発振となり、力率が低下する問題があった。
【0009】
PFCシステムを小型・低ノイズで高効率を実現するインターリーブ制御方式においても、個々のインダクタや出力コンデンサなどを軽減でき、また複数系統になることで発熱も分散されるメリットがあるが、軽負荷時や低電圧のときに高くなるスイッチング周波数に対応できず、間欠発振となって力率が低下する問題があった。
【0010】
さらに、近年電源回路の小型化の要求も高まってきており、部品の小型化には、スイッチング周波数の高周波化によるインダクタ容量の低減が不可欠であり、高スイッチング周波数化も大きな課題となっている。
【0011】
本発明は、低電流での高周波領域における力率改善を図ることのできる電源回路及びスイッチング電源を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の電源回路は、交流電圧を出力する交流電源と、前記交流電源を全波整流するブリッジ整流器と、インダクタとダイオードとスイッチング素子からなる複数の力率改善回路と、前記力率改善回路からの電圧を平滑化する平滑コンデンサと、を備え、複数の前記力率改善回路は並列に接続されており、前記力率改善回路のスイッチング周波数に応じて複数の前記力率改善回路のいずれかの前記力率改善回路に切り替える切替制御部を備えたこと、を特徴とする。
【0013】
(2)本発明の電源回路は、前記複数の力率改善回路として、前記スイッチング周波数を所定の境界スイッチング周波数で別けた低周波領域と高周波領域のうち前記低周波領域に対応した第1力率改善回路と、前記高周波領域に対応した第2力率改善回路を備えること、が好ましい。
【0014】
(3)本発明の電源回路は、前記低周波領域で前記第1力率改善回路を駆動し、前記高周波領域で前記第2力率改善回路を駆動すること、が好ましい。
【0015】
(4)本発明の電源回路においては、前記第1力率改善回路は、MOSFET又はIGBTから成るダイオード及びスイッチング素子を含み、前記第2力率改善回路は、GaN-HEMT又はSiCから成るダイオード及びスイッチング素子を含むこと、が好ましい。
【0016】
(5)本発明の電源回路は、前記スイッチング周波数を求めるための電流検出素子をさらに備えること、が好ましい。
【0017】
(6)本発明の電源回路においては、前記電流検出素子として、前記第1力率改善回路と前記第2力率改善回路の合成入力電流平均値を検出するための電流検出抵抗を備えること、が好ましい。
【0018】
(7)本発明の電源回路においては、前記電流検出素子として、前記第1力率改善回路と前記第2力率改善回路の合成入力電流平均値を検出するためのロゴスキーコイルを備えること、が好ましい。
【0019】
(8)本発明の電源回路においては、前記ロゴスキーコイルは、中心部に導体を備えていること、が好ましい。
【0020】
(9)本発明のスイッチング電源は、上記(1)に記載の電源回路と、電圧コンバータと、制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
(1)本発明の電源回路は、交流電圧を出力する交流電源と、交流電源を全波整流するブリッジ整流器と、インダクタとダイオードとスイッチング素子からなる複数の力率改善回路と、力率改善回路からの電圧を平滑化する平滑コンデンサとを備え、複数の力率改善回路は並列に接続されており、力率改善回路のスイッチング周波数に応じて複数の力率改善回路のいずれかの力率改善回路に切り替える切替制御部を備えている。従来、軽負荷時や低電圧でスイッチング周波数が高くなり、力率改善回路が追従できずに、間欠発振に移行していた。これに対して、高周波領域で動作可能な力率改善回路を備えているので、高周波領域でも力率の低下を抑制できる。
【0022】
(2)本発明の電源回路は、前記複数の力率改善回路として、前記スイッチング周波数を所定の境界スイッチング周波数で別けた低周波領域と高周波領域のうち前記低周波領域に対応した第1力率改善回路と、前記高周波領域に対応した第2力率改善回路を備える。低周波領域に対応した第1力率改善回路は、スイッチング素子の周波数特性が低くてもよく、低コストの部品が使用できる。このため、低コストで、軽負荷時や低電圧における高周波数でのスイッチング周波数に対応可能となり、力率の低下を抑制できる。
【0023】
(3)本発明の電源回路は、前記低周波領域で前記第1力率改善回路を駆動し、前記高周波領域で前記第2力率改善回路を駆動する。このため、高周波領域でスイッチング周波数が間欠発振に移行する必要が無く、力率の低下を抑制できる。
【0024】
(4)本発明の電源回路においては、前記第1力率改善回路は、MOSFET又はIGBTから成るダイオード及びスイッチング素子を含み、前記第2力率改善回路は、GaN-HEMT又はSiCから成るダイオード及びスイッチング素子を含む。高周波数まで対応可能なGaN-HEMT又はSiCから成るダイオード及びスイッチング素子は高価であり、低コストのMOSFET又はIGBTから成るダイオード及びスイッチング素子を使用することで、低コスト化が可能である。
【0025】
(5)本発明の電源回路は、スイッチング周波数を求めるための電流検出素子をさらに備える。スイッチング周波数は力率改善回路の電流に対応し、電流検出素子により検出された合成入力電流平均値からスイッチング周波数を求めることができ、境界スイッチング周波数は、所定の電流値で容易に設定できる。これにより、複数の力率改善回路を容易に切り替えることができ、力率の低下を抑えることができる。
【0026】
(6)本発明の電源回路は、前記電流検出素子として、前記第1力率改善回路と前記第2力率改善回路の合成入力電流平均値を検出するための電流検出抵抗を備える。スイッチング周波数は、力率改善回路の各素子に流れる電流に対応し、電流検出抵抗を設けることで容易に電流を検出ることができ、境界スイッチング周波数の設定が可能となる。
【0027】
(7)本発明の電源回路は、前記電流検出素子として、前記第1力率改善回路と前記第2力率改善回路の合成入力電流平均値を検出するためのロゴスキーコイルを備える。電流を検出する電流検出抵抗を用いる方法は、抵抗での損失が生じる。これに対してロゴスキーコイルは、電流が流れる導電線を取り囲んで設けるため、損失をともなうことなく電流の検出が可能である。
【0028】
(8)本発明の電源回路においては、前記ロゴスキーコイルは、中心部に導体を備える。中心部に導体を備えたロゴスキーコイルは配線パターンの一部に接続するだけで搭載が容易である。
【0029】
(9)本発明のスイッチング電源は、上記(1)に記載の電源回路と、電圧コンバータと、制御部とを備える。このため、小型、低コストで力率の高いスイッチング電源となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の電源回路10を示す図である。
図2】臨界モード動作を説明する図である。
図3】第1力率改善回路16が、高いスイッチング周波数まで対応可能とした理想状態における臨界モード動作を説明する図である。
図4】入力電圧Vinが低い領域での臨界モード動作を説明する図である。
図5】第1力率改善回路16を、高いスイッチング周波数まで対応可能とした理想状態における軽負荷時の臨界モード動作を説明する図である。
図6】軽負荷時での臨界モードを説明する図である。
図7】本発明で用いる力率改善回路を示す図である。
図8】本発明の電源回路10による動作モードを説明する図である。
図9】第1力率改善回路16において各素子に流れる電流を説明する図である。
図10】第1力率改善回路16において各素子に流れる電流を示す図である。
図11】ロゴスキーコイルの原理を説明する図である。
図12】ロゴスキーコイル30の実施形態である矩形ロゴスキーコイル40を示す図である。
図13】進みコイル32の1つの巻回ユニットを説明する図である。
図14】中心部に導体56を設けたロゴスキーコイル型電流検出素子52を説明する図である。
図15】本発明の電源回路の実施例を示す図である。
図16】ロゴスキーコイル型電流検出素子52によって検出された検出電流と、電流比較部出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せをする様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0032】
図1は、本発明の電源回路10を示す図である。電源回路10は、交流電圧を出力する交流電源12と、交流電源を全波整流するブリッジ整流器14と、インダクタとダイオードとスイッチング素子からなる複数の力率改善回路と、電圧を平滑化する平滑コンデンサ20と、複数の力率改善回路をインダクタ電流に応じて複数の力率改善回路のいずれかの力率改善回路に切り替える切替制御部26を備えている。入力コンデンサ24はブリッジ整流器14と並列に接続されており、ブリッジ整流器14からの出力電圧のノイズを除去する。
【0033】
力率改善回路は、第1力率改善回路16と第2力率改善回路18が並列に接続されている。
第1力率改善回路16は、インダクタLとダイオードDとスイッチング素子SWからなり、第2力率改善回路18は、インダクタLとダイオードDとスイッチング素子SWからなっている。第1力率改善回路16と第2力率改善回路18は、第1力率改善回路と第2力率改善回路の合成入力電流平均値を検出し、対応する周波数に応じて切替制御部26で切り替えられる。
【0034】
力率改善回路は、スイッチング周波数を所定の境界スイッチング周波数で低周波領域と高周波領域に別け、低周波領域に対応した第1力率改善回路と高周波領域に対応した第2力率改善回路を含んでいる。例えば、第1力率改善回路16に使用可能な最大周波数が低いダイオードD及びスイッチング素子SWを使用し、第2力率改善回路18に使用可能な最大周波数が高いダイオードD及びスイッチング素子SWを使用する。
【0035】
第1力率改善回路16は、MOSFET又はIGBTから成るダイオード及びスイッチング素子を含み、第2力率改善回路18は、GaN-HEMT又はSiCから成るダイオード及びスイッチング素子を含んでいる。
【0036】
スイッチングで使用可能な最大周波数が高いスイッチング素子SWは、高性能であり、一般的に高価である。最大周波数が高いスイッチング素子は、例えばGaN(窒化ガリウム)デバイスがあり、GaN-HEMTは、二次元電子ガスを利用した高速電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor)であり、1MHz以上での高速動作も可能である。また、SiC(炭化シリコン)デバイスも、高速で動作が可能である。第2力率改善回路18は、高周波領域に対応しており、小型の素子を使用して定格電流を小さくしている。このため、大きな電流を流す低周波領域では使用できず、低周波領域でのインターリーブ動作はできない。
【0037】
パワーデバイスとしては、現在、Si-MOSFET(シリコン金属酸化物電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が多く使用されており、GaN-HEMTやSiCからなるデバイスに比べて安価である。第1力率改善回路16には、Si-MOSFETやIGBTを使用することでコストを低減できる。
【0038】
本発明は、スイッチング周波数の低周波領域に対応した第1力率改善回路16と、スイッチング周波数の高周波領域に対応した第2力率改善回路18とを使用し、低コストで幅広い周波数領域での力率改善を目的としている。
【0039】
図2は、臨界モード動作を説明する図である。図2(A)は第1力率改善回路16を示す図であり、図2(B)は、ブリッジ整流器14で全波整流された第1力率改善回路16への入力電圧Vinの電圧波形を示す図である。0Vから時間tと共に、徐々に電圧が高くなる場合を示している。図2(C)は、インダクタLに流れるインダクタ電流IL1を示す図であり、図2(D)は、スイッチング素子SWのゲート電圧Vg1を示す図である。ブリッジ整流器14で全波整流された入力電圧Vinは、印加直後は低い。スイッチング素子SWはオフ状態であり、インダクタL及びダイオードDを介してインダクタ電流IL1が流れ、平滑コンデンサ20に電荷を蓄積する。入力電圧Vinが低電圧のため、電荷の蓄積は少ない。スイッチング素子SWにゲート電圧Vg1が印加され、スイッチング素子SWがオン状態となると、インダク電流IL1は、スイッチング素子SWに流れる。
【0040】
臨界モード動作では、スイッチング素子SWがオン状態のときに、電流が流れなくなるまで、即ち、インダクタLに蓄えられたエネルギーをすべて放出するまで電流を流し、電流ゼロクロスポイントで、スイッチング素子SWへのゲート電圧Vg1の印加を停止する。これにより、スイッチング素子SWはオフ状態となり、再び平滑コンデンサ20へインダクタ電流IL1を流し、電荷を蓄積する。臨界モード動作は、この動作の繰り返しである。オン時間は、負荷に応じて決定し、一定時間としてもよい。
【0041】
臨界モード動作におけるスイッチング素子SWのスイッチング周波数fsは、オン時間とオフ時間から、次のようにして求められる。
【0042】
入力電圧Vinを、交流電源の角周波数ωと時間tを用いて、Vinsin(ωt)とし、インダクタLのインダクタンスをL1iとする。インダクタLに流れるインダクタ電流IL1は、交流電圧の積分値に比例し、IL1=(1/ωL1i)Vinsin(ωt)となる。インダクタ電流IL1は、平滑コンデンサ20により平滑化されるので、(1/ωL1i)Vinsin(ωt)は、ピーク電流IL1pを表していることになり、IL1p=(1/ωL1i)Vinsin(ωt)で表せる。平滑コンデンサ20により平滑化されたインダクタ電流IL1は、三角形状となり、平均値は(1/2)IL1pである。
【0043】
スイッチング素子SWがオンとなる時間tでは、入力電圧VinはVinsin(ωt)である。入力電源の角周波数ωに対して、力率改善回路のスイッチング周波数fsは十分に高いとすると、交流電源の周期に対してスイッチング素子SWのオン時間Tonは短く、一定電圧Vinsin(ωt)であると近似的に表すことができる。インダクタLに流れるピーク電流IL1pは、(1/ωL1i)sin(ωt)であるが、平滑コンデンサ20により平滑化され、オン時間Tonで平均化されるから、インダクタ電流IL1は、Ton・(1/2ωL1i)sin(ωt)となる。
【0044】
スイッチング素子SWがオフとなるオフ時間Toffは、出力電圧VoutをVout1とすると、インダクタLに流れるインダクタ電流IL1がゼロとなるまでの時間である。従って、オフ時間toff=ton(1/ωL1i)sin(ωt)/(Vout1-(1/ωL1i)sin(ωt))となる。
【0045】
スイッチング周波数fsは、オン時間Tonとオフ時間Toffを1周期としており、次の式で表せる。
fs=1/(Ton+Toff
=(1/Ton)・[Vout1-Vinsin(ωt)]/Vout1
fs:スイッチング周波数
on:オン時間
off:オフ時間
ω:交流電源の角周波数
in:入力電圧
t:時間
1i:インダクタンス
out1:出力電圧
【0046】
高入力電圧で軽負荷であるほど、[Vout1-Vinsin(ωt)]が大きくなり、低電圧ほどオン時間Tonが短くなるから、スイッチング周波数fsは高くなる。スイッチング周波数fsが高く、力率改善回路のスイッチング素子SWの使用可能な最大周波数fsmaxを超えるとスイッチング素子SWは追従できず、動作を停止し、間欠動作になるなど動作が不安定になる。
【0047】
図3は、第1力率改善回路16が高いスイッチング周波数fsまで対応可能とした理想状態における、臨界モード動作を説明する図である。図3(A)は、入力電圧Vinを示す図であり、図3(B)は、インダクタ電流IL1を示す図である。図3(C)はスイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1を示す図である。図3(D)は、スイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1の周期を表すスイッチング周波数fsを示す図である。
入力電圧Vinが低いときはスイッチング周波数fsが高く、入力電圧Vinが高いときはスイッチング周波数fsが低くなる。スイッチング素子SWは使用可能な最大スイッチング周波数fsmaxがあるが、低電圧では最大スイッチング周波数fsmaxを超えたスイッチング周波数が要求される。
【0048】
図4は、入力電圧Vinが低い領域での臨界モード動作を説明する図である。スイッチング素子SWを駆動するスイッチング周波数fsが、最大スイッチング周波数fsmaxを超えた場合である。図4(A)は、インダクタ電流IL1を示す図であり、図4(B)はスイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1を示す図ある。図4(C)はスイッチング素子SW1のスイッチング周波数fsを示す図である。図4(D)は、力率改善回路での力率を示す図である。
インダクタ電流IL1が小さく、スイッチング周波数fsが最大スイッチング周波数fsmaxを超える最小インダクタ電流IL1min以下では、スイッチング素子SWの応答が追従できず、スイッチングが停止状態となり、ゲート電圧Vg1も印加されない。このため、インダクタ電流IL1は流れず、不連続となる。このため、図4(D)に示したように、力率も低下する。
【0049】
図5は、第1力率改善回路16を、高いスイッチング周波数fsまで対応可能とした理想状態における、軽負荷時の臨界モード動作を説明する図である。図5(A)は、入力電圧Vinを示す図であり、図5(B)は、インダクタ電流IL1を示す図である。軽負荷であるため、インダクタ電流IL1は小さい。図5(C)はスイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1を示す図であり、図5(D)は、スイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1の周期を表すスイッチング周波数fsを示す図である。
軽負荷時においてインダクタ電流IL1は小さく、スイッチング周波数も高くなる。軽負荷時においては、スイッチング周波数fsが最大スイッチング周波数fsmaxを超える最小インダクタ電流IL1min以下となる領域も増加する。
【0050】
図6は、軽負荷時での臨界モード動作を説明する図である。軽負荷でインダクタ電流IL1が小さく、スイッチング素子SWを駆動するスイッチング周波数fsが高くなり、最大スイッチング周波数fsmaxを超えた場合である。図6(A)は、インダクタ電流IL1を示す図であり、図6(B)はスイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1を示す図である。図6(C)はスイッチング素子SWのスイッチング周波数fsを示す図である。図6(D)は、力率改善回路での力率を示す図である。
インダクタ電流IL1が小さく、スイッチング周波数fsが最大スイッチング周波数fsmaxを超える最小インダクタ電流IL1min以下では、スイッチング素子SWの応答が追従できず、スイッチングが停止状態となり、ゲート電圧Vg1も印加されない。このため、インダクタ電流IL1は流れず、不連続となる。インダクタ電流IL1が不連続となる領域では、図6(D)に示した力率も低下する。さらに軽負荷で、インダクタ電流IL1が少ない時は、力率改善回路が動作しなくなり、著しく力率が低下する。
【0051】
図7は、本発明で用いる力率改善回路を示す図である。第1力率改善回路16と第2力率改善回路18を並列に接続している。力率改善回路は、インダクタ電流に対応したスイッチング周波数を所定の周波数で低周波領域と高周波領域に別け、低周波領域に対応した第1力率改善回路16と高周波領域に対応した第2力率改善回路18を備えている。低周波領域と高周波領域を分ける境界スイッチング周波数は、必ずしも第1力率改善回路16の使用可能な最大周波数である必要は無く、余裕をもった周波数設定とすることができる。
【0052】
本発明で用いる力率改善回路は、スイッチング周波数の低周波領域で第1力率改善回路16を駆動し、スイッチング周波数の高周波領域で第2力率改善回路18を駆動する。低周波領域に対応した第1力率改善回路16と高周波数に対応した第2力率改善回路18に対して、インダクタ電流に対応したスイッチング周波数の低周波領域で第1力率改善回路16を駆動し、インダクタ電流に対応したスイッチング周波数の高周波領域で第2力率改善回路18を駆動し、高周波領域での力率を改善する。
【0053】
動作モードについて説明するため、第1力率改善回路16のインダクタLに流れるインダクタ電流IL1、スイッチング素子SWのゲート電圧Vg1と、第2力率改善回路18のインダクタLに流れるインダクタ電流IL2、スイッチング素子SWのゲート電圧Vg2を次に示す。
【0054】
図8は、本発明の電源回路10による動作モードを説明する図である。スイッチング素子SWを駆動するスイッチング周波数fsに対して、低周波領域と高周波領域に別ける境界スイッチング周波数fsthを設定し、低周波領域で第1力率改善回路16を、高周波領域で第2力率改善回路18を駆動する。第1力率改善回路16と第2力率改善回路18の切り替えは、図1で示した切替制御部26で行う。
【0055】
図8(A)は入力電圧Vinを示す図である。図8(B)は、第1力率改善回路16のインダクタ電流IL1と第2力率改善回路18のインダクタ電流IL2が合成された合成インダクタ電流Iを示す図である。図8(C)はスイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1を示す図である。図8(D)はスイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg2を示す図である。図8(E)はスイッチング周波数fsを示す図であり、低周波領域と高周波領域は境界スイッチング周波数fsthで分けられる。
インダクタ電流IL1が小さく、スイッチング周波数fsが境界スイッチング周波数fsthを超える高周波領域では、第2力率改善回路18が動作し、スイッチング周波数fsが境界スイッチング周波数fsth以下の低周波領域では、第1力率改善回路16が動作している。このため、合成インダクタ電流Iは、低周波領域と高周波領域とも力率改善回路が動作するため、合成インダクタ電流Iは、不連続とならず、低周波領域と高周波領域で、力率の低下が生じない。
【0056】
本発明で用いる力率改善回路には、スイッチング周波数を求めるための電流検出素子が設けられている。電流検出素子により検出された電流は、スイッチング周波数に対応している。このため、本発明の電源回路10は、電流検出素子により検出された電流に応じて、複数の力率改善回路のいずれかの力率改善回路に切り替える切替制御部を備えている。境界スイッチング周波数は、低周波領域に対応した力率改善回路の最大使用可能な周波数を考慮して設定される。次に電流検出方法について説明する。
【0057】
図9は、第1力率改善回路16において各素子に流れる電流を説明する図である。インダクタLにはインダクタ電流IL1が、ダイオードDにはダイオード電流ID1が、スイッチング素子SWにはスイッチング素子電流ISW1が流れる。これらの合成された電流である合成入力電流Iは、合成入力電流検出部で検出される。
【0058】
図10は、第1力率改善回路16において各素子に流れる電流を示す図である。電流は、スイッチング素子SWのオン/オフに同期して制御される。図10(A)は、スイッチング素子SWのゲートに印加されるゲート電圧Vg1を示す図である。図10(B)は、インダクタ電流IL1を示す図である。図10(C)はダイオード電流ID1を示す図である。ダイオード電流ID1は、ゲート電圧Vg1がオフのときに、平滑コンデンサ24に電荷を蓄積するために流れる電流である。図10(D)はスイッチング素子電流ISW1を示す図である。
【0059】
スイッチング素子電流ISW1は、ゲート電圧Vg1がオンのときに、インダクタLに蓄えらえたエネルギーを放出するために流れる電流である。スイッチング素子SWは、オフ期間にはダイオードDにインダクタ電流IL1を流し、オン期間には、インダクタ電流IL1をスイッチング素子SWに流す制御を行う。これらの合成された合成入力電流Iの検出は合成入力電流検出部(図9参照。)で検出される。
【0060】
電流は、合成入力電流平均値として求められ、合成入力電流検出部に電流検出抵抗を挿入して電圧を測定し、電圧から求める方法がある。力率改善回路には、インダクタ電流IL1、ダイオード電流ID1又はスイッチング素子電流ISW1が流れるが、これらの合成された電流は、合成入力電流Iを検出し合成入力電流平均値として求められる。合成入力電流Iは、合成入力電流検出部で検出される。合成入力電流Iを検出するために電流検出抵抗が設けられている。電流検出抵抗は、合成入力電流検出部の配線に直列接続で挿入される。
【0061】
力率改善回路には、合成入力電流Iを検出するために、ロゴスキーコイルが設けられていてもよい。電流検出抵抗を挿入する方法は、電流検出抵抗での損失が避けられないが、損失のない電流検出には、ロゴスキーコイルを用いる。
【0062】
図11は、ロゴスキーコイルの原理を説明する図である。ロゴスキーコイル30は、円環状の進みコイル32と、その終端の線を進みコイル32の中心を通して折り返した戻しコイル34とを有している。近接した位置に端子を設けて、進みコイル52の巻き始めと折り返した戻しコイル34の終端を接続している。ロゴスキーコイル30は、進みコイル32の内部に戻しコイル34が入る構造である。被測定物である導体36は、進みコイル32が巻かれている円環の中心部を貫通している。この導体36に電流Iが流れることにより磁界が発生し、円環状の進みコイル32を貫通する磁界の変化により、進みコイル32に電圧が誘起され、この誘起されたロゴスキーコイル誘起電圧VRCを積分器38に供給することにより、ロゴスキーコイル電流Iを求める。
【0063】
ロゴスキーコイル誘起電圧VRCは、次式で求められる。

RC=μNS(dI/dt) ・・・(4)
RC:ロゴスキーコイル誘起電圧
μ:透磁率
N:単位巻数
S:コイル断面積(進みコイル)
:コイル電流
t:時間
【0064】
ロゴスキーコイル誘起電圧VRCは、ロゴスキーコイル30に流れるロゴスキーコイル電流Iの時間微分となるため、積分器38を通すことで、ロゴスキーコイル電流Iに比例した信号が得られる。ロゴスキーコイル誘起電圧VRCは、単位巻数Nとコイルの断面積Sの積に比例するから、巻数を多くして断面積を広くするほどロゴスキーコイル誘起電圧VRCは高くなる。
【0065】
ロゴスキーコイル30の外側に配置される導電線等により外部磁界が発生した場合に、進みコイル32の出力と戻しコイル34の出力が打ち消し合うようにする必要がある。
【0066】
図12は、ロゴスキーコイル30の実施形態である矩形ロゴスキーコイル40を示す図である。図12(A)は平面図、図12(B)は、平面図のX-Y断面図である。進みコイル32の断面は矩形状であり、戻しコイル34は、矩形状の進みコイル32の終端部から折り返され、進みコイル32の中心部を迂回している。進みコイル32及び戻しコイル34は、導電性の材料で作製される。進みコイル32の端部には進みコイル電極42-1があり、戻しコイル34の端部には戻しコイル電極42-2がある。進みコイル32は、平板状の上面パターン44を平行に並べ、一方の端部を側面パターン48-1で下方に延し、隣接する上面パターン44の他方の端部は、側面パターン48-2で底面パターン46に接続されている。底面パターン46は、側面パターン48-1と側面パターン48-2を接続している。図12(A)に示した矩形ロゴスキーコイル40は、進みコイル32が中心部を円形状に囲んだ形状となっているが、中心部を矩形状に囲んだ形状、又は、多角形状に囲んだ形状でもよい。
【0067】
図13は、進みコイル32の1つの巻回ユニットを説明する図である。図13(A)は、平行に配置された2つの上面パターン44-1と上面パターン44-2を示す図である。図13(B)は、側面パターン48-1と側面パターン48-2を示すである。側面パターン48-1は、上面パターン44-1の一方の端部と接続される位置にあり、側面パターン48-2は、上面パターン44-1に隣接する上面パターン44-2の他方の端部と接続される位置にある。側面パターン48-1と側面パターン48-2は、複数の層を積層した構造であってもよい。図13(C)は、底面パターン46を示すである。底面パターン46は、側面パターン48-1と側面パターン48-2を接続している。
【0068】
図13(D)は、図13(A)~(C)の各パターンを積層して巻回ユニットを構成した図である。巻回ユニットは、上面パターン44-1、側面パターン48-1、底面パターン46、側面パターン48-2、及び、上面パターン44-2により導通ループを形成し、矩形状のコイルとなっている。この巻回ユニットを複数並べて矩形ロゴスキーコイル40の進みコイル32を構成している。
【0069】
ロゴスキーコイルは、導体を流れる電流を検出するため、中心部に、導体を貫通させる中空の領域が備えられているのが基本的な構造である。このため、例えばリード線を貫通させる配線構造とする必要があり、パワーモジュールやスイッチング電源に搭載するには複雑な構造となり難しかった。これに対して、パワーモジュールやスイッチング電源に搭載し易くするために、中心部に導体を設けた構造を以下に説明する。
【0070】
図14は、中心部に導体56を設けたロゴスキーコイル型電流検出素子52を説明する図である。図14(A)はロゴスキーコイル型電流検出素子52の平面図であり、図14(B)は、図14(A)のX1-Y1断面図であり、図14(C)は、図14(A)のX2-Y2断面図である。ロゴスキーコイルは、図14に示した矩形ロゴスキーコイル40を使用し、基板50上に形成されている。ロゴスキーコイル型電流検出素子52は、多層配線のプリント板技術を用いて作製することができる。
【0071】
導体36に電流を流すと、導体36の周囲に磁界が発生してロゴスキーコイル型電流検出素子52に誘起電圧が発生する。この誘起電圧を、進みコイル電極42-1と戻しコイル電極42-2から取り出し、積分器38への入力とする。
【0072】
ロゴスキーコイル型電流検出素子52は、中心部に導体36を備え、導体36の裏面を、ロゴスキーコイル型電流検出素子52の表面に設けた導体54を接続させているので、リード線等を貫通させることなく、パワーモジュール等に容易に搭載できる。
<実施例>
【0073】
図15は、本発明の電源回路10の実施例である。電源回路10は、図15に示すように、交流電圧を出力する交流電源12と、交流電源12を全波整流するブリッジ整流器14と、インダクタLとダイオードDとスイッチング素子SWからなる第1力率改善回路16と、インダクタLとダイオードDとスイッチング素子SWからなる第2力率改善回路18と、電圧を平滑化する平滑コンデンサ20とで構成されている。入力コンデンサ24はブリッジ整流器14と並列に接続されており、ブリッジ整流器14からの出力電圧のノイズを除去する。平滑コンデンサ20の出力には、負荷22が接続される。
【0074】
第1力率改善回路16ではインダクタLに補助巻線NLが、第2力率改善回路18では、インダクタLに補助巻線NLが設けられており、ゼロ電流検出を行う。
【0075】
制御部80は、電源回路部の制御を行い、切替制御部26と各種保護回路から構成されている。切替制御回路26では、臨界モード動作等の所望動作で駆動する制御、第1力率改善回路16と第2力率回路18の切替制御を行う。切替制御回路26は、ゼロクロス検出部96、電流検出部82、電流比較部84、ゲート駆動部86及び力率改善回路制御部88から構成されている。臨界モード動作においては、ゼロクロス検出部96は、第1力率改善回路16の駆動時には、インダクタLに設けられた補助巻線NLの出力から、インダクタLの端子間電圧を検出し、第2力率改善回路18の駆動時には、インダクタLに設けられた補助巻線NLの出力から、インダクタLの端子間電圧を検出する。端子間電圧の検出は、ゼロクロス検出部96で行い、力率改善回路制御部88でゲート駆動部86を制御する。端子間の検出電圧がゼロのときにスイッチング素子SW又はスイッチング素子SWのゲートに電圧を印加するが、ノイズの影響を抑えるために、ヒステリシスを持たせて、遅延させてもよい。
【0076】
制御部80は、切替制御部26の他、過電圧保護回路部90、過電流保護回路部92、過熱保護回路部94等があり、電源回路を保護している。過電圧保護回路部90は、例えば平滑コンデンサ20に接続されて出力電圧を監視している。過電流保護回路92は、ロゴスキーコイル型電流検出素子52からの信号を監視してもよい。
【0077】
本発明の電源回路10の動作モードは、第1力率改善回路16と第2力率改善回路18が、境界スイッチング周波数で切り替えられている。この制御は、スイッチング周波数に対応した力率改善回路の合成入力電流Iを検出して行う。図15に示した電源回路では、第1力率改善回路16と第2力率改善回路18の合成入力電流Iを共通アース線で検出するため、共通アース線にロゴスキーコイル型電流検出素子52を直列接続して、電流検出をしている。このため、電流検出部82には、積分器38が組み込まれており、誘起電圧から電流を検出している。
【0078】
ロゴスキーコイル型電流検出素子52によって検出された合成入力電流Iは、スイッチング周波数fsに対応するから、電流比較部84で、第1力率改善回路16で使用する周波数の最大値である境界スイッチング周波数fsthに対応する電流値が、境界スイッチング周波数fsthに対応数する基準電流I以下か超えているかを比較し、得られた比較信号を力率改善回路制御部88に送る。力率改善回路制御部88では、この比較信号をもとに、動作モードに従い、ゲート駆動部86を介してスイッチング素子SWとスイッチング素子SWの駆動を制御する。
【0079】
図16は、ロゴスキーコイル型電流検出素子52によって検出された検出電流と、電流比較部出力を示す図である。図16(A)は、ロゴスキーコイル型電流検出素子52によって検出された検出電流を示す図であり、図16(B)は、電流比較部84からの電流比較部出力を示す図である。電流比較部84では、ロゴスキーコイル型電流検出素子52によって検出された検出電流と基準電流Iを比較し、基準電流I以上の場合はオン信号を出力する。従って、電流比較部出力がオン信号のときは、低周波領域であり第1力率改善回路が駆動される。電流比較部出力がオフ信号のときは、高周波領域であり第2力率改善回路が駆動される。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0081】
L、L1、 インダクタ
D、D、D ダイオード
SW、SW、SW スイッチング素子
in 入力電圧
合成入力電流
L1、IL1インダクタ電流
g1、Vg2 ゲート電圧
fs スイッチング周波数
fsmax 最大スイッチング周波数
L1min 最小インダクタ電流
out 出力電圧
fsth 境界スイッチング周波数
D1 ダイオード電流
SW1 スイッチング素子電流
合成入力電流
RC ロゴスキーコイル電流
基準電流
10 電源回路
12 交流電源
14 ブリッジ整流器
16 第1力率改善回路
18 第2力率改善回路
20 平滑コンデンサ
22 負荷
24 入力コンデンサ
26 切替制御部
30 ロゴスキーコイル
32 進みコイル
34 戻しコイル
36 導体
38 積分器
40 矩形ロゴスキーコイル
42-1 進みコイル電極
42-2 戻しコイル電極
44,44-1,44-2 上面パターン
46 底面パターン
48-1、48-2 側面パターン
50 基板
52 ロゴスキーコイル型電流検出素子
80 制御部
82 電流検出部
84 電流比較部
86 ゲート駆動部
88 力率改善回路制御部
90 過電圧保護回路部
92 過電流保護回路部
94 過熱保護回路部
96 ゼロクロス検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16