(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】半導体リレー素子及び半導体リレーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20220824BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20220824BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20220824BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/80 H
H01L29/80 L
H03K17/687 G
(21)【出願番号】P 2018197940
(22)【出願日】2018-10-19
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】仙田 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輔
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-153748(JP,A)
【文献】特開2015-065213(JP,A)
【文献】特開2015-060991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H03K 17/00
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性領域は、
基板上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上に積層された窒化物半導体からなる電子走行層と、
前記電子走行層上に積層されている、前記電子走行層を形成する窒化物半導体よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体からなる電子供給層と、
が順に積層されて構成され
前記活性領域の前記電子供給層の表面上に、
第1ドレイン電極と、
第1ゲート電極と、
第1ソース電極と、
第2ソース電極と、
第2ゲート電極と、
第2ドレイン電極と、
が平面的に順に配置され、
前記第1ソース電極と前記第2ソース電極は、共通ソース電極で共有されていること
、及び、
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は、前記共通ソース電極を囲んでゲート配線パターンで接続されていること、
を特徴とする半導体リレー素子。
【請求項2】
前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域にメインソース電極を備え、前記メインソース電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、
前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極が、複数の前記共通ソース電極の両側に配置され、前記不活性領域でゲート配線パターンにより複数の前記共通ソース電極を囲んで直列に接続されていること、
前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、
前記不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、
前記メイン第1ドレイン電極と前記メイン第2ドレイン電極は、前記メインソース電極に対して前記活性領域を挟んで逆側に配置され、フィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極は、複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極の間に、交互に配置されていること、
を特徴とする請求項
1に記載の半導体リレー素子。
【請求項3】
前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域にメインソース電極を備え、前記メインソース電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、
複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極は、前記メインソース電極及びフィンガー状の前記共通ソース電極に沿って配置され、フィンガー状の前記共通ソース電極を囲む複数の前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極が、前記不活性領域において直列に接続されたゲート配線パターン部分と、直列に接続された前記ゲート配線パターンから、フィンガー状に前記共通ソース電極に沿って並列に配置された前記ゲート配線パターンとを備えていること、
前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、
前記不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、
前記メイン第1ドレイン電極と前記メイン第2ドレイン電極は、前記活性領域を挟んで逆側に配置されて、フィンガー状の前記第1ドレイン電極とフィンガー状の前記第2ドレイン電極は、フィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極の間に、交互に配置されていること、
を特徴とする請求項
1に記載の半導体リレー素子。
【請求項4】
前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域にメインソース電極を備え、前記メインソース電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、
前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極が、前記共通ソース電極の両側に配置され、前記不活性領域において前記ゲート配線パターンにより複数の前記共通ソース電極を囲んで直列に接続されていること、
前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、
前記不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、
前記メイン第1ドレイン電極は、活性領域を挟んで、前記メインソース電極と前記メイン第2ドレイン電極の逆側に配置され、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極は、フィンガー状の複数の第1ゲート電極とフィンガー状の複数の第2ゲート電極の間に、交互に配置されていること、
を特徴とする請求項
1に記載の半導体リレー素子。
【請求項5】
前記活性領域
にメインソース電極を備え、前記共通ソース電極は、前記メインソース電極から、前記活性領域を貫いて配置され、前記共通ソース電極の一方の側に前記メインソース電極からフィンガー状の複数の第1ソース電極を配置し、前記共通ソース電極の他方の側に前記メインソース電極からフィンガー状の複数の第2ソース電極を配置していること、
前記共通ソース電極の両側に配置される前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性層領域において電気的に接続されていること、
前記共通ソース電極の一方の側に配置される前記第1ゲート電極は、フィンガー状の複数の前記第1ソース電極を囲んで前記メインソース電極に沿って配置されていること、
前記共通ソース電極の他方の側に配置される前記第2ゲート電極は、フィンガー状の複数の前記第2ソース電極を囲んで前記メインソース電極に沿って配置されていること、
前記活性領域の前記メインソース電極と逆側にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極からフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有し、複数の前記第1ドレイン電極は、前記第1ゲート電極に沿って配置されていること、及び、
前記活性領域の前記メインソース電極と逆側にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極からフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有し、複数の前記第2ドレイン電極は、前記第2ゲート電極に沿って配置されていること、
を特徴とする請求項
1に記載の半導体リレー素子。
【請求項6】
前記活性領域を貫い
てメインソース電極を兼ねた前記共通ソース電極を備えていること、
前記活性領域には、前記共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の前記第1ソース電極を備えていること、
前記活性領域には、前記共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の前記第2ソース電極を備えていること、
前記第1ゲート電極は、前記第1ソース電極を囲み、さらに前記共通ソース電極に沿って配置されていること、
前記第2ゲート電極は、前記第2ソース電極を囲み、さらに前記共通ソース電極に沿って配置されていること、
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は、前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域において直列に接続されていること、
前記活性領域に、メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第1ドレイン電極で前記第1ゲート電極を囲んで配置されていること、及び、
前記活性領域に、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第2ドレイン電極で前記第2ゲート電極を囲んで配置されていること、
を特徴とする請求項
1に記載の半導体リレー素子。
【請求項7】
前記活性領域を貫い
てメインソース電極を兼ねた前記共通ソース電極を備えていること、
前記活性領域には、前記共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の複数の前記第1ソース電極を備えていること、
前記活性領域には、前記共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の複数の前記第2ソース電極を備えていること、
複数の前記第1ゲート電極は、複数の前記第1ソース電極を囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、
複数の前記第2ゲート電極は、複数の前記第2ソース電極
を囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、
複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極は、前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域において直列に接続されていること、
前記活性領域に、メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極で複数の前記第1ゲート電極を囲んで配置されていること、及び、
前記活性領域に
、メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極で複数の前記第2ゲート電極を囲んで配置されていること、
を特徴とする請求項
1に記載の半導体リレー素子。
【請求項8】
前記バッファ層上に積層された窒化物半導体からなる前記電子走行層は、GaN(ガリウム・ナイトライド)で形成され、
前記電子走行層上に形成された前記電子供給層は、前記電子走行層の前記GaNとバンドギャップエネルギーが異なるAl
xGa
1-xN(0.01≦x≦0.4)で形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の半導体リレー素子。
【請求項9】
第1ドレイン電極と第1ゲート電極と共通ソース電極で構成される第1GaN-HEMTと、第2ドレイン電極と第2ゲート電極と共通ソース電極で構成される第2GaN-HEMTは、ノーマリーオフとなるエンハンス型であること、
を特徴とする請求項1に記載の半導体リレー素子。
【請求項10】
前記電子供給層上には、更に保護膜が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の半導体リレー素子。
【請求項11】
電子走行層及
び電子供給層を含む第1活性領域と、
前記電子走行層及び前記電子供給層を含む第2活性領域と、
前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域と、
を備え、
前記第1活性領域には、前記電子供給層上に、
第1ドレイン電極と、
第1ゲート電極と、
第1ソース電極
と第2ソース電極を共有した共通ソース電極と、
第2ゲート電極と、
第2ドレイン電極と、
が順に配置され、
前記第2活性領域には、前記電子供給層上に、
第3ドレイン電極と、
第3ゲート電極と、
第3ソース電極と、
が順に配置されていること、
を特徴とする半導体リレー素子。
【請求項12】
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極と前記第3ドレイン電極が接続され、前記共通ソース電極と前記第3ソース電極が接続されていること、
を特徴とする請求項
11に記載の半導体リレー素子。
【請求項13】
前記第1活性領域には、前記電子供給層上に、
メインソース電極から前記第1活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、
前記第1活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極が、複数の前記共通ソース電極の両側に配置され、前記不活性領域でゲート配線パターンにより複数の前記共通ソース電極を囲んで直列に接続されていること、
前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から前記第1活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、
前記第1不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、
前記メイン第1ドレイン電極と前記メイン第2ドレイン電極は、前記メインソース電極に対して前記活性領域を挟んで逆側に配置され、フィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極は、複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極の間に、交互に配置されていること、
を特徴とする請求項
11に記載の半導体リレー素子。
【請求項14】
前記第1活性領域には、前記電子供給層上に、
前記第1活性領域を貫い
てメインソース電極を兼ねた前記共通ソース電極を備えていること、
前記第1活性領域には、前記共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の複数
の第1ソース電極を備えていること、
前記第1活性領域には、前記共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の複数
の第2ソース電極を備えていること、
複数の前記第1ゲート電極は、複数の前記第1ソース電極を囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、
複数の前記第2ゲート電極は、複数の前記第2ソース電極
を囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、
直列に接続された複数の前記第1ゲート電極と直列に接続された複数の前記第2ゲート電極は、前記不活性領域において直列に接続されていること、
前記第1活性領域に、メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極で複数の前記第1ゲート電極を囲んで配置されていること、及び、
前記第1活性領域に
、メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極で複数の前記第2ゲート電極を囲んで配置されていること、
を特徴とする請求項
11に記載の半導体リレー素子。
【請求項15】
前記第1ドレイン電極と前記第1ゲート電極と前記ソース電極で構成される第1半導体スイッチと、前記第2ドレイン電極と前記第2ゲート電極と前記ソース電極で構成される第2半導体スイッチは、ノーマリーオフとなるエンハンス型であること、及び、
前記第3ドレイン電極と前記第3ゲート電極と前記第3ソース電極で構成される第3半導体スイッチは、ノーマリーオンとなるデプレッション型であること、
を特徴とする請求項
11に記載の半導体リレー素子。
【請求項16】
請求項1に記載の半導体リレー素子と、
前記半導体リレー素子の開閉を制御する制御回路と、
を備えていることを特徴とする半導体リレーモジュール。
【請求項17】
請求項1に記載の半導体リレー素子と、
前記半導体リレー素子の充放電回路と、
前記半導体リレー素子の開閉を制御する発振回路と、
を備えていることを特徴とする半導体リレーモジュール。
【請求項18】
請求項
11記載の半導体リレー素子と、
抵抗又はダイオードのディスクリート素子と、
前記半導体リレー素子の開閉を制御する発振回路と、
を備えていることを特徴とする半導体リレーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リレー素子及び半導体リレーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等に使用されている機械式のリレースイッチは、チャタリングによるサージノイズや接点の劣化といった課題だけでなく、小型化及び低コスト化が困難であるといった課題があった。このため、入力信号に応答して電気的にオン、オフする半導体リレーが注目され、近年では自動車用機器や家庭用機器の省電力化を始め、高電圧、低損失等の要求が高まっている。
【0003】
ハイブリッド自動車または電気自動車は、バッテリからの電力によって駆動される電動モータを駆動源として備え、メインバッテリに対して並列にコンデンサおよびインバータが接続されており、インバータからの電力供給によって電動モータが駆動される。また、車両の減速時には、電動モータが発生する回生電流が、インバータを介してメインバッテリを充電する。このリレーユニットとしての半導体リレーに求められる機能は、メインバッテリから電動モータに供給される電流をオン/オフする機能、および電動モータからメインバッテリに供給される回生電流(逆方向の電流)をオン/オフする機能である。このため、半導体リレーは、双方向の電流をオン/オフできる必要がある。
【0004】
最近のパワーエレクトロニクスは、パワーデバイス技術の開発により高耐圧化が進んでおり、パワーMOSFET(酸化物半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、さらには次世代デバイスとして注目されているGaN(ガリウム・ナイトライド)やSiC(シリコン・カーバイト)等の高速パワーデバイスを適用した半導体リレーが開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、出力用MOSFETをSiCMOSとして高電圧化を図っている。特許文献2では、オン抵抗の増大を抑止するため、出力用のSiCMOSやGaN-FEMTに並列的にバイパス用半導体素子(ダイオード)を備えた半導体リレーが開示されている。特許文献3では、ソース同士を接続した第1化合物半導体MOSFETおよび第2化合物半導体MOSFETと、第1化合物半導体MOSFETのドレインに接続された第1出力端子と、第2化合物半導体MOSFETのドレインに接続された第2出力端子とを含んでいる、交流スイッチ、即ち、半導体リレーが開示され、耐圧400V以上の化合物半導体MOSFETを使用している。
【0006】
特許文献4は、正負両極性の信号制御が可能な半導体リレーを2個の半導体スイッチのドレインを接続する構成で、同一基板に形成して、キャリアを半導体素子内部での移動を可能として導通損失を低減させている。
【0007】
半導体リレーのスイッチング行う充放電回路は、例えば、特許文献5に、デプレッション型のMOSFETとインピーダンス素子で構成されている充放電回路が開示されている。抵抗と比較してインピーダンスの低い半導体素子を介して半導体スイッチのゲート容量を放電することにより、スイッチングに要する時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-135081号公報
【文献】特開2011-254013号公報
【文献】特開2013-12981号公報
【文献】特開2017-028213号公報
【文献】特開2016-208235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、半導体リレーは、より小型で、高電圧、大電流での高速スイッチングが要求されている。
【0010】
従来の半導体リレーは、高電圧、大電流での高速スイッチングに対する要求に対し、パワーMOSFET(酸化物半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、GaN(ガリウム・ナイトライド)やSiC(シリコン・カーバイド)等の高速パワーデバイスのディスクリート素子を組み合わせて半導体リレー回路を構成していた。このため、リレー用に2個の高速パワー半導体スイッチと、充放電回路用のデプレッション型半導体スイッチを搭載しており、回路の小型化が課題であった。
【0011】
本発明は、この課題を解決し、小型化が可能な半導体リレー素子及び半導体リレーモジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の半導体リレー素子において、活性領域は、基板上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に積層された窒化物半導体からなる電子走行層と、前記電子走行層上に積層されている、前記電子走行層を形成する窒化物半導体よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体からなる電子供給層と、が順に積層されて構成され、前記活性領域の前記電子供給層の表面上に、第1ドレイン電極と、第1ゲート電極と、第1ソース電極と、第2ソース電極と、第2ゲート電極と、第2ドレイン電極と、が平面的に順に配置され、前記第1ソース電極と前記第2ソース電極は、共通ソース電極で共有されていることが好ましい。
【0013】
(2)本発明の半導体リレー素子において、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は、前記共通ソース電極を囲んでゲート配線パターンで接続されていることが好ましい。
【0014】
(3)本発明の半導体リレー素子は、前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域にメインソース電極を備え、前記メインソース電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極が、複数の前記共通ソース電極の両側に配置され、前記不活性領域においてゲート配線パターンにより複数の前記共通ソース電極を囲んで直列に接続されていること、前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、前記不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、前記メイン第1ドレイン電極と前記メイン第2ドレイン電極は、前記メインソース電極に対して前記活性領域を挟んで逆側に配置され、フィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極は、複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極の間に、交互に配置されていることが好ましい。
【0015】
(4)本発明の半導体リレー素子は、前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域にメインソース電極を備え、前記メインソース電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極は、前記メインソース電極及びフィンガー状の前記共通ソース電極に沿って配置され、フィンガー状の前記共通ソース電極を囲む複数の前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極が、前記不活性領域において直列に接続されたゲート配線パターン部分と、直列に接続された前記ゲート配線パターンから、フィンガー状に前記共通ソース電極に沿って並列に配置された前記ゲート配線パターンと、を備えていること、前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、前記不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、前記メイン第1ドレイン電極と前記メイン第2ドレイン電極は、前記活性領域を挟んで逆側に配置されて、フィンガー状の前記第1ドレイン電極とフィンガー状の前記第2ドレイン電極は、フィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極の間に、交互に配置されていることが好ましい。
【0016】
(5)本発明の半導体リレー素子は、前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域にメインソース電極を備え、前記メインソース電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極が、前記共通ソース電極の両側に配置され、前記不活性領域において前記ゲート配線パターンにより複数の前記共通ソース電極を囲んで直列に接続されていること、前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、前記不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、前記メイン第1ドレイン電極は、活性領域を挟んで、前記メインソース電極と前記メイン第2ドレイン電極の逆側に配置され、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極は、フィンガー状の複数の第1ゲート電極とフィンガー状の複数の第2ゲート電極の間に、交互に配置されていることが好ましい。
【0017】
(6)本発明の半導体リレー素子は、前記活性領域に前記メインソース電極を備え、前記共通ソース電極は、前記メインソース電極から、前記活性領域を貫いて配置され、前記共通ソース電極の一方の側に前記メインソース電極からフィンガー状の複数の第1ソース電極を配置し、前記共通ソース電極の他方の側に前記メインソース電極からフィンガー状の複数の第2ソース電極を配置していること、前記共通ソース電極の両側に配置される前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性層領域において電気的に接続されていること、前記共通ソース電極の一方の側に配置される前記第1ゲート電極は、フィンガー状の複数の前記第1ソース電極を囲んで前記メインソース電極に沿って配置されていること、前記共通ソース電極の他方の側に配置される前記第2ゲート電極は、フィンガー状の複数の前記第2ソース電極を囲んで前記メインソース電極に沿って配置されていること、前記活性領域の前記メインソース電極と逆側にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極からフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有し、複数の前記第1ドレイン電極は、前記第1ゲート電極に沿って配置されていること、及び、前記活性領域の前記メインソース電極と逆側にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極からフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有し、複数の前記第2ドレイン電極は、前記第2ゲート電極に沿って配置されていることが好ましい。
【0018】
(7)本発明の半導体リレー素子は、前記活性領域を貫いて前記メインソース電極を兼ねた前記共通ソース電極を備えていること、前記活性領域には、前記共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の前記第1ソース電極を備えていること、前記活性領域には、前記共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の前記第2ソース電極を備えていること、前記第1ゲート電極は、前記第1ソース電極を囲み、さらに前記共通ソース電極に沿って配置されていること、前記第2ゲート電極は、前記第2ソース電極を囲み、さらに前記共通ソース電極に沿って配置されていること、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は、前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域において直列に接続されていること、前記活性領域に、メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第1ドレイン電極で前記第1ゲート電極を囲んで配置されていること、及び、前記活性領域に、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の2個の前記第2ドレイン電極で前記第2ゲート電極を囲んで配置されていることが好ましい。
【0019】
(8)本発明の半導体リレー素子は、前記活性領域を貫いて前記メインソース電極を兼ねた前記共通ソース電極を備えていること、前記活性領域には、前記共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の複数の前記第1ソース電極を備えていること、前記活性領域には、前記共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の複数の前記第2ソース電極を備えていること、複数の前記第1ゲート電極は、複数の前記第1ソース電極を囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、複数の前記第2ゲート電極は、複数の前記第2ソース電極囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極は、前記電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域において直列に接続されていること、前記活性領域に、メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極で複数の前記第1ゲート電極を囲んで配置されていること、及び、前記活性領域に、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極で複数の前記第2ゲート電極を囲んで配置されていることが好ましい。
【0020】
(9)本発明の半導体リレー素子は、前記バッファ層上に積層された窒化物半導体からなる前記電子走行層は、GaN(ガリウム・ナイトライド)で形成され、前記電子走行層上に形成された前記電子供給層は、前記電子走行層の前記GaNとバンドギャップエネルギーが異なるAlxGa1-xN(0.01≦x≦0.4)で形成されていることが好ましい。
【0021】
(10)本発明の半導体リレー素子は、第1ドレイン電極と第1ゲート電極と共通ソース電極で構成される第1GaN-HEMTと、第2ドレイン電極と第2ゲート電極と共通ソース電極で構成される第2GaN-HEMTは、ノーマリーオフとなるエンハンス型であることが好ましい。
【0022】
(11)本発明の半導体リレー素子は、前記電子供給層上には、更に保護膜が形成されていることが好ましい。
【0023】
(12)本発明の半導体リレー素子は、電子走行層及び前記電子供給層を含む第1活性領域と、電子走行層及び前記電子供給層を含む第2活性領域と、電子走行層及び前記電子供給層を含まない不活性領域と、を備え、前記第1活性領域には、前記電子供給層上に、第1ドレイン電極と、第1ゲート電極と、前記第1ソース電極と前記第2ソース電極を共有した共通ソース電極と、第2ゲート電極と、第2ドレイン電極と、が順に配置され、前記第2活性領域には、前記電子供給層上に、第3ドレイン電極と、第3ゲート電極と、第3ソース電極と、が順に配置されていることが好ましい。
【0024】
(13)本発明の半導体リレー素子は、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極と前記第3ドレイン電極が接続され、前記共通ソース電極と前記第3ソース電極が接続されていることが好ましい。
【0025】
(14)本発明の半導体リレー素子は、前記第1活性領域には、前記電子供給層上に、
前記メインソース電極から前記第1活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記共通ソース電極を有していること、前記第1活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ゲート電極とフィンガー状の複数の前記第2ゲート電極が、複数の前記共通ソース電極の両側に配置され、前記不活性領域においてゲート配線パターンにより複数の前記共通ソース電極を囲んで直列に接続されていること、前記不活性領域にメイン第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極から前記第1活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を有していること、前記第1不活性領域にメイン第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極から前記活性領域を貫くフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を有していること、及び、前記メイン第1ドレイン電極と前記メイン第2ドレイン電極は、前記メインソース電極に対して前記活性領域を挟んで逆側に配置され、フィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極は、複数の前記第1ゲート電極と複数の前記第2ゲート電極の間に、交互に配置されていることが好ましい。
【0026】
(15)本発明の半導体リレー素子は、前記第1活性領域には、前記電子供給層上に、
前記第1活性領域を貫いて前記メインソース電極を兼ねた前記共通ソース電極を備えていること、前記第1活性領域には、前記共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の複数の前記第1ソース電極を備えていること、前記第1活性領域には、前記共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の複数の前記第2ソース電極を備えていること、複数の前記第1ゲート電極は、複数の前記第1ソース電極を囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、複数の前記第2ゲート電極は、複数の前記第2ソース電極囲んで前記共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されていること、直列に接続された複数の前記第1ゲート電極と直列に接続された複数の前記第2ゲート電極は、前記不活性領域において直列に接続されていること、前記第1活性領域に、メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極を備え、前記メイン第1ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第1ドレイン電極で複数の前記第1ゲート電極を囲んで配置されていること、及び、前記第1活性領域に、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極を備え、前記メイン第2ドレイン電極とフィンガー状の複数の前記第2ドレイン電極で複数の前記第2ゲート電極を囲んで配置されていることが好ましい。
【0027】
(16)本発明の半導体リレー素子は、前記第1ドレイン電極と前記第1ゲート電極と前記ソース電極で構成される第1半導体スイッチと、前記第2ドレイン電極と前記第2ゲート電極と前記ソース電極で構成される第2半導体スイッチは、ノーマリーオフとなるエンハンス型であること、及び、前記第3ドレイン電極と前記第3ゲート電極と前記第3ソース電極で構成される第3半導体スイッチは、ノーマリーオンとなるデプレッション型であることが好ましい。
【0028】
(17)本発明の半導体リレーモジュールは、本発明の上記(1)に記載の半導体リレー素子と、前記半導体リレー素子の開閉を制御する制御回路と、を備えていることが好ましい。
【0029】
(18)本発明の半導体リレーモジュールは、本発明の上記(1)に記載の半導体リレー素子と、前記半導体リレー素子の充放電回路と、前記半導体リレー素子の開閉を制御する発振回路と、を備えていることが好ましい。
【0030】
(19)本発明の半導体リレーモジュールは、本発明の上記(12)に記載の半導体リレー素子と、抵抗又はダイオードのディスクリート素子と、前記半導体リレー素子の開閉を制御する発振回路と、を備えていることが好ましい。
【0031】
第1活性領域に第1半導体スイッチと第2半導体スイッチが配置され、第2活性領域には、第3半導体スイッチが配置されている。第3半導体スイッチは、半導体リレーのゲート電極に印加される信号の充放電回路に使用され、半導体リレー素子と同じチップ内に存在させている。
【発明の効果】
【0032】
(1)本発明の半導体リレー素子の基本ユニットは、基板上に形成されたバッファ層と、バッファ層上に積層された窒化物半導体からなる電子走行層と、電子走行層上に積層されている、電子走行層を形成する窒化物半導体よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体からなる電子供給層と、からなる活性領域と、活性領域の電子供給層上に、第1ドレイン電極と、第1ゲート電極と、第1ソース電極と、第2ソース電極と、第2ゲート電極と、第2ドレイン電極と、が順に配置されていること、第1ソース電極と第2ソース電極は、共通ソース電極で共有されている。
【0033】
半導体リレーの第1半導体スイッチ領域及び第2半導体スイッチ領域のキャリアが半導体素子内部を相互に移動可能となり、個別チップの半導体スイッチを直列接続した場合に比べ、導通損失を低減させることができる。さらに、同一活性領域に2つの半導体スイッチを逆直列接続で形成でき、小型化が図れる。
【0034】
本発明の半導体リレー素子によれば、第1半導体スイッチ領域及び第2半導体スイッチ領域は、同一基板上に互いに隣接して形成されているため、製造上、第1半導体スイッチ領域及び第2半導体スイッチ領域のオン閾値分布が近似した値となり、安定した駆動が可能となる。
【0035】
(2)本発明の半導体リレー素子においては、第1ゲート電極と第2ゲート電極は共有され、共有された共通ソース電極を囲んでゲート配線パターンで電気的に接続されている。このため、第1ゲート電極と第2ゲート電極とを容易かつ確実に同電位にすることができ、外部でゲート同士を接続する必要が無いため回路を小型化できる。
【0036】
(3)本発明の半導体リレー素子は、電子走行層及び電子供給層を含む活性領域に、複数の共通ソース電極と、複数の共通ソース電極を囲むゲート配線パターンを直列に接続して第1ゲート電極と第2ゲート電極を形成し、第1ゲート電極と第2ゲート電極の間に第1ドレイン電極と第2ドレイン電極を交互に配置した構造である。メイン第1ドレインとメイン第2電極は、活性領域を挟んでメインソース電極と反対側に配置している。半導体リレーの基本ユニットを、並列に複数個並べて集積化する場合の構造である。
【0037】
本発明の半導体リレー素子によれば、電極パターンの交差は、一方の配線をビアホール等で、他の層に配線して交差を避ける必要があるため、少ない方がよく、本電極パターンの配置により、電極同士の交差をメイン第1ドレイン電極と複数の第2ドレイン電極だけにすることができる。
【0038】
(4)本発明の半導体リレー素子は、電子走行層及び電子供給層を含む活性領域に、複数の共通ソース電極と、共通ソース電極を囲むゲート配線パターンを直列接続及び平列接続を併用して第1ゲート電極と第2ゲート電極を形成し、第1ゲート電極と第2ゲート電極の間に第1ドレイン電極と第2ドレイン電極を交互に配置した構造である。メイン第2ドレイン電極は、活性領域を挟んでメインソース電極とメイン第1ドレインと反対が配置している。このため、本電極パターンの配置により、電極同士の交差を第1ドレイン電極とメインソース電極だけにすることができる。
【0039】
(5)本発明の半導体リレー素子は、電子走行層及び電子供給層を含む活性領域に、複数の共通ソース電極と、共通ソース電極を囲むゲート配線パターンを直列に接続して第1ゲート電極と第2ゲート電極を形成し、第1ゲート電極と第2ゲート電極の間に第1ドレイン電極と第2ドレイン電極を交互に配置した構造である。メイン第1ドレイン電極は、活性領域を挟んで、メインソース電極とメイン第2ドレイン電極の逆側に配置され、フィンガー状の第1ドレイン電極とフィンガー状の第2ドレイン電極は、フィンガー状の第1ゲート電極とフィンガー状の第2ゲート電極の間に、交互に配置されている。
【0040】
この電極パターン配置では、第2ドレイン電極はメインソース電極とゲート配線パターン2つの配線と交差する。この場合、メインソース電極とゲート配線パターンの2つの配線を跨いで他の層に配線し、ビアホールで接続する構造とすることができる。
【0041】
(6)本発明の半導体リレー素子においては、活性領域にメインソース電極を備え、共通ソース電極は、メインソース電極から、活性領域を貫いて配置され、共通ソース電極の一方の側にメインソース電極からフィンガー状の複数の第1ソース電極を配置し、共通ソース電極の他方の側にメインソース電極からフィンガー状の複数の第2ソース電極を配置している。共通ソース電極の両側に配置される第1ゲート電極と第2ゲート電極は、不活性層領域で電気的に接続されている。共通ソース電極の一方の側に配置される第1ゲート電極は、フィンガー状の複数の第1ソース電極を囲んでメインソース電極に沿って配置され、共通ソース電極の他方の側に配置される第2ゲート電極は、フィンガー状の複数の第2ソース電極を囲んでメインソース電極に沿って配置されている。
【0042】
この電極パターンの配置により、第1ドレイン電極と第2ドレイン電極は、共通ソース電極を挟んで横方向に分離することができ、それぞれの電極パターンが交差すること無く、平面的に配置できる。
【0043】
(7)本発明の半導体リレー素子は、活性領域を貫いてメインソース電極を兼ねた共通ソース電極を備えている。活性領域には、共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の第1ソース電極を備え、共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の第2ソース電極を備えている。第1ゲート電極は、第1ソース電極囲んで共通ソース電極に沿って配置され、第2ゲート電極は、第2ソース電極囲んで共通ソース電極に沿って配置されている。
【0044】
この電極パターンの配置により、第1ドレイン電極と第2ドレイン電極は、共通ソース電極を挟んで縦方向に分離することができ、それぞれの電極パターンが交差すること無く、平面的に配置できる。
【0045】
(8)本発明の半導体リレー素子は、活性領域を貫いてメインソース電極を兼ねた共通ソース電極を備えている。活性領域には、共通ソース電極の一方の側にフィンガー状の複数の第1ソース電極を備え、共通ソース電極の他方の側にフィンガー状の複数の第2ソース電極を備えている。第1ゲート電極は、第1ソース電極囲んで共通ソース電極に沿って配置され直列に接続され、第2ゲート電極は、第2ソース電極囲んで共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されて、第1ゲート電極と第1ゲート電極は、不活性領域において直列に接続されている。
【0046】
この電極パターンの配置により、複数の第1ドレイン電極とフック数の第2ドレイン電極は、共通ソース電極を挟んで縦方向に分離することができ、それぞれの電極パターンが交差すること無く、平面的に配置できる。
【0047】
(9)本発明の半導体リレー素子においては、バッファ層上に積層された窒化物半導体からなる電子走行層は、GaN(ガリウム・ナイトライド)で形成され、電子走行層上に形成された電子供給層は、バンドギャップエネルギーが異なるAlxGa1-xN(0.01≦x≦0.4)で形成されている。このGaN-HEMTは横型構造であり、本発明の半導体リレーに好適である。
【0048】
(10)本発明の半導体リレー素子においては、第1ドレイン電極と第1ゲート電極と共通ソース電極で構成される第1GaN-HEMTと、第2ドレイン電極と第2ゲート電極と共通ソース電極で構成される第2GaN-HEMTは、ノーマリーオフとなるエンハンスメント型である。ゲートとソース間電位を0とすることによりノーマリーオフとなるため、半導体スイッチに好適である。
【0049】
(11)本発明の半導体リレー素子は、電子供給層上には、更に保護膜が形成されている。GaN-HEMTは、半導体表面における不純物準位および界面準位、あるいはこれらの準位密度に関係して、高バイアス印加後に高抵抗(Ron増大)となる電流コラプス現象が存在する。保護膜は、逆方向リーク電流を抑制することができる。
【0050】
(12)本発明の半導体リレー素子は、電子走行層及び電子供給層を含む第1活性領域と、電子走行層及び電子供給層を含む第2活性領域と、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域とを備えている。第1活性領域には、電子供給層上に、第1ドレイン電極と、第1ゲート電極と、第1ソース電極と第2ソース電極を共有した共通ソース電極と、第2ゲート電極と、第2ドレイン電極とが順に配置され、第2活性領域には、電子供給層上に、第3ドレイン電極と、第3ゲート電極と、第3ソース電極とが順に配置されている。
【0051】
第1活性領域に第1半導体スイッチと第2半導体スイッチが配置され、第2活性領域には、第3半導体スイッチが配置されている。第3半導体スイッチは、半導体リレーのゲート電極に印加される信号の充放電回路に使用され、半導体リレー素子と同じチップ内に存在させている。このため、第3半導体スイッチは、半導体リレーをオン・オフする充放電回路の半導体スイッチとして利用でき、さらなる小型化が実現できる。
【0052】
(13)本発明の半導体リレー素子においては、第3半導体スイッチの第3ドレイン電極は、半導体リレーの第1ゲート電極と第2ゲート電極と接続され、第3半導体スイッチの第3ソース電極は、半導体リレーの共通ソース電極と第3ソース電極が接続されている。第3半導体スイッチを充放電回路用として使用する場合は、第3ゲート電極と第3ソース電極に抵抗やダイオード等のディスクリート素子を接続すればよい。このため、半導体リレー素子は充放電回路を含めて、さらに小型化が可能である。
【0053】
(14)本発明の半導体リレー素子は、電子走行層及び電子供給層を含む第1活性領域と、電子走行層及び電子供給層を含む第2活性領域とを備えている。第1活性領域には、第1ゲート電極と第2ゲート電極により囲まれた共通ソース電極が複数存在し、第1ゲート電極と第2ゲート電極間に、第1ドレイン電極と第2ドレイン電極が交互に配置されて、横方向に複数の半導体リレーを形成している。第2活性領域には、第3半導体スイッチが形成されている。このため、この第3半導体スイッチは、複数の半導体リレーに共通の充放電回路として利用できる。
【0054】
(15)本発明の半導体リレー素子は、電子走行層及び電子供給層を含む第1活性領域と、電子走行層及び電子供給層を含む第2活性領域と、を備えている。第1活性領域には、メインソース電極から一方の側に複数の第1ソース電極が、他方の側に複数の第2ソース電極を備えている。複数の第1ソース電極は第1ゲート電極で囲まれ、複数の第2ソース電極は第2ゲート電極で囲まれ、直列に接続された複数の第1ゲート電極と直列に接続された複数の第2ゲート電極は不活性領域において電気的に接続されている。第1ドレイン電極は、メイン第1ドレイン電極からフィンガー状に第1ゲート電極間に配置され、第2ドレイン電極は、メイン第2ドレイン電極からフィンガー状に第2ゲート電極間に配置され、複数の縦方向に形成された半導体リレーが配置されている。
【0055】
第2活性領域には、第3半導体スイッチが形成されている。このため、この第3半導体スイッチは、複数の半導体リレーに共通の充放電回路として利用できる。さらに、この半導体リレー及び第3半導体スイッチを接続する電極配置は、それぞれの電極が交差する部分が無く、平面的に配置可能である。
【0056】
(16)本発明の半導体リレー素子においては、半導体リレーを構成する第1半導体スイッチと第2半導体スイッチがノーマリーオフとなるエンハンスメント型であり、第3半導体スイッチがノーマリーオンとなるデプレッション型である。このため、半導体リレーは、ゲートとソース間がプラス電位と0電位でオン・オフされ、充放電回路に使用される第3半導体スイッチは、0電位とマイナス電位でオン・オフされる。
【0057】
(17)本発明の半導体リレーモジュールは、本発明の上記(1)に記載の半導体リレー素子と、半導体リレー素子の開閉を制御する制御回路と、を備えている。このため、大電流を流す用途においても、確実な駆動が可能となると共に、回路全体を小型化・簡素化することができる。
【0058】
(18)本発明の半導体リレーモジュールは、本発明の上記(1)に記載の半導体リレー素子と、半導体リレー素子の充放電回路と、半導体リレー素子の開閉を制御する発振回路と、を備えている。このため、大電流を流す用途においても、確実な駆動が可能となると共に、回路全体を小型化・簡素化することができる。
【0059】
(19)本発明の半導体リレーモジュールは、本発明の上記(12)に記載の半導体リレー素子と、抵抗又はダイオードのディスクリート素子と、半導体リレー素子の開閉を制御する発振回路とを備えている。
【0060】
第1活性領域に第1半導体スイッチと第2半導体スイッチが配置され、賽2活性領域には、第3半導体スイッチが配置されている。第3半導体スイッチは、半導体リレーのゲート電極に印加される信号の充放電回路に使用され、半導体リレー素子と同じチップ内に存在させている。このため、大電流を流す用途においても、絶縁トランス等を用いずに小型で確実な駆動が可能となり、充放電回路も小型化できるため、回路全体を小型化・簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体リレーの基本回路の構成を示す回路図である。
【
図2】GaN-HEMTの基本構造の模式的断面図である。
【
図3】GaN-HEMTにより実現した本発明の半導体リレー素子の基本ユニットを示した模式的断面図である。
【
図4】本発明の半導体リレー素子の基本ユニットAの配線パターンを示す図である。
【
図5】基本ユニットAを複数並べて並列接続させた半導体リレー素子の平面図である。
【
図6】基本ユニットAを複数並べて並列接続させた他の配線パターンによる半導体リレー素子の平面図である。
【
図7】基本ユニットAを複数並べて並列接続させた他の配線パターンによる半導体リレー素子の平面図である。
【
図8】第1ドレイン電極と第2ドレイン電極を交互に配置する半導体リレー素子において、複数の第1ゲート電極と複数の第2ゲート電極の配線で、直列接続を利用しない場合の比較例を示す図である。
【
図9】基本ユニットAを応用した配線パターンによる半導体リレー素子の平面図である。
【
図10】本発明の半導体リレー素子の基本ユニットBの平面図である。
【
図11】
図10で示した半導体リレー素子の基本ユニットBのX1-Y1、X2-Y2、X3-Y3の模式的断面図である。
【
図12】基本ユニットBを複数並べて並列接続させた半導体リレー素子の平面図である。
【
図13】縦型に配列した半導体リレー素子の基本ユニットBの電極配置を同じにして、2つに分割した活性領域に2つの半導体スイッチを複数配置した実施例を示す図である。
【
図14】本発明の半導体リレー素子62を用いた半導体リレーモジュールA60の回路構成を示す図である。
【
図15】本発明の半導体リレー素子62を用いた他の半導体リレーモジュールB65の回路構成を示す図である。
【
図16】半導体リレーモジュールB65を使用して、負荷70への直流電源72を開閉する場合の回路図である。
【
図17】半導体リレーモジュールB65の充放電回路66の一例を説明する図である。
【
図18】半導体リレーを構成する第1半導体スイッチQ1と第2半導体スイッチQ2に、第3半導体スイッチQ3を加えた半導体リレー素子の回路構成を示す図である。
【
図19】第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子の基本ユニットを示す平面図である。
【
図20】第3半導体スイッチを備えた半導体リレー素子の基本ユニットCによる実施例1を示す図である。
【
図21】第3半導体スイッチを備えた半導体リレー素子の基本ユニットCによる実施例2を示す図である。
【
図22】第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子80による半導体リレーモジュールC82を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せをする様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0063】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体リレーの基本回路の構成を示す回路図である。半導体リレーは、2つの半導体スイッチのソース同士を接続した逆直列回路となっている。
【0064】
第1半導体スイッチQ1の第1ソースS1と第2半導体スイッチQ2の第2ソースS2が接続され、第1半導体スイッチQ1の第1ドレインD1と第2半導体スイッチQ2の第2ドレインD2が出力端子となっている。出力端子は、第1ドレイン端子3と第2ドレイン端子4であり、半導体スイッチQ1と半導体スイッチQ2の逆直列回路は、双方向に流れる電流を電気的にオン・オフするリレーとして動作する。
【0065】
第1半導体スイッチQ1の第1ゲートG1と第2半導体スイッチQ2の第2ゲートG2が電気的に接続されているゲート端子2と、同じく電気的に接続された第1ソースS1と第2ソースS2からのソース端子1は、半導体リレーの出力をオン・オフ制御する信号の入力端子となっている。
【0066】
半導体リレーは、2つの半導体スイッチのソース同士を接続した逆直列回路である。正負両極性の信号制御を行う半導体リレーは、高電圧化が可能な半導体スイッチを使用し、2個の半導体スイッチのソースを接続する回路構成を同一基板上に一体的に形成することで小型化が図れる。
【0067】
窒化物半導体(III族窒化物半導体)は、ワイドバンドギャップ半導体であり、絶縁破壊電界強度がシリコンの10倍、バンドギャップがシリコンの3倍と優れており、1000V以上で100Aクラスのデバイスが実現されている。また、シリコン系半導体又はガリウム砒素(GaAs)系の化合物半導体と比べて電子の飽和ドリフト速度が大きい。このため、高い電子移動度を得られると共に、高耐圧化が可能であり、窒化物半導体であるGaN-HEMT(High Electron Mobility Transistor)は横型構造であるため、半導体リレーの基本回路を同一チップで実現可能である。
【0068】
図2は、GaN-HEMTの基本構造の模式的断面図である。基板12は、SiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)、Al
2O
3(サファイア)、Si(シリコン)等により形成されている。i-GaNにより形成されているバッファ層14は、電子走行層16の転位密度を低くし、結晶性を良好にするために形成する。バッファ層14には、GaNで形成される電子走行層16とAl
xGa
1-xN(0.01≦x≦0.4)(窒化アルミニウムガリウム)で形成される電子供給層18が積層され、電子供給層18の表面は、SiN(窒化シリコン)等の保護膜を設けている。GaN-HEMTは横型構造のトランシスタであり、ソース電極22、ゲート電極24及びドレイン電極は横並びに配置されている。
【0069】
窒化物半導体は、面方位の(0001)面を主面とすると窒化ガリウム(GaN)等とのヘテロ界面には、自発分極及びピエゾ分極により電荷が生じる。ヘテロ界面におけるシートキャリア濃度は、これら分極の効果によって、特にドーピングを行わなくても1×1013cm-2以上となる。このため、ヘテロ界面における2次元電子ガス(2Dimensional Electron Gas:2DEG)を利用して、高電子移動度トランジスタが実現できる。チャネル層に2次元電子ガスが形成される。2次元電子ガスにより、低いオン抵抗と速いスイッチング速度、及び、電流の双方向制御が実現される。
【0070】
GaN-HEMTは、構造上、ゲートに電圧を印加しなくても導通するデプレッション型のノーマリーオン動作である。しかし、ゲート直下のキャリア濃度を減少させて閾値電圧をプラス側にシフトさせることにより、エンハンスメント型のノーマリーオフ動作とすることができる。例えば、リセス構造のゲートやp-GaN積層構造等である。
【0071】
図3は、GaN-HEMTにより実現した本発明の半導体リレー素子の基本ユニットを示した模式的断面図である。基板12上に形成されたバッファ層14と、バッファ層14上に積層された窒化物半導体からなる電子走行層16と、電子走行層16上に積層され、電子走行層16を形成する窒化物半導体よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体からなる電子供給層18とからなる活性領域が形成されている。
【0072】
活性領域の電子供給層18上に、第1ドレイン電極30と、第1ゲート電極32と、第1ソース電極と、第2ソース電極と、第2ゲート電極36と、第2ドレイン電極38とが順に配置されている。第1ソース電極と第2ソース電極は、共通ソース電極34で共有されている。各電極間には保護膜20を設けている。
【0073】
第1ドレイン電極30、第1ゲート電極32と共通ソース電極34で形成される第1半導体スイッチQ1と、共通ソース電極34、第2ゲート電極36と第2ドレイン電極38で形成される第2半導体スイッチQ2は、共通ソース電極34を介して逆接続に直列接続されている。さらに、第1半導体スイッチ領域及び第2半導体スイッチ領域のキャリアが半導体素子内部の電子供給層18及び電子走行層16を相互に移動可能であるため、個別チップの半導体スイッチを直列接続した場合に比べ、導通損失を低減させることができる。第1半導体スイッチQ1と第2半導体スイッチQ2は、ゲート同士も電気的に接続され、ソースとの間に同じ信号を入力するが、第1ゲート電極32と第2ゲート電極36の電気的な接続は、ゲート電極の配線パターンで行うことができる。
【0074】
<半導体リレー素子の基本ユニットA>
図4は、本発明の半導体リレー素子の基本ユニットAの配線パターンを示す図である。
図4(A)は平面図、
図4(B)は
図4(A)のX-Y断面図を示している。
図4(A)において、破線で示した活性領域48は、基板12、バッファ層14、電子走行層16及び電子供給層18が積層された領域である。不活性領域50は、例えばBやFeなどをイオン注入し、チャネルを消滅して形成されたイオン注入層によって形成することができる。これにより、活性領域48と不活性領域50との境界部に段差が形成されないため、境界部を跨いで形成される電極への配線パターンに段差が生じない。各電極への配線パターンは、交差する部分は、ビアホール等により相違する層を経由して電気的な絶縁を図るが、なるべく交差しない配線パターンとすることが望ましい。
【0075】
共通ソース電極34は、活性領域48を貫いて配置されている。共通ソース電極34の両側近傍に第1ゲート電極32と第2ゲート電極36が配置されており、不活性領域50で接続されて、1本の連続したゲート配線パターン40となっている。第1ゲート電極32側には、さらに第1ドレイン電極30が配置され、第2ゲート電極36側には、さらに第2ドレイン電極38が配置されている。この構造が半導体リレー素子の基本ユニットであり、この基本ユニットを並列に接続して、オン抵抗の低減と大電流対応がなされる。
【0076】
このために、共通ソース電極34にはメインソース電極42、第1ドレイン電極30にはメイン第1ドレイン電極44、第2ドレイン電極38にはメイン第2ドレイン電極46を設けてもよい。共通ソース電極34又はメインソース電極42はソース端子1、ゲート配線パターン40はゲート端子2、第1ドレイン電極30又はメイン第1ドレイン電極44は第1ドレイン端子3、第2ドレイン電極38又はメイン第2ドレイン電極46は第2ドレイン端子4に接続されている。
【0077】
<基本ユニットAによる実施例1>
図5は、基本ユニットAを複数並べて並列接続させた半導体リレー素子の平面図である。
電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50にメインソース電極42を備え、メインソース電極42から破線で示した活性領域48を貫くフィンガー状の複数の共通ソース電極34、34-1、34-2を有している。
【0078】
活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2が、複数の共通ソース電極34、34-1、34-2の両側に配置され、不活性領域50でゲート配線パターン40により複数の共通ソース電極を囲んで直列に接続されている。
【0079】
電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50にメイン第1ドレイン電極44を備え、メイン第1ドレイン電極44から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1を有している。さらに、不活性領域50には、メイン第2ドレイン電極46を備え、メイン第2ドレイン電極46から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1を有している。
【0080】
メイン第1ドレイン電極44とメイン第2ドレイン電極46は、メインソース電極42に対して活性領域48を挟んで逆側に配置され、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1は、複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2と複数の第2ゲート電極36、36-136-2の間に、交互に配置されている。
【0081】
本電極パターンの配置により、電極同士の交差をメイン第1ドレイン電極44と複数の第2ドレイン電極38、38-1だけにすることができる。メイン第1ドレイン電極44と複数の第2ドレイン電極38、38-1は交差しているが、交差している部分は、メイン第1ドレイン電極44をビアホールで接続した異なる層に配線することにより、交差を避けることができる。
【0082】
<基本ユニットAによる実施例2>
図6は、基本ユニットAを複数並べて並列接続させた他の配線パターンによる半導体リレー素子の平面図である。
【0083】
電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50にメインソース電極42を備え、メインソース電極42から破線で示した活性領域48を貫くフィンガー状の複数の共通ソース電極34、34-1、34-2を有している。
【0084】
複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2と複数の第2ゲート電極36.36-1、36-2は、メインソース電極42及びフィンガー状の複数の共通ソース電極34、34-1、34-2に沿って配置され、フィンガー状の複数の共通ソース電極34、34-1、34-2を囲む複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2と複数の第2ゲート電極36.36-1、36-2が、不活性領域50において直列に接続されたゲート配線パターン40の部分と、直列に接続されたゲート配線パターン40から、フィンガー状に複数の共通ソース電極34、34-1、34-2に沿って並列に配置されたゲート配線パターン40を備えている。
【0085】
不活性領域50にメイン第1ドレイン電極44を備え、メイン第1ドレイン電極44から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1を有している。不活性領域にメイン第2ドレイン電極46を備え、メイン第2ドレイン電極46から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1を有している。
【0086】
メイン第1ドレイン電極44とメイン第2ドレイン電極46は、活性領域48を挟んで逆側に配置されて、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1は、フィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2の間に、交互に配置されている、
【0087】
本電極パターンの配置により、電極同士の交差をメインソース電極42と複数の第1ドレイン電極30、30-1だけにすることができる。メインソース電極42と複数の第1ドレイン電極30、30-1は交差しているが、交差している部分は、メインソース電極42をビアホールで接続した異なる層に配線することにより、交差を避けることができる。
【0088】
<基本ユニットAによる実施例3>
図7は、基本ユニットAを複数並べて並列接続させた他の配線パターンによる半導体リレー素子の平面図である。
【0089】
電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50にメインソース電極42を備え、メインソース電極42から破線で示した活性領域48を貫くフィンガー状の複数の共通ソース電極34、34-1、34-2を有している。
【0090】
活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2が、複数の共通ソース電極34、34-1、34-2の両側に配置され、不活性領域50でゲート配線パターン40により複数の共通ソース電極を囲んで直列に接続されている。
【0091】
電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50にメイン第1ドレイン電極44を備え、メイン第1ドレイン電極44から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1を有している。不活性領域50にメイン第2ドレイン電極46を備え、メイン第2ドレイン電極46から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1を有している。
【0092】
メイン第1ドレイン電極44は、活性領域48を挟んで、メインソース電極42とメイン第2ドレイン電極46の逆側に配置されて、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極は、フィンガー状の複数の第1ゲート電極とフィンガー状の複数の第2ゲート電極38、38-1の間に、交互に配置されている。
【0093】
本電極パターンの配置では、メインソース電極42とゲート配線パターン40が、複数の第1ドレイン電極30、30-1と交差している。この場合、複数の第1ドレイン電極30、30-1を、メインソース電極42とゲート配線パターン40を跨いでビアホールで接続した異なる層に配線することにより、交差を避けることができる。
【0094】
<基本ユニットAによる実施例との比較例>
図8は、第1ドレイン電極と第2ドレイン電極を交互に配置する半導体リレー素子において、複数の第1ゲート電極と複数の第2ゲート電極の配線で、直列接続を利用しない場合の比較例を示す図である。
【0095】
電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50にメインソース電極42を備え、メインソース電極42から破線で示した活性領域48を貫くフィンガー状の複数の共通ソース電極34、34-1、34-2を有している。
【0096】
活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2が、複数の共通ソース電極34、34-1、34-2の両側に配置されている。フィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2は平行の関係にあり、不活性領域50においてゲート配線パターン40に接続されている。フィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2が直列接続となる部分は存在しない。
【0097】
電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50にメイン第1ドレイン電極44を備え、メイン第1ドレイン電極44から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1を有している。さらに、不活性領域50には、メイン第2ドレイン電極46を備え、メイン第2ドレイン電極46から活性領域48を貫くフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1を有している。
【0098】
メイン第1ドレイン電極44とメイン第2ドレイン電極46は、メインソース電極42に対して活性領域48を挟んで逆側に配置され、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1は、複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2と複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2の間に、交互に配置されている。
【0099】
比較例とした本電極パターンは、フィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2が直列接続となる部分は存在しないため、電極同士の交差は、複数の第1ドレイン電極30、30-1とメインソース電極42、及び、ゲート配線パターンと複数の第2ドレイン電極38、38-1となる。このため、メインソース電極42とゲート配線パターン40の2つの配線をビアホールで接続した異なる層に配線にしなければならない。本発明によれば、直列接続を利用した複数の第1ゲート電極と複数の第2ゲート電極の配線パターンにより交差を少なくできる。
【0100】
<基本ユニットAを応用した実施例4>
図9は、基本ユニットAを応用した配線パターンによる半導体リレー素子の平面図である。電極パターンが交差しない配線パターンとしている。
【0101】
破線で示した活性領域48にメインソース電極42を備え、共通ソース電極34は、メインソース電極42から、活性領域48を貫いて配置され、共通ソース電極34の一方の側にメインソース電極42からフィンガー状の複数の第1ソース電極33、33-1を配置し、共通ソース電極34の他方の側にメインソース電極42からフィンガー状の複数の第2ソース電極35、35-1を配置している。第1ソース電極33、33-1、及び、第2ソース電極35、35-1は、いずれも活性領域48を貫かない。
【0102】
共通ソース電極34の両側に配置される第1ゲート電極32と第2ゲート電極36は、不活性層領域50において電気的に接続されている。
【0103】
共通ソース電極34の一方の側に配置される第1ゲート電極32は、ゲート配線パターン40により第1ゲート電極32-1に直列接続され、フィンガー状の複数の第1ソース電極33、33-1を囲み、さらにメインソース電極42に沿って配置されている。共通ソース電極34の他方の側に配置される第2ゲート電極36は、ゲート配線パターン40により第2ゲート電極36-1に直列接続され、フィンガー状の複数の第2ソース電極35、35-1を囲み、さらにメインソース電極40に沿って配線されている。
【0104】
活性領域48のメインソース電極42と逆側にメイン第1ドレイン電極44を備え、メイン第1ドレイン電極44は、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1、30-2を有し、複数の第1ドレイン電極30、30-1、30-2は、第1ゲート電極32,32-1と第1ソース電極33、33-1に沿って配置されている。
【0105】
活性領域48のメインソース電極42と逆側にメイン第2ドレイン電極46を備え、メイン第2ドレイン電極46は、フィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1、38-2を有し、複数の第2ドレイン電極38、38-1、38-2は、第2ゲート電極36,36-1と第2ソース電極35、35-1に沿って配置されている。
【0106】
本電極パターンの配置は、第1ドレイン電極と第2ドレイン電極を、共通ソース電極を挟んで横方向に分離する配置としたため、それぞれの電極パターンが交差すること無く、平面的に配置できる。
【0107】
<半導体リレー素子の基本ユニットB>
図10は、本発明の半導体リレー素子の基本ユニットBの平面図である。基本ユニットAは、半導体リレーの2つの半導体スイッチを横に配置した構造であるのに対して、半導体リレーの基本ユニットBは、半導体リレーの2つの半導体スイッチを縦に配置した構造である。
【0108】
破線で示した活性領域48を貫いてメインソース電極を兼ねた共通ソース電極34を備えている。活性領域48には、共通ソース電極34の一方の側にフィンガー状の第1ソース電極33を備えている。活性領域48には、共通ソース電極34の他方の側にフィンガー状の第2ソース電極35を備えている。
【0109】
第1ゲート電極32は、第1ソース電極33を囲み、さらに共通ソース電極34に沿って配置されている。第2ゲート電極36は、第2ソース電極35を囲み、さらに共通ソース電極34に沿って配置されている。第1ゲート電極32と第2ゲート電極36は、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50において直列に接続されている。
【0110】
活性領域48に、メイン第1ドレイン電極44とフィンガー状の2個の第1ドレイン電極30、30-1を備え、メイン第1ドレイン電極44とフィンガー状の2個の第1ドレイン電極30、30-1は、第1ゲート電極32を囲んで配置されている。活性領域48に、メイン第2ドレイン電極46とフィンガー状の2個の第2ドレイン電極38、38-1を備え、メイン第2ドレイン電極46とフィンガー状の2個の第2ドレイン電極38、38-1は、第2ゲート電極を囲んで配置されている。
【0111】
図11は、
図10で示した半導体リレー素子の基本ユニットBのX1-Y1、X2-Y2、X3-Y3の模式的断面図である。
図11の(A)はX1-Y1断面、(B)はX2-Y2断面、(C)はX3-Y3断面を示している。いずれも
図3で示したと同様に、活性領域の電子供給層18上に、第1ドレイン電極30と、第1ゲート電極32と、第1ソース電極と第2ソース電極が共有された共通ソース電極34と、第2ゲート電極36と、第2ドレイン電極38とが順に配置されている。即ち、全活性領域が各配線パターンを含めて有効に活用された半導体リレー構造であることが分かる。
【0112】
<基本ユニットBによる実施例>
図12は、基本ユニットBを複数並べて並列接続させた半導体リレー素子の平面図である。
【0113】
破線で示した活性領域48を貫いてメインソース電極を兼ねた共通ソース電極34を備えている。活性領域48には、共通ソース電極34の一方の側にフィンガー状の複数の第1ソース電極33-1、33-2、33-3、33-4を備えている。活性領域48には、共通ソース電極34の他方の側にフィンガー状の複数の第2ソース電極35-1、35-2、35-3、35-4を備えている。
【0114】
複数の第1ゲート電極32-1、32-2、32-3、32-4は、複数の第1ソース電極33-1、33-2、33-3、33-4を囲んで共通ソース電極34に沿って直列に接続されている。複数の第2ゲート電極36-1、36-2、36-3、36-4は、複数の第2ソース電極35-1、35-2、35-3、35-4を囲んで共通ソース電極34に沿って配置され直列に接続されている。
【0115】
複数の第1ゲート電極32-1、32-2、32-3、32-4と複数の第2ゲート電極36-1、36-2、36-3、36-4は、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50において直列に接続されている。
【0116】
活性領域48に、メイン第1ドレイン電極44とフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30-1、30-2、30-3、30-4、30-5を備え、メイン第1ドレイン電極44とフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30-1、30-2、30-3、30-4、30-5で複数の第1ゲート電極32-1、32-2、32-3、32-4を囲んで配置されている。活性領域48に、メイン第2ドレイン電極46とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38-1、38-2、38-3、38-4、38-5を備え、メイン第2ドレイン電極46とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38-1、38-2、38-3、38-4、38-5で複数の第2ゲート電極36-1、36-2、36-3、36-4を囲んで配置されている。
【0117】
この電極パターンの配置により、複数の第1ドレイン電極と複数の第2ドレイン電極を、共通ソース電極を挟んで縦方向に分離することができ、それぞれの電極パターンが交差すること無く、平面的に配置できる。
【0118】
<基本ユニットBを応用した実施例>
図13は、縦型に配列した半導体リレー素子の基本ユニットBの電極配置を同じにして、2つに分割した活性領域に2つの半導体スイッチを複数配置した実施例を示す図である。電極配置は、
図12で示した電極配置と同じであるが、2つの半導体スイッチのソース同士が共通ソース電極を介して接続されている。第1活性領域48-1と第2活性領域48-2に活性領域を分割したことにより、半導体リレーの第1半導体スイッチ領域及び第2半導体スイッチ領域のキャリアが半導体素子内部を相互に移動できなくなる。このため、半導体リレーの第1半導体スイッチ領域及び第2半導体スイッチ領域のキャリアが半導体素子内部を相互に移動可能な場合に比べれば、導通損失の低減効果は少ない。ただし、個別チップの半導体スイッチを直列接続した場合に比べ、導通損失を低減させることはできる。
【0119】
<半導体リレーモジュールA>
図14は、本発明の半導体リレー素子62を用いた半導体リレーモジュールA60の回路構成を示す図である。
【0120】
半導体リレーモジュールA60は、半導体リレー素子62と制御回路63から構成されている。半導体リレー素子62の第1ドレイン端子3と第2ドレイン端子4は半導体リレーモジュールA60の出力端子となっている。第1ドレイン端子3と第2ドレイン端子4に制御する負荷への入力を接続して、負荷への入力の開閉を行う。制御回路63は、半導体リレー素子62の導通又は開放の動作を制御する。
【0121】
この制御回路63は、半導体リレー素子62への駆動バイアス信号を供給する駆動バイアス信号供給を含んでいる。さらに、入出力電圧の検出部、導通電流検出部や、半導体スイッチ温度検出部等を含んでいてもよい。
【0122】
<半導体リレーモジュールB>
図15は、本発明の半導体リレー素子62を用いた他の半導体リレーモジュールB65の回路構成を示す図である。
【0123】
半導体リレーモジュールB65は、半導体リレー素子62と充放電回路66と発振回路68から構成されている。さらに、入出力電圧の検出部、導通電流検出部や、半導体スイッチ温度検出部等を含んでいてもよい。半導体リレー素子62の第1ドレイン端子3と第2ドレイン端子4は半導体リレーモジュール60の出力端子となっている。第1ドレイン端子3と第2ドレイン端子4に制御する負荷への入力を接続して、負荷への入力の開閉を行う。
【0124】
充放電回路66は、発振回路68からの駆動信号に対応して第1半導体スイッチQ1と第2半導体スイッチQ2のゲート容量を充放電して、半導体リレーの開閉を行う。発振回路68は、半導体リレーの開閉を行うために入力端子64に印加される入力信号を、フォトダイオードアレイ、発振周波数発生回路や昇圧回路等により制御し、充放電回路66へ駆動信号を出力する。
【0125】
半導体リレーモジュールB65は、大電流を流す用途においても、確実な駆動が可能となると共に、回路全体を小型化・簡素化することができる。
【0126】
図16は、半導体リレーモジュールB65を使用して、負荷70への直流電源72を開閉する場合の回路図である。
【0127】
直流電源72と、負荷70と、半導体リレーモジュールB65とで構成され、半導体リレーモジュールB65は、直流電源72と負荷70との間に設けられ、直流電源72と負荷70とを短絡又は開放する。半導体リレーモジュールB65の発振回路68は、例えば、直流電源72の電圧よりも高く、かつ、第1半導体スイッチQ1及び第2半導体スイッチQ2のゲート閾値電圧Vth以上の正の駆動電圧を充放電回路66に印加する。
【0128】
充放電回路66では、駆動電圧により第1半導体スイッチQ1及び第2半導体スイッチQ2のゲート容量を充放電してオン・オフすることにより、半導体リレー素子62の開閉を行う。第1半導体スイッチQ1及び第2半導体スイッチQ2がオン状態になると、直流電源72から負荷70へ電力が供給される。
【0129】
図17は、半導体リレーモジュールB65の充放電回路66の一例を説明する図である。充放電回路66は、ノーマリ―オンとなるデプレッション型の第3半導体スイッチQ3と、抵抗又はダイオード等のディスクリート素子73から構成されている。第3半導体スイッチQ3の第3ドレインと第3ゲートは、発振回路68に接続されている。第3半導体スイッチQ3の第3ゲートと第3ソースには、ディスクリート素子73が接続されている。
【0130】
発振回路68からの駆動信号が充放電回路66の第3半導体スイッチQ3の第3ドレインに印加されると、デプレッション型の第3半導体スイッチQ3はオン状態であり、第3ドレイン73に電流が流れると、ディスクリート素子73の両端に電位差が発生し、第3ゲートに負の電圧が印加される。この電位差によってデプレッション型の第3半導体スイッチQ3はオフとなる。そして、第1半導体スイッチQ1の第1ゲートと、第2半導体スイッチQ2の第2ゲートに印加された充放電回路66の出力電圧が、閾値電圧Vthよりも大きくなると、第1半導体スイッチQ1と第2半導体スイッチQ2がオンになり、半導体リレーがオン状態となる
【0131】
一方、発振回路68からの駆動信号がオフになると、発振回路68からの駆動信号が無く、ディスクリート素子73の両端に電位差は発生しなくなるため、デプレッション型の第3半導体スイッチQ3はオン状態となる。その結果、第1半導体スイッチQ1の第1ゲートと第1ソース、及び、第2半導体スイッチQ2の第2ゲートと第2ソースがこのデプレッション型の第3半導体スイッチQ3でショートされ、半導体リレー素子62がオフ状態となる。
【0132】
充放電回路66で使用されている第3半導体スイッチは、上記説明のようにデプレッション型である。このため、高耐圧でデプレッション型のGaN-HEMTが好適である。GaN-HEMTの基本構造は本来デプレッション型であり、ゲート電極に様々な技術を適用してノーマリーオフのエンハンスメント型にしている。従って、充放電回路66で使用されている第3半導体スイッチQ3は、エンハンスメント型とする技術を適用することなく使用可能である。
【0133】
本発明の半導体リレー素子62は、GaN-HEMTを使用しており、第3半導体スイッチQ3も容易に同一のチップに搭載でき、これにより更なる半導体リレーモジュールの小型化が図れる。
【0134】
<第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子の基本ユニットC>
図18は、半導体リレーを構成する第1半導体スイッチQ1と第2半導体スイッチQ2に、第3半導体スイッチQ3を加えた半導体リレー素子の回路構成を示す図である。第1半導体スイッチQ1の第1ゲートと第2半導体スイッチQ2の第2ゲートに、第3半導体スイッチQ3の第3ドレインが接続され、第1半導体スイッチQ1の第1ソースと第2半導体スイッチQ2の第2ソースに、第3半導体スイッチQ3の第3ソースが接続されている。第3半導体スイッチQ3の第3ゲートは、補助ゲート端子5に接続され、外部にインピーダンス素子が接続される。
【0135】
図19は、第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子の基本ユニットを示す平面図である。
【0136】
電子走行層及び電子供給層を含む第1活性領域48-1と、電子走行層及び電子供給層を含む第2活性領域48-2と、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50とを備えている。
【0137】
第1活性領域48-1には、電子供給層上に、第1ドレイン電極30と、第1ゲート電極32と、第1ソース電極と第2ソース電極を共有した共通ソース電極34と、第2ゲート電極36と、第2ドレイン電極38とが順に配置されている。
【0138】
第2活性領域48-2には、電子供給層上に、第3ドレイン電極74と、第3ゲート電極76と、第3ソース電極78と、が順に配置されている。
【0139】
第1ゲート電極32と第2ゲート電極36と第3ドレイン電極74が接続され、共通ソース電極34と第3ソース電極78がメインソース電極42により接続されている。
【0140】
電子走行層及び電子供給層を含む第1活性領域48-1と電子走行層及び電子供給層を含む第2活性領域48-2は、同じ積層構造であり、半導体リレーを形成する第1活性領域48-1の第1ゲート電極32と第2ゲート電極36は、エンハンスメント型とする構造が適用されているが、第2活性領域の第3ゲート電極76は、デプレッション型でよいため、エンハンスメント型とする構造を適用する必要が無い。
【0141】
<第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子の基本ユニットCによる実施例1>
図20は、第3半導体スイッチを備えた半導体リレー素子の基本ユニットCによる実施例1を示す図である。電子走行層及び電子供給層を含む第1活性領域48-1と、電子走行層及び電子供給層を含む第2活性領域48-2と、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50を備えている。第1活性領域48-1には、第1半導体スイッチQ1と第2半導体スイッチQ2により半導体リレーが形成されている。第2活性領域48-2には、第3半導体スイッチQ3が形成されている。
【0142】
不活性領域50にメインソース電極42を備え、メインソース電極42は、第1活性領域48-1を貫くフィンガー状の複数の共通ソース電極34、34-1、34-2を備えている。
【0143】
第1活性領域48-1を貫くフィンガー状の複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2とフィンガー状の複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2が、複数の共通ソース電極34、34-1、34-2の両側に配置され、不活性領域50においてゲート配線パターン40により複数の共通ソース電極を囲んで直列に接続されている。
【0144】
不活性領域50にメイン第1ドレイン電極44を備え、メイン第1ドレイン電極44から第1活性領域48-1を貫くフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1を有している。さらに、不活性領域50には、メイン第2ドレイン電極46を備え、メイン第2ドレイン電極46から第1活性領域48-1を貫くフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1が備えられている。
【0145】
メイン第1ドレイン電極44とメイン第2ドレイン電極46は、メインソース電極42に対して第1活性領域48-1を挟んで逆側に配置され、フィンガー状の複数の第1ドレイン電極30、30-1とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38、38-1は、複数の第1ゲート電極32、32-1、32-2と複数の第2ゲート電極36、36-1、36-2の間に、交互に配置されている。
【0146】
第2活性領域48-2には、第3ドレイン電極74、第3ゲート電極76と第3ソース電極78が順に配置されている。
【0147】
第1ゲート電極32、32-1、32-2と第2ゲート電極36、36-1、36-2と第3ドレイン電極74が接続され、メインソース電極42と第3ソース電極78が接続されている。
【0148】
<第3半導体スイッチを備えた半導体リレー素子の基本ユニットCによる実施例2>
図21は、第3半導体スイッチを備えた半導体リレー素子の基本ユニットCによる実施例2を示す図である。基本ユニットCは、電子走行層及び電子供給層を含む第1活性領域48-1と、電子走行層及び電子供給層を含む第2活性領域48-2と、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50を備えている。第1活性領域48-1には、第1半導体スイッチQ1と第2半導体スイッチQ2により半導体リレーが形成されている。第2活性領域48-2には、第3半導体スイッチQ3が形成されている。
【0149】
第1活性領域48-1を貫いてメインソース電極を兼ねた共通ソース電極34を備えている。第1活性領域48-1には、共通ソース電極34の一方の側にフィンガー状の複数の第1ソース電極33-1、33-2、33-3、33-4を備えている。活性領域48には、共通ソース電極34の他方の側にフィンガー状の複数の第2ソース電極35-1、35-2、35-3、35-4を備えている。
【0150】
複数の第1ゲート電極32-1、32-2、32-3、32-4は、複数の第1ソース電極33-1、33-2、33-3、33-4を囲んで共通ソース電極34に沿って直列に接続されている。複数の第2ゲート電極36-1、36-2、36-3、36-4は、複数の第2ソース電極35-1、35-2、35-3、35-4を囲んで共通ソース電極に沿って配置され直列に接続されている。
【0151】
複数の第1ゲート電極32-1、32-2、32-3、32-4と複数の第2ゲート電極36-1、36-2、36-3、36-4は、電子走行層及び電子供給層を含まない不活性領域50において直列に接続されている。
【0152】
第1活性領域48-1に、メイン第1ドレイン電極44とフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30-1、30-2、30-3、30-4、30-5を備え、メイン第1ドレイン電極44とフィンガー状の複数の第1ドレイン電極30-1、30-2、30-3、30-4、30-5で複数の第1ゲート電極32-1、32-2、32-3、32-4を囲んで配置されている。第1活性領域48-1に、メイン第2ドレイン電極46とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38-1、38-2、38-3、38-4、38-5を備え、メイン第2ドレイン電極46とフィンガー状の複数の第2ドレイン電極38-1、38-2、38-3、38-4、38-5で複数の第2ゲート電極36-1、36-2、36-3、36-4を囲んで配置されている。
【0153】
第2活性領域48-2には、第3ドレイン電極74、第3ゲート電極76と第3ソース電極78が順に配置されている。
【0154】
第1ゲート電極32、32-1、32-2と第2ゲート電極36、36-1、36-2と第3ドレイン電極74が接続され、共通ソース電極34と第3ソース電極78が接続されている。
【0155】
この電極パターンの配置により、複数の第1ドレイン電極と複数の第2ドレイン電極は、共通ソース電極を挟んで縦方向に分離させることができ、第3半導体スイッQ3との接続も、それぞれの電極パターンが交差すること無く、平面的に配置できる。
【0156】
<第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子による半導体リレーモジュール>
図22は、第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子80による半導体リレーモジュールC82を示す図である。半導体リレーモジュールC82は、第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子80と、抵抗やダイオード等のディスクリート素子73と、発振回路68から構成されている。破線で示した充放電回路66の第3半導体スイッチQ3を、半導体リレー素子と一体化して形成したため、半導体モジュールC82は半導体モジュールA60や半導体モジュールB65よりもさらに小型化が可能である。
【0157】
半導体リレーの充放電回路66は、第3半導体スイッチQ3を用いて、様々な回路構成に展開が可能である。例えば、電流検出回路等である。このため、第3半導体スイッチQ3を、半導体スイッチ素子の内部で半導体リレー素子に接続することなく単独で存在させて、第3ドレイン電極74、第3ゲート電極76と第3ソース電極78を半導体スイッチ素子の外部に取り出す端子に接続することもできる。
【0158】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0159】
Q1 第1半導体スイッチ
Q2 第2半導体スイッチ
Q3 第3半導体スイッチ
S1 第1ソース
G1 第1ゲート
D1 第1ドレイン
S2 第2ソース
G2 第2ゲート
D2 第2ドレイン
S3 第3ソース
G3 第3ゲート
D3 第3ドレイン
1 ソース端子
2 ゲート端子
3 第1ドレイン端子
4 第2ドレイン端子
5 補助ゲート端子
10 GaN-HEMTの構造
12 基板
14 バッファ層
16 電子走行層
18 電子供給層
20 保護膜
22 ソース電極
24 ゲート電極
26 ドレイン電極
30、30-1、30-2、30-3、30-4、30-5 第1ドレイン電極
32、32-1、32-2、32-3、32-4 第1ゲート電極
33、33-1、33-2、33-3、33-4 第1ソース電極
34、34-1、34-2 共通ソース電極
35、35-1、35-2、35-3、35-4 第2ソース電極
36、36-1、36-2、36-3、36-4 第2ゲート電極
38、38-1、38-2、38-3、38-4、38-5 第2ドレイン電極
40 ゲート配線パターン
42 メインソース電極
44 メイン第1ドレイン電極
46 メイン第2ドレイン電極
48 活性領域
48-1 第1活性領域
48-2 第2活性領域
50 不活性領域
60 半導体リレーモジュールA
62 半導体リレー素子
63 制御回路
64 入力端子
65 半導体リレーモジュールB
66 充放電回路
68 発振回路
70 負荷
72 直流電源
73 ディスクリート素子
74 第3ドレイン電極
76 第3ゲート電極
78 第3ソース電極
80 第3半導体スイッチを搭載した半導体リレー素子
82 半導体リレーモジュールC