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7128829エボラ感染症の処置用のモノクローナル抗体およびカクテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】エボラ感染症の処置用のモノクローナル抗体およびカクテル
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220824BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220824BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20220824BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
A61K39/395 S
A61P31/14
C07K16/10 ZNA
C12N15/13
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019544840
(86)(22)【出願日】2018-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018018559
(87)【国際公開番号】W WO2018152452
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】15/898,524
(32)【優先日】2018-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/460,200
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519296152
【氏名又は名称】マップ バイオファーマシューティカル、インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515314797
【氏名又は名称】アルバート アインシュタイン カレッジ オブ メディシン
(73)【特許権者】
【識別番号】513010789
【氏名又は名称】アディマブ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルンホルト、 ザカリー、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ザイトリン、ラリー
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラン、カルティーク
(72)【発明者】
【氏名】ウェック、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ローラ
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/156423(WO,A2)
【文献】Definition: Homo sapiens isolate ADI-15946-VH immunoglobulin heavy chain V region mRNA, partial cds,Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accession No.KU602499, 27-FEB-2016 uploaded, [retrieved on 2021-12-27],<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/KU602499.1>
【文献】Definition: Homo sapiens isolate ADI-15946-VK immunoglobulin heavy chain V region mRNA, partial cds,Database DDBJ/EMBL/GenBank [online], Accession No.KU602500, 27-FEB-2016 uploaded, [retrieved on 2021-12-27],<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/KU602500.1>
【文献】Science, 2016, Vol.351, No.6277, pp.1078-1083, Supplementary Materials
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00 - 39/395
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含み、エボラ糖タンパク質に結合する、第一のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、エボラウイルス病の処置用の組成物。
【請求項2】
前記第1のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも2つの種のフィロウイルスの糖タンパク質に結合する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
複数種のエボラ感染症を処置するための請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、主に単一のグリコフォームを含む、請求項1~4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記主に含まれる単一のグリコフォームは、GnGn、G1/G2、およびNaNaのうちの1つである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記主に単一のグリコフォームは、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを欠いている、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
更に、前記エボラ糖タンパク質に結合する第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントを含むか、前記第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントと組み合わせて使用される、請求項1~7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号43に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号46に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号18と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントおよび前記第2の抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも1つが、主に単一のグリコフォームを含む、請求項8~10の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記主に含まれる単一のグリコフォームは、GnGn、G1/G2、およびNaNaのうちの1つである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記主に含まれる単一のグリコフォームは、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを欠いている、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
さらに、エボラ糖タンパク質に結合する第3のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントを含むか、前記第3のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントと組み合わせて使用される、請求項8~13の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第3の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号47に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号49に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号50に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記第3の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号21と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号23と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含み、エボラ糖タンパク質に結合する、第一のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの、エボラウイルス病の処置用の医薬を製造するための使用。
【請求項18】
前記第一のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記第1のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも2つの種のフィロウイルス糖タンパク質に結合する、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
前記医薬は、複数種のエボラ感染症を処置するために用いられる、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、主に単一のグリコフォームを含む、請求項17~20の何れか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記主に含まれる単一のグリコフォームは、GnGn、G1/G2、およびNaNaのうちの1つである、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記主に含まれる単一のグリコフォームは、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを欠いている、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
前記医薬を製造するために、更に、前記エボラ糖タンパク質に結合する第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントを使用する、請求項17~23の何れか1項に記載の使用
【請求項25】
前記第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号43に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号46に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号18と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントおよび前記第2の抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも1つが、主に単一のグリコフォームを含む、請求項24~26の何れか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記主に含まれる単一のグリコフォームは、GnGn、G1/G2、およびNaNaのうちの1つである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記主に含まれる単一のグリコフォームは、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを欠いている、請求項27または28に記載の使用。
【請求項30】
前記医薬を製造するために、さらに、エボラ糖タンパク質に結合する第3のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントを使用する、請求項24~29の何れか1項に記載の使用。
【請求項31】
前記第3の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号47に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号49に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号50に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記第3の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号21と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号23と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項31に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許協力条約(PCT)特許出願
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述
本発明は、NIHによる認可第U19 AI109762号、およびDTRAによる認可第HDTRA-13-C-0018号の政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0002】
先行出願の情報
本出願は、2017年2月17日出願の米国仮特許出願第62/460,200号明細書、および2018年2月17日出願の米国特許出願第15/898,524号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
エボラウイルスは、ヒトおよび非ヒト霊長類(NHP)に感染するフィロウイルス(Filoviridae)科のメンバーであり、出血熱を引き起こし、死亡率は最大90%である。エボラウイルスとして、エボラウイルス(EBOV)、スーダンウイルス(SUDV)、ブンディブギョウイルス(BDBV)、レストンウイルス(RESTV)、およびタイフォレストウイルス(TAFV)が挙げられ、これらは出血熱の病原体である[1、2]。エボラウイルスの概要を、Burk,et al.,Neglected Filoviruses.FEMS Microbiology Reviews,40,494-519(May,2016)内に見出すことができる。そしてウイルス間の差異は、十分に特徴付けられており、かつ当該技術において周知である。1967年から2013年の間に、主に中央アフリカにおいて、31件のフィロウイルス病のアウトブレイクが発生し、約2,000の症例が確認された。これら31件のアウトブレイクのうち、16件はEBOVが原因であった。前例のない2013年から2016年のエボラウイルス病の流行により、最初の14ヶ月で27,000を超える症例と、11,100人の死者が出た。現在、フィロウイルス用の承認された処置またはワクチンはなく、ほとんどの先進的な実験的処置は、EBOVのみに焦点を当てている。他のフィロウイルスが大規模なアウトブレイクを引き起こしたことを考えると、広く保護的な処置オプションが緊急に必要とされる。
【0004】
いくつかの研究により、動物への致死用量のEBOVの実験的接種後に、フィロウイルス糖タンパク質(GP)特異的中和抗体(nAb)が死亡率を低下させ得ることが示されている[3~9]。当該中和抗体の主要な標的であるフィロウイルス表面GPは、3つの高度にグリコシル化されたGP1-GP2ヘテロダイマーで構成されたトリマーである。GP1サブユニットは、さらにベース、ヘッド、グリカンキャップ、およびムチン様ドメインに分割され得る[10]。ウイルス侵入中、ムチン様ドメインおよびグリカンキャップは、細胞膜上に存在する複数の宿主付着因子への結合を媒介する。ウイルスがマクロピノサイトーシス[11、12]によって宿主細胞に侵入した後、GPは、宿主のプロテアーゼによって切断されて、ムチン様ドメインおよびグリカンキャップを含む、GP1サブユニットの質量の約80%が除去される[13、14]。エンドソーム内でのGPの切断後、GP上の受容体結合部位が曝露されてから、GP1ヘッドが、その受容体であるニーマンピックC1(NPC1)タンパク質に結合することができる[13、15、16]。GPのその後の立体構造変化により、ウイルス膜とエンドソーム膜間の融合が促進される。切断されたGP種(以下、GPCL)によるNPC1の認識が、1つ以上の知られていない宿主シグナルと共に、GPリフォールディング、およびそれに結合する膜融合反応をトリガーすると提唱されている。エンドソームGP→GPCL切断は、GP-NPC1結合の前提条件であるので、フィロウイルスの侵入に不可欠である。
【0005】
グリカンキャップおよびムチン様ドメイン上のグリカンの高密度クラスタリングはおそらく、EBOV GPの表面の多くを、体液性免疫監視から保護して、EBOV GPタンパク質上に、nAbがグリカンによる干渉なしに結合し得る部位を少数しか残さない[17]。フィロウイルス感染に対する体液性応答に関する知識のほとんどは、EBOV GPを認識するマウスAbの研究に由来してきた。当該研究から、マウス中和Abは、上部の高度にグリコシル化されたドメインまたは下部の領域(GP1ベース)(ウイルス膜と宿主膜との融合を駆動する再配置が起こる場)において曝露されたペプチドを選択的に標的とすることが明らかとなっている[18]。融合中におそらく再配置する膜近位外部領域(membrane proximal external region:MPER)サブドメインのタンパク質特性を標的とするAbは、同定されていない。最初に報告されたヒトEBOV GP特異的モノクローナル抗体(mAb)であるKZ52は、生存者から得られた骨髄RNAから構築されたファージディスプレイライブラリから得られた[19]。KZ52は、GPのベースの部位に結合して、EBOVを中和する。これはおそらく、GP→GPCL切断をブロックし、かつ/またはウイルス膜とエンドソーム膜との融合に必要とされる立体構造変化を阻害することによるものである[10]。また、一部のマウスAbが、エボラウイルスGPのベース領域に結合することが報告されている[20、21]。
【0006】
最も分岐したエボラウイルス種(EBOVおよびSUDV)は、56%のGP配列同一性を示す。フィロウイルスGP間の配列同一性は、受容体結合領域(RBR)内[23]、そしてGP2内で最も高く、共有エピトープがこれらのドメイン内に存在する可能性があることを示唆している。げっ歯類および非ヒト霊長類(NHP)において保護効力があるEBOV GPに対するいくつかのmAbが報告されている[3、5~9、24、25]。中和抗体はまた、最近開発されたげっ歯類モデルにおいて効力があったSUDVについて記載されている[20、26]。しかしながら、これらの抗体は、KZ52と同じエピトープに結合し、そしてKZ52と同様に、ウイルス種特異的であり、交差中和特性も交差保護特性も欠いている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書中に記載さるのは、インビトロおよびインビボの双方でエボラウイルスを中和することができるいくつかのmAbである。驚くべきことに、開示されるヒト抗体は、全エボラウイルス(pan-ebolavirus)交差反応性および交差中和活性を有するので、エボラウイルスの知られている全ての種に結合してこれらを中和することができる。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、患者においてエボラウイルスに結合してこれを中和することができる新規なモノクローナル抗体が提供される。本発明の特定の実施形態において、前記モノクローナル抗体は、少なくとも2つの異なる種に属するエボラウイルス由来のGPタンパク質に結合することによって、ウイルス粒子の感染性を中和し、または感染細胞を標的として破壊する。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、以下の重鎖CDR3アミノ酸配列および軽鎖CDR3アミノ酸配列を含むモノクローナル抗体が提供される:
【0010】
mAb PE-87-heavy CDR3:配列番号1;mAb PE-87-light CDR3:配列番号2
【0011】
mAb PE-24-heavy CDR3:配列番号3;mAb PE-24-light CDR3:配列番号4
【0012】
mAb PE-47-heavy CDR3:配列番号5;mAb PE-47-light CDR3:配列番号6
【0013】
mAb PE-16-heavy CDR3:配列番号7;mAb PE-16-light CDR3:配列番号8
【0014】
mAb PE-05-heavy CDR3:配列番号9;mAb PE-05-light CDR3:配列番号10
【0015】
一実施形態において、PE-87重鎖CDR3およびPE-24重鎖CDR3内の重要な残基は、D95、W99、およびY100C(Kabatナンバリング)である。
【0016】
本発明の別の実施形態において、フィロウイルス感染の生存者の末梢B細胞から、(以下の)方法に記載されるようにして単離された抗体は、VH領域ヌクレオチド配列およびVL領域ヌクレオチド配列が、結合能力の増強をmAbにもたらす修飾V領域アミノ酸をコードするように修飾されている。以下を含む、組換え抗体を調製する方法が提供される:以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を用意することと
【0017】
PE-24、PE-87、PE-47、PE-16、PE-64、およびPE-05のVHヌクレオチドおよびVLヌクレオチド;
【0018】
前記核酸配列を、前記ペプチドの抗原結合を損なうことなく、前記核酸配列によってコードされるアミノ酸残基の少なくとも1つ~約30個未満が変更または欠失されるように修飾することと;前記修飾ヌクレオチド配列を発現させ、かつ回収すること。
【0019】
さらに他の実施形態において、本明細書中に記載されるモノクローナル抗体のあらゆる免疫反応性フラグメントが、当該技術において知られている手段を用いて、例えば、酵素分解または好都合の制限酵素を用いてネステッド欠失(nested deletions)を調製することによって、調製される。
【0020】
本発明の別の態様は、開示されるmAb配列の修飾変異体を提供することであり、当該配列は、mAbの治療有効性を増大させるように親和性成熟(affinity matured)しており、またはそれ以外では突然変異している。
【0021】
ゆえに、本発明の一実施形態は、エボラの処置用の組成物であって:配列番号12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号14と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含む第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;ならびに薬学的に許容される賦形剤またはキャリアの治療的に有効な組合せを含む組成物を提供することである。
【0022】
本発明の別の実施形態は、前記第1のモノクローナル抗体が、フリボウイルス(Flivovirus)糖タンパク質の少なくとも2種に結合する組成物を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態は、第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントが、主に単一のグリコフォームを含む組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、GnGn、G1/G2、およびNaNaの1つである組成物を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを実質的に欠く組成物を提供することである。
【0026】
本発明の第2の実施形態は、エボラの処置用の組成物を提供することであり、当該組成物は:
a.配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号18と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
b.配列番号21と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号23と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
c.配列番号29と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号31と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
d.配列番号33と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号35と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
e.配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号13と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント
からなるリストから選択される第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;ならびに薬学的に許容される賦形剤またはキャリアの治療的に有効な組合せを含み;前記第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、フリボウイルス糖タンパク質の少なくとも2種に結合する。
【0027】
本発明の別の実施形態は、第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントが、主に単一のグリコフォームを含む組成物を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、GnGn、G1/G2、およびNaNaの1つである組成物を提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを実質的に欠く組成物を提供することである。
【0030】
本発明の第3の実施形態は、エボラの処置用の組成物を提供することであり、当該組成物は:
a.配列番号12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号14と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
b.配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号18と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
c.配列番号21と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号23と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
d.配列番号29と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号31と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
e.配列番号33と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号35と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
f.配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号13と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント
からなるリストから選択される第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントであって、エボラ糖タンパク質に結合する第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;ならびに薬学的に許容される賦形剤またはキャリアの治療的に有効な組合せを含む。
【0031】
本発明の別の実施形態は、第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントおよび第2の抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも1つが、主に単一のグリコフォームを含む組成物を提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、GnGn、G1/G2、およびNaNaの1つである組成物を提供することである。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを実質的に欠く組成物を提供することである。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態は、前記治療的に有効な組合せがさらに、エボラ糖タンパク質に結合する第3のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントを含む組成物を提供することである。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態は、前記第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントが、配列番号12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号14と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含み;前記第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントが、配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号18と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含む、組成物を提供することである。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態は、前記治療的に有効な組合せがさらに、第3のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントであって、配列番号21と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号23と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含む第3の抗体または抗原結合フラグメントを含む、組成物を提供することである。
【0037】
本発明の第4の実施形態は、患者におけるフリボウイルス感染症の少なくとも1種を処置する方法であって:処置を必要とする患者を同定することと;当該患者に、第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントであって:
i.配列番号12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号14と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
ii.配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号18と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
iii.配列番号21と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号23と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
iv.配列番号29と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号31と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
v.配列番号33と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号35と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
vi.配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体;ならびに配列番号13と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、およびその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント
からなるリストから選択される第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;ならびに薬学的に許容される賦形剤またはキャリアの組合せを含む治療有効量の組成物を投与することと
を含む方法を提供する。
【0038】
本発明の別の実施形態は、患者が哺乳類である方法を提供することである。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態は、第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントが、主に単一のグリコフォームを含む方法を提供することである。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを実質的に欠く方法を提供することである。
【0041】
本発明の第5の実施形態は、エボラの処置用の組成物であって:
a.配列番号53に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号55に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と少なくとも90%同一の重鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体;ならびに配列番号56に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号58に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
b.配列番号41に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号43に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と少なくとも90%同一の重鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体;ならびに配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号46に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
c.配列番号47に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号49に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と少なくとも90%同一の重鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体;ならびに配列番号50に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号51に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号52に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
d.配列番号59に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号61に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と少なくとも90%同一の重鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体;ならびに配列番号62に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号64に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
e.配列番号65に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号67に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と少なくとも90%同一の重鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体;ならびに配列番号68に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号70に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;
f.配列番号71に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号72に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号73に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域と少なくとも90%同一の重鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体;ならびに配列番号74に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号75に記載のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号76に記載のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域と少なくとも90%同一の軽鎖可変領域、ならびにその親和性成熟変異体を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント
からなるリストから選択される第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント;ならびに薬学的に許容される賦形剤またはキャリアの治療的に有効な組合せを含む組成物を提供することである。
【0042】
本発明の別の実施形態は、第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントであって、エボラ糖タンパク質に結合する第2のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントをさらに含む組成物を提供することである。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態は、前記第1のモノクローナル抗体が、フリボウイルス糖タンパク質の少なくとも2種に結合する組成物を提供することである。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態は、第1のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントが、主に単一のグリコフォームを含む組成物を提供することである。
【0045】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、GnGn、G1/G2、およびNaNaの1つである組成物を提供することである。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態は、主に単一のグリコフォームが、フコースおよびキシロースの少なくとも1つを実質的に欠く組成物を提供することである。
【0047】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、以下の説明および添付の図面と併せて考慮すると、よりよく認識かつ理解されるであろう。しかしながら、以下の説明は、本発明の種々の実施形態およびそれらの多数の具体的な詳細を示しているが、限定ではなく例示として与えられていると理解されるべきである。本発明の精神から逸脱することなく、本発明の範囲内で多くの置換、修正、追加、および/または再配置を行うことができ、そして本発明は、そのような全ての置換、修正、追加、および/または再配置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
表1.抗エボラmAbのCDRを含むアミノ酸残基。
【0049】
図1】本発明の一実施形態の親和性成熟変異体についての中和曲線を示す。
【0050】
図2】本発明のモノクローナル抗体の種々の実施形態の、EBOV-GP上の結合部位を示す。
【0051】
図3】本発明の2つのモノクローナル抗体に対するエスケープ突然変異耐性をもたらす突然変異の位置を示す。
【0052】
図4】エスケープ突然変異体に対して実行した中和アッセイを示す。
【0053】
図5】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染モルモットについての生存データを示す。
【0054】
図6】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染モルモット由来の免疫系応答データを示す。
【0055】
図7】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染モルモットについての生存データを示す。
【0056】
図8】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染モルモットについての生存データを示す。
【0057】
図9】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染モルモットについての生存データを示す。
【0058】
図10】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染非ヒト霊長類についての生存データを示す。
【0059】
図11】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染非ヒト霊長類についての生存データを示す。
【0060】
図12】本発明の特定の実施形態で処置したエボラウイルス感染非ヒト霊長類についての生存データを示す。
【0061】
図13】様々な生成方法を用いて作成した本発明の特定の実施形態についての中和曲線を示す。
【0062】
表2は、末梢B細胞からの抗GP抗体単離の効率を示す。
【0063】
表3は、様々なエボラウイルス種に対する候補全エボラウイルスmAbの交差反応性を示す。反応性を、ELISAによって測定した。
【0064】
表4は、候補全エボラウイルスmAbのインビトロ中和活性および親和性を示す。
【0065】
表5は、EBOVに感染させ、その後上記のモノクローナル抗体で処置したマウスが、PBSで処置したマウスと比較して、生存率の増大を示したことを示す。
【0066】
表6は、交差中和ヒトmAbによるrVSV-GP中和の概要である。
【0067】
表7は、交差中和ヒトmAbによる真正の(authentic)エボラウイルス中和の概要である。
【0068】
表8は、示した突然変異をCDR-H3ループ内に有する成熟PE-87によるEBOV GP TMの認識についてのK値を、BLIによって判定したことを示す。95%の信頼区間を、各結合定数について報告する。示した突然変異をCDR-H3ループ内に有する成熟PE-87による、エボラウイルスGPを有するrVSVの中和についてのIC50値。
【0069】
表9は、EBOVまたはSUDVによる感作誘発(challenge)後のマウスのmAb保護を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
別に定義されない限り、本明細書中で用いられる技術用語および科学用語は全て、本発明が属する当該技術の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似の、または同等のあらゆる方法および材料が、本発明の実行または試験に用いられ得るが、好ましい方法および材料が、次に記載される。先で、そして以下で言及される刊行物は全て、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0071】
定義:
本明細書中で用いられる「中和抗体」(NAb)は、形成されたウイルス粒子を破壊することができ、あるいはウイルス粒子の形成を阻害し、またはウイルス粒子による哺乳類細胞への結合、もしくはウイルス粒子による哺乳類細胞の感染を予防することができる抗体、例えばモノクローナル抗体を指す。本明細書中で用いられる「診断抗体」または「検出抗体」(“detection antibody” or “detecting antibody”)は、サンプル内の抗原性標的の存在を検出することができる抗体、例えばモノクローナル抗体を指す。当業者によって理解されるように、そのような診断抗体は、好ましくは、その抗原性標的に対して高い特異性を有する。本明細書中で用いられる「ヒト抗体」は、ヒトのB細胞から、または直接、血清抗体の配列から単離された抗体を指す。
【0072】
「治療的に有効な」処置は、所望の効果をもたらすことができる処置を指す。そのような効果として、以下に限定されないが、生存率の向上、症状の存在または重症度の軽減、回復までの時間の短縮、および初期感染の予防が挙げられる。mAbの「治療的に有効な」並べ換え(permutation)は、患者データのルーチンの分析によって検出可能な様式で、上記の特性のいずれかを強化し得る。特定の実施形態において、そのような治療的に有効な突然変異として、mAbの安定性、溶解性、または生成を向上させる突然変異が挙げられ、mAb配列のフレームワーク領域に対する突然変異が挙げられる。
【0073】
本明細書中で用いられる「免疫反応性フラグメント」は、この文脈において、標的抗原に対する許容可能な程度またはパーセンテージの結合活性を保持する野生型抗体または親抗体と比較して、長さが短縮された抗体フラグメントを指す。当業者によって理解されるように、許容可能な程度は、意図される用途によって決まることとなる。
【0074】
本明細書で用いられるmAbは、少なくとも2種、好ましくはそれ以上のエボラウイルス種に結合することができるならば、「全エボラ」結合特性がある。
【0075】
基本的な抗体構造単位は、テトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一ペアで構成されており、各ペアは、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識を担う約100~110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクタ機能を担う定常領域を定義する。
【0076】
軽鎖は、カッパおよびラムダに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、そして抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEと定義する。各アイソタイプ内には、IgG、IgG、IgG、IgG等のサブタイプが存在し得る。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12個またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖もまた、約3個またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域を含む。定常領域の特定の同一性、アイソタイプ、またはサブタイプは、本発明に影響を与えない。各軽/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0077】
ゆえに、無傷抗体は、2つの結合部位を有する。鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域が結合した、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般的な構造を示す。各ペアの2つの鎖由来のCDRは、特定のエピトープへの結合を可能にするように、フレームワーク領域によってアラインされている。N末端からC末端まで、軽鎖および重鎖の双方が、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、周知の取決め[Kabat「Sequences of Proteins of Immunological Interest」National Institutes of Health,Bethesda,Md. 1987 and 1991;Chothia,et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Chothia et al.,Nature 342:878-883(1989)]に従う。
【0078】
本発明の別の実施形態において、主に単一のグリコフォームを含有するモノクローナル抗体の糖鎖操作(glycoengineered)変異体が提供される。このグリカンは、GnGn(GlcNAc-Man-GlcNAc)、モノまたはジガラクトシル化(Gal(1/2)-GlcNAc-Man-GlcNAc)(以下、モノガラクトシル化=「G1」、ジガラクトシル化=「G2」、および任意の割合での2つの組合せ=「G1/G2」)、モノまたはジシアル化(NaNa(1,2)-Gal(1/2)-GlcNAc-Man-GlcNAc)(フコースもキシロースもほとんど、または全く含有しない)であり得る。主に単一のグリコフォームは、抗体溶液中に存在する全てのグリコフォームの半分超(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%超)を表すあらゆるグリコフォームである。
【0079】
RAMPシステムは、抗体、抗体フラグメント、イディオタイプワクチン、酵素、およびサイトカインの糖鎖工学に用いられている。Mapp(5、6)およびその他(7、8)によって、RAMPシステムにおいて多数の抗体が生成されてきた。これらは主にIgGであるが、IgM(9、10)が挙げられる他のアイソタイプが糖鎖操作されてきた。糖鎖工学はまた、RAMPシステムにおいて、ヒト酵素にも拡張されてきた(11、12)。RAMPシステムは、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属感染から収穫および精製までのターンアラウンドタイムが迅速であるので(13)、患者固有のイディオタイプワクチンが、非ホジキンリンパ腫について、臨床試験に用いられている(7)。
【0080】
糖鎖工学について、mAb cDNAを含有する組換えアグロバクテリウム(Agrobacterium)属が、N.ベンサミアーナ(N.benthamiana)の感染に、適切なグリコシル化アグロバクテリア(Agrobacteria)と併用されて、所望のグリカンプロファイルがもたらされる。野生型グリカン(すなわち、天然の、植物がもたらすグリコシル化)について、野生型N.ベンサミアーナ(N.benthamiana)に、抗M2e cDNAを含有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)属のみが接種される。GnGnグリカンについて、同アグロバクテリウム(Agrobacterium)属が、フコシルもキシロシルトランスフェラーゼもほとんどまたは全く含有しない植物(XF植物)に接種するのに用いられる。ガラクトシル化グリカンについて、XF植物に、mAb cDNAを含有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)属、およびバイナリアグロバクテリウム(Agrobacterium)属ベクターに含有されるβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ発現用のcDNAを含有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)属が接種されて、TMVベクターおよびPVXベクターとの組換えが回避される(14)。シアル化グリカンについて、6つの追加遺伝子がバイナリベクター内に導入されて、哺乳類のシアル酸生合成経路が再構成される。当該遺伝子は、UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ、N-アセチルノイラミン酸ホスファートシンターゼ、CMP-N-アセチルノイラミン酸シンセターゼ、CMP-NeuAcトランスポータ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、およびα2,6-シアリルトランスフェラーゼ(14)である。
【0081】
N-グリコシダーゼF(PNGase F)による消化、およびその後の遊離グリカンの誘導体化によるN-結合グリカンの放出に関与する糖鎖操作mAbの糖分析が、アントラニル酸(2-AA)により達成される。2-AA誘導体化オリゴ糖は、順相HPLCを介して、あらゆる過剰試薬から分離される。カラムは、2-AA標識グルコースホモポリマーおよびグリカン標準で較正される。試験サンプルおよび2-AA標識グリカン標準は、蛍光分析で検出される。グリコフォームは、グルコース単位(GU)値を、2-AA標識グリカン標準の値と比較することによって、または理論GU値と比較することによって、割り当てられる(15)。グリカン構造の確認は、LC/MSで達成されてきた。
【0082】
RAMPシステムは、種々の糖鎖操作mABおよび野生型mABを生成する効果的な方法である一方、他の発現システムが、同じ結果を達成するのに用いられ得ることが認識されよう。例えば、哺乳類細胞株(例えば、CHOまたはNSO細胞[Davies,J.,Jiang,L.,Pan,L.Z.,LaBarre,M.J.,Anderson,D.,and Reff,M.2001.Expression of GnTIII in a recombinant anti-CD20 CHO production cell line:Expression of antibodies with altered glycoforms leads to an increase in ADCC through higher affinity for FCyRIII.Biotechnol Bioeng 74:288-294])、酵母細胞(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)[Gerngross T.Production of complex human glycoproteins in yeast.Adv Exp Med Biol.2005;564])、および細菌細胞(例えば大腸菌(E.Coli))が、そのようなmABを生成するのに用いられている。
【0083】
本明細書に記載されるのは、PE-24、PE-87、PE-47、PE-16、PE-64、およびPE-05と呼ばれるmAbであり、これらは驚くべきことに、全エボラ中和特性を示した。本発明の好ましい抗体は、言及されるアミノ酸配列と十分に同一のアミノ酸配列を有するmAbを含む。「十分に同一の」によって意図されるのは、当該技術において知られているアラインメントプログラムの1つを用いて、参照配列と比較して、少なくとも約60%または65%の配列同一性、約70%または75%の配列同一性、約80%または85%の配列同一性、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0084】
以下の配列は、mAb PE-47を生じさせるための、mAb PE-64 VHおよびVLアミノ酸に対するアミノ酸修飾を示す(修飾は太字で示され、CDR配列には下線が引かれている)。
【0085】
mAb PE-64 VHアミノ酸:配列番号11
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNAWMSWVRQAPGKGLEWVGRIKSKTDGGTIDYAAPVKGRFTISRDDSKNTVYLQMTSLKTEDTAVYYCTTYTEDMRYFDWLLRGGETFDYWGQGTLVTVSS
【0086】
mAb PE-47 VHアミノ酸:配列番号12
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNAWMSWVRQAPGEGLEWVGRIKSKTDGGTIDYAAPVKGRFTISRDDSKNTVYLQMTSLKTEDTAVYYCTTYTEDMQYFDWLLRGGETFDYWGQGTLVTVSS
【0087】
mAb PE-64 VLアミノ酸:配列番号13
DIRLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASHYISTYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASNLQSGVPSRFSGSGFGTDFSLTISSLQPEDFATYHCQQSYSTPGRYTFGQGTKVEIK
【0088】
mAb PE-47 VLアミノ酸:配列番号14
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQYISTYLNWYQQKPGKAPKLLIYAAYNLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPGRYTFGQGTKVEIK
【0089】
以下に示される抗体は、西アフリカにおける2014年のエボラウイルスのアウトブレイクの生存者の末梢B細胞から単離された(CDRアミノ酸が、表1に開示されている)。
【0090】
PE-87 VHアミノ酸:配列番号15
【0091】
PE-87 VHヌクレオチド:配列番号16
【0092】
代替のPE-87 VHアミノ酸配列は、以下の通りである:配列番号17(変更は、太字および下線で示されている)
【0093】
VQLVSGGGLVQPGGSLRVSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGLGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDHRVWAAGYHFDYWGQGLVTVSS
【0094】
PE-87 VLアミノ酸:配列番号18
【0095】
PE-87 VLヌクレオチド:配列番号19
【0096】
代替のPE-87 VLアミノ酸配列は、以下の通りである:配列番号20(変更は、太字および下線で示されている)
【0097】
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSISSWLAWYQQKPGEAPKLLISDASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQQYYSSPTFGGGTKVEIK
【0098】
PE-24 VHアミノ酸:配列番号21
【0099】
PE-24 VHヌクレオチド:配列番号22
【0100】
PE-24 VLアミノ酸:配列番号23
【0101】
PE-24 VLヌクレオチド:配列番号24
【0102】
PE-47 VHアミノ酸:配列番号25
【0103】
PE-47 VHヌクレオチド:配列番号26
【0104】
PE-47 VLアミノ酸:配列番号27
【0105】
PE-47 VLヌクレオチド:配列番号28
【0106】
PE-16 VHアミノ酸:配列番号29
【0107】
PE-16 VHヌクレオチド:配列番号30
【0108】
PE-16 VLアミノ酸:配列番号31
【0109】
PE-16 VLヌクレオチド:配列番号32
【0110】
PE-05 VHアミノ酸:配列番号33
【0111】
PE-05 VHヌクレオチド:配列番号34
【0112】
PE-05 VLアミノ酸:配列番号35
【0113】
PE-05 VLヌクレオチド:配列番号36
【0114】
PE-64 VHアミノ酸:配列番号37
【0115】
PE-64 VHヌクレオチド:配列番号38
【0116】
PE-64 VLアミノ酸:配列番号39
【0117】
PE-64 VLヌクレオチド:配列番号40
【表1】
【0118】
本発明の特定の実施形態において、先のmAb配列は、親和性成熟して、結合が増強し、またはそれ以外では抗体の治療効力が向上している。一実施形態において、軽鎖多様化プロトコルを介して、そしてその後、以下に記載される重鎖および軽鎖の可変領域中への多様性の導入によって、抗体の最適化を実行した。
【0119】
CDRL1およびCDRL2の選択:単一抗体のCDRL3を、1×10の多様性のCDRL1変異体およびCDRL2変異体を有する既製のライブラリ中に組み換えて、1ラウンドのMACSおよび4ラウンドのFACSによる選択を実行した。各FACSラウンドについて、滴定量のエボラウイルスGP(例えばSUDV GP)を用いてライブラリに親和性圧力をかけて(affinity pressured)、ソーティングを実行して、所望の特性を備えた母集団を得た。
【0120】
VH Mutの選択:エラープローンPCR(error prone PCR)を介して、重鎖可変領域(VH)に変異を誘発した。次に、この変異誘発したVHおよび重鎖の発現ベクターを、親の軽鎖プラスミドを既に含有する酵母中に形質転換することによって、ライブラリを作成した。2ラウンドのFACSソーティングを用いて、以前のサイクルと同様の選択を実行した。各FACSラウンドについて、滴定量のスーダンGPを用いてライブラリに親和性圧力をかけて、ソーティングを実行して、所望の特性を備えた母集団を得た。
【0121】
ADI-23774(PE-47)は、最も向上したHC(VH mut選択由来)を、最も向上したLC(L1/L2選択由来)と組み合わせることによって生じた。
【0122】
図1は、親(PE-64)、最良のVH突然変異体、最良のVL突然変異体、および最良のVH/VL突然変異体(PE-47)の中和能の増強を示している。
【0123】
当業者であれば、本明細書中に記載されるmAb配列の所望の特性を迅速かつ効率的に向上させるのに、親和性成熟のこれらの、または代替の方法が用いられ得ること、そして当該技術を用いて開発された潜在的なあらゆる変異体が、所望の特性を備えているかを同定するのに、ルーチンの分析ツールが用いられ得ることが明らかであろう。
【0124】
本抗体は、エボラ糖タンパク質に対する親和性および結合力が高く、このことは、特定の実施形態において、当該抗体が、エボラウイルス感染症の個人に投与される治療薬として、エボラウイルス感染を予防するための予防薬として、または高感度の診断ツールとして用いられ得ることを意味する。特に、PE-87およびPE-47が、GP→GPCL切断および受容体係合(receptor engagement)に続く工程にて主に作用することを発見した。エンドソームで生じたGPCL種(単独、またはNPC1との複合体)は、当該mAbの推定最終標的である。驚くべきことに、GPCLへのGP切断により、PE-64、PE-87、およびPE-47の抗ウイルス力が、50~200倍増強した。併せて、これらの結果は、エンドサイトーシス経路の深部で生じる切断されたGP種を標的として中和する能力において、広く中和するmAb PE-87およびPE-47が、前述の単一特異的mAb(KZ52、c2G4、および4G7)と異なることを示唆している。逆に、後者のmAbは、GP→GPCL切断工程にて、かつ/または当該工程前に主に作用するようである。PE-64は、二重の挙動を示し、膜融合工程にて、または当該工程の近くで、上流でGP切断をブロックし、かつ下流で1つ以上のGPCL様種を標的にするように作用し得る。致死的エボラウイルス感作誘発の3つの小動物モデルにおいて、これらの広く中和するヒトmAbの保護効力を評価した。最初に、野生型(WT)BALB/cマウスを、マウス適応EBOV(EBOV-MA)に曝してから、感染後2日目にて各mAbの単回用量(300μg/動物)を投与した。交差中和mAbが、このストリンジェントな後曝露セッティングにおいて、EBOVから高度に(≧80%)保護的であり、mAb処置動物では体重減少がほとんど、または全く見られなかった。
【0125】
図2は、広く中和するエボラウイルスmAbの陰性染色EMの再構築を示している。抗原表面および対応する注目の構造領域を示すエボラウイルスGPの構造(PDB ID:5JQ3に基づく)。無秩序な(disordered)ムチンドメイン(破線)、GP1、GP2、融合ループ、グリカンキャップイン、CHR2領域、およびN563結合グリカン。上面図および側面図は、EBOV GPと複合したPE-87、PE-47、PE-24、およびPE-16(濃い灰色で示す)のFabモデルの陰性染色EM 3D再構築について示す。
次に、SUDV感作誘発用のI型インターフェロンα/β受容体欠損マウスモデルにおけるNAbを評価した。マウスを、WT SUDVに曝してから、感染後1日目および3日目に、各NAbを投薬した(300μg/動物/用量)。全エボラウイルスmAb PE-87およびPE-47は、PBS対照群と比較して、≧95%の生存率および大幅な体重減少をもたらした。対照的に、双方とも弱いSUDV中和剤であるPE-16およびPE-64は、SUDVからの保護をほとんど、または全く実現しなかった。
【0126】
最後に、BDBV感作誘発用に唯一記載された非NHPモデルである飼育フェレットにおける、2つの全エボラウイルスヒトmAbであるPE-87およびPE-47の抗BDBV効力を試験した。動物は、各NAbの2用量を受けた(感作誘発後3日目および6日目に、動物1頭あたりそれぞれ15mgおよび10mg)。以前に観察されたように、BDBV感染は、一様に致死的であり、PBS処置動物は、感作誘発後8~10日の間に死亡した。対照的に、双方のmAbは、高い有意水準の生存をもたらした(PE-87について4頭中3頭;PE-24について4頭中2頭)。さらに、ピークウイルス血症レベルは、mAb処置および生存結果と相関しており、生存動物において観察されたウイルス力価は、感染により死亡した動物と比較してより低く(p<0.001)、そしてmAb処置動物では、PBS処置対照と比較してより低かった(p<0.001)。また、ウイルス血症は、PE-47を受けた動物と比較して、PE-87を受けた動物においてより低い傾向があったが、この差異は、統計的有意性に達しなかった。要するに、発明者らの発見は、全エボラウイルスmAbであるPE-87およびPE-47が、ヒトにおける致死的疾患のアウトブレイクに現在関連する3つの分岐したエボラウイルスによる感作誘発からの曝露後保護をもたらすことができることを示している。
【0127】
本発明の別の実施形態において、本発明のmAbは、エボラウイルス感作誘発の非ヒト霊長類モデルに対して完全な保護を実現することが示された。EBOVウイルスの致死的感作誘発への曝露の4日後、アカゲザルの一群を、1用量のNAbカクテル(PE-87およびPE-47をそれぞれ25mg/kg含む)または2用量の同NAbカクテル(一方は、感染後4日目に50mg/kgのNAbを含み、もう一方は、感染後7日目に25mg/kgのNAbを含んだ)のいずれかで処置した。以前に観察されたように、EBOV感染は、一様に致死的であり、PBS処置動物は全て、感染後7日目までに死亡した。対照的に、NAb処置群由来の全ての動物は生存し、qRT-PCRを介してアッセイした場合、初期処置の10日後の処置群の血中に、検出可能なウイルスRNAは存在しなかった。
【0128】
PE-87およびPE-47のNAbカクテル(本明細書でMBP134とも呼ぶ)を、以下のようにさらに試験した。最初に、MBP134の個々の成分に耐性のあるエスケープ突然変異体を生成した。エスケープ突然変異体の選択を、試験抗体の存在下でのrVSV-GP粒子の連続継代によって実行した。手短に言えば、ウイルスの連続3倍希釈液を、中和アッセイに由来するIC90値に対応する抗体の濃度と1時間プレインキュベートしてから、12ウェルプレート中のVero細胞のコンフルエントな単層に、二反復で加えた。感染を完了まで進行させて(目による>90%の細胞死)、ウイルス接種原の最高希釈(すなわち最小量)を受けた感染ウェルから上清を収穫した。先のウイルス含有上清による抗体選択下での3連続の継代後、継代4由来の上清を、ウイルス中和エスケープについて試験した。耐性が明らかであれば、個々のウイルスクローンをVero細胞上でプラーク精製して、そのGP遺伝子配列を、以前に記載されるようにして(Wong et al.,2010)決定した。
【0129】
図3は、PE-47(MBP047)およびPE-87(MBP087)のそれぞれに最も耐性のある2つのエスケープ突然変異体について、ウイルス糖タンパク質の3次元構造内のrVSV-GPに対する突然変異、およびその相対位置を示す。すなわち、PE-87エスケープ突然変異体は、G528E置換を含有した一方、PE-47エスケープ突然変異体は、N514D置換を含有した。
【0130】
図4は、上述のエスケープ突然変異体および野生型SUDVウイルスの、濃度PE-47およびPE-87に対する用量応答曲線を示す。重要なのは、マルチmAbカクテルの効力に関して、一方のmAbに対する耐性をもたらしたエスケープ突然変異は、他方のmAbによって中和を大幅に増強したことである。したがって、本発明の特定の実施形態において、ウイルス耐性発現のリスクを有意に引き下げる複数の抗体の組合せが提供される。
【0131】
上記のように、実質的に単一のグリカンを含み、かつフコースを欠く抗体は、患者において効力の増強を示す。脱フコシル化(afucosylated)MBP134が哺乳類において効力を増大させるかを判定するために、カクテルのフコシル化バージョンおよび脱フコシル化バージョンを用いて、致死用量のEBOVによる感作誘発を行ったモルモットを処置した。モルモットは全て、ベンダーの説明の通り、健康で免疫力があった。モルモットは全て、薬物未経験かつ実験未経験であった。動物を、食物および水の消費について毎日監視して、種のガイドラインに従って環境エンリッチメントを施した。動物のクリーニングを1週あたり3回完了した(ケージおよび床敷材の完全な交換を含んだ)。動物を、IVC Alternative Design由来の大きな靴箱ケージ内で、ケージあたり2~3頭を飼育した。各ユニットを、HEPAブロワーシステムで換気する。4~6週齢の雌ハートレーモルモット(250~300g)を実験群にランダムに割り当てて、1mLのDMEM中1000×LD50のモルモット適応EBOV/MayingaでIPを介して感作誘発を行った。MBP134または脱フコシル化MBP134-Nのいずれかを、指定の時点および用量にて、6頭のモルモット/群(n=6)にIP投与した。4頭/群(n=4)の対照モルモットにPBS処置を施した。動物を、疾患の臨床徴候、生存、および体重変化について、15~16日間観察した一方、生存をさらに12日間監視した。
【0132】
図5は、種々の用量での脱フコシル化対フコシル化MBP134の生存曲線を示す。脱フコシル化カクテルは、試験した最低投薬量でも、劇的に向上した生存を示した。さらに、動物から採取した血液は、図6に示すように、脱フコシル化したPE-47およびPE-87による処置に応答して、フコシル化対応物、ならびに他の抗EBOV mAbであるc13C6(これも脱フコシル化した)および2G12と比較して、免疫反応が有意に増大したことを示した。ゆえに、本発明の特定の実施形態において、フコースを実質的に欠くモノクローナル抗体が提供される。
【0133】
エボラウイルスの複数の株を中和する脱フコシル化MBP134の能力を判定するために、致死用量のSUDVに感染させたモルモットの用量ダウン研究を実施した。図7に示すように、感染の3日後、そして4日後に処置した動物は、100%の生存率であった一方、5dpiでの処置でも生存率は劇的に増大した。より低い用量のMBP134が4dpiにて効果的であるか、そしてより高い用量が、5dpiにて投与した場合に生存率を上げるかを判定するために、更なる試験を実施した。図8に示すように、4dpiにて投与したMBP134の用量引下げは、処置した動物の生存率を、完全ではないが優れたものにした。さらに、5dpiにて投与した用量を2倍にすると、感染した動物は全て生存した。本発明の特定の実施形態において、感染後のより後の日のモノクローナル抗体の投薬量の増大により、宿主動物は、感染に関連するウイルス負荷の増大を克服することができる。
ゆえに、本発明の特定の実施形態において、患者は、有効用量のモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の組合せで処置される。有効用量として、以下に限定されないが、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、および100mg/kgが挙げられる。
【0134】
本明細書中で開示されるモノクローナル抗体の、哺乳類において複数の株のエボラウイルスから保護する能力をさらに調査するために、雌フェレットに種々の株のエボラウイルスを感染させて、様々な投薬量のMBP134で処置した。体重0.75~1kgの雌フェレットを、研究毎にケージあたり2~3頭飼育した。全ての手順に先立って、ケタミン-アセプロマジン-キシラジンカクテルを筋肉内注射によって、フェレットに麻酔をかけた。感作誘発に先立って、識別および体温監視のために、トランスポンダチップ(Bio-Medic Data Systems)を皮下に埋め込んだ。致死用量の1000プラーク形成単位(PFU)のZEBOV株Kikwit、SEBOV株Gulu、またはBDBVにより、鼻腔内で対象に感作誘発を行って、図9に示す時間および投薬量でMBP134-Nで処置した。図9に示すように、2または3dpiおよび5または6dpiでの15mgの2用量が、感染した哺乳類に完全な生存をもたらすのに十分であった。さらに、ここで説明した結果は、先で考察した結果と組み合わせて、MBP134カクテルが哺乳類におけるエボラウイルスの多くの異なる染色からの保護をもたらすことを示している。
【0135】
この保護が霊長類に及ぶかを判定するために、アカゲザルに致死用量のEBOV/Kikwitを感染させて、本発明のモノクローナル抗体で処置した。1,000PFUのEBOV/Kikwitの筋肉内注射(IM)によって、UTMBのアカゲザルに感作誘発を行った。2つの処置群(n=4/群)を、感染後4日目の25mg/kg単回用量のMBP134-Nで、または感染後4日目(50mg/kg)、そして感染後7日目(25mg/kg)の2用量のMBP134-Nで処置した。対照動物(n=2)を、PBSで処置した。全てのアカゲザルに身体検査を行って、ウイルス感作誘発時;そして感作誘発後4、7、10、14、21、28日目に採血した。動物を含む実験に関する州および連邦の法令および規制に従う、UTMB Institutional Biosafety Committeeによる、UTMB Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認された内部フィロウイルススコアリングプロトコルにより、疾患の進行について、アカゲザルを毎日監視して、スコアを付けた。ベースラインから測定したスコアリング変化として、姿勢/活動レベル;態度/行動;食物および水の摂取;体重;呼吸;ならびに目に見える発疹、出血、斑状出血、または皮膚の紅潮等の疾患の徴候が挙げられ、スコアが増大すると安楽死させた。図10に示すように、処置した霊長類は全て、エボラウイルスの致死的感作誘発に対して生存した。
【0136】
図11に示すように、本発明の抗体によって霊長類にもたらされる保護は、エボラウイルスの複数の株に及ぶ。MBP134の単回用量であっても、アカゲザルにおけるSUDV/Nza-BonifaceおよびSUDV/Guluの双方の致死的感作誘発から保護するのに十分である。
【0137】
さらに、本発明のモノクローナル抗体は、霊長類の様々な種において、エボラウイルス感作誘発からの保護を実現する。1,000PFUのBDBV(200706291ウガンダ分離株、Vero E6パッセージ2)の筋肉内注射(IM)によって、UTMBのカニクイザルに感作誘発を行った。IV注入を介した感染後7日目の25mg/kg単回用量のMBP134(CHOK1-AF由来)で、1つの処置群(n=6)を処置した。対照動物(n=3)は未処置であった。全ての動物に身体検査を行って、ウイルス感作誘発時;そして感作誘発後4、7、10、14、21、そして28日目(または安楽死の時点)に採血した。UTMB Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された内部フィロウイルススコアリングプロトコルにより、全ての動物を毎日監視して、疾患の進行についてスコアを付けた。ベースラインから測定したスコアリング変化として、姿勢/活動レベル;態度/行動;食物摂取;呼吸;および目に見える発疹、出血、斑状出血、または皮膚の紅潮等の疾患の徴候が挙げられた。≧9のスコアは、動物が安楽死の基準を満たしていることを示した。図12に示すように、感染後1週間の遅いMBP134の単回用量でも、優れた保護をもたらすのに十分である。
【0138】
本明細書中に開示されるモノクローナル抗体の生成方法論を最適化するために、植物またはCHO細胞において生成されるPE-87およびPE-47の、エボラウイルスの多数の株を中和する能力を試験した。図13に示すように、植物ベースのシステムおよびCHOベースのシステムの双方において生成したモノクローナル抗体は、同様の中和特性を有する。したがって、これらの、または当該技術において知られている他のシステムを用いて、本発明のモノクローナル抗体を生成することができる。
【0139】
本明細書中で考察されるように、上記抗体はいずれも、出血熱の疑いがある、または出血熱を発症する危険性のある個体に受動免疫をもたらす、治療有効量の前記抗体を含む医薬品に製剤化され得ることに留意されたい。医薬製剤は、適切な賦形剤またはキャリアを含んでよい。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,1995,Gennaro編参照。当業者に明らかなように、総投薬量は、個体の体重、健康状態、および状況、ならびに抗体の効力に従って変動することとなる。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、この中で種々の修正がなされてよいことが認識かつ理解され、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲に含まれ得るそのような修正を全て網羅することが意図されている。
【0140】
材料および方法1
ヒト対象
健康な成人ボランティアからB細胞を単離して、以前の予防接種または感染から誘発された抗体を同定するプロトコルのInstitutional Review Board(IRB)承認後に、ヒト血液サンプルを収集した。サンプル収集に先立って完了した自己申告アンケートに記録された予防接種および感染歴に基づいて、適格な対象を決定した。患者がEBOV感染症と診断されてから3ヶ月後に、末梢血単核細胞を、2014 EBOVアウトブレイクの生存者から得た。
【0141】
B細胞および血漿の単離
約85mlの全血を、8.5ml ACD Solution A Vacutainer(登録商標)静脈採血管(Becton Dickinson)内に、メーカーのプロトコルに従って収集した。血液を室温にて50mlコニカルチューブ中に移して分配してから、血液21mlあたり300μlのRosetteSep(商標)ヒトB細胞濃縮カクテル(StemCell Technologies)を加えて、反転混合して、室温にて20分間インキュベートした。ハンクス液(HBSS)で総量を50mlにして、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare)上に、メーカーのプロトコルに従って重ねて、遠心分離した。B細胞層を密度勾配からピペットによって取り出して、HBSS中で2回、400×gでの遠心分離によって洗浄して、FBS(Life Technologies)および凍結保護培地(Lonza)の1:1混合物中に6.5×106細胞/mlにて凍結して、液体窒素下で保存した。血漿を、密度勾配の最上層から収集して、使用するまで-80℃にて保存した。
【表2】
【0142】
抗EBOV GP血漿ELISA
PBS中に希釈した1μg/mlのEBOV rGPΔTM(IBT BioSciences)で、高結合ELISAプレートを4℃にて一晩コーティングした。洗浄後、ウェルを、PBS中1%BSA、および0.05%Tween-20で、室温にて2時間ブロックした。ウェルを洗浄して、ヒト血漿の連続希釈液(ブロッキングバッファ中に希釈した)を加えて、室温にて1.5時間インキュベートした。陽性対照および陰性対照として、mAb KZ52(IBT BioSciences)または無関係のヒトmAbの連続希釈液を、適切なウェルにそれぞれ加えた。洗浄後、HRP結合ロバ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)またはHRP結合ヤギ抗ヒトIgA(Southern Biotech)二次抗体を、適切なウェル内で、室温にて1.25時間インキュベートした。ウェルを2回洗浄して、SureBlue TMB基質(KPL)で発色させた。反応を1M HClで停止して、EMax Microplate Reader(Molecular Devices)でウェルを450nmの波長にて読んだ。ブランクを超える読取り値を与える最高の血清希釈を算出することによって、血漿エンドポイント力価を判定した(3標準偏差を含む)。
【0143】
単回のB細胞ソーティング
精製B細胞を、抗ヒトIgM(BV605)、IgD(BV605)、IgG(BV421)、CD8(APC-Cy7)、CD14(AF700)、CD19(PerCP-Cy5.5)、CD20(PerCP-Cy5.5)、およびビオチン化EBOV GPΔTMを用いて染色した。ビオチン化GPΔTMを、50nMの濃度にて用いて、ストレプトアビジン-APC(Life Technologies)を1:500の希釈にて用いて、検出した。単一細胞を、MoFloサイトメータ(Beckman-Coulter)で、20μl/ウェルの溶解バッファ[5μlの5X first strand cDNAバッファ(Invitrogen)、0.5μl RNaseOUT(Invitrogen)、1.25μlジチオトレイトール(Invitrogen)、0.625μl NP-40(New England Biolabs)、および12.6μl dH2O]を含有する96ウェルPCRプレート(BioRad)中にソートした。プレートを直ぐにドライアイス上で凍結してから、-80℃にて保存した。
【0144】
抗体可変遺伝子の増幅およびクローニング
単一B細胞PCRを、基本的に以前に記載されているように実行した[27]。手短に言えば、IgH、Igλ、およびIgκ可変遺伝子転写産物を、IgGに特異的なプライマーのカクテルを用いたRT-PCRおよびネステッドPCR反応によって増幅した[27]。PCRの第2ラウンドに用いたプライマーは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)中への相同組換えによるクローニングを可能にするために、切断された発現ベクターに対して5’および3’相同性の40塩基対を含有した[28]。PCR産物を、化学的形質転換のための酢酸リチウム法を用いて、出芽酵母(S.cerevisiae)中にクローニングした[29]。各形質転換反応には、20μlの未精製重鎖および軽鎖PCR産物、ならびに200ngの切断重鎖および軽鎖プラスミドを含有させた。個々の酵母コロニーを、配列決定およびダウンストリーム特性評価用に選んだ。
【0145】
抗体およびFabフラグメントの発現および精製
結合実験、競合アッセイ、中和アッセイ、および構造研究に用いた抗体を、24ウェルプレート内で増殖させた出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)培養体内で発現させた。増殖の6日後、酵母細胞培養体の上清を遠心分離によって収穫して、精製にかけた。保護実験に用いるIgGを、HEK293細胞中への重鎖および軽鎖プラスミドの一過性同時トランスフェクションによって発現させた。トランスフェクションの1日前に、HEK293細胞を2.0~2.5×106細胞/mlにて継代した。トランスフェクションの日に、細胞を400gにて5分間の遠心分離によってペレット化して、細胞ペレットを、4×106細胞/mlの密度にてフレッシュなFreeStyle F17培地中に再懸濁させて、インキュベータに戻した。最初に、プラスミドDNA調製物をFreeStyle F17培地中に希釈することによって(培養体1mlあたり1.33μgの総プラスミドDNA)、トランスフェクション混合物を調製した。次に、トランスフェクション剤であるPEIpro(商標)(Polyplus Transfection、Illkirch、France)を、1:2のDNA対PEI比に希釈したDNAに加えて、混合物を室温にて10分間インキュベートした。次に、トランスフェクション混合物を、培養体に加えた。トランスフェクションの6日後に、培養体を、それぞれ2000×gにて5分間の2ラウンドの遠心分離によって収穫して、清澄化された調整培地を抗体精製に供した。プロテインAアガロース(GE Healthcare Life SciencesのMabSelect SuRe(商標))に通させることによって、細胞上清を精製した。結合した抗体を、PBSで洗浄して、200mM酢酸/50mM NaCl pH3.5で、1/8容量の2M Hepes pH8.0中に溶出して、PBS pH7.0にバッファ交換した。IgGをパパインで30℃にて2時間消化することによって、Fabを生じさせた。ヨードアセトアミドの添加によって消化を終了させて、FabおよびFc混合物をプロテインAアガロースに通させて、Fcフラグメントおよび未消化IgGを除去した。次に、プロテインA樹脂のフロースルーを、CaptureSelect(商標)IgG-CH1アフィニティ樹脂(ThermoFischer Scientific)に通させて、200mM酢酸/50mM NaCl pH3.5で、1/8容量の2M Hepes pH8.0中に溶出した。次に、Fabフラグメントを、PBS pH7.0にバッファ交換した。
【0146】
EBOV GPの発現および精製
ムチン様ドメインを含有する組換えEBOV GPエクトドメイン(EBOV GPΔTM)、またはムチン様ドメインの残基312~463を欠く組換えEBOV GPエクトドメイン(EBOV GPΔmuc)を、以前に記載されているように生成した[10、30]。
【0147】
EBOV GPΔTMビオチン化
EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-LC-Biotin(Life Technologies)を用いてEBOV GPΔTMをビオチン化してから、Zeba(商標)Spin Desalting Column(Life Technologies)による脱塩工程を行った。
【0148】
バイオレイヤーインターフェロメトリ結合分析
様々なGP抗原へのIgGの結合を、ForteBio Octet HTX機器(Pall Life Sciences)を用いたBLI測定によって判定した。高スループットKDスクリーニング用に、IgGを、AHQセンサ(Pall Life Sciences)上に固定して、結合工程用の0.1%BSAを含有するPBS(PBSF)中100nM抗原に曝してから、PBSFバッファ中で解離工程を行った。ForteBio Data Analysis Software 7を用いて、データを分析した。データを、1:1の結合モデルに適合させて、結合解離速度を算出し、そして比率kd/kaを用いて、KDを算出した。
【0149】
抗GP mAb ELISA
ELISAプレートを、4μg/mL EBOV GP抗原を含有する50μlのPBSで、室温にて1時間コーティングした。洗浄後、ウェルを、3%BSAで、室温にて1時間ブロックした。ブロッキング溶液を除去した後、mAbを、0.2μg/mlの濃度にてプレートに加えて、室温にて1時間インキュベートした。洗浄後、結合を、抗ヒトHRP結合二次抗体およびTMB基質により検出した。光学密度を、450nmにて読んだ。
【表3】
【0150】
抗体競合アッセイ
抗体競合アッセイを、基本的に以前に記載されているように実行した[31]。GPΔmucへの酵母表面発現抗GP IgGの結合を阻害する対照抗EBOV GP Fabの能力によって、抗体の競合を測定した。50nMビオチン化GPΔmucを、1μMの競合体Fabと室温にて30分間プレインキュベートしてから、酵母発現抗GP IgGの懸濁液に加えた。PBSFで洗浄することによって、非結合抗原を除去した。洗浄後、1:500希釈のストレプトアビジンAlexa Fluor 633(Life Technologies)を用いて、結合抗原を検出して、BD FACS Canto IIを用いたフローサイトメトリによって分析した。結果を、抗原のみの対照と比較した、競合体Fabの存在下での抗原結合の低下の倍数として表す。
【0151】
中和アッセイ
ウイルス特異的中和抗体の応答を、基本的に以前に記載されているように滴定した[32]。手短に言えば、血漿または抗体を、5%熱不活化胎仔ウシ血清(Gibco-Invitrogen、Gaithersburg、MD)、1X Anti-Anti(Gibco-Invitrogen、Gaithersburg、MD)を含有するMinimal Essential Medium(Corning Cellgro、Manassas、VA)(完全MEM)中に連続希釈して、ウイルスと37°Cにて1時間インキュベートした。インキュベーション後、抗体-ウイルスまたは血漿-ウイルス混合物を、90~95%のVero E6細胞のコンフルエントな単層を含有する6ウェルプレートに二反復で加えた。プレートを15分毎にゆるやかに揺らしながら37℃にて1時間インキュベートした。インキュベーション後、ウェルを、補充EBME培地中0.5%アガロース、10%熱不活化胎仔ウシ血清(Gibco-Invitrogen、Gaithersburg、MD)、2X Anti-Anti(Gibco-Invitrogen、Gaithersburg、MD)でオーバーレイして、プレートを37℃、5%CO2にて7日間インキュベートした。7日目に、細胞を、4~5%ニュートラルレッドを含有する、先のように調製した第2のオーバーレイの添加によって染色した。プレートを、37℃、5%CO2にて18~24時間インキュベートした。エンドポイント力価を、対照ウェル内で観察されたプラーク数よりも50%以上または80%以上低下した(PRNT50、PRNT80)最高希釈と判断した。検出のアッセイ限界を、この方法によって、5プラーク形成単位(p.f.u.)/mlと算出した。
【表4】
【0152】
単粒子電子顕微鏡
全てのEM研究について、上記のEBOV GPΔTM構築体を用いた。上記のようにFabを生成して、EBOV GPΔTMトリマーと、1:10の比率で4℃にて一晩インキュベートした。次に、複合体を、炭素コーティングした銅メッシュグリッド上に堆積させて、1%ギ酸ウラニルで染色した。自動画像取得ソフトウェアLeginon[33]を用いて、Tecnai F12顕微鏡でサンプルを画像化した。画像を、52,000×の倍率にて収集して、Tietz 4K CMOS検出器を用いて、2.05Aの標本レベルの最終ピクセルサイズが得られた。画像が、Appionデータベースに自動的にアップロードされて、この中で加工処理した[34]。個々の複合体を、DogPicker[35]を用いて生の画像から抽出して、2でビン分割して(binned by 2)、スタックに配置した。次に、スタックを、MRA/MSA[PMID 14572474]を用いる参照なし2次元分類にかけた。Fab-EBOVΔTM複合体に応答しなかったクラス平均を、その後の全ての分析から除去した。2Dクラス平均のサブセットを用いて、EMAN2[36]内の共通線を用いて初期モデルを作成した。次に、生の粒子スタックを、EMAN2を用いて初期モデルに対して洗練して、最終的な3Dボリュームを生じさせた。UCSFキメラを、モデリングおよび図の生成に用いた[37]。
【0153】
マウスにおけるEBOV感作誘発研究
アメリカ陸軍感染症医学研究所(U.S.Army Medical Research Institute of Infectious Diseases:USAMRIID)にて、段階的に年月を経た(progressively older)哺乳マウスにおけるEBOV(ザイール)の連続継代によって、致死マウス適応EBOVマウスモデルを開発した[38]。6~8週齢の雌BALB/cマウスを、Charles River Laboratoryから購入した。到着して直ぐに、マウスを動物バイオセーフティレベル4の収容エリア内のマイクロアイソレータケージ内に収容して、食事と水を不断給餌した。0日目に、マウスに100p.f.uのマウス適合EBOVを腹腔内(i.p.)感染させた。感染の2日後、マウスの群(群あたり10マウス)を、抗体の単回用量(100μg)によりi.p.処置した。陰性対照マウスにはPBSを投与した。感染後28日間、マウスを毎日(疾患の臨床徴候があれば、1日2回)監視した。群の体重を、感染後0~14日目に、そして21日目と28日目に測定した。GraphPad PRISM 5内のログランク検定を用いて、生存率を比較した。P値が0.05未満の場合、生存率の差異を有意とみなした。Animal Welfare Act、PHS Policy、ならびに動物および動物を含む実験に関する他の連邦制定法および規制に準拠して、IACUCが承認したプロトコル下で研究を実施した。本研究を実施した施設は、国際実験動物ケア評価認証協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care,International)によって認定されており、2011年、国立研究評議会(National Research Council)のGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに定められた原則を厳守した。
【表5】
【0154】
マウスにおけるSUDV感作誘発研究
4~5週齢のIFNa/bR KOマウスに、SUDV(1000pfu)をI.P.接種することとする。実験群を、感染後1日目と4日目に、示す用量のmAb(0.3ml容量)で処置することとする。対照マウスを、実験マウスと同じスケジュールでI.P.ビヒクル制御(0.3ml容量)することとする。瀕死状態については、マウスを毎日21日間観察することとする。瀕死状態のマウスは、安楽死の基準(スコアシート)を満たせば直ぐに安楽死させることとする(IAW SOP AC-11-07)。
【表6】

【表7】
【0155】
材料および方法2
細胞
Veroアフリカミドリザル細胞および293Tヒト胎児腎線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清(Atlanta Biologicals)、1%GlutaMAX(Thermo Fisher)、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher)を補充した高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Thermo Fisher)中で維持した。細胞を、加湿した37℃、5%CO2インキュベータ内で維持した。
【0156】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)組換え体および偽型
第1の位置においてeGFPを発現し、かつ、VSV Gの代わりに、EBOV/Mayinga(EBOV/H.sap-tc/COD/76/Yambuku-Mayinga)、EBOV/Makona(EBOV/H.sap-rec/LBR/14/Makona-L2014)、BDBV(BDBV/H.sap/UGA/07/But-811250)、SUDV/Boneface(SUDV/C.por-lab/SSD/76/Boneface)、RESTV(RESTV/M.fas-tc/USA/89/Phi89-AZ-1435)、およびLLOV(LLOV/M.sch-wt/ESP/03/Asturias-Bat86)由来の代表的なGPタンパク質をコードする組換え水疱性口内炎インディアナウイルス(rVSV)が、以前に記載されている[1~3]。TAFV(TAFV/H.sap-tc/CIV/94/CDC807212)およびMARV(MARV/H.sap-tc/KEN/80/Mt.Elgon-Musoke)由来のeGFPタンパク質およびGPタンパク質を有するVSV偽型を、[4]に記載されるように生じさせた。
【0157】
切断されたVSV-GP粒子およびGP TM外部ドメインタンパク質の生成
いくつかの実験において、GPCLを有する切断したウイルス粒子を、最初に、以前に記載されるように[1]、サーモリシン(200μg/mL、pH7.5、37℃、1時間;Sigma-Aldrich)または組換えヒトカテプシンL(CatL、2ng/μL、pH5.5、37℃、1時間;R&D Systems)とのインキュベーションによって生じさせた。氷上への取出しおよびホスホラミドン(1mM)またはE-64(10μM)の添加によって反応を停止させて、ウイルス粒子を感染性アッセイに直ちに用いた。組換え可溶性GPΔTMタンパク質[5]もまた、基本的に上記の通りであった。
【0158】
VSV感染性測定および中和アッセイ
ウイルス感染性を、感染後12~14時間にてCellInsight CX5イメージャ(Thermo Fisher)を用いて、eGFP+細胞(感染単位;IU)の自動カウントによって測定した。mAb中和実験について、予め滴定した量のVSV-GP粒子(MOI≒1IU/細胞)を、試験mAbの濃度を増大させながら室温にて1時間インキュベートしてから、96ウェルプレート内のコンフルエントな細胞単層に加えた。ウイルス中和データを、非線形回帰分析にかけて、EC50値(4パラメータ、可変勾配シグモイド用量反応式;GraphPad Prism)を導き出した。
【表8】
【0159】
認証されたフィロウイルスおよびマイクロ中和アッセイ
認証されたフィロウイルスEBOV/「Zaire 1995」(EBOV/H.sap-tc/COD/95/Kik-9510621)[6]、マウス適合EBOV/Mayinga(EBOV-MA)[7]、SUDV/Boneface-USAMRIID111808、およびBDBV/200706291[8]を、本研究に用いた。抗体を、示した濃度に培地中で希釈して、ウイルスと1時間インキュベートした。Vero E6細胞を、0.2(EBOV、BDBV)または0.5(SUDV)プラーク形成単位(PFU)/細胞のMOIにて、抗体/ウイルス接種原に1時間曝した。次に、抗体/ウイルス接種原を除去して、フレッシュな培地を加えた。感染後48時間にて、細胞を固定して、感染細胞を免疫染色して、[3]に記載されるような自動蛍光顕微鏡によって定量化した。
【表9】
【0160】
mAbの生成
ヒトEBOV疾患生存者由来の組換えmAb、ならびにPE-87の生殖系列復帰型(IGL)mAb構築体およびWT:IGLキメラを、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)内で発現させて、以前に記載されるように[5]、プロテインAアフィニティクロマトグラフィによって細胞上清から精製した。他の組換えmAbを、一過性トランスフェクションによって293F細胞内で生じさせて、以前に記載されるように[3]、プロテインAアフィニティクロマトグラフィによって精製した。
【0161】
GP:mAb結合用のELISA
GP交差反応性mAbを同定するために、EBOV、BDBV、およびSUDV GPを有するrVSVの基準化した量を、4℃にてプレート上にコーティングした。次に、プレートを、3%ウシ血清アルブミンを含有するPBS(PBSA)でブロックして、試験抗体の希釈液(5、50nM)とインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(Santa Cruz Biotechnology)に結合した抗ヒトIgGおよびUltra-TMB比色基質(Thermo Fisher)により、結合Abを検出した。インキュベーションは全て、37℃にて1時間実行した。
【0162】
NPC1へのGP/mAb結合用の競合ELISA
rVSV-EBOV GP粒子のウイルス脂質エンベロープを、[2]に記載されるように、機能スペーサ脂質構築体(FSLビオチン)(Sigma-Aldrich)を用いて、pH7.5かつ37℃にて1時間、ビオチンで標識した。GPCLを有するビオチン化ウイルス粒子を、サーモリシンとのインキュベーションによって生成してから、組換えストレプトアビジン(0.65μg/mL;Sigma-Aldrich)でプレコーティングした高結合96ウェルELISAプレート上に捕捉させた。次に、プレートを、PBSAでブロックして、試験mAbの段階希釈液とインキュベートした。次に、洗浄したプレートを、予め滴定した濃度の可溶性FLAGエピトープタグ付きNPC1ドメインC(NPC1-C)タンパク質[9]とインキュベートして、結合したNPC1-Cを、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した抗FLAG抗体(Sigma-Aldrich)により検出した。インキュベーションは全て、37℃にて1時間実行した。
【0163】
GP切断のmAb阻害を検出するためのELISAおよびイムノブロット
CatLによる首尾良いGP→GPCL切断用のプロキシとして、EBOV GPCL中のNPC1結合部位の曝露を用いた。上記のようにビオチン化したrVSV-EBOV GP粒子を、試験mAbおよび無関係なヒトIgGの混合物(50、250、または1000nMの試験mAb;反応あたり1000nMの総IgG)と、pH5.5、37℃にて1時間プレインキュベートした。次に、反応物を、CatL(4ng/μL、37℃、30分間)とインキュベートした。次に、反応を、E-64で停止させて、PBSで中性pHに再調整して、ストレプトアビジンコーティングしたELISAプレート上に捕捉させた。NPC1-C結合を、先のように測定した。
【0164】
最高濃度の試験mAbで処理したサンプルもまた、ウエスタンブロッティングにかけた。切断したGP1種を、西洋ワサビペルオキシダーゼに直接結合したh21D10 mAb(Dr.Javad Amanからの寄贈)とのイムノブロッティングによって検出した。
【0165】
ウイルス中和エスケープ突然変異体の選択
エスケープ突然変異体の選択を、試験mAbの存在下でのrVSV-GP粒子の連続継代によって実行した。手短に言えば、ウイルスの連続3倍希釈液を、中和アッセイに由来するIC90値に対応するmAbの濃度とプレインキュベートしてから、12ウェルプレート中のVero細胞のコンフルエントな単層に、二反復で加えた。感染を完了まで進行させて(目による>90%の細胞死)、ウイルス接種原の最高希釈(すなわち最小量)を受けた感染ウェルから上清を収穫した。先のウイルス含有上清によるmAb選択下での3連続の継代後、継代4由来の上清を、ウイルス中和エスケープについて試験した。耐性が明らかであれば、個々のウイルスクローンをVero細胞上でプラーク精製して、そのGP遺伝子配列を、以前に記載されるようにして[1]決定した。以下のエスケープ突然変異体選択を実行した:rVSV-EBOV GP/MakonaによるPE-16、rVSV-SUDV GP/BonefaceによるPE-24、rVSV-EBOV/MayingaによるPE-05、およびrVSV-BDBVΔMucによるPE-64。
【0166】
単粒子電子顕微鏡
抗体FabおよびEBOV GP TM外部ドメインタンパク質を、以前に記載されるように[5]調製して、10:1(Fab:GP)の比率で4℃にて一晩インキュベートした。次に、複合体を、炭素コーティングした銅メッシュグリッド上に堆積させて、1%ギ酸ウラニルで染色した。自動画像取得ソフトウェアLeginon[10]を用いて、Tecnai F12顕微鏡でサンプルを画像化した。画像を、Tietz 4K CMOS検出器により52,000×の倍率にて収集して、標本レベルにて2.05Åの最終ピクセルサイズが生じた。画像が、Appionデータベースに自動的にアップロードされて、この中で加工処理した[11]。個々の複合体を、DoG Picker[12]を用いて生の画像から抽出して、2でビン分割して、スタックに配置した。次に、スタックを、MRA/MSA[13]を用いる参照なし2D分類にかけた。Fab:EBOV GP TM複合体に応答しなかったクラス平均を、その後の全ての分析から除去した。2Dクラス平均のサブセットを用いて、EMAN2[14]内の共通線を用いて初期モデルを作成した。次に、生の粒子スタックを、EMAN2を用いて初期モデルに対して洗練して、最終的な3Dボリュームを生じさせた。UCSFキメラを、モデリングおよび図の生成に用いた[15]。
【0167】
生体層干渉法(BLI)によるGP:mAb動的結合分析
OctetRed(商標)システム(ForteBio、Pall LLC)を用いて、種々の形態のEBOV GPに対する様々なIgGの結合特性を判定した。抗ヒトFc(AHC)捕捉センサ(ForteBio)を、1×カイネティクスバッファ(0.002%Tween-20および1mg/mLのBSAを補充したPBS)中25mg/mLでの初期mAbローディングに用いた。GPへの結合を、EBOV GP TMまたはGPCLの2倍連続希釈の全体にわたって実行した。ベースライン工程および解離工程を、機器メーカーの推奨事項に従って、1×カイネティクスバッファ中で実行した。pH5.5での結合の分析について、PBSベースの1×カイネティクスバッファの代わりに、1×pH5.5カイネティクスバッファ(50mMクエン酸ナトリウム二水和物[pH5.5]、150mM塩化ナトリウム、0.002%Tween-20、および1mg/mL BSA)を全ての工程に用いた。全ての反応速度実験について、1:1結合モデルに適合するグローバルデータを用いて、kon(結合速度定数)、koff(解離速度定数)、およびK(平衡解離定数)の値を推定した。
【表10】
【0168】
マウスにおけるEBOVおよびSUDV感作誘発研究
10~12週齢の雌BALB/cマウス(Jackson Labs)に、腹腔内(i.p.)経路を介してEBOV-MA(100PFU;約3,000LD50)により感作誘発を行った。感作誘発の2日後に、マウスをPBSビヒクルまたは300μgの各mAb(0.3mL用量、≒15mg mAb/kg)でi.p.処置した。動物を、病気および致死の臨床徴候について、毎日観察した。マウスが疾患の徴候を示していた間、毎日の観察を、最低でも1日2回に増やした。瀕死状態のマウスを、IACUC承認基準に基づいて、人道的に安楽死させた。
【0169】
6~8週齢の雄および雌の1型IFN α/β受容体ノックアウトマウス(1型IFNα/β R/)(Jackson Labs)に、WT SUDV(1000PFU i.p.)で感作誘発を行った。動物を、感作誘発の1および4日後に、PBSビヒクルまたは1用量あたり300μg(≒15mg mAb/kg)でi.p.処置して、先のように監視して安楽死させた。
【表11】
【0170】
フェレットにおけるBDBV感作誘発研究
6ヶ月齢の雌フェレット(Mustela putorius furo)に、以前に記載されるように[16]、筋肉内(i.m.)経路を介して、WT BDBV(BDBV/H.sap-tc/UGA/07/Butalya-811250;0.5mL容量中1000 TCID50)で感作誘発を行った。動物を、感作誘発の3および6日後に、PBSビヒクルまたは各mAb(2mL容量/用量)の15mg(3日目)および10mg(6日目)でi.p.処置した。加えて、感染後0、3、6、10、14、21、28日目に、各動物から1mLの血液を採取して、ウイルス負荷を判定して、完全な血球数を測定して、生化学マーカーを評価した。実験の過程で、疾患の徴候について、動物を1日2回監視した。
【0171】
動物の権利保護に関する陳述
Animal Welfare Act、PHS Policy、ならびに動物および動物を含む実験に関する他の適用可能な連邦制定法および規制に準拠して、IACUCが承認したプロトコル下でマウス感作誘発研究を実施した。本研究を実施した施設(USAMRIID)は、国際実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)によって認定されており、2011年、国立研究評議会(National Research Council)のGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに定められた原則を厳守した。
【0172】
フェレットの感作誘発研究は、Canadian Council on Animal Care(CCAC)のガイドラインに従って、Winnipeg,CanadaのCanadian Science Centre for Human and Animal Health(CSCHAH)のAnimal Care Committee(ACC)によって承認された。
【0173】
統計分析
用量応答中和曲線を、非線形回帰分析によってロジスティック方程式に適合させた。抽出したIC50パラメータについての95%信頼区間(95%CI)を、正規性の仮定(assumption of normality)の下で推定した。生存曲線の分析を、Mantel-Cox(ログランク)検定で実行した。ウイルス力価の統計的比較を、対応のないt検定で実行した。試験レベル(アルファ)を、全ての統計的検定について0.05とした。全ての分析を、GraphPad Prismで実行した。
【0174】
材料および方法2に関する参考文献

【0175】
背景技術、概要、材料および方法1に関する参考文献



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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