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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】トンネル天井面研掃装置
(51)【国際特許分類】
   E01H 1/00 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
E01H1/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019059450
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159062
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成30年度土木学会全国大会予稿集DVD版 (平成30年8月1日発行 公益社団法人土木学会発行) ・平成30年度土木学会全国大会、第73回年次学術講演会(平成30年8月29日~31日、北海道大学札幌キャンパスにて開催) ・奥村組技術研究年報 No.44 (平成30年9月1日 株式会社奥村組発行)
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 知樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040103(JP,A)
【文献】特開昭62-126498(JP,A)
【文献】特開2015-002380(JP,A)
【文献】特開2009-033422(JP,A)
【文献】特開平08-338011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスカルバート型のトンネルの天井面を、乾式研掃機を用いて研掃するためのトンネル天井面研掃装置であって、
前記トンネル内を移動可能なベースフレーム部と、該ベースフレーム部の上面部に取り付けられた移動レール部に沿って、前記トンネルの延設方向とこれに直交する横幅方向に移動可能な前記乾式研掃機と、少なくとも前記乾式研掃機の駆動、及び前記移動レール部に沿った前記乾式研掃機の移動を制御する制御盤とを含んで構成されており、
前記制御盤と、前記乾式研掃機及び前記移動レール部との間に介在して、前記制御盤と接続された、複数の接続口を備える親中継器が設けられており、両側の端部にコネクターを備えるコントロールケーブルを介して、前記親中継器と、前記乾式研掃機及び前記移動レール部に設けられた子中継器とを各々接続することにより、前記制御盤に接続された手元コントローラによって、前記乾式研掃機の駆動及び移動を制御可能としているトンネル天井面研掃装置。
【請求項2】
前記ベースフレーム部は、ベース部に支持させて、昇降装置により昇降可能に設けられた昇降フレーム部を備えており、両側の端部にコネクターを備えるコントロールケーブルを介して前記親中継器と前記昇降装置とを接続することにより、前記制御盤に接続された手元コントローラによって、前記昇降装置による昇降フレーム部の昇降を制御可能としている請求項1記載のトンネル天井面研掃装置。
【請求項3】
前記ベースフレーム部は、矩形の平面形状を備えており、前記移動レール部は、短辺方向移動レール部材及び長辺方向移動レール部材からなり、前記乾式研掃機は、前記ベースフレーム部の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられている請求項1又は2記載のトンネル天井面研掃装置。
【請求項4】
前記手元コントローラは、前記親中継器を介して前記制御盤に接続されている請求項1~3のいずれか1項記載のトンネル天井面研掃装置。
【請求項5】
前記ベースフレーム部は、前記トンネルの底面部に敷設されたレール部に沿って、前記トンネルの延設方向に移動するようになっている請求項1~4のいずれか1項記載のトンネル天井面研掃装置。
【請求項6】
前記ベースフレーム部又は前記ベースフレーム部を搭載した移動台車に連結されて、補助台車が設けられており、前記制御盤は前記補助台車に設置されていると共に、前記親中継器は、前記ベースフレーム部又は前記移動台車に設置されている請求項5記載のトンネル天井面研掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル天井面研掃装置に関し、特に、ボックスカルバート型のトンネルの天井面を、乾式研掃機を用いて研掃するためのトンネル天井面研掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、首都高速道路等の道路や、地下鉄等の鉄道路線や、放流渠等の排水施設などにおいては、ボックスカルバート型のトンネルが多数構築されており、そのうちの多くが、供用開始から30年以上経過している。このため、古くなったボックスカルバート型のトンネルに対して、コンクリート片の剥落防止等を含む種々の補修工事が行なわれている。ボックスカルバート型のトンネルの補修工事として、例えばトンネルの内壁面の研掃による表面処理作業(下地調整工)を行なう場合、このようなボックスカルバート型のトンネルの内壁面の研掃による表面処理作業は、例えば公知の研掃装置を使用して、人手によってトンネルの内壁面を研掃しようとすると、特にトンネルの天井面については、上を向いたままの作業になるため苦渋作業になるばかりか、多くの労力を必要として、効率良く作業を行うことは困難である。
【0003】
このようなことから、本願出願人は、例えばボックスカルバート型の道路トンネルの天井面に対して、スピーディーに且つ効率良く研掃してゆくことを可能にするトンネル天井面研掃装置を開発している(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1の研掃装置や特許文献2の研掃方法によれば、トンネル天井面研掃装置は、アウトリガー部、架台部、乾式研掃機、乾式研掃機の移動レール部等を備えており、運搬車両の荷台に積み込まれて、運搬車両によってトンネルの天井面の研掃箇所の真下まで、適宜移動されるようになっている。また天井面の研掃箇所では、アウトリガー部により架台部が水平となるように調整した後に、架台部の上部に設置された移動レール部が天井面と平行に配置されるように調整し、乾式研掃機を移動レール部に沿って前後左右に移動させながら、天井面を研掃するようになっている。
【0004】
また、特許文献1の研掃装置によれば、道路トンネル用のボックスカルバート型のトンネルの天井面を効率良く研掃してゆくものとして、その用途が道路トンネルに限られていることから、アウトリガー部、架台部、乾式研掃機、移動レール部等を駆動する駆動機構と、これらの駆動を制御するコントロール系統を集約した制御盤とを、例えばワンタッチ継手やカムロックやコネクター等の接続手段を介して、ひとまとめしたケーブルによって直接接続して、例えば手元スイッチによって、これらの駆動機構を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-40103号公報
【文献】特開2017-40104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、上述の特許文献1のボックスカルバート型の道路トンネル用の天井面研掃装置を改良して、道路トンネル以外の、例えば鉄道トンネルや、放流渠等を構成するその他の種々のボックスカルバート型のトンネルに対しても、道路トンネル用の天井面研掃装置の主要部分の構成を備える研掃装置を用いることにより、天井面の研掃作業の自動化を図ることで、効率良く道路トンネル以外のトンネルの天井面を研掃できるようにすることが検討されている。また、このような天井面研掃装置を、様々な種類や形状のボックスカルバート型のトンネルに適用できるようにするためには、ボックスカルバート型のトンネルの大きさや形状、使用目的等に応じて、乾式研掃機や移動レール部等を、異なる規格の駆動機構によるものと入れ替えたり、架台を昇降させる昇降装置の要・不要を判断したり、その他の必要な装置を新たに加えたりするなど、設計の自由度を増す必要がある。
【0007】
しかしながら、上述の従来の天井面研掃装置では、ボックスカルバート型の道路トンネルの天井面の研掃作業にその用途が限定されていたため、設計の自由度が低く、その他の様々な種類や形状のボックスカルバート型のトンネルにも適用できるようするには、大掛かりな改良が必要になる。このようなことから、上述の従来の道路トンネル用の天井面研掃装置の主要部分の構成を保持したまま、その他の様々な種類や形状のボックスカルバート型のトンネルにも適用できるように、設計の自由度を向上させた天井面研掃装置を新たに開発することが望まれている。
【0008】
本発明は、道路トンネル用の天井面研掃装置の主要部分の構成を保持したまま、その他の様々な種類や形状のボックスカルバート型のトンネルにも適用可能なように、設計の自由度を向上させることのできる天井面研掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ボックスカルバート型のトンネルの天井面を、乾式研掃機を用いて研掃するためのトンネル天井面研掃装置であって、前記トンネル内を移動可能なベースフレーム部と、該ベースフレーム部の上面部に取り付けられた移動レール部に沿って、前記トンネルの延設方向とこれに直交する横幅方向に移動可能な前記乾式研掃機と、少なくとも前記乾式研掃機の駆動、及び前記移動レール部に沿った前記乾式研掃機の移動を制御する制御盤とを含んで構成されており、前記制御盤と、前記乾式研掃機及び前記移動レール部との間に介在して、前記制御盤と接続された、複数の接続口を備える親中継器が設けられており、両側の端部にコネクターを備えるコントロールケーブルを介して、前記親中継器と、前記乾式研掃機及び前記移動レール部に設けられた子中継器とを各々接続することにより、前記制御盤に接続された手元コントローラによって、前記乾式研掃機の駆動及び移動を制御可能としているトンネル天井面研掃装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明のトンネル天井面研掃装置は、前記ベースフレーム部が、ベース部に支持させて、昇降装置により昇降可能に設けられた昇降フレーム部を備えており、両側の端部にコネクターを備えるコントロールケーブルを介して前記親中継器と前記昇降装置とを接続することにより、前記制御盤に接続された手元コントローラによって、前記昇降装置による昇降フレーム部の昇降を制御可能としていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のトンネル天井面研掃装置は、前記ベースフレーム部が、矩形の平面形状を備えており、前記移動レール部は、短辺方向移動レール部材及び長辺方向移動レール部材からなり、前記乾式研掃機は、前記ベースフレーム部の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のトンネル天井面研掃装置は、前記手元コントローラが、前記親中継器を介して前記制御盤に接続されていることが好ましい。
【0013】
さらにまた、本発明のトンネル天井面研掃装置は、前記ベースフレーム部が、前記トンネルの底面部に敷設されたレール部に沿って、前記トンネルの延設方向に移動するようになっていることが好ましい。
【0014】
また、本発明のトンネル天井面研掃装置は、前記ベースフレーム部又は前記ベースフレーム部を搭載した移動台車に連結されて、補助台車が設けられており、前記制御盤は前記補助台車に設置されていると共に、前記親中継器は、前記ベースフレーム部又は前記移動台車に設置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトンネル天井面研掃装置によれば、道路トンネル用の天井面研掃装置の要部を保持したまま、その他の種々のボックスカルバート型のトンネルにも適用可能なように、設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい第1実施形態に係るトンネル天井面研掃装置を説明する略示側面図である。
図2】本発明の好ましい第1一実施形態に係るトンネル天井面研掃装置を説明する略示平面図である。
図3】乾式研掃機の(a)は側面図、(b)は後面図、(c)は平面図である。
図4】本発明の好ましい第2実施形態に係るトンネル天井面研掃装置を説明する略示側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示す本発明の好ましい第1実施形態に係るトンネル天井面研掃装置10は、ボックスカルバート型のトンネル50として、例えば排水施設である放流渠の天井面53を効率良く研掃してゆくための装置として採用されたのである。本第1実施形態では、例えば放流渠となっているボックスカルバート型のトンネル50は、供用開始から30年以上経過しており、補修工事として、トンネル50の内壁面の研掃による表面処理作業(下地調整工)を行なう際に、特にトンネル50の天井面53については、公知の研掃装置を使用して人手によって行おうとすると、上を向いたままの作業になるため苦渋作業になるばかりか、多くの労力を必要とすることから、特開2017-40103号公報に記載の道路トンネル用の天井面研掃装置に対して、放流渠となっているボックスカルバート型のトンネル50の研掃作業に適するように、適宜改良を加えた新たなトンネル天井面研掃装置10を用いることにより、ボックスカルバート型のトンネル50である放流渠の天井面53を、効率良く研掃してゆくことができるようにしている。
【0018】
また、本第1実施形態では、トンネル天井面研掃装置10は、当該トンネル天井面研掃装置10の駆動を制御するコントロール系統を集約した制御盤20と接続する、乾式研掃機30や移動レール部18等の各種の装置や機器をモジュール化することによって、特開2017-40103号公報に記載の天井面研掃装置の主要部分の構成を保持したまま、ボックスカルバート型のトンネルの大きさや形状、使用目的等に応じて、乾式研掃機30や移動レール部18等を、異なる規格の駆動機構によるものと入れ替えたり、架台(ベースフレーム部)を昇降させる昇降装置の要・不要を判断したり、その他の必要な装置を新たに加えたりすることなどを容易にして、様々な種類や形状のボックスカルバート型のトンネルにも適用可能となるように、設計の自由度を向上させることができるようにする機能を備えている。
【0019】
そして、本第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10は、ボックスカルバート型のトンネル50の天井面53として、例えば放流渠の天井面を、乾式研掃機30を用いて研掃するための研掃装置であって、トンネル50内を移動可能なベースフレーム部11と、ベースフレーム部11の上面部に取り付けられた移動レール部18に沿って、トンネル50の延設方向とこれに直交する横幅方向に移動可能な乾式研掃機30と、少なくとも乾式研掃機30の駆動、及び移動レール部18に沿った乾式研掃機30の移動を制御する制御盤20とを含んで構成されている。制御盤20と、乾式研掃機30及び移動レール部18との間に介在して、制御盤20と接続された、複数の接続口を備える親中継器21が設けられている。両側の端部にコネクター23を備えるコントロールケーブル22を介して、親中継器21と、乾式研掃機30及び移動レール部18に設けられた子中継器25とを各々接続することにより、制御盤20に接続された手元コントローラ24によって、乾式研掃機30の駆動及び移動が制御可能となっている。
【0020】
また、本第1実施形態では、トンネル天井面研掃装置10は、図2に示すように、ベースフレーム部11が、矩形の平面形状を備えており、移動レール部18は、左右方向レール部材18a及び前後方向レール部材18bからなり、乾式研掃機30は、ベースフレーム部11の矩形の平面形状の長辺方向X及び短辺方向Yに移動可能に設けられている。
【0021】
本第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10によって天井面53が研掃される、ボックスカルバート型のトンネル50による放流渠は、例えば現場打ちコンクリートやプレキャストコンクリートによる公知の工法を用いて形成された、横幅が例えば2000~3000mm程度、高さが例えば2500~3500mm程度の大きさの中空の矩形断面形状を有するトンネルとなっている。
【0022】
本実施形態では、トンネル天井面研掃装置10を構成するベースフレーム部11は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、例えば左右方向Yの幅が1500~2500mm程度、前後方向Xの長さが2000~3000mm程度、高さが1500~4000mm程度の大きさの、直方体形状の中空枠体として構成されている。また、ベースフレーム部11は、本実施形態では、下面側に戸車部材19が取り付けられた下段ベースプレート11aと、上段ベースフレーム部11bとからなる、2段構造を備えている。これらの下段ベースプレート11aと上段ベースフレーム部11bは、下段ベースプレート11aの左右両側部に垂直に立設された各3本の支柱11cにより連結されて構成されている。左右各3本の支柱11cは、図1に示すように、ベースフレーム部11の左右両側部において、上段ベースフレーム部11bと下段ベースプレート11aの前端部(図1の左端部側)と後端部(図1の右端部)及び前後方向中間部にそれぞれ配置されている。さらにベースフレーム部11は、その両側に立設された3本の支柱11c同士が、斜めに配置された計4本の補強材11dで連結されてトラス構造が構成されていることにより、ベースフレーム部11の全体が補強されている。
【0023】
また、ベースフレーム部11は、これの下端部に取り付けられた戸車部材19を介して、トンネル50の底面部に敷設されたガイドレール57に沿って、手動により又はウィンチ等による牽引手段によって、或いはモータ等の駆動源による自走によって、トンネル50の延設方向Xに移動するようになっていると共に、トンネル50の延設方向Xの各々の研掃箇所に固定された状態で、研掃作業を行えるようになっている。また、ベースフレーム部11には、トンネルの側壁面に向けて進退する油圧ジャッキ等からなる固定手段(図示せず)が設けられており、例えば油圧ジャッキを両側に張り出させてトンネルの内壁面を押圧することによって、ベースフレーム部11を、トンネル50内における各々の研掃箇所において固定できるようになっている。
【0024】
ベースフレーム部11の上面部に取り付けられた移動レール部18は、特開2017-40103号公報に記載の天井面研掃装置に設けられた移動レール部と同様の構成を備えている。すなわち、移動レール部18は、図2に示すように、乾式研掃機30を横幅方向である左右方向Yに移動させる左右方向レール部材18aと、乾式研掃機30をトンネルの延設方向である前後方向Xに移動させる前後方向レール部材18bとを含んで構成されている。左右方向レール部材18aは、上段ベースフレーム部11bを形成する一対の端部溝形鋼11e及び中間部溝形鋼11fの上端面に敷設されて、上段ベースフレーム部11bの幅方向に平行に延設して3列に設けられている。左右方向レール部材18aの上には、前後方向レール部材18bを敷設した横行フレーム部46が、横幅方向(左右方向)Yに走行移動可能に載置されている。
【0025】
横行フレーム部46は、図2に示すように、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、例えば左右方向Yの幅が1500~2800mm程度、前後方向Xの長さが上段ベースフレーム部11bの長さよりも若干長い、例えば2300~3500mm程度の大きさの、前後方向Xに縦長の矩形の平面形状を備えている。横行フレーム部46を形成する、左右一対の長辺部分に配置された長辺部溝形鋼46aの上端面には、前後方向レール部材18bが各々敷設されている。前後方向レール部材18bの上には、乾式研掃機30が、前後方向Xに走行移動可能に載置されている。
【0026】
また、横行フレーム部46には、当該横行フレーム部46を上段ベースフレーム部11bの上面部に敷設された左右方向レール部材18aに沿って走行移動させるための、走行車輪(図示せず)や走行駆動装置(図示せず)が取り付けられている。走行駆動装置は、移動レール部18の横行フレーム部46に取り付けられた子中継器25と接続している。移動レール部18は、本実施形態では、左右方向レール部材18a及び前後方向レール部材18bの他、横行フレーム部46や、走行車輪、走行駆動装置等を含んで構成されている。
【0027】
移動レール部18によって、上段ベースフレーム部11bの長辺方向である前後方向X及び短辺方向である左右方向Yに移動可能に設けられた乾式研掃機30は、特開2017-40103号公報に記載の天井面研掃装置に設けられた乾式研掃機と同様の構成を備えている。すなわち、乾式研掃機30は、図3(a)~(c)に示すように、走行基台部31と、走行基台部31との間にロードセル32を介在させて走行基台部31の上方に配置された中間プレート部33と、中間プレート部33との間にエアシリンダー34を介在させて中間プレート部33のさらに上方に配置された研掃機取付けプレート35と、研掃機取付けプレート35に支持されて取り付けられた研掃機本体36とを含んで構成される。走行基台部31の4箇所の角部分から上方に立設して、ガイドシャフト37が設けられており、これらのガイドシャフト37に、研掃機取付けプレート35の4箇所の角部分に設けられたリニアブッシュ38を各々装着することによって、これらのガイドシャフト37やリニアブッシュ38にガイドさせて、研掃機取付けプレート35を、エアシリンダー34の伸縮に伴って、安定した状態で上下に昇降させることができるようになっている。
【0028】
研掃機本体36は、コンクリートの床面等を研掃して平坦な作業面を形成することが可能な、公知の種々の研削機に、適宜改良を加えることによって用いることができる。このような研削機として、例えば商品名「新型トルネード」(CRT株式会社製)を好ましく用いることができる。研掃機本体36は、切削ディスク36aや、吸引集塵装置36bや、駆動モータ36c等を備えている。また、切削ディスク36aの周囲を囲むようにして、可撓性を備えるヘラ部材やブラシ状部材等からなる飛散防止部材(図示せず)が設けられている。これによって、切削ディスク36aを上向きにした状態で、ボックスカルバート型のトンネル50の天井面53に押し付けて研削する際に生じる粉塵が、研掃機本体36の外に漏れ出るのを、効果的に回避することが可能になる。研掃機本体36に接続して、排出管49(図1参照)が設けられている。
【0029】
乾式研掃機30の走行基台部31には、横行フレーム部46の長辺部溝形鋼46aの上端面に敷設された前後方向レール部材18bに沿って乾式研掃機30を走行移動させるための、走行車輪31aや走行駆動装置31bが取り付けられている。これによって、乾式研掃機30は、横行フレーム部46の上面部に敷設された前後方向レール部材18bに沿って、上段ベースフレーム部11bの長辺方向Xに走行移動できるようになっていると共に、横行フレーム部46を上段ベースフレーム部11bの上面部に敷設された左右方向レール部材18aに沿って走行移動させることで、上段ベースフレーム部11bの短辺方向Yにも移動できるようになっている。
【0030】
乾式研掃機30の中間プレート部33と研掃機取付けプレート35との間に介在して伸縮可能に配置されたエアシリンダー34は、研掃機取付けプレート35の前部と後部に各々取り付けられており、走行基台部31と中間プレート部33との間に介在するロードセル32によって計測される、研掃機本体36によるボックスカルバート型のトンネル50の天井面53への押付け力が、例えば0.3~0.9Mpaとなるように、研掃機取付けプレート35を昇降させた状態で、研掃機本体36の切削ディスク36aを天井面53に押し付けることができるようになっている。研掃機取付けプレート35を昇降させるシリンダー部材として、エアシリンダー34を用いたことにより、トンネル50の天井面53に存在する例えば±40mm程度の凹凸に追随させて、これらの凹凸を吸収することが可能になる。
【0031】
本第1実施形態では、乾式研掃機30の走行駆動装置31bや、研掃機本体36の切削ディスク36aや、吸引集塵装置36bや、駆動モータ36c等は、例えば各種の配線類を介して、走行基台部31に取り付けられた子中継器25と接続している。
【0032】
本第1実施形態では、少なくとも乾式研掃機30の駆動、及び移動レール部18に沿った乾式研掃機30の移動を制御する制御盤20は、箱形形状を有しており、図1に示すように、好ましくはベースフレーム部11に連結して設けられた、補助台車55に載置されて設置されている。制御盤20の内部には、例えば乾式研掃機30の駆動や、移動レール部18の移動を制御する複数のシーケンス回路(図示せず)を組み込まれた、プログラマブルコントローラ(図示せず)が格納されている。
【0033】
プログラマブルコントローラに組み込まれる複数のシーケンス回路は、行われる制御が相互に影響を及ぼし合わぬよう、例えば乾式研掃機30の駆動の制御や、移動レール部18の移動の制御といった制御単位毎に独立して設計された回路となっている。また、本第1実施形態では、シーケンス回路に、乾式研掃機30や移動レール部18に対して行われる仕様や規格の変更や、新たに追加されるその他の機能を備える機器にも対応できるように、各種の仕様や機能に対応したシーケンス回路が、予め備えられている。
【0034】
本実施形態において、制御盤20と、乾式研掃機30及び移動レール部18との間に介在して設けられた親中継器21は、制御盤20よりもコンパクトな箱形形状を備えており、好ましくはベースフレーム部11の前後方向Xの後端部に配置された支柱11cの下端部に取り付けられて、当該ベースフレーム部11に設置されている。親中継器21と制御盤20とは、接続ケーブル21aを介して接続されている。
【0035】
親中継器21は、複数の接続口を備えており、これらの接続口は、各々が異なるシーケンス回路と対応している。乾式研掃機30や移動レール部18等の機器は、これらの接続口に接続されることによって、若しくは、接続口に接続された乾式研掃機30や移動レール部18等の機器からの認識信号応じて、制御盤20に予め組み込まれた対応するシーケンス回路に接続されるようになっている。本第1実施形態では、親中継器21は、両側の端部にコネクター23を備えるコントロールケーブル22を介して、親中継器21と、乾式研掃機30及び移動レール部18に設けられた子中継器25とを各々接続することにより、制御盤20に接続された手元コントローラ24からの操作によって、乾式研掃機30の駆動及び移動を制御できるようになっている。
【0036】
本第1実施形態では、親中継器21と、乾式研掃機30や移動レール部18等の機器に設けられた子中継器25とを各々接続するコントロールケーブル22は、両側の端部にコネクター23を備える公知のケーブルである。コネクター23は、ピンがそれぞれの動作信号に対応するような位置に来るような形状となっていることにより、親中継器21に接続される乾式研掃機30や移動レール部18等の機器が、これらの機器を制御するシーケンス回路に対応した接続口に、正しく装着されるようになっている。また、コネクター23は、親中継器21に接続される全ての機器を通じて共通の仕様とすることにより、親中継器21のいずれかの接続口に接続したり、乾式研掃機30や移動レール部18等の機器に設けられた子中継器25のいずれに装着した場合でも、装着した機器からの認識信号に応じて、これらの機器に対応するシーケンス回路と接続させることができるようになっていることが好ましい。
【0037】
本第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10は、制御盤20に接続された手元コントローラ24を介した操作によって、乾式研掃機30の駆動及び移動を制御できるようになっている。手元コントローラ24は、親中継器21の接続口と接続することにより、親中継器21を介して制御盤20に接続されるようにすることが好ましい。
【0038】
そして、上述の構成を備える本第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10によれば、例えば特開2017-40103号公報に記載の道路トンネル用の天井面研掃装置の要部を保持したまま、その他の種々のボックスカルバート型のトンネルにも適用可能となるように、設計の自由度を向上させることが可能になる。
【0039】
すなわち、本第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10によれば、少なくとも乾式研掃機30の駆動、及び該乾式研掃機30の移動レール部18に沿った移動を制御する制御盤20と、この制御盤20と乾式研掃機30及び移動レール部18との間に介在して設けられた、複数の接続口を有する親中継器21とを備えており、両側の端部にコネクター23を有するコントロールケーブル22を介して、親中継器21と、乾式研掃機30及び移動レール部18に設けられた子中継器とを各々接続することにより、制御盤20に接続された手元コントローラ24によって、乾式研掃機30の駆動及び移動を制御可能となっている。
【0040】
これによって、本実施形態によれば、例えば放流渠を形成するボックスカルバート型のトンネル50の大きさや形状等の変化に応じて、異なる規格の乾式研掃機30や移動レール部18を用いる必要が生じた場合でも、コントロールケーブル22のコネクター23を着脱することで、親中継器21を介して制御盤20と、モジュール化された異なる規格の乾式研掃機30や移動レール部18に設けられた子中継器25とを、接続し直すだけの簡単な作業によって、制御盤20に接続された手元コントローラ24からの操作で乾式研掃機30の駆動及び移動を容易に制御できるようにすることが可能になる。またこれによって、放流渠以外のその他の様々な種類や形状のボックスカルバート型のトンネル50に対しても、その使用目的や形状等に応じて、架台を昇降させる昇降装置の要・不要を判断して昇降装置が必要な場合には、コントロールケーブル22をモジュール化された昇降装置の子中継器25に接続したり、その他の装置を新たに加える必要がある場合には、コントロールケーブル22をモジュール化されたその他の装置の子中継器25に接続したりするだけの簡単な作業によって、手元コントローラ24からの操作によりこれらの機器を容易に制御できるようになるので、ボックスカルバート型のトンネルの大きさや形状、使用目的等に応じた、トンネル天井面研掃装置10の設計の自由度を、効果的に向上させることが可能になる。
【0041】
図4は、本発明の第2実施形態に係るトンネル天井面研掃装置10’の略示側面図である。図4に示す本第2実施形態のトンネル天井面研掃装置10’は、ベースフレーム部11’が、昇降装置40、41により昇降する昇降フレーム部12、13を備えている点、及びベースフレーム部11’が移動台車51に載置されている点以外は、上記第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10と、略同様の構成を備えている。なお、図4に示す本第2実施形態のトンネル天井面研掃装置10’に関して、上記の第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略している。特に言及しない構成部分については、上記の第1実施形態のトンネル天井面研掃装置10に関する説明が適宜適用される。
【0042】
本第2実施形態のトンネル天井面研掃装置10’は、例えばボックスカルバート型の鉄道トンネル50’の天井面53’を、乾式研掃機30を用いて研掃するための装置となっている。本第2実施形態のトンネル天井面研掃装置10’は、図4に示すように、ベースフレーム部11’が移動台車51に搭載されており、トンネルの底面部に敷設されたレール部57’に沿って移動台車51が走行することにより、トンネルの延設方向Xに移動できるようになっている。またベースフレーム部11’は、下段ベース部15a及び上段ベース部15bとからなる、2段構造のベース部15と、ベース部15に支持させて、昇降装置40,41により昇降可能に設けられた昇降フレーム部12,13とを備えており、両側の端部にコネクター23を備えるコントロールケーブル22を介して、親中継器21と、昇降装置40,41に設けられたと子中継器25とを接続することにより、制御盤20に接続された手元コントローラ24によって、昇降装置40,41による昇降フレーム部12,13の昇降を制御可能としている。
【0043】
また、本第2実施形態では、ベースフレーム部11’のベース部15は、特開2017-40103号公報に記載の天井面研掃装置の、下段ベースフレーム部と下段ベースフレーム部とからなるベースフレーム部と同様の構成を備えており、昇降フレーム部12,13は、特開2017-40103号公報に記載の天井面研掃装置の下段昇降フレーム部及び上段昇降フレーム部と同様の構成を備えており、昇降装置40,41は、特開2017-40103号公報に記載の天井面研掃装置の、下段昇降機や前部の上段昇降機や後部の上段昇降機と同様の構成を備えている。
【0044】
本第2実施形態では、ボックスカルバート型の鉄道トンネル50’は、上述の第1実施形態の放流渠を形成するボックスカルバート型のトンネル50と比較して、その断面形状が縦横に大きくなっており、また鉄道トンネルの場合、車両限界が定められているため、乾式研掃機30を天井面53’に近接させたまま、トンネル天井面研掃装置10’をレール部57’に沿って移動させることが困難である。このようなことから、本第2実施形態では、トンネル天井面研掃装置10’は、研掃箇所において、ベースフレーム部11’の長辺方向X及び短辺方向Yに乾式研掃機30を移動させる移動レール部18を昇降可能にする、昇降装置40,41を備えるように設計する必要があるが、本第2実施形態のトンネル天井面研掃装置10’は、上述のように、コントロールケーブル22をモジュール化された当該昇降装置40,41の子中継器25に接続するだけの簡単な作業によって、ボックスカルバート型の鉄道トンネル50’の天井面を効率良く研掃できるように、容易に変更することが可能になる。また、トンネル天井面研掃装置10’にその他の装置を新たに加える必要がある場合でも、コントロールケーブル22をモジュール化されたその他の装置の子中継器25に接続するだけの簡単な作業によって、ボックスカルバート型のトンネルの大きさや形状、使用目的等に応じて、鉄道トンネル50’以外のボックスカルバート型のトンネルにも適用できるように、トンネル天井面研掃装置10’を容易に設計したり変更したりすることが可能になる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、手元コントローラは、親中継器を介して制御盤に接続されている必要は必ずしも無く、制御盤に直接に接続して用いることもできる。また、制御盤は、ベースフレーム部やベースフレーム部を搭載した移動台車に連結された補助台車に設置する必要は必ずしも無く、ベースフレーム部や移動台車に設置することもできる。トンネル天井面研掃装置は、放流渠や鉄道トンネル以外のトンネルと形成する、その他の種々のボックスカルバート型のトンネルの天井面を研掃する装置として用いることもできる。
【符号の説明】
【0046】
10、10’ トンネル天井面研掃装置
11 ベースフレーム部
12、13 昇降フレーム部
15 ベース部
18 移動レール部
18a 左右方向レール部材
18b 前後方向レール部材
19 戸車部材
20 制御盤
21 親中継器
21a 接続ケーブル
22 コントロールケーブル
23 コネクター
24 手元コントローラ
25 子中継器
30 乾式研掃機
31 走行基台部
36 研掃機本体
40、41 昇降装置
46 横行フレーム部
50 トンネル
50’ 鉄道トンネル
51 移動台車
53、53’ 天井面
55 補助台車
57 ガイドレール
57’ レール部
X 延設方向(長辺方向、前後方向)
Y 横幅方向(短辺方向、左右方向)
図1
図2
図3
図4