(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】建築資材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/04 20060101AFI20220824BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220824BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20220824BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220824BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20220824BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B28B11/04
B05D7/24 301N
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
B05D5/06 101Z
B05D3/04 Z
(21)【出願番号】P 2019014779
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】抱 智洋
(72)【発明者】
【氏名】樫田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 良治
(72)【発明者】
【氏名】栂木 悟
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6944301(JP,B2)
【文献】特開2018-83393(JP,A)
【文献】特開平5-200714(JP,A)
【文献】特開2000-247765(JP,A)
【文献】特開2006-62256(JP,A)
【文献】特開2000-325857(JP,A)
【文献】特開昭59-156467(JP,A)
【文献】特開2001-96521(JP,A)
【文献】特開平11-236282(JP,A)
【文献】特開平8-66912(JP,A)
【文献】特開2001-300924(JP,A)
【文献】登録実用新案第3078147(JP,U)
【文献】特開2006-305776(JP,A)
【文献】特開2003-104768(JP,A)
【文献】特開2013-216539(JP,A)
【文献】特開2008-308363(JP,A)
【文献】特開2001-316153(JP,A)
【文献】意匠登録第1571494(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/04
C04B 40/02
B05D 7/24
B05D 1/02
B05D 3/00
B05D 5/06
B05D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる、建築資材の製造方法であって、
前記成形体の表面にスプレー塗装で前記シーラー塗料を塗布することで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させることを特徴とする、
建築資材の製造方法。
【請求項2】
成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる、建築資材の製造方法であって、
表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口を移動させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させることを特徴とする、
建築資材の製造方法。
【請求項3】
成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる、建築資材の製造方法であって、
表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口から前記成形体に向かって前記エアーが吹き出す方向を、移動させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させることを特徴とする、
建築資材の製造方法。
【請求項4】
成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる、建築資材の製造方法であって、
表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口の長手方向を前記移動方向と交差する方向に配置し、前記エアー吹出口と前記成形体との間に前記エアー吹出口から吹き出すエアーを部分的に遮る邪魔板を配置し、かつ、前記邪魔板を前記エアー吹出口の長手方向に沿って移動させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させることを特徴とする、
建築資材の製造方法。
【請求項5】
成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる、建築資材の製造方法であって、
表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口から吹き出すエアーの吹出圧力を経時的に変化させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させることを特徴とする、
建築資材の製造方法。
【請求項6】
前記シーラー塗料に含まれるアクリル樹脂の濃度が0.5%以上20%以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の建築資材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、建築資材の製造方法に関する。本発明は、詳細には、表面に形成された模様に特徴を有する建築資材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の内装材及び外装材として、セメント等の種々の成形材料からなる建築資材が広く使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
建築資材の意匠性を向上させるために、建築資材には種々の塗装が施され、この塗装によって種々の模様が形成される。
【0004】
例えば、建築資材に塗装を施すによって、経年変化したセメントの素材感を表現することが行われることがある。このような塗装が施された建築資材を建物に施工することにより、セメント系の建築資材で作製され、かつ、経年変化したような自然な風合いを有する壁を、短期間、かつ、容易に施工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セメントの経年変化は均一ではないため、塗装によって経年変化したセメントの風合いを表現しようとしても、人工的な印象を受けやすく、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを十分に表現することが難しいという問題があった。
【0007】
また建築資材に塗装を施す場合、多数作製した建築資材の中に、類似の模様を有する建築資材が発生することがある。建築資材を用いて壁を施工する場合に、類似の模様を有する建築資材が含まれていると、壁を見た者が違和感を感じてしまうため、自然な風合いを有する壁が得られにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを有すると共に、類似の模様を有する建築資材が発生しにくい、建築資材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る建築資材の製造方法は、成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる。前記成形体の表面にスプレー塗装で前記シーラー塗料を塗布することで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。
【0010】
本発明の一態様に係る建築資材の製造方法は、成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる。表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口を移動させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。
【0011】
本発明の一態様に係る建築資材の製造方法は、成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる。表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口から前記成形体に向かって前記エアーが吹き出す方向を、移動させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。
【0012】
本発明の一態様に係る建築資材の製造方法は、成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる。表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口の長手方向を前記移動方向と交差する方向に配置し、前記エアー吹出口と前記成形体との間に前記エアー吹出口から吹き出すエアーを部分的に遮る邪魔板を配置し、かつ、前記邪魔板を前記エアー吹出口の長手方向に沿って移動させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。
【0013】
本発明の一態様に係る建築資材の製造方法は、成形体の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布し、前記成形体を養生硬化させることで、表面にエフロレッセンスを不均一に生じさせる。表面にシーラー塗料が設けられた前記成形体又はエアー吹出口を移動させながら、前記エアー吹出口から前記成形体に向かってエアーを吹き付けると共に、前記エアー吹出口から吹き出すエアーの吹出圧力を経時的に変化させることで、前記シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形体の表面にシーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とが分布するため、この成形体を養生硬化させることにより、表面に不均一なエフロレッセンスが生じた建築資材が得られる。この不均一なエフロレッセンスにより、経年変化したセメント系建築資材のような自然な風合いを表現することができる。また複数枚の建築資材を製造しても、類似の模様を有する建築資材が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る建築資材の一例を示す概略の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る建築資材の製造方法の一例を示す概略の説明図である。
【
図3】
図3は、塗布装置を用いてシーラー塗料の層を形成する第一の方法を示す説明図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、塗布装置を用いてシーラー塗料の層を形成する第二の方法を示す概略の説明図である。
【
図5】
図5Aは、塗布装置を用いてシーラー塗料の層を形成する第三の方法を示す概略の説明図である。
図5B及び
図5Cは、第三の方法によって形成されたシーラー塗料の層を示す概略の上面図である。
【
図6】
図6Aは、塗布装置を用いてシーラー塗料の層を形成する第四の方法を示す概略の説明図である。
図6B及び
図6Cは、第四の方法によって形成されたシーラー塗料の層を示す概略の上面図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、塗布装置を用いてシーラー塗料の層を形成する第五の方法を示す概略の説明図である。
図7C及び
図7Dは、第五の方法によって形成されたシーラー塗料の層を示す概略の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る建築資材1の製造方法を説明する。なお、本実施形態は、様々な実施形態の一つに過ぎない。また本実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0018】
1.建築資材について
図1に示すように、本実施形態に係る建築資材1は、成形体10を含む。建築資材1は、建築物の外装材として使用してもよく、建築物の内装材として使用してもよい。すなわち、建築物の屋内側に露出する面に建築資材1を設置してもよく、建築物の屋外側に露出する面に建築資材1を設置してもよい。
【0019】
成形体10の表面には、シーラー塗料の塗膜101が不均一な厚みで設けられている。すなわちシーラー塗料の塗膜101は、均一な厚みを有しておらず、厚みが異なる複数の領域を備える。勿論、成形体10の表面には、シーラー塗料の塗膜101がない領域があってもよい。
【0020】
成形体10の表面上において、シーラー塗料の塗膜101が島状に点在していてもよい。また塗膜101において、厚みの異なる複数の部分が島状に点在していてもよい。また、成形体10の表面上において、全体的に略均一なシーラー塗料の塗膜101が形成されているが、微視的に塗膜101が形成されていない部分があってもよく、塗膜101が微視的に厚みの薄い部分を備えていてもよく、塗膜101が微視的に厚みの厚い部分を備えていてもよい。また塗膜101が濃淡のあるシーラー塗料を成膜したものであり、すなわち塗膜101が濃淡を有していてもよい。
【0021】
例えば本実施形態の建築資材1では、成形体10の表面上に、塗膜101の厚みが大きい部分と、塗膜101の厚みが小さい部分と、が分布している。塗膜101の厚みが大きい部分は、シーラー塗料の塗布量が多い部分である。また塗膜101の厚みが小さい部分は、シーラー塗料の塗布量が少ない部分である。なお、シーラー塗料の塗布量とは、成形体10の表面上に存在するシーラー塗料の量を意味する。
【0022】
本実施形態の建築資材1では、成形体10の表面に、不均一なエフロレッセンスが生じている。不均一なエフロレッセンスとは、エフロレッセンスが均一に生じていないこと意味し、領域によってエフロレッセンスの程度が異なることを意味する。勿論、成形体10の表面には、エフロレッセンスが生じていない部分があってもよい。例えば、成形体10の表面に、エフロレッセンスが生じている部分が島状に点在していてもよく、エフロレッセンスが生じていない部分が島状に点在していてもよく、エフロレッセンスの濃淡が異なる部分が島状に点在していてもよい。また成形体10の表面において、全体的に略均一にエフロレッセンスが生じているが、微視的にエフロレッセンスが生じていない部分があってもよく、微視的にエフロレッセンスが薄い部分があってもよく、微視的にエフロレッセンスが濃い部分があってもよい。さらに、成形体10の表面に生じたエフロレッセンスが濃淡を有していてもよい。例えば、成形体10の表面に、生じたエフロレッセンスが濃淡を有していてもよい。
【0023】
例えば本実施形態の建築資材1では、シーラー塗料の塗膜101の厚みが小さい部分、すなわちシーラー塗料の塗布量が少ない部分では、エフロレッセンスが強く生じる。またシーラー塗料の塗膜101の厚みが大きい部分、すなわちシーラー塗料の塗布量が多い部分では、エフロレッセンスが弱く生じる、或いはエフロレッセンスが生じない。そのため、成形体10の表面に設けられたシーラー塗料の塗膜101の厚みを制御すること、すなわち成形体10の表面におけるシーラー塗料の塗布量を制御することによって、エフロレッセンスの程度を制御することができる。そして、エフロレッセンスが強く生じる部分と、エフロレッセンスが弱く生じる部分、或いはエフロレッセンス生じない部分と、が分布することにより、エフロレッセンスを不均一に生じさせることができる。長期間に亘って使用されたセメント製の建築資材は、その表面に部分的にエフロレッセンスが生じたり、エフロレッセンスの濃淡が部分的に異なっていて、不均一な外観を有する。一方で表面に均一な厚みのシーラー塗料の塗膜が設けられた一般的な建築資材は、エフロレッセンスが抑制されて均一な外観を有するため、自然な風合いを備えていない。これに対して本実施形態の建築資材1では、表面に不均一なエフロレッセンスが生じているため、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを表現することができる。
【0024】
またシーラー塗料の塗膜101の上には、更にクリアー塗装等が施されていてもよい。クリアー塗装を施すことによって、建築資材1の外観を有効に活用しながら、建築資材1の外面を保護することができる。このため、例えば建築資材1の外面が摩耗することによる破損及び粉落ちの発生、並びに建築資材1の外面の汚れを抑制することができる。
【0025】
2.建築資材の製造方法について
2-1.建築資材の製造方法の概要
まず、本実施形態の建築資材1の製造方法の概要を、
図2を参照しながら説明する。
【0026】
(1)セメント系成形材料の用意
まずセメント系成形材料を用意する。セメント系成形材料は、例えばセメント、シリカ質を含む混和材、補強繊維、増量材、水等を混合することによって得られる。
【0027】
シリカ質を含む混和材は、例えばSiO2含有率が70質量%以上であるとともにブレーン値が3000cm2以上のケイ石粉、前記以外のケイ石粉、シリカパウダー、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、パルプスラッジ焼却灰、及び汚泥焼却灰からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0028】
補強繊維は、例えばパルプ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、及びロックウールからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0029】
増量材は骨材(細砂)、回収セメント製品の破砕物などが好ましい。平均粒径は5mm未満の範囲内であることが好ましい。
【0030】
セメント系成形材料の固形分100質量部に対して、セメントの量は例えば30質量部以上70質量部以下であり、シリカ質を含む混和材の量は例えば30質量部以上60質量部以下であり、補強繊維の量は例えば3質量部以上6質量部以下であり、増量材の量は例えば5質量部以上40質量部以下の範囲内である。
【0031】
セメント系成形材料の固形分量に対する水の量の比(水の量/固形分量)は、5/95から30/70の範囲内であることが好ましい。
【0032】
セメント系成形材料中のSiのモル量に対する、セメント系成形材料中のCaのモル量の比は(Caのモル量/Siのモル量)は、0.5以上0.8以下であることが好ましい。この場合、建築資材の表面に適度なエフロレッセンスを生じさせることができる。このため、セメント系成形材料に含まれる各成分の配合割合は、Siのモル量に対するCaのモル量の比が、上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0033】
(2)成形工程
次に、セメント系成形材料を成形して成形体10を作製する。成形方法は、例えば、ロール加圧成形、押出成形、注型成形、抄造成形等から選択される。成形体10の形状は、特に限定されないが、例えば板状である。
【0034】
(3)一次養生工程
次に、成形体10を養生する。一次養生では、常温養生を行うことができる。
【0035】
(4)予熱工程
次に、成形体10を予熱炉50で加熱する。例えば
図2に示すように、成形体10を搬送しながら、予熱炉50を通過させることによって、成形体10を加熱することができる。予熱炉50内の加熱温度は、セメント系成形材料の配合、成形体10の厚み等に応じて、適宜設定される。
【0036】
(5)シーラー塗料塗布工程
次に、成形体10の表面にエフロレッセンスが不均一に生じるようにシーラー塗料を塗布して、シーラー塗料の層11を形成する。例えば
図2に示すように、成形体10を搬送しながら、塗布装置51を用いてシーラー塗料を塗布することにより、シーラー塗料の層11を形成する。シーラー塗料の層11においては、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、が分布している。そのため、塗布装置51によって、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させることができる。塗布装置51を用いてシーラー塗料の層11を形成する方法については、後述する。
【0037】
シーラー塗料は、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ゴム、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、及びフッ素樹脂からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有することができる。シーラー塗料は、例えば水性エマルションであり、あるいは有機溶剤を含有する溶液又は分散液である。シーラー塗料は、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、カオリン、ベントナイト、セリサイト、ドロマイト、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、珪藻土などの無機粒子を含有することが好ましい。このようなシーラー塗料の層11は、建築資材の表面に生じるエフロレッセンスを制御することができる。またシーラー塗料は、顔料、染料等の種々の着色剤を含んでいてもよい。すなわちシーラー塗料が有色塗料であってもよい。
【0038】
本実施形態では、シーラー塗料がアクリル樹脂を含むことが好ましい。この場合、オートクレーブ養生でもシーラー塗膜を保持することができる。
【0039】
本実施形態では、シーラー塗料に含まれるアクリル樹脂の濃度(シーラー塗料全体に対するアクリル樹脂の濃度)が0.5%以上20%以下であることが好ましい。この場合、建築資材の表面に自然な風合いのエフロレッセンスを生じさせることができる。シーラー塗料に含まれるアクリル樹脂の濃度が、0.5%未満であると過剰なエフロレッセンスが生じることがあり、また20%より大きいとエフロレッセンスが抑制され過ぎて自然な風合いが表現されにくいことがある。
【0040】
(6)乾燥工程
次に、シーラー塗料の層11が設けられた成形体10を乾燥炉52で加熱する。例えば
図2に示すように、成形体10を搬送しながら、乾燥炉52を通過させることによって、シーラー塗料の層11を乾燥させることができる。乾燥炉52内の加熱温度は、成形体10の大きさ、シーラー塗料の配合、厚み等に応じて適宜設定される。
【0041】
(7)オートクレーブ養生工程
次に成形体10をオートクレーブ養生する。例えば
図2に示すように、オートクレーブ53で成形体10を養生硬化させることにより、シーラー塗料の層11が硬化されて塗膜101が形成されると共に、成形体10の表面に不均一にエフロレッセンスを生じさせることができる。
【0042】
効果的にエフロレッセンスを生じさせる観点から、オートクレーブ養生の条件は、160℃以上180℃以下、0.5MPa以上0.9MPa以下、8時間以上13時間以下の条件であることが好ましい。
【0043】
上記(1)~(7)の工程により、建築資材1を作製することができる。
【0044】
本実施形態の建築資材1は、厚みが不均一なシーラー塗料の塗膜101が設けられているため、不均一なエフロレッセンスが生じる。詳細には、塗膜101の厚みが大きい部分、すなわちシーラー塗料の塗布量が多い部分では、エフロレッセンスが抑制され、エフロレッセンスが生じない、或いは弱いエフロレッセンスが生じる。また塗膜101の厚みが小さい部分、すなわちシーラー塗料の塗布量が少ない部分では、エフロレッセンスが抑制され難く、強いエフロレッセンスが生じる。このため、塗膜101の厚みに応じて、すなわちシーラー塗料の塗布量に応じて、不均一なエフロレッセンスを生じさせることができる。この不均一なエフロレッセンスによって、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを表現することができる。本実施形態では、エフロレッセンスが最も強く生じている部分と、エフロレッセンスが最も弱く生じている部分との色差(ΔE)は、5以上15以下であることが好ましい。色差は、例えば色彩色差計、分光測色計等によって測定することができる。
【0045】
2-2.シーラー塗料塗布工程の詳細
上述の通り、本実施形態の建築資材1の製造方法においては、塗布装置51を用いて成形体10の表面にシーラー塗料を塗布することにより、シーラー塗料の層11を形成することができる。以下、塗布装置51を用いて、シーラー塗料の層11を形成する方法について説明する。
【0046】
(第一の方法)
第一の方法では、成形体10の表面にスプレー塗装でシーラー塗料を塗布することで、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。それにより、一枚の成形体10の表面上に、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とが分布されたシーラー塗料の層11を形成することができる。このシーラー塗料の層11の膜厚は不均一であるため、この層11を備える成形体10をオートクレーブ養生させることにより、成形体10の表面に不均一なエフロレッセンスを生じさせることができる。具体的には、シーラー塗料の塗布量が多い部分ではエフロレッセンスが抑制されるため、エフロレッセンスが淡い色で生じ、或いは生じない。またシーラー塗料の塗布量が少ない部分ではエフロレッセンスが抑制されにくいため、エフロレッセンスが濃い色で生じる。
【0047】
第一の方法においては、塗布装置51としてスプレー塗装装置510を用いる(
図3参照)。スプレー塗装装置510としては、スプレー塗装を行うことができる公知の塗装装置を、特に制限なく使用することができる。
【0048】
スプレー塗装装置510を用いて成形体10の表面にシーラー塗料を塗布する際には、成形体10を固定した状態で、スプレー塗装装置510を移動させてもよく、またスプレー塗装装置510を固定した状態で、成形体10を移動させてもよく、成形体10を移動させながらスプレー塗装装置510を移動させてもよい。
【0049】
スプレー塗装装置510を用いて、シーラー塗料の塗布量が多い部分を形成する場合には、塗布量が多くなるようにシーラー塗料を複数回塗布してもよく、シーラー塗料を塗布する時間を長くすることで塗布量を多くしてもよい。またスプレー塗装装置510を用いて、シーラー塗料の塗布量が少ない部分を形成する場合には、塗布量が少なくなるようにシーラー塗料の塗布回数を少なくしてもよく、シーラー塗料を塗布する時間を短くすることで塗布量を少なくしてもよい。
【0050】
スプレー塗装装置510を用いてシーラー塗料の層11を形成する場合、シーラー塗料の塗布量を制御しやすいため、シーラー塗料の層11の厚みを制御しやすく、そのため成形体10オートクレーブ養生後に発生するエフロレッセンスの濃淡も制御しやすい。
【0051】
(第二の方法)
第二の方法では、
図4Aに示すように、塗布装置51として、塗料供給機511及びエアー吹付機512を使用する。
【0052】
塗料供給機511は、成形体10の表面にシーラー塗料を供給することができれば特に限定されない。塗料供給機511の例には、シャワーコーター、スプレーガン、ロールコーター、オーバーフローコーター、及びカーテンコーターが含まれる。
図4Aに示す塗料供給機511はオーバーフローコーターである。成形体10を移動させながら、成形体10の表面に対してシーラー塗料を供給することにより、成形体10の表面にシーラー塗料の層110を設けることができる。この際、層110を構成するシーラー塗料は、流動性を有する。また
図4Aに示すように、成形体10の表面から落ちたシーラー塗料を成形体10の下方で回収することが好ましい。この場合、回収したシーラー塗料を塗料供給機511で再利用することができ、シーラー塗料の使用量を低減することができる。
【0053】
エアー吹付機512は、成形体10の表面に設けられたシーラー塗料の層110に対して高圧のエアーを吹き付ける。具体的には、横長のエアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付ける。成形体10に対してエアーを吹き付ける際、層110を構成するシーラー塗料は流動性を有するため、このエアーによって、シーラー塗料の層110からシーラー塗料を欠き取ることができ、シーラー塗料の塗布量を減少させることができる。これにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とを分布させられ、不均一な厚みを有するシーラー塗料の層11を形成することができる。またエアーによってシーラー塗料の層110からシーラー塗料を欠き取るためには、層110を構成するシーラー塗料が流動性を有している間に、層110に対してエアーを吹き付ける必要がある。例えば成形体10の表面にシーラー塗料を設けた直後に、エアー吹付機512から成形体10に向かってエアーを吹き付けることが好ましい。また
図4Aに示すように、エアー吹付機512によって欠き取られたシーラー塗料を回収することが好ましい。この場合、回収したシーラー塗料を塗料供給機511で再利用することができ、シーラー塗料の使用量を低減することができる。
【0054】
第二の方法では、例えば
図4Bに示すように、エアー吹出口513の長手方向の幅を、成形体10の移動方向と交差する方向の幅と同じ、又は成形体10の移動方向と交差する方向の幅よりも大きくし、エアー吹付機512の位置を固定した状態で、成形体10を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かって圧力でエアーを吹き付ける。それにより、層110のシーラー塗料を減少させることができる。
【0055】
エアー吹出口513から吹き出すエアーの吹出圧力が一定であっても、不均一な厚みを有するシーラー塗料の層11を形成することができる。しかし、シーラー塗料の塗布量の多い部分と、少ない部分とで、厚みの差が少なくなる傾向があり、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスの濃淡も差が生じにくいことがある。そのため、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを十分に表現できないことある。また多数の建築資材1を作製した場合に、模様が類似した建築資材1が発生することがある。
【0056】
これに対して第二の方法では、表面にシーラー塗料が設けられた成形体10又はエアー吹出口513を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付けると共に、エアー吹出口513から吹き出すエアーの吹出圧力を経時的に変化させる。これにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。第二の方法によってシーラー塗料の層11を形成する場合、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、少ない部分とで、厚みの差が生じやすく、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスの濃淡に差を生じさせやすい。そのため第二の方法では、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを表現しやすい。例えばシーラー塗料が有色塗料であっても自然な風合いを表現することができる。また第二の方法では、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とで厚みの差が生じやすいことから、同一条件で建築資材1を作製しても、類似の厚みを有するシーラー塗料の層11が形成されにくく、類似のエフロレッセンス有する建築資材1も製造されにくい。そのため多数の建築資材1を作製しても、模様が類似した建築資材1が発生しにくい。
【0057】
例えば第二の方法では、エアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、エアー吹出口513から吹き出すエアーの吹出圧力を、周期的に変化させてもよく、ランダムに変化させてもよい。
【0058】
例えば第二の方法では、複数の成形体10にエアーを吹き付ける場合に、エアー吹出口513から吹き出すエアーの吹出圧力を、成形体10毎に変化させてもよい。
【0059】
例えば第二の方法では、エアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、エアー吹出口513から吹き出すエアーの吹出圧力を変化させると共に、成形体10毎にエアー吹出口513から吹き出すエアーの吹出圧力を変化させてもよい。
【0060】
また
図4Bでは、エアー吹出口513の位置を固定した状態で、成形体10を移動させているが、これに限定されず、成形体10の位置を固定した状態で、エアー吹出口513を移動させてもよい。
【0061】
図4A及び
図4Bに示すエアー吹付機512では、エアー吹出口513が一つのみ設けられているが、これに限定されない。例えば第二の方法では、複数のエアー吹出口513が設けられていてもよい。具体的には、吹出圧力が経時的に変化するエアー吹出口513が複数設けられていてもよく、吹出圧力が経時的に変化するエアー吹出口513に加えて、層110からシーラー塗料を均一に欠き取るエアー吹出口が設けられていてもよい。これらの場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスをより不均一にすることができる。
【0062】
(第三の方法)
第三の方法においても、塗布装置51として、塗料供給機511及びエアー吹付機512を使用する。塗料供給機511は、第三の方法と同様のものを使用することができる。エアー吹付機512は、第二の方法と同様に、エアー吹出口513から成形体10に向かって高圧のエアーを吹き付けて、シーラー塗料の層110からシーラー塗料を欠き取り、シーラー塗料の塗布量を減少させる。それにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とを分布させて、不均一な厚みを有するシーラー塗料の層11を形成する。
【0063】
第三の方法では、表面にシーラー塗料が設けられた成形体10又はエアー吹出口513(エアー吹付機512)を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付けると共に、エアー吹出口513を移動させる。これにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、前記シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。第三の方法によってシーラー塗料の層11を形成する場合、成形体10にエアーを吹き付けながらエアー吹付口513を移動させているため、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、少ない部分とで、厚みの差が生じやすく、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスの濃淡に差を生じさせやすい。そのため第三の方法では、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを表現しやすい。例えばシーラー塗料が有色塗料であっても自然な風合いを表現することができる。また第三の方法では、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とで厚みの差が生じやすいことから、同一条件で建築資材1を作製しても、類似の厚みを有するシーラー塗料の層11が形成されにくく、類似のエフロレッセンス有する建築資材1も製造されにくい。そのため多数の建築資材1を作製しても、模様が類似した建築資材1が発生しにくい。
【0064】
第三の方法では、例えば
図5Aに示すように、成形体10を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付けると共に、エアー吹出口513を成形体10の移動方向(成形体10が移動する方向)と交差する方向に沿って移動させる。このエアー吹出口513の長手方向の幅は、成形体10の移動方向と交差する方向の幅よりも小さいことが好ましい。
【0065】
エアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、エアー吹出口513が
図5Aに記載の方向X1に向かって1度移動した場合、層110からシーラー塗料が部分的に欠き取られて、
図5Bに示すようなシーラー塗料の層11が形成される。またエアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、エアー吹出口513が
図5Aに記載の方向X2に向かって1度移動した場合、層110からシーラー塗料が部分的に欠き取られて、
図5Cに示すようなシーラー塗料の層11が形成される。もちろん、エアー吹出口513は、成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、
図5Aに示す方向X1及び方向X2に沿って往復してもよく、複数回往復してもよい。この場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスをより不均一にすることができる。
【0066】
図5Aでは、成形体10が移動されているが、第三の方法はこれに限定されず、エアー吹出口513が移動されてもよい。
【0067】
図5Aでは、エアー吹出口513が成形体10の移動方向と交差する方向に沿って移動されているが、第三の方法はこれに限定されず、エアー吹出口513を成形体10の移動方向に沿って移動させてもよい。この場合も、シーラー塗料の層11の厚みを不均一にすることができる。特に、エアー吹出口513を成形体10の移動方向に沿って移動させる場合には、エアー吹出口513又は成形体10の移動速度を経時的に変化させることも好ましい。この場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができる。もちろん、エアー吹出口513を成形体10の移動方向と交差する方向に沿って移動させる場合においても、エアー吹出口513又は成形体10の移動速度を経時的に変化させてもよい。
【0068】
また第三の方法では、成形体10又はエアー吹出口513の移動速度を速くする、又は遅くする、エアー吹出口513の移動速度を速くする、又は遅くすることにより、シーラー塗料の層11の厚みを変化させることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスも変化させることができる。そのため、第三の方法では、建築資材1の風合いを容易に変化させることができ、様々なバリエーションの建築資材1を作製することができる。
【0069】
図5Aに示すエアー吹付機512では、エアー吹出口513が一つのみ設けられているが、これに限定されない。例えば第三の方法では、複数のエアー吹出口513が設けられていてもよい。具体的には、成形体10の移動方向と交差する方向に移動するエアー吹出口513が複数設けられていてもよく、移動方向と交差する方向に移動するエアー吹出口513に加えて、層110からシーラー塗料を均一に欠き取るエアー吹出口が設けられていてもよい。これらの場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスをより不均一にすることができる。
【0070】
(第四の方法)
第四の方法においても、塗布装置51として、塗料供給機511及びエアー吹付機512を使用する。塗料供給機511は、第二の方法及び第三の方法と同様のものを使用することができる。エアー吹付機512は、第三の方法と同様に、エアー吹出口513から成形体10に向かって高圧のエアーを吹き付けて、シーラー塗料の層110からシーラー塗料を欠き取り、シーラー塗料の塗布量を減少させる。それにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とを分布させて、不均一な厚みを有するシーラー塗料の層11を形成する。
【0071】
第四の方法では、表面にシーラー塗料が設けられた成形体10又はエアー吹出口513(エアー吹付機512)を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付けると共に、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーが吹き出す方向(以下、吹出方向ともいう)を移動させる。これにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。第四の方法によってシーラー塗料の層11を形成する場合、成形体10にエアーを吹き付けながら、エアーの吹出方向を移動させているため、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、少ない部分とで、厚みの差が生じやすく、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスの濃淡に差を生じさせやすい。そのため第四の方法では、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを表現しやすい。例えばシーラー塗料が有色塗料であっても自然な風合いを表現することができる。また第四の方法では、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とで厚みの差が生じやすいことから、同一条件で建築資材1を作製しても、類似の厚みを有するシーラー塗料の層11が形成されにくく、類似のエフロレッセンス有する建築資材1も製造されにくい。そのため多数の建築資材1を作製しても、模様が類似した建築資材1が発生しにくい。
【0072】
第四の方法では、例えば
図6Aに示すように、成形体10を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付けると共に、エアー吹出口513の位置を固定しながら、吹出方向を移動方向と交差する方向に沿って移動させる。このエアー吹出口513の長手方向の幅は、成形体10の移動方向と交差する方向の幅よりも小さいことが好ましい。
【0073】
エアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、吹出方向が
図6Aに記載の方向X3に沿って1度移動した場合、層110からシーラー塗料が部分的に欠き取られて、
図6Bに示すようなシーラー塗料の層11が形成される。またエアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、吹出方向が
図6Aに記載の方向X4に沿って1度移動した場合、層110からシーラー塗料が部分的に欠き取られて、
図6Cに示すようなシーラー塗料の層11が形成される。もちろん、吹出方向は、エアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、
図6Aに示す方向X3及び方向X4に沿って往復してもよく、複数回往復してもよい。この場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスをより不均一にすることができる。
【0074】
特に第四の方法において、エアー吹出口513の位置を固定しながら、吹出方向を移動方向と交差する方向に沿って移動させる場合、層110におけるエアー吹出口513から近い位置では多くのシーラー塗料が欠き取られるが、層110におけるエアー吹出口513から遠い位置ではシーラー塗料が欠き取られる量が少なくなる。そのため、層110におけるシーラー塗料が欠き取られた部分においては、厚みが連続的に変化している。それにより、オートクレーブ養生後では、濃淡が連続的に変化したエフロレッセンスを生じさせることができ、すなわちグラデーションを有するエフロレッセンスを生じさせることができる。
【0075】
図6Aでは、成形体10が移動されているが、第四の方法はこれに限定されず、エアー吹出口513が移動されてもよい。
【0076】
図6Aでは、エアーの吹出方向が成形体10の移動方向と交差する方向に沿って移動されているが、第四の方法はこれに限定されず、エアーの吹出方向を成形体10の移動方向に沿って移動させてもよい。この場合も、シーラー塗料の層11の厚みを不均一にすることができる。特に、エアーの吹出方向を成形体10の移動方向に沿って移動させる場合には、エアーの吹出方向又は成形体10の移動速度を経時的に変化させることも好ましい。この場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができる。もちろん、エアーの吹出方向を成形体10の移動方向と交差する方向に沿って移動させる場合においても、エアー吹出口513又は成形体10の移動速度を経時的に変化させてもよい。
【0077】
また第四の方法では、成形体10又はエアー吹出口513の移動速度を速くする、又は遅くする、エアー吹出口513の移動速度を速くする、又は遅くすることにより、シーラー塗料の層11の厚みを変化させることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスも変化させることができる。そのため、第四の方法では、建築資材1の風合いを容易に変化させることができ、様々なバリエーションの建築資材1を作製することができる。
【0078】
図6Aに示すエアー吹付機512では、エアー吹出口513が一つのみ設けられているが、これに限定されない。例えば第四の方法では、複数のエアー吹出口513が設けられていてもよい。具体的には、吹出方向が移動方向と交差する方向に移動するエアー吹出口513が複数設けられていてもよく、吹出方向が移動方向と交差する方向に移動するエアー吹出口513に加えて、層110からシーラー塗料を均一に欠き取るエアー吹出口が設けられていてもよい。これらの場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスをより不均一にすることができる。
【0079】
(第五の方法)
第五の方法においても、塗布装置51として、塗料供給機511及びエアー吹付機512を使用する。塗料供給機511は、第二の方法、第三の方法及び第四の方法と同様のものを使用することができる。エアー吹付機512は、第二の方法、第三の方法及び第四の方法と同様に、エアー吹出口513から成形体10に向かって高圧のエアーを吹き付けて、シーラー塗料の層110からシーラー塗料を欠き取り、シーラー塗料の塗布量を減少させる。それにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とを分布させて、不均一な厚みを有するシーラー塗料の層11を形成する。
【0080】
第五の方法では、表面にシーラー塗料が設けられた成形体10又はエアー吹出口513を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付けると共に、エアー吹出口513の長手方向を移動方向と交差する方向に配置し、エアー吹出口513と成形体10との間にエアー吹出口513から吹き出すエアーを部分的に遮る邪魔板514を配置し、かつ、邪魔板514をエアー吹出口513の長手方向に沿って移動させる(
図7A及び
図7B参照)。これにより、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、シーラー塗料の塗布量が少ない部分と、を分布させる。第五の方法によってシーラー塗料の層11を形成する場合、シーラー塗料の塗布量が多い部分と、少ない部分とで、厚みの差が生じやすく、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスの濃淡に差を生じさせやすい。そのため第五の方法では、経年変化したセメント系の建築資材のような自然な風合いを表現しやすい。例えばシーラー塗料が有色塗料であっても自然な風合いを表現することができる。また第五の方法では、シーラー塗料の塗布量が多い部分と少ない部分とで厚みの差が生じやすいことから、同一条件で建築資材1を作製しても、類似の厚みを有するシーラー塗料の層11が形成されにくく、類似のエフロレッセンス有する建築資材1も製造されにくい。そのため多数の建築資材1を作製しても、模様が類似した建築資材1が発生しにくい。
【0081】
第五の方法では、例えば
図7A及び
図7Bに示すように、成形体10を移動させながら、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーを吹き付けると共に、エアー吹出口513の長手方向を成形体10の移動方向と交差する方向に配置し、さらに、エアー吹出口513と成形体10との間に設けられた邪魔板514をエアー吹出口513の長手方向に沿って移動させる。このエアー吹出口513の長手方向の幅は、成形体10の移動方向と交差する方向の幅と同じ、又は成形体10の移動方向と交差する方向の幅よりも大きいことが好ましい。
【0082】
エアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、邪魔板514が
図7Aに示す方向X5に沿って1度移動した場合、層110における邪魔板514でエアーが遮られた部分を除いてシーラー塗料が欠き取られて、
図7Cに示すようなシーラー塗料の層11が形成される。またエアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、邪魔板514が
図7Aに示す方向X6に沿って一度移動した場合、層110における邪魔板514でエアーが遮られた部分を除いてシーラー塗料が欠き取られて、
図7Dに示すようなシーラー塗料の層11が形成される。もちろん、邪魔板514は、エアー吹出口513が成形体10の移動方向の一端から他端に達するまでの間に、
図7Aに示す方向X5及び方向X6に沿って往復してもよく、複数回往復してもよい。この場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスをより不均一にすることができる。
【0083】
図7Aでは、成形体10が移動されているが、第五の方法はこれに限定されず、エアー吹出口513が移動されてもよい。
【0084】
また第五の方法では、成形体10又はエアー吹出口513の移動速度を速くする、又は遅くする、邪魔板514の移動速度を速くする、又は遅くすることにより、シーラー塗料の層11の厚みを変化させることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスも変化させることができる。そのため、第五の方法では、建築資材1の風合いを容易に変化させることができ、様々なバリエーションの建築資材1を作製することができる。
【0085】
図7Aに示すエアー吹付機512では、邪魔板514が一つのみ設けられているが、これに限定されない。例えば第五の方法では、複数の邪魔板514が設けられていてもよい。また
図7Aに示すエアー吹付機512では、エアー吹出口513が一つのみ設けられているが、これに限定されない。例えば第五三の方法では、複数のエアー吹出口513が設けられていてもよい。具体的には、成形体10との間に邪魔板514が設けられたエアー吹出口513に加えて、層110からシーラー塗料を均一に欠き取るエアー吹出口が設けられていてもよい。これらの場合、シーラー塗料の層11の厚みをより不均一にすることができ、オートクレーブ養生後に生じるエフロレッセンスをより不均一にすることができる。
【0086】
(変形例)
塗布装置51を用いてシーラー塗料の層11を形成する方法は、上記第一の方法~第五の方法に限定されない。
【0087】
例えば、第三の方法、第四の方法及び第五の方法において、第二の方法のように、エアー吹出口513から吹き出すエアーの吹出圧力が経時的に変化してもよい。例えば、成形体10がその移動方向の一端から他端に達するまでの間に、エアーの吹出圧力を周期的に変化させてもよい。例えば、複数の成形体10にエアーを吹き付ける際に、成形体10毎にエアーの吹出圧力を変化させてもよい。
【0088】
例えば、第三の方法において、第四の方法のように、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーが吹き出す方向を移動させてもよい。
【0089】
例えば、第三の方法において、第五の方法のように、エアー吹出口513と成形体10との間にエアー吹出口513から吹き出すエアーを部分的に遮る邪魔板514を配置し、かつ、邪魔板514をエアー吹出口513の長手方向に沿って移動させてもよい。
【0090】
例えば、第四の方法において、第五の方法のように、エアー吹出口513と成形体10との間にエアー吹出口513から吹き出すエアーを部分的に遮る邪魔板514を配置し、かつ、邪魔板514をエアー吹出口513の長手方向に沿って移動させてもよい。
【0091】
例えば、第三の方法において、第四の方法のように、エアー吹出口513から成形体10に向かってエアーが吹き出す方向を移動させると共に、第五の方法のように、エアー吹出口513と成形体10との間にエアー吹出口513から吹き出すエアーを部分的に遮る邪魔板514を配置し、かつ、邪魔板514をエアー吹出口513の長手方向に沿って移動させてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 建築資材
10 成形体
513 エアー吹出口
514 邪魔板