(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】操作棒
(51)【国際特許分類】
H01H 85/02 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
H01H85/02 C
(21)【出願番号】P 2019188904
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博光
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-025450(JP,U)
【文献】実開昭53-100539(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧カットアウトで用いられるヒューズ筒を着脱するための操作棒であって、
ヒューズ筒の端部を収容可能な円筒状の収容部が先端に設けられている操作棒本体と、
操作棒本体の外周に操作棒本体に対して回転可能に取り付けられている取付部から収容部の軸線に沿って収容部の端面から突出した位置まで伸びている複数の柱状部を有しており、柱状部によってヒューズ筒の側部を支持する支持部材と、
を備えており、
収容部の内周面に、収容部の周方向に伸びるとともに収容部の軸線側に突出しており、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外すときにヒューズ筒の外周面に設けられている突出部と係合し、ヒューズ筒と操作棒本体が分離することを防止する係合部が設けられており、
柱状部の先端に、収容部の軸線側に突出しており、ヒューズ筒を高圧カットアウトに着脱するときにヒューズ筒の外周面に設けられている鍔部と係合する爪部が設けられている操作棒。
【請求項2】
前記爪部は、前記軸線方向において、基部から頂部に向けて傾斜しており、
柱状部は、ヒューズ筒を操作棒に着脱するときに弾性変形するように構成されている請求項1に記載の操作棒。
【請求項3】
収容部は、操作棒本体の先端に設けられている窪み部と、操作棒本体の先端に固定されている筒状部材によって構成されており、
支持部材は、前記軸線方向において、取付部が筒状部材と操作棒本体の間に配置されることによって操作棒本体に取り付けられている請求項1または2に記載の操作棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、高圧カットアウトで用いられるヒューズ筒を着脱するための操作棒に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
変圧器等を保護するため、磁器製の碍子内にヒューズ筒が収容された高圧カットアウトが用いられる。配電線路の開閉、あるいは、ヒューズ筒を交換する際に、作業者は、作業の安全性、容易性を確保するため、操作棒を用いてヒューズ筒を着脱する。特許文献1には、ヒューズ筒と係合可能な弾性板を備えた操作棒が開示されている。特許文献1の操作棒は、弾性板の先端に爪部が設けられている。ヒューズ筒を高圧カットアウトに取り付けるときは、操作棒をヒューズ筒に押し付け、爪部をヒューズ筒に設けられている鍔部に係合させ、ヒューズ筒を操作棒に固定した状態でヒューズ筒を高圧カットアウトに挿入する。ヒューズ筒を高圧カットアウトの所定位置に取り付けた後、操作棒をヒューズ筒に押し付けると、弾性板が変形し(外向きに開いて)、爪部と鍔部の係合が外れる(操作棒がヒューズ筒から分離する)。また、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外すときは、操作棒をヒューズ筒に押し付けて爪部をヒューズ筒に係合させ、ヒューズ筒を操作棒に固定した状態でヒューズ筒を高圧カットアウトから引き抜く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、特許文献1の操作棒は、ヒューズ筒を操作棒に押し付け(あるいは、操作棒をヒューズ筒に押し付け)、ヒューズ筒と操作棒を固定する。また、ヒューズ筒を高圧カットアウトに挿入した後にヒューズ筒と操作棒を分離するときも、操作棒をヒューズ筒に押し付ける。特許文献1の操作棒では、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外す際、操作棒をヒューズ筒に強く押し付けると、爪部(弾性板)とヒューズ筒の鍔部が係合せず、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外せないことが起こり得る。より具体的には、ヒューズ筒に操作棒を強く押し付けることにより、一旦爪部と鍔部が係合した後、弾性板が変形し(外向きに開き)、爪部と鍔部の係合が外れることがある。この場合、変形した弾性板を元の形状に戻し、再度ヒューズ筒の取り外し作業を行うことが必要となり、作業効率が悪い。ヒューズ筒をより確実に固定、分離することができる操作棒が必要とされている。本明細書は、ヒューズ筒を確実に着脱し得る新規な操作棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する操作棒は、高圧カットアウトで用いられるヒューズ筒を着脱するために用いられる。この操作棒は、円筒状の収容部が先端に設けられている操作棒本体と、操作棒本体の外周に操作棒本体に対して回転可能に取り付けられている支持部材を備えている。収容部は、ヒューズ筒の端部を収容可能である。支持部材は、取付部と複数の柱状部を有している。取付部は、操作棒本体の外周に操作棒本体に対して回転可能に取り付けられている。柱状部は、取付部から収容部の軸線に沿って、収容部の端面から突出した位置まで伸びている。また、柱状部は、ヒューズ筒の側部を支持する。上記操作棒では、収容部の内周面に、ヒューズ筒と操作棒本体が分離することを防止する係合部が設けられている。係合部は、収容部の周方向に伸びるとともに、収容部の軸線側に突出している。係合部は、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外すときに、ヒューズ筒の外周面に設けられている突出部と係合する。また、柱状部の先端に、収容部の軸線側に出しており、ヒューズ筒を高圧カットアウトに着脱するときにヒューズ筒の外周面に設けられている鍔部と係合する爪部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】ヒューズ筒に操作棒を取り付ける状態を説明するための斜視図を示す。
【
図5】操作棒にヒューズ筒を着脱する際の動作を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(高圧カットアウト)
高圧カットアウトは、外部電線を介し、配電線と変圧器等の機器との間に接続される。高圧カットアウトは、磁器製の円筒状の本体碍子と、本体碍子内に収容されているヒューズ筒を備えている。高圧カットアウトは、円筒形カットアウトと呼ばれることもある。ヒューズ筒は、高圧カットアウトから取り外すことができる。ヒューズ筒を本体碍子内に挿入すると、配電線と変圧器等の機器が接続される(配電線路が閉じる)。ヒューズ筒を本体碍子から取り外す(配電線路を開く)、あるいは、高圧カットアウト(ヒューズ筒)に過大な電流(規定値を超える電流)が流れてヒューズ筒内のヒューズエレメントが溶断すると、配電線と機器の間の配電線路が遮断される。ヒューズエレメントが溶断した場合、ヒューズ筒を交換することによって、配電線と機器を再度接続することができる。
【0008】
(操作棒)
操作棒は、高圧カットアウトに対してヒューズ筒を着脱する際に用いられる。操作棒は、操作棒本体と、操作棒本体の先端に設けられている円筒状の収容部と、操作棒本体の外周に操作棒本体に対して回転可能に取り付けられている支持部材を備えている。操作棒本体は、高圧カットアウトが配置される位置(高さ)に応じて、数m(例えば、1.5~4.5m)であってよい。なお、操作棒本体は、複数の棒体に分割可能であってよい。例えば、操作棒本体は、1mの棒体によって構成されており、1m,2m,3m・・等の長さに調整可能であってよい。
【0009】
収容部は、操作棒本体の端部を加工して形成されていてもよいし、操作棒本体の端部に別部品(例えば、円筒状の筒状部材)を固定して形成されていてもよいし、操作棒本体の端部と別部品とによって形成されていてもよい。収容部の内周面には、ヒューズ筒の外周面に設けられている突出部と係合する係合部が設けられている。係合部は、収容部の周方向に伸びるとともに収容部の軸線側に突出している。すなわち、係合部が設けられている部分は、収容部の径方向サイズが小さくなっている。
【0010】
係合部を設けることにより、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外すときに、ヒューズ筒と収容部(操作棒)が分離することを防止することができる。具体的には、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外すときに、ヒューズ筒の突出部が収容部の係合部が設けられていない部分を通過するように、収容部をヒューズ筒の端部に挿入する。なお、収容部をヒューズ筒の端部に挿入する際、突出部が係合部に接触しても、操作棒を回転すると、突出部は係合部が設けられていない部分を通過する。その後、軸線方向において突出部が係合部に対向するように操作棒を回転する。その結果、ヒューズ筒を引き抜くときに突出部が係合部と係合し、ヒューズ筒が収容部(操作棒)から分離することが防止される。なお、係合部は、収容部の周方向に伸びるとともに、部分的に収容部の軸線方向に沿って伸びていてもよい。例えば、係合部は、周方向の一端が軸線方向に沿って伸びるL字形状であってよい。この場合、操作棒を回転させたときに、ヒューズ筒の突出部が係合部の軸線方向に沿って伸びる部分に接触し、操作棒の回転が制限される。すなわち、係合部の軸線方向に沿って伸びる部分が、突出部のストッパとして機能する。突出部の回転をストッパで制限することにより、突出部と係合部を軸線方向に確実に対向させることができる。また、係合部は、収容部の内周面に1個だけ設けられていてもよいし、複数個設けられていてもよい。
【0011】
支持部材は、操作棒本体に取り付けられる取付部と、取付部から軸線方向に伸びる複数の柱状部を備えている。取付部は、操作棒本体の外周を一巡するリング状であってよい。なお、操作棒本体の端部(先端側)に外径が他の部分より小さい小径部を形成し、支持部材を小径部に取り付けてもよい。これにより、支持部材が軸線方向へ移動することを規制することができる。また、支持部材の外径と操作棒本体の外径を、ほぼ同サイズにすることもできる。なお、収容部が操作棒本体と円筒状の筒状部材によって形成されている場合、取付部は、筒状部材と操作棒本体によって挟まれていてよい。すなわち、支持部材は、軸線方向において、取付部が筒状部材と操作棒本体の間に配置されるによって操作棒本体の外周に取り付けられていてよい。
【0012】
柱状部は、収容部の径方向外側を、収容部の軸線に沿って伸びている。柱状部は、収容部の端面(先端面)から突出した位置にまで伸びており、先端(収容部の端面から突出した位置)に収容部の軸線側に突出する爪部が形成されている。爪部は、ヒューズ筒を高圧カットアウトに取り付けるときにヒューズ筒の外周面に設けれている鍔部と係合する。なお、爪部は、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外すときも、ヒューズ筒の鍔部と係合する。
【0013】
ヒューズ筒を高圧カットアウトに取り付ける際、ヒューズ筒の端部を収容部に収容し、ヒューズ筒の鍔部を爪部で支えることによって、ヒューズ筒を操作棒(収容部)に固定する。ヒューズ筒を高圧カットアウトに取り付ける際は、ヒューズ筒を高圧カットアウトから取り外すときとは異なり、ヒューズ筒の突出部と収容部の係合部を係合させない。より具体的には、突出部を係合部に係合させない状態でヒューズ筒の端部を収容部に収容し、ヒューズ筒を高圧カットアウトに取り付けた後、操作棒とヒューズ筒が容易に離反するように両者を固定する。その結果、ヒューズ筒を高圧カットアウトに取り付けられた後、操作棒を引き抜く(高圧カットアウトから離反させる)と、爪部と鍔部の係合が外れ、ヒューズ筒が高圧カットアウト内の所定の位置に取り付けられた状態で操作棒を引き抜くことができる。
【0014】
爪部は、収容部の軸線方向において、基部(柱状部の爪部が設けられていない面)から頂部に向けて傾斜していてよい。これにより、ヒューズ筒を操作棒に取り付ける際、及び、ヒューズ筒を操作棒から取り外す際に、ヒューズ筒と操作棒を容易に着脱することができる。柱状部は、ヒューズ筒を着脱する際に弾性変形してもよい。これにより、操作棒に対するヒューズ筒の着脱をさらに容易にすることができる。なお、各柱状部は、収容部の軸線の周りに等間隔に配置されていてよい。また、各柱状部は、周方向の長さ(幅)が径方向の長さ(厚み)より長くてよい。これにより、ヒューズ筒を着脱する際に各柱状部が弾性変形し易くなる。
【実施例】
【0015】
(高圧カットアウト)
図1を参照し、高圧カットアウト100について説明する。高圧カットアウト100は、配電線路上に設けられ、変圧器等の機器を保護するために用いられる。高圧カットアウト100は、磁器製の本体碍子8と、配電線側に接続される第1電極56と、第1電極56の内側に配置される消弧棒54と、機器側に接続される第2電極46と、第1電極56と第2電極46を接続しているヒューズ筒12を備えている。本体碍子8は、円筒状であり、外周面に複数の絶縁襞14が設けられている。本体碍子8内には、円柱状の第1室4と、第1室4より大径の円柱状の第2室20が形成されている。第1室4内に円筒状の消弧筒6が配置されている。ヒューズ筒12は、消弧筒6の内側に配置されている。高圧カットアウト100は、重力方向において、第1室4が上側、第2室20が下側になるように設置される。第1電極56は第1室4に配置され、第2電極46は第2室20に配置されている。以下、ヒューズ筒12が伸びる方向(すなわち、重力方向)において、第1電極56側を「上部」,「上側」等と称し、第2電極46側を「下部」,「下側」等と称することがある。
【0016】
本体碍子8の上部には、円錐状の上部モールドコーン2が接着剤によって固定されている。上部モールドコーン2の引出線は、配電線に接続される。本体碍子8の下部側壁24に、円錐状の下部モールドコーン28が接着剤によって固定されている。下部モールドコーン28の引出線は、変圧器等の機器に接続される。
【0017】
ヒューズ筒12は、第1室4から第2室20に亘って伸びており、第1電極56と第2電極46を接続している。ヒューズ筒12は、ヒューズ10を収容している絶縁筒50と、絶縁筒50の上部に設けられている上部接触子52と、絶縁筒50の下部に設けられている下部接触子48と、下部接触子48よりも下方に設けられている表示筒58を備えている。上部接触子52が第1電極56に接続され、下部接触子48が第2電極46に接続されている。下部接触子48と第2室の上面の間には、緩衝部材18が配置されている。下部接触子48より下方において、ヒューズ筒12の側面に鍔部26及び突出部42が設けられている。鍔部26はヒューズ筒12の周囲をほぼ一巡しており、突出部42は周方向に180度の角度間隔をおいて2個設けられている。なお、表示筒58は、絶縁筒50に固定されている。一方、下部接触子48は、絶縁筒50及び表示筒58に対して上下方向に変位可能である。表示筒58は、ヒューズ筒12の下方端を構成している。
【0018】
ヒューズ10は、絶縁筒50内に配置されているヒューズエレメント16と、ヒューズエレメント16に接続されているヒューズリード線40を備えている。ヒューズリード線40は、表示筒58の下端から表示筒58の外部で上方に折り返され、下部接触子48に取り付けられている締付螺子60に締付固定されている。なお、下部接触子48と表示筒58の間には、ばね44が圧縮した状態で配置されている。そのため、ヒューズリード線40には、引張力が加わっている。換言すると、ヒューズリード線40を締付螺子60に締付固定することによって、ばね44が圧縮されている。
【0019】
本体碍子8の下側(第2室20の下端)には開口部38が設けられている。開口部38は、蓋部材34によって塞がれている。蓋部材34は、第2室20の内壁30に、接着剤36によって固着されている。蓋部材34は、有底円筒状であり、軸部34aと、軸部34aの外周面に設けられている鍔部34bと、軸部34aの内周面に設けられている開閉部(底部)32を備えている。鍔部34bは、軸部34aの上下方向中間部分に設けられており、径方向外側に向けて突出し、軸部34aの外周を一巡している。開閉部32は、鍔部34bよりも下方で、軸部34aの下端よりも上方に設けられている。そのため、軸部34aの下端は、開閉部32に対して下方に突出する突部34cを構成している。突部34cによって、開閉部32が保護されている。なお、蓋部材34(開閉部32を含む)は、難燃性のゴム、軟質合成樹脂等の弾性材料によって形成されている。また、内壁30には、碍子等の破砕片(図示省略)が固着されており、微細な突起が形成されている。内壁30に微細な突起を形成することにより、蓋部材34を内壁30に強固に固着させることができる。
【0020】
開閉部32には、放射状の切り込み32aが設けられている。そのため、開閉部32を、ヒューズ筒12等が容易に通過することができる。すなわち、ヒューズ筒12等が開閉部32を通過する際に開閉部32が変形して開閉部32が開き、ヒューズ筒12等が通過した後に元の形状に戻り開閉部32が閉じる。上記したように、開閉部32(蓋部材34)は弾性材料によって形成されているので、切り込み32aが設けることによって容易に変形(弾性変形)し、開閉することができる。
【0021】
蓋部材34は、内壁30に接着剤36を塗布した状態で、第2室20の開口部38に装着する。蓋部材34を装着する際、鍔部34bの上面が開口部38に接触するまで軸部34aを第2室20内に挿入する。それにより、本体碍子8に対して蓋部材34が位置決めされる。蓋部材34を第2室20内に挿入すると、軸部34aの外周面と内壁30の隙間が接着剤36で埋められ、蓋部材34が本体碍子8に固着される。蓋部材34を本体碍子8に固着することよって、開口部38が塞がれる。
【0022】
高圧カットアウト100では、高圧カットアウト100が配置された配電経路に規定値を超える電流が流れると、ヒューズエレメント16が溶断する。その結果、ばね44が伸張し、下部接触子48が第2電極46に接続されたまま、ヒューズ筒12(下部接触子48以外の部品)が下方に移動する。ヒューズ筒12が下方に移動すると、表示筒58が、蓋部材34(開閉部32)から高圧カットアウト100の下部に露出する。すなわち、高圧カットアウト100の下部に表示筒58が露出しているか否かを確認することにより、ヒューズエレメント16の溶断の有無(ヒューズ筒12を交換する必要の有無)を判断することができる。なお、ヒューズエレメント16が溶断しても、下部接触子48は第2電極46に接続(固定)され続ける。そのため、ヒューズ筒12(表示筒58)は、ばね44の弾性力と重力によって下方に移動するが、高圧カットアウト100から落下することが防止されている。
【0023】
ヒューズエレメント16が溶断した(表示筒58が本体碍子8から露出している)場合、ヒューズ筒12を交換するために、ヒューズ筒12を本体碍子8から抜き出す。なお、工事等により高圧カットアウト100が配置された配電線路を開く(負荷開放する)場合は、操作棒70を蓋部材34の底面(開閉部32)から蓋部材34の内側(本体碍子8内)に挿入し、ヒューズ筒12を本体碍子8から抜き出す。この場合、ヒューズ筒12を抜き出す際に、上部接触子52と第1電極56の間にアークが発生する。しかしながら、アーク熱によって消弧棒54と消弧筒6の一部が溶けて消弧性ガスが発生し、アークが消弧性ガスによって消弧される。また、ヒューズ筒12を本体碍子8に挿入する場合、蓋部材34の底面から蓋部材34の内側にヒューズ筒12を挿入する。作業者は、本体碍子8にヒューズ筒12を挿入、及び、本体碍子8からヒューズ筒12を抜き出す(高圧カットアウト100に対してヒューズ筒12の着脱を行う)際、操作棒70を用いる。以下、操作棒70について説明する。
【0024】
(操作棒)
図2から
図4を参照し、操作棒70について説明する。
図2に示すように、操作棒70は、棒状であり、軸線72方向に伸びている。操作棒70は、操作棒本体78と、操作棒本体78の軸線72方向の一端に設けられている収容部90と、操作棒本体78の軸線72方向の他端に設けられている握り部76を備えている。収容部90は、内側が円筒状であり、ヒューズ筒12の端部(表示筒58側)を収容することができる(
図3も参照)。握り部76の内面には螺子部74が設けられており、棒状の延長部材(図示省略)を取り付けることができる。すなわち、操作棒70は、必要に応じて長さを調整することができる。
【0025】
収容部90は、操作棒本体78の端部に設けられた窪み部92と、操作棒本体78に固定された筒状部材84によって構成されている。また、支持部材82が、筒状部材84を囲うように、操作棒本体78に取り付けられている。なお、操作棒本体78には、端面から順に、螺子部83,小径部80が形成されている。螺子部83には、筒状部材84が固定されている。小径部80の外径は、操作棒本体78の中間部(小径部80以外の操作棒本体78)の外径より小さい。そのため、小径部80と操作棒本体78の中間部の境界に、段差が形成されている。小径部80には、支持部材82の取付部82aが取り付けられる。なお、取付部82aは、小径部80に固定されていない。取付部82a(支持部材82)は、小径部80と操作棒本体78の中間部の段差と筒状部材84との間に配置されることにより、軸線72方向への移動が制限された状態で、操作棒本体78に取り付けられている。そのため、取付部82a(支持部材82)は、小径部80(操作棒本体78)に対して回転可能である(小径部80に遊嵌されている)。
【0026】
ここで、
図4を参照し、筒状部材84について説明する。なお、
図4では、筒状部材84の内側の特徴を明確に示すため、支持部材82の図示を省略している。筒状部材84の内側には、係合部86と非係合部85を有するリングが設けられている。係合部86は、非係合部85に対して軸線72に向けて突出している。筒状部材84では、2個の係合部86が、軸線72に対して対称の位置に設けられている。なお、係合部86は、非係合部85に対して軸線72に向けて突出している。そのため、係合部86の内径は、非係合部85の内径より小さい。また、係合部86は、筒状部材84の径方向中心から観察すると、L字形状である(
図2を参照)。具体的には、
図2に示すように、筒状部材84の周方向において、係合部86の一端に、軸線72に沿って伸びるストッパ87が形成されている。
【0027】
図2に示すように、支持部材82は、取付部82aと、取付部82aから軸線72に沿って操作棒70の先端に向けて伸びている柱状部82bを備えている。柱状部82bは、取付部82aから筒状部材84の端部(先端)に向け、筒状部材84の端部から突出した位置まで伸びている。操作棒70では、12個の柱状部82bが、筒状部材84を囲うように、取付部82aの周方向に等間隔に設けられている。各柱状部82bの先端には、内側(軸線72側)に突出する爪部88が形成されている。爪部88は、軸線72方向において、基部(爪部88の軸線72から最も遠い部分)から頂部(爪部88の軸線72に最も近い部分)に向けて傾斜している。なお、柱状部82bの厚み(径方向長さ)は、柱状部82bの幅(周方向長さ)より小さい。そのため、柱状部82bは、径方向には変形しやすく、周方向には変形しにくい。
【0028】
図3に示すように、ヒューズ筒12を操作棒70に取り付ける際、ヒューズ筒12の表示筒58側を筒状部材84内に挿入する。このときに、ヒューズ筒12の鍔部26が支持部材82の爪部88にぶつかり、柱状部82bが径方向外側に弾性変形する。鍔部26が爪部88の頂部を越えると、柱状部82bは弾性変形する前の位置に戻り、爪部88が鍔部26に係合する。上記したように、軸線72方向において、爪部88は、基部から頂部に向けて傾斜している。そのため、ヒューズ筒12を操作棒70に取り付ける際に鍔部26が爪部88にぶつかったときに、柱状部82bに対して軸線72方向に加わる力(圧縮力)を低減することができる。ヒューズ筒12を操作棒70から取り外すときも同様に、柱状部82bに対して軸線72方向に加わる力(引張力)を低減することができる。これにより、柱状部82bの破損を抑制することができる。
【0029】
(ヒューズ筒と操作棒の着脱方法)
図5を参照し、ヒューズ筒12と操作棒70の着脱方法について説明する。高圧カットアウト100にヒューズ筒12を取り付ける際、作業者は、まず、ヒューズ筒12を操作棒70に取り付ける。作業者は、ヒューズ筒12の端部を収容部90(筒状部材84)に押し込みながら、操作棒70を第1方向91に回転させる。ヒューズ筒12の突出部42は、係合部86の上面に接触し、係合部86上面を通り過ぎて非係合部85に至る。突出部42が非係合部85に至ると、突出部42(ヒューズ筒12)は、鍔部26が筒状部材84の上面にあたるまで下がる。その後、突出部42は、非係合部85を矢印94方向に移動する。突出部42がストッパ87に接触すると操作棒70を回転させることができなくなる。なお、上記したように、ヒューズ筒12の端部(表示筒58側)を収容部90に挿入すると、爪部88が鍔部26に係合する。また、
図5から明らかなように、操作棒70を第1方向91に回転すると、突出部42と係合部86は係合しない。高圧カットアウト100にヒューズ筒12を取り付ける際、突出部42と係合部86を係合させずに、爪部88を鍔部26の係合によってのみヒューズ筒12と操作棒70を固定する。
【0030】
上記したように、支持部材82は、操作棒本体78(筒状部材84)に対して回転可能な状態で操作棒本体78に取り付けられている。そのため、ヒューズ筒12を操作棒70に取り付ける際に操作棒70を回転すると、ヒューズ筒12に対して筒状部材84は回転するが、支持部材82は回転しない。そのため、ヒューズ筒12の外面に配置されている部品(ヒューズリード線40等)が損傷することを防止することができる。
【0031】
ヒューズ筒12を操作棒70に取り付けた後、ヒューズ筒12を本体碍子8に挿入し、上部接触子52を第1電極56に接続し、下部接触子48を第2電極46に接続した後、操作棒70を下方に引き抜く(
図1も参照)。操作棒70を引き抜く際、支持部材82が弾性変形して鍔部26と爪部88の係合が外れ、ヒューズ筒12が本体碍子8に残存した状態でヒューズ筒12と操作棒70を分離することができる。すなわち、ヒューズ筒12を操作棒70に取り付けた後、操作棒70を回転したり、操作棒70を押し上げるといった作業を行うことなく、単に操作棒70を引き抜くだけでヒューズ筒12と操作棒70を分離することができる。
【0032】
高圧カットアウト100からヒューズ筒12を抜き出す際、作業者は、ヒューズ筒12の端部に収容部90(筒状部材84)を押し付けながら、操作棒70を第2方向93に回転させる。ヒューズ筒12の突出部42は、筒状部材84の係合部86の上面に接触し、係合部86上面を通り過ぎて非係合部85に至る。突出部42が非係合部85に至ると、突出部42(ヒューズ筒12)は、鍔部26が筒状部材84の上面にあたるまで下がる。その後、突出部42は、非係合部85を矢印96方向に移動する(
図5参照)。突出部42がストッパ87に接触すると操作棒70を回転させることができなくなる。
図5から明らかなように、突出部42がストッパ87に接触すると、突出部42と係合部86は確実に係合する。なお、ヒューズ筒12の端部に収容部90を押し付けることにより、爪部88と鍔部26も係合する。突出部42と係合部86を係合させた後、操作棒70下方に移動させ、高圧カットアウト100からヒューズ筒12を抜き出す。なお、突出部42と係合部86が係合しているので、ヒューズ筒12が本体碍子8に強固に接続されていても(上部接触子52,下部接触子48が第1電極56,下部接触子48に強固に接続されていても)、ヒューズ筒12を本体碍子8から確実に抜き出すことができる。
【0033】
突出部42と係合部86が係合した後は、操作棒70を第1方向91に回転して両者の係合を外さない限り、ヒューズ筒12と操作棒70の軸線72方向の位置は変化しない。そのため、操作棒70をヒューズ筒12に対して強く押し付けたり、本体碍子8からヒューズ筒12を抜き出す際に操作棒70を上下方向に移動させても、ヒューズ筒12が操作棒70から外れることはない。そのため、高圧カットアウト100からヒューズ筒12を抜き出す際、ヒューズ筒12と操作棒70を固定する作業を何度もやり直す必要はない。高圧カットアウト100からヒューズ筒12を抜き出した後、操作棒70を第1方向91に回転すると、ヒューズ筒12と操作棒70を分離することができる。
【0034】
上記実施例では、支持部材に設けられている爪部が、軸線方向において、基部から頂部に向けてテーパー状に傾斜している形態について説明した。しかしながら、爪部は、軸線方向において、基部から頂部に向けて曲線状(例えば円弧状)に傾斜していてもよい。あるいは、爪部は、基部から頂部に向けて、階段状に厚みが変化していく形態であってもよい。
【0035】
ヒューズ筒を収容するための収容部は、操作棒本体とは別体の筒状部材を用いることなく、操作棒本体の端部に直接形成してもよい。あるいは、収容部は、操作棒本体を利用することなく、操作棒本体の端部に固定する筒状部材のみで形成されていてもよい。また、支持部材は、操作棒本体に対して回転可能な状態で操作棒本体に取り付けられていれば、操作棒本体と筒状部材の間に配置されていなくてもよい。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
12:ヒューズ筒
26:鍔部
42:突出部
70:操作棒
72:収容部の軸線
78:操作棒本体
82:支持部材
82a:取付部
82b:柱状部
86:係合部
88:爪部
90:収容部
100:高圧カットアウト