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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】固体色素の安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 61/00 20060101AFI20220824BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20220824BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20220824BHJP
   A23L 5/42 20160101ALI20220824BHJP
   C09B 67/08 20060101ALI20220824BHJP
   A23L 2/58 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
C09B61/00 A
C09B61/00 Z
C09B67/20 F
C09B67/46 A
A23L5/42
C09B67/08 C
A23L2/00 M
A23L2/58
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018509710
(86)(22)【出願日】2017-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2017013863
(87)【国際公開番号】W WO2017171091
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2019-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2016074772
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 可南子
(72)【発明者】
【氏名】坂田 慎
(72)【発明者】
【氏名】三内 剛
(72)【発明者】
【氏名】西田 篤史
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-104230(JP,A)
【文献】特開2016-098364(JP,A)
【文献】特開2016-098365(JP,A)
【文献】特開平11-285359(JP,A)
【文献】特開平09-084566(JP,A)
【文献】特開2008-063476(JP,A)
【文献】特開2014-036638(JP,A)
【文献】特開2011-157517(JP,A)
【文献】特表2005-500157(JP,A)
【文献】特開2002-187837(JP,A)
【文献】特開2010-178655(JP,A)
【文献】国際公開第2004/039178(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141139(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/028272(WO,A1)
【文献】特開2009-263638(JP,A)
【文献】特表2000-504216(JP,A)
【文献】特開平08-119933(JP,A)
【文献】特開平08-099872(JP,A)
【文献】特開平06-172170(JP,A)
【文献】特開平05-247364(JP,A)
【文献】特開昭62-126953(JP,A)
【文献】特開昭58-065761(JP,A)
【文献】特開2002-112712(JP,A)
【文献】特開平08-113723(JP,A)
【文献】特開2002-053857(JP,A)
【文献】国際公開第2002/102902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
A23L 5/42
A23L 2/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を含有する結晶分散色素製剤であって、
アラビアガム、及びガティガムからなる群より選択される1種以上の水溶性多糖類、並びに
植物性油脂類、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ビタミンE、及びシリコーンオイルからなる群から選択される1種以上の親油性液体
を含み、
前記固体色素100質量部に対して、3~100質量部の量の親油性液体を含有し、
前記固体色素のメジアン径が、0.05~0.5μmである、
製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体色素の安定化方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な食品等の着色に広く用いられている固体色素の代表的な例として、カロテノイド色素、及びクルクミン色素がある。
【0003】
カロテノイド色素(本明細書中、単にカロテノイドと称する場合がある。)は植物及び動物、微生物界に広く存在している黄色、橙色、赤色を呈する油溶性の色素であり、ニンジンカロテン色素、パプリカ色素及びトマト色素などが知られている。
【0004】
特にトマト色素の主成分はリコピンとよばれ、鮮やかな赤色を呈し、抗酸化機能を有していることが知られている。かかる色素を用いて食品を着色することが広く行われている。しかし、リコピンは油溶性なので、そのままでは食品の製造に不向きである。従って、リコピンは、適当な乳化剤等をそれぞれ用いた、水中油型乳化製剤、又は結晶を分散させた製剤等として利用されている。しかしながら、リコピン等の結晶性カロテノイド色素は、水中で不安定であり、蛍光灯などによる光劣化、酸化による劣化及び/又は経時的な劣化が生じ、食品製造に支障を来すことが問題となっている。このような結晶性カロテノイド色素を含む分散製剤の安定性を向上させるために、様々な技術が検討され開示されている。
【0005】
クルクミン色素(本明細書中、単にクルクミンと称する場合がある。)は、ウコン(Turmeric, Curcuma longaL.)に含有される色素であり、黄色を呈する。クルクミン色素は、その生理活性についても研究が実施されている。
【0006】
例えば、前記のようなカロテノイド色素を安定化する技術に関して、特許文献1では、結晶性カロテノイド色素と親油性成分を含有する飲食品において、セルロースを配合することを特徴とする結晶性カロテノイド色素の変色抑制方法が提案されている。
【0007】
しかし、更に、カロテノイド色素、及びクルクミン色素を安定化する技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-178655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、固体色素の安定化方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を、当該固体カロテノイド色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体と混合することにより、当該固体カロテノイド色素を安定化できることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、次の各項に記載の態様を含む。
【0012】
項1.
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素の安定化方法であって、
前記固体色素を、当該固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体と混合する工程を含む方法。
項2.
前記安定化方法が、固体色素自体の化学的変化を抑制する方法、又は固体色素がこれを含有する周囲環境としての水性液体に与える物理的不安定性を抑制する方法である、項1の記載の方法。
項3.
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を含有する色素製剤であって、
前記固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体を含有する製剤。
項4.
更に水を含有する、項3に記載の製剤。
項5.
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を含有する色素製剤の製造方法であって、
前記固体色素を、当該固体カロテノイド色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体と混合する工程を含む製造方法。
項6.
固体色素を親油性液体と混合する前記工程が、
水性媒体中で実施される、項5に記載の色素製剤の製造方法。
項7.
項3又は4に記載の製剤を含有する食品。
項8.
カロテノイド色素、及びクルクミン色素からなる群より選択される1種以上の色素を含有する食品の製造方法であって、項3又は4に記載の製剤を食品原料と混合する工程を含む製造方法。
項9.
(1)疎水性固体粒子、及び
(2)当該疎水性固体粒子を直接的に被覆している被覆層であって、親油性液体を含有し、及び気体を含有しない被覆層
を含有する、
被覆疎水性固体粒子。
項10.
前記疎水性固体が、固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素である、
項9に記載の被覆疎水性固体粒子。
項11.
前記被覆層が、更に、アラビアガム、及びガティガムからなる群より選択される1種以上の水溶性多糖類を含有する、
項9又は10に記載の被覆疎水性固体粒子。
項12.
[1]前記被覆層が、更に、アラビアガム、及びガティガムからなる群より選択される1種以上の水溶性多糖類を含有する、
項9~10に記載の被覆疎水性固体粒子、及び
[2]水
を含有する、疎水性固体粒子含有水性製剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を安定化できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素の安定化方法;
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素含有製剤;
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素含有製剤の製造方法;及び
カロテノイド色素、及びクルクミン色素からなる群より選択される1種以上の色素を含有する食品等を提供する。
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味する。
【0017】
本明細書中、用語「色素の安定化」は、
[1]固体色素自体の化学的変化を抑制すること、すなわち、例えば、(1)化合物、又はその組成物である色素の化学的変化(例:分解、酸化、還元)の抑制、又は防止;並びに(2)色素の退色の抑制、又は防止;並びに
[2]固体色素がこれを含有する周囲環境である液体に与える物理的不安定性を抑制すること、すなわち、例えば、当該色素を含有する周囲環境としての水性液体の発泡を抑制することを包含する。
この説明から理解されるように、
前記[1]の安定化は、固体色素が、固体又は液体の任意の環境中に存在するときに好適に実施又は利用され、及び
前記[2]の安定化は、固体色素が、液体環境中に存在するときに好適に実施される。
【0018】
本明細書中、用語「食品原料」は、これに本発明のカロテノイド色素含有製剤が混合されるという観点、及び本発明の食品との表現上の区別のために用いられる場合がある。すなわち、この場合、当業者が容易に理解するように、当該「食品原料」は通常「食品原料」と認識されているものに加えて、通常「食品」と認識されているものも、包含することを意図して用いられる。
【0019】
1. 固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素の安定化方法
本発明の固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素の安定化方法は、
当該固体色素を、当該固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体と混合する工程を含む。
【0020】
1.1. 固体色素
本発明で用いられる固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素(本明細書中、単に、本発明で用いられる固体色素、又は固体色素と称する場合がある。)は、好ましくは室温で固体である。
本発明で用いられる当該固体色素は、好ましくはその一部、又は全部が結晶である。
本発明で用いられる当該固体色素の形状は特に限定されず、好ましくは、粉状又は粒状であることができる。
【0021】
そのサイズの下限は、特に限定されないが、例えば、メジアン径で、0.01μm、好ましくは0.02μm、より好ましくは0.05μmであることができる。
そのサイズは、メジアン径で、通常5μm以下であり、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.7μm以下、及びより更に好ましくは0.5μm以下である。
前記固体色素がこのようなサイズを有することにより、本発明の色素製剤、及びこれを含有する食品等がより明るい色を呈し得る。
【0022】
本発明で用いられる固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素は、特に限定されず、飲食品、医薬品、医薬部外品、又は化粧品等に通常利用できる固体色素であることができる。
【0023】
本明細書中、カロテノイド色素としては、トマト色素(リコピン)、ニンジン色素、デュナリエラカロチン(β-カロチン、α-カロチン)、マリーゴールド色素(ルテイン)、及びヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン)などの天然物由来の色素より抽出、又は精製したもの;並びにカンタキサンチン、β-カロチン、及びβ-アポカロテナールなどの合成品、又は半合成品など、一般に入手可能なものが例示できる。
これらは、本発明において、単独で、又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明で用いられるクルクミンは、ウコン色素又はウコンエキスに含まれた状態であることができる。
【0025】
本発明で用いられるクルクミンは、ショウガ科ウコン(Curcuma longaLINNE)の根茎から得られるものであることができる。
なかでも好ましくは、ウコンの根茎の乾燥品(ウコン粉末)から温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、又は室温時~熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して調製されるクルクミンである。更に好ましくは結晶状態のクルクミンである。かかるクルクミンは、ウコン粉末をヘキサン及びアセトンによって抽出し、その抽出溶液を濾過後、乾燥させて溶媒を揮発させることによって調製することができる。或いは、合成品を用いることもできる。
【0026】
なお、簡便には、商業的に入手できるウコン色素(クルクミンの粉末:結晶状態)を使用することができる。かかるクルクミン粉末は、三栄源エフ・エフ・アイ(株)等から購入することができる。
【0027】
1.2. 親油性液体
本発明で用いられる親油性液体は、好ましくは室温で液体である。
【0028】
本発明で用いられる親油性液体は、1種の親油性物質、又は2種以上の親油性物質の組合せであることができる。
本発明で用いられる親油性液体が2種以上の親油性物質の組合せである場合、本発明で用いられる親油性液体は、当該組合せとして液体であればよく、必ずしも親油性物質が単独で液体であることを必要としない。
【0029】
本発明で用いられる親油性液体(1種の親油性物質、又は2種以上の親油性物質)は、20℃の水への溶解度が、好ましくは0.1w/w%以下、より好ましくは0.01w/w%以下である。
【0030】
前記親油性液体が含有する親油性物質の例は、油性溶媒、シリコーンオイル、及び油溶性生理活性物質を包含する。すなわち、念のために記載するにすぎないが、前記親油性液体、油性溶媒、及び油溶性生理活性物質は、それぞれ油であってもよい。
【0031】
前記油性溶媒は、好ましくは、飲食又は摂取可能な物質であるか、又は人体に適用可能な物質である。
【0032】
前記油性溶媒の例は、
菜種油、パーム油、大豆油、オリーブ油、ホホバ油、ヤシ油、ベニ花油、エレミ樹脂、及びマスティック樹脂等の植物性油脂類;
牛脂、豚脂等の動物性油脂類;並びに
ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、ロジン、ダンマル樹脂、エステルガム、グリセリン脂肪酸エステル、及び中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等のその他の油性溶媒
を包含する。
【0033】
前記油性溶媒の好適な例は、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、及び植物性油脂類を包含する。
【0034】
ここで中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、炭素数6~12程度、好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数8~10の中鎖脂肪酸から構成されるトリアシルグリセロールをいい、一般に市販されているものを制限なく使用することができる。
具体的には、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸及びカプリン酸混合トリグリセリド等、並びにこれらの混合物が例示できる。
【0035】
前記油性溶媒は、1種単独、又は2種以上の組み合わせであることができる。
【0036】
前記油溶性生理活性物質の例は、
肝油、ビタミンA(例:レチノール等)、ビタミンA油、ビタミンD(例:エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)、ビタミンB酪酸エステル、アスコルビン酸脂肪酸エステル、ビタミンE(例:トコフェロール、トコトリエノール等)、ビタミンK(例:フィロキノン、メナキノン等)等の脂溶性ビタミン類;
リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、l-メントール、オイゲノール、シンナミックアルデヒド、アネトール、ペリラアルデヒド、バニリン、γ-ウンデカラクトン等の植物精油類;
レスベラトロール、油溶性ポリフェノール、グリコシルセラミド、セサミン、ホスファチジルセリン、コエンザイムQ10、ユビキノール、α-リポ酸;
α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等のΩ-3系脂肪酸;リノール酸、及びγ-リノレン酸等のΩ-6系脂肪酸;並びに
植物ステロール
を包含する。
前記油溶性生理活性物質は、1種単独、又は2種以上の組み合わせであることができる。
【0037】
固体色素を、当該固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体と混合することにより、前記固体色素が安定化される。
【0038】
前記親油性液体の量の下限は、特に限定されないが、当該固体色素100質量部に対して、例えば、0.1質量部、1質量部、2質量部、5質量部、又は10質量部であることができる。
前記親油性液体の量は、前記固体色素100質量部に対して200質量部以下であり、好ましくは200質量部未満であり、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部未満、より更に好ましくは100質量部未満、特に好ましくは80質量部以下、更に特に好ましくは60質量部以下、殊更に好ましくは50質量部以下、及び最も好ましくは40質量部以下である。
【0039】
前記固体色素を親油性液体と混合する方法としては、前記固体色素と親油性液体とが接触し得るように混合できる方法であれば特に限定されず、公知の混合方法を採用すればよい。その例は、湿式粉砕器を用いる方法を包含する。
【0040】
本発明の好適な一態様においては、前記混合は、媒体(好ましくは水性媒体)中で実施できる。混合方法は特に限定されず、公知の混合方法を採用すればよい。
本発明の別の一態様においては、前記混合を実施し、その後、所望により、当該混合物を媒体(好ましくは水性媒体)中に分散させる。
当該媒体は、後記するその他の成分等を含有していてもよい。当該媒体(例、溶媒、又は分散媒)の例は、水、低級アルコール、多価アルコール、及びこれらの2種以上の混合液を包含する。当該媒体の好ましい例は、水、多価アルコール、及び水と多価アルコールとの混合液を包含する。当該媒体のより好ましい例は、水と多価アルコールとの混合液を包含する。当該「水と多価アルコールとの混合液」中の多価アルコール含有割合は、特に制限されないが、1質量%以上且つ100質量%未満の範囲内、好ましくは3質量%以上且つ80質量%以下、より好ましくは5質量%以上60質量%以下、更に好ましくは8質量%以上50質量%以下、及びより更に好ましくは8質量%以上30質量%以下未満の範囲を挙げることができる。
また、水と低級アルコールとの混合液を用いる場合における、当該混合液中の低級アルコール含有割合の例も、これと同様の例を包含する。
【0041】
使用できる低級アルコールの例は、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、及びイソブチルアルコール等の炭素数1~4の低級アルコールを包含する。これらは1種単独で使用することもできるが、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。その好適な例は、エタノールを包含する。
【0042】
また、多価アルコールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトールなどを例示することができる。これらは1種単独で使用することもできるが、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくはグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトールである。なお、使用する多価アルコールが常温で固体である場合、水又は低級アルコールと組み合わせて用いることが好ましい。
【0043】
本発明で用いることができる媒体の量は、例えば、前記固体色素100質量部に対して、100質量部~15000質量部の範囲内、好ましくは200~13000質量部の範囲内、更に好ましくは200~10000質量部の範囲内、及びより更に好ましくは200~8000質量部の範囲内である。
【0044】
1.3. その他
本発明の好適な一態様においては、前記固体色素と親油性液体との混合は、界面活性剤の存在下で実施することができる。
本発明で使用できる界面活性剤は、飲食品、医薬品、医薬部外品、又は化粧品の分野で乳化剤及び/又は分散剤として広く使われているものであればよく特に制限されない。
具体的には、
グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステル等のエステル;
レシチン、酵素分解レシチン、及び酵素処理レシチン等のリン脂質;
キラヤ抽出物、エンジュサポニン、大豆サポニン、酵素処理大豆サポニン、茶種子サポニン、及びユッカフォーム抽出物等のサポニン;
ポリソルベート(ポリソルベート20、60、65、80);
アラビアガム、及びガティガム;並びに
加工デンプン
等を例示することができる。
【0045】
なお、これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
その好適な例は、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、リン脂質、アラビアガム、ガティガム、及び加工デンプン、並びにそれらの2種以上の組み合わせを包含する。
そのより好適な例は、アラビアガム、ガティガム、及び加工澱粉、並びにそれらの2種以上の組み合わせを包含する。
そのより更に好適な例は、アラビアガム、及びガティガム、並びに両者の組み合わせを包含する。
本発明の好適な一態様においては、水に対するアラビアガム含量が1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、及び更に好ましくは10質量%以上であるアラビアガム水溶液の存在下で、前記固体色素と親油性液体との混合を実施することができる。当該水に対するアラビアガム含量の上限は特に制限されないが、例えば、50質量%、好ましくは45質量%、より好ましくは40質量%が挙げられる。
本発明の別の好適な一態様においては、水に対するガティガム含量が1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であるガティガム水溶液の存在下で、前記固体色素と親水性液体との混合を実施することができる。当該水に対するガティガム含量の上限は特に制限されないが、例えば、50質量%、好ましくは35質量%、より好ましくは25質量%が挙げられる。
【0046】
本発明における固体色素の安定化方法は、以下の態様を包含する。
水性媒体中における、
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素の安定化方法であって、
前記固体色素を、当該固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体
と混合する工程を含む方法。
前記のとおり、本発明の固体色素の安定化方法には、飲料等の水性媒体中における前記固体色素の安定化方法、すなわち、
水性媒体における前記固体色素の退色抑制又は退色防止方法、及び
水性媒体における前記固体色素の発泡抑制方法、
が包含される。
【0047】
本発明における固体色素の安定化方法は、以下の好適な態様を包含する。
水性媒体中における、
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素の安定化方法であって、
前記固体色素を、当該固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体、並びに
アラビアガム、ガティガム及び加工澱粉からなる群から選択される1種以上、
と混合する工程を含む方法。
【0048】
2. 色素製剤(固体色素含有製剤)
本発明の色素製剤(本明細書中、本発明の固体色素含有製剤とも称する。)は、
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素、及び当該固体色素100質量部に対して100質量部以下の量の親油性液体を含有する。
【0049】
2.1. 固体色素
本発明の固体色素含有製剤が含有する固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素は、前記本発明の安定化方法について説明したものと同様であることができる。
本発明の固体色素含有製剤は、固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素以外の色素を含有していてもよい。
なお、本明細書中、単に固体色素と称する場合は、特に記載の無い限り、当該固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を意味し、これ以外の固体色素を意味しない。
【0050】
前記固体色素の量は、本発明の固体色素含有製剤の全体に対して、通常0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、及び更に好ましくは1質量%以上である。
【0051】
前記固体色素の量は、着色を目的とする場合、具体的には、例えば、着色される最終製品の全質量に対して、前記固体色素が0.01質量%以上で添加されるように設定することができる。
前記固体色素の量は、本発明の固体色素含有製剤の全体に対して、通常20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、及びより好ましくは10質量%以下である。
【0052】
前記固体色素のサイズは、前記本発明の安定化方法について説明したものと同様であることができる。
【0053】
2.2. 親油性液体
本発明の固体色素含有製剤が含有する親油性液体は、前記本発明の安定化方法について説明したものと同様であることができる。
【0054】
前記親油性液体の量は、本発明の固体色素含有製剤の全体に対して、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.2質量%以上、及びより更に好ましくは0.3質量%以上である。
【0055】
その量は、本発明の固体色素含有製剤の全体に対して、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは1.5質量%以下であり、及びより更に好ましくは1質量%未満である。
【0056】
前記親油性液体の、前記固体色素に対する量は、前記本発明の安定化方法について説明したものと同様であることができる。
【0057】
2.3. その他の成分
本発明の固体色素含有製剤は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、その他の成分、すなわち、前記固体色素、及び前記親油性液体以外の成分を含有することができる。
【0058】
当該その他の成分の量は、当該成分の種類、及び使用目的に応じて、技術常識に基づき、適宜設定すればよい。
【0059】
このような、その他の成分の例は、界面活性剤、媒体(例、溶媒、又は分散媒)、抗酸化剤、及び賦形剤を包含する。
【0060】
本発明で使用できる界面活性剤は、飲食品、医薬品、医薬部外品、又は化粧品の分野で乳化剤及び/又は分散剤として広く使われているものであればよく特に制限されない。
具体的には、
グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル;
レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等のリン脂質;
キラヤ抽出物、エンジュサポニン、大豆サポニン、酵素処理大豆サポニン、茶種子サポニン、ユッカフォーム抽出物等のサポニン;
ポリソルベート(ポリソルベート20、60、65、80);
アラビアガム、ガティガム;加工デンプン
等を例示することができる。
【0061】
なお、これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
その好適な例は、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、リン脂質、アラビアガム、ガティガム、及び加工デンプン、並びにそれらの2種以上の組み合わせを包含する。
そのより好適な例は、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アラビアガム、及びガティガム、並びにそれらの2種以上の組み合わせを包含し、更に好適な例は、アラビアガム、ガティガム及び加工澱粉、並びにそれらの2種以上の組み合わせを包含し、より更に好適な例は、アラビアガム、及びガティガム、並びにそれらの2種以上の組み合わせを包含する。
【0062】
前記グリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルとしては、高HLBのもの、具体的にはHLB10以上のものが望ましく、例えばHLB10~16のものを挙げることができる。
【0063】
グリセリン脂肪酸エステルとして、好適には、例えば炭素数12~22、重合度5以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを挙げることができる。具体的にはラウリン酸デカグリセリル、ミリスチン酸デカグリセリル、パルミチン酸デカグリセリル、ステアリン酸デカグリセリル、オレイン酸デカグリセリル、リノール酸デカグリセリル、リノレン酸デカグリセリル、アラキジン酸デカグリセリル、エイコセン酸デカグリセリル、ベヘニン酸デカグリセリルが例示される。好ましくは、ラウリン酸デカグリセリル、ステアリン酸デカグリセリル、オレイン酸デカグリセリルである。
【0064】
ショ糖脂肪酸エステルとして、具体的には、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステルを挙げることができる。好ましくはショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステルである。
【0065】
リン脂質として、好ましくは植物レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、分別レシチン、卵黄レシチンを挙げることができる。より好ましくは植物レシチン、酵素分解レシチンである。ここで酵素処理レシチンは、「植物レシチン」又は「卵黄レシチン」とグリセリンの混合物に、ホスホリパーゼDを作用させて得られたものであり、主成分としてホスファチジルグリセロールを含む。また酵素分解レシチンは、「植物レシチン」又は「卵黄レシチン」を、水又はアルカリ性水溶液でpH調整した後、室温時~温時酵素分解し、次いでエタノール、イソプロピルアルコール若しくはアセトンで抽出して得られたものである。主成分としてリゾレシチン及びフォスファチジン酸を含む。
【0066】
サポニンとして、好ましくはキラヤ抽出物、エンジュサポニン、大豆サポニン、酵素処理大豆サポニン、茶種子サポニン、ユッカフォーム抽出物等のサポニンを挙げることができる。
【0067】
ポリソルベートとしては、具体的にはポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65及びポリソルベート80が知られており、一般にも市販されている。本発明においてはこれらのポリソルベートの1種、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
界面活性剤を使用する場合、その量は、界面活性剤の種類によって異なることができる。
例えば、界面活性剤としてアラビアガムを使用した場合、その量は、本発明の固体色素含有製剤の全体に対して、通常5~40質量%、好ましくは10質量%~35質量%の範囲内であることができる。
また、例えば、界面活性剤としてガティガムを使用した場合、その量は、通常1質量%~20質量%、及び好ましくは1~15質量%の範囲内であることができる。
【0069】
前記媒体の例は、前記本発明の安定化方法について記載した媒体と同様であることができる。
【0070】
その量は、例えば、本発明の固体色素含有製剤の全体に対して、通常50質量%以上であり、及び好ましくは85質量%以上であることができる。
【0071】
その量は、例えば、本発明の固体色素含有製剤の全体に対して、通常100質量%未満であり、及び好ましくは95質量%以下であることができる。
【0072】
前記媒体の、前記固体色素に対する量は、前記本発明の安定化方法について説明したものと同様であることができる。
【0073】
本発明で用いることができる抗酸化剤の例は、L-アスコルビン酸及びL-アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸類;
L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル等のアスコルビン酸エステル類;
エリソルビン酸及びエリソルビン酸ナトリウム等のエリソルビン酸類;
亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類等;
α-トコフェロール及びミックストコフェロール等のトコフェロール類;
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;
エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;
没食子酸及び没食子酸プロピル等の没食子酸類;
アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、グローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、へゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン抽出物(小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物等の各種植物の抽出物;
その他、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素分解リンゴ抽出物、ゴマ油抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物等を包含する。
【0074】
当該抗酸化剤の量は、その使用目的が達成できるように適宜設定すればよい。例えば、抗酸化剤としてL-アスコルビン酸を使用した場合、その量は、前記固体色素100質量部に対して、500質量部以下であることができる。その量の下限は特に限定されないが、例えば、前記固体色素100質量部に対して、1質量部であることができる
【0075】
本発明で用いることができる賦形剤の例は、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ゼラチン、澱粉、デキストリン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、合成ならびに天然のケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、重炭酸ナトリウム、乾燥酵母を包含する。
また、液体状態の製剤を調製する場合の賦形剤の例は、水、グリセリン、プロピレングリコール、単シロップ、エタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール等を包含する。
【0076】
その量は、その使用目的が達成できるように適宜設定すればよい。
【0077】
本発明の固体色素含有製剤の剤形は、例えば、散剤、粉剤、錠剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、チュアブル、液剤、又はシロップ剤等であることができる。
本発明の固体色素含有製剤の好適な一態様は、水を含有する製剤、好ましくは水性製剤であることができる。
【0078】
本発明の固体色素含有製剤は、以下の好適な態様を包含する。
水、
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を含有する色素製剤であって、
前記固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体、
を含有する製剤。
【0079】
本発明の固体色素含有製剤は、また、以下の好適な態様を包含する。
水、
固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素を含有する色素製剤であって、
前記固体色素100質量部に対して200質量部以下の量の親油性液体、並びに、
アラビアガム、ガティガム、及び加工澱粉からなる群より選択される1種以上、
を含有する製剤。
【0080】
本発明の固体色素含有製剤は、また、上記水を含有する製剤を常法に従って粉末化した粉末製剤であることができる。
【0081】
本発明の固体色素含有製剤は、例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品、又は化粧品の着色に好適に使用できる。
【0082】
前記飲食品として、具体的には、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、果実飲料(例:果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料)、野菜飲料、野菜及び果実飲料、リキュール類等のアルコール飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料等の飲料類;
紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶等の茶飲料類(なお、飲料類と茶飲料類は、「飲料」に包含される。);
カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;
ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー等の冷菓類;
チューインガム及び風船ガム等のガム類(例:板ガム、糖衣状粒ガム);
コーティングチョコレート(例:マーブルチョコレート等)、風味を付加したチョコレート(例:イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等)等のチョコレート類;
ハードキャンディー(例:ボンボン、バターボール、マーブル等)、ソフトキャンディー(例:キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等)、糖衣キャンディー、ドロップ、及びタフィ等のキャンディー類;
コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;
セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどの液体調味料類;
ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ、シロップ等のジャム類;
赤ワイン等の果実酒;
シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;
漬物等の農産加工品;を挙げることができる。
なかでも好ましくは飲料、デザート類(特に好適にはゼリー)、キャンディー類、ジャム、漬物、液体調味料であり、より好ましくは飲料である。
【0083】
前記医薬品及び医薬部外品としては、シロップ剤、ドリンク剤、錠剤、カプセル剤、チンキ剤、クリーム、及び軟膏剤等を例示できる。
なかでも好ましくは、ドリンク剤、及びシロップ剤が例示できる。
【0084】
前記化粧品の例としては、歯磨粉、シャンプー、リンス、ボディーソープ、及び化粧料が例示できる。
【0085】
3. 固体色素含有製剤の製造方法
本発明の固体色素含有製剤は、その剤形に応じて、慣用の方法、又はそれに準じる方法を採用して製造できる。
【0086】
本発明の固体色素含有製剤は、例えば、
固体色素を、当該固体色素100質量部に対して100質量部以下の量の親油性液体と混合する工程を含む製造方法により製造することができる。
【0087】
固体色素を親油性液体と混合する方法としては、本発明の固体色素の安定化方法について説明したものと同様であることができる。
【0088】
本発明の固体色素含有製剤がその他の成分、すなわち、前記固体色素、及び前記親油性液体以外の成分を含有する場合、当該その他の成分は、当該成分の種類、及び使用目的等に応じて、本発明の固体色素含有製剤の製造の適当な段階で混合すればよい。
【0089】
本発明の固体色素含有製剤の製造においては、必要に応じて、当該混合後、更に均質化処理を行うこともできる。均質化処理の方法としては、固体色素などの成分を均質に分散する方法であれば特に制限されず、例えば、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、ホモジナイザー等の乳化及び/又は分散装置、超音波分散機を使用して行うことができる。
【0090】
4. 被覆疎水性固体粒子
本発明は更に、
(1)疎水性固体粒子、及び
(2)当該疎水性固体粒子を直接的に被覆している被覆層であって、親油性液体を含有し、及び気体を含有しない被覆層
を含有する、
被覆疎水性固体粒子
もまた提供する。
【0091】
ここで、語句「当該疎水性固体粒子を直接的に被覆している被覆層」とは、被覆層と疎水性固体粒子とが接触していることを意味する。
ここで、語句「気体を含有しない」とは、気体を実質的に、又は完全に含有しないことを包含する。
ここで、気体は、気体の形態を有するものを意味し、媒体中に完全に溶解している気体を意味しない。すなわち、前記被覆層には、気体が溶解していてもよい。
本明細書中、被覆は、完全な被覆、又は不完全な(部分的な)被覆を包含する。
本発明の被覆疎水性固体粒子において、前記疎水性固体粒子が被覆されていることは、例えば、顕微鏡観察により、当該被覆疎水性固体粒子が、前記疎水性固体粒子の形状とはとは異なる滑らかな形状を有することにより、容易に認識可能である。
【0092】
当該被覆疎水性固体粒子の例は、前記固体色素の粒子を包含する。
【0093】
本発明で用いられる疎水性固体は、特に限定されず、飲食品、医薬品、医薬部外品、又は化粧品等に通常利用できる固体色素、固体無機塩、固体有機塩、又はステロール、及びこれらの混合物であることができる。
【0094】
当該被覆疎水性固体粒子は、好適に、これを含有する周囲環境である液体に与える物理的不安定性が抑制、すなわち、例えば、当該固体粒子を含有する周囲環境としての水性液体の発泡が抑制されている。
【0095】
前記疎水性固体は、好ましくは固体色素であることができ、及びより好ましくは、固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素からなる群より選択される1種以上の固体色素であることができる。
また、前記疎水性固体は、好ましくはステロール、固体無機塩及び固体有機酸塩からなる群より選択される1種以上の塩であることができ、及びより好ましくは、固体無機鉄塩(例えば、ピロリン酸鉄等)、及び固体無機カルシウム塩(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等)であることができる。
【0096】
前記疎水性固体の形態、性質、及び用途等は、前記固体色素と同様であり、これについての説明から理解され得る。
【0097】
具体的には、例えば、そのサイズは、前記で説明した固体色素のサイズと同じであることができる。
すなわち、そのサイズの下限は、特に限定されないが、メジアン径で、0.01μmであることができる。
そのサイズは、メジアン径で、通常5μm以下であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。
【0098】
前記被覆層は、好適に、更に、アラビアガム、及びガティガムからなる群より選択される1種以上の水溶性多糖類を含有することができる。
これにより、優れた発泡抑制効果が奏され得る。
【0099】
5. 疎水性固体粒子含有水性製剤
本発明は、更に、
[1]前記被覆層が、更に、アラビアガム、及びガティガムからなる群より選択される1種以上の水溶性多糖類を含有する、
前記本発明の被覆疎水性固体粒子、及び
[2]水
を含有する、
疎水性固体粒子含有水性製剤を
提供する。
【0100】
当該水性製剤中の前記被覆疎水性固体粒子の含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.05質量%、0.1質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、又は60質量%であることができる。
当該水性製剤中の前記被覆疎水性固体粒子の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、又は70質量%であることができる。
【0101】
当該水性製剤の製造方法は、前記本発明の色素製剤の製造方法と同じ、又は類似することができ、及び前記本発明の色素製剤の製造方法を参照して理解され得る。
【0102】
6. 食品
本発明の食品は、本発明の疎水性固体粒子、又は本発明の疎水性固体粒子含有製剤を含有する。
本発明の食品において、前記疎水性固体粒子、及び/又は前記疎水性固体含有製剤は、元の性状(例:形状、組成、及び性質、並びにこれらの2種以上の組合せ)を完全に若しくは実質的に保持していてもよく、又は保持していなくてもよいが、保持されている程度が高いことが好ましい。
ここで、「実質的に」とは、疎水性固体の安定化が実現されていることを指標にして判断され得る。
本発明の食品の好適な一態様は、カロテノイド色素、及びクルクミン色素からなる群より選択される1種以上の色素を含有する色素含有食品である。
本発明の食品の別の好適な一態様は、固体無機鉄塩(例えば、ピロリン酸鉄等)を含有する鉄含有食品、又は固体無機カルシウム塩(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等)を含有するカルシウム含有食品である。
本発明の食品は、好ましくは固体色素含有食品である。
本発明の食品は、カロテノイド色素、及びクルクミン色素以外の色素を含有していてもよい。
本発明の食品は、固体カロテノイド色素、及び固体クルクミン色素以外の固体色素を含有していてもよい。
【0103】
前記食品の例は、前記本発明の固体色素含有製剤について記載した食品の例を包含する。
【0104】
5. 食品の製造方法
本発明の食品は、例えば、本発明の色素製剤を食品原料と混合する工程を含む製造方法によって製造できる。
【0105】
5.1. 食品原料
本発明で用いられる食品原料は、特に限定されない。
前述した通り、当該「食品原料」は通常「食品原料」と認識されているものに加えて、通常「食品」と認識されているものも、包含することを意図して用いられる。
【実施例
【0106】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0107】
以下の実施例の表中、組成を示す数値は、特に記載の無い限り、質量部である。
【0108】
以下の実施例において用いた材料を説明する。
中鎖脂肪酸グリセリド(ODO): カプリル酸/カプリン酸=3/1、日清オイリオ社
中鎖脂肪酸グリセリド(スコレー64G): カプリル酸/カプリン酸=3/2、日清オイリオ社
ベニ花油: 脂肪酸組成として75%リノール酸
ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB):EASTMAN CHEMICAL PRODUCTS INC.
米胚芽油(こめ胚芽油ガンマ30N):ガンマ-オリザノール含量 30質量%、築野食品
加工澱粉(ピュリティガムBE):オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、NSC社
シリコーンオイル:TSA750S、MOMENTIVE社
チャ抽出物(サンカテキン油性E):茶カテキン量 6質量%以上、三井農林
柑橘混合混濁果汁(5倍濃縮):柑橘混合混濁果汁 53R、 えひめ飲料
【0109】
以下の実施例の評価において、Aは優を、Bは良を、及びCは不良を表す。
【0110】
試験A[退色防止試験]
後記表1~8に記載の組成で、次の試料調製方法により、各比較例、及び実施例のカロテノイド色素製剤を調製した。
<試料調製方法>
リコピン、又はカロチンの結晶を湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製、ダイノミルKDL)を用いて粉砕し、結晶性微細化粒子分散組成物を調製した。
メジアン径の測定は、レーザー解析式粒度分布計(日機装社製、マイクロトラック MT-3000 II)を用いて行った。
【0111】
各比較例、又は実施例のカロテノイド色素製剤を用いて、後記の飲料調製方法により、表1の各飲料を調製し、及びこれらを2ヶ月、室温(25℃)で保存した。
保存後の飲料を、後記の退色防止効果の評価方法で評価した。
【表1】
【0112】
<飲料調製方法>
果糖ぶどう糖液糖、クエン酸(無水)、ビタミンC、クエン酸3ナトリウム、及びイオン交換水を混合して溶解させた。
次いで、そこへ各比較例又は実施例の製剤10%水溶液を添加し、マグネットスターラーにて1000rpmで10分間混合した。得られた溶液を93℃達温にて200mlのPETボトルに100gずつ充填した。
【0113】
<飲料中のリコピン含量測定方法>
n-ヘキサンによって、各飲料からリコピンを抽出した。
これを分光光度計(日本分光社、分光光度計V-600)を用いて、n-ヘキサンを対象とした極大吸収波長(474nm付近)における吸光度を測定し、次式によりリコピン含量(ppm)を求めた。
リコピン含量(ppm)=[吸光度×希釈倍率×10000]/[3450×試料秤取量(g)]
【0114】
<飲料中のカロチン含量測定方法>
シクロヘキサンによって、飲料からカロチンを抽出した。
これを、分光光度計(日本分光社、分光光度計V-600)を用いて、シクロヘキサンを対象とした極大吸収波長(454nm付近)における吸光度を測定し、次式によりカロチン含量(ppm)を求めた。
カロチン含量(ppm)=[吸光度×希釈倍率×10000]/[2450×試料秤取量(g)]
【0115】
<退色防止効果の評価方法>
リコピン又はカロチンの含量残存率(%)
A(優): 40%以上
B(良): 5%以上40%未満
C(不良): 5%未満

カロテノイド含量残存率(未殺菌飲料に対する残存率)の算出又は目視による評価
残存率を測定したものは、この基準に従いA(優)、B(良)、又はC(不良)の評価をつけた。
残存率を測定していないものは、それぞれの残存率における色を基準にし、目視にてA(優)、B(良)、又はC(不良)の評価をつけた。
【0116】
試験例1
次の表2に組成を示す各比較例又は実施例の製剤を含有する飲料を用いて、親油性液体としての油脂[中鎖脂肪酸グリセリド(ODO)]の添加効果を試験した。結果を表2に示した。各比較例及び実施例の製剤は、水、ガティガム及びプロピレングリコールを含有するガティガム水溶液にトマト色素を混合後、中鎖脂肪酸グリセリドを混合することで調製した。次いで、当該製剤を高圧ホモジナイザーで処理した(圧力500kg/cm2)。


【表2】
【0117】
これにより、油脂の使用による退色防止効果が確認された。
【0118】
試験例2
次の表3に組成を示す各比較例又は実施例の製剤を含有する飲料を用いて、分散基材の種類を変更した場合の評価試験を実施した。結果を表3に示した。
【表3】
【0119】
分散基材としてガティガムに換えてアラビアガムを使用した場合にも、試験例1と同様の結果が得られた。
【0120】
試験例3
次の表4に組成を示す各比較例又は実施例の製剤を含有する飲料を用いて、親油性液体の種類による違いの評価試験を実施した。結果を表4に示した。
【表4】
【0121】
種々の親油性液体において、それぞれ退色防止効果が確認された。
【0122】
試験例4
次の表5に組成を示す各比較例又は実施例の製剤を含有する飲料を用いて、油添加量の違いの評価試験を実施した。結果を表5に示した。
【表5】
【0123】
リコピン1%に対して、少なくとも、0.03%以上の油の使用で退色防止効果がみられた。
【0124】
試験例5
次の表6に組成を示す各比較例又は実施例の製剤を含有する飲料を用いて、色素の粒子径による差の評価試験を実施した。結果を表6に示した。
【0125】
【表6】
【0126】
色素の粒子径が異なっても、少なくとも、0.2~0.5μm(メジアン径)の範囲で、退色防止効果がみられた。
【0127】
試験例6
次の表7に組成を示す各比較例又は実施例の粉末製剤における効果を試験した。当該製剤は、各成分を混合することによって調製した。結果を表7に示した。
【表7】
【0128】
液体製剤(ベース製剤)と同様に、中鎖脂肪酸グリセリドを添加することで、退色防止効果が見られた。
また、抽出トコフェロールの効果についても、液体製剤と同様の結果が得られた。
【0129】
試験例7
次の表8に組成を示す各比較例又は実施例の製剤を含有する飲料を用いて、他のカロテノイド(β-カロチン)における効果を試験した。結果を表8に示した。
【表8】
【0130】
リコピンと同様に、β-カロチンにおいても中鎖脂肪酸グリセリドを添加することで、退色防止効果がみられた。
【0131】
試験B[発泡試験([試験Ba]泡立ち、及び[試験Bb]泡吹き]
<試験液の作成>
表9の組成で、次のようにして、試験液を作成した。
まず、水にクエン酸(無水)、クエン酸3Na、L-アスコルビン酸を溶解し、次いで、果糖ぶどう糖液糖、果汁を混合して、液1を作成した。
次に、16.6gの液1に、液2を0.4g添加し、シロップを作成した。
シロップ20g及び炭酸水80mLを混合し、試験液を作成した。
【表9】
【0132】
<[発泡試験Ba]泡立ち試験>
【0133】
<試験方法>
試験液500mlを、漏斗(口径:φ100mm、足長:105mm)を用いて、1000mlメスシリンダー(内径:65mm)に注ぎ、泡の上面が一番高い位置に来たときの、泡の上面の高さの値を読み取った。
泡立ちによりメスシリンダーから試料があふれ出た場合、その質量を測定した。
【0134】
<評価方法>
各試験において設定した対照の泡部の上面の高さを100%としたときの各試料の泡部の上面の高さ(泡立ちがない場合は液面の上面の高さ)の比を泡立ち度と定義し、その値に基づき、以下の評価基準にて試料を評価した。
各試験において設定した対照は、試験例B1は「比較例B1」であり、その他の試験例は各表中で最も左側の比較例である。
【0135】
<泡立ち度の評価規準>
【表10】
A(優):泡立ちの抑制が十分である。
C(不良):泡立ちの抑制が不十分である。
【0136】
<[発泡試験Bb]泡吹き試験>
前記シロップ22mlを、容量110ml(柏洋硝子製、「100卓上」、重量110g、ビン長131mm、胴径46mm、口部26.3ヒンジ)のジュース瓶に入れ、そこへ炭酸水を88ml添加し、試験液とした。
当該充填したジュース瓶を縦置きして140ストローク/minで横方向に2時間振とうした。
40℃にて1時間静置した。
当該静置後、開栓し、それにより噴出した泡の量を測定した。
【表11】
A(優):泡吹きの抑制が十分である。
C(不良):泡吹きの抑制が不十分である。
【0137】
以下、各試料の試験結果を、各試験例の試験目的に従って、以下の各表にまとめた。各表で共通する番号を有する例は、同じ試験結果である。
【0138】
試験例B1
親油性液体の種類による泡立ち抑制効果への影響を試験した。
表12に結果を示した。
この結果から、油の種類が異なる場合でも本発明の実施例の泡立ち抑制効果が確認された。
【表12】
【0139】
試験例B2
油添加量の泡立ち抑制効果への影響を試験した。
表13に結果を示した。
油の添加量を増やすに従って、泡立ち抑制効果が増強される傾向が確認された。
【表13】
【0140】
試験例B3
他のカロテノイド、鉄、及びクルクミン(ウコン色素)に対して、それぞれ、泡立ち抑制効果を試験した。
表14~16に結果を示した。
他のカロテノイド、鉄、及びクルクミン(ウコン色素)に対しても、泡立ち抑制効果が確認された。
【表14】
【0141】
【表15】
【0142】
【表16】
【0143】
試験例B4
アラビアガムを用いた場合の、泡立ち抑制効果を試験した。
結果を表17に示した。
比較例B5はシロップに炭酸水を注ぐと大量の泡が発生し、1000mlメスシリンダーから溢れ、炭酸水全量を注ぐことができなかった。一方、実施例B18及びB19の泡立ち量は表17のとおりである。
本結果から、アラビアガムを用いた場合でも、泡立ち抑制効果が確認された。
【表17】