(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】導光板および映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220824BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2019009516
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 竜志
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173035(WO,A1)
【文献】特開2018-165815(JP,A)
【文献】特開2018-116262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0285346(US,A1)
【文献】特開2016-177231(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した映像光を伝搬し投射する導光板であって、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、
前記部分反射面アレイにより反射され、当該導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有
し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイを映像光の伝搬方向に沿って複数の領域(以下、分割領域)に分割し、該分割領域間では異なる光学的構成をもたせ、
前記分割領域間では前記部分反射面の面間隔Lが異なり、
前記入射面から数えて第k番目、および第k+1番目の前記分割領域内にある前記部分反射面の面間隔をそれぞれL
Ak
、およびL
Ak+1
としたとき、L
Ak+1
<L
Ak
を満たすように前記部分反射面を配置し、
前記部分反射面の反射率Rが全て略等しく、
前記導光板に沿った映像光の伝搬方向におけるアイボックスの幅をEB[mm]、アイリリーフをER[mm]、投射する映像光の水平方向の画角をFOV[度]としたとき、前記部分反射面の反射率Rが次式の範囲にあることを特徴とする導光板。
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))
【請求項2】
請求項
1に記載の導光板であって、
前記部分反射面の反射率をR、前記入射面から数えて第k番目の前記分割領域内にある前記部分反射面の面間隔をL
Ak、前記部分反射面の個数をN
Akとすると、次式を満たすように前記部分反射面を配置したことを特徴とする導光板。
L
Ak×(1-R)
NAk≦L
Ak+1<L
Ak
【請求項3】
入射した映像光を伝搬し投射する導光板であって、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、
前記部分反射面アレイにより反射され、当該導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイを映像光の伝搬方向に沿って複数の領域(以下、分割領域)に分割し、該分割領域間では異なる光学的構成をもたせ、
前記第1および第2の内面反射面のうち、映像光が出射する面の外側の全てまたは一部に調光コーティング層を有し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイの前記分割領域に対応させて前記調光コーティング層を複数の領域に分割し、分割した領域間で前記調光コーティング層の透過率が異なることを特徴とする導光板。
【請求項4】
入射した映像光を伝搬し投射する導光板であって、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、
前記部分反射面アレイにより反射され、当該導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有し、
前記均一化手段として、前記入射面から数えて第n番目、および第n+1番目の前記部分反射面の面間隔をそれぞれL
n、およびL
n+1としたとき、L
n+1<L
nを満たす
ように前記部分反射面を配置し
、
前記部分反射面の反射率Rが全て略等しく、
前記導光板に沿った映像光の伝搬方向におけるアイボックスの幅をEB[mm]、アイリリーフをER[mm]、投射する映像光の水平方向の画角をFOV[度]としたとき、前記部分反射面の反射率Rが次式の範囲にあることを特徴とする導光板。
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))
【請求項5】
請求項
4に記載の導光板であって、
前記部分反射面の反射率をR、前記入射面から数えて第n番目の面間隔をL
nとしたとき、次式を満たすように前記部分反射面を配置したことを特徴とする導光板。
L
n×(1-R)≦L
n+1<L
n
【請求項6】
請求項
4に記載の導光板であって、
前記第1および第2の内面反射面のうち、映像光が出射する面の外側の全てまたは一部に所定の反射特性または透過特性をもつコーティング層を施したことを特徴とする導光板。
【請求項7】
映像を表示する映像表示装置であって、
表示する映像の映像光を生成する映像生成部と、
入射した映像光を伝搬し投射する導光板と、
前記映像生成部で生成された映像光を前記導光板に出射するカップリングプリズムと、を備え、
前記導光板は、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、
を備え、
前記導光板は、
前記部分反射面アレイにより反射され、前記導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有
し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイを映像光の伝搬方向に沿って複数の領域(以下、分割領域)に分割し、該分割領域間では異なる光学的構成をもたせ、
前記分割領域間では前記部分反射面の面間隔Lが異なり、
前記入射面から数えて第k番目、および第k+1番目の前記分割領域内にある前記部分反射面の面間隔をそれぞれL
Ak
、およびL
Ak+1
としたとき、L
Ak+1
<L
Ak
を満たすように前記部分反射面を配置し、
前記部分反射面の反射率Rが全て略等しく、
前記導光板に沿った映像光の伝搬方向におけるアイボックスの幅をEB[mm]、アイリリーフをER[mm]、投射する映像光の水平方向の画角をFOV[度]としたとき、前記部分反射面の反射率Rが次式の範囲にあることを特徴とする映像表示装置。
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))
【請求項8】
映像を表示する映像表示装置であって、
表示する映像の映像光を生成する映像生成部と、
入射した映像光を伝搬し投射する導光板と、
前記映像生成部で生成された映像光を前記導光板に出射するカップリングプリズムと、を備え、
前記導光板は、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、
前記導光板は、
前記部分反射面アレイにより反射され、当該導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイを映像光の伝搬方向に沿って複数の領域(以下、分割領域)に分割し、該分割領域間では異なる光学的構成をもたせ、
前記第1および第2の内面反射面のうち、映像光が出射する面の外側の全てまたは一部に調光コーティング層を有し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイの前記分割領域に対応させて前記調光コーティング層を複数の領域に分割し、分割した領域間で前記調光コーティング層の透過率が異なることを特徴とする映像表示装置。
【請求項9】
映像を表示する映像表示装置であって、
表示する映像の映像光を生成する映像生成部と、
入射した映像光を伝搬し投射する導光板と、
前記映像生成部で生成された映像光を前記導光板に出射するカップリングプリズムと、を備え、
前記導光板は、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、
前記導光板は、
前記部分反射面アレイにより反射され、当該導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有し、
前記均一化手段として、前記入射面から数えて第n番目、および第n+1番目の前記部分反射面の面間隔をそれぞれL
n
、およびL
n+1
としたとき、L
n+1
<L
n
を満たす
ように前記部分反射面を配置し、
前記部分反射面の反射率Rが全て略等しく、
前記導光板に沿った映像光の伝搬方向におけるアイボックスの幅をEB[mm]、アイリリーフをER[mm]、投射する映像光の水平方向の画角をFOV[度]としたとき、前記部分反射面の反射率Rが次式の範囲にあることを
特徴とする映像表示装置。
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))
【請求項10】
ユーザの頭部に装着してユーザに映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、
映像を表示する映像表示装置と、
外部情報を検出するセンシング部と、
外部機器と通信する通信部と、
電力を供給する電力供給部と、
情報を記憶する記憶部と、
ユーザの操作を受け付ける操作入力部と、
当該ヘッドマウントディスプレイの制御を行うコントロール部と、を備え、
前記映像表示装置は、
表示する映像の映像光を生成する映像生成部と、
入射した映像光を伝搬し投射する導光板と、
前記映像生成部で生成された映像光を前記導光板に出射するカップリングプリズムと、を備え、
前記導光板は、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、
を備え、
前記導光板は、
前記部分反射面アレイにより反射され、前記導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有
し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイを映像光の伝搬方向に沿って複数の領域(以下、分割領域)に分割し、該分割領域間では異なる光学的構成をもたせ、
前記分割領域間では前記部分反射面の面間隔Lが異なり、
前記入射面から数えて第k番目、および第k+1番目の前記分割領域内にある前記部分反射面の面間隔をそれぞれL
Ak
、およびL
Ak+1
としたとき、L
Ak+1
<L
Ak
を満たすように前記部分反射面を配置し、
前記部分反射面の反射率Rが全て略等しく、
前記導光板に沿った映像光の伝搬方向におけるアイボックスの幅をEB[mm]、アイリリーフをER[mm]、投射する映像光の水平方向の画角をFOV[度]としたとき、前記部分反射面の反射率Rが次式の範囲にあることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))
【請求項11】
ユーザの頭部に装着してユーザに映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、
映像を表示する映像表示装置と、
外部情報を検出するセンシング部と、
外部機器と通信する通信部と、
電力を供給する電力供給部と、
情報を記憶する記憶部と、
ユーザの操作を受け付ける操作入力部と、
当該ヘッドマウントディスプレイの制御を行うコントロール部と、を備え、
前記映像表示装置は、
表示する映像の映像光を生成する映像生成部と、
入射した映像光を伝搬し投射する導光板と、
前記映像生成部で生成された映像光を前記導光板に出射するカップリングプリズムと、を備え、
前記導光板は、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、
前記導光板は、
前記部分反射面アレイにより反射され、前記導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイを映像光の伝搬方向に沿って複数の領域(以下、分割領域)に分割し、該分割領域間では異なる光学的構成をもたせ、
前記第1および第2の内面反射面のうち、映像光が出射する面の外側の全てまたは一部に調光コーティング層を有し、
前記均一化手段として、前記部分反射面アレイの前記分割領域に対応させて前記調光コーティング層を複数の領域に分割し、分割した領域間で前記調光コーティング層の透過率が異なることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
ユーザの頭部に装着してユーザに映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、
映像を表示する映像表示装置と、
外部情報を検出するセンシング部と、
外部機器と通信する通信部と、
電力を供給する電力供給部と、
情報を記憶する記憶部と、
ユーザの操作を受け付ける操作入力部と、
当該ヘッドマウントディスプレイの制御を行うコントロール部と、を備え、
前記映像表示装置は、
表示する映像の映像光を生成する映像生成部と、
入射した映像光を伝搬し投射する導光板と、
前記映像生成部で生成された映像光を前記導光板に出射するカップリングプリズムと、を備え、
前記導光板は、
映像光を入射する入射面と、
入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、
前記第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、
前記導光板は、
前記部分反射面アレイにより反射され、前記導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有し、
前記均一化手段として、前記入射面から数えて第n番目、および第n+1番目の前記部分反射面の面間隔をそれぞれL
n
、およびL
n+1
としたとき、L
n+1
<L
n
を満たす
ように前記部分反射面を配置し、
前記部分反射面の反射率Rが全て略等しく、
前記導光板に沿った映像光の伝搬方向におけるアイボックスの幅をEB[mm]、アイリリーフをER[mm]、投射する映像光の水平方向の画角をFOV[度]としたとき、前記部分反射面の反射率Rが次式の範囲にあることを
特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射した映像光を伝搬し投射する導光板および映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウンドディスプレイやヘッドアップディスプレイなどの映像表示装置に用いられる導光板は、瞳拡大によってアイボックスを広げ、映像をユーザに投射する機能を有している。瞳拡大に関する技術として、例えば特許文献1には、「光を透過させる基板、内部反射全体によって基板中へ光を連結させるための光学手段、及び基板に所有される複数の部分反射面を含み、部分反射面が、互いに平行であると共に基板のどの縁に対しても平行ではないことを特徴とする、光学デバイス」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導光板には、瞳拡大によってアイボックスを所定の大きさに広げるだけでなく、ユーザの視界が遮られることのないように高いシースルー性が求められる。特にヘッドマウンドディスプレイでは、日常生活での補助や保守点検などの作業支援を行うことを想定しており、導光板および導光板を含めた映像表示装置全体は、明るい表示映像が得られるよう高い光利用効率が求められる。
【0005】
特許文献1に記載の構成では、導光板(光学デバイス)として透明な基板内部に部分反射面を設けることで、映像光をユーザ側に投射している。しかし、映像光が導光板を伝搬し、部分反射面で反射するに従って、導光板を伝搬する映像光の光量が減少していくので、均一な明るさの映像光を投射することができない。加えて、高い光利用効率を実現するために部分反射面の反射率を高くすると、映像光の明るさの不均一さがより顕著になる。よって、高い光利用効率を維持しながら導光板内で均一な明るさの映像光を投射させることは困難であった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高い光利用効率でかつ均一な明るさの映像光を投射可能な導光板および映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の導光板は、映像光を入射する入射面と、入射した映像光を全反射させながら伝搬する略平行な第1および第2の内面反射面と、第1および第2の内面反射面に挟まれた内部に、映像光の一部を反射する複数の部分反射面が所定の角度傾斜して映像光の伝搬方向に配列された部分反射面アレイと、を備え、部分反射面アレイにより反射され、導光板から投射される映像光の強度分布を均一化する均一化手段を有することを特徴とする。
【0008】
具体的に言えば、均一化手段として、部分反射面アレイを映像光の伝搬方向に沿って複数の領域に分割し、分割領域間では異なる光学的構成をもたせたるようにした。例えば、分割領域間では部分反射面の面間隔L、または部分反射面の反射率Rを異ならせる構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い光利用効率で均一な明るさの映像光を投射可能な導光板および映像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る映像表示装置1の構成を示す図。
【
図5】導光板2aの厚さを考慮した面間隔の条件を説明する図。
【
図6】映像光の強度分布をシミュレーションした結果を示す図。
【
図8】ヘッドマウントディスプレイ20を装着したユーザ50を示す図。
【
図10】ヘッドマウントディスプレイ20の機能構成を示すブロック図。
【
図11】実施例2に係る導光板2bの構成を示す図。
【
図12】実施例3に係る導光板2cの構成を示す図。
【
図13】実施例4に係る導光板2dの構成を示す図。
【
図14】実施例5に係る導光板2eの構成を示す図。
【
図15】実施例6に係る導光板2fの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。各実施例では、導光板から投射される映像光の明るさ均一化する均一化手段を有している。各図面では、同じ機能を持つ要素に同じ符号を付与しているが、導光板2については、実施例1~6に対し異なる符号2a~2fで区別している。
【実施例1】
【0012】
実施例1では、均一化手段として、導光板内の部分反射面の間隔が異なるように構成している。
【0013】
図1は、実施例1に係る映像表示装置1の構成を示す図であり、映像表示装置1からの映像をユーザが見ている様子を模式的に示したものである。ユーザ(ユーザの瞳51)に対し左右方向をx軸、前後方向(視線方向)をy軸、上下方向をz軸とし、ここではユーザの頭上から見たxy断面図を示す。映像表示装置1は、映像生成部3、カップリングプリズム4および導光板2aで構成されており、導光板2aはx軸に沿って配置されている。
【0014】
映像生成部3は、ユーザに見せるための映像を生成してその映像光をカップリングプリズム4に出射する。カップリングプリズム4は、映像生成部3と導光板2aとを結合し、映像生成部3が出射した映像光を導光板2aに導く。すなわちカップリングプリズム4は、頂角αを成す第1の面41と第2の面42を有し、第1の面41から入射した映像生成部3からの映像光を、第2の面42から出射して、導光板2aの入射面5に入射させる。
【0015】
導光板2aは、入射面5から入射した映像光をx方向に伝搬させ、複数の部分反射面8により映像光をユーザの瞳51に向けてy方向に投射することにより、ユーザに映像を視認させる。その際、x方向に射出瞳を拡大することでアイボックス(ユーザが映像を視認できる範囲)を広げる構造としている。なお、カップリングプリズム4においてz方向に射出瞳を拡大させる機能を持たせ、z方向にアイボックスを広げる構造としても良い。
【0016】
導光板2aは、互いに略平行な第1の内面反射面6と第2の内面反射面7とを備え、第1の内面反射面6と第2の内面反射面7に挟まれた内部には、複数の部分反射面8が角度θだけ傾斜してx方向に配列された部分反射面アレイ10を有する。カップリングプリズム4から入射面5に入射された映像光は、第1の内面反射面6と第2の内面反射面7により全反射してx方向に伝搬する。また、x方向に伝搬された映像光の一部は、部分反射面8で反射してy方向に進行を変え、第1の内面反射面6を透過して導光板2aの外部に出射させる。その際、複数の部分反射面8で反射した映像光が複製されるので、x方向にアイボックスが拡大する。
【0017】
導光板2aの外部に出射された映像光の一部はユーザの瞳51に入射する。これにより、ユーザは映像表示装置1が表示する映像を視認できる。また部分反射面8の反射率が高いほど、ユーザに投射される映像光の光量が増加し、高い光利用効率をもつ導光板となる。
【0018】
導光板2aの端面9は入射面5に略平行で、内面反射面6,7と直交しないように形成されている。導光板端面9は、砂面(すりガラス面)ではなく、研磨面とすることが好ましい。これにより、全反射により導光板2aの内部を伝搬し、複数の部分反射面8を全て透過した映像光は、導光板端面9を透過し易くなり迷光が発生しにくくなる。
【0019】
なお、導光板端面9の外側には、導光板端面9を透過した光を遮光するための遮光部11を設けてもよい。遮光部11は、遮光壁、遮光ブロック、遮光シート等からなり、ユーザが視認する迷光を低減することができる。
【0020】
実施例1の導光板2aにおいては、部分反射面アレイ10内に配置する複数の部分反射面8の面間隔Lを配列方向に異ならせることで、高い光利用効率を維持しながら投射される映像光の光量分布を均一化するものである。
【0021】
<従来の導光板2’の構成と性能>
比較のため、従来の導光板の構成とその課題について説明する。
図2は、従来の導光板2’の構成例を示す図で、(a)はユーザから見た正面図、(b)は平面図(xy断面図)を示している。
【0022】
導光板2’は互いに略平行な第1の内面反射面6と第2の内面反射面7とを備え、内部に複数の部分反射面8からなる部分反射面アレイ10を有する。従来の導光板2’は部分反射面8の面間隔Lが全て等しく、部分反射面8の反射率も全て等しい。この構成では、投射される映像光の光量分布が不均一になるという課題があり、これについて説明する。
【0023】
複数N個の部分反射面8を入射面5側から順に8nと記す(nは1~Nの整数)。各部分反射面8の反射率をR(ただし0<R<1)とし、隣接する部分反射面8の反射面に垂直な方向の面間隔をLとする。また、隣接する部分反射面8の第1の内面反射面6(または第2の内面反射面7)上での間隔を幅Hとする。導光板の入射面5から入射する光強度をI0、部分反射面8nで反射された光強度をIn、光線InとIn+1間の単位長さ当たりの光強度をUnとする。
【0024】
部分反射面8の面間隔Lと幅Hとは、部分反射面8と内面反射面7となす角をθとしたとき、次の関係にある。
L=H×sinθ・・・(1)
またInは部分反射面8の反射率Rを用いて、
In=(1-R)n-1×R×I0・・・(2)
と表される。
【0025】
光線I1とI2間の単位長さ当たりの光強度をU1は、I1とI2の光強度の平均値を幅Hで割ったものとなる。
U1=(I1+I2)/2/H・・・(3)
同様にして光線InとIn+1間の単位長さ当たりの光強度Unは、
Un=(In+In+1)/2/H・・・(4)
で表される。
【0026】
次に、従来導光板2’における部分反射面8の使用可能な反射率について求める。導光板が投射する映像光の均一度Kを、入射面5に最も近い位置での単位長さ当たりの光強度U1と、入射面5から最も遠い位置での単位長さ当たりの光強度UN-1の比、すなわちUN-1/U1で定義すると、
K=UN-1/U1=(1-R)N-2・・・(5)
と表される。
【0027】
このように、部分反射面8の個数Nについては、個数Nが大きいほど均一度Kが低下する。また、反射率Rについては、反射率Rが高いほど光利用効率が向上するものの均一度が低下するという、トレードオフの関係にある。ユーザが均一な明るさの映像と視認するためには、均一度Kは0.5以上必要であり、望ましくは0.7以上である。
【0028】
ここで、部分反射面8の個数Nと反射率Rは、ユーザの見る視界幅の条件と関連する。
図3は、ユーザの瞳と導光板2’の位置関係を示す図であり、これを用いて、部分反射面8の必要な個数を求める。入射面5に最も近い部分反射面8
1の中点から、最も遠い部分反射面8
Nの中点までの距離をSとする。距離Sは、部分反射面の幅H、個数Nを用いて、
S=H×(N-1)・・・(6)
の関係になる。
【0029】
また、ユーザの瞳51から内面反射面6との距離(アイリリーフ)をER、x方向のアイボックスをEB、表示映像のx方向の画角の全角をFOV(Field of View)とする。これらにより、映像を表示するために最低限必要な部分反射面8の存在領域のx方向長さをW(以後、視界幅Wという)が決まる。映像全体をユーザに視認させるためには、距離Sは視界幅W以上の長さでなければならない。つまり、
S≧W=EB+2×ER×tan(FOV/2)・・・(7)
の関係が成り立つ必要がある。
【0030】
具体例として、導光板厚さT=1.7mm、間隔H=2mmで部分反射面8を配置し、アイリリーフER=20mm、アイボックスEB=10mmとする。式(6)(7)から最低限必要な部分反射面の個数Nを求めると、20度≦FOV<30度の場合はN=10個であり、30度≦FOV<40度の場合はN=12個であり、40度≦FOV<50度の場合はN=14個となる。
【0031】
さらに、最低限必要な部分反射面の個数Nと式(5)から、ユーザが均一な明るさの映像と視認するために望ましい均一度K≧0.7を達成するための反射率Rの条件が求まる。その結果、20度≦FOV<30度の場合は反射率R≦5%、30度≦FOV<40度の場合は反射率R≦4%、40度≦FOV<50度の場合は反射率R≦3%にする必要がある。部分反射面の反射率Rがこの値より高いと、均一な明るさの映像が得ることができないことになる。
【0032】
図6は、映像光の強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。このうち(a)は、従来の導光板2’において部分反射面の反射率R=10%(上記した上限値よりも大きい値)とし、対角のFOV=40度の映像光を投射した場合である。(c)には、上下中央位置でのx軸に沿った強度分布を示している。従来導光板2’では、表示領域の右側にいくに従って映像光が暗くなっており、表示される映像の輝度分布が不均一になることが分かる。このように従来導光板2’では、均一な明るさの映像光を投射するためには部分反射面の反射率を低い値にしなければならず、高い光利用効率が実現できないことになる。
【0033】
<本実施例の導光板2aの構成と性能>
図4は、
図1に示した実施例1に係る導光板2aの構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。本実施例の導光板2aは、N個の部分反射面8の面間隔Lを、導光板入射面5から導光板端面9に近づくにつれて小さくしている点で、
図2の従来導光板2’と異なる。なお、N個の部分反射面8の反射率Rは略等しい。導光板2a内部を全反射で伝搬する映像光の光量は、部分反射面8での部分反射のために、入射面5側から導光板端面9に近づくにつれて減少する。これを補償するため、部分反射面8の面間隔Lを入射面5側から導光板端面9に近づくにつれて小さくすることで、映像光の光束密度を上げて投射する映像光の明るさを均一化している。これにより、略等しい反射率を持つ部分反射面8を使用した導光板2aでありながら、均一な明るさの映像光を投射することが可能になる。
【0034】
次に、部分反射面の面間隔Lおよび反射率Rについて説明する。
<部分反射面8の面間隔Lについて>
以下の説明では、第n番目の部分反射面8nと第n+1番目の部分反射面8n+1の面間隔をLnと記す(nは1~N-1の整数)。また、第n番目の部分反射面と第n+1番目の部分反射面の第1の内面反射面6(または第2の内面反射面7)上での間隔を幅Hnと記す。
【0035】
均一な明るさの映像を表示するため、望ましい部分反射面8の面間隔について説明する。導光板入射面5から入射する光強度をI0、部分反射面8nで反射された光強度をIn、光線InとIn+1間の単位長さ当たりの光強度をUnとする。部分反射面8nの幅Hnと面間隔Lnは次の関係にある。
Ln=Hn×sinθ・・・(8)
またInは部分反射面8の反射率Rを用いて、
In=(1-R)n-1×R×I0・・・(9)
と表される。
【0036】
光線I1とI2間の単位長さ当たりの光強度をU1とすると、I1とI2の光強度の平均値を幅H1で割ったもので表すことができる。
U1=(I1+I2)/2/H1・・・(10)
同様にして光線InとIn+1間の単位長さ当たりの光強度Unは、
Un=(In+In+1)/2/Hn・・・(11)
で表される。
【0037】
隣り合う面間隔LnとLn+1の関係を求める。光強度Inはnが大きくなるにつれて(入射面5から導光板端面9に近づくほど)小さくなるので、投射する映像光を均一化するには、nが大きくなるにつれて面間隔Lnを小さくする。よってLn+1<Lnの関係とする。
【0038】
次にLn+1の下限を求める。隣り合う単位長さ当たりの光強度UnとUn+1を等しくすることで、投射する映像光は均一化される。式(8)~(11)から面間隔LnとLn+1の関係を求めるとLn+1=(1-R)Lnとなる。ただし、Ln+1を(1-R)Lnよりも小さくすると面間隔が小さすぎて部分反射面の個数が増加し、製造コストが増加する。よって面間隔LnとLn+1の関係は、
(1-R)Ln≦Ln+1<Ln・・・(12)
の範囲とする。
【0039】
ユーザが均一な明るさの映像と視認するためには、均一度K≧0.5とする必要がある。そのため面間隔Ln+1は、部分反射面の個数Nのとき、
(1-R)Ln≦Ln+1<(1-R)Ln/0.5(1/(N-2))・・(13)
の範囲とする必要がある。さらに、望ましい均一度K≧0.7を得るためには、
(1-R)Ln≦Ln+1<(1-R)Ln/0.7(1/(N-2))・・(14)
の範囲とする必要がある。
【0040】
図5は、導光板2aの厚さを考慮した面間隔の条件を説明する図である。隣り合う部分反射面8の面間隔Lが大きい場合には、領域Aで投射光が存在せず映像の欠けが生じてしまう。映像の欠けが生じないようにするためには、ユーザが導光板を正面から覗いたとき、部分反射面8が重なって見えるようにすればよい。そのため、最も面間隔の広い1枚目8
1と2枚目8
2の面間隔L
1は、導光板の厚さをT、部分反射面8と内面反射面7となす角をθとしたとき、
L
1≦T×cosθ・・・(15)
を満たすことが望ましい。
【0041】
また、部分反射面8の面間隔Lを小さくしすぎると、部分反射面8の個数を増やすことになる。従って、コストを抑える観点からL1は、
L1≧T×cosθ/2・・・(16)
を満たすことが望ましい。以上が、均一な明るさの映像を表示するための部分反射面8の面間隔Lの条件である。
【0042】
<部分反射面8の反射率について>
次に、部分反射面8の反射率の条件ついて説明する。部分反射面8の反射率Rは、反射率が高いほどユーザに投射される光量が増加するので導光板の光利用効率が向上するが、シースルー性は悪化するというトレードオフの関係にある。通常、シースルー性の観点から反射率は30%以下にすることが望ましい。
【0043】
部分反射面8の反射率Rは、可視光の波長域において、波長依存性が少ない方が好ましい。例えば、可視光域における最小反射率と最大反射率の比が50%以上であれば、ユーザは映像および外界の不均一性をあまり認識しなくなり、80%以上であれば、ユーザは映像および外界の不均一性をほとんど認識できなくなる。これにより、ユーザが視認する映像の色の均一性と外界の色の均一性を確保することができる。
【0044】
なお、部分反射面8には金属膜を用いて実現してもよいし、誘電体多層膜を用いても構わない。また、映像光の偏光に依存して光を分離する偏光ビームスプリッターを用いていても構わない。
【0045】
次に、部分反射面8の反射率の範囲について説明する。
図3で説明したように、部分反射面が配置されている導光板の領域のx方向長さをSとする。また、ユーザの瞳51から内面反射面6との距離(アイリリーフ)をER、x方向のアイボックスをEB、表示映像のx方向の画角の全角をFOVとする。映像全体をユーザに視認させるためには、距離Sは図に示す視界幅W以上の長さでなければならない。つまり、
S≧W=EB+2×ER×tan(FOV/2)・・・(17)
の関係が成り立つ必要がある。
【0046】
また、
図4において製造可能な部分反射面の面間隔Lには下限があり、この面間隔の下限を最小面間隔aとすると、通常最小面間隔aは0.2mm程度である。反射率が高くても面間隔を小さくすることで均一化できたが、上述したように製造可能な部分反射面の面間隔には下限があり、この最小面間隔aで使用可能な反射率が制限される。
【0047】
投射する映像光が最も均一化されるように、部分反射面をLn+1=(1-R)×Lnで配列した場合を考える。このとき面間隔が最も小さくなるのは、入射面5側から最も離れたLN-1であり、
LN-1=L1(1-R)(N-2)・・・(18)
となる。このときの幅HN-1は
HN-1=LN-1/sinθ=H1(1-R)(N-2)・・・(19)
となる。製造上の観点から、LN-1は最小面間隔a以上でなければならないので、
a≦LN-1=L1(1-R)(N-2)・・・(20)
とする必要がある。
【0048】
式(20)を幅HN-1の条件で表すと、A=a/sinθとして、
A=a/sinθ≦HN-1=H1(1-R)(N-2)・・・(21)
のようになる。また、距離Sは次のように表すことができる。
S=H1+H2+ … +HN-1
=H1/R×(1-(1-R)(N-1))・・・(22)
式(21)(22)から使用可能な反射率Rの条件は、
R≦(H1-A)/(S-A)・・・(23)
のように求まる。
【0049】
式(23)の物理的意味を考察する。仮に製造可能な部分反射面の面間隔に下限がなく、A=0としたとき、反射率の上限はH1/Sとなる。つまり使用可能な反射率の上限は、部分反射面の1個の幅H1が部分反射面の配置されている全幅Sに占める割合で決まる。製造可能な部分反射面の面間隔に下限がある場合は、最小面間隔aが大きいほど、つまりAが大きいほど使用可能な反射率の上限は低下する。
【0050】
また式(23)は、H1=L1/sinθと式(17)(21)を用いて、
R≦(Tcosθ-a)/(Wsinθ-a)・・・(24)
の形になる。前述したようにaは最小面間隔、Tは導光板厚さ、角度θは部分反射面8と内面反射面7がなす角である。視界幅Wは、アイリリーフER、アイボックスEB、表示映像のx方向の画角の全角FOVを用いて、W=EB+2×ER×tan(FOV/2)と書ける。
【0051】
導光板はユーザの眼前に配置するため、デザイン性の観点から厚さTは限りなく薄いことが好ましく、厚さT≦3mmにする必要がある。また最小面間隔はa=0.2mm程度であり、角度θ=25度のとき、上記の制限条件で式(24)をアイリリーフERとアイボックスEBとFOVを用いて書くと、
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))・・・(25)
のようになる。なお、式(24)の分母にあるaはWsinθと比べて小さいので無視した。式(25)が示すように、アイリリーフER、アイボックスEB、FOVが大きいほど、部分反射面の使用可能な反射率の上限は低下する。
【0052】
アイリリーフER=20mm、アイボックスEB=10mmのとき、式(25)から反射率Rの制限を具体的に求めると、20度≦FOV<30度の場合は反射率R≦30%、30度≦FOV<40度の場合は反射率R≦25%、40度≦FOV<50度の場合は反射率R≦21%とすればよい。
【0053】
本実施例の導光板2aによれば、従来と比較して使用可能な反射率の範囲が広がっている。例えば、30度≦FOV<40度で使用する場合、従来導光板2’では反射率R≦4%にする必要があったが、本実施例の導光板では反射率R≦25%まで範囲が広がっている。これにより導光板の光利用効率は、従来導光板比で約2.9倍向上する。
【0054】
図6(b)には、本実施例の導光板2aによる映像光の強度分布を示している。映像投射のシミュレーション条件は、部分反射面の間隔を式(12)の等号となる条件、すなわちL
n+1=(1-R)L
nとなるように部分反射面を配置し、部分反射面の反射率R=10%、対角のFOV=40度としている。また
図6(c)は、x軸に沿った強度分布を示している。(a)に示した従来導光板の分布と比較して、(b)に示す本実施例の導光板では強度分布が改善され、表示される映像の輝度分布を均一化することができることが分かる。
【0055】
以上のように本実施例によれば、部分反射面の面間隔を入射面側から導光板端面に近づくにつれて小さくすることで、部分反射面の反射率を高く設定しても、均一な明るさの映像光を投射可能となり、高い光利用効率で均一な明るさの映像光を投射可能な導光板を提供できる。
【0056】
なお、導光板の出射面に光学特性を有するコーティングをすることで導光板の性能を高めることができる。例えば、第1の内面反射面6の外側に反射防止(AR:Anti-Reflection)コーティング層を施せば、光利用効率を高めることができるとともに、不要な迷光をなくすことができる。また、第1の内面反射面6の外側に透過率分布を有する調光コーティング層を施すことで、さらに映像光の強度分布を均一化することができる。
【0057】
また、上記の説明では、部分反射面の反射率を略等しくしたが、部分反射面の反射率が等しくない場合でも問題ない。例えば、部分反射面の面間隔を異ならせるとともに、部分反射面の反射率を反射面ごとに調整することで、さらに映像光の強度分布を均一にすることができる。
【0058】
次に、映像表示装置1内の導光板2a以外の構成要素について説明する。
<映像生成部3について>
図1において映像生成部3は、光源、照明光学部、映像を生成する映像生成素子、および映像光を投射するための投射光学部で構成されている。
【0059】
光源としては、RGBのLEDまたはRGBのLDが挙げられる。もちろん光源として白色のLEDを用いてもよい。この場合、映像生成素子にカラーフィルタを具備する必要がある。照明光学部は光源の光を均一に映像生成素子に照明する。映像生成素子には、液晶またはデジタルミラーデバイス(DMD)等を用いればよい。投射光学部は、1枚または複数のレンズからなる投射レンズを備えており、映像生成素子で生成された映像光を投射する。なお、映像生成素子として有機ELやμLEDなどの自発光映像生成素子を用いてもよい。この場合、光源および照明光学部が不要となり、映像生成部の小型軽量化が可能となる。
【0060】
<カップリングプリズム4について>
図1においてカップリングプリズム4は、映像生成部3が生成した映像光の画角と、映像表示装置1が表示する映像の画角とが略同一となるように形成、配置されている。例えば、カップリングプリズム4の第1の面41に垂直に入射した光が、第1の内面反射面6から略垂直に出射するように形成、配置されている。具体的には、例えば、映像生成部3からの光がカップリングプリズム4に入射する第1の面41と第2の内面反射面7とがなす角を略2θとする。すなわち、第1の部分反射面8と第2の内面反射面7とがなす角度θの略2倍となるように、カップリングプリズム4を形成、配置する。より具体的には、カップリングプリズム4の頂角αを角度θに略等しくし、カップリングプリズム4の映像光を出射する第2の面42と入射面5とが略平行となるように、カップリングプリズム4が形成、配置されている。
【0061】
また、カップリングプリズム4と導光板2aとは、同一の媒質であるか、または屈折率が略等しい媒質から形成するとよい。これにより、カップリングプリズム4に入射する光の入射角と、第1の内面反射面6から出射する光の出射角とを略等しくすることが可能となり、映像生成部3が生成した映像光の画角と前記映像表示装置1が表示する映像の画角を略同一にすることが可能となる。
【0062】
さらに、映像生成部3が出射する映像光の画角中央の主光線が、カップリングプリズム4に略垂直に入射するように映像生成部3とカップリングプリズム4とを配置することで、映像生成部3が出射する映像光の画角中央の主光線が第1の内面反射面6から略垂直に出射することが可能となる。
【0063】
なお、映像生成部3が出射する映像光の画角中央の主光線が、導光板2aの第1の内面反射面6から垂直でない角度で出射するようにしてもよい。そのために例えば、映像生成部3が出射する映像光の画角中央の主光線が、カップリングプリズム4に垂直でない角度で入射するように構成することで実現できる。
【0064】
またカップリングプリズム4は、頂角αが角度θと異なっていてもよい。この場合、ビーム圧縮またはビーム拡大の効果により、映像生成部3が出射した映像光の画角と、映像表示装置3が表示する映像の画角とを異なるものにすることができる。
カップリングプリズム4はz方向に瞳を拡大させる機能を持たせても良い。そうすることでz方向にアイボックスを広げることができる。
【0065】
さらに、カップリングプリズム4を省略し、映像生成部3の出射光を、導光板2aの入射面5に直接入力してもよい。これにより、映像表示装置1の部品点数を減らすことができ、コストの低減、質量の低減、サイズの低減を行うことが可能となる。
【0066】
<映像表示装置1の適用例について>
図7は、映像表示装置1の適用例を示す図である。(a)は、映像表示装置1をヘッドマウントディスプレイ20に適用した例を示している。ヘッドマウントディスプレイ20は、例えばユーザ50の頭部に装着され、ユーザ50の視線範囲に導光板2a(
図1)が配置されている。また、導光板2aの入射面5(
図1)は、ユーザ50の目の横方向に配置されていてもよいし、ユーザの瞳51の縦方向に配置されていてもよい。ユーザ50は、ヘッドマウントディスプレイ20が表示する映像を、例えば虚像として視認することができる。
【0067】
図7(b)は、映像表示装置1をヘッドアップディスプレイ30に適用した例を示している。ヘッドアップディスプレイ30は、例えば、所定の位置に固定して配置される。ユーザ50は、ヘッドアップディスプレイ30の近傍に近づくことにより、ヘッドアップディスプレイ30に表示される映像を例えば虚像として視認することができる。ヘッドアップディスプレイ30は、例えば、車の運転手用のアシスト機能やデジタルサイネージ等に適用できる。
以下、
図7(a)のようにヘッドマウントディスプレイ20に適用した場合について説明する。
【0068】
図8は、ヘッドマウントディスプレイ20を装着したユーザ50を頭部上側から見た図である。(a)は、導光板2aをユーザの瞳51に対して平行に設置した場合である。(b)は、導光板2aをユーザの瞳51に対して傾けて設置した場合である。(b)のように導光板2aをユーザの瞳51に対して傾けて設置することで、映像生成部3をよりユーザ50の耳52の近くに配置可能となり、コンパクト性およびデザイン性が高いヘッドマウンドディスプレイ20とすることができる。なお、
図8ではユーザ50の両眼に映像表示装置1を設置しているが、右目または左目のみに設置した場合でも同様の効果がある。
【0069】
図9は、
図8(b)のように導光板2aを傾けて設置した状態の拡大図である。この場合、導光板2aをユーザの瞳51(すなわちx軸方向)に対して角度βだけ傾斜して設置している。使用する映像光の画角を角度βだけオフセットさせているので、映像生成部3もカップリングプリズム4の第1の面41に対して角度βだけ傾けて入射させる構造とする。
【0070】
このように、映像表示装置1をヘッドマウンドディスプレイに適用する場合、導光板2aをユーザの瞳51に対して傾斜して設置した方が、頭部へのフィット感が向上し、よりデザイン性の高いヘッドマウンドディスプレイを提供することができる。
【0071】
<ヘッドマウントディスプレイ20の機能構成について>
図10は、ヘッドマウントディスプレイ20の機能構成を示すブロック図である。ヘッドマウントディスプレイ20には映像表示装置1の他に、ヘッドマウントディスプレイ20全体を制御するコントロール部21、外部情報22を検出するセンシング部23、外部機器24と通信する通信部25、電力を供給する電力供給部26、情報を記憶する記憶部27、操作入力部28などが備えられている。なお、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。
【0072】
外部情報22は、例えばユーザ50の状態(姿勢、向き、動き)や外界の状態(明るさ、音、空間情報)などである。ユーザ50の状態(姿勢、向き、動き)を検出するセンシング部23としては、傾斜センサ、加速度センサやGPSセンサなどが挙げられる。外界の状態(明るさ、音、空間情報)を検出するセンシング部23としては、照度センサ、音センサ、赤外線センサ(撮像素子)が挙げられる。
【0073】
通信部25は、インターネット上の情報や、スマートフォン、タブレット、PCなどの外部機器24と通信するデバイスであり、例えばBluetooth(登録商標)、Wifi(登録商標)などが用いられる。
【0074】
操作入力部28は、ヘッドマウントディスプレイ20を操作するためのユーザ50の操作を受け付ける。具体的には、例えば音センサを用いた音声認識や、感圧センサあるいは静電容量センサを用いたタッチパネル入力や、赤外線センサを使用したジェスチャ入力などが用いられる。
【実施例2】
【0075】
実施例2は、実施例1の導光板2aの変形例であり、部分反射面アレイを部分反射面の配列方向に沿って複数の領域に分割し(以下、分割領域という)、分割領域単位で部分反射面の面間隔を変える構成とした。
【0076】
図11は、実施例2に係る導光板2bの構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。導光板2bは互いに略平行な第1の内面反射面6と第2の内面反射面7とを備え、内部に複数N個の部分反射面8
1~8
Nからなる部分反射面アレイ10を有する。ここに、各部分反射面8の反射率は略等しい。
【0077】
部分反射面アレイ10は、部分反射面8の配列方向に沿って複数(ここでは3個)の分割領域A1~A3(一点鎖線で示す)に分けられている。そして、同一の分割領域内では部分反射面8の面間隔Lが略等しく、隣り合う分割領域間では、導光板端面9に近づくほど面間隔Lが小さくなるように部分反射面8が配列されている。そのため、実施例1記載の導光板2aと比較すると、製造に必要な基板厚の種類が少なくなり、低コストに導光板を提供できる。
【0078】
導光板2bの部分反射面8の配置について説明する。分割番号kを1~3の整数として、分割領域Akに属する部分反射面8の面間隔をLAk、幅をHAkで示す。また、分割領域Akに属する部分反射面8の個数をNAkとする。つまり、分割領域内の部分反射面8の個数NAkは一定でなく可変としている。
【0079】
導光板2bの入射面5から入射した強度I0の光は、分割領域A1を通過後にはNA1個の部分反射面8により、強度がI0からIA1=(1-R)NA1×I0に低下する。そのため、投射する映像光を均一化するためには、分割領域A2の部分反射面8の面間隔LA2をLA1よりも小さくして光束密度を大きくする必要がある。よってLA2<LA1の関係とする。
【0080】
次に面間隔LA2の下限を求める。分割領域A2において分割領域A1と同等の強度で映像光を投射するには、面間隔LA2は光強度の低下した分(1-R)NA1だけ小さくすればよく、LA2=LA1(1-R)NA1とする。面間隔LA2をLA1(1-R)NA1よりも小さくすると、面間隔が小さくなりすぎて、部分反射面の個数が増加し製造コストが増加する。よって面間隔LA2は次の範囲とする。
LA1(1-R)NA1≦LA2<LA1・・・(26)
同様にしてLA3は、
LA2×(1-R)NA2≦LA3<LA2・・・(27)
とする。
ここではA1~A3の3個の分割領域に分けた例を説明したが、分割領域数は2個であっても3個より多くても構わない。
【0081】
例えば分割領域数をM個とした場合を説明する(Mは2以上の整数)。導光板2bの入射面5の側から数えてk番目の分割領域をAkとし、分割領域Akに存在する部分反射面8の個数をNAk、面間隔をLAkとする(kは1~Mの整数)。この場合、均一な映像光を投射するための部分反射面8の面間隔LAk,LAk+1は、上と同様の理由で、
LAk×(1-R)NAk≦LAk+1<LAk (1≦k≦M-1)・・(28)
の関係を満たす必要がある。
【0082】
実施例1と同様に、映像の欠けが生じないように、最も面間隔の広いLA1は導光板の厚さをT、部分反射面8と内面反射面7となす角をθとしたとき、
LA1≦T×cosθ・・・(29)
を満たすようにする。また、実施例1と同様にコストの観点から、
LA1≧T×cosθ/2・・・(30)
を満たすようにする。
【0083】
反射率Rの制限は実施例1と同様に求めることができ、次式のようになる。
R≦6/(EB+2×ER×tan(FOV/2))・・・(31)
アイリリーフER=20mm、アイボックスEB=10mmのとき、式(31)から反射率Rの制限を求めると、20度≦FOV<30度の場合は反射率R≦30%、30度≦FOV<40度の場合は反射率R≦25%、40度≦FOV<50度の場合は反射率R≦21%とすればよい。
【0084】
本実施例においても、従来導光板と比較して使用可能な反射率の範囲が広がっている。例えば、30度≦FOV<40度で使用する場合、従来導光板では反射率R≦4%にする必要があったが、本実施例の導光板では反射率R≦25%まで範囲が広がっている。これにより導光板の光利用効率は、従来導光板比で約2.9倍向上する。
【0085】
以上のように実施例2では、導光板2bの部分反射面アレイ10が部分反射面8の配列方向に沿って複数の領域に分割され、同じ分割領域内では部分反射面の面間隔が略等しく、隣り合う分割領域間では部分反射面の面間隔が異なる。そして、導光板端面9に近い分割領域ほど、面間隔を小さくしている。これにより、部分反射面の反射率を高く設定しても均一な明るさの映像光を投射可能となり、高い光利用効率で均一な明るさの映像光を投射可能な導光板を提供できる。
【実施例3】
【0086】
実施例3では、均一化手段として、導光板内の部分反射面の反射率が異なるように構成している。
【0087】
図12は、実施例3に係る導光板2cの構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。導光板2cは互いに略平行な第1の内面反射面6と第2の内面反射面7とを備え、内部に複数N個の部分反射面8からなる部分反射面アレイ10を有する。複数N個の部分反射面8の面間隔Lは全て等しく、各部分反射面8の反射率Rが異なる構成としている。
【0088】
導光板2cの部分反射面の構成ついて説明する。複数N個の部分反射面8を導光板入射面5側から順に8nと記す(nは1~Nの整数)。また部分反射面8nの反射率をRnとし、部分反射面8の面間隔はLとする。部分反射面8の反射率Rを入射面5側から導光板端面9に近づくにつれて高くすることで、導光板2cが投射する映像光の強度分布を均一化している。
【0089】
次に望ましい部分反射面8の反射率Rについて説明する。導光板入射面5に光強度I0の映像光が入射したとき、部分反射面8nから反射した光線の光強度をInとする。このときInは次式で表すことができる。
In=(1-R1)(1-R2)……(1-Rn-1)RnI0・・・(32)
隣り合う部分反射面の反射率Rn+1とRnの関係を求める。導光板内部を伝搬する光量は、部分反射面によって導光板内部を伝搬していくほど減少する。よって、均一な明るさの映像光を投射するためには、部分反射面の反射率は入射面5から導光板端面9に近づくにつれて高くする必要がある。よってRn<Rn+1の関係が成り立つ。
【0090】
次にRn+1の上限を求める。n+1番目の光強度In+1とn番目の光強度Inが等しければ、均一な映像光を投射できる。In+1=Inを式(32)から反射率の関係に直すと、Rn+1=Rn/(1-Rn)となる。よって反射率Rは、次式の範囲とする必要がある。
Rn<Rn+1≦Rn/(1-Rn) (1≦n≦N-1)・・・(33)
シースルー性の観点から、最も反射率が高いRNが30%以下になるように最初のR1を設定することが望ましい。
【0091】
部分反射面8の面間隔Lは、実施例1と同様に映像の欠けが生じないために、
L≦T×cosθ・・・(34)
とすることが望ましく、コストの観点から、
L≧T×cosθ/2・・・(35)
とすることが望ましい。
【0092】
次に使用可能な反射率の制限を、投射する映像光が最も均一になる場合、つまりRn+1=Rn/(1-Rn)となる場合について求める。導光板2cにおいて最も反射率が高くなるのは、導光板端面9に最も近い部分反射面8Nの反射率RNであり、漸化式Rn+1=Rn/(1-Rn)を解くとRN=R1/(1-(N-1)R1)となる。シースルー性の観点から反射率RNを30%以下とするには、
R1/(1-(N-1)R1)<0.3・・・(36)
を満たす必要がある。
【0093】
また、部分反射面の数Nは、部分反射面が配置されている導光板の領域のx方向長さS、部分反射面の間隔L、部分反射面8と内面反射面7がなす角θを用いて、N=S×sinθ/Lと書ける。よって式(36)は次のようになる。
R1<0.3/(1+0.3×S×sinθ/L)・・・(37)
上式(37)は式(17)(34)を用いて次のように表される。
R1<0.3/(1+0.3×W×tanθ/T)・・・(38)
前述したようにTは導光板厚さ、角度θは部分反射面8と内面反射面7がなす角、Wは視界幅である。アイリリーフER、アイボックスEB、FOVを用いて、W=EB+2×ER×tan(FOV/2)と書ける。
【0094】
導光板はユーザの眼前に配置するため、デザイン性の観点から厚さTは限りなく薄いことが好ましく、厚さT≦3mmにする必要がある。角度θ=25度のとき、T≦3mmの制限で、式(38)をアイリリーフERとアイボックスEBとFOVを用いて書くと、次のようになる。
R1<6.4/(EB+2×ER×tan(FOV/2)+21)・・(39)
アイリリーフER=20mm、アイボックスEB=10mmのとき、式(39)から反射率R1の制限を具体的に求めると、20度≦FOV<30度の場合は反射率R1≦15%、30度≦FOV<40度の場合は反射率R1≦14%、40度≦FOV<50度の場合は反射率R1≦13%とすればよい。
【0095】
本実施例においても、従来導光板と比較して使用可能な反射率の範囲が広がっている。例えば、30度≦FOV<40度で使用する場合、従来導光板では反射率R≦4%にする必要があったが、本実施例の導光板では、最も低い反射率を有する部分反射面の反射率R1は14%まで使用可能となる。これにより導光板の光利用効率は、従来導光板比で約2.8倍まで向上する。
【0096】
以上のように実施例3では、導光板2c内の部分反射面8の反射率が異なり、入射面5側から導光板端面9に近づくにつれて反射率が高くなるよう構成した。これにより、部分反射面の反射率を高く設定しても均一な明るさの映像光を投射可能となり、高い光利用効率で均一な明るさの映像光を投射可能な導光板を提供できる。
【実施例4】
【0097】
実施例4は、実施例3の導光板2cの変形例であり、部分反射面アレイを部分反射面の配列方向に沿って複数の分割領域に分割し、分割領域単位で部分反射面の反射率を変えた構成とした。
【0098】
図13は、実施例4に係る導光板2dの構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。導光板2dは互いに略平行な第1の内面反射面6と第2の内面反射面7とを備え、内部に複数N個の部分反射面8
1~8
Nからなる部分反射面アレイ10を有する。ここに、各部分反射面8の面間隔L(幅H)は略等しい。
【0099】
部分反射面アレイ10は、部分反射面8の配列方向に沿って複数(ここでは3個)の分割領域A1~A3に分けられている。そして、同一の分割領域内では部分反射面8の反射率Rは略等しく、隣り合う分割領域間では、導光板端面9に近づくほど反射率Rを高くすることで、投射する映像光の強度分布を均一化している。実施例3の導光板2cと比較すると、製造に必要な部分反射面8のコーティング種類が少なくなるので、低コストに導光板を提供できる。
【0100】
次に望ましい部分反射面8の反射率R範囲について説明する。分割番号kを1~3の整数として、分割領域Akに属する部分反射面8の反射率をRAkで示す。また分割領域Akに属する部分反射面8の個数をNAkとする。
【0101】
導光板2dの入射面5から入射した強度I0の光は、分割領域A1を通過後にはNA1個の部分反射面8により、強度がI0からIA1=(1-RA1)NA1×I0に低下する。そのため、投射する映像光を均一化するためには、分割領域A2の部分反射面8の反射率RA2をRA1よりも高くして光束密度を大きくする必要がある。よってRA2>RA1の関係とする。
【0102】
次に反射率RA2の上限を求める。分割領域A2において分割領域A1と同等の強度で映像光を投射するには、反射率RA2は光強度の低下した分(1-RA1)NA1の逆数分だけ高くすればよく、RA2=RA1/(1-RA1)NA1とする。よって反射率RA2の望ましい範囲は、
RA1<RA2≦RA1/(1-RA1)NA1・・・(40)
となる。同様にしてRA3は、
RA2<RA3≦RA2/(1-RA2)NA2・・・(41)
とする。
ここではA1~A3の3個の分割領域に分けた例を説明したが、分割領域数は2個であっても3個より多くても構わない。
【0103】
例えば分割領域をM個とした場合を説明する(Mは2以上の整数)。導光板2dの入射面5の側から数えてk番目の分割領域をAkとし、分割領域Akに存在する部分反射面8の個数をNAk、反射率をRAkとする(kは1~Mの整数)。この場合、均一な映像光を投射するための部分反射面8の反射率RAk,RAk+1は、上と同様の理由で、
RAk<RAk+1≦RAk/(1-RAk)NAk(1≦k≦M-1)・・(42)
の関係を満たすようにする。
【0104】
実施例3と同様に、最も低い反射率を有する部分反射面の反射率RA1の使用可能な範囲は、次式のようになる。
RA1<6.4/(EB+2×ER×tan(FOV/2)+21)・・(43)
アイリリーフER=20mm、アイボックスEB=10mmのとき、式(43)から反射率RA1の制限を具体的に求めると、20度≦FOV<30度の場合は反射率RA1≦15%、30度≦FOV<40度の場合は反射率RA1≦14%、40度≦FOV<50度の場合は反射率RA1≦13%とすればよい。
【0105】
本実施例においても、従来導光板と比較して使用可能な反射率の範囲が広がっている。例えば、30度≦FOV<40度で使用する場合、従来導光板では反射率R≦4%にする必要があったが、本実施例の導光板では、最も低い反射率を有する部分反射面の反射率RA1は14%まで使用可能となる。これにより導光板の光利用効率は、従来導光板比で約2.8倍まで向上する。
【0106】
以上のように実施例4では、導光板2dの部分反射面アレイ10が部分反射面8の配列方向に沿って複数の領域に分割され、同じ分割領域内では部分反射面の反射率が略等しく、隣り合う分割領域間では部分反射面の反射率が異なる。そして、導光板端面9に近い分割領域ほど、反射率を高くしている。これにより、部分反射面の反射率を高く設定しても均一な明るさの映像光を投射可能となり、高い光利用効率で均一な明るさの映像光を投射可能な導光板を提供できる。
【実施例5】
【0107】
実施例5では、均一化手段として、導光板内の内面反射面6の外側に透過率分布を有する調光コーティング層を設けた構成としている。
【0108】
図14は、実施例5に係る導光板2eの構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。導光板2eは互いに略平行な第1の内面反射面6と第2の内面反射面7とを備え、内部に複数N個の部分反射面8からなる部分反射面アレイ10を有する。複数N個の部分反射面8の面間隔Lは全て等しく、また各部分反射面8の反射率Rも略等しい。そして、ユーザに映像光を投射する第1の内面反射面6の外側には、映像の明るさを均一化するための調光コーティング層12を設けている。調光コーティング層12が施されている領域は、少なくとも映像光が部分反射面8により反射して内面反射面6を透過する範囲を含むようにする。
【0109】
部分反射面8で反射し導光板2eから出射する光強度は、導光板入射面5から導光板端面9に近づくにつれ減少していく。そのため調光コーティング層12の透過率分布は、導光板入射面5から導光板端面9に向かって透過率が高くなるように設定し、出射する映像の明るさを均一化させている。
【0110】
ここでは、調光コーティング層12を形成する範囲は、
図14のように映像光が部分反射面8により反射して内面反射面6を透過する範囲D0~D1(距離B)のみとする。導光板2eから投射される映像光の強度I
1~I
Nを均一化させるために、調光コーティング層12の透過率Fを次式のように分布させる(ただし、0<F<1)。ここにx軸の原点は、調光コーティング層12の開始位置D0とする。
F(x)=x/B×(1-(1-R)
(N-1))+(1-R)
(N-1)・・(44)
なお、調光コーティング層12の透過率Fは、次式のようにx軸方向に指数関数的に変化させてもよい。
F(x)=(1-R)
((1-x/B)×(N-1))・・・(45)
調光コーティング層12は、内面反射面6の全面に施しても構わない。
【0111】
以上のように実施例5によれば、導光板2eの出射面に透過率分布を有する調光コーティング層を設けることで、均一な明るさの映像光を投射可能となる。
【実施例6】
【0112】
実施例6は、実施例5の導光板2eの変形例であり、部分反射面アレイを部分反射面の配列方向に沿って複数の分割領域に分割し、分割領域単位で調光コーティングの透過率を変えた構成とした。
【0113】
図15は、実施例6に係る導光板2fの構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。導光板2fは互いに略平行な第1の内面反射面6と第2の内面反射面7とを備え、内部に複数N個の部分反射面8
1~8
Nからなる部分反射面アレイ10を有する。ここに、各部分反射面8の反射率Rと面間隔L(幅H)は略等しい。そして、第1の内面反射面6の外側に映像の明るさを均一化する調光コーティング層13を備える。
【0114】
部分反射面アレイ10は、部分反射面8の配列方向に沿って複数(ここでは3個)の分割領域A1~A3に分けられている。各分割領域には、NAk個(kは1~3の整数)の部分反射面8が存在する。この分割領域A1~A3に対応させて調光コーティング層13も分割し、透過率を変化させている。そして、同一の分割領域内では調光コーティング層13の透過率Fは略等しく、隣り合う分割領域間では、導光板端面9に近づくほど透過率Fを高くすることで、投射する映像光の強度分布を均一化している。透過率に分布を持たせている実施例5の調光コーティング層12と比較すると、分割領域内にある調光コーティング層13の透過率は一定であり、製造難易度を下げコストを低減することができる。
【0115】
導光板2fにおける調光コーティング層13の透過率Fについて説明する。調光コーティング層13は3個の分割領域A1~A3に分割され、分割領域Akの調光コーティング13の透過率をFAkとする(kは1~3の整数)。隣り合う分割領域内での透過率を比較したとき、導光板端面9に近い領域の透過率を高くすることで、投射する映像光を均一化している。つまり、隣り合う分割領域間での調光コーティング層13の透過率FAk,FAk+1は次の関係とする。
FAk<FAk+1(1≦k≦2)・・・(46)
ここではA1~A3の3個の分割領域に分けた例を説明したが、分割領域数は2個であっても3個より多くても構わない。
【0116】
例えば調光コーティング層13をM個に分割した場合を説明する(Mは2以上の整数)。導光板2fの入射面5の側から数えてk番目の分割領域をAkとし、分割領域Akに存在する部分反射面8の個数をNAk、反射率をRとする(kは1~Mの整数)。この場合、各分割領域から均一な映像光を投射するためには、隣り合う分割領域間での調光コーティング層13の透過率FAk,FAk+1は、上と同様の理由で、
FAk<FAk+1(1≦k≦M-1)・・・(47)
の関係とする。
【0117】
さらに、隣り合う分割領域の領域終端での光強度IAk,IAk+1を等しくするためには、式(44)にてx位置を部分反射面8の幅Hと個数NAkで表すことにより、
FAk+1-FAk=H×NAk+1/B×(1-(1-R)(N-1))・・(48)
の関係とすればよい。
【0118】
以上のように実施例6によれば、導光板2fの出射面に調光コーティング層を設けることで均一な明るさの映像光を投射可能となる。その際、部分反射面アレイの分割領域単位で透過率を変える構成としたので、製造が容易でコストを低減する導光板を提供できる。
【0119】
以上、本発明の各実施例を説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0120】
1:映像表示装置、
2a~2f:導光板、
3:映像生成部、
4:カップリングプリズム、
5:導光板入射面、
6:第1の内面反射面、
7:第2の内面反射面、
8:部分反射面、
9:導光板端面、
10:部分反射面アレイ、
11:遮光部、
12,13:調光コーティング層、
20:ヘッドマウントディスプレイ、
21:コントロール部、
22:外部情報、
23:センシング部、
24:外部機器、
25:通信部、
26:電力供給部、
27:記憶部、
28:操作入力部、
30:ヘッドアップディスプレイ、
50:ユーザ、
51:ユーザの瞳。