(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-23
(45)【発行日】2022-08-31
(54)【発明の名称】シクロヒスチジン-プロリンを有効成分として含む細胞保護用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20220824BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220824BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20220824BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20220824BHJP
A61P 3/12 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P13/12
A23L33/18
A61P19/06
A61P3/12
(21)【出願番号】P 2020202646
(22)【出願日】2020-12-07
(62)【分割の表示】P 2020084215の分割
【原出願日】2017-07-13
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2016-0088751
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0088341
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517288254
【氏名又は名称】ノブメタファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】ヨー ファン-スー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ キョン-ミ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ヘ-ユネ
(72)【発明者】
【氏名】リー ヒョン-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジョン-ス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン スン-ヒー
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン-チュル
(72)【発明者】
【氏名】ムーン ジョン-ジョー
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-512552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)またはその薬学的に許容される塩を
単独の有効成分として含有し、
腎臓炎、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、急性腎不全、
尿細管間質線維化障害、ネフローゼ症候群(Nephrotic syndrome)、腎性尿崩症、電解質代謝異常、高尿酸血症、および低Na+血症からなる群から選択される1つ以上の
疾患における細胞死による腎臓細胞損傷を抑制するための薬学的組成物。
【請求項2】
シクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)またはその薬学的に許容される塩を単独の有効成分として含有し、
腎臓炎、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、急性腎不全、尿細管間質線維化障害、ネフローゼ症候群(Nephrotic syndrome)、腎性尿崩症、電解質代謝異常、高尿酸血症、および低Na+血症からなる群から選択される1つ以上の疾患における細胞死による腎臓細胞損傷を抑制するための健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)を有効成分として含む細胞保護用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)は、構造的には、甲状腺刺激放出ホルモン(TRH)と関連した自然に発生する環式ジペプチドである。ヒスチジン-プロリン(CHP)は、動物とヒトの組織と体液に内在するペプチドであり、血液、精液、胃腸管、尿等で発見され、特に、前立腺(prostate)に豊富な代謝産物である。ヒスチジン-プロリン(CHP)は、抗糖尿病、抗肥満、抗炎症、抗酸化作用等、様々な生理活性機能があると知られている。
【0003】
細胞死(アポトーシス、apoptosis)は、多細胞生命体の正常な発達及び機能に重要な過程である。生理学的細胞死は、正常な過程で重要な役割を果たすが、非正常な細胞死は、様々な疾病を引き起こす。例えば、細胞死が阻害すると、がん、自己免疫疾患、炎症疾患、ウイルス感染等がもたらされる。
【0004】
また、細胞死(apoptosis)は、アルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、ルー・ゲーリッグ病のような退行性神経疾患及び脳の局所貧血(cerebral ischemia)、外傷性脳損傷(traumatic brain injury)、脊髄外傷(spinal cord injury)、脳卒中のような急性疾患とも関連があると知られている。
【0005】
しかし、未だヒスチジン-プロリン(CHP)の細胞保護効果とその機序に関する研究は報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、シクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)が高濃度の薬物処理で誘発される腎臓細胞、肝細胞の細胞死を抑制し、細胞を保護するという事実を実験的に確認したので、本発明を完成した。
【0007】
本発明の目的は、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞保護用薬学的組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)またはその食品学的に許容される塩を有効成分として含む肝または腎臓損傷に対する予防または改善用健康機能食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞保護用薬学的組成物を提供する。
【0010】
本発明の実施例によれば、前記細胞は、腎臓細胞または肝細胞であってよい。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記組成物は、細胞死(apoptosis)を抑制できる。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記組成物は、薬剤により誘発される細胞損傷を抑制するものであってよい。
【0013】
本発明の実施例によれば、前記薬剤は、抗がん剤または抗菌薬のものであり、抗がん剤は、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)及びネダプラチン(nedaplatin)からなる群から選択される一つ以上の白金系抗がん剤のものであってよい。
【0014】
また、本発明は、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)またはその食品学的に許容される塩を有効成分として含む肝または腎臓損傷に対する予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記肝または腎臓毒性を誘発する薬剤は、シスプラチン(cisplatin)、ゲンタマイシン(GM)及びアセトアミノフェン(acetaminophen、APAP)からなる群から選択される一つ以上の抗がん剤;または抗菌薬のものであってよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)を有効成分として含有する細胞保護用薬学的組成物は、毒性から腎臓細胞または肝細胞の細胞死を抑制することを確認したので、腎臓及び肝毒性を予防及び治療する組成物として有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】CHPのGM誘発腎臓細胞(LLC-PK1 cell)の細胞死抑制効果を示した図である:**P<0.01、***P<0.001。CHP;Cyclo His-Pro、GM;gentamicin。
【
図2】CHPのAPAP誘発肝細胞(Chang liver cell)の細胞死抑制効果を示した図である:*P<0.05、***P<0.001。CHP;Cyclo His-Pro、APAP;acetaminophen。
【
図3】CHPの摂取がマウスでのシスプラチンによる肝毒性の保護機能を確認するためにALTを測定したグラフである。
【
図4】CHPの摂取がマウスでのシスプラチンによる肝毒性の保護機能を確認するためにASTを測定したグラフである。
【
図5】CHPの摂取がマウスでのシスプラチンによる腎臓毒性の保護機能を確認するためにCreatinineを測定したグラフである。
【
図6】CHPの摂取がマウスでのシスプラチンによる腎臓毒性の保護機能を確認するためにBUNを測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明のシクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)を有効成分として含有する細胞保護用組成物は、腎臓細胞または肝細胞の細胞死を抑制する効果があることを確認した。
【0020】
本発明は、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞保護用組成物を提供する。本発明の実施例によれば、前記シクロヒスチジン-プロリン(CHP)は、前立腺抽出物(Prostate extract)から分離されたものであってよい。
【0021】
【0022】
本発明は、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞保護用組成物は、腎臓細胞または肝細胞を保護することができる。
【0023】
本発明のシクロヒスチジン-プロリン(CHP)を有効成分として含有する組成物は、細胞死(apoptosis)を抑制するものであってよい。
【0024】
本発明の組成物は、薬剤により誘発される細胞損傷を抑制するものであり、前記薬剤は、抗がん剤または抗菌薬であってよく、具体的には、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)及びネダプラチン(nedaplatin)からなる群から選択される一つ以上の白金系抗がん剤;またはゲンタマイシンまたはアセトアミノフェンのような抗菌薬であってよい。
【0025】
本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。このとき、前記組成物に含まれる前記シクロヒスチジン-プロリン(CHP)、その塩、抽出物または分画物の含量は、特にこれに制限されないが、組成物の総重量に対して0.0001~10重量%であり、好ましくは、0.001~1重量%を含むように製造できる。
【0026】
本発明の用語「薬学的に許容される塩」とは、陽イオンと陰イオンが静電気的引力により結合している物質である塩の中でも薬剤学的に使用され得る形態の塩を意味するが、通常、金属塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等となり得る。例えば、金属塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩等となり得;有機塩基との塩としては、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン等との塩となり得;無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩となり得;有機酸との塩としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩となり得;塩基性アミノ酸との塩としては、アルギニン、リシン、オルニチン等との塩となり得;酸性アミノ酸との塩としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩となり得る。
【0027】
本発明の組成物は、好ましくは、薬学的組成物であり、前記薬学的組成物は、経口または非経口投与でき、非経口投与時に皮膚外用または腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸部内注射注入方式を選択することが好ましい。
【0028】
本発明に係る薬学的組成物は、通常使用される賦形剤、崩壊剤、甘味剤、滑沢剤、香味剤等をさらに含むことができる。前記崩壊剤としては、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、グアーガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、マグネシウムアルミニウムシリケート、ポラクリリンカリウム等がある。また、本発明に係る薬学的組成物は、薬剤学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、このとき、薬剤学的に許容可能な添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、前糊化デンプン、トウモロコシデンプン、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナバワックス、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトール、タルク等が使用され得る。本発明に係る薬剤学的に許容可能な添加剤は、前記薬学的組成物に対して0.1~90重量部含まれることが好ましい。
【0029】
経口投与のための固形製剤には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸剤等が含まれる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、エアゾール等が該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤としては、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、滅菌された水溶液、液剤、非水性溶剤、懸濁剤、エマルジョン、シロップ、坐剤、エアゾール等の外用剤及び滅菌注射製剤の形態に剤形化して使用され得、好ましくは、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、ペースト剤またはパップ剤の皮膚外用薬学的組成物を製造して使用することができるが、これに限定するものではない。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が使用され得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が使用され得る。
【0030】
本発明の薬学的組成物の好ましい投与量は、体内で活性成分の吸収度、不活性化率及び排泄速度、患者の年齢、性別及び状態、治療する疾病の重症程度によって異なるが、当業者により適切に選択され得る。しかし、好ましい効果のために、経口投与剤の場合、一般的に、成人に1日に体重1kg当たり本発明の薬学的組成物を1日0.0001~100mg/kgで、好ましくは、0.001~100mg/kgで投与することがよい。投与は、1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明の薬学的組成物は、毒性及び副作用がほとんどないので、長期間服用時にも安心して使用できる組成物である。
【0031】
本発明の薬学的組成物は、腎臓細胞を保護する効果に優れるので、腎臓炎、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、急性腎不全、尿細管間質線維化障害、ネフローゼ症候群(Nephrotic syndrome)、腎性尿崩症、電解質代謝異常高尿酸血症及び低Na+血症からなる群から選択される疾病を予防または治療でき、肝細胞を保護する効果に優れるので、肝不全、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変症、肝性昏睡及びアルコール性肝疾患からなる群から選択される疾病の予防または治療に有用に使用され得る。
【0032】
本発明のシクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む組成物は、抗がん剤により誘発される肝または腎臓毒性の予防または治療用抗がん補助剤として使用することができる。
【0033】
前記抗がん補助剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ドキソルビシン、タキソール、タモキシフェン、カムトベル、アドルシル、グリベック、エトポシド、ゾメタ、オンコビン等の既存の抗がん剤と併用投与することで、肝または腎臓毒性を減少させて抗がん効能を増進させることができる。
【0034】
また、シクロヒスチジン-プロリン(Cyclo His-Pro、CHP)またはその食品学的に許容される塩を有効成分として含む肝または腎臓損傷に対する予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0035】
前記肝または腎臓損傷を誘発する薬剤は、シスプラチン(cisplatin)、ゲンタマイシン(GM)及びアセトアミノフェン(acetaminophen、APAP)からなる群から選択される一つ以上の抗がん剤;または抗菌薬であってよい。
【0036】
本発明の用語、「食品学的に許容される塩」とは、陽イオンと陰イオンが静電気的引力により結合している物質である塩の中でも食品学的に使用され得る形態の塩を意味し、その種類についての具体的な例は、上述の「薬学的に許容される塩」の例を含む。
【0037】
本発明において用語、「健康食品(health food)」は、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品を意味し、健康補助食品(health supplement food)は、健康補助目的の食品を意味する。場合によって、機能性食品、健康食品、健康補助食品の用語は互用される。前記食品は、有用な効果を得るために、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤等の様々な形態に製造され得る。
【0038】
本発明において用語、「機能食品(functional food)」は、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同じ用語であり、栄養供給の他にも生体調節機能が効率よく現れるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味する。
【0039】
このような健康機能食品の具体的な例として、前記組成物を利用して農産物、畜産物または水産物の特性を生かして変形させると同時に貯蔵性を良くした加工食品を製造することができる。
【0040】
本発明の健康機能食品は、腎臓細胞を保護する効果に優れるので、腎臓炎、急性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎、急性腎不全、尿細管間質線維化障害、ネフローゼ症候群(Nephrotic syndrome)、腎性尿崩症、電解質代謝異常高尿酸血症及び低Na+血症からなる群から選択される疾病を予防または治療でき、肝細胞を保護する効果に優れるので、肝不全、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変症、肝性昏睡及びアルコール性肝疾患からなる群から選択される疾病の予防または改善用健康食品として有用に利用することができる。
【実施例】
【0041】
<実施例1>シクロヒスチジン-プロリン(CHP)の腎臓細胞死抑制分析
【0042】
シクロヒスチジン-プロリン(CHP)でゲンタマイシン(gentamicin、GM)により誘発される腎臓細胞の細胞死抑制効果を確認した。
【0043】
具体的に、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)は、ペプチド専門の製造企業(Bachem;Bubendorf、Switzerland)にtarget spec(99%purity)だけを要請して製造したものである。ゲンタマイシンは、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO、USA)で購入し、腎臓細胞(LLC-PK1 cell)は、American Type Culture Collection(ATCC;Manassas、VA、USA)で購入した。腎臓細胞(LLC-PK1 cell)にCHP0.1、1、5または10mg/mLそれぞれをGM5mg/mLと共に6時間の間同時に処理して培養した(
図1A)。
【0044】
また、腎臓細胞(LLC-PK1 cell)にCHP0.1、1、5または10mg/mLそれぞれを前処理して2時間の間培養した後、GM5mg/mLを加えて4時間さらに培養した(
図1B)。細胞生存度は、cell counting kit-8(Dojindo Laboratories;Kumamoto、Japan)を使用して分析し、microplate reader(Molecular Devices、LLC;Sunnyvale、CA、USA)で測定した。
【0045】
その結果、ゲンタマイシン(GM)は、腎臓細胞の細胞死を誘発し、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)は、ゲンタマイシン(GM)により誘発される腎臓細胞の細胞死を濃度依存的に抑制した。特に、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を腎臓細胞に前処理したとき、ゲンタマイシン(GM)により誘発される細胞死が大きく抑制された。
【0046】
<実施例2>シクロヒスチジン-プロリン(CHP)の肝細胞死抑制分析
【0047】
シクロヒスチジン-プロリン(CHP)のアセトアミノフェン(acetaminophen、APAP)により誘発される肝細胞の細胞死抑制効果を確認した。
【0048】
具体的に、アセトアミノフェンは、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO、USA)で購入し、肝細胞(Chang liver cell)は、American Type Culture Collection(ATCC;Manassas、VA、USA)で購入した。肝細胞(Chang liver cell)にCHP0.1、1、5または10mg/mLそれぞれをAPAP15mMと共に24時間の間同時に処理して培養した(
図2A)。
【0049】
また、肝細胞(Chang liver cell)にCHP0.1、1、5または10mg/mLそれぞれを前処理して24時間の間培養した後、APAP15mMを加えて24時間さらに培養した(
図2B)。細胞生存度は、cell counting kit-8(Dojindo Laboratories;Kumamoto、Japan)を使用して分析し、microplate reader(Molecular Devices、LLC;Sunnyvale、CA、USA)で測定した。
【0050】
その結果、アセトアミノフェン(APAP)は、肝細胞の細胞死を誘発し、CHP(Cyclo His-Pro)は、アセトアミノフェン(APAP)により誘発される肝細胞の細胞死を濃度依存的に抑制した。特に、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を肝細胞にアセトアミノフェン(APAP)と同時処理したとき、アセトアミノフェン(APAP)により誘発される細胞死が大きく抑制された。
【0051】
<実施例3>シクロヒスチジン-プロリン(CHP)摂取をした動物モデルでシスプラチンによる肝損傷抑制分析
【0052】
<3-1>CHP摂取及びシスプラチン投与
【0053】
CHPによるマウスの肝毒性保護効果を測定するために、SD ratをコアテック(株)で購入して一定の条件(温度:23±3℃、相対湿度:55±10%、一周期:12時間)で飼育した。5匹を一群としてケージで水とえさを自由供給し、実験前に1週間馴化を経て実験に使用した。順応期間が終了した後、5個の群に分けて下記表1のように実験を進行した。
【0054】
【0055】
1グループは、水を摂取して陰性対照群に設定し、2グループは、水を摂取した後、シスプラチン投与による肝損傷対照群に設定し、3グループは、CHP1mg/Lの飲水摂取、4グループは、CHP5mg/Lの飲水摂取、5グループは、CHP10mg/Lの飲水摂取の1週間後、シスプラチン投与による肝損傷保護効果グループに設定した。CHPで供給される飲水は、2日に1回の取り替えで実施した。
【0056】
<3-2>マウスの肝機能保護効果測定
【0057】
CHPの肝機能保護効果を確認するために、まず、CHPを濃度別に1週間マウスに投与した後、シスプラチンを投与し、24時間後、肝機能を確認した。ALTとASTを測定するために、マウスで腹大動脈採血して血液を採取した後、遠心分離機を利用して血清だけを分離した後、automatic analyzer(Hitachi7180;Tokyo、日本)を利用して測定した。
【0058】
その結果、
図3及び
図4に示されたように、陰性対照群とシスプラチン誘導肝損傷群のt検証を実施してその有意性を検証し、統計学的に有意な差を示した(#p<0.05、###p<0.0005)。
【0059】
また、シスプラチン誘導肝損傷群とCHP摂取投与群間のアノーバ(ANOVA)を利用した有意差で多重比較し、テューキー事後検定を利用した個別比較をし、統計学的に有意な差を示した(*p<0.05、**p<0.005)。
【0060】
マウスにシスプラチンを投与すると肝損傷を招いてALT及びASTが増加することを確認することができた。また、CHPを摂取したマウスには、シスプラチンにより増加したALT及びASTが顕著に減少することを確認した。
【0061】
従って、CHPが血中肝機能数値を確認できるALT及びASTの濃度を減少させる優れた効果を示すので、CHPを有効成分として含む薬学的組成物が肝細胞を保護する効果に優れるので、肝疾患からなる疾病の予防または治療に有用に使用され得ることが分かる。
【0062】
<実施例4>シクロヒスチジン-プロリン(CHP)摂取をした動物モデルでシスプラチンによる腎臓損傷抑制効果分析
【0063】
<4-1>CHP摂取及びシスプラチン投与
【0064】
シクロヒスチジン-プロリン(CHP)によるマウスの腎臓毒性保護効果を測定するために、ICRマウスをコアテック(株)で購入して一定の条件(温度:23±3℃、相対湿度:55±10%、一周期:12時間)で飼育した。5匹を一群としてケージで水とえさを自由供給し、実験前に1週間馴化を経て実験に使用した。順応期間が終了した後、3個の群に分けて下記表2のように実験を進行した。
【0065】
【0066】
1グループは、水を経口投与して陰性対照群に設定し、2グループは、水を経口投与した後、シスプラチン投与による腎臓損傷対照群に設定し、3グループは、CHP1mg/kgで1週間毎日経口投与した後、シスプラチン投与による腎臓損傷保護効果グループに設定した。
【0067】
<4-2>マウスの腎臓機能保護効果測定
【0068】
シクロヒスチジン-プロリン(CHP)の腎臓機能保護効果を確認するために、まず、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を1mg/kgの濃度で1週間毎日1ml注射器を通して経口投与した後、シスプラチンを投与し、72時間後、腎臓機能を確認した。クレアチニン(Creatinine)を測定するために、マウスの心臓で血液を採取した後、遠心分離機を利用して血清だけを分離した後、生化学分析装備(BS-390、Mindray Bio-Medical Electronics Co.,Ltd.、中国)を利用して測定した。その結果を
図5に示した。前記実験結果は、シスプラチンを処理した肝損傷群と他の実験群間のt検証を実施してその有意性を検証し、統計学的に有意な差を示した(#p<0.05、##p<0.005)。
【0069】
図5に示したように、マウスにシスプラチンを投与すると腎臓損傷を招いてクレアチニンが増加することを確認することができた。また、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を摂取したマウスには、シスプラチンにより増加したクレアチニンが顕著に減少することを確認した。
【0070】
従って、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)の血中腎臓機能数値を確認できるクレアチニン(Creatinine)の濃度を減少させる優れた効果を示すので、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を有効成分として含む薬学的組成物が腎臓細胞を保護する効果に優れるので、腎臓疾患からなる疾病の予防または治療に有用に使用され得ることが分かる。
【0071】
<実施例5>シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を摂取したマウスでシスプラチンによる腎臓損傷抑制効果測定
【0072】
<5-1>シクロヒスチジン-プロリン(CHP)摂取及びシスプラチン投与
【0073】
シクロヒスチジン-プロリン(CHP)によるマウスの腎臓毒性保護効果を測定するために、ICRマウスをコアテック(株)で購入して一定の条件(温度:23±3℃、相対湿度:55±10%、一周期:12時間)で飼育した。5匹を一群としてケージで水とえさを自由供給し、実験前に1週間馴化を経て実験に使用した。順応期間が終了した後、3個の群に分けて下記表3のように実験を進行した。
【0074】
【0075】
1グループは、水を経口投与して陰性対照群に設定し、2グループは、水を経口投与した後、シスプラチン投与による腎臓損傷対照群に設定し、3グループは、CHP1mg/kgで1週間毎日経口投与した後、シスプラチン投与による腎臓損傷保護効果グループに設定した。
【0076】
<5-2>マウスの腎臓機能保護効果測定
【0077】
シクロヒスチジン-プロリン(CHP)の腎臓機能保護効果を確認するために、まず、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を1mg/kgの濃度で1週間毎日経口投与した後、シスプラチンを投与し、24時間後、腎臓機能を確認した。BUNを測定するために、マウスの心臓で血液を採取した後、遠心分離機を利用して血清だけを分離した後、生化学分析装備(BS-390、Mindray Bio-Medical Electronics Co.,Ltd.、中国)を利用して測定した。
【0078】
その結果、
図6に示したように、前記実験結果は、シスプラチン誘導肝損傷群と他の実験群間のt検証を実施してその有意性を検証し、統計学的に有意な差を示した(#p<0.05)。
【0079】
マウスにシスプラチンを投与すると腎臓損傷を招いてBunが増加することを確認することができた。また、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)を摂取したマウスには、シスプラチンにより増加したBunが顕著に減少することを確認した(
図6)。
【0080】
従って、シクロヒスチジン-プロリン(CHP)の血中腎臓機能数値を確認できる血液尿素窒素であるBunの濃度を減少させる優れた効果を示すので、CHPを有効成分として含む薬学的組成物が腎臓細胞を保護する効果に優れるので、腎臓疾患からなる疾病の予防または治療に有用に使用され得ることが分かる。本発明に係るCHPは、抗がん剤であるシスプラチンによる肝及び腎臓損傷を抑制及び減少させる優れた効果があることを確認することで、抗がん剤により誘発される肝及び腎臓毒性疾患の予防及び治療のための薬学組成物または健康機能食品として有用に利用され得る。
【0081】
これまで、本発明についてその好ましい実施例を中心に検討した。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態で具現され得ることを理解できるだろう。それゆえ、開示された実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての相違点は、本発明に含まれたものと解釈されるべきである。