(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】2室型リザーバを備えた注入システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20220824BHJP
A61M 5/148 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61M5/142 502
A61M5/148 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020088399
(22)【出願日】2020-05-20
(62)【分割の表示】P 2016500965の分割
【原出願日】2014-03-10
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505403186
【氏名又は名称】ケアフュージョン 303、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】リサ・デイビス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・バターフィールド
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-042088(JP,A)
【文献】特開平08-336573(JP,A)
【文献】特開平11-244394(JP,A)
【文献】特開平11-137681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0275590(US,A1)
【文献】特開2001-170175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入システムであって、
送出アセンブリと、
一定長さの第1チューブと、
液圧アセンブリと、
第2チューブを含む患者側拡張セットと、を含み、
前記送出アセンブリは、
作動液リザーバと、
前記一定長さの第1チューブを通して作動液リザーバから供給される作動液に力を付与するように構成された送出機構と、を含み、
前記液圧アセンブリは、
前記一定長さの第1チューブを通して前記作動液リザーバと流体連通するように構成された入口ポートを有する第1の流体室と、
前記患者側拡張セット
の前記第2チューブと流体連通するように構成された出口ポートを有する第2の流体室と、
前記第1の流体室を前記第2の流体室からシールする可撓性の可動仕切りと、を含み、
前記液圧アセンブリは、第1の可撓性層、第2の可撓性層および第3の可撓性層によって形成されるバッグを含み、前記第1の可撓性層および前記第2の可撓性層を周辺シールすることで前記第1の流体室が形成され、前記第2の可撓性層および前記第3の可撓性層を周辺シールすることで前記第2の流体室が形成され、前記第2の可撓性層が前記可撓性の可動仕切りであり、
患者側からの逆流を防止する逆止弁を有する止め栓は、前記第2の流体室の再充填が行えるように、
前記第2チューブに取り付けられ、
前記送出アセンブリは、前記液圧アセンブリから離間する方向に流れるように、前記一定長さの第1チューブを通じて前記第1の流体室から前記作動液を引き込むことで、前記第2の流体室に注入液を再充填するように構成され、
前記注入液を患者に注入する間において、
前記送出アセンブリは、前記一定長さの第1チューブを通じて、前記作動液リザーバに含まれる前記作動液を送出して前記第1の流体室内へ流入させ、前記注入液は
前記第2チューブ、前記出口ポートおよび前記止め栓を通して前記第2の流体室から流出し、
前記第2の流体室を再充填する間において、前記止め栓の前記逆止弁が前記第2の流体室と注入液供給部との間での流動を可能に
し、前記注入液供給部は前記止め栓と接続され、再充填される注入液は、前記注入液供給部から、前記第2チューブにおいて前記止め栓および前記出口ポートを順に流れて前記第2の流体室に流入することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記送出機構によって付与される前記力により、前記作動液リザーバから前記一定長さの第1チューブを通して前記第1の流体室内に前記作動液を流入させて前記仕切りを移動させることで、前記注入液が前記出口ポートを通して前記第2の流体室から流出することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の流体室内に流入された流体により、前記仕切りが遠位端に向かう方向に移動して、前記第2の流体室中に含まれる前記注入液が前記出口ポートを通じて送達されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
前記送出アセンブリは、1つまたは複数の圧力センサーをさらに含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記送出アセンブリは、前記システムの動作に関する情報を提供する1つまたは複数の視覚的表示器をさらに含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記1つまたは複数の視覚的表示器は、前記システムの1つまたは複数のコンポーネントを照射する1つまたは複数のLEDを含むことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数のLEDは、色により注入状態を示すことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記液圧アセンブリは、前記送出アセンブリに可逆的に結合されることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記患者側拡張セットは、15.24センチメートル未満であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記患者側拡張セットは、プライミング量が0.7mL未満であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記液圧アセンブリは、内部に前記バッグが封入される剛性の固定容積ハウジン
グをさらに含み、前記ハウジングは、前記バッグに対して一定容積を維持することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2013年3月15日付出願の2室型リザーバを備えた注入システム(Infusion System with Dual-Chambered Reservoir)と題された、米国特許出願シリアル番号第13/841,369号に対する優先権を主張する。同文献の開示内容は、参照によりそのすべてが本願の開示内容に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
静脈内(IV)流体送達ポンプは、患者へ流体を送達する或いは患者の身体から流体を抽出するために用いられる。IV流体注入を行うためには、典型的には患者を点滴ラインによりポンプへつなぐ必要がある。これにより、患者の動きやすさが制限されたり、点滴ラインのデッドスペースにおいてかなりの量の医療用流体が失われることになる。さらに、点滴ラインが長いことで、薬剤が患者に届くまでの時間が長くなる。患者の動きやすさを増すためには、患者を点滴ラインから切り離すかまたは点滴ラインの長さを延長すればよい。しかし、点滴ラインを患者から切り離した場合、血液感染の可能性が高まり、ラインの閉塞や過度の誤警報に繋がる。チューブの長さを増加させた場合も、ライン中のデッドスペースが増加する。
【0003】
さらに、チューブは、主に可撓性材料(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタンおよびシリコーンゴム)によって形成される。システムのチューブおよびプラスチックコンポーネントが、プラスチックを損傷させるおよび/または流体経路内に化学物質を放出させる特定の治療薬に晒された場合、影響を受けるかまたは劣化することがある。シリコーンゴムは、酸素および窒素移動の透過速度が比較的高いため、気体が大気中からチューブ壁を通じて医療用流体内へ移動する危険性がある。このような気体の移動が発生した場合、医療用流体中に気泡が発生することになり、気泡がチューブを通じて患者の血流に流れた場合、患者が空気塞栓症になる危険性がある。PVCの場合、気体遮断性は良好であるが、医療用流体、特にドセタキセル、パクリタキセル等の腫瘍薬剤内に浸出しやすいフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)可塑剤を含むことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記を鑑みて、向上した流体送達システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概要]
本明細書では、例えば病院環境において患者に流体を注入するための医療用流体注入システムが記載されている。
【0006】
一つの態様として、作動液リザーバと、一定長さのチューブを通して作動液リザーバから供給される作動液に力を付与するように構成された送出機構とを有する送出アセンブリを含む注入システムが開示されている。注入システムは、一定長さのチューブと流体連通するように構成された入口ポートを有する第1の流体室と、患者側拡張セットと流体連通するように構成された出口ポートを有する第2の流体室と、第1の流体室を第2の流体室からシールする可撓性の可動仕切りとを有する液圧アセンブリを含む。
【0007】
送出機構により力が付与されると、作動液リザーバからの流体が一定長さのチューブを通じて第1の流体室内に移動して、仕切りを移動させることで、、注入液が出口ポートを通じて第2の流体室から出て行く。仕切りは、仕切りの近位側に配置された第1の流体室と仕切りの遠位側に配置された第2の流体室との間で摺動可能に配置してもよい。第1の流体室内へ送り出された流体により、仕切りを遠位方向に移動させて、第2の流体室に含まれる注入液を出口ポートを通じて送達することができる。液圧アセンブリは、シリンジバレルを有するシリンジアセンブリであってもよく、仕切りがシリンジバレル内に配置されている。システムは、仕切りに可逆的に連結され、取り外し可能なハンドルを有するプランジャーをさらに含んでいてもよい。
【0008】
システムは、第1の流体室の近位端に接続されて第1の流体室の近位端をシールするキャップをさらに含んでもよい。キャップは、第1の流体室の内面に延びかつ第1の流体室の内面をシールするように構成されたステム部を有していてもよい。入口ポートは、キャップを貫通して延びてもよい。キャップは、さらにベントフィルターを含んでいてもよい。送出アセンブリは、1つまたは複数の圧力センサーをさらに含んでいてもよい。送出アセンブリは、システムの動作についての情報を提供する1つまたは複数の視覚的表示器をさらに含んでいてもよい。1つまたは複数の視覚的表示器は、システムの1つまたは複数のコンポーネントを照射する1つまたは複数のLEDを含んでいてもよい。1つまたは複数のLEDは、色により注入状態を示すものでもよい。一定長さのチューブは、低コンプライアンスチューブとすることができる。液圧アセンブリは、送出アセンブリへ可逆的に接続されるものでもよい。患者側拡張セットは、少なくとも約6インチ未満とすることができる。患者側拡張セットのプライミング量は約0.7mL未満とすることができる。
【0009】
液圧アセンブリは、第1の可撓性層、第2の可撓性層および第3の可撓性層によって形成されるバッグをさらに含むものとすることができる。第1の可撓性層および第2の可撓性層の周辺シールにより、第1の流体室を形成してもよい。第2の可撓性層および第3の可撓性層の周辺シールにより、第2の流体室を形成してもよい。第2の可撓性層は、可撓性の可動仕切りでもよい。液圧アセンブリは、内部にバッグが封入される堅牢で一定の容積を有するハウジングをさらに含むものとすることができる。ハウジングは、バッグに対して一定容積を維持するものとできる。
【0010】
本明細書中に記載される発明の要旨の1つまたは複数の変形例の詳細について、添付図面および以下の記載において説明する。本明細書中に記載される発明の要旨の他の特徴および利点は、明細書および図面ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態による注入システムの模式図である。
【
図2】一実施形態による、拡張セットへ結合された液圧アセンブリの模式図である。
【
図4】別の実施形態による注入システムの模式図である。
【
図5】
図5Aは、
図4の実施形態による注入液リザーバの模式的側面図である。
図5Bおよび
図5Cはそれぞれ、
図5Aの注入液リザーバの模式的上面図および底面図である。
図5Dは、
図5AのD-D線に沿った注入液リザーバの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な図面において、類似の参照符号は類似の要素を示す。
[詳細な説明]
【0013】
本明細書では、例えば病院環境において患者に流体を注入するための医療用流体注入システムが記載される。より詳細には、本明細書では、医療用流体注入液をポンプアセンブリコンポーネントから分離させるための閉鎖構成において、医療用流体注入液を患者へ送達する2室型リザーバを含む薬剤注入システムが記載される。本明細書中に記載される注入システムにより、薬剤を患者のすぐ近くまで移動させることが可能になるため、流体をシステムから患者へ送達する際、プライミング量が少なくなり、拡張セットが短くなり、ラインにおけるデッドスペースが最小化されるという利点が得られる。本明細書中に記載される注入システムは、少量の流体あるいは低流量でまたは間欠的に注入される流体の送達を促進することができる。本明細書中に記載される注入システムの他の実施形態を、多量の流体の送達に用いることができる。本明細書中に記載される注入システムは、注入時または注入の間に動きやすさの向上が望まれる患者に利益を供することができる。また、本明細書中に記載される注入システムは、プライミング量が少ないことが必要不可欠となる小児患者または新生児患者などの患者に利益を供することができる。さらに、本明細書中に記載される注入システムは、プライミングにおけるデッドスペースが低下することにより、骨髄、幹細胞または他の材料等の高価なまたは貴重な医療用流体の送達を向上させることが可能になる。
【0014】
本明細書中に記載される注入システムは、例えば、CareFusion社(カリフォルニア州サンディエゴ)製のALARISシステムまたは米国特許第7,356,382号(同文献は参照によりそのすべてが本願の開示内容に含まれるものとする)中に記載の注入ポンプ)等の既存の注入ポンプと共に用いることができる。また、本明細書に記載の注入システムは静脈内注入に限定されず、非経口、動脈内、心臓内、骨内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、硬膜外、脳内、胃腸等への注入を含むがこれらに限定されない、カテーテルを通じた患者へのあらゆる種類の注入に用いることが可能であることが理解されるべきである。
【0015】
図1は、一実施形態による注入システム100の模式図であり、2室型リザーバを含んでいる。注入システム100は、使い捨てシステムでよいが、再利用可能であってもよいし、あるいは再利用可能なコンポーネントを含んでいてもよい。この実施形態は少量の送達において特に有用であるが、注入システム100を多量の送達に用いることが可能であることが理解されるべきである。
【0016】
注入システム100は、送出アセンブリ5と、チューブ10と、液圧アセンブリ15と、液圧アセンブリ15の遠位端から患者25の投与部位へ延びる拡張セット20とを含む。液圧アセンブリ15は、2室型シリンジバレルを含み、当該2室型シリンジバレルは、第1の流体室がチューブ10および送出アセンブリ5と流体連通し、第2の流体室が拡張セット20および患者の投与部位25と流体連通する。第1の流体室は、液圧アセンブリ15中に配置された仕切り40の近位側に配置された作動室35である。第2の流体室は、仕切り40の遠位側に配置された注入液室45である。本明細書中においてより詳細に説明するように、作動室35は、送出アセンブリ5からチューブ10を通じて送り出される水または他の種類の流体等の作動液を受け入れることができる。作動室35内へ送出された作動液により、仕切り40が遠位方向に付勢され、その結果、注入液室45内に含まれる注入液が拡張セット20を通じて患者25の投与部位側へ送達される。
【0017】
再度
図1を参照すると、送出アセンブリ5は、作動液リザーバ30と、作動液リザーバ30から出口を通じてチューブ10へと流れる流体の流れを発生させるモータまたはポンプ要素(図示せず)とを含む。チューブ10は、低コンプライアンスチューブである。いくつかの実施形態において、作動液リザーバ30はシリンジバレルであり、当該シリンジバレルを通じてプランジャーが摺動することにより、殺菌した流体がシリンジバレルの遠位出口から押し出される。送出アセンブリ5のポンプ構成は変更可能であり、シリンジポンプの構成に限定されないことが理解されるべきである。注入システム100の送出アセンブリ5は、入力および制御機能、表示等の出力または警告を発することができる他の機能、プログラミングシステムおよびメモリシステム、通信システム、ポンプアセンブリの他のコンポーネントを含む1つまたは複数のコンポーネントに結合するかまたはそのようなコンポーネントを含むように構成される。
【0018】
送出アセンブリ5は、作動液リザーバ30に含まれる流体をチューブ10を通じて第1の方向に送出して液圧アセンブリ15の作動室35内へ流入させるように構成される。いくつかの実施形態において、送出アセンブリ5は、チューブ10を通じて作動室35に流入する流体、好適には殺菌された流体の流れを発生させる。送出アセンブリ5は、液圧アセンブリ15から離間する方向に流れるように、チューブ10を通じて流体を逆方向に引き込むことで、以下により詳細に述べるように、例えば、注入液室45に注入液を再充填するように構成される。送出アセンブリ5は、ポンプ要素から付与される圧力または例えば閉塞に起因して注入時に発生する可能性がある圧力変化を検出する圧力感知機能を含む。圧力センサーは、注入システムの作動液側内および注入システムの注入液側内または両方に配置される。
【0019】
送出アセンブリ5は、注入システム100の動作についての情報をユーザへ提供する視覚的表示器を含む。いくつかの実施形態において、送出アセンブリ5は、作動液リザーバ30等の送出アセンブリ5の1つまたは複数の部分に光を送る1つまたは複数のLED光などの視覚的表示器を含む。例えば、作動液リザーバ30の1つまたは複数の部分を透明または半透明にすることにより、動作時において視覚的表示器の光を作動液リザーバ30の1つまたは複数の領域および/またはチューブ10を通じて送ることができる。例えば、作動液をチューブ10内へ送出し、注入液が患者へ送達されると、緑色の光(または他の何らかの色)が送られ、チューブ10が緑色(または他の何らかの色)になり、注入システム100が活性注入状態であることが示される。注入が完了すると、赤色光(または他の何らかの色)が送られ、チューブ10が、注入の完了を示す赤色になる。送出アセンブリ5が液圧アセンブリ15への注入液の再充填を開始すると、青色光(または他の何らかの色)が送られ、チューブ10が青色(または他の何らかの色)になり、注入システム100が再充填の状態であることが示される。注入システム100の領域のうち1つまたは複数の領域が1つまたは複数の視覚的表示器によって照射されることが理解されるべきである。
【0020】
図2は、拡張セット20に結合された液圧アセンブリ15の模式図である。液圧アセンブリ15は、ハウジング47(例えば、シリンジバレル)内に配置された、Oリングまたはクワッドリング等のストッパーまたはシール面を有する剛性のプランジャー等の仕切り40を含む。液圧アセンブリは、使用後に廃棄することができる。仕切り40およびハウジング47は、相補的な形状であり、仕切り40がハウジング47内で摺動可能なシールを形成するように、相互に摺動可能に係合する。仕切り40は、近位の作動室35を2室型ハウジング47を形成する遠位の注入液室45からシールする。液圧アセンブリ15は、作動室35を貫通して延びて仕切り40へ可逆的に結合する取り外し可能なハンドル52を有するプランジャー50をさらに含む。ハウジング47は、適切な材料(例えば、適切なポリマー、セラミック、金属、ガラスまたは他の実質的に剛性または硬質の材料)で形成される。いくつかの実施形態において、仕切り40のシール面または仕切りそのものは、ハウジング47よりも柔軟な材料(例えば、ブチルゴム、シリコーン、液状シリコーンゴム、合成ゴム材料、フッ素重合体エラストマーおよび他の医療グレード材料等の様々なエラストマー材料が挙げられるがこれらに限定されない)。仕切り40は、プランジャー先端型シール面と、仕切り40の1つまたは複数の剛性のコンポーネントに結合される1つまたは複数のOリングまたはクワッドリングとを含む。ハウジング47は、例えば、0.25mL、0.5mL、1mL、3mL、5mL、10mL、30mLまたはそれ以上の様々なサイズのいずれかを含む。本実施形態の注入システム100は、少量の送達に特に有用であるが、注入システム100を多量の送達に用いることも可能であることが理解されるべきである。
【0021】
さらに
図2を参照すると、ハウジング47は、内径または内面75を規定する。仕切り40は、ハウジング47の内面75と摺動可能に係合し、ハウジング47の内面75をシールする外面42を有する。上記したように、仕切り40は、ハウジング47内に相互にシールされた2つの流体室を形成する。1つの流体室は、仕切り40の遠位側に配置されかつ遠位出口55と流体連通するように構成された注入液室45である。第2の流体室は、仕切り40の近位側に配置されかつチューブ10と流体連通するように構成された作動室35である。
【0022】
液圧アセンブリ15は、拡張セット20と結合されるように構成された遠位出口55をさらに含む。
図2に示すように、拡張セット20は、遠位出口55から患者の投与部位25まで延びるチューブ90を含む。拡張セット20は、Halkey-Robertsまたは摺動クランプ等のクランプ92と、逆止弁を有する止め栓94と、近位の雌コネクタと、ルアーロックコネクタ等の遠位の雄コネクタ96のうち、一つまたは複数を含む。患者が送出アセンブリ5から切り離された場合でも、注入液室45と投与部位25との間の拡張セット20は影響を受けず、完全性が維持される。液圧アセンブリ15および/または拡張セット20は、このような可動期間の間、患者の腕にバンド止めしするか、あるいは患者の衣服にクリップ止めすることができる。
【0023】
拡張セット20のチューブ90は、長さを比較的短くすることができるため、液圧アセンブリ15を患者の投与部位25に近接して配置することができる。チューブ90は、プライミング量が小さい小内径および微小内径のサイズであり、チューブのサイズおよび長さに応じて変化させる。いくつかの実施形態において、チューブ90の長さは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、8または10インチである。いくつかの実施形態において、チューブ90は、少なくとも約6インチ未満である。いくつかの実施形態において、チューブ90は、チューブ10よりも短い。いくつかの実施形態において、プライミング量は、約0.1mL、0.15mL、0.2mL、0.25mL、0.3mL、0.4mL、0.5mL、0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mLまたは1.0mLである。いくつかの実施形態において、プライミング量は、少なくとも約0.7mL未満である。いくつかの実施形態において、プライミング量は、およそ0.2mLである。拡張セット20は、デッドスペースが最小限ですむため、小児患者または新生児患者の治療や、極めて少量(例えば、1cc)の送達において特に有用である。そのため、骨髄移植材料、幹細胞または他の高価なまたは貴重な医療用流体の送達に有利である。いくつかの実施形態において、拡張セット20は、CareFusion社(カリフォルニア州サンディエゴ)製のSMARTSITE拡張セットである。
【0024】
図3に示すように、液圧アセンブリ15は、キャップ70へ結合されロックされるように構成された近位端65をさらに含む。いくつかの実施形態において、キャップ70は、ハウジング47の近位端65の外面に設けたねじ山またはフランジ等の接合部品74と接合するように構成された上部72を含む。キャップ70の下側のステム部76は、キャップ70が近位端65に結合されると、ハウジング47内に延びる。ステム部76は、ハウジング47の内面75をシールするように構成された1つまたは複数のシール78(例えば、Oリングまたはクワッドリング)を含む。キャップ70の上部72は、ベントフィルター80と、キャップ70の上部72およびステム部76を貫通するアクセスポート85とを含む。いくつかの実施形態において、キャップ70は、通気孔を遮断する所定位置までキャップ70をひねるまで通気を行う導管を含む。いくつかの実施形態において、ベントフィルター80は、作動液リザーバがプライムされていることを、例えば色の変化によって視覚的にユーザへ通知してもよい。いくつかの実施形態において、アクセスポート85は、CareFusion社(カリフォルニア州サンディエゴ)製のSMARTSITEである。アクセスポート85は、チューブ10と接続するように構成される。アクセスポート85は、チューブを可逆的に接続および切断することができるように構成される。他の実施形態において、チューブは、可逆的に接続できないようにアクセスポート85に接着される。キャップ70がハウジング47の近位端65でロックされ、チューブ10がアクセスポート85に接続されると、作動室35および送出アセンブリ5が流体連通する。作動液リザーバ30からの作動液をチューブ10およびアクセスポート85を通じて作動室35内へ送り出すことができる。作動室35内で流体の圧力が上昇するにつれ、仕切り40が遠位方向に付勢されて、注入液室45の大きさが減少し、注入液室45内の注入液が遠位端55を通じて拡張セット20内へ押し出される。
【0025】
図4は、システムの注入液側をシステムの揚水側から分離させる2室型リザーバを同様に含む、注入システム200の別の実施形態を示す模式図である。この注入システム200は再利用可能なシステムであるが、使い捨てシステムまたは使い捨てコンポーネントを含むものでももよい。この実施形態を多量または少量の送達に用いることができる。
【0026】
注入システム200は、送出アセンブリ205と、チューブ210と、液圧アセンブリ215と、液圧アセンブリ215の出口255から患者225の投与部位まで延びる拡張セット220とを含む。液圧アセンブリ215は、2室型リザーバ218を有し、当該2室型リザーバ218においては、第1の流体室がチューブ210および送出アセンブリ205と流体連通し、第2の流体室が拡張セット220および患者の投与部位225と流体連通する。第1の流体室は、液圧アセンブリ215の可撓性仕切り240の「送出側」に配置された作動室235である。第2の流体室は、可撓性仕切り240の「注入液側」に配置された注入液室245である。以下により詳細に述べるように、作動室235は、送出アセンブリ205によりチューブ210を通じて送り出される、水、塩水、油または他の適切な種類の流体を含む殺菌された流体または殺菌されていない流体である作動液を受け入れることができる。作動液の区画が薬剤送達の区画から完全に分離されているため、流体は殺菌されていなくてもよい。作動液が作動室235内へ送出されると、可撓性仕切り240は、注入液室245中に含まれる注入液を拡張セット220を通じて患者225の投与部位へ送達する方向に移動する。
【0027】
再度
図4を参照すると、送出アセンブリ205は、作動液リザーバ230と、作動液リザーバ230からチューブ210内への流体の流れを発生させるポンプ要素232とを含む。いくつかの実施形態において、作動液リザーバ230は、ポールから吊り下げられるIVバッグまたはシリンジバレル型のリザーバであり、シリンジバレル型のリザーバでは、プランジャーが内部を摺動することで、シリンジバレルの遠位出口から流体が吐出される。作動液リザーバ230およびポンプ要素232を含む送出アセンブリ205の構成を変更してもよいことは理解されるべきである。ポンプの構成は、シリンジポンプであってもよいし、あるいは多量の揚水により適した別の種類のポンプ(例えば、蠕動型ポンプ要素)であってもよい。注入システム200の送出アセンブリ205は、入力および制御機能、表示等の出力または警告を発することができる他の機能、プログラミングシステムおよびメモリシステム、通信システム、ポンプアセンブリの他のコンポーネントを含む1つまたは複数のコンポーネントに結合するかまたはそのようなコンポーネントを含むように構成される。
【0028】
ポンプ要素232は、作動液リザーバ230内に含まれる流体をチューブ210を通じて第1の方向に送出して液圧アセンブリ215の作動室235内に流入させるように構成される。また、ポンプ要素232は、液圧アセンブリ215から離間する方向に流れるように、チューブ210を通じて流体を逆方向に引き込むことで、例えば、注入液室245に注入液を再充填するように構成される。送出アセンブリ205、作動液リザーバ230およびポンプ要素232のうちの1つまたは複数の要素は、ポンプ要素232により付与される圧力または例えば閉塞に起因して注入時に発生する可能性がある圧力変化を検出する圧力感知機能を含む。圧力センサーは、注入システムの作動液側内および注入システムの注入液側内または両方に設けられ得る。注入システム200は、上記したような視覚的表示器を含んでいてもよい。
【0029】
再度
図4を参照すると、近位セットおよび遠位拡張セット220の構成は変更することができる。いくつかの実施形態において、作動液は、溶液コンテナ中へ突き刺す滴下室等の作動液リザーバ230に収容してもよい。ローラークランプまたは他のデバイス等のクランプを用いて、プライミング時の流れを制御することができる。ポンプ要素232は、精確に流体を送達するために圧縮永久ひずみが低い特性を備えたエラストマーチューブセグメントを含んでもよい。フロー停止装置を用いて、注入液の自由な流れを防止することができる。チューブ210は、ルアー287または入口285に接続される他のデバイスを有する近位入口285において液圧アセンブリ215に結合される。液圧アセンブリ215は、ルアー295または出口255に接続される他のデバイスを有する遠位出口255において拡張セット220結合される。止め栓294が、出口255でルアー295に取り付けられる。止め栓294により、例えば薬剤師が注入液室245に医療用流体を充填することが可能になる。止め栓294は、プライミングまたは拡張セット220の洗浄用のアクセスポートまたは二次的薬剤アクセス用のアクセスポートとしても機能する。さらに、偶発的なサイフォンを防止するために、サイフォン防止弁等の弁296を止め栓294に取り付けることができる。例えば、弁296は、流体が任意の静水圧差に起因してサイフォンされることを保護する。サイフォン現象の危険性を低減するために、液圧アセンブリ215を患者の高さに配置することができる。拡張セット220は、患者の投与部位までの接続を比較的短くできる。
【0030】
液圧アセンブリ215は、以下により詳細に述べるように、剛性の固定容積ハウジング247によって封入されあるいは封入されない可撓性の2室型リザーバ218を含む。2室型リザーバ218は、システム200の注入液側の医療用流体をシステム200の送出側のコンポーネント(例えば、水蒸気を通すかまたは注入液中へ浸出するチューブ材料)から分離させる閉鎖システムを提供する。送出側を注入液側から分離させることにより、送出アセンブリ205の1つまたは複数のコンポーネントを最適化することが可能になる。例えば、多量送達ポンプの場合、空気を浸透させるシリコーンチューブに代えて、ブチルゴム等の浸透性が低い別の材料を用いることにより、ラインに空気が入ることで発せられる警告を低減することができる。いくつかの実施形態において、2室型リザーバ218は、比較的多量の薬剤(例えば、シリンジバレルが収容する容積よりも多量の薬剤)を収容できる。2室型リザーバ218は、50mL、100mL、150mL、200mL、250mL、500mL、750mL、1000mLまたはそれ以上を収容できる。他の実施形態において、2室型リザーバ218は、例えば0.2mL、0.25mL、0.3mL、0.35mL、0.4mL、0.5mL、1.0mL、2.0mL、2.5mL、5.0mL、10mL、20mL、30mLまたはそれ以上よりも小量の薬剤を収容できる。また、2室型リザーバ218により、作動液を機械的に揚水することと、システムの注入液側を患者のすぐ近くまで移動させることが可能になるので、ラインにおけるプライミング量の損失を低減させることができる。
【0031】
ここで
図5A~
図5Dおよび
図6A~
図6Dを参照すると、2室型リザーバ218を3層バッグ設計を用いて形成することができる。これらの層は、
図5Bおよび
図5Dに示すように、ルアー287(例えば、雌ルアー)が2室型リザーバ218への入口285を形成する近位端265において一対の層(例えば、層Aおよび層B)の間でシールされた状態で、熱シールまたはRFシール(高周波シール)される。また、これらの層は、
図5Cおよび
図5Dに示すように、ルアー295(例えば、雄ルアー)が2室型リザーバ218からの出口255を形成する反対側の遠位端267において第2の一対の層(例えば、層Bおよび層C)の間でシールされた状態でシールされる。ルアー287および295の位置を変更してもよいことが理解されるべきである。A層およびB層を周辺シールすることで、入口285を通じて近位送出セットからの作動液を受け入れる作動室235が形成される。B層およびC層を周辺シールことで、注入液を含む注入液室245が形成される。可撓性仕切り240(
図5Dに層Bとして図示)により、作動室235を注入液室245から分割でき、以下に述べるように注入液室245からの注入液の送達を促進することができる。2室型リザーバ218の層は、比較的柔軟な材料(ポリマー材料、ポリ塩化ビニル(PVC)、非DEHP可塑化PVC、エチレン酢酸ビニール、ポリプロピレン、コポリエステルエーテル、スチレンエチレンブタジエンおよびポリマー材料の混合物を含む材料が挙げられるがこれらに限定されない)により形成される。これらの層のうち1つまたは複数は、同じ材料または異なる材料によって構成できることが理解されるべきである。他の実施形態において、仕切り240は可撓性の可動材料であり、2室型リザーバ218の外層は、可撓性の低い、より剛性の高い材料により形成される。例えば、層B(すなわち、仕切り240)は可撓性材料であり、層Aおよび層Cは可撓性の低い材料により形成される。以下により詳細に述べるように、可撓性の低い外層により、一体化され一定の容積を有するハウジングとして機能する流体室の容積を制限することができる。
【0032】
仕切り240は、リザーバ218の可撓性の可動中央要素であり、リザーバ218を2つの流体室に分割する。
図6Aは、注入液室245が注入液でほぼ充填され、作動室235がほぼ空の状態の2室型リザーバ218の模式断面図である。作動室235が入口285を通じて流体で充填され、リザーバ218の作動室235側で圧力が増加すると、仕切り240が層Cから離隔してリザーバ218の中心に向かって付勢され、さらに層Aに向かって移動する(
図6Bおよび
図6Cを参照)。そうなると、注入液室245中に含まれる注入液は、出口255を通じて注入液室245(
図5A参照)から流出する。
図6Dは、注入液室245がほぼ空で、作動室235がほぼ満杯で注入がほぼ完了している2室型リザーバ218を示している。
【0033】
次に
図7A~
図7Bを参照すると、液圧アセンブリ215は、可撓性の2室型リザーバ218が一定容積を維持するように、剛性を有する外側ハウジング247を含んでもよい。ハウジング247は、作動室235または注入液室245のいずれか一方が最大容量まで充填されると、2室型リザーバ218の容積と略同じ容積となる。ハウジング247は、50mL、100mL、150mL、200mL、250mL、500mL、750mL、1000mLまたはそれ以上の容積を有する1つまたは複数のリザーバ218を含むように構成することができる。ハウジング247は、0.2mL、0.25mL、0.3mL、0.35mL、0.4mL、0.5mL、1.0mL、2.0mL、2.5mL、5.0mL、10mL、20mL、30mLまたはそれ以上の容積を有する1つまたは複数のリザーバ218を含むように構成してもよい。ハウジング247は、リザーバ218を一定容積に維持することで、作動室235内に揚水される作動液の量と出口255を通じて注入液室245から排出される注入液の量を同一にすることができる。いくつかの実施形態において、ハウジング247は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、PET、ポリアミド(PA)、アクリル、エポキシ、ポリエステル、またはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の透明で剛性を有する材料により形成される。ハウジング247は、2室型リザーバ218をハウジング247から取り外したり交換することができるように、1つまたは複数のヒンジ要素249および閉鎖機構248によって相互に結合された半部247aおよび半部247bを含む。ハウジング247は、アクセスポートを収容する1つまたは複数のリリーフ部を含んでいてもよい。例えば、ハウジング247は、一対の半円形のリリーフ部242を近位端に含み、これらが接合されると入口285において近位ルアー287を収容し、遠位端には一対の半円形のリリーフ部242を含み、これらが接合されると出口255において遠位ルアー295を収容することができる。リリーフ部242の数および形状を変更できることは理解されるべきである。さらに、ハウジング247の形状を変更することが可能であり、図示するような矩形のものに制限されないことは理解されるべきである。他の実施形態において、2室型リザーバ218の外層を可撓性低い材料により形成し、別個の剛性ハウジング247を用いないことも可能である。
【0034】
使用方法
以下、本明細書中に記載される注入システムの使用方法について説明する。一実施形態において、ユーザは、システムの注入液側をプライムした後、システムの作動液側をプライムする。システムの作動液側をシステムの注入液側よりも先にプライムしてもよいことは理解されるべきである。
図1、
図2および
図3を参照すると、ユーザは、シリンジアセンブリ15の注入液室45に患者へ送達すべき薬剤または他の流体注入液を充填する。薬剤は、所望の治療に適した任意の液体注入液である。一実施形態において、例えばハンドル52を手動で後方に引っ張ることで、仕切り40を遠位方向に引っ込めて、注入液室45内を真空状態にして、注入液を遠位出口55を通じてより大型のリザーバまたはバイアルから引き込んで、拡張セット20をプライムすることができる。充填およびプライミングは、送出アセンブリ5を反転モードに設定するかまたは薬局などにおいて用いられるシリンジ充填装置を用いて行うことができることが理解されるべきである。所望量の注入液で注入液室45を満たし、拡張セット20をプライムすると、ユーザは、ハンドル52を取り外し、シリンジアセンブリ15の近位端65にキャップ70を取り付ける。
【0035】
その後、臨床医は、システムの作動液側をプライムする。チューブ10の第1の端部を例えば雄ルアーを介してキャップ70のアクセスポート85に取り付け、チューブ10の第2の端部を送出アセンブリ5に取り付ける。ユーザは、送出アセンブリ5の作動液リザーバ30に含まれる水などの作動液でチューブ10をプライムする。送出アセンブリ5は、作動液リザーバ30からの流体をチューブ10を通じて第1の方向に送出して、作動室35内で流体圧力が増加することで仕切り40を遠位方向に移動させる。仕切り40がハウジング47内を遠位方向に移動すると、注入液室45に含まれる注入液が遠位出口55を通じて拡張セット20内へ吐出され、患者の投与部位25へ移動する。
【0036】
送出アセンブリ5を逆方向に駆動して、システム100の注入液側を再プライムすることができる。シリンジアセンブリ15は、注入液室45を再充填するための逆止弁を有する止め栓94を含む。注入液室45を再充填する間、ユーザは、別個のシリンジまたは注入液供給部を有する他のコンテナを止め栓94の開口ポートに取り付け、止め栓94のハンドルを回して、注入液室45と注入液が充填されたシリンジとの間での流動を可能にする。その後、患者の投与部位25側にハンドルを締める。逆止弁を止め栓94の患者側に設けることにより、患者からの偶発的な逆流を防止することができる。
【0037】
別の実施形態において、
図4を参照すると、ユーザは、システム200の注入液側をプライムした後、システム200の作動液側をプライムする。薬剤師などのユーザは、注入液室245に薬剤または患者へ送達される他の流体注入液を充填する。薬剤は、所望の治療に適した任意の液体注入液である。一実施形態において、シリンジまたは他のシステムを用いて、流体を出口255に注入して、注入液室245を充填することができる。逆止弁296を有する止め栓294を用いて、注入液室245の充填および/または再充填を行うことができる。注入液室245を充填する間、ユーザは、別個のシリンジまたは注入液供給部を有する他のコンテナを止め栓294の開口ポートに取り付け、止め栓294のハンドルを回して、注入液室245と注入液が充填されたシリンジとの間での流動を可能にする。所望量の注入液で注入液室245を満たし、拡張セット220をプライムすると、ユーザは、ハウジング247内にリザーバ218を封入する。
【0038】
臨床医は、システム200の作動液側をプライムする。チューブ210の第1の端部を、ハウジング247のリリーフ部242を通してアクセス可能なリザーバ218のアクセスポート285に取り付け、チューブ210の第2の端部をポンプ要素232に取り付ける。ユーザは、チューブ210を送出アセンブリ205の作動液リザーバ230内に収容された作動液(例えば、水)でプライムする。ポンプ要素232は、作動液リザーバ230からの流体をチューブ210を通じて第1の方向に送出して、作動室235内で充填量が増加して流体圧力が増加することで、作動液室235を注入液室245から分離する仕切り240が移動する。仕切り240がリザーバ218内で移動すると、注入液室245内に含まれる注入液が遠位出口255を通じて拡張セット220内へ吐出され、患者225へ移動する。
【0039】
本明細書中において用いられる「近位」または「上流」という用語は、一般的に、ユーザに近いことを意味するか、または、システムを通じた流体の流れという意味においてユーザに近接し患者から遠くに離れて位置するシステムの一部に近いことを意味する。本明細書中において用いられる「遠位」または「下流」という用語は、一般的に、患者に近いことを意味するか、または、システムを通じた流体の流れという意味において患者に近接しユーザから遠くに離れて位置するシステムの一部に近いことを意味する。同様に、本明細書中において用いられる「作動液側」という用語は、一般的に、送出アセンブリ5,205、作動室35,235および/またはチューブ10,210と流体連通する注入システムの一部を示す。「注入液流体側」という用語は、一般的に、注入液室45,245、拡張セット20,220および/または患者の投与部位25,225と流体連通する注入システムの一部を示す。「作動液」という用語は、液体または気体などの流体であることが理解されるべきである。
【0040】
本明細書中に記載されるの本発明の1つまたは複数の態様または特徴は、デジタル電子回路、集積回路、特殊設計ASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアおよび/またはこれらの組み合わせとして実現することがされる。これらの多様な実施形態を挙げると、プログラマブルシステム(例えば、記憶システムとのデータおよび命令の送受信を行うように接続された特殊または汎用プログラマブルプロセッサであり得る少なくとも1つのプログラマブルプロセッサ)上において実行可能および/または解釈可能である1つまたは複数のコンピュータプログラム、、少なくとも1つの入力デバイス(例えば、マウス、タッチスクリーン)ならびに少なくとも1つの出力デバイスにおける実施形態がある。
【0041】
これらのコンピュータプログラムは、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、コンポーネントまたはコードとも呼ばれ、プログラマブルプロセッサのための機械命令を含み、高レベルの手順および/またはオブジェクト指向プログラミング言語、および/またはアセンブリ/機械言語で実行することができる。本明細書中において用いられる「機械可読媒体」という用語は、機械命令および/またはデータをプログラマブルプロセッサへ提供するために用いられる任意のコンピュータプログラム製品、装置および/またはデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、およびプログラマブル論理デバイス(PLD)を指し、機械命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体を含む。「機械可読信号」という用語は、機械命令および/またはデータをプログラマブルプロセッサへ提供するために用いられる任意の信号を指す。機械可読媒体は、このような機械命令を、例えば、非一時的な固体メモリまたは磁気ハードドライブまたは任意の相当する記憶媒体に非一時的に保存することができる。機械可読媒体は、機械命令を代替的または追加的に、例えば、1つまたは複数の物理的プロセッサコアと関連付けられたプロセッサキャッシュまたは他のランダムアクセスメモリに一時的に保存することもできる。
【0042】
これらのコンピュータプログラムは、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、コンポーネントまたはコードとも呼ばれ、プログラマブルプロセッサのための機械命令を含み、高レベルの手順言語、オブジェクト指向プログラミング言語、機能プログラミング言語、論理プログラミング言語および/またはアセンブリ/機械言語で実行することができる。本明細書中において用いられる「機械可読媒体」という用語は、機械命令および/またはデータをプログラマブルプロセッサへ提供するために用いられる任意のコンピュータプログラム製品、装置および/またはデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、およびプログラマブル論理デバイス(PLD))を指し、機械命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体を含む。「機械可読信号」という用語は、機械命令および/またはデータをプログラマブルプロセッサへ提供するために用いられる任意の信号を指す。機械可読媒体は、例えば、非一時的な固体メモリまたは磁気ハードドライブまたは任意の相当する記憶媒体にこのような機械命令を非一時的に保存することができる。
機械可読媒体は、機械命令を代替的または追加的に、例えば、1つまたは複数の物理的プロセッサコアと関連付けられたプロセッサキャッシュまたは他のランダムアクセスメモリに一時的に保存することもできる。
【0043】
ユーザとの相互作用を提供するために、本明細書中に記載される本発明は、情報をユーザへ表示するための表示デバイス(例えば、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)モニター)と、ユーザによるコンピュータへの入力を可能にするキーボードおよびポインティングデバイス(例えば、マウスまたはトラックボール)とを有するコンピュータ上において実行される。他の種類のデバイスも、ユーザとの相互作用を可能にするために用いられる。例えば、ユーザへ提供されるフィードバックは、任意の形態の知覚フィードバック(例えば、視覚的フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバック)である。ユーザからの入力は、聴覚、スピーチまたは触覚入力を含むがこれらに限定されない任意の形態で受信される。他の可能な入力デバイスを非限定的に挙げると、タッチスクリーンまたは他のタッチセンサー式デバイス(例えば、単一点または多点式の抵抗式または容量式トラックパッド)、音声認識ハードウェアおよびソフトウェア、光学スキャナ、光学ポインタ、デジタル画像キャプチャデバイスおよび関連付けられた解釈ソフトウェアがある。
【0044】
本明細書中に記載される本発明の要旨は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法および/または物品として実施される。上記に記載される実施形態は、本明細書中に記載される本発明の要旨に一致する実施形態の全てを示すものではなく、記載された本発明の要旨に関する諸態様に一致するいくつかの例に過ぎない。上記においていくつかの改変例について述べてきたが、他の変形例または追加例も可能である。詳細には、さらなる特徴および/または変形例が本明細書中に記載のものに加えて可能である。例えば、上記した実施形態は、開示された特徴および/または上記に記載したいくつかのさらなる特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせの様々な組み合わせおよび部分的組み合わせに関連する。加えて、論理フローが添付図面および/または本明細書中に記載される場合、所望の結果の達成のために、特定の順序を示したりまたは逐次的順序を示すことは必ずしも必要とされない。他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内に含まれる。