(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】抗CD70キメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220824BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220824BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220824BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220824BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220824BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220824BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220824BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20220824BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220824BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220824BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220824BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220824BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220824BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/725
C07K19/00
A61P35/00
A61K48/00
A61K35/17 Z
G01N33/574 D
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2020109158
(22)【出願日】2020-06-24
(62)【分割の表示】P 2017530742の分割
【原出願日】2015-04-09
【審査請求日】2020-07-27
(32)【優先日】2014-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年(平成26年)10月10日 Cancer Immunology and Immunotherapy Conferenceにて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100199923
【氏名又は名称】嶽小原 幸
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジェームズ シー.
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504148(JP,A)
【文献】特表2014-516510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0037165(US,A1)
【文献】国際公開第92/001049(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号
12又は1
3と少なくとも
99%同一であるアミノ酸配列を含む、CD70に対する抗原特異性を有するキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
配列番号
12又は1
3のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のCAR。
【請求項4】
配列番号13のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のCAR。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のCARをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項6】
配列番号
19又は2
0のヌクレオチド配列を含む、請求項
5に記載の核酸。
【請求項7】
配列番号19のヌクレオチド配列を含む、請求項
6に記載の核酸。
【請求項8】
配列番号20のヌクレオチド配列を含む、請求項
6に記載の核酸。
【請求項9】
請求項
5~
8のいずれか1項に記載の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項10】
請求項
9に記載の組換え発現ベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項11】
請求項
10に記載の宿主細胞を少なくとも1つ含む、細胞集団。
【請求項12】
請求項
11に記載の細胞集団の、哺乳動物におけるがんの治療又は予防のための医薬の製造における使用。
【請求項13】
(i)請求項1に記載のCAR、
(ii)前記(i)のCARをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸、
(iii)前記(ii)の核酸を含む、組換え発現ベクター、
(iv)前記(iii)の組換え発現ベクターを含む、宿主細胞、又は
(v)少なくとも1個の前記(iv)の宿主細胞を含む、細胞集団
と、
医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
(i)請求項1に記載のCAR、
(ii)前記(i)のCARをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸、
(iii)前記(ii)の核酸を含む、組換え発現ベクター、
(iv)前記(iii)の組換え発現ベクターを含む、宿主細胞、
(v)少なくとも1個の前記(iv)の宿主細胞を含む、細胞集団、又は
(vi)前記(i)~(v)のいずれか1つを含む医薬組成物
の、哺乳動物におけるがんの検出のための医薬の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロス・リファレンス
本願は、2014年12月8日に出願した米国仮特許出願第62/088,882号について優先権を主張し、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出された資料の援用
本明細書と同時に提出され、コンピューターで読み取り可能な以下のヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、その全体が本明細書に援用される:2014年12月3日付けの「719062ST25.TXT」という名前の55,121バイトのASCII(テキスト)ファイル1件
【背景技術】
【0003】
がんは健康に関して公衆が関心を寄せることである。化学療法などの治療法において進歩しているにも関わらず、腎細胞癌(RCC)、膠芽細胞種、非ホジキン・リンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫を含む多くのがんの予後は悪い場合がある。従って、がん、特にRCC、膠芽細胞種、NHL、CLL、びまん性大B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫についての追加的な治療法に対する満たされていない必要性が存在している。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一実施形態は、CD70に対する抗原特異性を有するキメラ抗原受容体(CAR)であって、以下:CD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全て又は少なくとも配列番号2によって定義される237から260番目のアミノ酸残基からなる一部分を欠くCD27アミノ酸配列を含む抗原結合・細胞膜貫通ドメイン;4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン;CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン;及び任意でCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、前記CARを提供する。
【0005】
本発明の別の実施形態は、配列番号11~13の任意の1つと少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCD70に対する抗原特異性を有するCARを提供する。
【0006】
本発明の更なる実施形態は、本発明のCARに関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団及び医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明の追加的な実施形態は、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法、及び哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1A及び1Bは、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞(黒丸)、非形質導入細胞(白丸)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(×)又はpmel+VI(四角)を投与し、放射線照射(500 Rads)後の期間(日数)中のB16/mCD70腫瘍マウス(A)又はB16腫瘍マウス(B)の腫瘍サイズ(mm
2)を示すグラフである。
図1C及び1Dは、マウス当たり1×10
4(▼)、1×10
5(黒四角)、1×10
6(▲)若しくは1×10
7(黒丸)細胞の投与量のmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞;PBS(白四角);空ベクターで形質導入した細胞(白丸);又はpmel+VI(菱形)を投与後、放射線照射(500 Rads)照射あり(C)又はなし(D)の場合における、その後の期間(日数)中のB16/mCD70腫瘍マウスの腫瘍サイズ(mm
2)を示すグラフである。
図1Eは、マウス当たり1×10
4(菱形)、1×10
5(▼)、1×10
6(▲)若しくは1×10
7(黒丸)細胞の投与量のmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞;PBS(白四角);空ベクターで形質導入した細胞(白丸);又はpmel+VI(△)を投与し、放射線照射(500 Rads)した後の期間(日数)中のB16/mCD70腫瘍マウスの生残率を示すグラフである。
図1Fは、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞(四角)、非形質導入細胞(△)、空ベクターで形質導入した細胞(▽)又はpmel+VI(丸)を投与した後、放射線を照射し、IL-2を投与した後の期間(日数)中のB16/mCD70腫瘍マウスの腫瘍サイズ(mm
2)を示すグラフである。
【
図2】
図2A-2Dは、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞(黒丸)、非形質導入細胞(白四角)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(▽)又はpmel+VI(△)を投与し、放射線照射(500 Rads)あり(A及びC)又はなし(B及びD)の場合における、その後の期間(日数)中のB16/mCD70腫瘍マウス(A及びB)又はB16腫瘍マウス(C及びD)の平均重量(g)を示すグラフである。
図2E-2Hは、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞(斜交平行模様棒グラフ)、非形質導入細胞(陰影なし棒グラフ)又は緑色蛍光蛋白質(GFP)をコードするベクターで形質導入した細胞(斜線縞模様棒グラフ)を投与し、放射線照射(500 Rads)あり(E及びG)又はなし(F及びH)の場合における、その後の期間(日数)中のB16/mCD70腫瘍マウスの白血球絶対数(K/μl)(E及びF)又は脾細胞数(脾臓あたり、×10
7)(G及びH)を示すグラフである。
図2Iは、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞を投与し、放射線照射あり(黒棒グラフ)又はなし(水平縞棒グラフ)の場合、又はGFPをコードするベクターで形質導入した細胞を投与し、放射線照射(500 Rads)あり(チェック模様棒グラフ)又はなし(陰影なし棒グラフ)の場合における、その後の期間(日数)中のB16/mCD70腫瘍マウスの血清インターフェロン(IFN)ガンマ(pg/ml)レベルを示すグラフである。
【
図3】
図3は、空のレトロウイルスベクター(対照)(MSGV1)又はfCD27-CD3ζ(配列番号7)、ΔCD27-CD28-CD3ζ(配列番号8)、ΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)、ΔCD27-CD28-4-1BB-CD3ζ(配列番号10)、fCD27-CD28-CD3ζ(配列番号11)、fCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号12)若しくはfCD27-CD28-4-1BB-CD3ζ(配列番号13)のうちの一つで形質導入したヒトT細胞を、単独(培地のみ)で培養した(縦縞模様棒グラフ)、又は対照標的細胞である624mel(チェック模様棒グラフ)、624/CD70(黒棒グラフ)、938mel(ドット模様棒グラフ)若しくは938/CD70(白棒グラフ)、又はRCC標的細胞RCC2245R(斜線棒グラフ)、RCC2246R(逆斜線棒グラフ)、RCC2361R(ボックス模様棒グラフ)若しくはRCC1764(杉彩模様棒グラフ)と共培養したときに分泌したIFN-γ(pg/ml)を示すグラフである。
【
図4】
図4は、非形質導入(UT)細胞又はΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)で形質導入したレトロウイルス保有クローンA2、A10、B3、C1、E3若しくはG2を、単独(培地のみ、縦縞模様棒グラフ)で培養した、又は対照標的細胞SNU1079(ドット模様棒グラフ)、SNU1196(白棒グラフ)、938mel(チェック模様棒グラフ)若しくは938/CD70(黒棒グラフ)、又はRCC標的細胞RCC2245R(斜線棒グラフ)、RCC2246R(逆斜線棒グラフ)、RCC2361R(ボックス模様棒グラフ)若しくはRCC1764(杉彩模様棒グラフ)と共培養したときに分泌したIFN-γ(pg/ml)を示すグラフである。
【
図5】
図5は、非形質導入(UT)細胞又はΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)で形質導入したレトロウイルス保有クローンA2、B11、C5若しくはD2を単独(培地のみ、縦縞模様棒グラフ)で培養した、又は対照標的細胞SNU1079(ドット模様棒グラフ)、SNU1196(白棒グラフ)、938mel(チェック模様棒グラフ)、若しくは938/CD70(黒棒グラフ)若しくはRCC標的細胞、RCC2245R(斜線棒グラフ)、RCC2246R(逆斜線棒グラフ)、RCC2361R(ボックス模様棒グラフ)若しくはRCC1764(杉彩模様棒グラフ)と共培養したときに分泌したIFN-γ(pg/ml)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の一実施形態は、CD70に対する抗原特異性を有し、以下:CD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全て又は少なくとも配列番号2によって定義される237から260番目のアミノ酸残基からなる一部分を欠くCD27アミノ酸配列を含む抗原結合・細胞膜貫通ドメイン;4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン;CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン;及び任意でCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。本明細書において以後、「CAR」は別段の定めがない限りCARの機能的部分及び機能的変異体のことも指す。
【0010】
CARはT細胞シグナル伝達ドメインに連結した受容体(例えば腫瘍壊死因子(TNF)受容体)の抗原結合ドメインを含む、人工的に構築したハイブリッドのタンパク質又はポリペプチドである。CARの性状は、主要組織適合複合体(MHC)に制限されない様式で、受容体の抗原結合特性を活用することで、選択した標的に対するT細胞の特異性及び反応性を変更させる能力を含む。MHCによって制限されない抗原認識は、CARを発現しているT細胞に抗原プロセッシングから独立して抗原を認識する能力を与える。そのため、腫瘍の主要なエスケープ機構を迂回する。更に、T細胞において発現した場合、CARは有利なことに内在性T細胞受容体(TCR)α及びβ鎖と二量体化しない。
【0011】
本明細書で使用される「抗原特異性を有する(have antigen(ic) specificity)」及び「抗原特異的反応を引き起こす(elicit antigen-specific response)」という語句は、CARの抗原に対する結合が免疫反応を引き起こすように、CARが抗原に対して特異的に結合し、免疫学的に抗原を認識できることを意味する。
【0012】
本発明のCARはCD70に対する抗原特異性を有する。CD70はTNFスーパーファミリーに属し、配列番号1のアミノ酸配列を有する。CD70は、その受容体であるCD27と相互作用する場合に、リンパ球由来細胞の増殖(proliferation)及び生存に関
与する共刺激分子である。通常、非がん状態におけるCD70の発現は、活性化T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球及び樹状細胞などのリンパ球組織に限定される。CD70は、例えばRCC(Diegmann ら、Eur. J. Cancer, 41: 1794-801 (2005))(例えば淡明細胞型RCC(ccRCC))、膠芽細胞種(Held-Feindt ら、Int. J. Cancer, 98: 352-56 (2002); Wischhusen ら、Cancer Res., 62: 2592-99 (2002))、N
HL及びCLL(Lens ら、Br. J. Haematol., 106: 491-503 (1999))、びまん性大B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫などの多様なヒトのがんにおいて発現する。
【0013】
特定の理論又は機構に縛られることはないが、CD70に対する抗原特異的反応を引き起こすことで、本発明のCARは以下、CD70を発現するがん細胞を標的として破壊すること、がん細胞を減らす又は除去すること、腫瘍部位(複数可)に免疫細胞の浸潤を促す及び抗がん反応を促進又は拡張することのうち任意の1以上を提供すると考えられる。通常のCD70の発現は、活性化T細胞、B細胞、NK細胞、単球及び樹状細胞などのリンパ球組織に限られるので、本発明のCARは多くの正常な組織を標的とし破壊することを有利に実質的に回避することが期待できる。
【0014】
本発明の一実施形態では、CD27アミノ酸配列を含む抗原結合・細胞膜貫通ドメインを有するCARを提供する。これに関して、該CARはCD27抗原結合ドメイン及びCD27細胞膜貫通ドメインの両方を含んでも良い。該CD27は、CD27アミノ酸配列の任意の適したヒト抗原結合・細胞膜貫通ドメインを含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態では、抗原結合ドメイン、細胞膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグ
ナル伝達ドメインを含む、完全長CD27は配列番号2のアミノ酸配列を有する。本発明の一実施形態では、CD27の抗原結合ドメインは配列番号2の1から188番目のアミノ酸残基からなり、配列番号21のアミノ酸配列を有する。CD27の細胞膜貫通ドメインは配列番号2の189から211番目のアミノ酸残基からなり、配列番号22のアミノ酸配列を有する。CD27の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは配列番号2の212から260番目のアミノ酸残基からなり、配列番号23のアミノ酸配列を有する。従って、本発明の一実施形態では、該CARは配列番号21及び22のアミノ酸配列を含む、抗原結合・細胞膜貫通ドメインを含む。CD27の抗原結合ドメインはCD70に対して特異的に結合する。
【0015】
本発明の一実施形態は、CD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全て又は一部を欠くCD27アミノ酸配列を含む抗原結合・細胞膜貫通ドメインを含むCARを提供し、CARから欠落している該一部は配列番号2によって定義される、少なくとも連続するアミノ酸残基237から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基236から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基235から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基234から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基233から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基232から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基231から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基230から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基229から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基228から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基227から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基226から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基225から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基224から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基223から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基222から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基221から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基220から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基219から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基218から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基217から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基216から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基215から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基214から260番目、少なくとも連続するアミノ酸残基213から260番目である。本発明の一実施形態では、該抗原結合・細胞膜貫通ドメインは以下、配列番号2によって定義される237から260番目の連続するアミノ酸残基、236から260番目の連続するアミノ酸残基、235から260番目の連続するアミノ酸残基、234から260番目の連続するアミノ酸残基、233から260番目の連続するアミノ酸残基、232から260番目の連続するアミノ酸残基、231から260番目の連続するアミノ酸残基、230から260番目の連続するアミノ酸残基、229から260番目の連続するアミノ酸残基、228から260番目の連続するアミノ酸残基、227から260番目の連続するアミノ酸残基、226から260番目の連続するアミノ酸残基、225から260番目の連続するアミノ酸残基、224から260番目の連続するアミノ酸残基、223から260番目の連続するアミノ酸残基、222から260番目の連続するアミノ酸残基、221から260番目の連続するアミノ酸残基、220から260番目の連続するアミノ酸残基、219から260番目の連続するアミノ酸残基、218から260番目の連続するアミノ酸残基、217から260番目の連続するアミノ酸残基、216から260番目の連続するアミノ酸残基、215から260番目の連続するアミノ酸残基、214から260番目の連続するアミノ酸残基、213から260番目の連続するアミノ酸残基を欠くCD27アミノ酸配列を含む。CD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全て又は一部を欠くCD27アミノ酸配列はまた本明細書において、「トランケート(truncated)
CD27アミノ酸配列」又は「トランケートCD27」としても参照する。
【0016】
好ましい実施形態では、該抗原結合・細胞膜貫通ドメインはCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全てを欠くCD27アミノ酸配列を含む。これに関して、該抗原結合
・細胞膜貫通ドメインは、配列番号2によって定義される212から260番目の連続するアミノ酸残基を欠くCD27アミノ酸配列、又は配列番号2の212から260番目の連続するアミノ酸残基を欠くCD27アミノ酸配列を含む。本発明の一実施形態は、該抗原結合・細胞膜貫通ドメインは配列番号23のアミノ酸配列を欠くCD27アミノ酸配列を含む。本発明の一実施形態は、該抗原結合・細胞膜貫通ドメインは、配列番号3と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる、又は配列番号3のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる、CD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全てのアミノ酸配列を欠くCD27アミノ酸配列を含む。
【0017】
該CARは更に、4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、CD3ゼータ(ζ)細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及び任意でCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含んでも良い。本発明の一実施形態では、該CARは4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及びCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。本発明の別の実施形態では、該CARは4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。本発明の好ましい実施形態では、該CARは4-1BB、CD3ζ及びCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインはヒトである。CD28はT細胞の共刺激において、T細胞マーカーとして重要である。4-1BBはまた、T細胞に強力な共刺激シグナルを伝達し、Tリンパ球の分化を促し及び長期間の生存を促進するCD137としても知られている。CD3ζはシグナルを生産するためにTCRsと結合し、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAMs)を含む。
【0018】
該CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、任意の適したヒトCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、配列番号4と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。好ましくは、該CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは配列番号4のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0019】
該4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、任意の適したヒト4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、配列番号5と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一アミノ酸配列を含むか又はそれからなる。好ましくは、該4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0020】
該CD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、任意の適したヒトCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該CD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、配列番号6と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。好ましくは、該CD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは配列番号6のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0021】
本発明の一実施形態において、該CARはCD27抗原結合ドメイン、CD27細胞膜貫通ドメイン及びCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む完全長CD27アミノ酸配列、とCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(完全長(f)CD
27-CD3ζCAR)を含む。これに関して、該CARは本発明の他の態様に関して、明細書に記載の配列番号2と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一である完全長CD27のアミノ酸配列及び任意のCD3ζアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。例えば該fCD27-CD3ζCARは、配列番号2の完全長CD27アミノ酸配列及び配列番号4のCD3ζアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該fCD27-CD3ζCARは配列番号7と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該fCD27-CD3ζCARは配列番号7のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。本発明の一実施形態において、該fCD27-CD3ζCARはトランケートCD19及びDsRedの一つ又は両方を欠く。
【0022】
本発明の一実施形態において、該CARはCD27抗原結合ドメイン、CD27細胞膜貫通ドメイン及びCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む完全長CD27アミノ酸配列、とCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及びCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(fCD27-CD28-CD3ζ)を含む。これに関して、該CARは本発明の他の態様に関して、明細書に記載の任意の完全長CD27アミノ酸配列、任意のCD3ζアミノ酸配列及び任意のCD28アミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。例えば該fCD27-CD28-CD3ζCARは、配列番号2の完全長CD27アミノ酸配列、配列番号4のCD3ζアミノ酸配列及び配列番号6のCD28アミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該fCD27-CD28-CD3ζCARは、配列番号11と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該fCD27-CD28-CD3ζCARは配列番号11のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0023】
本発明の一実施形態では、該CARはCD27抗原結合ドメイン、CD27細胞膜貫通ドメイン及びCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む完全長CD27アミノ酸配列と、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及び4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(fCD27-4-1BB-CD3ζ)を含む。これに関して、該CARは本発明の他の態様に関して、明細書に記載の任意の完全長CD27アミノ酸配列、任意のCD3ζアミノ酸配列及び任意の4-1BBアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。例えば該fCD27-4-1BB-CD3ζCARは配列番号2の完全長CD27アミノ酸配列、配列番号4のCD3ζアミノ酸配列及び配列番号5の4-1BBアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該fCD27-4-1BB-CD3ζCARは配列番号12と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該fCD27-4-1BB-CD3ζCARは配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0024】
本発明の一実施形態では、該CARはCD27抗原結合ドメイン、CD27細胞膜貫通ドメイン及びCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む完全長CD27アミノ酸配列と、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及びCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(fCD27-CD28-4-1BB-CD3ζ)を含む。これに関して、該CARは本発明の他の態様に関して、明細書に記載の任意の完全長CD27アミノ酸配列、任意のCD3ζアミノ酸配列、任意の4-1BBアミノ酸配列及び任意のCD28アミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。例えば該fCD27-CD28-4-1BB-CD3ζCARは配列
番号2の完全長CD27アミノ酸配列、配列番号4のCD3ζアミノ酸配列、配列番号5の4-1BBアミノ酸配列及び配列番号6のCD28アミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該fCD27-CD28-4-1BB-CD3ζCARは配列番号13と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該fCD27-CD28-4-1BB-CD3ζCARは配列番号13のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0025】
本発明の一実施形態では、該CARはCD27抗原結合ドメイン、CD27細胞膜貫通ドメイン及びCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む完全長マウスCD27アミノ酸配列と、マウスCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(mCD27-CD3ζ)を含む。これに関して、該CARは配列番号26と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一である完全長マウスCD27アミノ酸配列と、配列番号27と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるマウスCD3ζアミノ酸配列との組合せを含むか又はそれからなっても良い。例えば該mCD27-CD3ζCARは、配列番号26の完全長マウスCD27アミノ酸配列及び配列番号27のマウスCD3ζアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該mCD27-CD3ζCARは配列番号25と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該mCD27-CD3ζCARは配列番号25のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0026】
本発明の一実施形態では、該CARはCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全てを欠くトランケートCD27のアミノ酸配列を含む抗原結合・細胞膜貫通ドメインと、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及びCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(トランケート(Δ)CD27-CD28-CD3ζ)を含む。これに関して、該CARは本発明の他の態様に関して、明細書に記載の配列番号3と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるトランケートCD27抗原結合・細胞膜貫通ドメインのアミノ酸配列と、任意のCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列及び任意のCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列との組合せを含むか又はそれからなっても良い。例えば該ΔCD27-CD28-CD3ζCARは配列番号3のトランケートCD27抗原結合・細胞膜貫通ドメインのアミノ酸配列、配列番号4のCD3ζアミノ酸配列及び配列番号6のCD28アミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該ΔCD27-CD28-CD3ζCARは配列番号8と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該ΔCD27-CD28-CD3ζCARは配列番号8のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0027】
本発明の一実施形態では、該CARはCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全てを欠くトランケートCD27のアミノ酸配列を含む抗原結合・細胞膜貫通ドメインと、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及び4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(ΔCD27-4-1BB-CD3ζ)を含む。これに関して、該CARは本発明の他の態様に関して、明細書に記載の任意のトランケートCD27抗原結合・細胞膜貫通ドメインのアミノ酸配列、任意のCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列及び任意の4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。例えば該ΔCD27-4-1BB-CD3ζCAR
は配列番号3のトランケートCD27抗原結合・細胞膜貫通ドメインのアミノ酸配列、配列番号4のCD3ζアミノ酸配列及び配列番号5の4-1BBアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該ΔCD27-4-1BB-CD3ζCARは配列番号9と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該ΔCD27-4-1BB-CD3ζCARは配列番号9のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0028】
本発明の一実施形態では、該CARはCD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全てを欠くトランケートCD27のアミノ酸配列を含む抗原結合・細胞膜貫通ドメインと、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、CD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン及び4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの組合せ(ΔCD27-CD28-4-1BB-CD3ζ)を含む。これに関して、該CARは本発明の他の態様に関して、明細書に記載の任意のトランケートCD27抗原結合・細胞膜貫通ドメインのアミノ酸配列、任意のCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列、任意のCD28細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列及び任意の4-1BB細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。例えば該ΔCD27-CD28-4-1BB-CD3ζCARは配列番号3のトランケートCD27抗原結合・細胞膜貫通ドメインのアミノ酸配列、配列番号4のCD3ζアミノ酸配列、配列番号6のCD28アミノ酸配列及び配列番号5の4-1BBアミノ酸配列、を含むか又はそれからなっても良い。本発明の一実施形態において、該ΔCD27-CD28-4-1BB-CD3ζCARは配列番号10と少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなっても良い。好ましくは、該ΔCD27-CD28-4-1BB-CD3ζCARは配列番号10のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0029】
本発明の一実施形態では、該CARは配列番号8~10の任意の1つのアミノ酸配列と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。本発明の一実施形態では、該CARは配列番号9又は10のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。本発明の別の実施形態では、該CARは配列番号11~13のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。本発明の別の実施形態では、該CARは配列番号12又は13のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、該CARは表1Aに記載された任意の1つのアミノ酸配列を含む、それからなる又は本質的にそれからなる。本発明の好ましい実施形態では、該CARは配列番号7~13の任意の1つのアミノ酸配列を含む。好ましくは、該CARは配列番号9、10、12及び13の任意の1つのアミノ酸配列を含む。
【0030】
【0031】
本発明の範囲には、本明細書に記載された本発明のCARの機能的部分が含まれる。CARを参照する際に用いられる「機能的部分(functional portion)」という用語は、本発明のCARの任意の部分又は断片を示し、その部分又は断片は(該親CARの)一部分である該CARの生物学的活性を維持している。機能的部分は、例えば該親CARと類似する程度、同じ程度又はそれより高い程度で標的細胞を認識する、又はがんを検出、治療若しくは予防する能力を維持しているCARの部分を包含する。該親CARを参照する場合において、該機能的部分は、例えば該親CARの約10%、約25%、約30%、約50%、約68%、約80%、約90%、約95%又はそれ以上を含み得る。
【0032】
該機能的部分は、該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又はその両端に、該親CARのアミノ酸配列において見られない追加的なアミノ酸を含み得る。望ましくは、該追加的なアミノ酸は、該機能的部分の生物学的機能、例えば標的細胞を認識すること又はがんを検出、治療若しくは予防することを妨げない。より望ましくは、該追加的なアミノ酸は、該親CARの生物学的活性と比べて、その生物学的機能を促進する。
【0033】
本発明の範囲には、本明細書に記載された本発明のCARの機能的変異体が含まれる。CARを参照する際に用いられる「機能的変異体(functional variant)」という用語は、親CARと実質的又は有意に配列同一性又は類似性を有するCAR、ポリペプチド又はタンパク質を示し、その機能的変異体は変異体である該CARの生物学的活性を維持している。機能的変異体は、例えば該親CARと類似する程度、同じ程度又はそれより高い程度で、標的細胞を認識する能力を維持している本明細書に記載のCARの変異体を包含する。該親CARを参照する場合において、該機能的変異体は、例えば該親CARのアミノ酸配列と少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約90%、約91%、約
92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上同一であるものであり得る。
【0034】
機能的変異体は、例えば該親CARのアミノ酸配列に少なくとも一つの保存的(conservative)アミノ酸置換を有するものを含み得る。代替的に又は追加的に、該機能的変異体は該親CARのアミノ酸配列に少なくとも一つの非保存的アミノ酸置換を有するものを含み得る。この場合において、非保存的アミノ酸置換は、該機能的変異体の生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。該非保存的アミノ酸置換は、親CARのものと比べて生物学的活性が増大するように、該機能的変異体の生物学的活性を促進しても良い。
【0035】
本発明のCARのアミノ酸置換は、好ましくは保存的なアミノ酸置換である。保存的なアミノ酸置換は当技術分野において公知であり、ある物理的及び/又は化学的性質が同じ若しくは類似する化学又は物理的性質を有する、他のアミノ酸に変換されることを含む。例えば該保存的アミノ酸置換は、酸性/負電荷を帯びた極性アミノ酸が別の酸性/負電荷を帯びた極性アミノ酸(例えばAsp又はGlu)に置換され、非極性側鎖を有するアミノ酸が別の非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばAla、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)に置換され、塩基性/正電荷を帯びた極性アミノ酸が他の塩基性/正電荷を帯びた極性アミノ酸(Lys、His、Argなど)に置換され、極性側鎖を有する非帯電アミノ酸が別の極性側鎖を有する非帯電アミノ酸(例えばAsn、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)に置換され、β位で分枝した側鎖を有するアミノ酸が別のβ位で分枝した側鎖を有するアミノ酸(例えばIle、Thr及びVal)に置換され、芳香族側鎖を有するアミノ酸が別の芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばHis、Phe、Trp及びTyr)に置換されるなどである。
【0036】
該CARは、他の要素、例えば他のアミノ酸が物質的に該機能的変異体の生物学的活性を変更しないように、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列又は配列(複数可)から本質的になることができる。
【0037】
本発明の実施形態のCARは任意の長さ、すなわち、該CARが生物学的活性、例えば抗原に特異的に結合する、哺乳動物のがん細胞を検出する又は哺乳動物のがんを治療若しくは予防するなどの活性を維持している限り、任意のアミノ酸数を含み得る。例えば該CARはアミノ酸配列長において約50から約5000アミノ酸長であり、例えば50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上であり得る。
【0038】
本発明の実施形態のCARは、1以上の天然で生じたアミノ酸の代わりに、合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸は当該技術分野において公知であり、例えばアミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノ-n-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0039】
本発明の実施形態のCARは、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化、例えばジスルフィド架橋を介した環化、又は酸付加塩への変換及び/又は任意で二量体化若しくは重合化、又はコンジュゲート化することができる。
【0040】
本発明の実施形態のCARは、例えばデノボ(de novo)合成などの、当分野で公知の
方法によって得ることができる。また、ペプチド及びタンパク質は標準的な組換え方法により、本明細書に記載の核酸を用いて組換え的に産生することができる。例えばGreen and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory
Manua, 4th ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY(2012)を参照されたい。代替的には、本明細書に記載の該CARはSynpep (Dublin, CA)、Peptide Technologies Corp. (Gaithersburg, MD)及びMultiple Peptide Systems (Sandiego, CA)などの企業によって商業的に合成することがで
きる。これに関して、本発明のCARは合成、組換え、単離及び/又は精製することができる。
【0041】
本発明の実施形態のCARは、更に本明細書に記載の任意のCARをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本発明の核酸は、本明細書に記載の任意の抗原結合ドメイン、細胞膜貫通ドメイン及び/又は細胞内T細胞シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチド配列を含んでも良い。本発明の一実施形態において、該核酸は表1Bに記載された任意の1つのヌクレオチド配列を含む、それからなる又は本質的にそれからなる。好ましくは、該核酸は配列番号14~20の任意の1つのヌクレオチド配列を含む。好ましくは、該核酸は配列番号16、17、19及び20の任意の1つのヌクレオチド配列を含む。本発明の一実施形態において、fCD27-CD3ζCARをコードするヌクレオチド配列はトランケートCD19及びDsRedの一つ又は両方をコードしない。
【0042】
【0043】
本明細書で使用する「核酸(nucleic acid)」は、「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」、「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」及び「核酸分子(nucleic acid molecule)」を含み、一本鎖又は二本鎖であり、天然の材料から合成又は獲得(例えば単離及び/又は精製)することができるDNA又はRNAのポリマーを一般に意味する。天然の材料には天然、非天然若しくは改変したヌクレオチドを含むことができ、及び天然の結合、非天然の結合、若しくは修飾されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられる、ホスホジエステルの代わりのホスホロアミデート結合又はホスホロチオエート結合などの改変したヌクレオチド間の結合を含み得る。いくつかの実施形態では、該核酸は任意の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含まない。しかし、本明細書で考察されるように、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含むいくつかの例においては適切であっても良い。いくつかの実施形態では該核酸は、CARの機能に影響しない、及び核酸を宿主細胞が発現する際に翻訳される又はされなくても良く、追加のアミノ酸配列をコードしても良い。
【0044】
本発明の一実施形態の核酸は組換え体であっても良い。本明細書で使用される「組換え体(recombinant)」という用語は、(i)生細胞において複製される核酸分子に天然若
しくは合成核酸断片を添加することにより生細胞の外側で構築される分子、又は(ii)上記(i)で記載したこれらの複製の結果得られる分子を指す。本明細書の目的のために、該複製はインビトロ複製又はインビボ複製であり得る。
【0045】
組換え核酸は、天然で生じない配列又は2つの異なる別の配列断片の人工的な組合せで作製した配列を有しても良い。この人工的組合せは化学合成によって、又はより普遍的には核酸の別の断片を人工的な操作、例えば上記のGreen and Sambrookに記載されているような遺伝子工学技術によって、しばしば達成される。当技術分野で公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素的ライゲーション反応に基づいて該核酸を構築することができる。例えば上記のGreen and Sambrookを参照されたい。例えば核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増加させるため、若しくはハイブリダイゼーション時に形成される二本鎖の物理的安定性を高めるために設計した様々な修飾ヌクレオチド(例えばホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて、化学的に合成できる。核酸を合成するために使用できる修飾したヌクレオチドの例は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6-ジアミノプリンであるが、これらに限定されない。代替的には、本発明の核酸の1以上は、Macromolecular Resources (Fort Collins, CO)及びSynthegen (Houston, TX)などの企業から購入できる。
【0046】
該核酸は、本発明の他の態様に関して、本明細書に記載の任意のCARをコードする単離又は精製したヌクレオチド配列を含み得る。代替的には、該ヌクレオチド配列は任意の
配列に縮重させた又は縮重した配列の組合せであるヌクレオチド配列を含み得る。
【0047】
本発明の一実施形態はまた、本明細書に記載の任意の核酸のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載の任意の核酸のヌクレオチド配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む単離又は精製した核酸を提供する。
【0048】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする該ヌクレオチド配列は、高度にストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズしても良い。「高度にストリンジェンシーな条件(high stringency conditions)」は、該ヌクレオチド配列が非特異的なハイブリダイゼーションよりも検出可能な程度に強く、標的配列(本明細書に記載の任意の核酸のヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高度にストリンジェンシーな条件には、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又はヌクレオチド配列と一致するいくつかの小さな領域(例えば3~10塩基)を偶然有するランダム配列からわずかに異なった(scattered)ミスマッチを含むポリヌクレオチドを区別しうる条件が含ま
れる。そのような相補性の小領域は、14~17塩基又はそれ以上の完全長の相補鎖よりも容易に融解し、高度にストリンジェンシーなハイブリダイゼーションによりそれらを容易に区別し得る。比較的高度にストリンジェンシーな条件には、例えば約50~70℃の温度で、約0.02~0.1MのNaCl又はそれと同等な条件によって提供されるような、低塩及び/又は高温条件が含まれる。そのような高度にストリンジェンシーな条件は、ヌクレオチド配列と鋳型又は標的鎖との間のミスマッチがあれば、ほとんど許容せず、任意の本発明のCARの発現を検出するのに特に適している。ホルムアミド添加量を増加することにより、条件をより厳密にし得ることは一般的に理解されている。
【0049】
本発明はまた、本明細書に記載の任意の核酸に対して、少なくとも約70%又はそれ以上、例えば約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0050】
一実施形態において本発明の核酸は組換え発現ベクターに組み込むことができる。これに関して、本発明の一実施形態は、本発明の任意の核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書の目的のために、「組換え発現ベクター(recombinant expression vector)」という用語は、コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチ
ドをコードするヌクレオチド配列を含むとき、宿主細胞がmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現するような遺伝子改変オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド・コンストラクトを意味し、該ベクターは細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現するのに十分な条件下で細胞と接触する。本発明のベクターは全体として自然発生的ではない。しかしながら、ベクターの部分は天然に存在し得る。本発明の組換え発現ベクターは一本鎖又は二本鎖であり、天然の材料から部分的に合成又は獲得することができ、及び天然、非天然又は改変したヌクレオチドを含み得る、DNA及びRNAを含む任意の型のヌクレオチドを含み得るが、それらに限定されない。該組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然に存在しないヌクレオチド間結合、又はその両方の型の結合を含み得る。好ましくは、非天然で生じた若しくは改変したヌクレオチド又はヌクレオチド間結合がベクターの転写又は複製を妨害しないものである。本発明の一実施形態において、fCD27-CD3ζCARをコードするヌクレオチド配列を含む該組換え発現ベクターはトランケートCD19及びDsRedの一つ又は両方をコードしない。
【0051】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであることができ、任意の適切な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトす
るために用いることができる。適切なベクターは、例えばプラスミド及びウイルスのように増殖(propagation)及び増幅(expansion)のため若しくは発現のため、又はその両方のために設計したものを含む。該ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences, Glen Burnie, MD)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, CA)
、pETシリーズ(Novagen, Madison, WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)及びpEXシリーズ(Clonetech, Palo Alto, CA)からなる群より選択することができる。バクテリオファージベクター、例えばλGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149もまた使用することができる。植物発現ベクターの例には、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clonetech)が含まれる。動物発現ベクターの例には、pE
UK-C1、pMAM及びpMAMneo(Clonetech)が含まれる。該組換え発現ベク
ターはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターであっても良い。いくつかの実施形態では、該ベクターはトランスポゾンであり得る。
【0052】
一実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、例えば上記のGreen and Sambrookに記載されている標準的な組換えDNA技術を用いて、調製することができる。環状又は線状である発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核宿主細胞において機能的である複製システムを含むように調製することができる。複製システムは、例えばColE1、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来するものであり得る。
【0053】
該組換え発現ベクターは、ベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、適切な形でベクターを導入した宿主細胞(例えば細菌、真菌、植物又は動物)の型に特異的な転写及び翻訳の開始及び終止コドンなどの調節配列を含んでも良い。
【0054】
該組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性、例えば抗生物質、重金属などに対する耐性など、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主細胞における相補性などを含む。本発明の発現ベクターのための適切なマーカー遺伝子は、例えばネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子を含んでいる。
【0055】
該組換え発現ベクターは、CARをコードするヌクレオチド配列、又はCARをコードするヌクレオチド配列に相補的である若しくはハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結した、天然又は非天然プロモーターを含み得る。プロモーターの選択、例えば強、弱、誘導性、組織特異性及び発生段階特異性は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターの組み合わせも当業者の技術の範囲内である。該プロモーターは、非ウイルスプロモーター又はウイルスプロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター又はネズミ幹細胞ウイルスの長い末端反復に見出されるプロモーターであり得る。
【0056】
いずれか一時期における発現若しくは安定した発現のために、又はその両方のために、本発明の組換え発現ベクターを設計することができる。また、構成的発現又は誘導発現のために組換え発現ベクターを作製することができる。
【0057】
さらに、自殺遺伝子を含むように組換え発現ベクターを作製することができる。本明細書において「自殺遺伝子(suicide gene)」という用語は、自殺遺伝子を発現する細胞を死滅させる遺伝子を指す。該自殺遺伝子は、遺伝子を発現する細胞における作用因子、例えば薬剤に対する感受性を付与し、細胞をその作用因子と接触させ又はそれに対して曝露した場合に細胞が死滅する遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当該分野で公知であり、例え
ば単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンダミナーゼ(cytosine daminase)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼ
を含む。
【0058】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載の任意の組換え発現ベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。本明細書中で使用する場合、「宿主細胞(host cell)」という用語は
、本発明の組換え発現ベクターを含み得る任意のタイプの細胞を指す。該宿主細胞は真核細胞、例えば植物、動物、菌類若しくは藻類又は原核細胞、例えばバクテリア又は原生動物であり得る。該宿主細胞は培養細胞又は初代細胞、すなわち生物、例えばヒトから直接単離した細胞であり得る。該宿主細胞は付着細胞又は懸濁細胞、すなわち懸濁液中で増殖する(grow)細胞であり得る。適切な宿主細胞は当該分野で公知であり、例えばDH5α大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などを含む。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、該宿主細胞は原核細胞、例えばDH5α細胞であっても良い。組換えCARを産生する目的のために、該宿主細胞は哺乳動物細胞であっても良い。該宿主細胞はヒト細胞であっても良い。宿主細胞は任意の細胞のタイプであり、任意のタイプの組織に由来し、任意の発生段階であり得る一方で、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)であっても良い。該宿主細胞はT細胞であっても良い。
【0059】
本明細書の目的のために、該T細胞は培養T細胞などの任意のT細胞、例えば初代T細胞、又は培養T細胞株、例えばJurkat、SupT1など由来のT細胞、又は哺乳動物から得たT細胞であり得る。哺乳動物から得たものである場合、該T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液を含む多数の供給源から得ることができるが、これらに限定されない。T細胞を濃縮又は精製してもよい。該T細胞はヒトT細胞であっても良い。該T細胞はヒトから単離したT細胞であっても良い。該T細胞は、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えばTh1及びTh2細胞、CD8+T細胞(例えば細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞などを含む任意のタイプのT細胞及び任意の発生段階であり得るが、これらに限定されない。該T細胞はCD8+T細胞又はCD4+T細胞であっても良い。
【0060】
また、本発明の一実施形態は、本明細書で記載の少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団を提供する。該細胞集団は、記載された任意の組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含む遺伝的に不均一な集団であり得る。加えて、少なくとも1つの他の細胞、例えば任意の組換え発現ベクターを含まない宿主細胞(例えばT細胞)、又はT細胞以外の細胞、例えばB細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞などであり得る。代替的に、該細胞集団は組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例えば本質的にそれからなる)実質的に均質な集団であり得る。該集団は細胞のクローン集団であってもよく、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであってもよい。本発明の一実施形態では、該細胞集団は本明細書に記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0061】
本発明の一実施形態においては、集団の細胞数を急速に増幅(expanded)しても良い。CARを発現する細胞数の増幅(expansion)は、例えば米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許出願公開第2012/0244133号;Dudley ら、J. Imm nother., 26:332-42 (2003);及びRiddell ら、J. Immunol. Methods, 128:189-201 (1990)に記載さ
れているように、当分野において公知である方法の任意の1つによって達成することができる。一実施形態において、T細胞をOKT3抗体、IL-2及びフィーダーPBMC(例えば放射線照射した同種異形のPBMC)と共に培養することで細胞数の増幅(expansion)を実施する。
【0062】
CAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)の全ては、本明細書において以降「発明のCAR材料(inventive CAR materials)」として正確に参照し、
単離及び/又は精製することができる。本明細書で用いられる用語「単離する(isolated)」とは、自然環境から取り出したことを意味する。用語「精製する(purified)」又は「単離する(isolated)」は、絶対的な精製又は単離を要求しない。むしろ、それらは相対的な用語として意図している。そのため、例えば精製した(単離した)宿主細胞は、体内における自然な状態での細胞よりも高い純度である宿主細胞である。そのような宿主細胞は、例えば標準的な精製技術で作製しても良い。いくつかの実施形態において、宿主細胞が総細胞の少なくとも約50%、例えば少なくとも70%を占めるように、宿主細胞を精製する。例えば該精製度は少なくとも約50%であり、約60%、約70%又は約80%より高く、又は約100%であり得る。
【0063】
本発明のCAR材料は、医薬組成物などの組成物に製剤化することができる。これに関して、本発明の一実施形態は任意のCAR、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。任意の本発明のCAR材料を含む本発明の医薬組成物は、1を超える発明のCAR材料、例えばCAR及び核酸又は2以上の異なるCARを含み得る。代替的に、医薬組成物はアスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチ
ン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、メトトレキセート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)、リツキシマブ(rituximab)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)などの化学療法剤のように、他の医薬的な活性がある薬剤又は薬物と組み合わせた
本発明のCAR材料を含み得る。好ましい実施形態においては、該医薬組成物は本発明の宿主細胞又はその細胞集団を含む。
【0064】
好ましくは、該担体は医薬的に許容される担体である。医薬組成物に関して、該担体は特定の本発明のCAR材料のために慣用的に使用が考慮される任意の物であり得る。そのような医薬的に許容される担体は当業者に周知であり、一般に容易に入手可能である。医薬的に許容される担体は、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0065】
担体の選択は、本発明のCAR材料を投与するために使用される特定の方法と同様に、特定の本発明のCAR材料によって部分的に決定される。従って、本発明の医薬組成物の種々の適切な製剤が存在する。適切な製剤は、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内又は腹腔内投与のための任意の製剤を含んでも良い。本発明のCAR材料を投与するために1超の経路を使用することができ、ある場合には、特定の経路は別の経路よりも迅速かつ効果的な応答を提供することができる。
【0066】
好ましくは、本発明のCAR材料は、注射、例えば静脈内に投与される。本発明のCAR材料が、本発明のCARを発現する宿主細胞である場合、注射用細胞のための医薬的に許容される担体は、例えば通常の生理食塩水(水に溶解した約0.90%w/vのNaCl、約300mOsm/LのNaCl、又は水約1L当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott, Chicago, IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter, Deerfield, IL
)、水に溶解した5%のデキストロース又はリンゲル乳酸塩などの任意の等張な担体を含んでも良い。一実施形態では、医薬的に許容される該担体にヒト血清アルブミンを補充する。
【0067】
本発明のCAR材料の投与量はまた、特定の本発明のCAR材料の投与に伴う任意の有
害な副作用の存在、性質及び程度によって決定される。典型的には、主治医は、年齢、体重、一般的健康状態、食事、性別、投与される本発明のCAR材料、投与経路及び治療されるがんの重篤度などの様々な要因を考慮に入れて、個々の患者を治療する本発明のCAR材料の投与量を決定する。本発明のCAR材料が細胞集団である実施形態では、1回の注入当たりに投与する細胞数を、例えば約1×106~約1×1012細胞又はそれ以上で変更しても良い。ある実施形態では1×106未満の細胞を投与しても良い。
【0068】
本明細書の目的のために、投与する本発明のCAR材料の量又は投与量は、妥当な時間枠で、対象又は被験動物において治療又は予防応答を達成するのに十分であるべきである。例えば本発明のCAR材料の投与量は、投与から約2時間以上、例えば12~24時間若しくはそれ以上の期間内に、抗原に結合し、又はがんを検出し、治療若しくは予防するのに十分でなければならない。ある実施形態では該期間はさらに長くなる可能性がある。該投与量は、治療される動物(例えばヒト)の体重と同様に、特定の本発明のCAR材料の有効性及び動物(例えばヒト)の状態によって決定される。
【0069】
本発明の目的のために、標的細胞が溶解される程度、及び/又は異なる投与量のT細胞が与えられた哺乳動物のセット中で、そのようなT細胞を哺乳動物に所与の投与量で投与した際に、本発明のCARを発現するT細胞が分泌するIFN-γの程度を比較することを含むアッセイ法を、哺乳動物への最初の投与量を決定するために用いることができる。ある用量の投与の際に標的細胞を溶解する及び/又はIFN-γを分泌する程度は、当該分野で公知の方法によってアッセイすることができる。
【0070】
当業者であれば、改良によって本発明のCAR材料の治療効果又は予防効果が増大するように、本発明のCAR材料を任意の数の方法で改良することができることを容易に理解するであろう。例えば本発明のCAR材料を直接的又は間接的にリンカーを介して標的成分に結合することができる。標的成分に化合物、例えば本発明のCAR材料を結合することは当該分野で公知である。
【0071】
本発明のCAR材料を1以上の追加的な治療薬と共に投与するとき、1以上の追加的な治療薬をその哺乳動物に共投与することができる。「共投与(coadministering)」とい
う用語は、本発明のCAR材料が1以上の追加的な治療薬の効果を増幅できるように、1以上の追加的な治療薬及び本発明のCAR材料を投与する、又は逆に1以上の追加的な治療薬が本発明のCAR材料の効果を増幅できるように、時間的に十分短い間に投与することを意味する。これに関連して、本発明のCAR材料を最初に投与し、1以上の追加的な治療薬を2番目に投与する、又は逆の順で投与することもできる。代替的に、本発明のCAR材料及び1以上の追加的な治療薬を同時に投与することもできる。CAR材料と共投与することができる典型的な治療薬はIL-2である。IL-2は本発明のCAR材料の治療効果を増大すると考えられる。
【0072】
本発明の医薬組成物、CAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団を哺乳動物のがんを治療又は予防する方法において使用することができると期待される。特定の理論又は機構に拘束されるものではないが、本発明のCARが細胞で発現するとき、抗原、例えばCARに特異的であるCD70を発現する細胞に対して、免疫応答を媒介できるように、該CARが生物学的活性、例えば抗原(例えばCD70)を認識する能力を有している。これに関して、本発明の一実施形態は、哺乳動物のがんを治療又は予防する方法を提供するものであって、哺乳動物のがんを治療又は予防するための有効量で、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団及び/又は医薬組成物を哺乳類に投与すること含んでいる。
【0073】
本発明の一実施形態は、さらに本発明のCAR材料を投与することに先行して哺乳動物
のリンパ枯渇を行うことを含む。リンパ球枯渇の例としては、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法、骨髄破壊的リンパ球枯渇化学療法、全身放射線照射などを含んでも良いが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の方法の目的のために、哺乳動物に対して同種異形又は自己であり得る、宿主細胞又は細胞集団を投与する。好ましくは、該細胞は哺乳動物に対して自己である。
【0075】
本明細書で参照する哺乳動物は任意の哺乳動物であり得る。本明細書で使用される用語「哺乳動物(mammal)」は、マウス及びハムスターなどのげっ歯類の哺乳動物及びウサギなどのウサギ目の哺乳動物を含む任意の哺乳動物を意味するが、これらに限定されない。哺乳動物はネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ科)を含む食肉目であっても良い。哺乳動物はウシ属(ウシ)及びイノシシ属(ブタ)を含むのウシ目、又はウマ科(ウマ)を含むウマ目であっても良い。哺乳動物は霊長目、セボイド目若しくはシモイド目(サル)又は類人猿(ヒト及び類人猿)であっても良い。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0076】
本発明の方法に関して、該がんは以下を含む任意のがんであり得る。任意の急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、膀胱のがん(例えば膀胱癌)、骨癌、脳癌(例えば髄芽細胞種)、乳癌、肛門・肛門管若しくは肛門直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部・胆嚢若しくは胸膜の癌、鼻・鼻腔若しくは中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、胃腸カルチノイド腫瘍、頭頸部癌(例えば頭頸部扁平上皮癌)、膠芽細胞種、ホジキンリンパ腫、下喉頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液体腫瘍、肝臓癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性リンパ球性白血病、毛様細胞白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、及びバーキットリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、大網及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、RCC、ccRCC、直腸癌、腎臓癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、固形腫瘍、胃癌、精巣癌、甲状腺癌及び子宮癌である。好ましくは、CD70の発現によって特徴づけられるがんである。好ましい実施形態においては、がんは任意のRCC(例えばccRCC)、膠芽細胞種、NHL、CLL、びまん性大B細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫である。
【0077】
本明細書において使用する用語「治療(treat)」及び「予防(prevent)」ならびにそれに由来する用語は、100%又は完全な治療又は予防を意味する必要はない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物におけるがんの治療又は予防を、任意のレベル、任意の量で提供することができる。さらに、本発明の方法が提供する治療又は予防は、治療又は予防される疾病、例えばがんの1以上の状態若しくは症状の治療又は予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防(prevention)」はその疾病の兆候又はその症状若しくは状態を遅延させることを包含することができる。
【0078】
本発明の別の実施形態では、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団又は医薬組成物を哺乳動物のがんの治療又は予防のために使用することを提供する。
【0079】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物のがんの存在を検出する方法を提供し、(a)本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団と、哺乳動物由来の1以上の細胞を含む試料を接触させることで複合体を形成し、(b)該複合体を検出し、該複合体の検出を哺乳動物におけるがんの存在を示す指標とする工程を含む。
【0080】
任意の適した方法、例えばバイオプシー又はネクロプシーによって試料を得ても良い。
バイオプシーは個々の動物から組織及び/又は細胞を取り出すものである。そのような取り出すことには、取り出した組織及び/又は細胞における実験を実施するために、個々の動物から組織及び/又は細胞を採取することであっても良い。この実験は、個々の動物が有するかどうか及び/又はある状態又は病気の状態から悪影響を受けているかどうかを決定する実験を含んでも良い。該状態又は病気は、例えばがんであっても良い。
【0081】
哺乳動物におけるがんの存在を検出する本発明の方法の一実施形態に関して、哺乳動物の細胞を含む試料は、細胞全体、その溶解物、又は細胞全体の溶解物の画分、例えば核若しくは細胞質画分、全タンパク質画分又は核酸画分を含む試料であり得る。試料が細胞全体を含む場合、該細胞は哺乳動物の任意の細胞、例えば血液細胞又は上皮細胞を含む任意の器官又は組織の細胞であり得る。
【0082】
本発明の検出方法の目的のために、哺乳動物に関してインビトロ又はインビボで接触する工程を実施することができる。好ましくは、該接触はインビトロで行う。
【0083】
また、当該技術分野において公知の任意の数の方法によって、該複合体を検出することができる。例えば明細書に記載の本発明のCAR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団を、例えば放射性同位体、フルオロフォア(例えばフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えばアルカリフォスファターゼ、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例えば金粒子)などの検出可能なラベルで標識することができる。
【0084】
CARが標的細胞を認識し、抗原特異性を有する能力を試験する方法は当該分野で公知である。例えばClay ら、J. Immunol., 163: 507-513 (1999)にはサイトカイン(例えば
インターフェロンγ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)又はインターロイキン2(IL-2))の放出を測定する方法が記載されている。加えてCAR機能は、Zhao ら、J. Immunol., 174: 4415-4423 (2005)で記載され
ているように、細胞毒性を測定することによっても評価することができる。
【0085】
以下の実施例において、本発明をさらに説明するが、言うまでもなく、その範囲を限定する如何なるものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0086】
実施例1
本実施例は、完全長マウスCD27及びマウスCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むCAR(mCD27-CD3ζCAR)をコードし、配列番号25のアミノ酸配列を有するレトロウイルスベクターの形質導入効率、及びmCD70を発現している腫瘍細胞に対するインビトロでのmCD27-CD3ζCARの反応性を実証する。
【0087】
完全長マウスCD27及びマウスCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むCAR(mCD27-CD3ζCAR)をコードし、配列番号25のアミノ酸配列を有するレトロウイルスベクターを構築した。ネズミ(murine)T細胞に対して、mCD27-CD3ζCARレトロウイルスベクターでレトロウイルス的に形質導入した。形質導入効率は62.6%であった。
【0088】
脾細胞から作製したマウスT細胞を、形質導入せず(UT)又はGFP若しくはmCD27-CD3ζCARをコードするベクターで形質導入し(エフェクター細胞)、単独(培地のみ)で培養した又は標的細胞としてマウスCD70を発現しないB16悪性黒色腫細胞(B16細胞)若しくはマウスCD70を発現するように形質導入したB16細胞(B16/mCD70)と共培養した。B16腫瘍を認識するマウスT細胞であるPmel
細胞を陽性対照のエフェクター細胞として用いた。IFN-γ分泌を測定した。結果は表2に示す。表2に示したように、mCD27-CD3ζCARで形質導入した細胞はCD70発現腫瘍に対して、インビトロで高い反応性を示した。
【0089】
【0090】
実施例2
本実施例は、完全長マウスCD27及びマウスCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むCAR(mCD27-CD3ζCAR)及び配列番号25のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列で形質導入した脾細胞から作製したマウスT細胞は、腫瘍の負荷を軽減し、CD70を発現している腫瘍マウスの生存率を増加させることを実証する。
【0091】
マウスにCAR発現細胞を移植する11日前、B16細胞又はB16/mCD70細胞を注射することで腫瘍マウスを樹立した。その4日後、脾細胞をマウスから取り出し、コンカナバリンA(ConA)及びIL-7又は抗マウスCD3(mCD3)及び可溶性CD28(sCD28)で刺激した。2日後、刺激した脾細胞から作製したマウスT細胞を、配列番号25のアミノ酸配列を有するmCD27-CD3ζCARをコードするMSGV1レトロウイルスベクターで形質導入した。5日後、該mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞(1×10
7)を腫瘍マウスに投与し、マウスに放射線を照射した(500 Rads)。対照腫瘍マウスに、非形質導入細胞、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又はpmel細胞、gp100ワクチン(V)及びIL-2(I)の組合せ(「pmel+VI」)を投与し、放射線を照射した。治療後約35日までの期間、腫瘍サイズを測定した。結果を
図1A~1Bに示す。
図1A~1Bに示したように、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞は、B16/mCD70腫瘍マウスの腫瘍負荷を軽減したが、B16腫瘍マウスの腫瘍負荷を軽減しなかった。従って、CD70陽性腫瘍マウスは成功裏にmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞で治療することができ、その治療はCD70特異的であった。
【0092】
脾細胞を抗mCD3及びsCD28で刺激したことを除き、B16/mCD70腫瘍マウスで実験を繰り返した。放射線を照射し、形質導入細胞を投与した後のマウスにIL-2を投与した。対照腫瘍マウスに、非形質導入細胞、空ベクターで形質導入した細胞、又はpmel+VIを投与し、放射線照射及びIL-2を投与した。治療後約24日までの期間、腫瘍サイズを測定した。結果を
図1Fに示す。
図1Fに示したように、IL-2を共投与した時、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞は、B16/mCD70腫瘍マウスの腫瘍負荷を軽減した。
【0093】
細胞投与から21日後、腫瘍を治療マウスから取り出し、インビトロにおいて7日間増
殖させた(grown)。腫瘍でのマウスCD70発現をFACSで測定した。mCD27-
CD3ζCAR形質導入細胞で治療したマウスではCD70発現は消失したが、Pmel+V又は非形質導入細胞で治療したマウスでは消失しなかった。特定の理論又は機構に縛られることはないが、腫瘍増殖(growth)の再発はB16/mCD70腫瘍でのCD70発現の消失によると考えられる。
【0094】
図1Bに相当する実験では、B16/mCD70腫瘍マウスで、以下の例外を伴って繰り返し実験を行った。B16/mCD70腫瘍マウスに、マウス1尾につき1×10
4、1×10
5、1×10
6又は1×10
7細胞の投与量でmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞を投与し、放射線を照射した(500 Rads)又は照射しなかった。対照腫瘍マウスに、PBS、pmel+VI又は空ベクターで形質導入した細胞を投与し、放射線を照射した(500 Rads)又は照射しなかった。結果を
図1Cに示す。
図1Cに示したように、腫瘍を治療する最小有効投与量は、マウス1尾あたり1×10
5のmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞であり、放射線を照射したときであった。
図1C~1Dに示したように、マウス1尾あたり1×10
7の細胞投与量では、放射線照射は治療効果に影響しないようであった。
【0095】
腫瘍マウスの生存は、治療後約42日目までの期間、評価を行った。結果を
図1Eに示す。
図1Eに示したように、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞で治療し、放射線照射を行った腫瘍マウスは、特にマウス1尾あたり1×10
6又は1×10
7細胞の投与量の時に、より長い期間生存した。
【0096】
実施例3
本実施例は、腫瘍マウスに対するmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞の投与が示した毒性を実証する。本実施例ではマウスが該毒性から回復できることも実証する。
【0097】
B16又はB16/mCD70腫瘍マウスに、非形質導入細胞、配列番号25のアミノ酸配列を有するmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞、PBS又はpmel+Vを投与し、放射線を照射した(500 Rads)又は照射しなかった。細胞投与後約6日目から開始して、治療後約17日までの期間、マウスの平均重量を測定した。結果を
図2A~2Dに示す。
図2A~2Dに示したように、mCD27-CD3ζCARで治療したB16/mCD70及びB16腫瘍マウスの両方において、一時的な体重減少を観察した。mCD27-CD3ζCAR治療マウスで観察した体重減少は、移植した腫瘍とは無関係であった。特定の理論又は機構に縛られることはないが、体重減少はmCD27-CD3ζCARが内在細胞を標的としたことをほのめかすと考えられる。水を含むヒドロゲル、親水コロイド、食用酸及び安息香酸ナトリウムを投与したときに、マウスは体重減少から回復した。
【0098】
B16又はB16/mCD70腫瘍マウスに、非形質導入細胞、配列番号25のアミノ酸配列を有するmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞、又はGFPをコードするベクターで形質導入した細胞を投与し、放射線を照射した(500 Rads)又は照射しなかった。細胞投与後約6日目から開始して、治療後約14日までの期間、マウスの白血球(WBC)絶対数を測定した。結果を
図2E~2Hに示す。
図2E~2Hに示したように、mCD27-CD3ζCAR形質導入細胞で治療したマウスにおいて、一時的なWBC数の減少を観察した。
図2G~2Hに示したように、mCD27-CD3ζCARで治療したマウスにおいて、一時的な脾細胞数の減少を観察した。
【0099】
B16/mCD70腫瘍マウスに、配列番号25のアミノ酸配列を有するmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞、又はGFPをコードするベクターで形質導入した細胞を投与し、放射線を照射した(500 Rads)又は照射しなかった。細胞投与後約3日目から開始
して、治療後約7日までの期間、血清INF-γレベルを測定した。結果を
図2Iに示す。
図2Iに示したように、mCD27-CD3ζCARで治療し、放射線を照射したマウスにおいて、一時的なINF-γの分泌を観察した。
【0100】
実施例4
本実施例は、mCD27-CD3ζCARの投与が非腫瘍マウスの長期間における免疫機能に測定可能な影響を及ぼさないことを実証する。
【0101】
配列番号25のアミノ酸配列を有するmCD27-CD3ζCAR形質導入細胞、又はGFPをコードするベクターで形質導入した細胞(GFP)を投与した非腫瘍マウスに、放射線を照射した(500 Rads)又は照射しなかった。形質導入細胞を投与後、該マウスをオボアルブミン(OVA)又はヒト(h)gp100で、32日目又は50日目に免疫を行った。免疫後7日の該マウスの脾臓及びリンパ節(LN)からT細胞を取り出した。該細胞をインビトロにおいてOT-1、OT-II又はhgp100ペプチドで刺激した。結果を表3(32日・脾臓)、表3(32日・LN)及び表5(50日・脾臓)に示す。表5においては、免疫したC57BL/6(免疫あり)マウス(B6/Im)を陽性対照として用いた。ナイーブC57BL/6マウス(B6/ナイーブ)を陰性対照として用いた。表3~5に示したように、mCD27-CD3ζCAR投与は非腫瘍マウスの長期間における免疫機能に測定可能な影響を及ぼさなかった。
【0102】
脳、肺、肝臓、腎臓、腸、心臓、脾臓及び骨を含む様々な組織切片像を細胞投与後3~7日に調べた。特に血液の化学的性状について、細胞投与から3~7日の期間に、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リン、グルコース、血液尿素態窒素(BUN)、クレアチニン、尿酸、アルブミン、タンパク質、コレステロール、トリグリセリド、アルカリフォスファターゼ(ALKP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/GPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST/GOT)、アミラーゼ、クレアチンキナーゼ(CK)及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)について調ベた。組織切片像又は血液の化学的性状における変化は観察されなかった。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
実施例5
本実施例は、形質導入細胞数を増幅(expansion)後、完全長ヒトCD27及びヒトC
D3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むCAR(fCD27-CD3ζCAR)をコードするヌクレオチド配列で形質導入したT細胞が、該CARを発現することを実証する。
【0107】
OKTで非特異的に刺激したPBL、及びPBLから作製したT細胞を、(a)形質導入しなかった(UT)、(b)完全長ヒトCD27をコードするヌクレオチド配列で形質導入した(fCD27)又は(c)配列番号7のアミノ酸配列を有するfCD27-CD3ζCARをコードするヌクレオチド配列で形質導入した。細胞を増殖し、蛍光活性化細胞選択(FACS)によってCAR発現を分析し、IFN-γの産生に基づいて腫瘍反応性を試験した。Riddell ら、J. Immunol. Methods, 128:189-201 (1990)に記載のように
、一般的な方法でCD70反応性の細胞数を急速に増幅した(rapidly expanded:REP)。増幅した(expanded)細胞数を増殖し(grown)、FACSによってCD27、CD
70、CD45RO及びCD62Lの発現を分析した。表6はFACSで測定した表示の表現型を示す細胞の割合を示す。表7は刺激後(REP前)及びREP後における、細胞の増幅倍率(fold expansion)及び生残率(%)を示す。表6及び7に示すように、細胞数を増幅した(expanded)形質導入細胞はCARを発現し生残しており、エフェクター・記憶細胞としての表現型を有する。
【0108】
【0109】
【0110】
実施例6
本実施例は、完全長ヒトCD27及びヒトCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むCAR(fCD27-CD3ζCAR)をコードするヌクレオチド配列で形質導入したT細胞を、CD70発現細胞との共培養で増殖し(proliferate)、インビトロでC
D70発現腫瘍細胞を特異的に認識することを実証する。
【0111】
T細胞をヒトPBLから作製した。形質導入しなかった(UT)又はfCD27若しくはfCD27-CD3ζCARをコードするヌクレオチド配列で形質導入したT細胞(エフェクター細胞)を、単独で培養した又はCD70発現腫瘍細胞株624mel若しくはCD70で形質導入した624mel細胞(624/CD70)(標的細胞)と共培養した。共培養開始から4日目にカルボキシルフルオレセイン・スクシニミジル・エステル(CFSE)を用いて、エフェクター細胞の増殖(proliferation)を測定した。CD70
発現腫瘍細胞株624/CD70と共培養した時に、fCD27-CD3ζCARで形質導入したT細胞は増殖した(proliferate)。非形質導入T細胞及びfCD27で形質導
入したT細胞は如何なる培養においても増殖(proliferate)しなかった。
【0112】
形質導入しなかった又はfCD27若しくはfCD27-CD3ζCAR(配列番号7)をコードするヌクレオチド配列で形質導入したT細胞(エフェクター細胞)を、単独(培地のみ)で培養した又は以下の表8に示したヒトRCC細胞株若しくは対照細胞株624、624/CD70、SNU245、SNU1079若しくはSNU1196(標的細胞)の1つと共培養した。全てのSNU細胞株はCD70陰性であった。IFN-γ分泌を測定した。結果を表8に示す。表8に示すように、fCD27-CD3ζCAR(配列番号7)のヌクレオチド配列で形質導入したT細胞はCD70発現ヒトRCC細胞株に対して反応性を示した。
【0113】
【0114】
実施例7
本実施例は、ヒト抗CD70CARコンストラクトの形質導入効率を実証する。
【0115】
ヒトT細胞を空のレトロウイルスベクター(Mock)又は表9A~9Cに記載したコンストラクトの1つをコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。トランケート(Δ)CD27を含むCARは、CD27細胞内T細胞シグナル伝達ドメインの全てを欠いており、すなわち、トランケートCD27は配列番号2の212~260番目の連続するアミノ酸残基を欠いている。FACSによって、形質導入細胞のCD3、CD27、CD62L及びCD45ROの発現を分析した。表9A~9CはFACSによって測定した表示の表現型を有する細胞の割合を示す。表9Bに示すように、CARで形質導入した細胞はエフェクター・記憶細胞の表現型を有する。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
実施例8
本実施例はfCD27-CD3ζ(配列番号7)、ΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)、ΔCD27-CD28-4-1BB-CD3ζ(配列番号10)、fCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号12)又はfCD27-CD28-4-1BB
-CD3ζ(配列番号13)で形質導入したヒトT細胞が、インビトロでCD70発現RCC腫瘍細胞を認識することを実証する。
【0120】
空のレトロウイルスベクター(MSGV1)又は表9Aに記載したコンストラクトの1つをコードするレトロウイルスベクターでヒトT細胞を形質導入した。形質導入したT細胞を、単独(培地のみ)で培養した又は対照標的細胞株624mel、624/CD70、938mel若しくはCD70を発現するように形質導入した938mel細胞(938/CD70)、又はRCC標的細胞RCC2245R、RCC2246R、RCC2361R若しくはRCC1764と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図3に示した。
図3に示すように、fCD27-CD3ζ(配列番号7)、ΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)、ΔCD27-CD28-4-1BB-CD3ζ(配列番号10)、fCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号12)又はfCD27-CD28-4-1BB-CD3ζ(配列番号13)で形質導入したヒトT細胞は、インビトロにおいて、CD70を発現するRCC腫瘍細胞を認識する。
【0121】
実施例9
本実施例はΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)レトロウイルスベクターを産生するパッキングクローンの選択について実証する。
【0122】
レトロウイルス・パッキング細胞株PG13のクローンA2、A10、B3、C1、E3、G2を形質導入せず、又はΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。表10はFACSで測定した表示の表現型を有する細胞の割合を示す。
【0123】
【0124】
形質導入したクローンを単独(培地のみ)で培養した又は標的対照細胞938mel、938/CD70、SNU1079、SNU1196、又は標的RCC細胞株RCC2245R、RCC2246R、RCC2361R若しくはRCC1764と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図4に示した。
図4に示すように、レトロウイルス・パッキング・クローンE3はCD70を発現する標的腫瘍細胞株に対する反応性を有することを実証した。
【0125】
レトロウイルス・パッキング細胞クローンを表11に記載したCARで形質導入した。表11はFACSで測定した表示の表現型を有する細胞の割合を示す。
【0126】
【0127】
形質導入したクローンを単独(培地のみ)で培養した又は標的対照細胞938mel、938/CD70、SNU1079、SNU1196、又は標的RCC細胞株RCC2245R、RCC2246R、RCC2361R若しくはRCC1764と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図5に示した。
図5に示すように、レトロウイルス・パッキング・クローンE3はCD70を発現する標的腫瘍細胞株に対する反応性を有することを実証した。
【0128】
形質導入効率及び腫瘍活性に基づいて、レトロウイルス・パッキング・クローンE3/ΔCD27-4-1BB-CD3ζ(配列番号9)を臨床用途として選択した。
【0129】
本明細書中に引用した刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献を個別にかつ具体的に引用補充することが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度に本明細書に援用される。
【0130】
本発明を記載する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」、「an
」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中で別段の指示がない限り、又
は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数及び複数形を含むものとして解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有
する(containing)」という用語は、別段の記載がない限り、制限のない用語(open-ended
terms)(すなわち、「含むが、これに限定されない(including, but not limited to
)」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、範囲内の各別個の値を個別に指す簡略方法として役立つことを意図しており、本明細書において個々の値はそれぞれ個別に列挙されているかのよう
に、個々の値は明細書に取り込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施し得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく示すことを意図しており、特に
断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠であるとして、任意の主張されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0131】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含むものとして、本明細書に記載する。これらの好ましい実施形態の変形形態は、上記の明細書を読むことによって当業者にとって明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変及び均等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示されない限り、又は文脈によって明らかに否定されない限り、それらの全ての可能な変形例における上記要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【配列表】