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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】分級装置
(51)【国際特許分類】
   B07B 7/083 20060101AFI20220824BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20220824BHJP
   B07B 11/06 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B07B7/083
B03B5/28 A
B07B11/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020083855
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021178277
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】丹生 徳行
(72)【発明者】
【氏名】院去 貢
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066046(WO,A1)
【文献】特開平08-229419(JP,A)
【文献】特開2007-164117(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222139(JP,U)
【文献】特開2017-042685(JP,A)
【文献】特開2014-042867(JP,A)
【文献】特開2013-56307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00-15/00
B03B 1/00-13/06
B02C 17/00-17/24
B01F 27/00-27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分級される粒子を含む原料が供給されるハウジングと、
該ハウジング内に設けた、微粒と粗粒とに分級する分級ローターと、
前記ハウジングを貫通して設けた、前記分級ローターの回転軸と、
該回転軸を回転駆動させる回転手段と、
前記分級ローター内に流入した、分級された微粒を、前記ハウジング外に排出する微粒排出手段と、
前記分級ローターにより分級されなかった粗粒を、前記ハウジング外に排出する排出口と、
前記ハウジングに前記原料を供給する供給手段と、
前記ハウジングと前記回転軸とを密閉する密閉手段とよりなり、
前記分級ローターは、外周部に開口部を有し、該開口部から内部に流入した流体を外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、
該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の分級羽根と、
前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の整流羽根とよりなり、
前記密閉手段は、前記回転軸に直交して固定した板体と、該板体の面に固定した、円周方向に所望の間隔を存して配置した、前記ハウジングの内側面に近接させた複数のブレードとよりなり、
前記複数のブレードからなるブレード抵抗体の外径Dと、前記分級ローターの外径dとの比(d/D)が、0.9~0.8であることを特徴とする分級装置
【請求項2】
前記ブレードを、前記ハウジングの内側面に対して離接させる離接手段を設け、
該離接手段は、前記回転軸を、前記ハウジングに対して相対的に軸方向に移動させる回転軸移動手段よりなることを特徴とする請求項1に記載の分級装置。
【請求項3】
分級される粒子を含む原料が供給されるハウジングと、
該ハウジング内に設けた、微粒と粗粒とに分級する分級ローターと、
前記ハウジングを貫通して設けた、前記分級ローターの回転軸と、
該回転軸を回転駆動させる回転手段と、
前記分級ローター内に流入した、分級された微粒を、前記ハウジング外に排出する微粒排出手段と、
前記分級ローターにより分級されなかった粗粒を、前記ハウジング外に排出する排出口と、
前記ハウジングに前記原料を供給する供給手段と、
前記ハウジングと前記回転軸とを密閉する密閉手段とよりなり、
前記分級ローターは、外周部に開口部を有し、該開口部から内部に流入した流体を外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、
該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の分級羽根と、
前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の整流羽根とよりなり、
前記密閉手段は、前記回転軸に直交して固定した板体と、該板体の面に固定した、円周方向に所望の間隔を存して配置した、前記ハウジングの内側面に近接させた複数のブレードとよりなり、
前記ブレードを、前記ハウジングの内側面に対して離接させる離接手段を設け、
該離接手段は、前記回転軸を、前記ハウジングに対して相対的に軸方向に移動させる回転軸移動手段よりなることを特徴とする分級装置。
【請求項4】
前記複数のブレードからなるブレード抵抗体の外径Dと、前記分級ローターの外径dとの比(d/D)が、0.95~0.75であることを特徴とする請求項3に記載の分級装置。
【請求項5】
前記粗粒を排出する排出口に、排出量調整手段を更に設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の分級装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分級装置、特に、メカニカルシールを用いずに、高精度分級を行う分級装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(1.従来の分級装置の説明)
【0003】
微粒子を高精度に分級する分級装置としては、分級羽根を円周方向に互いに離間して(円周方向に所望の間隔を存して)、回転中心から放射状に配置した、或いは、羽根の長手方向を向く、幅方向に対する中心線が回転中心を向かないように配置した分級ローターを高速回転させて、微粒子を分級する装置がある。
【0004】
該分級は、分級ローターの各隣接する分級羽根間に形成される分級室内に、気体や液体などの流体が、外周部から流入して内周側に向かって移動する間、流体中の粒子が分級ローターの高速回転による遠心力Fと、この遠心力の作用方向と逆向きの内周方向に向かって流れる流体の抗力Rを受け、両者がバランスする(F=Rとなる)分級粒子径より径大の粗粒は分級ローター外に排出され、径小の微粒は分級ローター内に流入するようになる。
【0005】
図12は、湿式タイプの分級装置1を示し、該分級装置1は、例えば、直径50mm~300mmの円筒状のハウジング2と、該ハウジング2内に設けられた分級ローター3と、前記ハウジング2の天井板2aを貫通して垂設して設けた、前記分級ローター3の回転軸4と、該回転軸4を回転駆動させるモーター等よりなる回転手段5と、前記分級ローター3により分級され、該分級ローター3内に入流した微粒を前記ハウジング2外に流出させる、前記回転軸4に形成した軸方向に延びる貫通孔(微粒排出手段)6と、前記回転軸4に形成された貫通孔6の他端に連通し、前記分級された微粒を回収タンク(図示せず)に導く回収室7と、前記分級ローター3により分級されなかった粗粒を前記ハウジング2外に排出する排出口8と、例えば、0.1μm~100μmの分級される粒子を含む原料スラリーを貯めた原料タンク9から、該原料スラリーを供給ポンプ10により、前記ハウジング2内に供給する供給口11とよりなる。
【0006】
また、前記回転軸4を貫通する天井板2aには、該天井板2aと前記回転軸4とを摺動自在にシール(密閉)するメカニカルシール部12が設けられ、該メカニカルシール部12により、前記ハウジング2内が気密(液密)になるように密閉されて形成される。
【0007】
なお、13は、前記回転軸4を回転自在に支持する支持部を示す。
【0008】
また、前記分級ローター3は、例えば、図13及び図14に示すように、上下に離間し同軸に配置した2枚の同形の円板状の板14a、14bと、該上側の板14aの中心部に設けた、前記貫通孔6に連通する排出口3aとよりなる枠体14と、前記2枚の板14a、14bの互いに対向する面の外周側部分間に、周方向に等間隔で、回転中心より放射状に設けるか、或いは、羽根の長手方向を向く、幅方向に対する中心線が回転中心を向かないように設けた複数の分級羽根15とよりなり、各互いに隣接する前記分級羽根15、15間に分級室16が形成される。
【0009】
前記分級装置1においては、前記ハウジング2内に、前記原料タンク9からの原料スラリーを供給ポンプ10により供給口11から供給し、該分級装置1内に設けられた高速回転する分級ローター3により、前記原料スラリーが粗粒スラリーと微粒スラリーとに分級され、そして、粗粒スラリーは、前記分級装置1のハウジング2の排出口8からハウジング2外に排出されて、また、前記分級ローター3の外周部の開口部から該分級ローター3内に流入した微粒スラリーは、前記分級ローター3に形成された、前記回転軸4の貫通孔6の一端に連通した排出口3aから、前記分級ローター3に固定された回転軸4の貫通孔6を通って、該貫通孔6の他端から前記回収室7に流入し、回収タンクに回収されるようになる。
【0010】
しかしながら、前記該天井板2aと前記回転軸4とは、摺動自在に設けたメカニカルシール部により密閉されているため、消耗、摩耗、固着、安全運転を妨げるトラブルが生ずる場合がある。
【0011】
また、メカニカルシール部は、分級ローターを高速回転した際に、高圧に耐えることができない。
【0012】
また、分級性能を上げるためには、ローターを高速化する必要があるが、メカニカルシール部の摺動部分での接触による発熱が大きくなり、冷却液がペーパー化してしまう場合がある。
【0013】
そこで、撹拌装置の分野において、メカニカルシール部を用いずに、ハウジングを密閉するディスク部を用いた方法があり(特許文献1)、該ディスク部を、前記分級装置に組み合わせることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平8-229419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(2.ディスク部を組み合わせた分級装置の説明)
【0016】
図15図18は、前記分級装置1において、メカニカルシール部12の代わりに、ディスク部を用いた分級装置を示す。該ディスク部は、例えば、ハウジング2の天井板2aの内側面に、その上面を対向させて接近して、該天井部2aに形成された貫通孔2bを貫通した回転軸4に直交して固定した、前記貫通孔2bよりも大きく形成された円板17と、該円板17の上面に固定した、円周方向に互いに離間して(円周方向に所望の間隔を存して)、回転中心から放射状に配置した、前記天井面2aの内側面に近接させた、半径方向に延びる複数の断面矩形状の棒体からなるクラウン(ブレード)18とよりなる。そして、前記円板17が高速回転することにより、前記ハウジング2内をおおむね密閉構造とすることができ、前記天井板2aの内側面と前記ブレード18とは離間しており、メカニカルシール部12にように摺動部分がないので、前記不都合を解消できる。
【0017】
なお、前記天井板2aの内側面は、前記貫通した回転軸4に直交した平坦面状に形成され、前記円板17の上面に対向するようになる。
【0018】
また、前記各ブレード18は、例えば、所望の長さで、それぞれ同形状に形成されて、前記円板17の上面の外周側に設けられ、また、該各ブレードの外端は、前記円板17の外端に一致、或いは、若干内側に位置するように設けられる。
【0019】
なお、19は、前記ハウジング2内のスラリーが、前記ディスク部、前記貫通孔2bを介して、前記ハウジング2外に漏れてしまった場合、その漏れたスラリーを回収するためのスラリー排出室を示す。
【0020】
しかしながら、該分級装置において、前記メカニカルシール部の代わりにディスク部を用いて、実験を行った結果、ブレードおよびローター近傍に生ずる不安定な乱流流れにより、図19に示すように、分級装置内圧が不安定になり、高精度の分級において必要とされる「微粒スラリーの排出流量」が、図20に示すように、安定せず、そして、図21に示すように、分級精度が低下することが分かった。
【0021】
本発明は、上記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記の目的を達成すべく、本発明の分級装置は、分級される粒子を含む原料が供給されるハウジングと、該ハウジング内に設けた、微粒と粗粒とに分級する分級ローターと、前記ハウジングを貫通して設けた、前記分級ローターの回転軸と、該回転軸を回転駆動させる回転手段と、前記分級ローター内に流入した、分級された微粒を、前記ハウジング外に排出する微粒排出手段と、前記分級ローターにより分級されなかった粗粒を、前記ハウジング外に排出する排出口と、前記ハウジングに前記原料を供給する供給手段と、前記ハウジングと前記回転軸とを密閉する密閉手段とよりなり、前記分級ローターは、外周部に開口部を有し、該開口部から内部に流入した流体を外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の分級羽根と、前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の整流羽根とよりなり、前記密閉手段は、前記回転軸に直交して固定した板体と、該板体の面に固定した、円周方向に所望の間隔を存して配置した、前記ハウジングの内側面に近接させた複数のブレードとよりなり、前記複数のブレードからなるブレード抵抗体の外径Dと、前記分級ローターの外径dとの比(d/D)が、0.9~0.8であることを特徴とする。
【0023】
また、前記ブレードを、前記ハウジングの内側面に対して離接させる離接手段を設け、該離接手段は、前記回転軸を、前記ハウジングに対して相対的に軸方向に移動させる回転軸移動手段よりなることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の分級装置は、分級される粒子を含む原料が供給されるハウジングと、該ハウジング内に設けた、微粒と粗粒とに分級する分級ローターと、前記ハウジングを貫通して設けた、前記分級ローターの回転軸と、該回転軸を回転駆動させる回転手段と、前記分級ローター内に流入した、分級された微粒を、前記ハウジング外に排出する微粒排出手段と、前記分級ローターにより分級されなかった粗粒を、前記ハウジング外に排出する排出口と、前記ハウジングに前記原料を供給する供給手段と、前記ハウジングと前記回転軸とを密閉する密閉手段とよりなり、前記分級ローターは、外周部に開口部を有し、該開口部から内部に流入した流体を外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の分級羽根と、前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の整流羽根とよりなり、前記密閉手段は、前記回転軸に直交して固定した板体と、該板体の面に固定した、円周方向に所望の間隔を存して配置した、前記ハウジングの内側面に近接させた複数のブレードとよりなり、前記ブレードを、前記ハウジングの内側面に対して離接させる離接手段を設け、該離接手段は、前記回転軸を、前記ハウジングに対して相対的に軸方向に移動させる回転軸移動手段よりなることを特徴とする。
【0025】
また、前記複数のブレードからなるブレード抵抗体の外径Dと、前記分級ローターの外径dとの比(d/D)が、0.95~0.75であることを特徴とする。
【0026】
また、前記粗粒を排出する排出口に、排出量調整手段を更に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、分級装置内圧が安定し、高精度の分級において必要とされる微粒の排出流量が、安定し、そして、分級精度が良くなるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例1の分級装置の要部の説明用縦断側面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4】本発明の実施例1の分級装置の分級ローターの分級羽根の説明図である。
図5】本発明の実施例1の分級装置の分級ローターの整流羽根の説明図である。
図6】本発明の実施例1の分級装置内の内圧の変動を示す図である。
図7】本発明の実施例1の微粒スラリーの流量の変動を示す図である。
図8】本発明の実施例1の分級装置による、原料スラリーから得られた微粒スラリーの粒度分布図である。
図9】本発明の実施例1のディスク外径とローラ外径との比率に対する、微粒流量の安定性を評価した表である。
図10】本発明の実施例2の分級装置の要部の説明用縦断側面図である。
図11】本発明の実施例3の分級装置の説明用縦断側面図である。
図12】従来の分級装置の説明用縦断側面図である。
図13】従来の分級装置の分級ローターの説明用縦断側面図である。
図14】従来の分級装置の分級ローターの説明用平面図である。
図15】ディスク方式を用いた分級装置の説明用縦断側面図である。
図16】ディスク方式を用いた分級装置の要部の説明用縦断側面図である。
図17】ディスク方式を用いた分級装置のディスク部の説明用平面図である。
図18】ディスク方式を用いた分級装置の分級ローターの説明用平面図である。
図19】ディスク方式を用いた分級装置の該分級装置内の内圧の変動を示す図である。
図20】ディスク方式を用いた分級装置の微粒スラリーの流量の変動を示す図である。
図21】ディスク方式を用いた分級装置による、原料スラリーから得られた微粒スラリーの粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0030】
(3.本願発明の概要)
【0031】
本発明の実施例1を図面によって説明する。なお、前記分級装置と同じ部分は、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0032】
本発明においては、図1図3に示すように、メカニカルシール部を設ける代わりに、ディスク部を設けた前記分級装置において、前記枠体14内の、前記分級羽根15より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して、回転中心から放射状に配置された、又は、羽根の長手方向を向く、幅方向に対する中心線が回転中心を向かないように配置された複数の整流羽根20を設ける。
【0033】
また、円形状に配置した複数の前記ブレードからなるブレード抵抗体の外径D(複数のブレードの外端から構成される円の外径)と、分級ローターの外径d(複数の分級羽根の外端から構成される円の外径)との比率(d/D)を0.95~0.75の範囲、好ましくは、0.9~0.8の範囲、更に好ましくは、0.9~0.85の範囲となるように、前記ブレード抵抗体と、前記ローターを形成する。
【0034】
本発明においては、整流羽根20を設けたことにより、分級ローター内の流れを安定化させる以外に、後述するように、ハウジング2内の流れ(ブレードおよびローター近傍の流れ)を改善することができることが分かり、ディスク部を設けた分級装置においても、分級精度を良くできるようになった。
【0035】
また、比率(d/D)を前記範囲とすることにより、ハウジング2内の流れを改善することができることが分かり、ディスク部を設けた分級装置においても、分級精度を良くできるようになった。
【0036】
なお、前記整流羽根20を省略してもよい。また、比率(d/D)を前記範囲外としてもよい。
【0037】
また、前記実施例は湿式の分級装置について説明したが、乾式の分級装置であってもよい。
【0038】
また、前記分級装置は、回転軸を垂設して設けたタイプの分級装置であるが、横設させたものなど、垂設以外のタイプの分級装置であってもよい。
【0039】
また、前記ディスク部の円板17は、前記分級ローターの上側の板14aであってもよい。
【0040】
(3.1.分級羽根の説明)
【0041】
なお、図4は、整流羽根20を省略した分級ローター3を示し、該分級ローター3の各分級羽根15は、例えば、それぞれ同一形状に形成された、前面側の翼面(回転方向を向く面)15aの基部(内周端)から先端(外周端)に向かう形状が直線状の平板よりなり、前記分級ローター3の回転中心から等距離離間して、周方向に等間隔に配置して設けられる。
【0042】
なお、前記各分級羽根15は、その外端が前記板14a、14bの外端に一致、或いは、若干内側に位置するように設けられる。
【0043】
また、前記分級羽根15は、例えば、分級室内の半径方向全域で、遠心力F=抗力Rとなる分級粒子径が一定となるように形成した、例えば、前記各分級羽根が、分級ローターの回転軸方向の高さが一定で、円周方向における厚みが基部(内周端)から先端(外周端)に向かって厚くなるように形成された分級羽根や、分級室内において分級粒子径が一定ではない、例えば、厚みが一定の分級羽根であってもよい。
【0044】
また、前記各分級羽根15は、前面の基部(内周端)から先端(外周端)に向かう形状が直線状の平板以外に、基部から先端に向かう形状が円弧などの弧状であってもよく、また、ベルヌーイ曲線からなる弧であってもよい。
【0045】
また、前記分級羽根15は、回転中心より放射状に設けるか、或いは、羽根の長手方向を向く、幅方向に対する中心線が回転中心を向かないように設けられ、また、羽根の中心線が回転中心を向かないように設けられる場合、前記分級羽根15の中心線Qと前記分級ローター3の回転方向Pとのなす角度αは、特に、限定はないが、例えば、0度より大きく45度以下(又は未満)、又は、0度より大きく40度以下(又は未満)、又は、0度より大きく30度以下(又は未満)、又は、0度より大きく20度以下(又は未満)の場合には、分級精度を良くすることができるようになる。
【0046】
(3.2.整流羽根の説明)
【0047】
また、前記各整流羽根20は、例えば、図5に示すように、それぞれ同形状に形成された、前面側の翼面の基部(内周端)から先端(外周端)に向かう形状が直線状の平板よりなり、前記分級ローターの回転中心から等距離離間して、周方向に等間隔に配置して設けられる。
【0048】
なお、前記分級羽根15と整流羽根20の数は、特に限定はないが、前記整流羽根20の数は、前記分級羽根の数よりも少ないこと望ましく、但し、あまり少なくなると、整流効果がなくなる為、前記整流羽根20の数は、例えば、前記分級羽根15の数の1/4倍以上の整数の数、又は、1/3倍以上の整数の数、又は、1/2倍以上の整数の数である。
【0049】
また、前記分級羽根15と、前記整流羽根20とは、所望の距離離間して設けられる。
【0050】
なお、図5に示すように、該整流羽根20は、回転中心から放射状に配置、すなわち、該整流羽根20の、該羽根の長手方向を向く、幅方向に対する中心線Sと前記分級ローターの回転方向Rとのなす角度βを90度としたもの以外に、該なす角度βを、例えば、前記45度より大きく135度以下となるように傾斜させて設けるようにしてもよい。即ち、前記整流羽根20は、回転中心から放射状に配置する、或いは、羽根の長手方向を向く、幅方向に対する中心線が回転中心を向かないように配置するようにしてもよい。
【0051】
(3.3.ブレードの説明)
【0052】
前記ブレード18は、例えば、図2に示すように、それぞれ同一形状に形成された、断面矩形状の直線状の平板(棒体)よりなり、前記分級ローター3の回転中心から等距離離間して、周方向に等間隔に配置して設けられる。
【0053】
なお、前記各ブレード18は、その外端が前記円板17の外端に一致、或いは、若干内側に位置するように設けられる。
【0054】
また、前記ブレード18は、回転中心から放射状に配置される以外に、該ブレードの長手方向を向く、幅方向に対する中心線が回転中心を向かないように配置するようにしてもよい。
【0055】
また、前記ブレードの数は、特に制限はないが、13枚~20枚が好ましく、特に16枚が好ましい。
【0056】
(3.4.本願発明の作用と効果)
【0057】
次に、本発明の作用と効果を説明する。
【0058】
本発明の分級装置においては、前記ハウジング2内に、前記原料タンク9からの原料スラリーを定量、供給ポンプ10により供給口11から供給し、該分級装置1内に設けられた高速回転する分級ローター3により、原料スラリーが粗粒スラリーと微粒スラリーとに分級され、そして、粗粒スラリーは、前記分級装置1のハウジング2の排出口8からハウジング2外に排出されて、また、前記分級ローター3の外周部から分級ローター3内に流入した微粒スラリーは、前記分級ローター3に形成された、前記回転軸4の貫通孔6の一端に連通した排出口3aから、前記分級ローター3に固定された回転軸4の貫通孔6を通って、該貫通孔6の他端から前記回収室7に流入し、回収タンクに回収されるようになる。
【0059】
また、前記ディスク部と、前記天井部との間に隙間があっても、前記ディスク部の高速回転により、前記ハウジング2内のスラリーが前記スラリー排出室に殆ど、入り込むようなことがなく、前記ハウジング2内を密閉することができるようになる。
【0060】
そして、メカニカルシール方式の場合においては、ローターの最高周速度が32m/s(ローター径が90mmで7000rpm、最低回転数は500rpm)が限界であったが、ディスク部方式を採用することにより、少なくとも50m/s以上(ローター径が90mmで11000rpm以上)の回転速度とすることができ、原理的には、回転数に制限がなくなるようになった。
【0061】
また、本発明において、前記同様に実験を行った結果、図6に示すように、分級装置内圧が安定し、高精度の分級において必要とされる微粒の排出流量が、図7に示すように、安定し、そして、図8に示すように、分級精度が良くなった。
【0062】
なお、図9は、ブレード抵抗体の外径Dと分級ローターの外径dとの比率(d/D)を1.0~0.7(例えば、ブレード抵抗体の外径Dを65mmとし、分級ローターの外径dを65mm~45mm)に変化させた場合の、微粒スラリーの排出流量の安定性を評価した図である。その結果、0.9~0.8とすることにより、安定することが分かった。
【実施例2】
【0063】
(4.第2実施例の説明)
【0064】
図10は、本発明の分級装置の第2の実施例を示し、この実施例においては、前記第1の実施例における分級装置において、前記ディスク部を、前記天井面に離接させる離接手段(図示せず)を、別途設け、スラリー濃度やスラリー粘度等に応じて、ディスク部のブレードと天井板の内側面とのクリアランスを変更できるようにする。
【0065】
前記離接手段は、例えば、前記ハウジング2の上方において、前記回転軸4を、前記ハウジング2に対して相対的に、上下動させる回転軸上下動手段(図示せず)を設け、該回転軸上下動手段により、前記回転軸4を上下動させることにより、該回転軸4に固定された前記円板17を上下動させて、ディスク部のブレード18と天井板2aの内側面とのクリアランスを変更できるようにする。
【0066】
なお、前記離接手段として、前記回転軸上下動手段を設ける代わりに、前記ディスク部の円板17を、前記回転軸4に対して相対的に上下動移動自在させる円板上下動手段を設け、該円板上下動手段により、前記円板17を、前記回転軸4に対して相対的に上下動させて、ディスク部のブレード18と天井板2aの内側面とのクリアランスを変更できるようにしてもよい。
【0067】
この実施例によれば、スラリー濃度やスラリー粘度等に応じて、ディスク部と天井面のとのクリアランスを変更させることにより、前記圧力と、微粒の流量を安定させることができるようになる。
【実施例3】
【0068】
(5.第3実施例の説明)
【0069】
図11は、本発明の分級装置の第3の実施例を示し、この実施例においては、前記第1の実施例、または、第2の実施例における分級装置において、粗粒排出口8に接続した排出管21に、排出ポンプ22と該排出ポンプ22の排出量を、前記供給ポンプの原料供給量に応じて制御する制御装置とからなる流量調整手段を別途設ける。
【0070】
この実施例によれば、前記供給ポンプの原料供給量に応じて、前記排出ポンプ22により、粗粒の排出量を制御することにより、微粒の排出量も安定し、高精度の分級が可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の分級装置は、湿式分級や乾式分級を扱う各工業界全般、例えば、金属工業、化学工業、薬品工業、化粧品工業、顔料、セラミック工業、その他の工業に用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 分級装置
2 ハウジング
2a 天井板
2b 貫通孔
3 分級ローター
3a 排出口
4 回転軸
5 回転手段
6 貫通孔
7 回収室
8 排出口
9 原料タンク
10 供給ポンプ
11 供給口
12 メカニカルシール部
13 支持部
14 枠体
14a 板
14b 板
15 分級羽根
16 分級室
17 円板
18 ブレード
19 スラリー排出室
20 整流羽根
21 排出管
22 排出ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図20
図21