(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】TGFB抗体、方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220824BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220824BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220824BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220824BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220824BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220824BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220824BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220824BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220824BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220824BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220824BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220824BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220824BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220824BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220824BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C07K16/24
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/00
A61K31/7088
A61K35/76
(21)【出願番号】P 2019501541
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 US2017042162
(87)【国際公開番号】W WO2018013939
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-07
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515120006
【氏名又は名称】スカラー ロック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOLAR ROCK,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】カルヴェン,グレゴリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シュルフ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,キャサリン
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/171691(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/182676(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/015003(WO,A1)
【文献】Science Translational Medicine,2015年04月22日,Vol.7, Issue284,284ra56
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗体、又はその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体又は抗原結合フラグメントは、
ヒト反復優位糖タンパク質Aと複合化されたヒトproTGFβ1(proTGFβ1-GARP複合体
)に特異的に結合し
、かつ、
a.配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定部位(CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、又は
b.配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含む、
前記単離された抗体、又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体又は抗原結合フラグメントは、Treg機能をインビトロで阻害する、請求項1に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、TGFβ1の活性を阻害する、請求項1及び2のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトGARPとの複合体の形成の結果として改変されたヒトproTGFβ1のエピトープに結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの存在下で、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは
、少なくとも880pMの結合親和性でヒトproTGFβ1に特異的に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは
、ヒト反復優位糖タンパク質Aと複合化されたヒトproTGFβ1(proTGFβ1-GARP複合体)に対して1nM以下の解離定数(Kd)でヒトproTGFβ1に結合するものである(ここで、前記proTGFβ1-GARP複合体は溶液中にある。)、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項8】
配列番号17のアミノ酸配列のアミノ酸1-107を含む軽鎖可変領域配列と対をなす配列番号16のアミノ酸配列のアミノ酸1-118を含む重鎖可変領域配列を含む、請求項1~7いずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項9】
配列番号19のアミノ酸配列のアミノ酸1-110を含む軽鎖可変領域配列と対をなす配列番号18のアミノ酸配列のアミノ酸1-121を含む重鎖可変領域配列を含む、請求項1~7いずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項10】
配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖配列と、配列番号17のアミノ酸配列を有する軽鎖配列とを含む、請求項1~7いずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項11】
配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖配列と、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖配列とを含む、請求項1~7いずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項12】
配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖配列と、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖配列とを含む、請求項1~7いずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項13】
配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖配列と、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖配列とを含む、請求項1~7いずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項14】
前記抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、又は一本鎖抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項15】
前記抗体又は抗原結合フラグメントは、組換え体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項16】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプである、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項17】
前記抗体は、IgG4アイソタイプである、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項18】
請求項1~17いずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項20】
請求項19に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
抗体又は抗原結合フラグメントを生成するためのプロセスであって、
前記抗体又は抗原結合フラグメントの発現を可能にする条件下で、請求項20に
記載の宿主細胞を培養することと、前記抗体又は抗原結合分子を前記培養物から回収することとを含む、
前記プロセス。
【請求項22】
請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体、又はその抗原結合フラグメントと、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体、又はその抗原結合フラグメントと、そのパッケージとを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出済みの配列表を含み、その配列表の全体を参照により本明細書に援用するものである。当該ASCIIのコピーは、2017年7月10日に作成され、ファイル名はJBI5093_SL.txtであり、そのサイズは27,577バイトである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、増殖因子活性を阻害するモノクローナル抗体、及び記載される抗体を生成及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
制御性T細胞、すなわちTregは、免疫応答の阻害に特化したCD4+Tリンパ球のサブセットである。Tregの機能不全は自己免疫病態をもたらすのに対して、Tregの機能過剰は、癌患者における抗腫瘍免疫応答を阻害する可能性がある。Tregが免疫応答を阻害する厳密な機構は、十分には理解されていない。
【0004】
Tregは、その免疫抑制機能が原因で、自然発生的又はワクチン誘発型の抗腫瘍免疫応答の潜在的阻害因子となる。マウスモデルでは、Tregの枯渇によって、実験腫瘍に対する免疫応答を向上させることができる(Colombo et al.Nat.Rev.Cancer 2007,7:880~887)。したがって、ヒトにおいてTregを標的にすることによって、癌に対する免疫療法の有効性を向上させることができるであろう。
【0005】
ヒトTregの活性化に寄与するが、他の種類のヒトTリンパ球の活性化に寄与しない(Stockis,J.et al.Eur.J.Immunol.2009,39:869~882)TGF-β1は、関心対象の標的となり得る。しかし、hTGF-β1に対する抗体は、有望であることが判明していなかった。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、特発性肺線維症(IPF)、及び進行した悪性黒色腫又は腎細胞癌(RCC)において、第1相臨床試験が実施されている(Lonning S et al.Current Pharmaceutical Biotechnology 2011,12:2176~2189)。治験によっては、いくらかの患者において、有害事象が観察された。報告された主な有害反応は、メラノーマ患者における角化棘細胞腫(KA)及び扁平上皮癌(SCC)の発生に存していた。メラノーマ患者におけるKA又はSCC病変が、その増殖が内在性TGF-β1によって阻害されていた前癌細胞から発生した可能性がある(Lonning S et al.Current Pharmaceutical Biotechnology 2011,12:2176~2189)。したがって、癌という状況では、抗TGF-β1抗体の使用に関する主な関心事は、これが、内在性TGF-β1によって前癌細胞に対して発揮される腫瘍抑制効果の阻害が原因で、新しい腫瘍性病変の出現を促進する可能性があるということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、TregからのTGF-β1の放出を防止することによって、癌治療を向上させるための新規戦略が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。また、提供されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントをコード可能な関連するポリヌクレオチド、提供された抗体及び抗原結合フラグメントを発現している細胞、並びに関連するベクター、及び検出可能に標識されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントもまた記載されている。抗体又はその抗原結合フラグメントは、実施例4~6に示される条件下でOctetRed_384によって測定したとき、TGFβ1増殖因子ドメイン、TGFβ2増殖因子ドメイン、TGFβ3増殖因子ドメイン、LTBP1と共有的に会合しているproTGFβ1、LTBP3と共有的に会合しているproTGFβ1、LRRC33と共有的に会合しているproTGFβ1、及びヒトGARPと会合していないproTGFβ1と選択的に結合しない。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、(1)溶液中の、ヒト反復優位糖タンパク質Aと複合化されたヒトproTGFβ1(proTGFβ1-GARP複合体)に対する1nM以下の解離定数(Kd)、(2)細胞結合proTGFβ1-GARP複合体からのTGFβ1増殖因子の放出の阻害に関する10nM以下の阻害濃度(IC50)、及び(3)TGFβ1増殖因子ドメイン、TGFβ2増殖因子ドメイン、TGFβ3増殖因子ドメイン、LTBP1と共有的に会合しているproTGFβ1、LTBP3と共有的に会合しているproTGFβ1、及びLRRC33と共有的に会合しているproTGFβ1と比較して100倍超であるproTGFβ1-GARP複合体に対する選択、を有し得、単離された抗体、又はその抗原結合フラグメントは、ヒトGARPと会合していないproTGFβ1に結合しない。
【0009】
加えて、提供されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントを使用する方法が記載されている。記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、様々な免疫療法用途などの、免疫応答を調節することが望ましいTGFβ1関連疾患又は障害、例えば、癌、ワクチン、感染症の治療方法において使用され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、単離された抗体及び抗原結合フラグメントを含み、当該抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒト反復優位糖タンパク質Aと複合化されたヒトproTGFβ1(proTGFβ1-GARP複合体)が溶液中にある間に当該複合体に特異的に結合する。これらのproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又はその抗原結合フラグメントは、Treg機能をインビトロで阻害することができる。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、TGFβ1の活性を阻害する。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、ヒトGARPとの複合体の形成の結果として改変されたヒトproTGFβ1のエピトープに結合する。このproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、880pM以下の結合親和性でproTGFβ1-GARP複合体のproTGFβ1に結合し得る。
【0011】
【0012】
一部の実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はその抗原結合フラグメントは、表1に記載されたアミノ酸配列のうちいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖と、表1に記載されたアミノ酸配列のうちいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖とを含む。本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、配列番号16及び18の重鎖可変領域配列を含んでもよく、配列番号17及び19の軽鎖可変領域配列を含んでもよい。
【0013】
本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、IgGアイソタイプのいずれかとの組み合わせで、CDR及び可変ドメインの記載された特徴を有する抗体を含む。同IgGアイソタイプは、Fc配列が異なるエフェクター機能をもたらすために改変されている改変版を含む。
【0014】
記載されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントに加えて、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントをコード可能なポリヌクレオチド配列もまた提供される。記載されたポリヌクレオチドを含むベクターもまた提供される。同様に、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントを発現している細胞が提供される。また、開示されたベクターを発現可能な細胞も記載される。これらの細胞は、哺乳類細胞(例えば、293F細胞、CHO細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)、酵母細胞、植物細胞、又は細菌細胞(例えば、E.coli)であってもよい。proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントを生成するためのプロセスもまた提供される。
【0015】
本発明はまた、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントを使用する方法を含む。このセクションにおいて議論されている方法に用いられるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体には、表1に抗体に対して記載された一連のCDRを有するものが含まれる。例えば、免疫応答においてTGFβ1が果たす重要な役割は、腫瘍抗原を含む任意の弱免疫原性抗原に対する免疫応答を誘導すること又は向上させることを含む免疫療法のための魅力的な標的となることである。このように、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、各種の癌及び感染症の治療における有用性を有する。
【0016】
一実施形態において、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、TregからのTGFβ1の放出を阻止し、それによって、制御性T細胞によるエフェクターT細胞活性化の抑制を防止するために投与される。このような阻害は、例えば、T細胞増殖、既知の活性化マーカーの発現、又はサイトカイン分泌をモニタすることを含む、当該技術分野において既知の各種の方法によってアッセイされ得る。別の実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体を対象に投与して、制御性T細胞のレベル、例えば、腫瘍の制御性T細胞のレベルを減少させる。更に別の実施形態では、エフェクターT細胞の活性は、本明細書で提供されるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体を投与することによって誘導されるか又は向上する。
【0017】
本開示のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はその抗原結合フラグメントを含むキットは、本発明の範囲内である。記載されたキットを使用して、本明細書で提供されるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体を使用する方法、又は当業者に既知の他の方法を行うことができる。いくつかの実施形態では、記載のキットは、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメント、生体サンプル中のproTGFβ1-GARP複合体の存在を検出する際に用いられる試薬、任意追加的に、使用していないときにproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントを収容するための容器、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントの使用説明書、固体支持体に固定されているproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメント、及び/又は検出可能に標識された形態のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】T細胞共培養物への4B1C1及び4B16B9の添加は、Tエフェクター細胞の増殖が増強されることにより、制御性T細胞を阻害することを示す。
【
図2】4B1C1及び4B16B9は、SMADシグナル伝達によって評価して、TGFβ1活性化を阻害することを示す。
【
図3】4B1C1及び4B16B9によるTGFβ1活性の用量依存的阻害を示す。
【
図4】proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補のOctetによる親和性の結果は、ヒトproTGFβ1-GARP複合体に結合するが、他のproTGFb1複合体又はTGFb1、2又は3の可溶型には結合しないことによって、特異性を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書及び特許請求の範囲を通して本明細書の諸態様に関する様々な用語が使用される。別途記載のない限り、そのような用語には、当該技術分野におけるそれらの通常の意味が与えられるものとする。その他の具体的に定義される用語は、本明細書に提供される定義と一致する様式で解釈されるものとする。
【0020】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ以上の細胞の組み合わせ、及びこれに類するものなどが含まれる。
【0021】
本明細書で使用されるとき、測定値、例えば、量、持続時間等に言及する場合の「約」という用語は、指定された値から最大±10%の偏差を包含することを意味する。同様に、このような偏差は、開示された方法を行うのに適している。別途記載のない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分、分子量、反応条件等の特性の量を表す全ての数字は、全ての事例において「約」という用語により修飾されていると理解されたい。したがって、そうではないと示されない限り、下記明細書及び添付の特許請求の範囲で説明された数値パラメータは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変動する場合がある近似値である。最低でも、特許請求の範囲に対して均等論の適用を制限することを試みてはならず、各数値パラメータは、報告された有効桁の数字を考慮し、通常の四捨五入の手法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0022】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載された数値は、可能な限り正確に報告される。ただし、任意の数値は、各試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含有する。
【0023】
「単離された」とは、生物学的成分(例えば、核酸、ペプチド、又はタンパク質)が、これらの成分が本来存在する生物の他の生物学的成分、すなわち、他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、並びにタンパク質から、実質的に分離され、同他の成分とは別に生成され、又は同他の成分から離して精製されていることを意味する。このため、「単離」されている核酸、ペプチド、及びタンパク質は、標準的な精製法により精製された核酸及びタンパク質を含む。「単離された」核酸、ペプチド、及びタンパク質は、組成物の一部であることができ、このような組成物が核酸、ペプチド、又はタンパク質の本来の環境の一部ではない場合であっても単離されている。また、この用語は、宿主細胞中での組換え発現により調製された核酸、ペプチド、及びタンパク質、並びに化学合成された核酸も包含する。本明細書で使用されるとき、「単離された」抗体又は抗原結合フラグメントとは、種々の抗原特異性を有する他の抗体又は抗原結合フラグメントを実質的に含まない抗体又は抗原結合フラグメントを指すことを意図している(例えば、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体である単離された抗体は、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体でない抗体を実質的に含まない)。
【0024】
本明細書において用いられる用語「トランスフォーミング増殖因子β-1」及び「TGFβ1」は、ヒトTGFβ1タンパク質を具体的に包含する。TGFβ1はまた、科学文献においてTGFベータ1及びTGFβ1としても知られている。TGFβ1増殖因子は、例えばGenBank(商標)アクセッション番号AK291907、NCBI Reference Sequence:NP_000651.3.1及びUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号P01137.2に記載されているプロドメインと共に合成される(Derynck et al.1985,Nature 316,701~705も参照のこと)。いくつかの実施形態では、TGFβ1の翻訳タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトプロテインである。プロドメイン及び増殖因子のエレメントの両方を含むTGFβ1は、本明細書において「proTGFβ1」と称される。いくつかの実施形態では、proTGFβ1は、タンパク質分解的に分離されているが、1つ又は2つ以上の化学的相互作用によって結合したままである、プロドメイン及び増殖因子の構成成分を含む。そのような化学的相互作用としては、限定するものではないが、疎水結合、ファンデルワールス力の影響による相互作用、極性/イオン性の相互作用、水素結合、及び非共有結合を挙げることができる。
【0025】
本明細書において用いられる用語「反復優位糖タンパク質A」及び「GARP」とは、ヒトGARPを指す。GARPは、別名ロイシンに富む反復配列を含むタンパク質32(LRRC32)及びgarpinとして知られている。NCBI Reference Sequence NP_001122394.1及びNP_005503.1は、代表的なヒトGARPアミノ酸配列を提供する。特定の実施形態では、GARPは、配列番号1のヒトGARPである。
【0026】
「抗体」は、特に断らない限り、免疫グロブリンの全てのアイソタイプ(IgG、IgA、IgE、IgM、IgD、及びIgY)を指し、種々の単量体、多量体、及びキメラ型を含む。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、及び抗体様ポリペプチド、例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体が、「抗体」という用語に具体的に包含される。
【0027】
「抗原結合フラグメント」は、特定の抗原に対して結合親和性を示し得る任意のタンパク質性構造体である。抗原結合フラグメントは、任意の既知の手法、例えば、酵素開裂、ペプチド合成、及び組み換え手法により提供されたものを含む。一部の抗原結合フラグメントは、親抗体分子の抗原結合特異性を保持しているインタクトな抗体の一部から構成される。例えば、抗原結合フラグメントは、特定の抗原に結合することが既知である抗体の、少なくとも1つの可変領域(重鎖若しくは軽鎖の可変領域のいずれか一方)、又は1つ若しくは2つ以上のCDRを含んでもよい。適切な抗原結合フラグメントの例には、ディアボディ及び一本鎖分子、並びにFab、F(ab’)2、Fc、Fabc、及びFv分子、一本鎖(Sc)抗体、個々の抗体軽鎖、個々の抗体重鎖、抗体鎖若しくはCDRと他のタンパク質との間でのキメラ融合体、タンパク質スキャフォールド、重鎖単量体若しくは二量体、軽鎖単量体若しくは二量体、1本の重鎖と1本の軽鎖とからなる二量体、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価フラグメント、国際公開第2007059782号に記載された一価抗体、ヒンジ領域においてジスルフィド結合により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント、V.sub.H及びC.sub.H1ドメインから本質的になるFdフラグメント、抗体の1つのアームのVL及びVHドメインから本質的になるFvフラグメント、VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov.;21(11):484~90)dAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341,544~546(1989))、ラクダ科動物抗体フラグメントつまりナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan.;5(1):111~24)、単離された相補性決定領域(CDR)等が挙げられるが、これらに限定されない。全ての抗体アイソタイプが、抗原結合フラグメントを生成するのに使用されてもよい。加えて、抗原結合フラグメントは、対象となる所与の抗原に対する親和性を付与する方向にポリペプチドセグメントをうまく包含させ得る、非抗体タンパク質性フレームワーク、例えば、タンパク質スキャフォールドを含んでもよい。抗原結合フラグメントは、組換え的に生成されてもよく、又はインタクトな抗体の酵素的若しくは化学的開裂により生成されてもよい。「抗体又はその抗原結合フラグメント」という表現は、所与の抗原結合フラグメントが、この表現内で参照された抗体の1つ又は2つ以上のアミノ酸セグメントを組み込んでいることを示すために使用されてもよい。
【0028】
「CDR」及びその複数形「CDRs」という用語は、相補性決定領域(CDR)であって、そのうちの3つが軽鎖可変領域(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)の結合特性を構成し、3つが重鎖可変領域(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)の結合特性を構成する、相補性決定領域(CDR)を意味する。CDRは、抗体分子の機能的活性に寄与し、スキャフォールド領域又はフレームワーク領域を含むアミノ酸配列によって分離される。正確な定義上のCDRの境界及び長さは、異なる分類及び番号付けシステムに依存する。したがって、CDRは、Kabat定義、Chothia定義、接触定義、又は任意の他の境界定義によって参照され得る。境界が異なるにもかかわらず、これらのシステムの各々は、可変配列内のいわゆる「超可変領域」を構成するものにおいてある程度のオーバーラップを有する。したがって、これらのシステムによるCDRの定義は、隣接するフレームワーク領域についての長さ及び境界領域の点で異なることがある。例えば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.NIH Publication No.91~3242(1991);Chothia et al.,「Canonical Structures For the Hypervariable Regions of Immunoglobulins,」J.Mol.Biol.196:901(1987);及びMacCallum et al.,「Antibody-Antigen Interactions:Contact Analysis and Binding Site Topography,」J.Mol.Biol.262:732(1996))を参照のこと。
【0029】
典型的には、CDRは、カノニカル構造として分類され得るループ構造を形成する。「カノニカル構造」という用語は、抗原結合(CDR)ループによって採用される主鎖立体配座を意味する。比較構造の研究から、6つの抗原結合ループのうちの5つが利用可能な立体配座の限られたレパートリーしか有さないことが見出された。各カノニカル構造は、ポリペプチド主鎖のねじれ角によって特徴付けられ得る。したがって抗体間で対応するループは、それらのループの大部分において高度のアミノ酸配列可変性がみられるにもかかわらず、非常によく似た三次元構造を有し得る(Chothia et al.,「Canonical Structures For the Hypervariable Regions of Immunoglobulins,」J.Mol.Biol.196:901(1987);Chothia et al.,「Conformations of Immunoglobulin Hypervariable Regions,」I 342:877(1989);Martin and Thornton,「Structural Families in Loops of Homologous Proteins:Automatic Classification,Modelling and Application to Antibodies,」J.Mol.Biol.263:800(1996))(当該文献のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。更に、採用されたループ構造とその周囲のアミノ酸配列との間には関係がある。特定のカノニカルクラスの立体配座は、ループの長さと、ループ内の重要な位置並びに保存されたフレームワーク(すなわち、ループの外側)内にあるアミノ酸残基とによって決定される。したがって、これらの重要なアミノ酸残基の存在に基づいて、特定のカノニカルクラスへの割り当てを行うことができる。
【0030】
「ポリペプチド」という用語は、「タンパク質」という用語と互換的に使用され、その最も広い意味において、2つ又はそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、又はペプチド模倣体の化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合によって連結されていてもよい。別の実施形態では、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどによって連結されてもよい。本明細書で使用されるとき、「アミノ酸」という用語は、グリシン並びにD及びL光学異性体の両方と、アミノ酸類似体と、ペプチド模倣体と、を含む、天然及び/若しくは非天然アミノ酸又は合成アミノ酸のいずれかを指す。3つ又はそれ以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短い場合、一般にオリゴペプチドと称される。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは、一般にポリペプチド又はタンパク質と称される。
【0031】
抗体又は抗体フラグメントの文脈において使用されるとき、「特異的に結合(Specifically binds)」若しくは「特異的に結合(binds specifically)」又はそれらの派生語は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによりコードされたドメインを介して、分子の混合集団を含有するサンプル中の他の分子に優先的に結合することなく、対象となるタンパク質の1つ又は2つ以上のエピトープに結合することを表す。典型的には、抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイ又は細胞結合アッセイにより測定された場合、約1×10-8M未満のKdで、同じ性質の抗原に結合する。好ましい実施形態では、結合特異性はバイオレイヤー干渉法を用いて測定される。「[抗原]特異的」抗体等の表現は、列挙された抗体が列挙された抗原に特異的に結合することを伝達することを意味する。
【0032】
「ポリヌクレオチド」は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」と呼ばれ、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAでもよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」には、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、DNA及びRNAを含むハイブリッド分子(一本鎖、又はより典型的には、二本鎖、又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物でもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。用語、ポリヌクレオチドには、1つ以上の修飾塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された主鎖を有するDNA又はRNAも含まれる。「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。各種の修飾が、DNA及びRNAになされてもよい。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的に天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと呼ばれる)も包含する。
【0033】
「ベクター」とは、セグメントの複製又は発現をもたらすように、別の核酸セグメントを操作的に挿入可能な、レプリコン、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、又はウイルスのことである。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「宿主細胞」という用語は、例えば、初代細胞、培養中の細胞、又は細胞株からの細胞のいずれのタイプの細胞であり得る。特定の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、核酸分子でトランスフェクトされた細胞、及びそのような細胞の子孫又は潜在的子孫を指す。このような細胞の子孫は、核酸分子でトランスフェクトされた親細胞とは、例えば、宿主細胞ゲノムへの核酸分子の後続の生成又は集積において生じ得る変異又は環境影響により、同一ではないことがある。「発現」及び「生成」という用語は、本明細書において同義的に使用され、遺伝子産物の生合成を意味する。これらの用語は、遺伝子のRNAへの転写を包含する。また、これらの用語は、RNAの1つ又は2つ以上のポリぺプチドへの翻訳を包含し、全ての天然の転写後及び翻訳後修飾を更に包含する。抗体又はその抗原結合フラグメントの発現又は生成は、細胞の細胞質内、又は細胞外環境、例えば、細胞培養の増殖培地内でもよい。「実質的に同じ」の意味は、この用語が使用される文脈に応じて異なる場合がある。天然の配列バリエーションが重鎖及び軽鎖並びにこれらをコードする遺伝子中におそらく存在するために、いくらかのレベルのバリエーションが本明細書に記載されたアミノ酸配列又は抗体若しくは抗原結合フラグメントをコードする遺伝子内に見出されると予測されるであろう。ただし、固有の結合特性(例えば、特異性及び親和性)にはほとんど影響しないか、又は影響しない。このような予測は、部分的には、遺伝暗号の縮重及び保存的アミノ酸配列バリエーションの進化的成功による。同バリエーションは、コードされたタンパク質の性質を認識できるほどには改変させない。したがって、核酸配列の文脈において、「実質的に同じ」は、2つ以上の配列間での少なくとも65%の同一性を意味する。好ましくは、この用語は、2つ以上の配列間での少なくとも70%の同一性、より好ましくは、少なくとも75%の同一性、より好ましくは、少なくとも80%の同一性、より好ましくは、少なくとも85%の同一性、より好ましくは、少なくとも90%の同一性、より好ましくは、少なくとも91%の同一性、より好ましくは、少なくとも92%の同一性、より好ましくは、少なくとも93%の同一性、より好ましくは、少なくとも94%の同一性、より好ましくは、少なくとも95%の同一性、より好ましくは、少なくとも96%の同一性、より好ましくは、少なくとも97%の同一性、より好ましくは、少なくとも98%の同一性、及びより好ましくは、少なくとも99%以上の同一性を意味する。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップ数及び各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性の割合(%)=同一位置数/位置の総数×100)。同考慮は、2つの配列の最適なアライメントを導くのに必要である。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、E.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci 4,11~17(1988)のアルゴリズムを使用して決定されてもよい。同アルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用する。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48,444~453(1970)のアルゴリズムを使用して決定されてもよい。
【0035】
タンパク質の機能に実質的な影響を有することなく、タンパク質のアミノ酸配列内に生じ得るバリエーションの度合いは、核酸配列のバリエーションの度合いより非常に小さい。これは、同じ縮重原理がアミノ酸配列には適用しないためである。したがって、抗体又は抗原結合フラグメントの文脈において、「実質的に同じ」は、記載された抗体又は抗原結合フラグメントに対して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する抗体又は抗原結合フラグメントを意味する。他の実施形態は、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントと顕著な同一性を共有しないが、1つ又は2つ以上のCDR又は結合性を付与するのに必要とされる他の配列を組み込む、フレームワーク、スキャフォールド、又は他の非結合領域を有し、本明細書に記載されたこのような配列に対して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又は抗原結合フラグメントを含む。
【0036】
「結合親和性」は、概して、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の総和の強さを指す。別途記載のない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性を、概して、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、平衡解離定数(KD)及び平衡会合定数(KA)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において既知のいくつかの方法で測定及び/又は発現され得る。KDはkoff/konの商から計算されるが、KAはkon/koffの商から計算される。konは、例えば、抗原に対する抗体の会合速度定数を意味し、koffは、例えば、抗原に対する抗体の解離を意味する。kon及びkoffは、バイオレイヤー干渉法などの当業者に既知の手法によって決定され得る。
【0037】
「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を意味し、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類及び非哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類を意味する。記載された方法の多くの実施形態において、対象はヒトである。
【0038】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメント
本明細書において、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体である単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合フラグメントが記載される。本明細書において用いられる用語「proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体」とは、特徴的な親和性、特異性、及び活性を有する抗体を指す。proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、(1)proTGFβ1が溶液中におけるヒトGARPとの複合体である場合、ヒトproTGFβ1に対する1nM以下の解離定数(Kd)(例えば、無細胞アッセイを用いて測定したとき)、(2)細胞結合proTGFβ1-GARP複合体からのTGFβ1増殖因子の放出の阻害に関する10nM以下の阻害濃度(IC50)、(3)TGFβ1増殖因子ドメイン、TGFβ2増殖因子ドメイン、TGFβ3増殖因子ドメイン、LTBP1と共有的に会合しているproTGFβ1、LTBP3と共有的に会合しているproTGFβ1、及びLRRC33と共有的に会合しているproTGFβ1と比較して、(結合親和性によって測定して、すなわち、Kd値が)100倍超であるproTGFβ1-GARP複合体に対する選択性;及び(4)GARPとの複合体でない場合のproTGFβ1に対する親和性の欠如、を有し得る。場合によっては、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体はまた、LTBP2及び/又はLTBP4と共有的に会合しているproTGFβ1と比較して、100倍超であるproTGFβ1-GARP複合体に対する選択性を有する。抗体分子の全体的な構造は、抗原結合ドメインを含む。同ドメインは、重鎖及び軽鎖並びにFcドメインを含み、補体固定及び結合抗体受容体を含む各種の機能を果たす。
【0039】
記載されるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、全てのアイソタイプである、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、並びに4本鎖免疫グロブリン構造の合成多量体を含む。記載された抗体又は抗原結合フラグメントはまた、雌鳥又はシチメンチョウの血清及び雌鳥又はシチメンチョウの卵黄中に一般的に見出されるIgYアイソタイプも含む。
【0040】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、任意の種から組換え手法により得ることができる。例えば、抗体又は抗原結合フラグメントは、マウス、ラット、ヤギ、ウマ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヒト、又はそれらのキメラ版でもよい。ヒトへの投与において使用するために、非ヒト由来の抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒト患者への投与時に、より低い抗原性となるように、遺伝的に又は構造的に改変されてもよい。
【0041】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントはキメラである。本明細書で使用されるとき、「キメラ」という用語は、非ヒト哺乳類、げっ歯類、又は爬虫類の抗体アミノ酸配列に由来する少なくとも1つの可変ドメインの少なくともいくらかの部分を有する抗体又はその抗原結合フラグメントを指すが、抗体又はその抗原結合フラグメントの残り部分はヒトに由来する。
【0042】
一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最少配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖、又はフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合部分配列)でもよい。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、又はウサギからの残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むこととなる。同可変ドメイン中、全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、全て又は実質的に全てのフレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcのうち少なくとも一部を含んでもよい。
【0043】
本明細書に記載された抗体又は抗原結合フラグメントは、各種の形態で存在し得るが、表1に示された抗体CDRのうち1つ又は2つ以上を含むこととなる。
【0044】
いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトIgG又はその誘導体である。本明細書で例示されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトであるが、例示された抗体又は抗原結合フラグメントは、キメラ化されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、表1に記載された抗体のうちいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖と、表1に記載された抗体のうちいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖と、を含む、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体が提供される。
【0046】
いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号4を含む重鎖CDR1、配列番号5を含む重鎖CDR2、配列番号6を含む重鎖CDR3、配列番号7を含む軽鎖CDR1、配列番号8を含む軽鎖CDR2、及び配列番号9を含む軽鎖CDR3を含む。このproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。このproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、880pM以下の親和性でproTGFβ1-GARP複合体のproTGFβ1に結合することができ、Treg機能をインビトロで阻害することができ、かつ、TGFβ1の活性を阻害することができる。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号16と実質的に同じか又は同一の重鎖と、配列番号17と実質的に同じか又は同一の軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号16のアミノ酸配列1-118と実質的に同じか又は同一の重鎖可変領域と、配列番号17のアミノ配列1-107と実質的に同じか又は同一の軽鎖可変領域と、を含む。この段落において論じられる抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、1つのアームがproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体のアームである二重特異性構築物への包含に適している。
【0047】
いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号10を含む重鎖CDR1、配列番号11を含む重鎖CDR2、配列番号12を含む重鎖CDR3、配列番号13を含む軽鎖CDR1、配列番号14を含む軽鎖CDR2、及び配列番号15を含む軽鎖CDR3を含む。このproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。このproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、880pM以下の親和性でproTGFβ1-GARP複合体のproTGFβ1に結合することができ、Treg機能をインビトロで阻害することができ、かつ、TGFβ1の活性を阻害することができる。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号18と実質的に同じか又は同一の重鎖と、配列番号19と実質的に同じか又は同一の軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号18のアミノ酸配列1-121と実質的に同じか又は同一の重鎖可変領域と、配列番号19のアミノ配列1-110と実質的に同じか又は同一の軽鎖可変領域と、を含む。この段落において論じられる抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、1つのアームがproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体のアームである二重特異性構築物への包含に適している。
【0048】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号4-15のCDRアミノ酸配列及び配列番号16-19の可変領域アミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、及び少なくとも99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0049】
また、本開示のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチドも開示される。本明細書で提供された可変ドメインセグメントをコード可能な単離されたポリヌクレオチドは、抗体又は抗原結合フラグメントを生成する同一の又は異なるベクターに含まれてもよい。
【0050】
組換え抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた、本開示の範囲内である。一部の実施形態では、記載されたポリヌクレオチド(及びこのポリヌクレオチドがコードするペプチド)は、リーダー配列を含む。当該技術分野において既知の任意のリーダー配列を利用することができる。リーダー配列には、制限部位又は翻訳開始部位を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、記載されるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントの生物学的特性(例えば、結合親和性又は免疫エフェクター活性)を保持している、1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有する変異体を含む。これらの変異体としては、(a)1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸により置換されている変異体、(b)1つ又は2つ以上のアミノ酸がポリペプチドに付加され、又は同ポリペプチドから欠失されている変異体、(c)1つ又は2つ以上のアミノ酸が置換基を含む変異体、及び(d)ポリペプチドが別のペプチド又はポリペプチド、例えば、融合パートナー、タンパク質タグ、又は他の化学部分と融合した変異体、を挙げることができる。これらは、ポリペプチドに有用な特性、例えば、抗体に対するエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分等を付与してもよい。本明細書に記載された抗体又は抗原結合フラグメントは、保存的又は非保存的位置のいずれかにおいてある種からのアミノ酸残基が別の種における対応する残基に置換されている変異体を含んでもよい。他の実施形態では、非保存的位置におけるアミノ酸残基は、保存的又は非保存的残基により置換される。これらの変異体を得るための手法は、遺伝的(欠失、変異等)、化学的、及び酵素的手法を含めて、当業者に既知である。
【0052】
本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、複数の抗体アイソタイプ、例えば、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEを具現化することができる。一部の実施形態では、抗体アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプ、好ましくは、IgG1アイソタイプである。抗体又はその抗原結合フラグメントの特異性は、CDRのアミノ酸配列及び配置により主に決定される。したがって、あるアイソタイプのCDRは、抗原特異性を変化させることなく、別のアイソタイプに変更することができる。あるいは、抗原特異性を変化させることなく、ハイブリドーマに、ある抗体アイソタイプの生成から別のものに切り替える技術(アイソタイプスイッチング)が確立されてきた。したがって、このような抗体アイソタイプは、記載された抗体又は抗原結合フラグメントの範囲内にある。
【0053】
本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、約880pM未満の解離定数(KD)を含む、proTGFβ1-GARP複合体のproTGFβ1に対する結合親和性を有する。記載されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又は抗原結合フラグメントの親和性は、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴又はELISAベースの方法など、当該技術分野において既知の各種方法によって決定することができる。バイオレイヤー干渉法によって親和性を測定するアッセイは、OctetRed 384を使用して実施されるアッセイを含み、その場合、アッセイは室温(例えば、約25℃)で実施され、proTGFβ1-GARP複合体のproTGFβ1に結合することができる抗体は、ビオチン化proTGFβ1-GARP複合体をロードしたストレプトアビジンバイオセンサ上に捕捉される。
【0054】
本明細書に記載されたポリヌクレオチドを含むベクターもまた提供される。ベクターは、発現ベクターであり得る。このため、対象となるポリペプチドをコードする配列を含有する組換え発現ベクターは、本開示の範囲内であると想到される。発現ベクターは、1つ又は2つ以上の追加配列を含有してもよい。同追加配列には、例えば、制御配列(例えば、プロモータ、エンハンサー)、選択マーカー、及びポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。広い各種の宿主細胞を形質転換するためのベクターは周知であり、プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、並びに、他の細菌、酵母、及びウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本説明の範囲内にある組換え発現ベクターは、適切な調節エレメントに操作可能に連結することができる少なくとも1つの組換えタンパク質をコードする、合成的、遺伝的、又はcDNA由来の核酸フラグメントを含む。このような調節エレメントには、転写プロモータ、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列を挙げることができる。発現ベクター、特に、哺乳類の発現ベクターはまた、1つ又は2つ以上の非転写エレメント、例えば、複製の起点、発現される遺伝子に連結された適切なプロモータ及びエンハンサー、他の5’又は3’フランキング非転写配列、5’又は3’非翻訳配列(例えば、必須リボソーム結合部位)、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、又は転写終了配列を含んでもよい。宿主において複製する能力を付与する複製の起点もまた包含されてもよい。
【0056】
脊椎動物細胞を形質転換するのに使用される発現ベクター中の転写及び翻訳コントロール配列は、ウイルスソースにより提供することができる。例示的なベクターは、Okayama and Berg,3 Mol.Cell.Biol.280(1983)に記載されたように構築されてもよい。
【0057】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントのコード配列は、強力な構成的プロモータ、例えば、下記遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン等のためのプロモータの制御下に置かれる。加えて、多くのウイルスプロモータが、真核細胞中で構成的に機能し、記載された実施形態での使用に適している。このようなウイルスプロモータには、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモータ、SV40の初期及び後期プロモータ、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモータ、モロニー白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及び他のレトロウイルスの長端末反復配列(LTR)、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はその抗原結合フラグメントのコード配列は、誘引性プロモータ、例えば、メタロチオネインプロモータ、テトラサイクリン誘引性プロモータ、ドキシサイクリン誘引性プロモータ、1つ又は2つ以上のインターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)、例えば、プロテインキナーゼR 2’,5’-オリゴアデニレート合成酵素、MX遺伝子、ADAR1等を含有するプロモータの制御下に置かれる。
【0058】
本明細書に記載されたベクターは、1つ又は2つ以上の配列内リボソーム進入部位(IRES)を含有してもよい。IRES配列の融合ベクター内への包含は、一部のタンパク質の発現を向上させるのに有益であり得る。一部の実施形態では、ベクター系は、1つ又は2つ以上のポリアデニル化部位(例えば、SV40)を含むこととなる。同部位は、前述の核酸配列のうちいずれかの上流又は下流にあってもよい。ベクターのコンポーネントは、近接して連結されてもよく、又は遺伝子産物を発現させるのに最適な間隔を提供するように(すなわち、ORF間に「スペーサ」ヌクレオチドを導入することにより)配置されてもよく、若しくは別の方法で位置付けられてもよい。調節エレメント、例えば、IRESモチーフはまた、発現に最適な間隔を提供するように配置されてもよい。
【0059】
ベクターは、当該技術分野において周知の選択マーカーを含んでもよい。選択マーカーには、陽性及び陰性選択マーカー、例えば、抗生物質抵抗性遺伝子(例えば、ネオマイシン抵抗性遺伝子、ヒグロマイシン抵抗性遺伝子、カナマイシン抵抗性遺伝子、テトラサイクリン抵抗性遺伝子、ペニシリン抵抗性遺伝子)、グルタミン酸合成酵素遺伝子、ガンシクロビル選択用のHSV-TK、HSV-TK誘導体、又は6-メチルプリン選択用の細菌のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子(Gadi et al.,7 Gene Ther.1738~1743(2000))が挙げられる。選択マーカーをコードする核酸配列又はクローニング部位は、対象となるポリペプチドをコードする核酸配列又はクローニング部位の上流又は下流にあってもよい。
【0060】
本明細書に記載されたベクターを使用して、記載された抗体又は抗原結合フラグメントをコードする遺伝子で、種々の細胞を形質転換することができる。例えば、ベクターを使用して、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントの生成細胞を生じさせることができる。このため、別の態様は、proTGFβ1-GARP複合体のproTGFβ1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、例えば、本明細書に記載され、例示された抗体又は抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含むベクターで形質転換された宿主細胞を特徴とする。
【0061】
外来性遺伝子を細胞内に導入するための数多くの手法が、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載され、例示された種々の実施形態に従って、記載された方法を行う目的で組換え細胞を構築するのに使用することができる。使用される手法により、異種遺伝子配列を宿主細胞に安定して導入すべきであり、その結果、異種遺伝子配列は、細胞の子孫により遺伝され、発現され得、レシピエント細胞の必須の成育及び生理学的機能が損なわれない。使用することができる手法としては、染色体導入法(例えば、細胞融合、染色体媒介性遺伝子導入、マイクロ細胞媒介性遺伝子導入)、物理的方法(例えば、トランスフェクション、スフェロプラスト融合、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム担体)、ウイルスベクター導入(例えば、組換えDNAウイルス、組換えRNAウイルス)等が挙げられる(Cline,29 Pharmac.Ther.69~92(1985)に記載)が、これらに限定されない。哺乳類細胞による細菌プロトプラストのリン酸カルシウム沈殿及びポリエチレングリコール(PEG)誘因融合を使用しても、細胞を形質転換することができる。
【0062】
本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントの発現に使用するのに適した細胞は、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、植物、げっ歯類、又はヒト起源の細胞である。これらの細胞には、とりわけ、例えば、NSO、CHO、CHOK1、perC.6、Tk-ts13、BHK、HEK293細胞、COS-7、T98G、CV-1/EBNA、L細胞、C127、3T3、HeLa、NS1、Sp2/0骨髄腫細胞、及びBHK細胞株等が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、抗体の発現は、ハイブリドーマ細胞を使用して達成されてもよい。ハイブリドーマを生成するための方法は、当該技術分野において十分確立されている。
【0063】
本明細書に記載された発現ベクターにより形質転換された細胞は、本明細書に記載された抗体又は抗原結合フラグメントの組換え発現について選択され、又はスクリーニングされてもよい。組換え陽性細胞は、タンパク質改変又は変化させた翻訳後修飾により、所望の表現型、例えば、高レベルの発現、向上した増殖特性、又は所望の生化学的特性を有するタンパク質を生成する能力を示すサブクローンについて、増殖され、スクリーニングされる。これらの表現型は、所与のサブクローンの本来の特性又は変異により得る。変異は、化学薬品、UV波長光、照射、ウイルス、挿入変異、DNAミスマッチ修復の阻害、又はこのような方法の組み合わせにより得られる。
【0064】
処置のためにproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体を使用する方法
本明細書において、治療に使用するための、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はその抗原結合フラグメントが提供される。特に、これらの抗体又は抗原結合フラグメントは、癌を処置するのに有用であり得る。上述したように、Tregから放出された活性型TGFβ1は、他のT細胞の作用を阻害する。このため、TGFβ1媒介免疫抑制機能を阻害することは、様々な癌に対する免疫応答をブーストするための魅力的なアプローチとなる。proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体を使用して、固形腫瘍並びに白血病を含む血液癌の両方を処置することができる。
【0065】
これらの方法において使用する抗体には、本明細書において上述したもの、例えば、表1及びこれらの抗体の更なる検討において列記された特徴、例えば、CDR又は可変ドメイン配列を有するproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントが含まれる。
【0066】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体の免疫エフェクター特性は、当業者に既知の手法によるFc改変によって調節され得る。例えば、Fcエフェクター機能、例えば、C1q結合、補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性貪食(ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーション等が、これらの活性を担うFc中の残基を改変することにより提供され、かつ/又は制御され得る。の下方制御などのFcエフェクター機能は、これらの活性に関与するFcの残基を修飾することによって提供及び/又は調節され得る。
【0067】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」又は「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現している非特異的細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、続けて、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。
【0068】
ADCCを誘導するモノクローナル抗体の能力は、そのオリゴ糖成分を操作することにより向上され得る。ヒトIgG1又はIgG3は、Asn297においてN-グリコシル化される。ここで、グリカンの大部分は、周知の二分岐G0、G0F、G1、G1F、G2、又はG2Fの形態にある。遺伝子操作されていないCHO細胞により生成される抗体は、典型的には、少なくとも約85%のグリカンフコース含量を有する。Fc領域に付着した二分岐の複雑なタイプのオリゴ糖からのコアフコースの除去により、改善されたFc.ガンマ.RIIIa結合を介して、抗原結合性又はCDC活性を変化させることなく、抗体のADCCが向上される。このようなmAbは、二分岐の複雑なタイプのFcオリゴ糖を有する、比較的高い脱フコシル化抗体の成功した発現をもたらすことが報告された種々の方法、例えば、培養浸透圧の制御(Konno et al.,Cytotechnology 64:249~65,2012)、宿主細胞株としての変異体CHO株Lec13の適用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733~26740,2002)、宿主細胞株としての変異体CHO株EB66の適用(Olivier et al.,MAbs;2(4),2010、Epub ahead of print、PMID:20562582)、宿主細胞株としてのラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466~3473,2003)、アルファ.1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al.,Biotechnol Bioeng 88:901~908,2004)、又はベータ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIとゴルジアルファ-マンノシダーゼIIとの共発現又は強力なアルファ-マンノシダーゼI阻害剤であるキフネンシン(Ferrara et al.,J Biol Chem 281:5032~5036;2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng 93:851~861,2006;Xhou et al.,Biotechnol Bioeng 99:652~65,2008)を使用して達成され得る。
【0069】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体により引き出されたADCCはまた、抗体Fc中の特定の置換によって向上され得る。例示的な置換は、例えば、米国特許第6,737,056号に記載されたように、アミノ酸位置256、290、298、312、356、330、333、334、360、378、又は430(EUインデックスに従った残基番号付け)における置換である。
【0070】
薬学的組成物及び投与
本明細書で提供される医薬組成物は、a)有効量の本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗体フラグメントと、b)不活性でも又は生理学的に活性でもよい医薬的に許容される担体と、を含む。好ましい実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又はその抗原結合フラグメントである。本明細書で使用されるとき、「医薬的に許容され得る担体」という用語は、生理学的に適合性である、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、及び抗真菌剤等を含む。適切な担体、希釈剤、及び/又は賦形剤の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等のうち1種又は2種以上、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。多くの場合には、等張性剤、例えば、糖、ポリアルコール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むのが好ましい。特に、適切な担体の関連する例には、(1)ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、pH約7.4、約1mg/mL~25mg/mLヒト血清アルブミンを含有又は非含有、(2)0.9%生理食塩水(0.9% w/v塩化ナトリウム(NaCl))、及び(3)5%(w/v)デキストロース、が挙げられ、抗酸化剤、例えば、トリプタミン、及び安定化剤、例えば、Tween 20(登録商標)をも含有してもよい。
【0071】
本明細書における組成物はまた、処置される特定の疾患にとって必要な場合には、更なる治療剤を含有してもよい。好ましくは、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗体フラグメントと補助的な活性化合物とは、互いに有害な影響を及ぼさない補完的な活性を有する。好ましい実施形態では、更なる治療剤は、シタラビン、アントラサイクリン、ヒスタミン二塩酸塩、又はインターロイキン2である。好ましい実施形態では、更なる治療剤は、化学療法剤である。
【0072】
本発明の組成物は、各種の形態でもよい。これらには、例えば、液体、半固体、及び固体の剤形が挙げられるが、好ましい形態は、意図された投与方式及び治療用途により決まる。典型的に好ましい組成物は、注射可能な溶液又は注入可能な溶液の形態である。好ましい投与方式は、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下)である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、静脈内に、ボーラスとして又は一定期間にわたる連続的な注入により投与される。別の好ましい実施形態では、本組成物は、局所及び全身性の治療効果を発揮するために、筋肉内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、又は病巣周囲の経路により投与される。
【0073】
非経口投与用の無菌組成物が、本発明の抗体、抗体フラグメント、又は抗体コンジュゲートを、必要とされる量で適切な溶媒に包含させ、続けて、マイクロフィルター法により滅菌することにより調製され得る。溶媒又は賦形剤として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、並びにこれらの組み合わせを使用することができる。多くの場合には、等張性剤、例えば、糖、ポリアルコール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むのが好ましい。これらの組成物はまた、補助剤、特に、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤、及び安定化剤を含有してもよい。非経口投与用の無菌組成物はまた、使用時に滅菌水又は任意の他の注射可能な菌媒体中に溶解されてもよい、無菌の固体組成物の形態に調製されてもよい。
【0074】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗体フラグメントはまた、経口投与されてもよい。経口投与用の固体組成物として、錠剤、丸剤、粉末剤(ゼラチンカプセル剤、サッシェ剤)、又は顆粒剤が使用されてもよい。これらの組成物において、本発明による活性成分は、1つ又は2つ以上の不活性な希釈剤、例えば、デンプン、セルロース、スクロース、ラクトース、又はシリカと、アルゴン流下において混合される。これらの組成物はまた、希釈剤以外の物質、例えば、1つ又は2つ以上の潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルク、着色剤、コーティング(糖衣錠)、あるいはグレーズを含んでもよい。
【0075】
経口投与用の液体組成物として、不活性な希釈剤、例えば、水、エタノール、グリセロール、植物油、又はパラフィンオイルを含有する、医薬的に許容され得る液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が使用されてもよい。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、湿潤剤、甘味料、増粘剤、着香剤、又は安定化製品を含んでもよい。
【0076】
用量は、所望の効果、治療の期間、及び使用される投与経路により決まる。用量は、一般的には、成人1日あたりに経口で5mg~1000mgであり、単位用量は、活性物質1mg~250mgの範囲である。一般的には、医師は、適切な用量を、処置される対象の年齢、体重、及び同対象に固有の任意の他の要因に応じて決定する。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗体フラグメントは、哺乳類における過剰増殖性障害を治療するために使用される。より好ましい実施形態では、本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗体フラグメントを含有する、上記で開示された医薬組成物のうちの1つは、哺乳類における過剰増殖性障害を治療するために使用される。一実施形態において、この障害は、癌である。副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、脳腫瘍、神経膠腫、乳癌、カルチノイド腫瘍、子宮頚部癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓外胆管癌、ユーイング腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、頭頚部癌、下咽頭癌、島細胞癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、肝癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、メルケル細胞癌、転移性扁平頭頚部癌、骨髄腫、新生物、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫癌、下垂体癌、形質細胞腫瘍、前立腺癌、横紋筋肉腫、直腸癌、腎細胞癌、唾液腺癌、皮膚癌、カポジ肉腫、T細胞リンパ腫、軟部組織肉腫、胃癌、巣腫瘍、胸腺腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、又はウィルムス腫瘍などの様々な異なる癌性腫瘍を、本明細書に記載の抗体で治療することができる。
【0078】
前述の癌のいずれかを処置する際、提供される処置方法を利用して、更なる腫瘍増殖を阻害し、腫瘍退縮を誘導し、無増悪生存期間を増加させ、並びに/又は腫瘍を有する個体における全生存期間を延長させることができる。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体はまた、転移の発症を遅延又は予防することができる。各種の方法を使用して、処置の進行をモニタすることができる。例えば、阻害は、腫瘍サイズの減少及び/又は腫瘍内の代謝活性の低下をもたらし得る。これらのパラメータの両方は、例えば、MRI又はPETスキャンによって測定され得る。阻害はまた、腫瘍内の壊死のレベル、腫瘍細胞死、及び血管分布のレベルを確認する生検によってモニタされ得る。転移の程度は、既知の方法を使用してモニタされ得る。したがって、本発明の医薬組成物は、黒色腫、肺、頭部及び頸部、腎細胞、大腸直腸、乳房、前立腺、子宮内膜、膀胱、腎臓、食道、精巣、卵巣、扁平上皮細胞癌(例えば、頭部及び頸部の扁平上皮細胞癌(squamous cell carcinoma of the head and neck、SCCHN)、ブドウ膜黒色腫、濾胞性リンパ腫、子宮頸部、脳、膵臓、肝臓、リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、胃、並びに星細胞(astrocyctic)が含まれるが、これらに限定されない、各種の癌の処置又は転移の防止に有用である。
【0079】
同様に、本明細書において、選択された細胞集団の増殖を阻害するための方法であって、TGFβ1発現免疫細胞を、有効量の本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗体フラグメントと、単独で又は他の治療薬との組み合わせにおいてかのいずれか一方で、接触させることを含む、方法が更に提供される。好ましい実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又はその抗原結合フラグメントである。好ましい実施形態では、更なる治療剤は免疫療法、すなわち、免疫応答を誘導又は向上させる免疫刺激剤である。このような薬剤としては、例えば、1)樹状細胞の活性化剤、2)ワクチンアジュバント、3)T細胞刺激剤、4)免疫チェックポイント阻害剤、並びに5)抑制細胞、サイトカイン、及び/又は酵素の阻害剤が挙げられ得る。よって、一実施形態において、抗体はワクチンと共に投与される。
【0080】
臨床的な使用について、治療有効量のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントが、それを必要とする対象に投与される。例えば、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及びその抗原結合フラグメントは、TGFβ1陽性免疫細胞を含有する癌性腫瘍の治療において有用であり得る。好ましい実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又はその抗原結合フラグメントである。一部の実施形態では、対象は、哺乳類、好ましくは、ヒトである。いくつかの実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントは、無菌試験済みの溶液として投与される。
【0081】
処置及び使用の上記方法における投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分離用量を、時間をかけて投与してもよく、又は用量を治療状況の緊急性によって示されるように、比例して減少又は増加させてよい。非経口組成物は、投与しやすくしかつ用量を均一にするために、投与単位の形態に製剤化されてもよい。
【0082】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及びフラグメントの効率的な投与及び投与計画は、処置される疾患又は状態により決まり、当業者によって決定されてもよい。本発明の化合物の治療的に有効な量の例示的で非限定的な範囲は、約0.001~10mg/kg、例えば、約0.001~5mg/kg、例えば、約0.001~2mg/kg、例えば、約0.001~1mg/kg、例えば、約0.001、約0.01、約0.1、約1、又は約10mg/kgである。
【0083】
当該技術分野において通常の技能を有する医師又は獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、医薬組成物中で用いるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントの用量を、所望の治療効果を達成するのに必要されるレベルよりも少ないレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができる。一般的には、本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体の適切な1日用量は、治療効果を生じさせるのに有効な最も少ない用量である化合物量である。投与は、例えば、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下でもよい。一実施形態において、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントは、mg/m2で算出された1週用量で注入により投与されてもよい。このような用量は、例えば、下記:用量(mg/kg)×70に従って、上記で提供されたmg/kg用量に基づくことができる。このような投与は、例えば、1~8回、例えば、3~5回繰り返されてもよい。投与は、2~24時間、例えば、2~12時間の期間にわたる連続的な注入により行われてもよい。一実施形態において、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントは、毒性の副作用を減少させるために、長期間、例えば、24時間超にわたるゆっくりとした連続的な注入により投与されてもよい。
【0084】
一実施形態において、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントは、1週間に1回で与えられる場合、最大8回、例えば、4~6回の固定用量として算出された1週用量で投与されてもよい。このような計画は、例えば、6ケ月又は12ケ月後に、必要に応じて1回又は2回以上繰り返されてもよい。このような固定用量は、例えば、上記で提供されたmg/kg用量に基づくことができる。ここで、体重は、70kgと仮定する。用量は、例えば、生体サンプルを採取し、本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体の抗原結合領域を標的にする抗イディオタイプ抗体を使用することによって、本発明のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体の投与時の血中量を測定することにより、決定又は調節されてもよい。
【0085】
一実施形態において、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントは、例えば、6ヵ月又はそれ以上の期間にわたり週1回等の維持療法により投与されてもよい。
【0086】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はフラグメントはまた、癌の進行リスクを低下させ、癌の進行におけるイベントの発生の開始を遅延させ、かつ/又は癌が緩解した際の再発リスクを低下させるために、予防的に投与されてもよい。
【0087】
本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及びそのフラグメントはまた、併用療法において投与されてもよい、すなわち、治療される疾患又は状態に関連する他の治療薬と組み合わせてもよい。したがって、一実施形態において、抗体含有医薬は、1種又は2種以上の他の治療剤、例えば、化学療法剤と組み合わせるためのものである。いくつかの実施形態では、他の治療薬としては、限定するものではないが、アルキル化薬などの抗腫瘍薬、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、及びクロラムブシル);ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、及びセムスチン(メチル-CCNU));Temodal(商標)(テモゾロミド)、エチレンイミン/メチルメラミン(例えば、トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレンチオホスホラミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン));スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン);トリアジン(例えば、ダカルバジン(DTIC));代謝アンタゴニスト、例えば葉酸類似体(例えば、メトトレキサート及びトリメトレキサート)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、及び2,2’-ジフルオロデオキシシチジン)、プリン類似体(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2’-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA));細胞分裂抑制薬などの天然物(例えば、パクリタキセル、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、及びビノレルビン)、タキソテール、エストラムスチン、及びリン酸エストラムスチン);ピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド);抗腫瘍抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、アクチノマイシン);酵素(例えば、L-アスパラキナーゼ);生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン-アルファ、IL-2、G-CSF、GM-CSF);種々の薬剤、例えば、白金配位錯体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジン)、副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p-DDD)、アミノグルテチミド);ホルモン類及びアンタゴニスト類、例えば副腎皮質ステロイドアンタゴニスト類(例えば、プレドニゾン及び等価物、デキサメタゾン、アミノグルテチミド);Gemzar(商標)(ゲムシタビン)、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲステロール);エストロゲン類(例えば、ジエチルスチルベステロール及びエチニルエストラジオール等価物);抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);アンドロゲン類(例えば、プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/等価物);抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ及びリュープロリド);並びに非ステロイド性抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド)、が挙げられる。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、脱メチル化剤(例えば、Vidaza)、及び転写抑制解除(ATRA)療法を含むが、これらに限定されない、エピジェネティック機構を標的とする療法も、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体と組み合わせることができる。
【0088】
化学療法剤の追加の特異的例としては、タキソール、タキセン(taxenes)(例えば、ドセタキセル及びTaxotere)、変性パクリタキセル(例えば、Abraxane及びOpaxio)ドキソルビシン、Avastin(登録商標)、Sutent、Nexavar、及び他の多種キナーゼ阻害剤、シスプラチン及びカルボプラチン、エトポシド、ゲムシタビン、並びにビンブラスチンが挙げられる。MAPK経路阻害剤(例えば、ERK、JNK、及びp38の阻害剤)、PI3キナーゼ/AKT阻害剤、並びにPim阻害剤を含むが、これらに限定されない他のキナーゼの特異的阻害剤を、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体と組み合わせて使用することもできる。他の阻害剤としては、Hsp90阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えば、Velcade)、及びTrisenoxなどの複数の作用機序の阻害剤が挙げられる。
【0089】
このような組み合わせ投与は、同時、任意の順序において、別々又は連続的でもよい。同時投与では、薬剤は、必要に応じて、1つの組成物又は別々の組成物として投与されてもよい。
【0090】
一実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントは、抗原提示細胞を刺激する薬剤と組み合わされる。かかる薬剤の例としては、CD40アゴニスト、例えばアゴニスト性抗CD40抗体又はCD40Lが挙げられる。
【0091】
いくつかの方法は、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントをワクチンアジュバントと共に投与することを含む。このようなアジュバントとしては、例えば、IL-12と種々のToll様受容体(Toll Like Receptor、TLR)アゴニストとが挙げられ、TLRアゴニストには、CpG(TLR9アゴニスト)、モノホスホリルリピドA(MPL-TLR4アゴニスト)、ポリI:C又はポリICLC(TLR3アゴニスト)、並びにレシキモド及び852A(TLR7/8アゴニスト)が含まれる。
【0092】
他の治療的アプローチでは、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体は、IL-15及び/若しくはIL-17、又はこれらの分子の活性化剤などのT細胞増殖因子との組み合わせで投与される。関連する方法では、T細胞刺激剤がproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体と組み合わせられる。このような刺激剤としては、アゴニスト抗4-1BB抗体などの4-1BBのアゴニスト、及び4-1BBLが挙げられる。
【0093】
一実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントは、T細胞チェックポイント阻害剤、例えば、免疫系に阻害シグナルを送る分子と共に投与される。このような薬剤の例としては、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)及びMK-3475(Merck)としても知られるペンブロリズマブ、ピジリズマブ(Curetech)、AMP-224(Amplimmune)を含む抗PD-1抗体、並びにMPDL3280A(Roche)、MDX-1105(Bristol Myer Squibb)、MEDI-4736(AstraZeneca)、及びMSB-0010718C(Merck)を含む抗PD-L1抗体などのPD-1又はPD-L1(B7-H1)の阻害剤が挙げられる。他のチェックポイント阻害剤としては、抗CTLA-4抗体などのCTLA-4のアンタゴニストが挙げられる。例示的な抗CTLA4抗体は、Bristol-Myers Squibbより市販されているYervoy(登録商標)(イピリムマブ)である。他の例示的なCTLA-4抗体としては、トレメリムマブ(Pfizer)、チシリムマブ(AstraZeneca)、及びAMGP-224(Glaxo Smith Kline)が挙げられる。
【0094】
更に他の方法では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントは、免疫抑制効果を有する酵素の阻害剤との組み合わせで投与される。一例は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの小分子阻害剤である1-メチルトリプトファン(1-methyl tryptophan、1MT)である。
【0095】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントはまた、AmgenによるT-VEC(腫瘍溶解性免疫療法薬)との組み合わせで使用され得る。
【0096】
特定の実施形態では、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントは、二重特異性抗体との組み合わせで投与される。二重特異性抗体は、宿主の免疫系、特に、T細胞の細胞毒性活性を癌細胞に対して指向させ得る。
【0097】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントはまた、各種の標的療法との組み合わせで投与され得る。標的療法の例としては、治療用抗体の使用が挙げられるが、これに限定されない。例示的な抗体としては、細胞表面タンパク質Her2、CDC20、CDC33、ムチン様糖タンパク質、及び腫瘍細胞、OX40、PD-1、CTLA-4上に存在する表皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)に結合し、任意選択的に、これらのタンパク質を発現する腫瘍細胞に対して細胞増殖抑制効果及び/又は細胞毒性効果を誘導するものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な抗体はまた、乳癌及び他の形態の癌を処置するために使用され得るHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)、並びに非ホジキンスリンパ腫及び他の形態の癌の処置に使用され得るRITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、ZEVALIN(商標)(イブリツモマブチウキセタン)、及びLYMPHOCIDE(商標)(エプラツズマブ)が挙げられる。ある種の例示的な抗体としてはまた、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ERBITUX(登録商標)(IMC-C225);BEXXAR(商標)(ヨウ素131トシツモマブ);KDR(キナーゼ領域受容体)阻害剤;抗VEGF抗体及びアンタゴニスト(例えば、Avastin(登録商標)及びVEGAF-TRAP);抗VEGF受容体抗体及び抗原結合領域;抗Ang-1及びAng-2抗体及び抗原結合領域;Tie-2に対する抗体及びその他のAng-1及びAng-2受容体;Tie-2リガンド;Tie-2キナーゼ阻害剤に対する抗体;Hif-1aの阻害剤、及びCampath(商標)(アレムツズマブ)も挙げられる。特定の実施形態では、癌治療剤は、TNF関連ポリペプチドTRAILを含むが、これに限定されない、腫瘍細胞において選択的にアポトーシスを誘導するポリペプチドである。
【0098】
一実施形態では、本明細書に提供されるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントは、血管新生を減少させる1つ又は2つ以上の抗血管新生剤との組み合わせで使用される。かかる薬剤の例としては、限定するものではないが、IL-8アンタゴニスト、Campath、B-FGF;FGFアンタゴニスト;Tekアンタゴニスト(Cerrettiら、米国特許出願公開第2003/0162712号;Cerrettiらの米国特許第6,413,932号、及びCerrettiら、米国特許第6,521,424号);抗TWEAK剤(抗体及び抗原結合領域を含むが、これらに限定されない);好適なTWEAK受容体アンタゴニスト(Wiley、米国特許第6,727,225号);インテグリンとそのリガンドとの結合に拮抗するADAMディスインテグリンドメイン(Fanslowら、米国特許出願公開第2002/0042368号);抗eph受容体及び抗エフリン抗体;抗原結合領域、又はアンタゴニスト(米国特許第5,981,245号、同第5,728,813号、同第5,969,110号、同第6,596,852号、同第6,232,447号、同第6,057,124号);Avastin(登録商標)又はVEGF-TRAP(商標)などの抗VEGF剤(例えば、VEGFに特異的に結合する抗体若しくは抗原結合領域、又は可溶性VEGF受容体若しくはそのリガンド結合領域)、及び抗VEGF受容体剤(例えば、それに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)、パニツムマブ、IRESSA(商標)(ゲフィチニブ)、TARCEVA(商標)(エルロチニブ)などのEGFR阻害剤(例えば、それに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)、抗Ang1及び抗Ang2剤(例えば、それに、又はその受容体、例えば、Tie-2/TEKに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)、及び抗Tie2キナーゼ阻害剤(例えば、肝細胞増殖因子(HGF、散乱因子としても知られている)のアンタゴニストなどの増殖因子に特異的に結合しその活性を阻害する、抗体又は抗原結合領域)、並びにその受容体「c-met」に特異的に結合する抗体又は抗原結合領域(例えば、リロツムマブ及びAMG 337、Amgen);抗PDGF-BBアンタゴニスト;PDGF-BBリガンドに対する抗体及び抗原結合領域;並びにPDGFRキナーゼ阻害剤、が挙げられる。
【0099】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントとの組み合わせで使用され得る他の抗血管新生剤としては、MMP-2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)阻害剤、MMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害剤、及びCOX-II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤などの薬剤が挙げられる。有用なCOX-II阻害剤の例としては、CELEBREX(商標)(セレコキシブ)、バルデコキシブ、及びロフェコキシブが挙げられる。
【0100】
本明細書に提供されるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントはまた、増殖因子阻害剤との組み合わせで使用され得る。かかる増殖因子阻害剤の例としては、限定するものではないが、EGF-R(表皮増殖因子受容体)反応を阻害することができる薬剤、例えば、EGF-R抗体(例えば、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、EGF抗体、及びEGF-R阻害剤である分子;VEGF(血管内皮成長因子)阻害剤、例えば、VEGF受容体及びVEGFを阻害することができる分子;並びにerbB2受容体阻害剤、例えばerbB2受容体に結合する有機分子又は抗体、例えば、HERCEPTIN(登録商標)(Genentech,Inc.)、が挙げられる。EGF-R阻害剤は、例えば、米国特許第5,747,498号、国際公開第98/14451号、国際公開第95/19970号、及び国際公開第98/02434号に記載されている。
【0101】
一部の処置用途では、特に、骨が悪影響を受けるように癌が骨に転移している場合、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントを、更なる骨喪失を阻害するか又は喪失された骨を復元するのを助ける治療剤と共に投与するのが有用であり得る。したがって、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はそのフラグメントは、治療有効量の骨成長促進(タンパク同化)剤又は骨抗吸収剤、例えば、限定するものではないが:BMP-1からBMP-12と表される骨形態発生因子;トランスフォーミング増殖因子-β及びTGF-βファミリーメンバー;線維芽細胞増殖因子FGF-1~FGF-10;インターロイキン-1阻害剤(例えば、IL-1ra、IL-1に対する抗体及びIL-1受容体に対する抗体);TNFα阻害剤(例えば、エタネルセプト、アダリムマブ及びインフリキシマブ);RANKリガンド阻害剤(例えば、可溶性RANK、オステオプロテゲリン及びRANK又はRANKリガンドに特異的に結合するアンタゴニスト抗体、例えば、デノスマブ(XGEVA(登録商標))、Dkk-1阻害剤(例えば、抗Dkk-1抗体)、副甲状腺ホルモン、Eシリーズプロスタグランジン、ビスホスホネート並びにフッ化物及びカルシウムなどの骨増強ミネラル、と共に投与されてもよい。proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及びその機能的フラグメントとの組み合わせで使用され得る同化剤としては、パラサイロイドホルモン及びインスリン様増殖因子(insulin-like growth factor、IGF)が挙げられ、後者の薬剤は、好ましくは、IGF結合タンパク質と複合化される。このような併用治療に好適なIL-1受容体アンタゴニストは、国際公開第89/11540号に記載されており、好適な可溶性TNF受容体1は、国際公開第98/01555号に記載されている。例示的なRANKリガンドアンタゴニストは、例えば、国際公開第03/086289号、国際公開第03/002713号、米国特許第6,740,511号、及び同第6,479,635号に開示されている。
【0102】
一実施形態では、癌を治療するための方法は、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体の治療有効量の投与と、それを必要とする対象に放射線治療を行うこととを含む。放射線治療としては、患者に対する放射線療法又は放射性医薬の関連する投与を含んでもよい。放射線源は、処置される患者の外側又は内側のいずれか一方であってもよい(放射線治療は、例えば、外照射療法(EBRT)又は小線源治療(BT)の形態でもよい)。このような方法を実施するのに使用することができる放射性元素には、例えば、ラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131、及びインジウム-111が挙げられる。
【0103】
proTGFβ1-GARP複合体の検出方法
本明細書において、サンプルを、本明細書に記載の抗体、又はその抗原結合フラグメントと接触させることにより、生体サンプル中のproTGFβ1-GARP複合体を検出するための方法が提供される。本明細書に記載されたように、サンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、腹水、循環細胞、循環腫瘍細胞、組織会合していない細胞(すなわち、遊離細胞)、組織(例えば、外科手術的に切除された腫瘍組織、微小針吸引を含む生検)、組織学的調製物等から得ることができる。いくつかの実施形態では、記載された方法は、サンプルを、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又はその抗原結合フラグメントのいずれかと接触させることにより、生体サンプル中のproTGFβ1-GARP複合体を検出することを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、サンプルを、本明細書に記載のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体又は抗原結合フラグメントの2つ以上と接触させてもよい。例えば、サンプルを、第1のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又はその抗原結合フラグメントと接触させ、次いで、第2のproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又はその抗原結合フラグメントと接触させてもよく、この場合、第1の抗体又は抗原結合フラグメントと第2の抗体又は抗原結合フラグメントとは、同じ抗体又は抗原結合フラグメントではない。一部の実施形態では、第1の抗体又はその抗原結合フラグメントは、サンプルと接触させる前に、表面、例えば、マルチウェルプレート、チップ、又は類似する基材に固定されてもよい。他の実施形態では、第1の抗体又はその抗原結合フラグメントは、サンプルと接触させる前に、何にも固定されず又は付着されなくてもよい。
【0105】
記載されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、検出可能に標識されてもよい。いくつかの実施形態では、標識された抗体及び抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の方法によるproTGFβ1-GARP複合体の検出を容易にし得る。多くのこのような標識が、当業者に容易に既知である。例えば、適切な標識には、放射線標識、蛍光標識、エピトープタグ、ビオチン、発色団標識、ECL標識、又は酵素が挙げられるが、これらに限定されると考えられるべきではない。より具体的には、記載された標識には、ルテニウム、111In-DOTA、111In-ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びベータガラクトシダーゼ、ポリヒスチジン(HISタグ)、アクリジン染料、シアニン染料、フルオロン染料、オキサジン染料、フェナントリジン染料、ローダミン染料、Alexafluor(登録商標)染料などが挙げられる。
【0106】
記載されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体及び抗原結合フラグメントは、生体サンプル中のproTGFβ1-GARP複合体を検出するための各種アッセイに使用されてもよい。一部の適切なアッセイには、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、表面プラズモン共鳴、免疫蛍光測定法、免疫沈澱法、平衡透析法、免疫拡散法、電気化学発光(ECL)イムノアッセイ、免疫組織化学法、蛍光発色細胞選別(FACS)又はELISAアッセイが挙げられるが、これらに限定されると考えるべきではない。
【0107】
proTGFβ1-GARP複合体を検出するためのキット
本明細書において、生体サンプル中のproTGFβ1-GARP複合体を検出するためのキットが提供される。これらのキットは、本明細書に記載されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又はその抗原結合フラグメントのうち1つ又は2つ以上と、このキットを使用するための指示書と、を含む。
【0108】
提供されるproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体、又は抗原結合フラグメントは、溶液の中に存在してもよく、凍結乾燥されていてもよく、基材、キャリア、又はプレートに固着されていてもよく、又は検出可能に標識化されていてもよい。
【0109】
記載されるキットはまた、本明細書に記載された方法を行うのに有用な更なる構成要素を含んでもよい。例として、キットは、対象からサンプルを得るための手段、対照若しくは参照サンプル、例えば、ゆっくり進行する癌を有する対象及び/又は癌を有さない対象からのサンプル、1つ若しくはそれ以上のサンプル区画、及び/又は本発明の方法の実施について説明する指示材料、並びに組織特異的な対照若しくは基準物質を含んでもよい。
【0110】
proTGFβ1-GARP複合体のレベルを決定するための手段は、例えば、proTGFβ1-GARP複合体のレベルを決定するためのアッセイで使用するための緩衝液又は他の試薬を更に含み得る。指示書は、例えば、アッセイを行うための印刷された指示書及び/又はproTGFβ1-GARP複合体の発現レベルを評価するための指示書であり得る。
【0111】
記載されたキットはまた、対象からサンプルを単離するための手段を含んでもよい。これらの手段は、対象から流体又は組織を得るのに使用され得る機器又は試薬のうち1つ又は2つ以上の品目を含み得る。対象からサンプルを得るための手段はまた、血液サンプルから血液成分、例えば、血清を単離するための手段を含んでもよい。好ましくは、キットは、ヒト対象で使用するために設計されている。
【実施例】
【0112】
下記実施例は、先の開示を補い、本明細書に記載された主題のより良好な理解を提供するために提供される。これらの実施例は、記載された主題を限定すると解釈されるべきでない。本明細書に記載された実施例及び実施形態は例示のみを目的とするものであり、それらを考慮した種々の改変又は変更は、当業者に明らかであり、また、本発明の真の範囲内に含まれ、かつ本発明の真の範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【0113】
実施例1:ファージディスプレイ技術を使用したproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体の発見
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体を産生させるために、抗体産生キャンペーンを行った。ChemPartner所有の完全ヒトナイーブファージディスプレイライブラリ(Chempartner,Shanghai,China)を、ヒト抗体フラグメントの供給源として使用した。最初に、ライブラリを、ビオチン化sGARP(配列番号1)とLTBP1-proTGFβ1(配列番号2及び3)とを合わせた混合物に対して陰性パニングし、望ましくないLTBP1-proTGFb1複合体又は非複合化sGARPタンパク質に結合したscFvフラグメントを除去した。次に、除去したライブラリのアウトプットを、sGARP-proTGFβ1に対して数回パニングした。sGARP-proTGFβ1に特異的に結合する25のscFvを、固有のHCDR3配列、所望の複合体選択性、及び配列のライアビリィティに基づいて選択した。固有の重鎖V領域をヒトIgG4発現ベクターにクローニングし、固有の軽鎖をヒトカッパ発現ベクターにクローニングし、得られたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補を再びELISAで結合活性について試験した。このアッセイからのトップバインダーを、更なる特性評価のために選択した。
【0114】
実施例2:インビトロにおける4B1c1及び4b16B9によるヒトTreg機能の阻害
前述した実施例で生成されたproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補を、インビトロ抑制アッセイにおいてヒトTreg機能について試験した。活性化CD4
+CD25Hiサプレッサー細胞を、Tregの供給源として使用し、CFSE標識CD4+CD25-エフェクターT細胞(Teff細胞)を、増殖抑制の標的として使用した。細胞を、1 Treg/1 Teffの比率で、プレート結合抗CD3、可溶性抗CD28と共に、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補の存在下又は非存在下でインキュベートした。Tregは、Tエフェクターのみと比較して、Teff細胞の増殖を約50%阻害した。Teff(Tregと共にインキュベート)の増殖レベルは、Treg/Teff対照群又はhIgG4群と比較すると、4B1C1の存在下で回復し、4B16B9によって部分的に回復した(
図1)。これらの結果は、ヒトTregによる免疫抑制におけるTGF-β1の活性化を確認し、4B1C1及び4B16B9は、陽性対照中和TGFβ抗体1D11(R&D Systemsカタログ番号MAB-1835)と同様に、インビトロでこの活性を部分的に阻害することを示す。
【0115】
【0116】
2つのproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補のVH及びVLを下の表3に示す。
【0117】
【0118】
実施例3:TGFβ1バイオアッセイ
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補が活性型TGFβ1のレベルを制御する能力を、組み込まれたTGFβ/Smad3反応性ルシフェラーゼ発現ユニットを有するTMLCレポーター細胞を用いて測定した。簡潔に述べると、HEK293又はSw480細胞に、ヒトproTGFβ1及びLTBP1発現プラスミド又はヒトproTGFβ1及びGARP発現プラスミドのいずれかを一過性にトランスフェクトする。細胞をトランスフェクションから回復させ、細胞にproTGFβ1をLTBP1又はGARPのいずれかとの複合体として37℃で24時間にわたって発現させた。この時点でアッセイを実施できた。アッセイをセットアップするために、一過性トランスフェクタントをSW480β6と共に培養した。当該細胞はTGFβ1活性化インテグリンαVβ6を安定発現する。アッセイが目的どおりに機能していることを確認するために、既知の濃度のTGF-β1増殖因子を有する培地サンプルを、TMLCレポーター細胞培養物に添加して、標準曲線を生成した。
【0119】
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補(10μg/mL)をトランスフェクト細胞と混合し、TMLCレポーター細胞培養物に添加した。次いで、プレートを37℃で16時間インキュベートした。成功したTGFβ1シグナル伝達は、SMAD2/3経路の後に、製造業者(Promega)によって示されるようにBright-Gloを添加し、Biotek Synergy H1プレートリーダー(Biotek)で得られた発光を測定することによって検出され得るルシフェラーゼ発現を活性化することが期待された。
【0120】
4B1C1及び4B16B9抗体は、対照群で処理したものと比較してルシフェラーゼの発現を有意に減少させた。これにより、これら抗体が活性型TGFβ1増殖因子のレベルを制御し、細胞におけるTGFβ1媒介シグナル伝達を減少させることが示された。この効果は、陽性対照であるTGFβ中和抗体1D11の影響と同様である。
【0121】
実施例4:バイオレイヤー干渉法による親和性測定
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補のproTGFβ1-GARP複合体に対する結合親和性を、OctetRed 384(Fortebio,Menlo Park,Calif.)でバイオレイヤー干渉法によって測定した。ストレプトアビジンバイオセンサ(Fortebio、カタログ番号18-5020)に、pH 5、酢酸ナトリウム緩衝液中20μg/mLのビオチン化sGARP-proTGFβ1複合体をロードし、同じ緩衝液で洗浄し、同じ緩衝液中10μg/mLのproTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補の入ったウェルに移した。解離定数を、Octetソフトウエアを使用し、定常状態アルゴリズムに対する応答の非線形フィッティングにより得た(表4)。同様の親和性を的速度論フィッティングにより得た。
【0122】
【0123】
結合特異性を確認するため、4B1C1及び4B16B9を、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、proTGFβ1-LTBP1、proTGFβ1-LTBP3及びproTGFβ1-LRRC33に対する結合に関して上述と同様にスクリーニングした。上述したように、試験は、抗体10μg/mL及び抗原20μg/mLで以下の条件下で行われた。この試験により、
図4に示すように、proTGF1-GARP複合体以外の抗原に対する抗体の認識可能な結合はなかったことが実証された。
【0124】
【0125】
実施例5:用量反応アッセイ
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補による活性型TGFβ1レベルの制御の濃度依存性を、実施例3に記載のように、組み込まれたTGFβ/Smad3反応性ルシフェラーゼ発現ユニットを有するTMLCレポーター細胞を用いて測定した。実施例3との唯一の違いは、proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補を様々な濃度で実験ウェルに添加したことであった。
【0126】
4B1C1及び4B16B9は、それぞれ0.178nM及び1.9nMのIC50で、用量依存的にTGFβ1活性化を阻害することを実証した(
図3)。
【0127】
実施例6:抗体の特性評価
proTGFβ1-GARP複合体選択的抗体候補の、他のたんぱく質複合体と比較したproTGFβ1-GARP複合体に対する選択性を、OctetRed 384(Fortebio,Menlo Park,Calif.)でバイオレイヤー干渉法によって測定した(
図4)。4B1C1及び4B16B9は、proTGFβ1-GARP複合体に対して1nM未満の解離定数(Kd)を示した一方、proTGFβ1-LTBP1複合体又はproTGFβ1-LTBP3複合体に対する検出可能な結合は示さなかった。4B1C1及び4B16B9はまた、TGFβ1、TGFβ2、又はTGFβ3増殖因子に対する結合を示さなかった。
【0128】
proTGFβ1-LRRC33複合体に結合する抗体についても試験した。proTGFβ1-LRRC33複合体を発現させ、当該複合体をサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって精製し、分析用SECによって非凝集複合体の形成を確認した。次に、精製したproTGFβ1-LRRC33複合体に対する4B1C1及び4B16B9の結合を、実施例4に記載のようにOctetRed 384(Fortebio,Menlo Park,Calif.)分析によって試験した。そのため、4B1C1又は4B16B9は抗ヒトFcチップ上に捕捉され、proTGFβ1-GARP又はproTGFβ1-LRRC33のいずれかの結合がOctetによって検出された。proTGFβ1-GARPとは対照的に、proTGFβ1-LRRC33複合体に対する4B1C1又は4B16B9の結合は検出されなかった。
【0129】
【0130】
【表6-2】
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
単離された抗体、又はその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体又は抗原結合フラグメントは、
ヒト反復優位糖タンパク質Aと複合化されたヒトproTGFβ1(proTGFβ1-GARP複合体)が溶液中にある間に前記複合体に特異的に結合し、
実施例4に記載の実験計画を用いるバイオレイヤー干渉アッセイに従って、実施例4及び6に示される条件下でOctetRed 384によって測定して、以下の剤:
TGFβ1増殖因子ドメイン、
TGFβ2増殖因子ドメイン、
TGFβ3増殖因子ドメイン、
LTBP1と共有的に会合しているproTGFβ1、
LTBP3と共有的に会合しているproTGFβ1、
LRRC33と共有的に会合しているproTGFβ1、及び
ヒトGARPと会合していないproTGFβ1
のいずれに対しても検出可能な結合を有さず、
更に、実施例5に示す条件下における細胞結合proTGFβ1-GARP複合体からのTGFβ1増殖因子の放出の阻害に関する10nM以下の阻害濃度(IC
50
)を有する、
前記単離された抗体、又はその抗原結合フラグメント。
[発明2]
前記抗体又は抗原結合フラグメントは、Treg機能をインビトロで阻害する、前記発明1に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明3]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、TGFβ1の活性を阻害する、前記発明1及び2のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明4]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトGARPとの複合体の形成の結果として改変されたヒトproTGFβ1のエピトープに結合する、前記発明1~3のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明5]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの存在下で、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する、前記発明1~4のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明6]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、実施例4に記載の実験計画を用いてバイオレイヤー干渉アッセイによって測定して、少なくとも880pMの結合親和性でヒトproTGFβ1に特異的に結合する、前記発明1~5のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明7]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、実施例7に示される条件下で、ヒト反復優位糖タンパク質Aと複合化されたヒトproTGFβ1(proTGFβ1-GARP複合体)に対して1nM以下の解離定数(Kd)でヒトproTGFβ1に結合するものである(ここで、前記proTGFβ1-GARP複合体は溶液中にある。)、前記発明1~5のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明8]
a.配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定部位(CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、又は
b.配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含む、単離された抗体、又はその抗原結合フラグメント。
[発明9]
配列番号16及び18のアミノ酸配列からなる群から選択される重鎖配列を含む、単離された抗体、又はその抗原結合フラグメント。
[発明10]
配列番号17及び19のアミノ酸配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、前記発明9に記載の抗体。
[発明11]
a.前記重鎖配列は、配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖配列と対をなす配列番号16のアミノ酸配列を含む、又は
b.前記重鎖配列は、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖配列と対をなす配列番号18のアミノ酸配列を含む、
前記発明10に記載の抗体。
[発明12]
前記抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、又は一本鎖抗体である、前記発明1~11のいずれか一つに記載の抗原結合フラグメント。
[発明13]
前記抗体又は抗原結合フラグメントは、組換え体である、前記発明1~12のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明14]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプである、前記発明1~13のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明15]
前記抗体は、IgG4アイソタイプである、前記発明1~14のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[発明16]
単離された抗体、又はその抗原結合フラグメントであって、
a.配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖CDR1配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖CDR2配列、及び配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖CDR3配列、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖CDR1配列、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖CDR2配列、及び配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖CDR3配列、又は
b.配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖CDR1配列、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖CDR2配列、及び配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖CDR3配列、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖CDR1配列、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖CDR2配列、及び配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖CDR3配列を含む、
前記単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[発明17]
単離された抗体、又はその抗原結合フラグメントであって、
a.配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖配列と対をなす配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖配列、又は
b.配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する軽鎖配列と対をなす配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する重鎖配列を含む、
前記単離された抗体、又はその抗原結合フラグメント。
[発明18]
配列番号16のアミノ酸配列のアミノ酸1-118、及び配列番号18のアミノ酸配列のアミノ酸1-121からなる群から選択される重鎖可変領域配列を含む、単離された抗体、又はその抗原結合フラグメント。
[発明19]
配列番号17のアミノ酸配列のアミノ酸1-107、及び配列番号19のアミノ酸配列のアミノ酸1-110からなる群から選択される軽鎖可変領域配列を含む、前記発明18に記載の抗体。
[発明20]
a.配列番号17のアミノ酸配列のアミノ酸1-107を含む軽鎖可変領域配列と対をなす配列番号16のアミノ酸配列のアミノ酸1-118を含む重鎖可変領域配列、又は
b.配列番号19のアミノ酸配列のアミノ酸1-110を含む軽鎖可変領域配列と対をなす配列番号18のアミノ酸配列のアミノ酸1-121を含む重鎖可変領域配列を含む、前記発明19に記載の抗体。
[発明21]
前記発明1~20いずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド。
[発明22]
前記発明21に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[発明23]
前記発明22に記載のベクターを含む宿主細胞。
[発明24]
抗体又は抗原結合フラグメントを生成するためのプロセスであって、
前記抗体又は抗原結合フラグメントの発現を可能にする条件下で、前記発明23に定義される前記宿主細胞を培養することと、前記抗体又は抗原結合分子を前記培養物から回収することとを含む、
前記プロセス。
[発明25]
前記発明1~20のいずれか一つに記載の抗体、又はその抗原結合フラグメントと、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
[発明26]
前記発明1~20のいずれか一つに記載の抗体、又はその抗原結合フラグメントと、そのパッケージとを含む、キット。
【配列表】