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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びシールド構造
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220824BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20220824BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61B8/00
H05K9/00 C
H04N7/18 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019022463
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020127685
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 秀直
(72)【発明者】
【氏名】平田 正治
(72)【発明者】
【氏名】時田 佑太
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-340337(JP,A)
【文献】特開平06-005375(JP,A)
【文献】特表2015-519183(JP,A)
【文献】米国特許第05063273(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
H05K 9/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後面板を有し、外シールドケースとして機能するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、超音波診断において機能する電子回路に電力を供給する電源回路を収容した第1の内シールドケースと、
前記第1の内シールドケースとは別のシールドケースであって、前記ハウジング内において前記後面板上に設けられ、前記電源回路の入力側に設けられた内部AC配線を収容した第2の内シールドケースと、
を含み、
前記後面板には、外部ACケーブルのプラグが差し込まれるインレットが設けられ、
前記内部AC配線には、
中継基板と、
前記インレットと前記中継基板との間に設けられた第1の内部ACケーブルと、
前記中継基板と前記電源回路との間に設けられた第2の内部ACケーブルと、
が含まれ、
前記後面板と前記第2の内シールドケースとにより囲まれるシールド室に、前記中継基板、前記第1の内部ACケーブル、及び、前記第2の内部ACケーブルが収容されている、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記第2の内シールドケースは箱状である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項記載の超音波診断装置において、
前記後面板には外部機器用電源コネクタが設けられ、
前記内部AC配線には、更に、前記中継基板と前記外部機器用電源コネクタとの間に設けられた第3の内部ACケーブル、が含まれ、
前記シールド室に前記第3の内部ACケーブルが収容されている、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記内部AC配線には、前記電源回路へ電力を供給する内部ACケーブルが含まれ、
前記第1の内シールドケースは、前記内部ACケーブルを受け入れる第1の開口を有する第1の側面を有し、
前記第2の内シールドケースは、前記内部ACケーブルを排出する第2の開口を有する第2の側面を有し、
前記第1の側面及び前記第2の側面は互いに向き合っている、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の超音波診断装置において、
前記第1の開口及び前記第2の開口は近接しており、且つ、前記第1の側面及び前記第2の側面に直交する方向から見て、前記第1の開口及び前記第2の開口は少なくとも部分的に重複する位置関係にある、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記ハウジングは、
プローブコネクタを備えた前面板と、
前記後面板と、
を有し、
前記前面板と前記後面板との間の内部空間に、デジタル電子回路、アナログ電子回路、前記電源回路、及び、前記内部AC配線が収容され、
前記後面板の内面に対して、前記第1の内シールドケース及び前記第2の内シールドケースが固定された、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
外シールドケースとして機能するハウジング内に設けられ、超音波診断装置において機能する電子回路に電力を供給する電源回路を収容した第1の内シールドケースと、
前記第1の内シールドケースとは別のシールドケースであって、前記ハウジング内において前記ハウジングの後面板上に設けられ、前記電源回路の入力側に設けられた内部AC配線を収容した第2の内シールドケースと、
を含み、
前記後面板には、外部ACケーブルのプラグが差し込まれるインレットが設けられ、
前記後面板には、メイン電源スイッチに接続されたメイン電源スイッチ用コネクタが設けられ、
前記内部AC配線には、
中継基板と、
前記インレットと前記メイン電源スイッチ用コネクタとの間に設けられた内部ACケーブル、前記メイン電源スイッチ用コネクタと前記中継基板との間に設けられた内部ACケーブル、及び、前記中継基板と前記電源回路との間に設けられた内部ACケーブル、からなる複数の内部ACケーブルと、
が含まれ、
前記後面板と前記第2の内シールドケースとにより囲まれるシールド室に、前記中継基板及び前記複数の内部ACケーブルが収容されている、
ことを特徴とする、超音波診断装置におけるシールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置及びシールド構造に関し、特に、装置本体に設けられたシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、被検者への超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する医療用装置である。超音波診断装置として、カート型超音波診断装置、携帯型超音波診断装置等が知られている。以下においては、カート型超音波診断装置を例にとり、その構成を説明する。
【0003】
カート型超音波診断装置は、一般に、装置本体、操作パネル、表示器等を備える。装置本体の下部には複数のキャスタが取り付けられている。また、装置本体には昇降機構が設けられ、昇降機構によって操作パネルが支持される。操作パネルの奥側にはアーム機構が設けられ、アーム機構によって表示器が保持される。装置本体内には、箱状の筐体が設けられ、その筐体内には複数の基板が収容されている。筐体は金属で構成され、それは、一般に、ハウジング及びシールドケースとして機能する。なお、装置本体の小型化に伴い、筐体内における基板間の隙間が狭くなりつつある。これにより、ハウジング内の電子回路で発生した電磁波がより高レベルで閉じ込められ易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-212141号公報
【文献】特開2001-112751号公報(特に図3及び図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波診断装置の筐体内においては、電子回路や信号線から電磁波が放射される。そのような電磁波(放射ノイズとも言い得る)を原因として、筐体内に設けられた内部AC配線(電源回路の入力側に設けられた内部ACケーブル等)においてノイズが誘起されると、そのノイズが内部ACケーブル及び外部ACケーブルを伝って筐体外へ漏れ出てしまう。漏れ出たノイズにより外部ACケーブルからの電磁波の放射が引き起こされる。
【0006】
特許文献1には、シールドケースを有する超音波診断装置が開示されている。シールドケース内には電源回路及びAC配線が一緒に収容されている。電源回路とAC配線とを個別にシールドする構成は特許文献1には認められない。また、特許文献1にはシールドケースの具体的な形状や配置については記載されていない。
【0007】
特許文献2には、AC/DCコンバータを収容するケース及びAC配線を収容するケースを有する超音波診断装置が開示されている。それらのケースは筐体の外側にあると理解され、筐体内でのノイズの誘起を防止又は低減する構成は特許文献2には認められない。
【0008】
本発明の目的は、超音波診断装置において、外部へ漏洩するノイズを抑制することにある。あるいは、本発明の目的は、超音波診断装置において、内部AC配線を放射ノイズから保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る超音波診断装置は、外シールドケースとして機能するハウジングと、前記ハウジング内に設けられ、超音波診断において機能する電子回路に電力を供給する電源回路を収容した第1の内シールドケースと、前記第1の内シールドケースとは別のシールドケースであって、前記ハウジング内に設けられ、前記電源回路の入力側に設けられた内部AC配線を収容した第2の内シールドケースと、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るシールド構造は、外シールドケースとして機能するハウジング内に設けられ、超音波診断装置において機能する電子回路に電力を供給する電源回路を収容した第1の内シールドケースと、前記第1の内シールドケースとは別のシールドケースであって、前記ハウジング内に設けられ、前記電源回路の入力側に設けられた内部AC配線を収容した第2の内シールドケースと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部へ漏洩するノイズを抑制できる。あるいは、本発明によれば、内部AC配線を放射ノイズから保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示す斜視図である。
図2】シールド構造の第1実施例を示す模式図である。
図3】AC内部配線ユニットの断面図である。
図4】電源関連の回路図である。
図5】シールド構造の第2実施例を示す図である。
図6】シールド構造の第3実施例示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、外シールドケースとして機能するハウジング、第1の内シールドケース、及び、第2の内シールドケースを有する。第1の内シールドケースは、ハウジング内に設けられ、超音波診断において機能する電子回路に電力を供給する電源回路を収容するものである。第2の内シールドケースは、第1の内シールドケースとは別のシールドケースであって、ハウジング内に設けられ、電源回路の入力側に設けられた内部AC配線を収容するものである。
【0015】
上記構成によれば、ハウジング内において、内部AC配線が第2の内シールドケースの中に収容されているので、ハウジング内で生じている放射ノイズから内部AC配線が保護される。すなわち、内部AC配線でのノイズの誘起が効果的に抑制される。これにより外部へ漏洩するノイズを低減できる。
【0016】
ハウジング内において、電源回路で生じた電磁波つまり放射ノイズは、第1の内シールドケースにより、その内部に局所的に閉じ込められる。これにより、電源回路で生じた放射ノイズが原因となって、電子回路や内部AC配線においてノイズが誘起されることが防止又は軽減される。以上のような観点から見て、第1の内シールドケースと第2の内シールドケースの組み合わせには特別な技術的意義が認められる。
【0017】
実施形態において、内部AC配線には、中継基板と、外部ACケーブルと中継基板との間に設けられた第1の内部ACケーブルと、中継基板と電源回路との間に設けられた第2の内部ACケーブルと、が含まれる。中継基板には、回路パターンが形成され、そこに中継コネクタが設けられることもある。中継基板は配線密集箇所でもある。そのような観点から見て、中継基板は、一般的に見て、放射ノイズに弱い部品である。上記構成によれば、中継基板が第2の内シールドケースの中に収容されているので、中継基板が放射ノイズから保護される。また、第1の内部ACケーブル及び第2の内部ACケーブルが第2の内シールドケースの中に収容されているので、それらも放射ノイズから保護される。なお、外部ACケーブルと中継基板との間にメイン電源スイッチが設けられる場合、第1の内部ACケーブルとして、2本の内部ACケーブルが設けられる。
【0018】
実施形態において、内部AC配線には、更に、中継基板と外部機器用電源コネクタとの間に設けられた第3の内部ACケーブルが含まれる。この構成によれば、外部機器が接続される外部ACケーブルを通じて漏洩するノイズを効果的に抑制できる。内部AC配線に対して複数の外部ACケーブルが接続されている場合、ノイズの漏洩量が増大し易くなるので、上記構成がより効果的に機能することになる。
【0019】
実施形態において、内部AC配線には、電源回路へ電力を供給する内部ACケーブルが含まれ、第1の内シールドケースは、内部ACケーブルを受け入れる第1の開口を有する第1の側面を有し、第2の内シールドケースは、内部ACケーブルを排出する第2の開口を有する第2の側面を有し、第1の側面及び第2の側面は互いに向き合っている。この構成によれば、内部AC配線から電源回路までの内部ACケーブルの長さを短くできるので、当該内部ACケーブルでのノイズの誘起を低減できる。
【0020】
実施形態において、第1の開口及び第2の開口は近接しており、且つ、第1の側面及び前記第2の側面に直交する方向から見て、第1の開口及び第2の開口は少なくとも部分的に重複する位置関係にある。この構成によれば、内部ACケーブルにおける露出部分(2つの内シールドケースに覆われていない部分)を短くできるから、当該内部ACケーブルでのノイズの誘起をより低減できる。一般に、2つの開口の間の距離が2cm以下であればそれらは近接していると言い得る。
【0021】
実施形態において、ハウジングは、プローブコネクタを備えた前面板と、後面板と、を有する。前面板と後面板との間の内部空間に、デジタル電子回路、アナログ電子回路、電源回路、及び、内部AC配線が収容される。この構成によれば、後面板と第1の内シールドケースとで囲まれる空間が第1のシールド室となり、その第1のシールド室内に電源回路が配置される。また、後面板と第2の内シールドケースとで囲まれる空間が第2のシールド室となり、その第2のシールド室内に内部AC配線が配置される。上記構成によれば、効果的なシールドを実現しつつ、部品点数を削減できる。
【0022】
実施形態に係るシールド構造は、第1の内シールドケースと第2の内シールドケースとを含む。第1の内シールドケースは、外シールドケースとして機能するハウジング内に設けられ、超音波診断において機能する電子回路に電力を供給する電源回路を収容するものである。第2の内シールドケースは、第1の内シールドケースとは別のシールドケースであって、ハウジング内に設けられ、電源回路の入力側に設けられた内部AC配線を収容するものである。このシールド構造は、望ましくは、装置本体の後部に設けられるが、装置本体の下部又は側部に設けられてもよい。
【0023】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が模式的に示されている。超音波診断装置は、病院等の医療機関において生体を超音波診断するための医療用装置である。超音波診断に際しては、生体に対して超音波が送受波され、これにより得られた受信信号に基づいて超音波画像が形成される。超音波画像として、断層画像、血流画像、ドプラ画像、弾性情報画像等があげられる。
【0024】
図1において、カート型超音波診断装置としての超音波診断装置10は、装置本体12、支持機構14、操作パネル16、等を有している。支持機構14は昇降機構を含み、その昇降機構によって操作パネル16が支持される。操作パネル16の図示は図1において省略されている。操作パネル16は、入力デバイスとして機能し、それは、具体的には、複数のボタン、複数のスイッチ、トラックボール、キーボード等を有する。操作パネル16の奥側にはアーム機構が設けられ、そのアーム機構によって表示器が保持されている。図1においてはアーム機構及び表示器の図示が省略されている。
【0025】
装置本体12の下部18には4つのキャスタ20が設けられている。下部18は4つのキャスタ20が取り付けられた4つの脚部を有するが、図1において、それらの図示が省略されている。なお、図1において、x方向は第1の水平方向としての左右方向であり、y方向は第2の水平方向としての奥行方向である。z方向は垂直方向である。
【0026】
装置本体12は、箱状の筐体22を有する。筐体22は、金属部材で構成され、ハウジング及びシールドケース(外シールドケース)として機能する。筐体22は、y方向に一定距離をおいて平行に並んだ前面板22A及び後面板22Bを有する。それらの他、筐体22は、右側面板、左側面板、上面板、及び、下面板を有する。前面板22Aには、図示の構成例において、4つの本体側コネクタ28が設けられている。各本体側コネクタ28には、超音波プローブが着脱可能に接続される。
【0027】
超音波プローブは、超音波振動子を有するプローブヘッド、本体側コネクタ28に装着されるプローブ側コネクタ、及び、プローブヘッドとプローブコネクタとの間に設けられたプローブケーブルにより構成される。なお、筐体22は図示されていない化粧パネルで覆われる。化粧パネルは例えば樹脂によって構成される。
【0028】
筐体22が有する内部空間23には、超音波診断を行うための複数の電子部品として、複数の回路、複数のケーブル、複数の機器、等が設けられる。図1においては、例として2つの基板24,26が示されている。基板26上には、例えば、送信回路、受信回路等が設けられる。それらは例えばアナログ電子回路として構成される。基板24上には、クロック発生器、CPU、メモリ、ハードディスク、コントローラ、等が設けられる。それらはデジタル電子回路又はデジタルデバイスである。
【0029】
筐体22内において、複数のデジタル電子回路及び複数のアナログ電子回路から電磁波(放射ノイズ)が生じる。例えば、基本クロックラインもノイズ源になり得る。各電子回路で生じた電磁波は、基本的に、シールドケースとしての筐体22内に閉じ込められるが、それを原因として、内部AC配線にノイズが生じると、内部AC配線からそれに接続された外部ACケーブルを介して、ノイズが外部へ漏洩してしまう。実施形態においては、そのようなノイズの漏洩を防止するために、筐体22内に特別なシールド構造が設けられている。以下、それについて詳述する。
【0030】
後面板22Bの内面(内部空間23へ向く面)には、電源ユニット32及び内部AC配線ユニット34が設けられている。電源ユニット32は、電源回路、及び、それを収容したシールドケース(第1の内シールドケース)36により構成される。電源回路は、AC(Alternate Current:交流)/DC(Direct Current:直流)変換回路である。電源回路は、一般に、複数のDC電圧を生成する。電源回路は、例えば、スイッチング電源回路として構成される。電源回路で生じた電磁波が筐体22内に拡散しないように、電源回路はシールドケース36内に設けられている。
【0031】
シールドケース36は、箱状の金属部材で構成される。具体的には、図示の構成例において、シールドケース36は、前面板、右側面板、左側面板、上面板、及び、下面板で構成されている。シールドケース36と筐体22における後面板22Bとで囲まれる空間がシールド室となる。そのシールド室内に電源回路が設けられている。シールドケース36は、後面板22Bに対して複数のねじによって固定されている。シールドケース36それ自体に更に後面板を付加してもよい。
【0032】
内部AC配線ユニット34は、内部AC配線、及び、それを収容したシールドケース(第2の内シールドケース)38により構成される。AC内部配線は、電源回路の入力側に設けられる部品群あるいは配線組織に相当し、それには、複数の内部ACケーブル、コネクタ付き中継基板、複数のコネクタ、インレット等が含まれる。インレットには、外部ACケーブルの端部を構成するプラグが差し込まれる。そこに外部からの電力が供給される。複数のコネクタは必要に応じて使用されるものであり、そこには、例えば、複数のオプション機器に接続される複数の外部ACケーブルが接続される。
【0033】
シールドケース38は、箱状の金属部材で構成される。具体的には、図示の構成例において、シールドケース38は、上記のシールドケース36と同様、前面板、右側面板、左側面板、上面板、及び、下面板で構成されている。シールドケース38と筐体22における後面板22Bとで囲まれる空間がシールド室となる。そのシールド室内に内部AC配線が設けられる。シールドケース38は、後面板22Bに対して複数のねじによって固定されている。シールドケース36それ自体に更に後面板を付加してもよい。
【0034】
図2には、実施形態に係るシールド構造の第1実施例が示されている。既に説明したように、後面板22Bの内面40に対して電源ユニット32及び内部AC配線ユニット34が固定されている。後面板22Bの内面40に対しては更に基板42が固定されている。この基板42は例えばDC電源を複数の電子回路へ分配する機能を有するものである。基板42と電源回路との間にケーブル44が設けられている。なお、各ケーブルには1本又は複数本の導電線が含まれる。複数の導電線がツイストケーブルを構成していてもよい。
【0035】
内部AC配線ユニット34において、シールドケース38内には、内部AC配線46が設けられている。内部AC配線46には、図示の構成例において、インレット48、複数のコネクタ50,52,54、中継基板56、複数の内部ACケーブル60,62,64,66,68が含まれる。コネクタ50には、メイン電源スイッチが接続されている。コネクタ50とインレット48との間に内部ACケーブル60が設けられている。中継基板56にはコネクタ58が設けられている。コネクタ50とコネクタ58との間に内部ACケーブル62が設けられている。コネクタ58とコネクタ52との間に内部ACケーブル66が設けられている。コネクタ58とコネクタ54との間に内部ACケーブル68が設けられている。
【0036】
コネクタ52には、図示の構成例において、絶縁トランスを介して、ACソケット列が接続される。ACソケット列は、複数のオプション機器に対してAC電力を供給するものである。コネクタ54には、オプション機器としてのゼリーウオーマーが接続される。ゼリーウオーマーは、音響伝搬媒体としてのゼリーを加温する装置である。コネクタ58から引き出された内部ACケーブル64が電源回路に接続されている。中継基板56は分配基板又は端子台として機能するものであり、中継基板56にはAC電力を分配する導電パターンが形成されている。中継基板56に対して他の機能を付加してもよい。例えば、中継基板56上に外部機器へのAC電力の供給をオンオフするスイッチを設けてもよい。また、ノイズフィルタ等の電子回路を設けてもよい。
【0037】
シールドケース36は、後面板22Bの内面40における上部寄り且つ+x方向寄りに設けられており、シールドケース38は、後面板22Bの内面40における下部且つ-x方向寄りに設けられている。z方向において2つのシールドケース36,38間に重なりは生じていない。シールドケース36は、下面板36Aを有し、下面板36Aにおいて-x方向に偏倚した位置に開口70が形成されている。シールドケース38は、上面板38Aを有し、上面板38Aにおいて+x方向に偏倚した位置に開口72が設けられている。
【0038】
下面板36Aと上面板38Aは平行関係にあり、それらの隙間は例えば5~10mm程度である。すなわち、両者は近接した位置関係にある。開口70と開口72は、z方向から見て、部分的に重複した位置関係にある。開口72は、内部ACケーブル64を排出する出口開口であり、開口70は、内部ACケーブル64を受け入れる入口開口である。内部ACケーブル64は、シールドケース38に収容された部分と、シールドケース36に収容された部分と、それらの間の露出部分と、からなる。2つの開口70,72が近接しているので、露出部分の長さは短く、露出部分でのノイズの誘起はほとんど問題とならない。
【0039】
電源回路においては電磁波の放射が生じ得るが、その電磁波はシールドケース36内に局所的に閉じ込められる。その電磁波が筐体内の各電子回路や内部AC配線46へ及ぶことが効果的に防止されている。内部ACケーブル64を伝わる伝導ノイズが問題となる場合には、内部ACケーブル64上にノイズフィルタを設けてもよい。ノイズフィルタは、電子的なフィルタ回路、フェライトコイル等により構成される。
【0040】
実施形態に係るシールド構造によれば、従来において剥き出しであった内部AC配線46がシールドケース38の中に収容されているので、放射ノイズから内部AC配線46を保護でき、外部へ漏洩するノイズを効果的に低減することが可能となる。例えば、個々の内部ACケーブルに対してフェライトコイル等のノイズフィルタを設けてノイズ対策を行う場合、どうしてもコストアップという問題が生じてしまうが、実施形態によれば、非常に簡易な構成で効果的にノイズを抑制できる。もっとも、従来から用いられているノイズフィルタと実施形態に係るシールド構造を併用してもよい。
【0041】
図3には、内部AC配線ユニット34の断面が示されている。既に説明した要素には同一符号を付し、その説明を省略する。このことは、図4以降の各図の説明においても同様である。
【0042】
シールドケース38は、図示されていない複数のねじ等によって、後面板22Bに対して直接的に固定されている。インレット48には外部ACケーブル78の端部に設けられたプラグ80が差し込まれている。後面板22Bを貫通する状態でコネクタ52が設けられている。図3に示されていない他のコネクタも同様に配置されている。後面板22Bの外面からy方向に突出した形態をもって台座74が設けられており、その端部にメイン電源スイッチ76が設けられている。メイン電源スイッチ76は、化粧板としての外装パネルに設けられた開口を通じて外部に現れる。後面板22Bの外面には、必要に応じて、絶縁トランス84等が設けられる。この他、後面板22Bの外面には、必要に応じて、ACソケット列も設けられる。筐体内に存在する放射ノイズ82はシールドケース38により遮断され、内部AC配線46が放射ノイズ82から保護される。
【0043】
シールドケース36とシールドケース38とを一体化して1つの箱状のシールドケースを構成することも考えられる。しかし、その場合には、電源回路で生じた電磁波の影響が内部AC配線46に及び易くなり、結果として、外部ACケーブル78等へ漏洩するノイズが大きくなる可能性を指摘できる。これに対して、電源回路と内部AC配線46とを個別的にシールドする2つのシールドケースを設ければ、上記の問題が生じることを回避できる。
【0044】
また、実施形態によれば、内部AC配線46がシールドケース38によって包み込まれているので、それを物理的に保護できる。特に、筐体を構成するパネルを取り付ける際に、内部ACケーブルの挟み込みを効果的に防止できる。実施形態によれば、電源系に各電子回路を近付けることも可能となるので、その場合には筐体の小型化を図れる。
【0045】
なお、内部AC配線46が剥き出しの場合、複数の内部ACケーブルの姿勢如何で、漏洩するノイズの量や特性が変化してしまうという不安定性が生じるが、上記構成によれば、そのような不安定性を解消できる。これは超音波診断装置を設計及び製造する上で大きな利点である。
【0046】
図4には、電源関係の回路図が示されている。図4においては、筐体22内に設けられた2つのシールドケース36,38も図示されている。メイン電源回路90には、基板42が接続されており、その基板42を介してDC電力が各基板94,96に供給される。既に説明したように、各基板94,96上の電子回路、信号ライン等がノイズ源となり得る。基板間の配線もノイズ源になり得る。それらにおいて生じた放射ノイズがシールドケース38で遮断される。
【0047】
中継基板56を介して、複数のAC電力線ペアが互いに並列に接続されている。筐体22における後面板22Bには、インレット48、複数のコネクタ50,52,54が取り付けられている。図示の構成例では、コネクタ50にはメイン電源スイッチ76が接続されている。コネクタ52には絶縁トランス98を介してACソケット列100が接続されている。ACソケット列100は複数のソケットにより構成され、個々のソケットにはオプション機器から伸びる外部ACケーブルの端部に設けられたプラグが差し込まれる。コネクタ54には、電源回路102を介して、オプション機器104が接続される。オプション機器104は、例えば、ゼリーウオーマーである。他のオプション機器として、レコーダ、プリンタ等があげられる。各コネクタ50,52,54は、ソケット及びプラグで構成され、後面板に対してはソケットが取り付けられる。
【0048】
なお、図示の構成例では、基板42に対してDCバッテリを接続することが可能であり(符号91を参照)、その場合、DCバッテリは筐体22の内部又は外部に設けられる。DCバッテリを筐体22の外部に配置する場合には、必要に応じて、ノイズ対策を施すのが望ましい。
【0049】
実施形態によれば、内部AC配線46がシールドケース38によって保護されているので、メインの外部ACケーブルからのノイズの漏洩の他、複数の外部機器の電源ルートから漏洩するノイズも効果的に低減できる。特に、実施形態によれば、複数の外部電源ラインが接続された複数の接続箇所及びそれら相互を連結している配線群に対して簡易な構成で一括してシールド処理を施せる。
【0050】
図5には、実施形態に係るシールド構造の第2実施例が示されている。筐体110の後面板112の下部に加工を施すことにより、シールドケース112Aが構成されている。シールドケース112Aは事実上、筐体110の一部とみなせる。シールドケース112Aは、+y方向に向く矩形の開口を有し、その開口がカバー126で覆われている。カバー126は金属部材で構成される。
【0051】
外シールドケースとして機能する部分は、符号128で示すように、後面板112におけるシールドケース112A以外の部分、及び、カバー126である。シールドケース112Aは、符号130で示すように、第2の内シールドケースとして機能する。電源ユニット134は、図2等に示した構成と同一の構成を有する。第2実施例においても、内部AC配線ユニット132において、内部AC配線130がシールドケース112Aによって包み込まれているので、筐体110内で生じた放射ノイズから内部AC配線130が保護される。
【0052】
なお、図5に示した構成では、カバー126の内面に、内部AC配線130を構成する複数の部が取り付けられているが、それらの部品をシールドケース112Aの外面に取り付けるようにしてもよい。
【0053】
図6には、実施形態に係るシールド構造の第3実施例が示されている。後面板の内面40上に、電源ユニット32A及び内部AC配線ユニット34Aが設けられている。それらのユニット32A、34Aは物理的に接触しており又は連結されている。シールドケース36Bとシールドケース38Bは結合されており、それらの間には実質的に見て隙間が存在しない。開口70Aと開口72Aは水平方向において一致しており、それらの開口70A,72Aを内部ACケーブルが挿通している。この構成によれば、2つのユニット間において内部ACケーブルが露出しなくなるので、そこへのノイズの進入をより効果的に防止することが可能となる。
【0054】
なお、電源ユニットと内部AC配線ユニットの配置を上下方向に逆にしてもよい。いずれかのユニットを後面板以外に取り付けるようにしてもよい。もっとも、2つのユニットを共通の後面板に取り付ければ、作業性が良好となり、また2つのユニットを近付けて配置することが容易となる。
【0055】
以上説明したシールド構造をカート型超音波診断装置以外の超音波診断装置へ適用してもよい。例えば、携帯型超音波診断装置へ適用してもよい。なお、以上説明したシールド構造を他の医療用装置に適用することも考えられる。
【符号の説明】
【0056】
10 超音波診断装置、12 装置本体、14 支持機構、16 操作パネル、18 下部、22 筐体(ハウジング、外シールドケース)、32 電源ユニット、34 内部AC配線ユニット、36 シールドケース(第1の内シールドケース)、38 シールドケース(第2の内シールドケース)、46 内部AC配線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6